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ESC心不全ガイドライン
http://blog.m3.com/reed/20081130/ESC_
で勉強しました。
きょうはβ遮断薬の反応性予測に遺伝子多型評価が役立つ可能性があるという内容の記事を勉強しました。
〜β遮断薬の反応性予測〜
遺伝子多型評価が役立つ可能性
心筋梗塞患者の心不全発症・進展に対するβ遮断薬の抑制効果は,アンジオテンシン II 1型受容体(AT1R)の遺伝子多型の有無で異なる可能性のあることが,大阪大学大学院循環器内科学の坂田泰彦氏らにより報告された。
A1166C多型で予後不良
心筋梗塞発症後のβ遮断薬投与は,国内外のガイドラインで推奨されている。
日本人に冠攣縮が多いことから,わが国では従来,積極的に使用されることが少なかったが,近年は投与例が増える傾向にある。
坂田氏によると,大阪急性冠症候群研究会(OACIS)登録症例では,ST上昇型心筋梗塞症例における退院時β遮断薬処方率が年々上昇しており,2004~06年には50%を超えたという。
ただし,β遮断薬ではノンレスポンダーの存在が指摘されている。
2001年に報告された臨床試験BEST(the Beta-blocker Evaluation Survival Trial)では,bucindolol(日本非使用)による生命予後改善が黒人では認められなかった。
β遮断薬の反応性を事前に予測しようと,患者背景,臨床指標や生化学的指標との関係が解析されてきたが,最近はさらに,遺伝子マーカーによる予測の研究が進んでいる。
同氏らが今回検討したのは,遺伝子多型による予測の可能性である。
対象はOACIS登録症例で,遺伝子や生化学的指標の研究に承諾が得られた心筋梗塞後生存退院例2,460例。
うち969例(39%)にβ遮断薬が処方されていた。
取り上げた遺伝子多型は,交感神経系が,β1,2,3 受容体の遺伝子多型として日本人に高率に認められ,既に機能が明らかにされている6種,レニン・アンジオテンシン(RA)系がACE,AT1R,アンギオテンシノーゲン,チトクロームP450(CYP)11B2の遺伝子多型各1種,計4種。
これらの有無と予後(ポンプ失調死,心不全再入院)との関係を調べたところ,β遮断薬投与例においては,AT1RのA1166C多型群で心不全発症抑制効果が低く,ハザード比は2倍以上になることがわかった。
この結果から,同氏は「β遮断薬による心筋梗塞後の心不全発症・進展抑制効果の予測に遺伝子多型評価が有用である可能性が示唆された」と結論した。
出典 Medical Tribune 2008.11.13
<関連サイト>
[PDF] β遮断薬に対する反応性予測に有用な遺伝子多型 薬学研究科 東 純一 ほか
https://seeds.casi.osaka-u.ac.jp/image/SEEDS/0010136/0010136.pdf
第6回CARDIOLOGY FRONTIER 2007 (2)臨床研究から得られた知見
http://www.lifescience.jp/ebm/cardiologyfrontier/no6/theme23_06.html
収縮機能障害を主徴とする慢性心不全患者には,禁忌がない限りβ遮断薬を試みるべきである。レスポンダー予測にはβ1受容体389番目の遺伝子多型が有用であることが欧米のデータからわかっているが,本邦の心不全患者については不明である。これについてはわが国のエビデンスづくりが急務である。またわが国では心不全の原因として拡張型心筋症による心不全が相対的に多く,β1受容体第2細胞外ループに対する自己抗体の存在が新たなレスポンダー予測因子となることが示された。
第4回CARDIOLOGY FRONTIER 2005 (5)収縮不全 岡本 洋
http://www.lifescience.jp/ebm/cardiologyfrontier/no4/theme3.html
J-CHF試験は,日本人におけるβ遮断薬carvedilolの至適用量,あるいは反応性をさまざまな臨床的指標で検定するためのエビデンスを構築できることが期待される(図4)。β遮断薬治療は有効な治療であるが,さらに治療を最適化すれば,治療の一般への普及も進むと考えられる。
バチスタ手術体験記 拡張型心筋症の治療方法 薬物治療2
http://home.b00.itscom.net/snakajii/batista/chiryo/dcmchiryo12.html
テノーミンを知りたい β遮断薬による治療戦略 第2回 肥満をともなう 高血圧の治療戦略
http://med.astrazeneca.co.jp/disease/tenormin/no2index.html
[PDF] Page 1 参加施設最新状況 参加表明施設は 施設となりました。
http://poppy.ac/j-chf/doc/webnews5.pdf
心不全の病態・診断・治療
http://www.gik.gr.jp/~skj/lecture/okamoto03.php3
(われわれ循環器開業医にとって素晴らしいサイトです)
<自遊時間>
ハーバード大学医学部出身のマイケル・クライトン氏についいぇは以前にこのブログで取り上げました。
心筋梗塞と誘発性冠攣縮
http://blog.m3.com/reed/20081108/1
昨日(2008.12.3)の朝日新聞の文化欄に追悼記事が掲載されていました。
マイケル・クライトン氏
http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy/27859669.html
他に
ふくろう医者の診察室
http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き)
「井蛙内科/開業医診療録(2)」2008.5.21~
http://wellfrog2.exblog.jp/
「井蛙内科/開業医診療録」 ~2008.5.21
http://wellfrog.exblog.jp/
があります。
JUPITER試験については
JUPITER試験
http://blog.m3.com/reed/20081112/JUPITER_
でとりあげました。
そして、そのブログに対してコメントもいただきました。
予防心臓病学における真に画期的な事件!JUPITER試験に示されたロスバスタチンの効果
http://drarbeit.blog45.fc2.com/blog-entry-329.html
続、JUPITER
http://drarbeit.blog45.fc2.com/blog-date-20081116.html
hsCRPが早く保険適応となるといいのですが、自己負担してもらってでも検査したい項目ではあります。
しかし、混合診療に抵触するので思い通りにはいきません。
何か名案はないものでしょうか。
同じように調べてみたい検査項目にアディポネクチンがあります。
11月30日の日曜日に出かけた「医療機器フェア」で大塚製薬のブースでヒトアディポネクチンラテックスキットが紹介されていました。
一部の検査センターでは受託しているとのことでした。

さて、きょうは、このJUPITER試験発表の後日談で勉強しました。
JUPITERで議論白熱!?
NEJMがHP上でコメントを募集―その中身とは
低LDLコレステロール(LDL-C),C反応性蛋白質(CRP)高値の健常成人へのスタチンによる心血管疾患初発予防効果を検証したJUPITER(Justification for the Use of Statins in Prevention: an Intervention Trial Evaluating Rosuvastatin)の結果がNEJM(2008; 359: 2195-2207 )で発表された。
同誌では同試験論文をオンラインで配信した当日から,ホームページにClinical Directions“JUPITER Trial: Will You Change Your Practice ? ”と題した読者投票コーナーと書き込み欄を設置,2,500件を超える投票と500件近くのコメントが寄せられた。
論文のオンライン発表と同時に試験結果への投票・書き込み欄を設置
折しも同試験発表前の10月30日,同誌オンライン版でCRPの遺伝子多型がCRP値上昇と関連するものの,虚血性の脳・心血管疾患発症との直接の因果関係は認められなかったというデンマークの研究グループの報告が出された(N Engl J Med 2008; 359: 1897-1908 )。
JUPITERでは,低LDL-C,高CRPの人に対するロスバスタチン(20mg/日)の投与(追跡期間中央値1.9年)でLDL-Cと高感度CRP(hsCRP)値の著明な低下とともに,初回心血管イベントならびに総死亡の有意な抑制が示された。
回答が締め切られた翌日(11月27日)時点の集計によると,「同試験結果から健康成人に対する現在のスクリーニング検査を変更すべきと考えるか否か」という質問に対してはYesが49%,Noが51%,「同試験結果から健康成人に対するスタチンの使用方針を変えるべきか否か」についても,Yesが48%,Noが52%と意見が相半ばした。
CRPの意義について賛成派,慎重派に意見分かれる
書き込み欄から同試験に対する肯定的意見を拾ってみると,「動脈硬化の病態メカニズムが臨床的に実証された」,「感染などによる慢性的な炎症も動脈硬化の進展に関わることを考えると,脂質プロフィールを問わずスタチンでCRPを抑制することが心血管予後の改善につながる」といったCRPならびに高CRP者に対するスタチンの心血管疾患初発予防の意義を認めるコメントが目に付いた。
否定的な意見には「対象者の約40%がメタボリックシンドロームで“健康”成人と定義してよいのか」,「number needed to treat(NNT)が高すぎる」といったCRPの意義というよりむしろ,試験デザインや結果解釈に関するものが多かった。
ほかにも,「企業主導の試験」,「(試験実施者の一人で,CRP研究の第一人者でもある)Paul Ridker氏はhsCRPマーカーに利益相反がある」といったインターネットらしい(?)書き込みも見られた。
また,10月30日の上記論文に関する言及がいくつかあったほか,「心血管疾患患者に対するスタチン投与でCRP低下を介した予後改善のエビデンスはあるが,初発予防に関して最終的な評価を下すにはさらに検証が必要では」というような,慎重派のコメントも散見された。
読者による投票とコメントは同誌ホームページ上の当該論文内で閲覧可能。
CRPの位置付けについては今後も検証が続くものと見られるが,老舗医学雑誌である同誌が,試験結果と同時にオープンな議論の場を提供したことは驚きだ。
ただ,今後同様のケースはさらに増えていくのかもしれない。
出典 MTpro 2008.11.28
版権 メディカル・トリビューン社
<関連サイト>
CRPと高感度CRPの違いを教えてください。
http://www.crc-group.co.jp/crc/q_and_a/08.html
■従来、CRP検査法は主にTIA法が使用されていましたが、M蛋白血症やRF陽性の患者血清では非特異的反応による乖離が報告されています。新しく開発されたLA法はTIA法に比較して高感度であり、低濃度から高濃度域まで精度良く正確に測定できます。
■新しいCRP検査は炎症マーカーCRPに高感度CRPを兼ね備えた検査方法といえます。
(コメント:新CRPのLA法は高感度CRPの代用として使えるかも知れません)
hsCRP関連 2題
http://blog.m3.com/reed/20081129/hsCRP_
昨日(2008.12.1)のブログ
64列CTによる冠動脈造影の診断
http://blog.m3.com/reed/
に一部追加しました。
他に
ふくろう医者の診察室
http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き)
「井蛙内科/開業医診療録(2)」2008.5.21~
http://wellfrog2.exblog.jp/
「井蛙内科/開業医診療録」 ~2008.5.21
http://wellfrog.exblog.jp/
があります。
N Engl J Med誌に掲載された心臓MDCTの論文で勉強しました。
いつも思うのですが、インパクトファクターがハイスコアであるN Engl J Med誌やLancet誌に掲載された論文がはたして各専門分野での本当にすぐれた研究なのでしょうか。
具体的に循環器領域で考えた場合に、これらの医学誌に掲載された論文がはたしてJACCなどにアクセプトされるでしょうか。
医学誌にはそれぞれ特徴があると思うのですが、先生方はどう思われますでしょうか。
たとえばLancetに掲載されたJ・・・ Study。
N Engl J Med誌には方法論的にまずは掲載されない、とある講演で聞きました(オフレコ?)。
きょうの論文の結論である「マルチスライスCT血管造影は現段階では従来の血管造影の代替法とはなりえないことが示唆される」。
何だか至極ごもっともな結論のような気がします。
Diagnostic Performance of Coronary Angiography by 64-Row CT
J.M. Miller and others
背 景
64 列マルチスライス CT による血管造影の診断精度は十分には明らかにされていない。
方 法
冠動脈疾患の疑いのある患者を対象に,0.5 mm×64 列マルチスライス CT 血管造影の診断精度を,従来の冠動脈造影と比較・検討することを目的として多施設共同試験を実施した。
9 施設において,従来の冠動脈造影を受ける前にカルシウムスコアリングとマルチスライス CT 血管造影を受けた患者を登録した。
カルシウムスコアが 600 以下の 291 例について,独立した中央検査所で直径 1.5 mm 以上の部位を CT と従来の血管造影を用いて分析した。
50%以上の狭窄を閉塞とした.受信者動作特性(ROC)曲線の曲線下面積(AUC)を用いて,従来の血管造影と比較した診断精度とその後の血行再建術の施行状況を評価し,修正 Duke 冠動脈疾患指標(modified Duke Coronary Artery Disease Index)を用いて疾患の重症度を評価した。
結 果
計 56%の患者に閉塞性冠動脈疾患が認められた。
従来の血管造影での 50%以上の狭窄の検出・除外に対する定量的 CT 血管造影の患者ごとの診断精度は,AUC 0.93(95%信頼区間 [CI] 0.90~0.96),感度 85%(95% CI 79~90),特異度 90%(95% CI 83~94),陽性適中率 91%(95% CI 86~95),陰性適中率 83%(95% CI 75~89)であった。その後血行再建術を受けた患者を同定する能力は,CT 血管造影と従来の血管造影で同等であり,AUC はマルチスライス CT 血管造影で 0.84(95% CI 0.79~0.88),従来の血管造影で 0.82(95% CI 0.77~0.86)であった。866 の血管を血管ごとに解析したところ,AUC は 0.91(95% CI 0.88~0.93)であった。
CT と従来の血管造影で確認した疾患重症度には,高い相関が認められた(r=0.81,95% CI 0.76~0.84)。
CT 血管造影の施行後,2 例で造影剤に対する重大な反応がみられた。
結 論
マルチスライスCT血管造影により,有症状患者における閉塞性冠動脈疾患の有無や重症度,その後の血行再建術の施行状況が正確に同定される。
しかし,陰性・陽性適中率からは,マルチスライスCT血管造影は現段階では従来の血管造影の代替法とはなりえないことが示唆される。
http://www.nankodo.co.jp/yosyo/xforeign/nejm/359/359nov/xf359-22-2324.htm
(N Engl J Med 2008; 359 : 2324 - 36 : Original Article)
<原著>
Diagnostic Performance of Coronary Angiography by 64-Row CT
http://content.nejm.org/cgi/content/short/359/22/2324
<関連サイト>
MDCTによる心臓画像診断の進歩
診断・経過観察目的のCAGはCTに移行へ
http://mtpro.medical-tribune.co.jp/article/view?phrase=64%E5%88%97%EF%BC%A3%EF%BC%B4&perpage=0&order=0&page=0&id=M4012741&year=2007&type=allround
出典 MTpro 2007.3.22
版権 メディカル・トリビューン社
■ 心臓MDCTは低侵襲性に加えて,血管内腔だけでなく,血管壁のプラークの性状に関する情報が得られる利点が注目され,カテーテル挿入による冠動脈造影(CAG)に代わる診断法となりつつある。
■ 冠動脈有意狭窄に関する陰性的中率が97%以上と高く,急性冠症候群(ACS)の除外診断に優れるが,CAGに比べて空間分解能がやや劣り,被曝線量が多いなど課題もある。
CAGは,空間分解能に優れ,診断時に必要に応じて治療に移行できるが,(1)侵襲的で入院が必要な場合がある
(2)血管内腔の情報しか得られない
(3)術者の技量に診断が左右されやすい
など問題点もある。
一方,64列CTは造影剤を経静脈的に急速注入した後,10秒ほど息止めをして,冠動脈が造影されたタイミングで心臓を撮影し,画像再構成により血管内腔を描出する。
(1)低侵襲
(2)血管内腔とともに血管壁のプラークの性状に関する情報も得られる
(3)外来で施行できる
(4)経費も3万円程度と比較的安い
などの利点がある。
しかし,
(1)CAGに比べて空間分解能がやや劣る
(2)被曝線量がCAGに比べてやや多い
(3)血管壁の石灰化が高度な場合は評価が困難
(4)撮影中の心拍変動や不整脈により画質が劣化する
など課題も残されている。
■ 冠動脈CTでは,すべての心時相に対して連続的にヘリカルスキャンを行い,後で必要な心時相を選ぶために,CAGに比べて被曝線量が多くなる。被曝低減の試みとして,一般的に収縮期にX線照射を低減するECGモジュレーションという手法が用いられ,被曝線量を約25%低減できる。
■ 近年, ACS発症前30日以内のCAGの結果から,冠動脈狭窄50%以下の患者が全体の約 7 割を占めており,狭窄が必ずしも高度でなくてもACSを発症することが明らかにされている。
ACSのなかでも,ST非上昇型心筋梗塞,不安定狭心症は心筋壊死が生じていないか軽度であるため,非定型的胸痛を呈し,心電図異常やトロポニン値などの血清酵素上昇を伴わない場合が多い。
こうした患者をいかに的確に診断し,心筋梗塞の進展や死亡を予防するかが重要な治療戦略となっている。
ACSの発症機序として,冠動脈プラーク破綻とそれに引き続く血栓形成が考えられていることから,その予防には冠動脈の有意狭窄に加えて,脆弱性プラークの形態学的異常を検出することが合理的と考えられる。
■ 脆弱性プラークの形態学的特徴としては,
(1)脂質コアが大きい
(2)線維性被膜の菲薄化
(3)血管リモデリングの存在
などが知られている。
このうち,心臓MDCTでは,CT値の測定により脂質コアの性状,血管リモデリングが評価できる。
一方,64列CTの空間解像度では薄い線維性被膜(50~100μm)については検出できない。
■ 脂質に富むプラークはCT値が50HU以下,線維質主体のプラークは51~119 HU,石灰化プラークは120HU以上を示すといわれている。
■ 低CT値を有する患者の心血管事故は高度冠動脈狭窄がなくとも高い。
■ 冠動脈内腔が40%以上狭窄すると,冠動脈径が代償的に拡大する陽性リモデリングが生じるが,プラーク容積はむしろ増大し,プラークが破綻しやすくなる。
■ 現在,国内で年間50万件以上施行されているCAGの約 7 割が診断目的と言われており,その大部分はMDCTで代替できると考えられる。
■ 心臓MDCTは,放射線被曝や造影剤投与を伴うため,原則として無症状の患者や検診目的に使うべき検査ではなく,胸痛,非定型的胸痛を伴う患者に限定すべきだと考えられる。
その他の胸痛や無症状の患者に対する冠動脈疾患のスクリーニング目的では,放射線被曝や造影剤を必要としない心臓MRAが普及していくと予想される。
心臓MRAは診断精度の高い機種が開発されてきており,腎機能の低下した患者や高齢者も多いため,胸痛患者のトリアージにもMRAが多く使われるようになることが予想される。
■ 冠動脈MDCTあるいはMRA導入後の冠動脈疾患の診断・治療戦略については,胸痛があれば,MDCTでプラーク評価を行い,有意狭窄がなければ内科的治療の適応になる。
胸痛がなく,有意狭窄やプラークが認められる場合は運動または薬物負荷試験を行い,心筋虚血が認められた場合,経皮的冠動脈インターベンション(PCI)や冠動脈バイパス術(CABG)の適応となる。
術後のフォローアップは,MDCTによりステント挿入後の血管内腔も詳細に観察できる。
■ MRIは高い濃度分解能を有し,心筋の性状評価や灌流,梗塞巣の描出などに優れている。一方,MDCTはMRIよりも高い空間解像度を有し,診断能が機種やハード面に依存する部分も少ない。
冠動脈疾患の形態評価には,検査の適応が明確であればMDCTを第一選択とし,MRAを選択するのは腎機能低下,ヨード造影剤アレルギー,高度な冠動脈石灰化を有する場合,被曝により慎重であるべき小児などに限定している。
■ 冠動脈MDCTは陰性的中率が非常に高く,冠動脈の有意狭窄がないという否定診断に有用なことが示されている。
多くの文献では,16列CTの検討では感度80~90%,特異度85~95%,陰性的中率97%,評価不能のセグメントが10~15%。64列CTでは診断精度がさらに向上し,感度,特異度が90%以上,陰性的中率は98~100%と報告されており,その応用が拡大している。
<コメント>
残念ながらこの図の中にはスパスムスのような機能的狭窄の概念は盛り込まれていません。
<関連ブログ>
MDCT,電子ビームCTによる石灰化スコア
http://blog.m3.com/reed/20080426/MDCT_CT_
専門医の期待に応える64列MDCTの高画質
http://blog.m3.com/reed/20070930/1
心疾患洸リスク患者とCTの活用
http://blog.m3.com/reed/20080731/_CT_
MDCTによる不安定プラークの診断
http://blog.m3.com/reed/20080423/MDCT_
今話題のMDCTの被ばく量は?
http://blog.goo.ne.jp/secondopinion/e/a9a204b8ccc30e34c59a8bf45a5dabb1
「CT冠動脈造影により、無視できないレベルまで癌リスクが上昇する 」という論文があります。
<自遊時間>
医師がいとも簡単に逮捕される時代になりました。
福島県立大野病院の一件もそうでしたが、その際の「逮捕」についてはあまり問題にされませんでした。
法的なことはよくわかりませんが、逮捕の必要性、必然性はどこにあるのでしょうか。
これは決して今回の不正請求を擁護するものではありません。
彼が日医の会員かどうか知れませんが、日医の会員であってもなくてもこのような「医師の逮捕」が続くことに日医は動いているのでしょうか。
元厚生省技官を逮捕、診療報酬を不正請求の疑い 神奈川県警
http://www.nikkei.co.jp/news/shakai/20081201AT1G3002030112008.html
監査官時代に不正知識? ○○容疑者 保険請求指導する立場
http://www.kanematsu-rmn.jp/news/takeda_dia/news2.php?mode=jpview&num=200811210027647
逮捕
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%80%AE%E6%8D%95
(1)「医師逮捕」心キレた
http://www.yomiuri.co.jp/iryou/feature/20070501ik0e.htm
他に
「ふくろう医者の診察室 」
http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き)
「井蛙内科/開業医診療録(2)」2008.5.21~ http://wellfrog2.exblog.jp/
「井蛙内科/開業医診療録」 ~2008.5.21 http://wellfrog.exblog.jp/
(内科医向き)
があります。
<医学雑誌斜め読み> 2008.12.2追加
循環器専門医第16巻2号 2008.9
「循環器画像診断におけるCTとMRIを用いたfusion imagingの有用性」
■ 循環器画像診断は、近年multi modality imagingの時代と認識されるようになった。
すなわち複雑な病態の把握のあめに、複数のモダリティーからなる画像情報を組み合わせて診断しようとする試みである。
画像には大きく分けて形態画像と機能画像があり、これらの組み合わせがとくに重要である。
<コメント>
「形態」と「機能」の概念は、病態把握の基本ですが得てして目の前の形態異常に目を奪われて機能の評価が疎かになりがちです。
常々感じるのは、冠動脈造影の際に狭窄に目が行き過ぎて収縮能も評価が疎かになっているのではないかということです。
stunned myocardium, hybernating myocardiumという概念が出てからは、そのことを錦の御旗としているようにも勘ぐってしまう症例もあります。
機能評価といえば、まさしく冠スパスムスがそれに相当します。
■ 予後の改善をエンドポイントとしたメタ解析では、心筋バイアビリティーが認められる症例に対し死亡率が80%低下するのに対し、心筋バイアビリティーが認められない症例に対して血行再建を行っても死亡率が改善しないため、血行再建のリスクだけが増加してしまうことが報告され(J Am Coll Cardiol 2002; 39: 1151-1158)、術前の正確な心筋バイアビリティーの評価の重要性が改めて示唆された。
■ CTCAの最大の特徴は、血管内腔の情報しか得られないCAGと異なり、血管壁の構造が評価できることにある。
他に
ふくろう医者の診察室
http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き)
「井蛙内科/開業医診療録(2)」2008.5.21~
http://wellfrog2.exblog.jp/
「井蛙内科/開業医診療録」 ~2008.5.21
http://wellfrog.exblog.jp/
があります。
第81回米国心臓協会学術集会(AHA2008) New Orleans,Louisiana November 8-12,2008 での発表の記事で勉強しました。 好みの音楽を聴くことによって血流依存性血管拡張反応(FMD)が改善するという発表内容です。
ポジティブな感情と血管内皮:好みの音楽は血管の健全性を改善するか
University of Maryland Medical Center, Baltimore, MD, USA Michael Miller 氏
精神的ストレスや苦痛が血管内皮機能の異常と関連し,抑うつが上腕動脈の血管反応性の障害と関連することが知られている。
しかし,ポジティブな感情と血管内皮機能の関連については報告が少ない。
Miller氏らはこれまでに,笑いを誘う映画が上腕の血流依存性血管拡張反応(FMD)を向上させ,不安を催す映画がこれを低下させることを報告しているが,今回新たに音楽も同様の効果があることを報告した。
好みの音楽による血流依存性血管拡張反応の変化を検討 Miller氏らは10例の健康ボランティア(男性7例,女性3例,年齢23~53歳)を対象として今回の検討を行った。
全員が非喫煙者であり,血圧,血糖,コレステロール値は正常域である。
一晩の絶食およびアルコール,ビタミン剤,有酸素運動の禁制後にベースラインのFMDを測定し,いずれも30分程度の「笑い」(テレビ番組や映画),好みの音楽,ストレスを感じる音楽,またはリラクゼーション(視聴覚的に誘導)の介入後,再度FMDを測定した。
各被験者において4種類の介入を,最低1週間の間隔を空けて,無作為にクロスオーバーで実施した。
FMDの測定は,上腕を200mmHgで5分間駆血した後,1分間を置いて行うこととし,超音波画像における駆血前の上腕動脈の血管径が駆血解除後に何%増加するか(%FMD)を指標とした。
好みの音楽が血管の健全性を促進 Miller氏によると,被験者の好みの音楽はカントリー(4例),ロック/ポップス(3例),宗教音楽(2例),その他(1例)であった。
ストレスを感じる音楽はヘビーメタル(5例),ラップ(3例),その他(2例)であった。
各介入前後の%FMDの変化を平均値で見ると,「笑い」では過去の検討と同様に10.7%が12.7%に増加した(P=0.08)。
しかし,これ以上に統計学的に明らかな%FMDの増加をもたらしたのが好みの音楽の上位であり, 10.1%から12.8%への増加はきわめて有意性が高かった(P=0.0002)。
一方,ストレスを感じる音楽やリラクゼーションでは%FMDの変化に明らかな傾向が認められなかった(表)。
ただし,好みの音楽を聴いた後とストレスを感じる音楽を聴いた後の%FMDを比較すると,前者のほうが有意(P=0.005)に大きかった。
Miller氏は今回の好みの音楽によるFMDの増加の程度について,有酸素運動やスタチン療法によるものと同等だと指摘した。
機序についてはさらに検討を要するが,同氏は「心血管リスクに対する従来の予防戦略に加え,好みの音楽を聴くことは血管の健全性を促進するうえでライフスタイル上の補助的な手段として役立つ可能性がある」と述べた。
監修者のコメント ジャズの街ニューオーリンズで開催された,今回の学会にふさわしい演題であった。
学会参加者だけでなく,メディアの関心も高かった演題であった。
本研究により,10例の健常かつ非喫煙のボランティアにおいてFMDで評価した血管内皮機能は,好みの音楽を聴くことにより改善し,笑いによっても改善するというたいへん興味深い結果が得られた。
今回の研究対象は,平均年齢が36歳の健常ボランティアであった。
さらに,本研究は急性効果を検証したものであり,慢性効果については定かでない。
この点についてのフロアからの質問に対しては,同じ音楽を聴きすぎるのはよくないのではないかとの返答があった。
いずれにせよ,好みの音楽を聴き笑いを誘う映画を観ることは,心の健康を保つとともに血管の健康も保つ秘訣であるようだ。
監修: 獨協医科大学 循環器内科 講師 南 順一 http://www.medical-tribune.jp/cgi-local/aha2008.cgi/11-17/16.html
出典 MTP pro 2008.11.17
版権 メディカル・トリビューン社
「Heart and Kidney - 私たちの近くにあるもの」 制作 Heart and Kidney制作委員会 (シオノギ製薬 配布物)
<自遊時間>
今朝、診察中に高血圧と糖尿病で通院中の患者さんの奥様から電話がありました。
何でも、今旅行でタイに行っていて空港封鎖事件で足止めをされているとのこと。
いつも飲んでいる薬剤が切れてしまったので現地で調達したいので処方している薬剤名を教えて欲しいとの内容の電話でした。
何せ診察中でしたので、薬剤名を商品名と一般名と効能を日本語と英語で走り書きしてファックスで奥様のところに送りました。
身近なところで世界と結ばれている。 そんな感のしたひとときでした。 そういえば空港で足止めをくらってしまうトム・ハンクス主演の映画で「ターミナル」っていう映画がありました。
ターミナル
http://www.terminal-movie.jp/main.html
ターミナル http://www.neowing.co.jp/movie/essentials/terminal/index.html
トム・ハンクス主演の映画「ターミナル」で楽しく英会話を覚えよう!
http://tomhanks.seesaa.net/



他に
ふくろう医者の診察室
http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き)
「井蛙内科/開業医診療録(2)」2008.5.21~ http://wellfrog2.exblog.jp/
「井蛙内科/開業医診療録」 ~2008.5.21 http://wellfrog.exblog.jp/
(内科医向き)
があります。
昨夕、開業医を対象とした「心不全」の講演に出席しました。
講師の先生は、β遮断剤による心不全の治療がいかに生命予後を改善するかという内容の話が主体でした。
例によってエビデンスの紹介のオンパレードでしたが、不思議とそのメカニズムについてはいっさい触れられませんでした。
私は2つ質問しました。
1 「RASの嵐から心筋を保護するために急性期の心不全の時期からβ遮断剤を用いるとのことであるが、RAS活性化は心不全に対する生体防御反応の一面があるのではないか。したがって心不全の増悪といったリスクを高める可能性があるのではないか。ある程度落ち着いてからの投与が安全ではないのか」
その質問に対する答えは、矢張り急性期からの投与が予後を改善するとのことでした。
2 「カルベジロールの処方は分2となっているが、そのあたりはきちんと分2で投与されているのか?そしてまたその分2の根拠は?」
その質問に対する答えは、治験が分2で行われており、分1にした場合のことは分からない。したがって添付文書のとおり分2で処方しているとのことでした。
その後座長は10mg投与の場合など面倒なので分1で処方しているとのコメントがあり場内はややしらけました。
さて、きょうは目新しい話題ではありませんがβ遮断剤による心不全治療を復習しました。
ESC心不全ガイドライン
3年ぶりに改訂されたESC心不全ガイドライン
急性・慢性心不全のガイドラインを一本化
欧州心臓病学会(ESC)の心不全ガイドラインは1995年から出版されており,2005年には急性心不全と慢性心不全のガイドラインがそれぞれ出版されていた。
今回3年ぶりの改訂であり,同学会のホームページから無料で入手可能であるが,一番の特徴は急性心不全の原因として慢性心不全の悪化によることが多いため,両者を別々に論じるのではなく,時間経過的に延長線上にある疾患として統一し,「急性・慢性心不全の診断と治療のためのESCガイドライン2008」として発表したことである。
急性心不全は従来,慢性心不全と比較するとあまり注目されていない領域であったが,この方向性を受けて欧州の学会では急性心不全の演題が急に多くなってきている。
また,概してガイドラインは多くのエビデンスを盛り込むために,複雑な内容になりがちであるが,ずいぶんとシンプルで理解しやすい。
内容的にも新しい領域が少なくなってきて,落ち着いてきた感がある。
ガイドラインの最後には心不全領域の未解決問題のリストが掲載してあるのもユニークである。
慢性,急性心不全とも定義,疫学,診断,治療などの項目より成るが,すべての内容を紹介することは不可能であるので,私の視点で興味深い点を以下に述べる。
なお,左室収縮能が保持された心不全患者の治療に関してはいまだエビデンスが乏しく,今回のガイドラインでも左室収縮能が低下した心不全患者についての記載が中心になっている。
中略
左室収縮能が低下した慢性心不全の治療薬としてACE阻害薬,β遮断薬は禁忌がない限り全例に投与し,入院患者の場合,入院中から始めるべきである(class I,エビデンスレベルA)。
β遮断薬について以前から議論されていることの1つに,「心不全が悪化して再入院した場合,投与量をどうするか」という問題があるが,「コントロールが困難な心不全悪化中は一度β遮断薬を減量または中断することは可能であるが,心不全症状が安定した後,再び徐々に増量していく」と記載された。
β遮断薬の投与量については,心不全症状の悪化,症状のある血圧低下,徐脈が見られない限り増量すべきとされた。
しかし,6月のESC Heart Failureでは医師の怠慢でβ遮断薬が増量されていない患者よりも,副作用のために耐えられず,投与量が増量できない患者が多いことが指摘され,β遮断薬の投与量が不十分な場合,医師側の原因か患者側の原因かを明確にすべきと論じられた。
出典 MT pro 2008.9.3
版権 メディカル・トリビューン社
<関連サイト>
Acute and Chronic Heart Failure (Diagnosis and Treatment)
http://www.escardio.org/guidelines-surveys/esc-guidelines/Pages/acute-chronic-heart-failure.aspx
β-Blocker Therapy Update
http://mtpro.medical-tribune.co.jp/article/view?phrase=%26beta%3B%E3%80%80%E5%BF%83%E4%B8%8D%E5%85%A8&perpage=0&order=0&page=0&id=M3303241&year=2000&type=allround
(200年1月のちょっと古い記事です)
急性心不全治療ガイドライン (2006年改訂版)
http://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2006_maruyama_h.pdf
慢性心不全治療ガイドライン
http://www.jcc.gr.jp/banner/guideline/guide02.pdf
慢性心不全に対するβ 遮断薬治療
http://jams.med.or.jp/symposium/full/122065.pdf
慢性心不全に対するβ 遮断薬治療の有用性は,1975 年Waagstein らによって最初に報告されたが,それまでの治療方針と大きく異なることから,一般には受け入れられなかった。
しかし,10 年前より大規模臨床試験が行われるようになり,1993 年メトプロロールを用いたMDC 試験を皮切りに,慢性心不全に対するβ 遮断薬の有用性が次々と実証されてきた。
USCP 試験では優れた予後改善効果が示され,その後,
MERIT-HF 試験でメトプロロール徐放錠が,またCIBIS II 試験でビソプロロールが,予後の改善,突然死の抑制をもたらすことが明らかにされた。
さらに最近,COPERNICUS試験において,重症心不全においてもカルベジロールが有効性を示したことから, 軽症から重症まで慢性心不全に対するβ 遮断薬の有用性が確立したといえる。
β 遮断薬は通常ACE 阻害薬と併用して用いられるが,予後改善効果のみならず,用量依存的に心機能の改善効果もみられる。
しかし,β 遮断薬は導入期に心不全の増悪を惹起することがあるので,ごく少量から開始し緩徐に漸増する必要がある。
有効性の機序は単一ではなく,β 受容体の情報伝達障害の改善,Ca 過負荷,酸化ストレスによる心筋細胞障害の抑制,心拍数の減少によるエネルギー代謝や拡張期特性の改善,抗不整脈作用など多面的に作用するものと考えられている。
わが国でもMUCHA 試験が実施され,優れた成績が得られたため,最近保険適用が認可された。
心不全ってなに?
http://www.gik.gr.jp/~skj/chf/chf.php3
心不全に伴う交感神経系の興奮により、過剰なカテコールアミン(アドレナリン、ノルアドレナリンなど)が動員され、心臓はそれらの刺激を受け続けることにより、逆にそれらの物質への応答性が低下(ダウンレギュレーション、抑制)され、一種の「燃え尽き症候群」の状態になります。
ベータ遮断薬はそれ自体は心臓の収縮力を低下させますが、少量から徐々に薬を増やしていくと、心不全で心筋を鞭打つカテコールアミンのシャワーから心臓を保護する「癒し」効果を示します。
最近の研究では心不全の原因、重症度にかかわらず、生存期間が著明に延長し、入院回数も減少するとの報告がなされています(CIBIS-II研究、COPERNICUS研究)。
循環器大規模臨床試験リンク集-心不全編
http://www.gik.gr.jp/~skj/listlinkdb/mega_chf.php3
慢性心不全の病態と新しい治療戦略
http://www.m-junkanki.com/lectures/0407chf/Ex-chf1.htm
以前より、心臓が弱り心臓から出る血液量が低下すると元に戻そうとする機構(身体の恒常性を維持する作用:ホメオスターシス)として、交感神経系が亢進することが知られていた。
この過剰に亢進した交感神経系因子が心不全を悪化させることが近年わかってきた。
交感神経系以外にも多数のホルモン作用物質が心不全に関係していることがわかってきた。
心不全になると、レニン・アンギオテンシン・アルドステロン(RAA)、アルギニン・バソプレッシン、エンドセリン、ニューロペプチドYなどの血管収縮因子、他に心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)やその関連物質、内皮因子(EDRF、NO)、アドレノメデュリンなどの血管拡張因子の活性も亢進する。
心不全はそれらが複雑に関連した一つの症候群であるとする考え方が生まれてきた。
現在の慢性心不全治療の大きな目標は
1)神経体液因子の是正、
2)心肥大・拡大の抑制、
3)致死的不整脈の抑制
による死亡率低下と生活の質の改善であると言っても過言ではない。
β受容体遮断薬
なぜβ受容体遮断薬が有用なのか、未だ明らかな機序は解明されていない。
最近、日本で初めて、中等度の慢性心不全患者を対象にして、β受容体遮断薬(carvedilol:商品名アーチスト)の有効性をみる臨床試験が施行された。
その結果、偽薬投与群に比べて、心不全の悪化および悪化による入院の頻度(危険率)が約90%も減少した。
β受容体遮断薬としてcarvedilolが本邦で初めて心不全治療薬として保険適用された。
ただし、使用する場合にはごく少量(carvedilol 1.25mg、1日2回投与)から始め、心不全治療に熟練した医師の注意深い観察のもとで増量しなければならない。
新しい心不全治療薬の開発
心不全時に活性化したエンドセリンの拮抗薬、内服可能なBNP製剤、ANP分解酵素阻害薬、バソプレッシン受容体拮抗薬などが開発されている。
また、最近、不全心筋でのCa++過負荷の原因として心筋細胞内節小胞体のリアナジン受容体(RyR)からのCa++リークが証明され、それを阻止する"リアナジン受容体安定化作用薬"の開発も進められている。
重症心不全に対するβ 遮断薬(カルベジロール)
至適投与の指標について
http://www.tokushima-med.jrc.or.jp/zasshi/2007pdf/002.pdf
■中止例では年齢が有意に高かった
■重症心不全患者に対してカルベジロールは安全に導入可能であり,年齢のみが予後不良の予測因子であった
■導入前の左室駆出率やその他の各種パラメータでは,副作用の出現を予測することはできなかったが,導入後に左室拡大を認める症例は予後不良であった
<考案およびまとめから>
■β遮断薬の慢性心不全への応用は,CIBIS- ,MERIT-HF,COPERNICUSをはじめ多くの大規模臨床試験で評価され,生命予後に関するリスク減少は34~35%と良好な成績が示されている.
■β遮断薬の慢性心不全治療における特徴は,アンジオテンシン変換酵素阻害薬の薬効に相乗的に働くこと,アンジオテンシン変換酵素阻害薬では認められないreversed remodeling 効果が認められること,さらに心臓突然死を減少させることなどが挙げられる.
■BNP 値は心不全の診断や治療効果の判定には有用と思われるが,β 遮断薬有効例の予測因子とはならなく,BNP
高値の重症心不全であっても慎重な経過観察によりβ 遮断薬の導入は可能であることが示された。
また,これに関してはEF についても同様のことが言えると
思われる.
■カルベジロール投与開始後,約半年間は頻繁に心エコーで左室拡張末期径などの計測をしていくことが望ましい
と考えられた。
慢性心不全治療時のACE阻害薬とβ遮断薬、どちらの先行投与でも差なし
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/hotnews/int/200509/396961.html
βブロッカー時代の急性心不全治療-PDEIII阻害薬の新たな役割
http://www.lifescience.jp/ebm/PDEIII/fuzen/fuzen6/1.htm
正常の成人心筋細胞では,β受容体を介して細胞内Ca2+濃度が変化し,アクチンとミオシンの相互作用により収縮する。
一方,不全心筋ではこれらのCa2+ハンドリングに関与する蛋白質が質的あるいは量的に変化し(胎児型心筋細胞に類似),心筋の収縮性が低下している。
そのような状態に対し,β遮断薬を長期間投与すると,亢進した交感神経活性が抑制され,Ca2+ハンドリングに関与する蛋白質が正常化し,心筋の収縮力が回復することがわかってきた。
また,慢性心不全では基礎収縮力のみならず,カテコラミンに対する応答,すなわち収縮予備能も減弱している。
収縮予備能減弱の要因として,β受容体のダウンレギュレーションと心筋細胞内の刺激応答の減弱が重要である。β遮断薬はそのような慢性的な不全心筋において,心筋細胞内の刺激応答を改善し,PDEIII阻害薬の効果を回復させることが報告されている。
[PDF] 高血圧から心不全への進展過程において いつ、どこでβ遮断薬を使用すればよいか
http://medicalkaihatu.nikkeibp.co.jp/medicalkaihatu/02cme/pdf/2008/cme200803-1.pdf
(是非内容を吟味したいところでしたが、残念ながら内容が見れません)
慢性心不全
合同研究班編/医療・GL(05年)/ガイドライン
http://minds.jcqhc.or.jp/stc/0049/1/0049_G0000132_GL.html
β遮断薬
http://minds.jcqhc.or.jp/stc/0049/1/0049_G0000132_0054.html
ここ数年の間にβ遮断薬の心不全予後改善効果を指示する大規模試験の結果が相次いで発表された。
US Carvedilol study131)においてはカルベジロール,CIBIS II103)においてはビソプロロール,MERIT-HF132)ではメトプロロールの有意な生命予後および心不全悪化防止効果が明らかにされた。
わが国においては低用量(1日5mgおよび20mg)とプラセボの比較試験,MUCHAにおいては一年弱という比較的短期間の観察であはあるが両投与量ともにプラセボと比較し用量依存性に心血管および心不全入院(71%減少),あるいは死亡または心血管入院(91%減少)を著明に減少した。
以上の臨床試験の対象の殆どはNYHA機能分類II度およびIII度の患者であり,最も重症のIV度患者は少数であった。COPERNICUSではeuvolemicだが左室駆出率が25%以下のNYHA IV度の重症心不全患者においてもカルベジロール従来の大規模試験に匹敵する35%の死亡率低下が得られた。
個々のβ遮断薬の効果を比較した試験は少ないがCOMETではカルベジロールとメトプロロールの効果が比較され,カルベジロール群で死亡率が有意に低かった。
一方心不全症状のない左室機能不全患者に対するβ遮断薬のエビデンスも得られている。
CAPRICORNでは左室駆出率の低下した心筋梗塞患者にカルベジロールを投与することにより死亡率が低下した。
したがって有症状の心不全患者のみならず無症状の左室収縮機能低下患者についてもβ遮断薬導入を試みることが勧められる。
β遮断薬の投与の実際についてはNYHA III度以上の心不全患者については原則として入院とし,体液貯留の兆候がなく患者の状態が安定していることを確認したうえでごく少量より時間をかけて数日~2週間ごとに段階的に増量して行くことが望ましい。
増量に際しては自覚症状,脈拍,血圧,心胸比,および心エコー図による心内腔の大きさ等を参考にし,心不全の増悪,過度の低血圧や徐脈の出現に注意する。
アンジオテンシン変換酵素阻害薬と同様,欧米の臨床試験での目標用量とわが国の常用量との間にかなりの開きがあり,薬剤認容性をみながらできるだけ増量すべきとの意見もあるが,至適用量についての明確な結論は出ていない。
現在,わが国におけるβ遮断薬の大規模試験J-CHFが進行中である.
β遮断薬の効果を予測する指標として,血漿BNPが有用である。
また,核医学的検査,とくにMIBGシンチグラフィーでのH/M比,washout rateが有用と考えられているがその値に関してコンセンサスは得られていない。
β遮断薬の投与量にはわが国と欧米では大きな開きがある。
これには忍容性も大きく影響していると考えられるが,MUCHA試験から判断する限り,日本人においては比較的低用量のβ遮断薬で有効性が得られることが示されている。
現在さらにわが国ではβ遮断薬の臨床試験J-CHFが進行中である.なお慢性心不全における大規模試験のエビデンスのあるβ遮断薬はカルベジロール,ビソプロロール,メトプロロールであるが,このうちカルベジロールのみがわが国では保険承認がなされている。
Beta Blockers Help Hospitalized Heart Failure Patients
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2008/07/11/AR2008071102353.html
<関連ブログ>
ベータ遮断薬の使用で心不全の死亡率が減少
http://tomochans.exblog.jp/3407325/
β遮断薬・心不全改善・炎症・酸化ストレス抑制
http://blog.m3.com/reed/20081119/1
他に
ふくろう医者の診察室
http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き)
「井蛙内科/開業医診療録(2)」2008.5.21~
http://wellfrog2.exblog.jp/
「井蛙内科/開業医診療録」 ~2008.5.21
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があります。
C反応性蛋白値が上昇した男女の血管イベント予防におけるロスバスタチン投与
炎症バイオマーカーである高感度 C反応性蛋白(CRP)の上昇により,心血管イベントを予測することが可能である。
スタチンはコレステロールとともに CRP を低下させることから,われわれは,高感度 CRP が上昇しているが高脂血症を伴わない人も,スタチン投与により利益が得られるという仮説を立てた。
方 法
低比重リポ蛋白(LDL)コレステロールが130mg/dL(3.4 mmol/L)未満で,高感度 CRPが2.0 mg/L以上の一見健康な男女 17,802 例を,ロスバスタチン20mg/日投与群とプラセボ投与群に無作為に割り付けた。
複合主要エンドポイントを,心筋梗塞,脳卒中,動脈血行再建,不安定狭心症による入院,心血管死亡とし,その発生について追跡した。
結 果
試験は追跡期間中央値 1.9 年(最長 5.0 年)後に中止された。ロスバスタチン投与により,LDL コレステロールは 50%,高感度 CRP は 37%低下した。
中略
評価した全サブグループで効果は一貫して認められた。ロスバスタチン群ではミオパチーおよび癌の有意な増加は認められなかったが,医師の報告による糖尿病の発症率が高かった。
結 論
高脂血症を有しないが高感度 CRP の上昇した一見健康な人を対象としたこの試験では,ロスバスタチン投与により,主要心血管イベントの発生率が有意に低下した。
本論文(10.1056/NEJMoa0807646)は,2008 年11月 9日に www.nejm.org で発表された.
http://www.nankodo.co.jp/yosyo/xforeign/nejm/359/359nov/xf359-21-2195.htm
(N Engl J Med 2008; 359 : 2195 - 207 : Original Article)
Rosuvastatin to Prevent Vascular Events in Men and Women with Elevated C-Reactive Protein
http://content.nejm.org/cgi/content/short/359/21/2195
C反応性蛋白の遺伝的な増加と虚血性血管障害
Genetically Elevated C-Reactive Protein and Ischemic Vascular Disease
J. Zacho and others
背 景
C 反応性蛋白(CRP)値の上昇は,虚血性心疾患と虚血性脳血管障害のリスク増加と関連している。
この関連に因果関係があるかどうかを検討した.
方 法
虚血性心疾患を発症した 1,786 例と,虚血性脳血管障害を発症した 741 例を含む,一般集団コホートの 10,276 例について検討した。
また,一般集団を対象とした別の横断的研究の,虚血性心疾患を発症した 2,521 例,虚血性脳血管障害を発症した 1,483 例を含む 31,992 例についても検討した。
最終的に,虚血性心疾患を有する患者 2,238 例と対照被験者 4,474 例,虚血性脳血管障害を有する患者 612 例と対照被験者 1,224 例を比較した.高感度 CRP 値を測定し,4 つの CRP 遺伝子多型と,2 つのアポリポ蛋白 E 遺伝子多型の遺伝子型を決定した。
結 果
CRP 値が 3 mg/L を超える被験者では,CRP 値が 1 mg/L 未満の被験者と比較して,虚血性心疾患のリスクが 1.6 倍,虚血性脳血管障害のリスクが 1.3 倍増加した。
4 つの CRP 遺伝子多型の遺伝子型の組合せによって CRP 値に最大 64%の上昇がみられたことから,理論上は虚血性心疾患リスクが最大 32%,虚血性脳血管障害リスクが最大 25%増加すると予測された。
しかし,これらの遺伝子型の組合せは,虚血性血管障害のリスク増加とは関連していなかった。
これに対し,アポリポ蛋白 E 遺伝子型は,コレステロール値の上昇と虚血性心疾患リスク増加の双方と関連していた。
結 論
CRP 遺伝子多型は CRP 値の著しい上昇と関連しているため,理論上は虚血性血管障害リスクが増加すると予測された。
しかし,これらの遺伝子多型は,それ自体は虚血性血管障害のリスク増加と関連していない。
http://www.nankodo.co.jp/yosyo/xforeign/nejm/359/359oct/xf359-18-1897.htm
Genetically Elevated C-Reactive Protein and Ischemic Vascular Disease
http://content.nejm
<番外編>
この前の連休に「テルミサルタン」の講演会(東京)に出席したお話はすでにしました。
先生方も経験がおありのことと思いますが、懇親会で知り合いの先生にも逢わずに黙々と飲食するのは寂しいものです。
そんな中、以前から知っている先生にお逢いできひとしきり診療の話で盛り上がりました。
一つはCTA(64列マルチスライス)の隆盛でスパスムスの診断がおろそかになっているのではないかということ。
そしてもう一つは、高感度CRPのことです。
興味深かったのは「コンベンショナルな(?)CRPでも結構参考になるよ」という話でした。
その先生は、勤務医時代には循環器領域の権威としてバリバリとインターベンションをやっておられて、最近開業された偉い先生です。
「急性気管支炎などの病名をつけることを忘れないように」という、ご丁寧なアドバイスまでいただきました。
聞いた時は、早速やってみようと思ってはいたのでしたが、何せ酔いが回っていて、このブログを書いていてそのことを思い出しました。
何せ千人余が集まった懇親会場で、気がついたらわれわれ二人になっていました。
当日会場に出席された先生方もおみえになるかと思いますが、最後の二人のうちの一人が私です。
<CRP 関連サイト>
CRP
http://www.jrcla.or.jp/atoz/rexm/rexm_03_02.html
CRPが0.6ミリグラム以下であれば正常と考えられます。
心筋梗塞のリスクを予知
高感度CRP検査
超早期の治療が可能に
http://kk.kyodo.co.jp/iryo/news/0106crp.html
■高感度CRPのデータが集まり始めた結果、健康な人の基準値は、同0・04mg以下ということが分かってきた
■高感度CRP0・3mgを超える人は、明らかに将来、心筋梗塞などを起こしやすく、生命予後(将来の健康状態)が悪いことが明らかになってきた
■イタリアのデータでは、心筋梗塞を患い、退院した人を対象に高感度CRP検査で追跡したところ、同0・3mgを境に、CRP値が低い人は冠動脈の再狭窄(きょうさく)の再発率も低く、値が高い人は8倍も再発率が高いことが明らかになった
■高感度CRPでは、糖尿病や肥満、喫煙、加齢でもCRPが上昇することが次第に分かってきた
<コメント>
そのあたりが高感度CRPの限界のような気がします。
■既に通常の健診に取り入れている日赤医療センター(東京)では「現在、実際のデータが集まりつつある。
<コメント>
さすが日赤医療センターです。
個人的には高感度CRPを健診で取り入れたケースは見たことがありません。
CRPと虚血性血管疾患の発症に因果関係なし
CRPは単なるマーカーに過ぎない可能性
(NEJM誌2008年10月30日号)
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/hotnews/nejm/200811/508608.html
(原文
Genetically Elevated C-Reactive Protein and Ischemic Vascular Disease
http://content.nejm.org/cgi/content/short/359/18/1897)
<コメント>
今までの話に水を差すような論文です。
しかしアブストラクトでみる限りCRPという表現でhsCRPという表現はされていません。
読んでいただいてありがとうございます。
コメントお待ちしています。
他に
ふくろう医者の診察室
http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き)
「井蛙内科/開業医診療録(2)」2008.5.21~
http://wellfrog2.exblog.jp/
「井蛙内科/開業医診療録」 ~2008.5.21
http://wellfrog.exblog.jp/
があります。
第56回日本心臓病学会学術集会ランチョンセミナーでの光山勝慶教授の講演、「降圧薬による臓器保護戦略」で勉強しました。
RA系抑制薬とCa拮抗薬の臓器保護作用に着目した高血圧治療のポイントがメインテーマです。
第56回日本心臓病学会学術集会ランチョンセミナー11
降圧薬による臓器保護戦略
わが国における高血圧治療ガイドライン(JSH2004)では,主要降圧薬としてCa拮抗薬やレニン・アンジオテンシン(RA)系抑制薬が推奨されている。
RA系抑制薬では従来,優れた心保護,腎保護作用などが指摘されているが,最近では,Ca拮抗薬においても臓器保護に関するエビデンスが得られている。
座長
佐賀大学 医学部内科学教授
野出 孝一 氏
演者
熊本大学大学院医学薬学研究部 生体機能薬理学教授
光山 勝慶 氏
ACE阻害薬とARBには明らかな薬理学的な違いがある
高血圧では,単に血圧が高いだけでなく神経体液性因子の異常が認められ,そのことが高血圧症による臓器障害に関与していることがわかっている。
最近,RA系抑制薬であるアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬およびアンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)が,臓器保護に直接的な作用を発揮するとして注目されている。
ACE阻害薬にはACEを阻害してブラジキニンの不活化を抑制する作用,ARBにはAT1受容体を直接阻害してAT2受容体を刺激する作用があり,両薬剤間の薬理作用の違いは明らかである。
しかし,欧米の大規模臨床試験を中心として,現在のところ長期予後という観点では両薬剤間の違いは明確にされていない。
また,日本ではACE阻害薬とARBを比較した大規模臨床試験の報告がなく,さらに欧米と日本では両薬剤の投与量が大きく異なることから,光山氏は「ACE阻害薬とARBの違いについては今後,十分な検討の余地がある」とコメントした。
組織親和性の高いACE阻害薬は臓器保護作用が優れている
光山氏によれば,ACE阻害薬は組織親和性が高いほど臓器保護作用が優れており,組織親和性はACE阻害薬間で異なることに注目することが重要であるという。
ACE阻害薬のなかで組織親和性が最も高いのは,ペリンドプリルであることが知られており,臨床データでも高い心保護効果が示されている(Pilote L, et al: Ann Intern Med 141: 102-112, 2004)。
さらに,Zhuoらによってペリンドプリルではヒト血管ACE活性阻害作用を認めることが証明されている(Zhuo. J, et al, Hypertension 39: 634-638, 2002)。
光山氏らは,高血圧ラットにおいてACE阻害薬の違いがどれだけ臓器保護に影響を与えるかについて検討し,ペリンドプリルのほうがエナラプリルよりも血管でのACE活性抑制効果が有意に強く(図1),降圧の持続時間が長いことを示した。
光山氏は「降圧の持続時間の差というのは,ペリンドプリルのエナラプリルに優る組織ACE活性の抑制効果に関係している可能性がある」とし,「ACE阻害薬は循環器領域で重要な位置づけにあり,ACE阻害薬による臓器保護戦略として組織親和性の高い薬剤を選択することが重要である」と述べた。
臓器保護のためにはRA系抑制薬+Ca拮抗薬併用療法を
高血圧治療では,ガイドラインで提唱されている降圧目標に到達するために,作用の異なった降圧薬の併用が必要である場合が多い。
現在中心的に行われている2剤併用の組み合わせのうち,RA系抑制薬とCa拮抗薬,RA系抑制薬と利尿薬という組み合わせが注目されている。
ACCOMPLISH試験では,収縮期血圧がACE阻害薬+利尿薬群に比べてACE阻害薬+Ca拮抗薬群で有意に低下し,ACE阻害薬+Ca拮抗薬群での1次エンドポイント(心血管死・非致死的心筋梗塞・非致死的脳卒中・不安定狭心症による入院・血行再建術・突然死からの蘇生)のリスク減少率は20%であることが示された。
一方,ASCOT-BPLA試験では,ACE阻害薬+Ca拮抗薬群とβ遮断薬+利尿薬群の有用性を比較検証し,ACE阻害薬+Ca拮抗薬群の心血管イベントに対する優位性が証明されている。
これらのことから,光山氏は「ACE阻害薬とCa拮抗薬の併用が高血圧症患者の臓器保護に有効である」と述べた。
T型Caチャネルを阻害するCa拮抗薬は優れた臓器保護作用を発揮
それでは,Ca拮抗薬は薬剤間で臓器保護作用に違いが認められるだろうか。
高血圧症の治療に用いられるジヒドロピリジン系Ca拮抗薬では,L型Caチャネルを阻害すると強力な降圧効果が得られ,T型,N型Caチャネルを阻害すると臓器保護作用(輸出細動脈拡張作用による腎保護作用,心保護作用など)が認められるといわれている。
Shimokawaらは冠攣縮性狭心症患者に各種Ca拮抗薬を投与し,5年間追跡した結果,ベニジピンで心血管イベントを免れた生存率が有意に高いこと(図2),またOhishiらは他のCa拮抗薬で降圧目標に達しない症例をベニジピンに切り替えると,血圧および尿中蛋白排泄量が有意に低下することを報告しており(図3),Ca拮抗薬ではその種類によって臨床的な臓器保護作用に違いが認められることが示されている。
光山氏らは,高血圧ラットにおいてベニジピンの臓器保護作用について検証した。
「ベニジピンの投与は,同程度の降圧を示した他のCa拮抗薬の投与に比べて,心重量を減少させ,心臓組織の炎症・線維化を抑制した。
腎臓においても,ベニジピンは糸球体の炎症をより強く抑制し,臓器保護効果が優れていた」と述べた。
これらの心臓,腎臓などに対する臓器障害のメカニズムとして酸化ストレスの関与が考えられているが,ベニジピンは酸化ストレスの抑制が強く,光山氏は「T型チャネルを阻害するCa拮抗薬は,臓器保護に有効であると期待される」と述べた。
最後に,光山氏は「高血圧症の治療では,RA系抑制薬のうち組織親和性の高いペリンドプリルにT型Ca拮抗薬を併用投与することが臓器保護戦略として有効であることが示唆され,各薬剤の薬理学的特徴の違いを考慮して薬剤選択することが重要である」と結論した。
出典 Medical Tribune 2008.11.20
版権 メディカル・トリビューン

「Heart and Kidney - 私たちの近くにあるもの」
制作 Heart and Kidney制作委員会
(シオノギ製薬 配布物)
<関連サイト>
ペリンドプリルとカルシウム拮抗薬併用により予後が改善する
http://www.doljapan.com/special/esc/2008/html/10.html
EUROPAトライアルの新たな解析により、安定した冠動脈疾患患者におけるカルシウム拮抗薬(CCB)とペリンドプリルの“相乗効果”が示された。EUROPA:EUropean trial on Reduction Of cardiac events with Perindopril in stable coronary Artery disease(安定冠動脈疾患患者におけるペリンドプリルの心イベント減少効果に関するヨーロッパのトライアル)においては17%の患者がスタディ期間中を通してCCBを投与された。1,022人はペリンドプリル群に1,110人はプラセボ群に割り付けられた。つまり、3,095人はプラセボを投与されCCBは投与されず、3,326人はペリンドプリルを投与されCCBは投与されなかった。トライアルの一次エンドポイントを再度見直してみると、心血管死、心筋梗塞、または蘇生された心停止はペリンドプリルとCCBを併用された患者において少なかった。(併用群4.89%対ペリンドプリル単独投与群6.58%;プラセボとCCB併用群7.45%;プラセボ単独投与群7.98%;全ての比較においてp<0.05)。ペリンドプリルとCCBの併用によりまた、全死亡率が46%(p<0.01)、心血管死亡率が41%(p=0.09)、致死性および非致死性心筋梗塞が28%(p=0.01)、心不全による入院が54%(p=0.25%)減少した。
ペリンドプリルエルブミン(商品名コバシル)
http://www.okusuri110.com/dwm/sen/sen21/sen2144012.html
ACE阻害薬は動脈硬化患者にも有益
アテローム血栓症動脈硬化症患者の心血管イベントや総死亡を減らす
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/hotnews/int/200611/501975.html
アンジオテンシン転換酵素(ACE)阻害薬の投与が、心不全や左室収縮機能不全(LVSD)など、重症の心血管疾患患者の有病率と死亡率を低減することは既に確かめられているが、新たに、アテローム性動脈硬化症患者に対しても、総死亡や心血管イベントを減らすことが、3件の無作為割付試験の系統的レビューで確かめられた。
研究の対象としたのは、HOPE(Heart Outcomes Prevention Evaluation)、EUROPA(European trial on Reduction Of cardiac events with Perindopril among patients with stable coronary Artery disease)、PEACE(Prevention of Events with ACE inhibition)という3件の大規模な臨床試験。
中略
得られた結果は、心不全またはLVSDではないアテローム性動脈硬化症患者においても、ACE阻害薬は重篤な心血管イベントを減らすことを示唆した。著者らは、ACE阻害薬の利益は、アテローム性動脈硬化症患者からハイリスク者まで幅広い患者に及ぶことから、血管疾患を抱える患者全員に対して、忍容性が続く限り、ACE阻害薬の投与を考慮すべきだ、と述べている。
[PDF] 第80回日本内分泌学会総会 クリニカルアワー 「ACE 阻害薬と ARB の心血管イベント抑制効果」
http://endo80.umin.jp/CH/C-13.pdf
[高血圧] 第27回日本高血圧学会総会レポート CareNet.com
http://www.carenet.com/hypertension/jsh2004/l34/index.html
(パスワードが必要です)
軽度から中等度の本態性高血圧患者の. 頸動脈IMT肥厚に対する組織親和性 ACE阻害薬と.アンジオテンシン受容体拮抗薬の効果の比較検討
http://www.arterial-stiffness.com/pdf/no09/052_053.pdf
高性能ACEI
http://blog.m3.com/reed/20071023/_ACEI
[PDF] 【アンジオテンシン変換酵素阻害薬】 2007.8
http://www.hokuyaku.co.jp/pdf/medicine/yakkou/y03_06.pdf
(各種ACE-IとARBの一覧です)
[高血圧] 高性能ACE阻害薬の選択とそのエビデンス CareNet.com
http://www.carenet.com/hypertension/tana02/sato2/index.html
1.ACE阻害薬とARBは異なる降圧剤である
2.違いが報告されるようになった心筋保護作用
3.どのACEを選ぶべきか?
の3つ内容について佐藤敦久が動画で解説しています。
(パスワードが要るかも知れません)
PCIでは初回治療後の再治療率がCABGに比べ10倍高い:
英国の住民研究より
英・ライセスター大学公衆衛生学部門のIain Squire氏らは,冠動脈疾患(CHD)患者を対象とした住民研究の結果から,経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を受けた患者では冠動脈バイパス術(CABG)を受けた患者に比べ,再治療率が10倍高いことを11月10日付けのHeartオンライン版に報告した。
90年代に比べ複雑な症例が増えた一方で,治療成績は改善
同試験は1995~96年,2003~04年に初めてPCIあるいはCABGを施行された連続症例6,068例を対象に死亡率,再治療率などを調査したヒストリカルコホートスタディ。
両群とも前半期に比べ後半期でより多くの合併症を有する症例が治療の対象となっていた。
また,PCI群の平均年齢はCABG群よりも若い傾向にあったほか,CABG群ではPCI群に比べ心不全,糖尿病,肝疾患や癌を合併している割合が高かった。
上記2期間にPCIを受けた全3,548例について,前半期と後半期における2年間の無再発生存率は73%から83%と明らかに改善していた。
一方で,両群の死亡率は同等であった。
さらにPCI群ではCABG群に比べ,再治療を要した症例の割合がおよそ10倍にのぼっていた(95%CI 8.20~13.60%)。
同氏らはPCI群において,ステント留置の有無による再治療の割合に違いがあるかを解析したところ,ステントを留置していた症例で,非留置例にくらべ再治療の率が低いことが明らかになった(HR 0.61,95%CI 0.49~0.74)。
Squire氏らは「複雑なプロフィールを有するCHD症例が増えているにもかかわらず,90年代に比べ2000年代では治療成績の改善が認められている」と今回の結果を評価。
しかし,ステントの使用頻度が増えている一方で,PCI施行例における再治療率は依然としてかなり高いとコメントしている。
昨年(2007年),報告されたPCI・CABGに関するランダム化比較試験(RCT)を対象としたシステマティックレビューにおいても,両者の死亡率は同等であったが,狭心症状の改善はCABG群で優れていたほか,再治療率がPCI群で有意に高いことが示されている( Ann Intern Med 2007; 147: 703-716)
最近COURAGEや先日のDoctor's Eyeで取り上げられたJSAPといった試験からも,施設あるいは国や地域によって,PCIによる治療成績の評価が異なることが明らかになっており,要因として,術者の習熟度によるところが大きいことも指摘されている。
同氏らは,PCI,CABGともに高度な医療設備と技術を要する手技であり,治療成績や実地臨床における指針の変化を評価することが重要と述べている。
出典 MTpro 2008.11.12
版権 メディカル・トリビューン社
<番外編>
低リスク安定型狭心症患者に対する治療戦略はPCIか薬物療法か?
―わが国初の多施設ランダム化比較試験JSAPの意味すること
兵庫県立尼崎病院循環器内科 佐藤 幸人
背景:欧米のガイドラインは薬物療法を推奨,COURAGE研究でもPCI群と同等の長期予後
安定冠動脈疾患(安定CAD;安定狭心症,安定無症候性狭心症)は,
(1)死亡の危険性の高い高リスク(左主幹部病変・3枝病変・左前下行枝分岐部病変)CAD,
(2)相対的に死亡の危険性の低い高リスク以外のもの(低リスクCAD)
―に分類され,大部分(約80%)は後者である。
その治療法は,
(1)薬物療法=薬物療法で開始し,コントロールできなければ経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を追加,
(2)PCI療法=低リスクCADを対象とし,PCIと薬物療法を同時に開始,
(3)冠動脈バイパス術(CABG)療法=高リスクCADを対象とし,CABGと薬物療法を同時に開始―
である。
欧米のガイドラインでは,低リスクCAD治療の第一選択は多くの多施設共同研究のエビデンスに基づき,薬物療法である。
最近報告された薬物療法とPCI療法の長期予後を検討したランダム化比較試験COURAGE研究(N Engl J Med 2007; 356: 1503-1516)においても,短期の臨床症状の改善はPCI療法が優れていたが,長期予後すなわち死亡も急性冠症候群(ACS;急性心筋梗塞および不安定狭心症)も両者に全く差がなく,長期には臨床症状にも差がなくなり,これまでの欧米のガイドラインの正しさが確認された。
一方,わが国では特殊な例外を除き,これまでエビデンスが全くなかったにもかかわらず,欧米のガイドラインとは異なるPCI療法が一般的に行われてきた。
そこで,低リスクCAD患者を対象に,PCI療法と薬物療法の多施設ランダム化比較試験であるJSAP研究(委員長=藤原久義・兵庫県立尼崎病院院長)が厚生科学研究費と日本心臓財団の補助を受け,わが国ではじめて行われた。
その結果が J Am Coll Cardiol Intv(2008; 1: 469-479)に掲載されたので紹介する。
JSAPの結果:PCI群で有意な予後改善示す
JSAP研究は2002年に始まり,わが国の代表的な循環器科の病院78施設が参加した。対象は低リスクCAD患者384例である。
コンピュータによるランダム化が行われたわが国初の試験でもある。
追跡期間は3.2年。PCI群の76%ではベアメタルステントが留置された。
総死亡はPCI群2.9%,薬物療法群3.9%で有意差がなかった。
しかし,PCI群では薬物療法群と比較し,ACSの有意な減少(PCI群:5.0%,薬物療法群:11.7%,P=0.012)が見られ,総死亡+ACS(P=0.019),総死亡+ACS+脳血管障害,総死亡+ACS+脳血管障害+緊急再入院でも有意な減少が認められた(図1)。
狭心症状も全期間を通じて,PCI群で有意な改善を示した。
なぜ両研究の結果が一致しなかったか:PCI技術の相違が関与している可能性も
JSAP研究の結果から判断すると,わが国では欧米と異なり,PCI療法でよいことになる。
さて,どちらが真実を反映しているかは今後の検討課題であるが,問題点は以下のように整理される。
(1)COURAGEの研究者らは同試験の結果について,「ACSがPCIの対象となる有意狭窄病変からではなく,非有意狭窄病変から発生する」というこれまでの定説から,有意狭窄病変のみをPCIで治療しても全体のACSの予防効果に反映しないとし,このためにPCI群と薬物療法群に長期予後の差がなかったと結論している。
しかし,JSAPの薬物療法群の冠動脈造影(CAG)所見の解析では,半数以上のACSがJSAP開始時に既に存在していた有意狭窄病変から発生していることを示した。
また,PCI群における試験中のACS減少は,開始時のPCI対象血管病変からのACS発生の減少に由来することを明らかにした。COURAGEなどの欧米の試験ではこのようなデータの解析はなされていない。
(2)COURAGEのKaplan-Meier曲線の特徴は,PCI後,半年以内にPCI群でイベントが多発しているが,逆に慢性期には薬物療法群で多発しており,結果として長期成績では両者は相殺され,両群の差がなくなっている(図2)。
一方,JSAPでは初期からイベント発生はPCI群で少なく,期間が長くなるにつれて差は大きくなっている。
慢性期だけ見ればCOURAGE,JSAPともにPCI群でイベントは減少していることになり,COURAGEでも初期イベントがJSAPと同様にPCI群で低ければ長期予後はPCI群が勝ったはずである。
初期のイベントがなぜCOURAGEとJSAPで逆かが大きな問題となるが,わが国ではPCI時に一般的に行われている血管内超音波(IVUS)が欧米では一般的ではないなどのPCI技術の相違が関与している可能性がある。
http://mtpro.medical-tribune.co.jp/mtpronews/doctoreye/dr081006.html
出典 MTpro 2008.10.27
版権 メディカル・トリビューン社
安定狭心症に対するPCI併用・薬物療法単独のQOL改善効果に長期的な差はない
安定狭心症患者に対する初期の至適治療を検討したCOURAGE試験のサブ解析において,経皮的冠動脈インターベンション(PCI)併用群におけるQOL改善効果は2~3年で薬物治療群との差がなくなることが示された(N Engl J Med 2008; 359: 677-687)。
治療後24か月でQOL評価の差がほとんど消失
COURAGE試験では,安定狭心症において至適薬物治療にPCIを追加しても,死亡や心血管イベントリスクといった予後の改善に有意な上乗せ効果が認められないとの結果が示されている(N Engl J Med 2007; 356: 1503-1516)。
高齢の狭心症患者や不安定狭心症,ST非上昇型心筋梗塞患者に対するPCIが薬物療法よりもQOL改善効果に優れると報告されてきたが,安定狭心症におけるPCIのQOLに対する効果については,明らかになっていない。
今回のサブ解析では,同試験でPCI+薬物治療,薬物治療のみの群にそれぞれ無作為割り付けされ,解析対象となった2,287例に対し,疾患特異スコア(Seattle Angina Questionnaire:SAQ),身体・精神関連QOL調査票(RAND-36)による評価が実施された。
ベースライン時,全症例のうち22%が「狭心症状がない」と回答。試験開始から3か月時点でPCI+薬物治療群の53%,薬物治療群の42%が「狭心症状がない」と答えていた(P<0.001)。
両群におけるSAQ(0~100,数値が大きいほど健康状態が良い)については,身体的制約,狭心症状とその頻度,治療への満足度,QOLのすべての指標に関するスコアでPCI+薬物治療群が有意に優れていた。
しかし,