ポストスタチン新候補となるか? メトトレキサートの心血管疾患治療薬としての可能性米のシステマチックレビュー・メタ解析ポストスタチンの主導権争いの行方がいまだ混沌としている中,米ハーバード公衆衛生大学院のRenata Micha氏らは関節リウマチ(RA)などの治療に用いられるメトトレキサート(商品名リウマトレックス,以下MTX)が,心血管疾患(CVD)リスクの低下に寄与する可能性があるとのシステマチックレビュー・メタ解析の結果を今月(11月)のAm J Cardiol(2011; 108: 1362-1370) に報告した。これまで観察研究などで,同薬がRA患者の心血管予後を改善する可能性が示唆されていたが,システマチックレビューやメタ解析はほとんど行われていなかったという。 全CVDリスクが21%,心筋梗塞リスクは18%低下第84回米国心臓協会(AHA)年次学術集会(2011.11.12〜16)では,ストロングスタチンのhead to head試験SATURNが報告。最高用量の同クラス薬の効果と安全性が確認された一方,なお,約3分の1の患者ではプラークの進展が見られたと報告されている。また,スタチンとの併用を目的としたいくつかの薬剤に関連する試験も報告。また,最近では,米国でスタチンとの併用療法の効能が唯一認められていたフェノフィブラートが再度効果確認のための臨床試験を求められるなど,動脈硬化性疾患の治療成績を今後どう上げていくのかは,引き続きホットなトピックといえそうだ。 MTXは,RAの症状を改善するだけでなく,以前から同薬を使用しているRA患者では非使用患者に比べ,生命予後が良好であることなどが報告されている(Lancet 2002; 359: 1173-1177)。Micha氏らによると,同薬の慢性炎症に対する作用がRAそのものだけでなく,CVDリスクの低下にも関連するとのエビデンスが集積されつつあるという。 しかし,同薬の使用とCVDリスクの関連を詳細に検討したシステマチックレビューおよびメタ解析は行われていなかったことから,今回,同氏らが検討を実施。 RA患者や乾癬,多発性関節炎患者を対象に含む観察研究から,MTXとCVDリスクに関する検討が含まれる10件の報告が対象とされた。10件のうち9件がRAに関するもの(うち1件は乾癬患者を含む)で,1件は多発性関節炎に関する検討であった。 これらの報告をメタ解析した結果,MTXによる全CVDリスクの相対リスク(RR)は0.79(10件の試験による解析,95%CI 0.73~0.87,P<0.001),心筋梗塞のRRは0.82(5件の試験による解析,95%CI 0.71~0.96)とそれぞれ有意に低下していた。それぞれの結果について論文間の異質性に有意差は認められなかった(各 P=0.30,P=0.33)。 事前に設定された,異質性の原因となる項目を見たところ,基礎疾患が重度である場合〔相対リスク(RR)0.64,95%CI 0.43~0.96,P<0.01〕,併用薬(同0.73,0.63~0.84,P<0.001)でより強い相関が見られた。出版バイアスの可能性は示唆された(funnel plot, Begg’s test,P=0.06)が,過剰なリスク評価が考えられる4つの報告を除外した場合のCVDリスク低下の程度に大きな乖離は見られなかった(RR 0.81,95%CI 0.74~0.89)。 以上の結果から,同氏らはMTXによる慢性炎症の改善がCVDリスクの低下に直接寄与する可能性が示されたと結論。また,異質性の検定から明らか になった点を踏まえ,今後,MTX治療のCVDに対する効果を観察研究で検討する場合には,RAなど基礎疾患の重症度にも関連する,MTXによる初期治療の有無や疾患の重症度を補正することなどが必要ではないかと述べている。 Ridker氏も解析に参加,メトトレキサートに注目した理由
共同研究者の今村文昭氏に聞く,今回の論文のポイント 今回の論文には,ハーバード公衆衛生大学院のチームに加え,循環器疾患における炎症の研究のトップランナーであるPaul M. Ridker氏も名前を連ねている。
MTXの抗炎症作用,循環器領域では「新顔」今回の論文の最大のポイントは,「抗炎症薬」としてMTXがCVDのリスクを下げる可能性があるのかどうかという点。
C反応性蛋白(CRP)に代 表されるように,CVDの発症機序において,コレステロール値の異常や糖尿病,高血圧とは独立して慢性炎症が重要な役割を果たしているといわれている。
そのため,スタチンやその他の脂質異常症治療薬,降圧薬や抗血栓薬などがそれぞれの主要な効果だけでなく,慢性炎症の機序にどの程度有効性を発揮するのかも焦点となってきた。
われわれがMTXに着目した背景には,ジヒドロ葉酸還元酵素の阻害を介した抗炎症作用がある。
これまでCVDリスクを語る上ではあまり注目されてこなかった機序だが,循環器疾患の予防・治療の新たな薬剤としての可能性があると考えている。
今回のメタ解析ではMTXがCVDの再発予防薬として有望である可能性が示された。
今後,臨床研究などで効果や副作用のマネジメントに関する詳しい検討が進んでいくことを期待したい。
出典 MT pro 2011.11.22
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<関連サイト> If bad cholesterol is controlled, adding niacin won’t lower heart attack, stroke riskhttp://newsroom.heart.org/pr/aha/if-bad-cholesterol-is-controlled-218966.aspx Experimental drug safely boosts good cholesterol, lowers badhttp://newsroom.heart.org/pr/aha/experimental-drug-safely-boosts-218965.aspx
ロスバスタチン vs. アトルバスタチン,プラーク退縮を直接比較同等の“前例のない”大きな効果,AHA 2011で発表のSATURN試験強化スタチン療法による動脈硬化進展抑制の検証において,初のスタチン間比較が実施された。このロスバスタチンとアトルバスタチンのプラーク退縮効果を検証したSATURN試験の 結果を,第84回米国心臓協会年次集会(AHA 2011:11月12~16日,オーランド)において,米クリーブランドクリニック臨床研究センターディレクターのStephen Nicholls氏が発表した。その結果,症候性冠動脈疾患患者への24カ月間の最大用量投与により,標的冠動脈のプラーク容積率(PAV)がともに有意に減少した。両薬間の効果に差は見られなかった。同氏は「至適なLDLコレステロール(LDL-C)値やHDLコレステロール(HDL-C)値を可能とする最大用量の強化スタチン療法において,高い忍容性と前例のない高頻度かつ大きなプラーク退縮が示された」と述べた。この成績は,N Engl J Med 2011年11月15日オンライン版に同時掲載された。 20%以上の狭窄有する冠動脈疾患患者に最大用量のスタチンを投与 SATURN試験は,北米,欧州,南米および豪州の208施設が参加した二重盲検ランダム化比較試験(RCT)だ。 対象は血管内超音波法 (IVUS)で冠動脈に1カ所でも20%以上の狭窄が認められた症候性冠動脈疾患患者。
LDL-C値の登録基準は,4週間以上のスタチン服用中の場合で80mg/dL超,それ以外ではLDL-C 100mg/dL超と設定された。
2008年1月〜09年6月にかけて1,578例が登録され,1,385例がランダム化割り付けされた。
まず,試験用量の半量で忍容性とLDL- C 116mg/dL未満の達成を確認する2週間のスクリーニング期間が設けられ,その後に,ロスバスタチン40mg群(R群)とアトルバスタチン 80mg(A群)に割り付けられ,104週間の投薬期間を経て再びIVUSが施行された。
割り付けが行われた1,385例のうち346例(25%)はIVUSの未実施などにより脱落したため,R群520例,A群519例の計1,039例が解析対象となった。
標的冠動脈プラーク退縮率は同等,全プラーク容積はロスバスタチンでより大きく減少
対象患者の平均年齢は57歳で,男性が約4分の3,BMI中央値は30%弱,高血圧7割程度,糖尿病15%程度,スタチン使用歴は6割程度だった。
他の治療薬としては抗血小板療法が98%に行われており,β遮断薬が6割程度,ACE阻害薬は4割強,アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)は 15%程度に投与されていた。
登録時点のLDL-C値は両群ともに約120mg/dLだった。
試験終了時の脂質値は,LDL-C値がR群62.6mg/dL,A群70.2mg/dLとR群で有意に低く(<0.001),HDL-C値はR群 50.4mg/dL,A群48.6mg/dLとR群で有意に高かった(P=0.01)。
そのため,LDL/HDL比はR群1.3,A群1.5とR群で有意に小さかった(P<0.01)。
一方,高感度C反応性蛋白(hsCRP)中央値はR群1.1mg/L,A群1.0mg/Lと,A群で有意に低かった (P=0.05)。
1次評価項目は,IVUSにより求められる標的冠動脈のPAV変化率で,R群の1.22%縮小に対してA群では0.99%縮小と両群間で差はなかった(P=0.17)。
しかし,両群ともベースラインに比べて有意な退縮が示された(表)。
Nicholls氏は「スタチンが用いられた試験の中でも最も大きい退縮率であった」と述べた。
一方,2次評価項目の全プラーク容積(TAV)のベースラインからの変化は,A群4.42mm3減少に対してR群では6.39mm3の減少と,R群の方が有意に減少していた(P=0.01)。
なお,1次評価項目でPAV縮小が認められた患者は全体の3分の2に上り,その頻度はR群が68.5%とA群63.2%を上回ったが,有意差はなかった(P=0.07)。 最大用量の強化スタチン療法でも3分の1で動脈硬化が進展 観察期間に発生した主要心血管疾患イベント(MACE)は,R群7.5%,A群7.1%とともに低かった。
副作用として,肝機能異常を示すALTの3×正常値上限(ULN)がA群2.0%に対してR群0.7%,蛋白尿がR群3.8%に対してA群1.7%と両群間に有意差が認められたが,全般に低率だった。
HbA1cの変化も両群で0.1%以下にとどまった。
脂質値の変化に違いは認められたものの,PAV変化率は両群同等であったことから,Nicholls氏は「いずれの強化スタチン療法でも前例のないプラーク退縮作用と高い忍容性が認められた。 しかし,3分の1の患者では動脈硬化が進展していたことから,さらなる抗動脈硬化治療の模索が必要といえ る」と結んだ。
指定討論者でノースウエスタン大学フェインバーグ予防医学教授のDarwin R. Labarthe氏は,1次評価項目と2次評価項目の結果に一貫性がない点や,割り付けの4分の1が脱落した点を挙げ,2剤の違いについて今回の成績から 臨床効果の違いを示すことはできないと指摘した。
出典 MT pro 2011.11.17
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<私的コメント>
昨日の診療終了後。
たまたまファイザーのMRさんがSATURN試験の結果の説明に来ました。
iPadで発表内容を、見せてくれたのですが一見アトルバスタチンに比較してロスバスタチンが有利な結果でした。
RCTということでバイアスはないものと思われますが、スポンサーはアストラゼネカのようです。
<自遊時間 その1>
ルイ・ダゲールは写真を発明した人とのことです。
ノーベル賞は物理学賞、化学賞、生理学・医学賞、文学賞、平和賞の6部門がありますが「物造り」の部門がありません。
じょの中の平和賞は本来ノーベルの遺志で作られたものですが、非常に軽い人(?)も受賞しています。
該当者がない年には無理に受賞者を選ばないでこういった飛行機、自動車、コンピューターなどの「物造り」の人に光りをあてていただけないものでしょうか。
もっともノーベル賞は1901年からですから、ルイ・ダゲールは受賞できなかったでしょうが。
スティーブ・ジョブズ氏なども「人類のために最大たる貢献をした人々」ということでは、立派な該当者かも知れません。
こんなことをふと思った次第です。
<自遊時間 その2>
定期購読の医学雑誌の継続更新の季節となりました。
私は長年「週刊・日本医事新報」を大学生協で定期購読して来ました。
ご存知のように4月から模様替えをして、内容も随分若い先生向きに変わりました。
いわゆる「ハウツー物」が増えました。
これを良しとするかどうかは購読者が決めることです。
私はモデルチェンジしてからのこの雑誌に個人の読み物として毎週777円を投資する価値はない、と判断しました。
来年から購読中止する旨、生協に電話をしました。
すっきりしたような後ろ髪を引かれるような複雑な心境です。
<ちょっと気になるサイト>
ウィキペディア創設者ジミー・ウェールズからのお願い
~シンバスタチン+エゼチミブ併用~
CKD患者の心血管疾患を予防
オックスフォード大学臨床試験サービスユニット(CTSU)のColin Baigent教授らは,脂質異常症治療薬のシンバスタチンとエゼチミブの併用は,中等度~重度の慢性腎臓病(CKD)患者の心疾患リスクを低下させるとする試験結果をLancet(2011; 377: 2181-2192)に発表した。
安全性に対する不安ない
スタチン系薬をはじめとする脂質異常症治療薬は,腎臓に問題のない人の心筋梗塞や虚血性脳卒中のリスクを低下させることが明らかになっている。
しかし,腎機能障害を有する人に対するスタチン系薬の効果については不明な点も多かった。
今回,試験統括医であるBaigent教授らが発表したSHARP(Study of Heart and Renal Protection)の結果は,昨年11月に開かれた米国腎臓病学会で最初に報告され,話題になったものである。
試験の結果,シンバスタチン+エゼチミ ブ併用群では非致死性心筋梗塞,冠動脈死,非出血性の脳卒中の発生率,および血行再建術施行のリスクがプラセボ服用群と比べて17%低かった。
さらに重要 な点は,この併用に関連した安全性についての不安がなかったことである。
1990年代に計画されたこの長期試験は,最終的に18カ国,9,500例を対象とする大規模試験となり,今回の報告で終了となる。
同教授は,今回の研究について「CKD患者は腎疾患の治療以外にも,腎疾患の合併症として発生する心筋梗塞や脳卒中の痛み,不安にさらされている。
さらに,腎疾患患者の半数以上は最終的には腎疾患ではなく,心血管疾患で死亡する。
しかし,今回の試験の結果から,シンバスタチンとエゼチミブの併用が有望であることが明らかになった。
これは,現在治療を受けている世界中の多くのCKD患者にとって朗報となろう」と記している。
薬剤は危険とする考えが支配
CKD患者は中年人口の20人に1人程度いるとされ,高齢者ではさらに割合が高い。
CKD患者では脳卒中や心筋梗塞のリスクが高いことが知られているが,これらの合併症予防に有効な治療薬についてはまだ明らかにされていない。
共同研究者でCTSUのMartin J. Landray博士は「腎障害は心血管疾患の原因となるが,コレステロール値を下げても予防できないと考える医師もいる。
しかし,今回の試験によって,コ レステロールを下げることによりCKD患者の心血管疾患リスクが確実に下がることが示された」と評価している。
Baigent教授はこの試験に対して特に個人的な思い入れがあるという。
というのも,同教授自身30年前に腎疾患を発症し,腎移植を受けるまでは透析 生活を余儀なくされた経験を持つからだ。
「わたしと同時期に透析治療を受けていた若年患者の多くは,既に心血管疾患で亡くなっている」と振り返り,「腎疾患患者の心疾患予防に対する薬物治療の開発は,他の疾患患者群と比べて後れを取っている。これは,薬剤が腎障害患者にとってリスクとなるのではないかとい う懸念がどこかに残っているからだ」と述べている。
また,「腎疾患患者の治療が,英国保健サービス(NHS)予算の3%以上を占め,その数字が今後確実に上昇することが分かっている今こそ,腎疾患患者のケアを改善する必要がある。
中でも,特に心血管疾患予防の優先順位を上げるべきだ」と付け加えている。
出典 Medical Tribune 2011.11.10
版権 メディカル・トリビューン社
<関連サイト>
シンバスタチンとエゼチミブの併用で慢性腎不全患者の心血管イベント抑制
SHARP試験から
■スタチンの虚血性心疾患や脳卒中などに対する心血管イベント抑制効果は初発予防,再発予防ともに認められ,例えば心筋梗塞後患者においては,再発予防のためにスタチン投与がガイドラインでも強く推奨されている。一方,腎障害は心疾患に合併しやすいが,腎疾患合併時におけるスタチンの心血管疾患予防効果については一定の見解が得られていない。特にAURORA試験では,透析患者においてロスバスタチンは心血管死+非致死性心筋梗塞+非致死性脳卒中のエンド ポイントを抑制しなかった(N Engl J Med 2009; 360: 1395-1407)。 ■SHARP試験は,腎疾患患者においてスタチン+エゼチミブの心血管イベント抑制効果を初めて示した試験である(Lancet 6月9日オンライン版)。■SHARP試験では,シンバスタチン20mg+エゼチミブ10mgは,(1)安全に腎障害患者に投与可能,(2)約30mg/dLのLDL-C低下作用,(3)心血管イベント抑制作用―があることが示された。■前述したAURORA試験の結果により,腎障害患者にスタチンを投与した場合,心血管イベント抑制効果が認められない懸念もあったが,シンバスタチン+エ ゼチミブ群では特に冠動脈血行再建術の抑制効果が強く認められた。この2つの試験結果の差は,どのエンドポイントが多く見られたかに左右された可能性がある。例えば,AURORA試験ではイベントの半数が血管死であるが,SHARP試験では心血管死は少ない。スタチンの冠動脈イベント抑制作用効果は強い が,心血管死抑制効果はやや劣ると考えると説明がつく。
出典 MT pro 2011.6.11版権 メディカル・トリビューン社
読んでいただいて有り難うございます。コメントをお待ちしています。その他「葦の髄」循環器メモ帖 http://yaplog.jp/hurst/(「葦の髄から循環器の世界をのぞく」の補遺版)ふくろう医者の診察室 http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy(一般の方または患者さん向き) 井蛙内科/開業医診療録(4)2009.10.16~http://wellfrog4.exblog.jp/井蛙内科/開業医診療録(3)~2009.10.15http://wellfrog3.exblog.jp/井蛙内科/開業医診療録(2)2008.12.10~http://wellfrog2.exblog.jp/井蛙内科/開業医診療録~2008.5.21 http://wellfrog.exblog.jp/ (内科医向き) 「井蛙」内科メモ帖 http://harrison-cecil.blog.so-net.ne.jp/ (「井蛙内科開業医/診療録」の補遺版)があります。
スタチンによる脳出血リスク,メタ解析発表関連性認められずカナダ・西オンタリオ大学のDaniel G. Hackman氏らは,スタチン投与と脳出血(頭蓋内出血)リスクとの関連性は認められなかったとのシステマチックレビューとメタ解析の結果を,Circulation 10月17日オンライン版に報告した。近年,大規模ランダム化比較試験(RCT)でスタチン投与による脳出血リスクの増加が示唆されていた。 17のデータベースから42報を抽出脂質低下療法のRCTにおいて,スタチンを用いたより強力な治療が心血管イベント発生リスクを低下させたとするCholesterol Treatment Trialists'(CTT)Collaborationのメタ解析(Lancet 2010; 376: 1670-1681)がある一方で,脳卒中例への高用量スタチン投与で脳出血リスクをわずかながら増加させるとの報告(N Engl J of Med 2006; 355: 549-559)もあり,特に脳卒中既往例ではスタチン投与によるリスクとベネフィットが不確かであった。 そこでHackman氏らは,コクラン臨床試験レジストリー,Medline,米国立衛生研究所(NIH),米食品医薬品局(FDA),欧州医薬 品庁(EMEA)などの17のデータベースから,2人の独立したレビュアーが今年(2011年)1月までに,スタチンおよび脳出血の頻度について報告され たRCT 23報と観察研究19報を抽出。スタチンと脳出血リスクとの関連性をDerSimonian-Laird 法により検討した。 なお,スタチン併用による報告および,急性脳梗塞による血栓溶解療法後の出血に焦点を置いた報告は除外した。 心疾患発症抑制のベネフィットに比べリスク小さい42報の全対象者24万8,391例中,脳出血を来したのは1万4,784例。 RCT(追跡期間中央値3.9年)においてスタチン投与の脳出血のリスク比(RR)は1.10(95%CI 0.86~1.41,I2=30%,P=0.67),同等性の絶対リスク増加は0.27%(同-0.042~0.096)であり,脳出血との関連性は認められなかった(図1)。
また観察研究(追跡期間中央値3.0年)のうち,コホート研究(12報)におけるスタチン投与の脳出血のRRは0.94(同0.81~1.10,0%,P=0.67),症例対照研究(6報)では0.60(同 0.41~0.88,66%,P=0.06,図2)であり,いずれも有意差は認められなかった。
Hackman氏らは「スタチンによる脳出血リスクがあるとしても,心疾患発症抑制のベネフィットに比べるとリスクの程度は小さい可能性がある」 と指摘。脳梗塞の危険因子はアテローム動脈硬化性疾患と類似しているため,同氏らは「臨床医は冠動脈疾患イベント抑制のためにスタチン使用を継続すべき だ」と述べている。 (田上 玲子) 出典 MT pro 2011.10.21
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<関連サイト>
昨年,日本脂質栄養学会のガイドライン発行に伴い,コレステロールを低下させる医療の是非についてホットな議論が展開されました。
今回の論文を報告したCholesterol Treatment Trialists'(CTT)Collaborationは,すでに 2005年にランダム化比較試験(RCT)のメタ解析を報告しており,LDLコレステロール (LDL-C)を低下させることにより動脈硬化性疾患(冠動脈死,非致死性心筋梗塞,冠動脈再灌流,脳卒中)を20%程度減らせることを示しています(Lancet2005; 366: 1267-1278)。
脳卒中の結果については今回のCTT Collaborationの介入研究のメタ解析ではスタチン群・積極的スタチン使用群の方が成績が良かったが,PSCの観察研究ではTCと脳卒中死の間に関係性を認めることができなかった。
この差異の説明は困難であるが,PSCでは収縮期血圧の相違によりTCと脳卒中死の関係性が変化していることが示されている。
よって,血圧の影響が介在しており,直接的にコレステロールと脳卒中死の関係を評価できていない可能性がある。
今回のCTT Collaborationのメタ解析は血圧を含めた交絡因子の影響を理論的に除外できる介入研究のみを取り扱っており,この解析でスタチン群・積極的ス タチン使用群の方が脳卒中の成績が良かったことは,そのまま受け取ってよいように思われる。
出典 MT pro 2010.11.16(一部改変)
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石垣定哉「春のセーヌ」6F
http://www.umeda-garou.jp/kako2009.htm