ACCF/AHA末梢動脈疾患ガイドラインが6年ぶりに改訂されました。その結果、さらに多くの患者がASO診断のための検査や治療の推奨対象とされました。
今回の改訂ポイントやASOのリスクならびに治療について信州大学循環器内科学講座・閉塞性動脈硬化症先端治療学講座・池田宇一教授と宮下裕介講師へのインタビュー記事で勉強しました。
足だけでは終わらない閉塞性動脈硬化症(ASO) Q ACCF/AHA新ガイドラインのトピックスについて教えてください。A ABI値0.91〜0.99の境界型が新たに早期診断の対象とされ,ASOの早期発見,早期介入の重要性が強調されました。 池田 動脈硬化により足の血管が狭窄を来すASOでは,同様に心臓や脳血管においても動脈硬化の進行が考えられます。このためASO は全身の動脈硬化を知る窓としても非常に重要ですが,その初期症状は足の冷感や痺れ感などであり,心筋梗塞や脳卒中などに比べ軽視されがちです。ASOは 放置すれば下肢切断に至る場合もあり,実は一部のがんよりも生命予後が悪い疾患です。
ASOの診断は問診,触診および足関節/上腕血圧比(ABI)検査で可能であり,ABI値0.9以下であればASOと診断されます。ABIは,4 肢血圧を同時に測定できるform PWV/ABI(オムロンコーリン)で容易に測定可能です。新たに改訂されたACCF/AHA末梢動脈疾患ガイドラインでは,このABI検査実施推奨年齢 が70歳以上から65歳以上へと引き下げられました。さらに今回,従来通りABI値1.0以上を正常,0.9以下を異常とするだけでなく, この中間に当たるABI値0.91〜0.99の領域が新たに「境界型(ボーダーライン)」と定義され,早期診断の対象として推奨されました(図1,表)。日常臨床では,たとえABI値が0.9以上でも血管病態の不良例がいることは実感していました。境界型の5人に1人は下肢の末梢血管に50%以上の狭窄を有するという報告もあり,その生命予後はABI正常の場合に比べ不良であることがメタアナリシスでも示されています(図2)。これまではABI値0.9以下を対象に早期診断,早期治療を推進してきましたが,今後は境界型も視野に入れ,診療体制を変えていく必要があると考えています。
Q 国内で初めて大学病院に設立された寄付講座,閉塞性動脈硬化症先端治療学講座についてお聞かせください。 A 当講座を中心に広く関連他科と連携し,ASO患者さんの全身的な動脈硬化管理を考慮した先端的な治療を実践しています。
宮下 ASOは米国では心筋梗塞や脳卒中を抜いて最も多い血管疾患であり,わが国においても高齢化や生活習慣,特に食生活の欧米化に 伴いASOが急増しています。足のような比較的太い血管の動脈硬化であるASOが発見されれば,同様のことが頸部頸動脈や冠動脈などのより細い他の動脈で 起きていても不思議ではありません。むしろ動脈硬化の全身状態としては心筋梗塞や脳卒中患者よりもASO患者の方が一般に進行していることを広く知ってい ただきたいという思いから,まだ認知度の低いこの疾患の長い名前をあえて講座名に据えています。
従来の病院では動脈硬化の部位により1人の患者さんをさまざまな科が別個に担当しますが,当講座ではASOを軸に循環器内科,血管外科,ASOに 合併の多い糖尿病・腎臓病,頸動脈や脳動脈の専門家の脳外科,創傷患者に対応できる形成外科などの専門医らが毎週合同カンファレンスで集学的に治療方針を決定し,全身の動脈管理を行っています。ASOによる下肢切断をゼロにし,患者さんを長生きさせるには,まずASOを早期発見し,局所だけではなく全身の 動脈硬化に留意して早期介入を行うことが必要です。足の悪い患者さんを診たら,「心臓や脳は大丈夫だろうか」と気付くことのできる若い先生がたくさん巣 立ってくださればと考えています。 Q 早期段階で見つかった軽症ASOの薬物治療について教えてください。 A 将来の心血管イベント抑制を見据え,症状があれば抗血小板薬を開始します。抗血小板薬の1つであるベラプロストは,下肢虚血症状の改善に加え,全身の血管イベント抑制への好影響も期待できる薬剤です。
池田 ASOの治療目的は2つです。1つは足の冷感や痺れ感などの自覚症状を改善すること。もう1つは心血管イベントを抑制して生命 予後を改善することです。早期段階で見つかった軽症ASOの治療では,運動療法を行うと同時に抗血小板薬を開始します。抗血小板作用に加え血管拡張作用や 血管平滑筋細胞の増殖抑制作用を有するベラプロストナトリウム(ドルナー®)は,ASOの自覚症状をよく改善します(図3)。軽症ASOでは,将来の心血管イベント発生の抑制に向け服薬コンプライアンスをいかに維持するかが問題ですが,患者さんが治療効果を実感し,治療に積極的に参加いただけるようになるという意味でもベラプロストナトリウムは非常に有用だと考えます。
宮下 下肢症状の改善に1〜2カ月はかかりますが,ベラプロストナトリウムでは患者さんが脱落してしまうような副作用(頻脈など)はほぼ経験したことがなく,虚血性心疾患などの合併例にも使いやすい印象があります。また全身の血管イベント発生抑制への好影響も報告されており,自覚症状の改善と血管イベント抑制の両方の観点から期待できる薬剤です。
出典 Medical Tribune 2012.3.22
版権 メディカルトリビューン社
ホノルル・ルワーズストリート現地時間 2012.3.20 21:58
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血圧の左右差が15mmHg以上あると死亡リスクが上昇10mmHg以上の差で末梢血管疾患の疑い左右の腕で測定した収縮期血圧の差が10mmHg以上あると、無症候性の末梢血管疾患の存在が疑われ、さらなる血管の検査が必要。差が15mmHg以上あると、死亡リスクが上昇する―。
そんな知見が、英Exeter大学の Christopher E Clark氏らが行った系統的レビューとメタ分析で得られ、Lancet誌電子版に2012年1月30日に報告された。
末梢血管疾患はその後の心血管イベントと死亡の危険因子であるため、早期に発見して介入すれば死亡を減らせる可能性がある。
しかし、無症候性の末梢血管疾患の発見は難しい。
診断には通常、足関節上腕血圧比(ABI)が用いられるが、時間がかかる検査で、測定には一定の経験とトレーニングが求められるため、プライマリケアで日常的に行われてはいない。
そこで著者らは、左右の腕で収縮期血圧を測定し、その差を求める方法がABIの代替になることを示唆する研究に注目。
具体的に差がどれだけあれば、無症候性の末梢血管疾患ハイリスク者と見なすべきかを明らかにするために、血圧の左右差と末梢血管疾患、心血管疾患、脳血管疾患、死亡の関係を調べる系統的レビューとメタ分析を実施した。
Medline、Embase、CINAHL、コクラン、Medline In Processなどのデータベースに11年7月までに登録された研究で、左右の腕の血圧差と、鎖骨下動脈狭窄、末梢血管疾患、脳血管疾患、心血管疾患、死亡に関するデータを報告していたものを選び、ランダム効果モデルを用いてメタ分析した。
28件の研究がレビューの条件を満たした。
うち定量的なデータを報告していた20件をメタ分析の対象にした。
多くの研究が、心血管リスクが高い人々を登録していた。
血管造影を用いた侵襲的な研究5件では、鎖骨下動脈の狭窄(2件で50%超と定義、残り3件では不明)が確認された患者において、狭窄がある腕の収縮期血圧は、もう一方の腕に比べ平均36.9mmHg(95%信頼区間35.4-38.4mmHg)低かった。
左右の腕の10mmHg以上の差と鎖骨下動脈狭窄の関係は強力だった。
2件の研究のデータをプール解析したところ、10mmHg以上の差があるケースに50%超の鎖骨下動脈狭窄が存在する可能性は、血圧差が10mmHg未満のグループの8.8倍になった(リスク比8.8、3.6-21.2)。
左右差 10mmHg以上を指標とする鎖骨下動脈狭窄同定の感度は65%(35-86%)、特異度は85%(82-88%)だった。
次に、非侵襲的な研究のデータをプール解析したところ、10mmHg以上の差は、末梢血管疾患の存在と有意な関係を示した。
リスク比は 2.44(1.53-3.87)、感度は32%(23-41%)、特異度は91%(86-94%)になった。15mmHg以上の差についても同様で、末梢 血管疾患のリスク比は2.48(1.63-3.77)、感度は15%(9-23%)、特異度は96%(94-98%)だった。
脳血管疾患の既往と血圧の左右差の関係も有意だった。15mmHg以上の差がある場合の脳血管疾患歴のリスク比は1.63(1.10-2.41)、感度は8%(2-26%)、特異度は93%(86-97%)だった。
前向き研究では、死亡の増加とも有意な関係を示した。15mmHg以上の差がある人々では、心血管死亡のハザード比は1.68(1.11-2.53)、全死因死亡のハザード比は1.55(1.07-2.25)になった。
10mmHg以上の場合には、いずれの死亡リスクも上昇傾向を示したものの有意にはならなかった。
末梢血管疾患の存在を予測する能力においては、収縮期血圧の左右差10mmHg以上または15mmHg以上という指標は、感度は低いが特異度は高いことが明らかになった。
15mmHg以上の血圧差は、脳血管疾患の存在、心血管死亡リスク、全死因死亡リスクに関係していた。
左右の腕の血圧差の測定は、死亡リスクを低減するための介入の機会を与える、と著者らは述べている。
原題Association of a difference in systolic blood pressure between arms with vascular disease and mortality: a systematic review and meta-analysis
The Lancet, Early Online Publication, 30 January 2012
doi:10.1016/S0140-6736(11)61710-8 http://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736%2811%2961710-8/abstract 出典 NM online 2012.2.14版権 日経BP社
2012.2.22撮影
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