“ハートチーム”による治療選択の重要性を強調
ACCF/AHA/SCAIがPCIガイドライン2011発表
米国心臓病学会財団(ACCF),米国心臓協会(AHA),心血管造影・インターベンション学会(SCAI)は,経皮的冠動脈インターベンション(PCI)施行時の患者管理に関するガイドラインを改訂し, Journal of the American College of Cardiology(2011; 58: e44-e122),Circulation(2011; 124: e574-e651),Catheterization and Cardiovascular Interventions(2011; オンライン版)に発表した。
この2011年版ガイドラインでは,PCIあるいは冠動脈バイパス術(CABG)の適用を含む治療方針の決定に, “ハートチーム”による集学的アプローチを取り入れることをクラスⅠの推奨事項としているほか,PCIとCABGの比較についても,かつてない規模でペー ジを割いている。
PCIとCABGの作成委員が合同で血行再建術の項目を作成
発表に当たって,ガイドラインのタスクフォース委員長であるAlice K. Jacobs博士は,今回のガイドライン改訂で目指した包括的目標について「エビデンスに基づいた臨床診療の指針を示すと同時に,妥当性を維持しながら, 使いやすさを向上させることにあった」と説明。
特に,使いやすさを向上させるための新たな試みとして,「ガイドライン中のエビデンスやサマリーは簡潔な表にまとめ,エビデンスレベルとともに推奨事項を分かりやすく表示したほか,参考文献もカラーの表にまとめた」ことを挙げている。
さらに,今回のガイドラインでは初めて,臨床での利便性を考慮し, PCIとCABGの作成委員が合同で血行再建術の項目を作成した。
PCIガイドライン作成委員会委員長のGlenn N. Levine博士は「2011年版のPCIガイドラインでは,冠動脈疾患(CAD)に対する血行再建術の推奨をまとめる上で,最大の協力体制が組まれた。 このセクションでは,どのような患者が血行再建術を受けるべきなのか,またCABGとPCIのどちらが適しているのかといった内容が検討されている」と説明している。
インターベンション専門医と心臓外科医の連携を推進
また,CABG,ST上昇型心筋梗塞(STEMI),安定虚血性心疾患,不安定狭心症/非STEMIなど複数のガイドラインで重複する草稿の作成 に当たっては,各ガイドラインの作成委員が協働してコンセンサス会議でまとめることで,ガイドライン全体の一貫性を保ちつつ,作成に必要な時間を短縮した。
ガイドライン作成委員会は今回のガイドラインで,こうした作成プロセスのほか,“ハートチーム”アプローチなどの新たな概念を提示。
特に,保護されていない左冠動脈主幹部病変あるいは複雑病変を有するCAD患者に対するPCIあるいはCABGの治療選択における“ハートチーム”アプローチの導入に
ついては,最高の推奨レベルであるクラスⅠの推奨事項としている。
このアプローチは,PCIとCABGの治療選択に当たってはインターベンション専門医と心臓外科医が連携して患者の状態を精査し,それぞれの治療選択肢の長所と短所を評価して,患者にその情報を推奨内容とともに伝えるというものである。
SYNTAXスコアによる評価を推奨
改訂ガイドラインのそのほかの特記事項としては,多枝病変を有する患者の治療法の決定に際してSYNTAXスコアによる評価が推奨されていることが挙げられる。
Synergy between Percutaneous Coronary Intervention with Taxus and Cardiac Surgery
PCIガイドライン作成委員会副委員長のJames C. Blankenship博士は「このスコアは,冠動脈造影所見を基にコンピュータによって算出され,CAD病変の程度や複雑さを測定し,分類するツールとして用いられている。計算は複雑だが,このスコアを用いて疾患の程度をより客観的に分類することで,CABGとPCIのいずれが適切かを決定する一助となるだろう」と述べている。
なお,同スコアが導入されたSYNTAX試験の結果はNew England Journal of Medicine(2009; 360: 961-972)に発表されている。
改訂ガイドラインではまた,初めてCAD患者に対する生存率と症状の改善を目的とした血行再建術に関して,解剖学的サブグループごとに推奨が示された。
同博士は「それぞれのサブグループについてデータを入手することはこれまでも困難で,データがない場合はガイドラインから除外せざるをえなかった。そこで,今回のガイドライン作成委員会ではエビデンスレベルがA(複数のランダム化比較試験や比較試験で支持)であれ,C(専門家の意見あるいは症例 研究で支持)であれ,それぞれのグループが含まれるよう広範囲にわたる調査を行い,データ収集に努めた」と説明している。
倫理的問題にも言及
Levine博士はまた,通常のステントあるいは薬剤溶出ステント(DES)の留置術の推奨に関して「慎重かつバランスの取れたアプローチが取られるよう特に留意した」としている。
例えば,狭窄の再発を予防するためのDESの使用はクラスⅠの推奨とする一方,まず医師がPCIの施行前に抗血小板薬2剤併用療法に患者が耐えられるか否か,また遵守されるか否かを評価すべきとする推奨も示されている。
そのほか,改訂ガイドラインは,PCIのインフォームド・コンセントや主治医が利害関係のある専門的施設に患者を紹介する(self-referral)問題,利益相反の可能性などの倫理的な問題についても触れている。
また,スタチン療法や血管閉塞デバイスの使用,外科のバックアップ体制がない医療機関におけるPCIの施行,術中の放射線データのモニタリングと記録に関する推奨も明記されている。
なお,今回のガイドラインはACCとAHAが新たに導入した「委員長を含む作成委員のうち50%超が関連業界との関係がないこと」とする方針に基づいて作成された。
出典 Medical Tribune 2012.2.2
版権 メディカルトリビューン社
徳島大学 佐田政隆教授の記事で勉強しました。
サブタイトルは「内皮機能の観点からイベント抑制を考える」 です。
脂質異常、高血圧、糖尿病、喫煙、肥満などの危険因子があると、酸化ストレスやレニンアンジオテンシン(RA)系などを介して内皮障害や炎症細胞の賦活化が起こり、動脈硬化が進展します。
これまでの報告からはRAS系が亢進するとプラーク破綻 が誘発されることが分かっており、大阪労災病院の星田氏らからは、ACS患者では血中のACE活性の亢進は検出できないものの、血管局所で亢進が認められたことが報告されています1)。
アンジオテンシンⅡは内皮機能の障害、酸化ストレスの増加などの悪影響をもたらします。
我々はマウスの実験でAT1aRが欠損するとコレステロール値が同じでも動脈硬化が半分になることを確認しており2)、 また、テルミサルタンを用いると、ヒドララジンと比べて動脈硬化がより強力に抑制され、脂質の沈着が減少し、不安定プラークを安定化させることを確認しま した。
つまり、アンジオテンシンⅡを遮断すると血圧が低下するのみではなく、炎症や内皮障害が抑制されることが分かっています。
我々は高血圧を合併したPCI施行患者40人をテルミサルタン群(メバロチン10mg/日+テルミサルタン80mg/日)、又は非テルミサルタン群 (メバロチン10mg/日+RAS系抑制薬を除く降圧治療)に無作為に割り付け、6ヶ月の追跡を行い冠動脈内プラーク組成に対する影響を比較しました。
本試験ではベアメタルステント(BMS)を留置しても良好な結果が得られると判断した大きな血管径の複雑でない病変に対してDriverステントを留置し、 ステント留置部位の4.5mm近位部のプラーク性状をIB-IVUSにて観察しました。
両群で血圧は同様に低下しました。
IB-IVUSによる観察で は、テルミサルタン群では線維性成分量がベースラインの48.1%から6ヶ月後は54.4%へと有意に増加したのに対し(p=0.03)、コントロール群 では57.5%から57.3%と変化はなく(p=n.s.)、脂質量はテルミサルタン群がベースラインの46.0%から6ヶ月後には38.4%へと低下し (p=0.03)、コントロール群では28.0%から27.7%と変化はありませんでした(p=n.s.)。
つまり、テルミサルタン群では線維性組織が増 え、脂質が減ったことから(図1)、半年間でプラークが安定化したと考えられます。
更に、テルミサルタンによるプラークの退縮も確認されました。
平均血管面積はテルミサルタン群、コントロール群の両群でベースラインと6ヶ月後とも差はなかったのですが、平均内腔面積はテルミサルタン群ではベースラインで7.9mm2、6ヶ月後は8.5mm2(p=0.03)と有意な増加を認めたのに対し、コントロール群ではそれぞれ8.0mm2と9.6mm2(p=n.s.)と差はありませんでした。
そして、プラーク量はテルミサルタン群では21.1mm3から19.4mm3へと有意に低下し(p=0.003)、コントロール群では差はありませんでした(両方21.8mm3: p=n.s.)。
また、冠循環局所採血を行い、炎症マーカーの測定をし、冠静脈 洞濃度-バルサルバ洞濃度と定義した冠循環血中濃度変化を見ると、CRPはテルミサルタン群とコントロール群に差はなかったのですが、PTX3、TNFα の変化率はコントロール群では変化はなかったものの、テルミサルタン群で有意差には至りませんでしたが、低下傾向が見られました。
動物実験からは、他のARBでも抗動脈硬化作用はあるものの、テルミサルタンではよりその作用が強いことを我々は確認しています。
その理由の1つにテルミサルタンは組織親和性が高く、目的臓器の組織へ移行しやすいという特徴が挙げられ3)、これが長時間の安定した降圧にも影響していると考えられます。
抗動脈硬化作用を有する薬剤として、PPARγ活性化作用を持つピオグリタゾンが近年注目されています。
しかし、新たな薬剤の追加は患者負担も大きくなります。
テルミサルタンはピオグリタゾンの1/3程のPPARγ活性化作用を持つことが確認されています4)。
我々も研究を行いましたが、PPARγを活性化すると脂肪細胞からアディポネクチンが増加しますが、テルミサルタンもピオグリタゾンと同様にアディポネクチンの発現を増加させることを確認しました(図2)。
従いまして、テルミサルタンは血管にも代謝にも有益な作用を持つ薬剤と考えられます。

また、我々のAT1ノックアウトマウスの実験でも、テルミサルタンを加えると付加的な抗動脈硬化作用が認められたことから、テルミサルタンにはARB以上の効果があることが証明されています(図3)5)。

1) Hoshida S, et al. Circulation. 2001; 103: 630-633
2) Fukuda D, et al. Arterioscler Thromb Vasc Biol. 2008; 28: 90-96
3) Kurtz T, et al. J Hypertens. 2004; 22: 2253-2261
4) Schupp M, et al. Circulation. 2004; 109: 2054-2057
5) Fukuda D, et al. Biomed Pharmacother. 2010; 64: 712-717
https://www.tcross.co.jp/specialtopic2010_2/index.php
読んでいただいて有り難うございます。
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心臓インターベンション医
放射線曝露に抵抗する防御反応が体内で促進
心臓カテーテル検査(以下,心カテ)を用いて治療を行う心臓病専門医(以下,心臓インターベンション医)は,一般の放射線科医と比べて年間2~3倍の電離放射線に被ばくするが,イタリア国立研究評議会(CNR)臨床生理学研究所(伊ピサ)のEugenio Picano所長らは「心臓インターベンション医では,低線量放射線に継続的に曝露されることにより,放射線の有害な影響に拮抗する作用と考えられる自発的な変化が細胞レベルで起こっていることが分かった」とEuropean Heart Journal(2011; オンライン版)に発表した。
こうした変化をエビデンスとして示したのは,今回の研究が初めてである。
アポトーシス感受性も亢進
今回の研究では,職業上定期的にX線にさらされている心臓インターベンション医10人において,血中のグルタチオンと過酸化水素(H2O2)濃度が上昇していることが分かった。
グルタチオンは抗酸化物質で,活性酸素種(ROS)による細胞損傷を防ぐ役割を果たしていると考えられており,H2O2はROSによる酸化ストレスの指標である。
これら化学物質の変化に加え,リンパ球では,細胞のアポトーシスの誘導に関与する酵素カスパーゼ-3の発現が亢進していた。
研究責任者のPicano所長は「心臓インターベンション医では,放射線被ばくのない人と比べ,H2O2濃 度が3倍に上昇していた。
これは,放射線による有害な変化が細胞レベルで増大していることを示している。
しかし,その一方でグルタチオンが約2倍に上昇していること,白血球のアポトーシス感受性が高まっていることは,こうした有害な変化に対する防御反応の促進を反映していると思われる。
細胞のアポトーシス 感受性亢進は,DNAが損傷し,がん細胞になりうる細胞を排除するための防衛機構と考えられる」と述べている。
有益か有害かはまだ不明
筆頭研究者でCNR食品化学研究所(伊アベリーノ)の上級研究員であるGian Luigi Russo博士は「心臓インターベンション医では,規制基準では“安全”と考えられている一定レベルの放射線への曝露が,複雑な生化学的適応反応や細胞適 応反応を誘発する可能性が示された。
また,そうした反応により抗酸化防御が改善され,これら医師の体内で増大したROS濃度とのバランスが保たれていることも示唆された」と述べている。
さらに「こうした変化が適応上の有益な変化であるのか,それとも臨床的に重要な有害な変化の前兆であるのかはまだ明らかではない。なぜならDNA損傷や酸化ストレス,アポトーシス感受性の増大は,さまざまな疾患の発症に関与しているからだ」と指摘している。
線源近傍という作業環境が要因
職業上,電離放射線に曝露される人口は,軍人を除いても世界中で約2,300万人と多く,うち約700万人は医療従事者であるが,代表的なものとして心臓インターベンション医のX線被ばくや核医学者のγ線被ばくなどが挙げられる。
過去20年間に心カテの施行件数は増加してきており,それに伴い心臓イン ターベンション医が放射線に曝露される機会も増えている。
米国の心カテ施行件数は,1993年の245万件から2006年には460万件へと増加しており,欧州でも同様の傾向が見られる。
Picano所長によると,こうしたカテーテルインターベンションを施行された患者は,1回当たり胸部X線撮影300~5,000回に相当する大量のX 線を浴びる可能性がある。
経皮的冠動脈インターベンション(PCI)や心臓ラジオ波焼灼術による平均被ばく量は,胸部X線撮影750回分に相当する。
心臓インターベンション医の職業的被ばく量は放射線科医の3倍相当で,1人当たりの年間被ばく量が胸部X線撮影250回分に達しているのは,放射線源の近傍で 作業しなければならないという職業環境が原因である。
生涯リスクの推算にはまだ不明瞭な点もあるが,30年間従事することにより,約100人に1人ががん を発症するほど,生涯リスクが増大するという。
意識付けで被ばく量は90%削減可能
今回の研究では,心臓インターベンション医10人と放射線被ばくのない医療従事者10人を比較した。
前者の放射線曝露量は,着用している放射線バッジから入手し,そのデータに基づいて生涯予想被ばく量を算出した。
また,血液を採取し,グルタチオンとH2O2の血中濃度,さらに分離したリンパ球のカスパーゼ-3活性を調べた。
Russo博士は「今回の知見は,臨床的にも科学的にも示唆に富んでいる」とコメントしている。カテーテル処置室に「放射線を防ごう」という風潮が根付 いていれば,同じ治療行為を行っても,医師や他のスタッフ,患者の被ばく量を90%削減できることが示されていることに言及。「したがって,心臓インター ベンション医は,被ばく量を最小限にとどめるよう日常の業務であらゆる努力を払うべきである」と指摘している。
また,「心臓インターベンション医は,慢性的な低線量被ばくの影響を調べるのに適した特異な集団である」と説明している。
イタリアでは現在,この問題を 検討するHealthy Cath Lab研究という大規模研究が進行中であるという。
同博士は「同研究は“心臓インターベンション医による心臓インターベンション医を対象とした心臓イン ターベンション医のための研究”で,慢性的な低線量被ばくのがんまたは非がんに関する影響を解明することを目的としている」と述べている。
さらに「優秀な心臓インターベンション医は,救命のための放射線を恐れるべきではないが,それと,放射線に対して認識不足なことや無頓着であることとは全く異なる」と付け加えている。
認識を高め防御手段を講じるべき
ヨハネス・グーテンベルク大学医療センター(独マインツ)心臓医学部門のThomas Münzel教授とTommaso Gori博士は,同誌の付随論評(2011; オンライン版)で,今回の研究の限界として
(1)小規模研究であること
(2)関連機序に関する洞察が不完全であること(3)BMIの差
(4)他の心血管危 険因子に関する情報が欠落していること
—などを指摘している。
その一方で,興味深い研究であるとして「心臓インターベンション医の体内では,放射線による 酸化ストレス(より正確には放射線ストレス)が起こりやすいが,幸いにもそれに拮抗する抗酸化防御が働くようだ」と述べている。
また,心臓インターベンション医自身が認識を高め防御手段を講じるべきであることと,さらなる研究が必要である点に関してRusso博士らに賛同。
「電離放射線の影響はまだ完全には理解されておらず,心臓インターベンション医は患者,同僚,また自身においても,あらゆるリスク低減策を講じる必要がある。 現代の画像診断技術は目覚ましく,また複雑で長時間にわたるインターベンション手技を成功させた後には相当な自己充実感が得られるのは確かだが,これらと 手技の費用,臨床的有用性,リスクとの間でバランスを図ることが重要で,中でも長時間放射線に曝露される術者のリスクについては注意を払う必要がある」と述べている。
出典 Medical Tribune 2011.11.17
版権 メディカル・トリビューン社
<一口メモ>
カルシウム拮抗薬とグレープフルーツの相互作用
かなり強い
ムノバール(一般名フェロジピン)、バイミカード、アダラート
強い
カルブロック、カルスロット、バイロテンシン
やや強い
ベラパミル、ランデル、ペルジピン
少ない
アムロジン、ヘルベッサー
(ベニジピン?)
~緊急PCIと待機的PCI~ 米で適正な施行の割合に差
聖ルカ・ミッド米国心血管研究所(ミズーリ州カンザスシティー)のPaul S. Chan博士らは,50万件超の経皮的冠動脈インターベンション(PCI)データを解析し,PCIの広範な適応の妥当性を検討した。
その結果,緊急PCIではほぼ全例が適正な施行理由を伴っていたのに対し,待機的PCIでは適正に施行されていたのは約半数のみであることが分かった。
詳細はJAMA(2011; 306: 53-61)に発表された。
6学会合同基準に基づいて分類
PCIは,バルーン血管形成術やステント留置を用いて狭窄した冠動脈を再開存させる手技である。
米国では年間約60万件のPCIが施行されており,総費 用は120億ドルを超えている。
PCI施行患者は,周術期合併症と長期の出血,ステント血栓症リスクにさらされる。
さらに,急性冠症候群を伴わない病状が安定した患者を対象とした最近の試験により,PCIによる症状緩和は薬物療法と比べ,人口平均値を若干改善するにすぎないことが示唆されている。
論文の背景説明では,PCIの費用と侵襲性の高さから判断すると,適正なPCIと不適正なPCIの施行範囲を把握することにより,PCIにおける質的改善,コスト削減が可能な領域を同定できるかもしれないとしている。
Chan博士らは「PCIに関するこれまでの研究は,PCIが現在のように進歩する以前に行われている。また,現在では多くの冠動脈血行再建術に関する臨床試験が実施されているが,これらの研究はそれ以前に実施されているものが多い」と指摘している。
2009年に米国の関連6学会は,PCIの合理的かつ賢明な適用を促進するために,冠動脈血行再建術の適正施行基準(Appropriateness Criteria for Coronary Revascularization)を合同で策定した。
今回の研究では,全米心血管データ登録より2009年7月から2010年9月の間に米国の 1,091施設でPCIを施行された患者のデータを抽出し,同基準に基づいて緊急PCIと待機的PCIのそれぞれで適応理由を「適正」,「不適正」,「適正性不明」の3通りに分類して定量化を試みた。
緊急PCIはST上昇型急性心筋梗塞(STEMI),非ST上昇型心筋梗塞(NSTEMI),高リスクの不 安定狭心症に対するPCI施行とし,待機的PCIと層別化した。
ST上昇は心筋梗塞心電図の特徴的所見の1つである。
不適切な施行の比率に施設間格差
計50万154件のPCI施行のうち,10万3,245件(20.6%)がSTEMI,10万5,708件(21.1%)がNSTEMI,14万 6,464件(29.3%)が高リスクの不安定狭心症,14万4,737件(28.9%)が緊急性の低い選択的PCIであった。
さらに,冠動脈血行再建術 の適正施行基準に基づくと,前3者の計35万5,417件(71.1%)が緊急PCI,後者の14万4,737件(28.9%)が非緊急PCIとなる。
緊急PCIの適応理由の58.8%を心筋梗塞が,残り41.2%を不安定狭心症が占めていた。
緊急PCI群は,そのほとんど(98.6%)が「適正」な適応に分類され,「適正性不明」は0.3%,「不適正」は1.1%であった。
一方,待機的 PCIで「適正」と分類されたのは50.4%にすぎず,38.0%が「適正性不明」,11.6%が「不適正」であった。
全体的に,「不適正」なPCIに分類された群では,「適正」または「適正性不明」に分類された群に比べ,狭心症状を伴わない患者や非侵襲的負荷試験で低リスクであった患者,狭心症治療が最適でなかった患者が多かった。
さらに,不適正な待機的PCI施行率には,施設により著明なばらつきが認められた。
四分位範囲による検討で,不適正なPCIの比率が最低四分位に属する施設では,不適正なPCIの施行率が6%未満であったのに対し,最高四分位に属する施設では16%を超えていた。
この解析結果は,同一病態の患者が別々の施設で治療を受けた場合,一方の施設では他方と比べ不適正なPCIが施行される確率が80%高まる可能性を示唆している。
Chan博士は「総合的に見て,今回の知見は緊急性の低い患者に対するPCI適応基準の検討と改善について,重要なきっかけを提供するものである」と指摘。
さらに「質的改善を図るためには,不適正なPCI施行を生み出している臨床的条件をさらに解明し,施設間の格差を是正することに焦点を合わせるべきで ある」とコメントしている。
出典 Medical Tribune 2011.10.20
版権 メディカル・トリビューン社
<自遊時間>
■「先天性二尖弁」は日本人、欧米人ともに1~2%の割合で患者がいるといわれ、前カリフォルニア州知事で米俳優、アーノルド・シュワルツェネッガー(64)も手術を受けたことで知られる。
<関連サイト>
があります。
~PCI前の至適薬物療法~ 実際の施行は半数に満たず
コーネル大学Weill医学部(ニューヨーク)のWilliam B. Borden博士らは「経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を施行する安定冠動脈性心疾患(CAD)患者に対して,至適薬物療法(OMT)を行うことの重要性がガイドラインで強調されているにもかかわらず,PCI前にOMTを受けている患者は半数に満たず,PCI後の退院時にOMTを受けていない患者も約3分の1に上ることが分かった」とJAMA(2011; 305: 1882-1889)に発表した。
<私的コメント>
この結果はあくまでも米国でのものです。
例えが悪いかも知れませんが(悪いですが・・汗)JAMAは、いわば日本医師会雑誌の米国版です。
安定CAD患者でPCIの有益性認められず
急性冠症候群(ACS)患者では,PCIによるアウトカムの改善が期待できるが,安定CAD患者ではPCIとOMTで心血管イベント率に差はないことが複数の臨床試験で示されている。
例えば,11件の臨床試験を対象としたメタアナリシスからは,安定CAD患者では,心筋梗塞や死亡を予防する上でPCIの有益性は認められないとの結論が導かれている。
また, OMTにPCIを加えた場合とOMTのみの場合で比較したCOURAGE試験(Clinical Outcomes Utilizing Revascularization and Aggressive Drug Evaluation)でも,安定CADでは狭心症発作に関連するQOL以外のアウトカムにおいて同等性が示されている。
しかし,日常臨床でPCI前にどの程度OMTが施行されているのか,また2007年3月の同試験の結果発表後にOMTの施行が増加したかどうかは不明であった。
そこで,Borden博士らは今回,National Cardiovascular Data Registry(NCDR)のデータを用いて,PCI前後のOMTの施行状況を調査し, 同試験発表後のOMT施行率の変化について検討した。
対象は2005年9月~09年6月にPCIが施行された安定CAD患者とした。
OMTは,抗血小板薬,β遮断薬,スタチン系薬のすべての薬剤の処方を受けている(ただし,これらの薬剤のいずれか,あるいは全薬剤が禁忌であることが確認された場合は,処方されていなくてもOMTと見なす)と定義した。
<私的コメント>
ごこ最近、某教授の講演を某所で聴く機会がありました。
その中で、米国の雑誌に投稿しても日本からの(梗塞二次予防に関する)投稿論文がβ遮断薬よりCCBが多く処方されていることにEditorから指摘を受ける、ということを話されていました。
懇親会で少しお話をする機会がありましたが、とてもopenheartedな教授で「ブログを時々覗いてます」 という嬉しい言葉をいただきました。
偉い先生なのですが、少しも偉ぶらず随分好印象でした。
以前、東北大学のS教授にも懇親会で少しお話させていただきましたが、循環器学にかける情熱やopenでtruthfulな態度は大いに感心しました。
二人の教授ともに、これからの日本循環器学会を背負って立つ立場にある方です。
これからの日本循環器学会は明るいと確信しました。
(ちょっと従来の「偉い」方々とは違うと感じました)
大幅に改善の余地あり 解析対象は46万7,211例で,そのうち17万3,416例(37.1%)がCOURAGE試験前に,29万3,795例(62.9%)が試験後に PCIを受けていた。また,20万6,569例(44.2%)はPCI前に,30万3,864例(65%)は退院時にOMTが施行されていた。 PCI前にOMTが施行された患者の割合は,同試験前の43.5%から試験後には44.7%に有意に増加したが,臨床的意義はほとんどなかった。46カ月の観察期間におけるPCI前のOMT施行率を月ごとに見ると,2005年9月の43.4%から2009年6月には45.0%とわずかながらも増加傾向に あった。 PCI後の退院時のOMT施行率は,同試験前の63.5%から試験後には66%に増加していた。 Borden博士らは,今回の研究結果について「PCI前にOMTを施行することで血行再建によるさらなる効果が期待できることから,ガイドラインでは OMTの施行を推奨しているにもかかわらず,実際にPCI施行前にOMTを受けた患者は半数に満たないことが明らかになった。また,このような診療パターンは同試験の発表後もほとんど変化していなかった」と結論付けている。 さらに,「退院前のOMT施行は増加し,抗血小板薬はほぼ例外なく処方されていたが,患者の約3分の1は依然OMTを受けておらず,同試験の発表後もこ のパターンに変化は見られなかった。全体的に改善の余地は多いにあり,費用をかけて大々的に発表される臨床試験の結果が日常臨床に及ぼす影響は限定的であ ることも示唆された」と付言している。
出典 Medical Tribune 2011.10.13
版権 メディカルトリビューン社
<私的コメント>この論文から、われわれは何を学ぶべきでしょうか?いうまでもなく、本来循環器内科医はあくまでも(思慮深い)内科医です。インターベンショニスト (昔は「カテ屋さん」とか「風船屋さん」とか、カテのできない旧来の循環器内科医から、ある種の「憧れ」と「皮肉」を込めて言われていました)が、知らぬ間に「外科医化」しているということに対する警鐘と捉えるべきなのでしょうか。
<関連サイト>循環器内科医
読んでいただいて有り難うございます。コメントをお待ちしています。その他「葦の髄」循環器メモ帖 http://yaplog.jp/hurst/(循環器専門医向き)ふくろう医者の診察室 http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy(一般の方または患者さん向き) 井蛙内科/開業医診療録(4)2009.10.16~http://wellfrog4.exblog.jp/井蛙内科/開業医診療録(3)~2009.10.15http://wellfrog3.exblog.jp/井蛙内科/開業医診療録(2)2008.12.10~http://wellfrog2.exblog.jp/井蛙内科/開業医診療録~2008.5.21 http://wellfrog.exblog.jp/ (内科医向き) 「井蛙」内科メモ帖 があります。