戯れ言たれる侏儒
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耐糖能正常の安定冠動脈疾患患者ではTG値がリスク
心血管イベントのハイリスク例において、空腹時および食後の血清トリグリセリド(TG)値がリスク因子になるかどうかは議論があり、耐糖能異常の有無による検討も行われていなかった。
今回、Homburg Cream and Sugar(HCS)試験から、耐糖能正常の安定冠動脈疾患患者では、空腹時および食後のTG値は心血管イベントのリスク因子となることが判明した。
8月 27日からパリで開催されている欧州心臓学会(ESC2011)で、ドイツ・ザールランド大学のUlrich Laufs氏が報告した。
 
心血管イベントの既往のない被験者を対象とした大規模臨床研究のメタ解析では、空腹時TG値は年齢、性別で補正後も冠動脈疾患のリスク因子となったが、 さらに他のリスク因子で補正すると有意ではなくなった。
また、健常者を対象とした大規模臨床研究では、非空腹時のTG値は心血管イベントの有意なリスク因子だったが、空腹時TG値は有意な因子ではなかった。

こうした状況の中でUlrich氏らは、冠動脈疾患患者を対象に、伝統的なリスク因子および耐糖能異常に加えて食後TG値を評価することで、心血管イベントの予測能が改善するかどうかを検討するために本試験を行った。

<私的コメント>
「伝統的なリスク因子」には当然HDLが含まれる筈です。
TG値が上昇すればHDLが減少すると考えるのが一般的です。
このHDL値は「非空腹時」TG値と空腹時」TG値のどちらに(逆)相関が強いかが興味の持たれるところです。
いずれにしろ、非空腹時(食後)」TG値よりHDL値の方が「心血管イベントの有意なリスク因子」という結果であれば身も蓋もないことになってしまいます。
いずれにしろ、この論文ではHDLについて一切触れていないことが不思議です。
 
対象は安定冠動脈疾患患者514人で、脂質75gを含むクリーム250mLを経口摂取する脂質負荷試験を行い、5時間後までの血清TG値の変化を測定した。
さらに糖尿病治療歴のない患者では経口TG負荷3時間後に75g糖負荷試験を実施し、負荷2時間後の血糖値で耐糖能異常の有無を判定した。
<私的コメント>
「経口TG負荷」の具体的方法は示されているところでしょうが知りたいところです。
「経口TG負荷3時間後に75g糖負荷試験を実施 」と連続に行った意義は何なんでしょうか。
 
主要複合アウトカムは18カ月後の心血管死および心血管疾患による入院とした。
<私的コメント>
「主要複合アウトカム」が「心血管死および心血管疾患による入院」ということですが、「入院」は客観的なアウトカムにはなり得ないのではないでしょうか。
主治医は血清TG値や75gOGTTの結果を知っている筈です。
心血管疾患には、不安定狭心症、心筋梗塞、症状発症に伴う予定外の冠血管造 影、心不全、虚血性脳卒中、一過性脳虚血発作、血行再建術を要する血管疾患、心肺蘇生を要する不整脈、緊急の心デバイス留置を含めた。

ベースラインの患者背景は年齢66.4歳(男性比率82.9%)、血圧126.7/74.6mmHg、空腹時血糖値120.7mg/dL、HbA1c値 6.17%、LDLコレステロール値105.1mg/dLだった。

また、耐糖能正常が24.5%、耐糖能異常が29.2%、糖尿病が46.3%、メタボリックシンドロームが53.7%を占めた。
主な治療薬の服用率は、抗血小板薬97.3%、レニン・アンジオテンシン系抑制薬95.5%、β遮断薬 93.5%、利尿薬43.9%、スタチン94.6%などだった。

食後TG値から対象者を198mg/dL未満群、198~305mg/dL群、305mg/dL超群の3群に層別し主要複合アウトカムの発生を比較したが、その発生に統計学的な有意差は認められなかった(p=0.22)。

一方、空腹時TG値から対象者を106mg/dL未満群、106~150mg/dL群、150mg/dL超群の3群に層別して同様に主要複合アウトカムの発生を比較したところ、150mg/dL超群でその発生が有意に高率だった(p=0.04)。

また、耐糖能異常/糖尿病群では耐糖能正常群に比べて、経口TG負荷試験後の血清TG値は空腹時から高値だったが、空腹時からの増加率は、この2群間で同等だった。

さらに、耐糖能異常/糖尿病群では、空腹時および食後のTG値は主要複合アウトカムの予測因子ではなかった。

これに対して耐糖能正常群では、空腹時および 食後のTG値は主要複合アウトカムの予測因子となっており、その傾向は空腹時TG値が高い場合でも食後TG値が高い場合でも一貫して認められた。

Ulrich氏は、本試験の限界として、負荷試験後のTG値を5時間までしか測定していないこと、対象の95%がスタチンの投与を受けていたこと、遺伝的 背景は加味していないこと、対象は白人が大半を占めたことなどを指摘した上で、「耐糖能正常の冠動脈疾患患者では、空腹時TG値および食後TG値は、それぞれ冠動脈イベントの発症を予測する独立した因子である」とした。

出典  NM online 2011.8.30
  (日経メディカル別冊編集)
版権 日経BP社
 
 
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CETP阻害薬dalcetrapibとHDL値

戯れ言たれる侏儒 / 2011.09.17 00:10 / 推薦数 : 1
CETP阻害薬のdalcetrapibがHDL値を3割強増大、血圧上昇や血管内皮機能の低下は認めず
コレステロールエステル転送蛋白(CETP)の阻害薬のdalcetrapib(ダルセトラピブ)の投与で、HDL値は約3割増大し、一方で血管内皮機能の低下や血圧上昇といった有害作用は認められないことが示された。
これは、500人弱の冠動脈性心疾患または同程度のリスクを持つ人を対象に行ったプラセボ対照無作為化二重盲検試験(Dal-VESSEL試験)の成果で、スイスUniversity of ZurichのThomas F. Luscher氏らが、8月27日から31日までパリで開催される欧州心臓病学会(ESC2011)で発表した。
Dal-VESSEL試験は、 dalcetrapibの治験第IIb相の位置づけでもある。

Dalcetrapibは、直接CETPに働きかけ、HDLコレステロール(HDL-C)値を増大する作用がある。
一方で、同クラスの torcetrapibでは、過去の試験で、HDL-C値が増大するものの、血圧値も上昇するという試験結果が出ており、治験第III相も中止になったという経緯があった。

Luscher氏らは、HDL-C値が50mg/dL未満で、冠動脈性心疾患または同等リスクの認められる476人を対象に試験を行った。

研究グループは被験者を無作為に2群に分け、一方にはdalcetrapibを600mg/日、もう一方にはプラセボを投与した。
主要評価項目は、試験開始時点から12週間後の血流依存性血管拡張反応(FMD)の変化と、4週間後の24時間携帯式血圧モニタリングの結果だった。
副次 的評価項目は、試験開始時点から36週間後のFMD変化や、12週、36週間後の24時間携帯式血圧モニタリングの結果、脂質値の変化などだった。

結果は、試験開始後時点から12週、36週間後のFMDの変化には、両群で有意差はなかった。

また、24時間携帯式血圧モニタリングの結果についても、試験開始時点と比較して、4週、12週、36週間後に有意な変化はいずれも認められなかった。

Dalcetrapib群ではまた、投与36週間後にHDL-C値が31%増大したほか、アポリポ蛋白質A1(ApoA1)値も有意に増大した。

一方で、LDLコレステロール(LDL-C)値やアポリポ蛋白質B100(ApoB100)値には、変化はなかった。

ディスカッサントとして登壇した英国Edinburgh大学のKeith Fox氏は、この発表を受けて、非常に興味深い結果だと評価しながら、「被験者数が限られた小規模な試験なので、dalcetrapibの効果と有害作用 の有無について断言はできない。より大規模な試験結果を待つことでより明確になるだろう」とコメントした。

出典   NM online 2011.8.29
版権 日経BP社

 
<関連サイト>
新しい高脂血症治療薬
ILLUMINATE
CETP阻害剤
心血管疾患発症と血中CETP活性
CETP阻害薬anacetrapib
HDLコレステロールと動脈硬化
スタチン療法後のHDLコレステロール測定によるリスク予測
ポストスタチンの方向性
anacetrapib
HDLコレステロールと動脈硬化
動脈硬化とHDL
 
CETP阻害薬dalcetrapib、血管病変の進展と炎症を抑制
HDLコレステロール(HDL-C)を上昇させる新しい機序の脂質異常症治療薬として注目されている、コレステロール転送蛋白(CETP)阻害薬のdalcetapib(ダルセトラピブ)。
本薬剤についてはHot Lineセッションで発表されたdal-VESSEL試験だけでなく、動脈硬化進展に及ぼす作用を2種類の画像診断法で評価したdal-PLAQUE試験も注目を集めた。
2年間のdalcetrapib投与により血管病変の進展や炎症の抑制効果が認められたと、米Mount Sainai Medical CenterのZahi A. Fayad氏らが8月31日までパリで開催されていた欧州心臓学会(ESC2011)で発表した。

   中略

Fayad氏は、「dalcetrapibを投与しても血管への病理学的な悪影響は認められず、HDL-C値の上昇と、血管の炎症や形態的変化の抑制との間に関連を認めた」と結論した。

出典   NM online 2011.9.2
版権 日経BP社

<自遊時間>
本音(といっても正しいこと) をズバズバ言うのを聞くのは楽しいものです。
昨日のテーマの「怒りと笑い」 以上の健康法かも知れません。
以前は、(知る人ぞ知る故人)安原顯氏、最近では三宅弘之氏です。

安原顯 - Wikipedia

 
村上春樹と安原顕 - 池田信夫 blog(旧館)

異才・天才・安原顕

ノーベル文学賞と安原顕 | Incidents(偶景)
 
三宅久之氏については
進む がんの個別治療 遺伝子検査で適薬投与
http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy/archive/2011/09/17
の<自遊時間>を参照下さい。
 
人生幸朗・生恵幸子も健康によかったんですが。
惜しい方を亡くしました。


人生幸朗・生恵幸子 - Wikipedia
http://www.youtube.com/watch?v=wHQflkzqDx8

http://www.youtube.com/watch?v=u-0SELjgwo8&feature=related

 
 
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きょう勉強したのは、「非アルコール性肝機能異常」と言った、ちょっと消化器科の分野かと見紛うようなタイトルの論文です。
原文のタイトルは"abnormal liver tests"ですが、日本語訳では「非アルコール性脂肪肝」」「軽度非アルコール性肝機能障害」。
だれもが想定するのがNASHでありNAFLDです。
 

NASHについて

非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)

非アルコール性脂肪(NAFLD)/脂肪肝炎(NASH)

脂肪・脂肪肝炎・肝硬変・アルコール性・非アルコール性NASHがん ...

私の記憶では、NASHの確定診断は肝生検によって得られるというものですが、今回の「非アルコール性肝機能異常」はNASHを指しているのでしょうか、はたまた飲酒しない人での脂肪肝というだけのことなのでしょうか。

 
冠動脈疾患に軽度非アルコール性肝機能異常を伴う患者でもスタチンは安全に長期投与でき、心血管イベントを減少
Safety and efficacy of long-term statin treatment for cardiovascular events in patients with coronary heart disease and abnormal liver tests in the Greek Atorvastatin and Coronary Heart Disease Evaluation (GREACE) study: a post-hoc analysis
Athyros VG, et al.
Lancet 2010; 376: 1916-1922
執筆:真田 昌爾 先生  大阪大学大学院医学系研究科循環器内科学
監修:小室 一成 先生  大阪大学大学院医学系研究科循環器内科学 教授

 
<概要>
スタチン(HMG-CoA還元酵素阻害薬)の長期投与は、心血管イベント発生を減少させるが、肝機能異常を伴う患者への安全性と有効性は定かではない。
よって、冠動脈疾患を有する75歳未満、LDLコレステロール値2.6 mmol/L(100.4 mg/dL)超、トリグリセリド値4.5 mmol/L(396.9 mg/dL)未満の1,600例を1施設でエントリーし、スタチン投与の心血管イベント再発リスク抑制に関する有効性を検討した前向き無作為化コンピュータ割り付け包括解析(ITT解析)試験であるGREACE試験のpost-hoc解析にて、血清AST/ALT値が正常上限の3倍以内の軽度肝機能異常症 例を抽出し、スタチン投与の有無、さらに肝機能正常例と比較し、肝機能障害の有無に絡む心血管イベント再発リスクの抑制を検討した。

結果、非アルコール性脂肪肝に起因する軽度肝機能異常症例437例にて、おもにアトルバスタチン平均24 mg/日を投与された227例(投与群)では肝機能が改善
p<0.0001)した一方、非投与の210例(非投与群)ではAST/ALT値がさらに上昇した。
心血管イベントは、投与群3.2件/100人・年、非投与群10.0件/100人・年で、相対リスクは68%減少(p<0.0001)した一方、肝機能正常例では、投与群653例で4.6件/100人・年、非投与群510例で7.6件/100人・年で、スタチンによる相対リスク減少は39%(p<0.0001)にとどまり、肝機能異常症例にて相対リスク減少が優勢であった(p=0.0074)。
スタチンを投与された880例のうち、血清AST/ALT値が正常上限の3倍を超えたのは最終的に7例(1%未満)のみであった。

(注) LDLコレステロール値は ×38.6、トリグリセリド値は ×88.2でmmol/Lをmg/dLに換算した。


<なぜmust-read なのか>
GREACE試験では、日本での一般的な診断基準とは異なるが、高LDLコレステロール血症を伴う冠動脈疾患既往例がエントリーされ、今回のpost-hoc解析では、軽度非アルコール性肝機能障害の有無が比較されている。
しかし、本論文の表1に記載された患者背景からわかるように、エントリー基準から 全例が高LDLコレステロール血症であるが、さらに軽度肝機能異常を伴う患者では、BMIが約3ポイント高く、高率にメタボリックシンドローム (90~91%)であり、高血圧(84~85%)、中心肥満(90~91%)、糖尿病(51%)なども合併していることから、本解析は高LDLコレステロール血症を伴う多元的な代謝異常患者におけるスタチンの代謝異常改善と心血管イベント再発リスクの逓減を検討したものであると解釈できる。

スタチンをはじめ、われわれはLDLコレステロールを低下させる薬剤は多種多様にもっているが、中性脂肪(トリグリセリド)の高値とともにγ-GTP、 AST/ALTの異常を伴うより普遍的な過栄養(いわゆる「脂肪肝」)状態から生じる「中性脂肪を軸とした代謝障害」を改善する手段は一般的にPPAR活性化剤に限定され、その代表的な薬剤であるフィブラート系薬はスタチンとの併用が推奨されていない。

よって本解析は、対象のような多元的な代謝異常患者に対し、スタチンが単剤で総合的に効力を発揮できるか、あるいは新たなイベント発生を逓減できるかという、治療標準化のうえで重要な課題に挑むとともに、 AST/ALTの上昇は薬剤性肝機能障害としても起こりうるため、もともと軽度肝機能異常を伴う症例に対するスタチン投与の安全性に関する評価という側面も有している。

本解析の結果は、当初の予測通り、スタチン投与でコレステロール改善効果のほかに、肝機能障害の改善効果、中性脂肪やγ-GTPの改善効果も示し、さら に、高LDLコレステロール血症を伴う軽度肝機能異常症例におけるスタチンの心血管イベント再発リスク逓減効果(-6.8件/100人・年)が肝機能正常例(-3.0件/100人・年)を大きく上回ったことから、スタチン単剤を追加することによる多元的な代謝障害への総合的な改善効果とイベント抑制効果が ともに実証された形だが、post-hoc解析であるためにその優位性の評価は「想定の範囲内」程度にまで限定される。


ここで注目されるのは、まず推定糸球体濾過量(eGFR値)などの代謝以外の指標もスタチンで改善したことで、これが数多くの既報がある「血管反応性の改 善」によるものか、その他の因子によるものか、今後の研究課題として興味深い。

また、本解析ではデータが示されていないが、軽度肝機能異常を伴う患者で高率に発現していた複数の危険因子(メタボリックシンドローム、糖尿病、高血圧、肥満など)に対するスタチンの影響については、リスクがなぜ軽減したかを考えるうえで、また他の因子にかかわらず脂質代謝異常の改善だけで十分なリスク逓減効果が得られるのかを考察するうえでも有用なデータとなる可能性があり、 今後の検討が待たれる。

本報は、1施設のunsponsored試験でここまでのデータを揃えた著者らへの敬意もさることながら、スタチンというすでに多くの知見が出尽くしたと思われる薬剤の効果について、臨床的な洞察から新たなアプローチの方向性を考える一つの重要な方法論を示す、大変有意義な一報といえる。


http://www.univadis.jp/services/cardiopro/pages/mustreadarticles1102_02.aspx

 
 
<私的コメント>
誰でも思うことでしょうが、今回検討されたのはスタチンの中でもアトルバスタチンです。
他のスタチンではどうなのでしょうか。(class  effectなのか、drug effetなのか)
そしてエゼチミブなら、この病態により有効なのではないか、ということです。  
 
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HDLコレステロールは数値とは独立して、その働きが動脈硬化に関連する
Cholesterol efflux capacity, high-density lipoprotein function, and atherosclerosis
Khera AV, et al.
N Engl J Med 2011; 364: 127-135

http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa1001689
Cholesterol Efflux Capacity, High-Density Lipoprotein Function ... In Fight Against Heart Disease, Cholesterol Efflux Capacity May Be ...
 
執筆:甲谷 友幸 先生  
 栃木県厚生連 下都賀総合病院循環器内科

監修:苅尾 七臣 先生  
 自治医科大学内科学講座循環器内科学部門 主任教授
 

<概要>
マクロファージからコレステロールを排出するコレステロールの逆転送系は、HDLコレステロールの抗動脈硬化の作用機序として考えられている。

本研究は、 健常者203名、冠動脈造影により冠動脈疾患を認めた442例と認めなかった351例について、マクロファージからコレステロールを排出する能力 (cholesterol efflux capacity)を評価した。

cholesterol efflux capacityと頸動脈内膜中膜複合体厚(intima-media thickness:IMT)との間には有意な逆相関がみられ、HDLコレステロール値で補正しても同様であった。

また、cholesterol efflux capacityは冠動脈疾患の有意な負の予測因子で(1SD上昇あたりのオッズ比0.70、95%CI 0.59~0.83、p<0.001)、HDLコレステロール値を補正しても同オッズ比は0.75(95%CI 0.63~0.90、p=0.002)であり、さらにアポリポ蛋白A-I値を補正しても同様であった(同オッズ比0.74、95%CI 0.61~0.89、p=0.002)。

さらに、少数例のサブ解析では、メタボリックシンドロームの患者で12週間のピオグリタゾン投与によりcholesterol efflux capacityの増強がみられたが(ベースラインとの比較:p=0.02、プラセボとの比較:p=0.04)、別の高脂血症の患者集団に対する16週間のスタチン(HMG-CoA還元酵素阻害薬)投与ではcholesterol efflux capacityの増強はみられなかった

マクロファージからのcholesterol efflux capacityは、HDLコレステロール値とは独立してIMTや冠動脈疾患に強い負の関連を示すことが明らかにされた。

 
<なぜmust-readなのか>
HDLコレステロールはマクロファージからコレステロールを排出し肝臓へ戻し、抗動脈硬化的に作用する。
HDLコレステロールが「善玉コレステロール」と呼ばれる所以である。
低HDLコレステロール血症が心血管イベントに関連するのは周知の事実であるが、HDLコレステロール値を特異的に上昇させる試みは今までのところ困難であった。HDLコレステロール値を上昇させる薬剤として、コレステロールエステル転送蛋白(CETP)阻害薬が注目されているが[1]、2007年に CETP阻害薬(torcetrapib[開発中止])投与により心血管イベントがむしろ増加したというセンセーショナルな結果となった[2]。
一方で、 開発中の新しいCETP阻害薬anacetrapibの第III相臨床試験における安全性が昨年(2010年)報告されている[3]。
本研究では、HDLコレステロール値とは独立して、cholesterol efflux capacityがIMTや冠動脈疾患に関連することが示された。
また、HDLコレステロール値はIMTとは直接の相関はみられなかった
マクロファージからのコレステロールを排出させる能力は、生理学的にLDLやHDLコレステロールレベルよりも直接的に抗動脈硬化に働くことが予想できる。
低HDLコレ ステロール血症に対しては、単純にHDLコレステロールを増やすだけではなく、マクロファージからのコレステロールを排出させる能力を高めることが重要である可能性があり、今後の低HDLコレステロール血症への介入研究、とくにCETP阻害薬の薬理作用にとっては、本研究の結果は重要であろう。
スタチンの心血管イベント抑制における貢献は誰しも認めるところであるが、本研究ではスタチンは(症例数は少ないものの)cholesterol efflux capacityを改善はさせなかった。
コレステロール代謝系での新しい概念によって、さらなる心血管イベントの抑制につながるのではないかと期待を抱か せる論文である。 
 
文献

1)Brousseau ME, et al. N Engl J Med 2004; 350: 1505-1515.

2)Barter PJ, et al. N Engl J Med 2007; 357: 2109-2122.

3)Cannon CP, et al. N Engl J Med 2010; 363: 2406-2415.

<私的コメント>
cholesterol efflux capacity(マクロファージからコレステロールを排出する能力)はどのようにして評価するのでしょうか。
http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa1001689#t=articleMethods
には以下のような説明がありました。
しかし、難しくて私にはよくわかりません。

Assessment of Cholesterol Efflux Capacity
Cholesterol efflux capacity was quantified in blood samples from the cohort of healthy volunteers as described previously.This assay quantifies total efflux mediated by pathways of known relevance in cholesterol efflux from macrophages (i.e., ATP-binding cassette transporter A1 [ABCA1] and G1 [ABCG1], scavenger receptor B1, and aqueous diffusion).
Each sample was run in triplicate, with a mean coefficient of variation of 4.3%. Values were normalized by dividing the efflux capacity of individual patients by the efflux capacity of a serum pool run with each assay.
Cholesterol efflux capacity in the coronary disease and pharmacologic-study cohorts was quantified with the use of a slightly modified method designed to increase throughput. J774 cells, derived from a murine macrophage cell line, were plated and radiolabeled with 2 μCi of 3H-cholesterol per milliliter. ABCA1 was up-regulated by means of a 6-hour incubation with 0.3 mM 8-(4-chlorophenylthio)-cyclic AMP. Subsequently, efflux mediums containing 2.8% apolipoprotein B–depleted serum were added for 4 hours. All steps were performed in the presence of the acyl–coenzyme A:cholesterol acyltransferase inhibitor CP113,818 (2 μg per milliliter). In a pilot study involving serum samples from 20 healthy volunteers, results from the original assay procedure and the modified method were strongly correlated (r=0.85).
Liquid scintillation counting was used to quantify the efflux of radioactive cholesterol from the cells. The quantity of radioactive cholesterol incorporated into cellular lipids was calculated by means of isopropanol extraction of control wells not exposed to patient serum. Percent efflux was calculated by the following formula: [(microcuries of 3H-cholesterol in mediums containing 2.8% apolipoprotein B–depleted serum−microcuries of 3H-cholesterol in serum-free mediums)÷microcuries of 3H-cholesterol in cells extracted before the efflux step]×100. All assays were performed in duplicate. To correct for interassay variation across plates, a pooled serum control from five healthy volunteers was included on each plate, and values for serum samples from patients were normalized to this pooled value in subsequent analyses. Additional studies that were performed to validate the measurement of cholesterol efflux capacity are described in the Supplementary Appendix.


Cholesterol Efflux Capacity and Atherosclerosis
http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa1001689#t=letters
(To the Editorを読むことが出来ます)

いずれにしろ、興味深い論文と思いました。

HDLに関して測定値の高低だけで論じることが、これからは虚しくなりそうです。
 

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昨日の

低コレステロールと高死亡率その1(1/2)


の後半です。
 
山田先生の考察:NIPPON DATA80と比較すると…全く逆の結果とは言えない
正直に申し上げると,「コレステロールが低いと死亡率が高くなる」という話にはアレルギーのようなものが私自身の中にでき,胡散臭いものを見るような眼(先入観)ができあがってしまっていた。
しかし,本研究は非常に真摯に解析が行われていた。
 
ここで,改めて動脈硬化学会ガイドラインが採用しているNIPPON DATA80(Atherosclerosis 2007; 190: 216-223)をながめ,本研究の結果との相違について考えたい。
 
NIPPON DATA80は,1980年の厚生省(当時)の循環器疾患基礎調査対象者である30歳以上の9,216人を対象とした17年におよぶコホート研究であり,TC最低群(160mg/dL未満群)とTC最高群(260mg/dL以上群)において総死亡率の上昇が見られたが,TC最低群での総死亡率の上昇は 肝疾患による死亡を除外すると有意でなくなったのに対し,TC最高群での総死亡率の上昇は調整によりハザード比がより高くなったというものであった。
 
この結果を文章で読むと,NIPPON DATA80はコレステロール高値が悪いという印象になり,今回の自治医大コホート研究のコレステロール低値が悪いという印象と,逆な結果のように思える。
しかし,総死亡率のデータを比較すると以下のようになる(表45)。
 
表4. 男性の総死亡率のハザード比の比較
 
 表5. 女性の総死亡率のハザード比の比較
 
こうして見てみると,TC 160mg/dL未満での死亡率の高さが自治医大コホート研究で顕著になってはいるものの,両者にさほどの相違がないことが分かる。
 では,この2つの研究の印象の違いはどこから来るかと言えば,心筋梗塞・冠動脈疾患による死亡率の差異に由来する。特に自治医大コホート研究において女性における高コレステロール血症での心筋梗塞・冠動脈疾患による死亡率上昇が全く見られないところが異なっている(表67)。

表6. 男性の心筋梗塞・冠動脈疾患による死亡率のハザード比の比較

 
 表7. 女性の心筋梗塞・冠動脈疾患による死亡率のハザード比の比較


 
しかし,上記の表から分かるように,NIPPON DATA80においても女性で心筋梗塞・冠動脈疾患による死亡率が上昇しているのはTC 260mg/dL超であり,240~260mg/dLの群では死亡率の上昇は見られていない。
そう考えると,自治医大コホート研究において240mg /dL超のTC最高群において心筋梗塞・冠動脈疾患による死亡率の上昇がなくとも,必ずしも両研究の結果が異なるとは言い切れないわけである。
 
このように,両研究ともに1万人程度を対象として,10年以上にわたって経過を観察した信頼度の高い研究であり,一見,両者は全く逆の結果を呈したような印象であるが,そのように断じることはできない。
明らかに異なるのは,
(1)TC値の群別の方法,
(2)対象者の年齢(NIPPON DATA80 平均50.0歳,自治医大コホート研究55.2歳),
(3)観察期間におけるスタチンの処方可能な期間(1989年以降)が占める割合
―である。
 
今回の論文の筆者らも,考察において“高コレステロールのリスクが観察期間中の治療介入により消失してしまい,低コレステロールのリスクが強調された可能性”や“低栄養の存在の可能性”や“甲状腺機能亢進症のようなコレステロールを低下させる肝疾患以外の疾患の可能性”に言及している。
私としては,コレステロールの群別をNIPPON DATA80と同様にした場合のTC最高群での成績や,TC最低群を正常栄養者と低栄養者とに分類した場合の成績などを知りたいものである。
 
また,今回の論文の筆者らの指摘する可能性を除外するためにもランダム化比較試験(RCT)が必要だと思われる。
以前,私が脂質栄養学会に提言した「スタチン剤を使用していて低脂血症を来している方を対象に,スタチン剤を中止する介入群を,スタチン剤を継続する対照群と比較する研究」の正当性は, 今回の研究結果によって支持されるものと思われ,各施設の倫理委員会を通る可能性が格段に高まったような気がする。
ぜひ,脂質栄養学会の先生方にはそのような研究を実施し,低コレステロール血症が死亡率上昇のinnocent biomarkerではなくtrue risk factorであるとする脂質栄養学会の仮説をきっちりと検証していただきたい。(完)
 
出典 Medical Tribune  2011.5.30
版権 メディカル・トリビューン社

<私的コメント>
「スタチン剤を使用していて低脂血症を来している方を対象に,スタチン剤を中止する介入群を,スタチン剤を継続する対照群と比較する研究の正当性・・・
正当性はともかく人道上の問題はどうなのでしょうか。

<自遊時間>
医療事故
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昨年来の国内のコレステロール論争については今までにも取り上げました。
 
きょうは北里研究所病院糖尿病センター・山田悟先生が書かれた「自治医大コホート研究」についての最新記事で勉強しました。
 
 
脂質栄養学会に追い風? 調整後も低コレステロールと高死亡率が関連
不毛な議論はやめて実りある介入試験を
研究の背景:昨年のコレステロール議論は鎮静化
昨年(2010年)9月,日本脂質栄養学会(以下,脂質栄養学会)が「長寿のためのコレステロールガイドライン」を発行したことで,コレステロールについての議論が盛り上がった。

しかし,このガイドラインはコレステロール異常値に対しての臨床的指針を示したものというよりは,単に日本動脈硬化学会(以下,動脈硬化学会)の 「動脈硬化性疾患予防ガイドライン」に対する異論を世間が注目したくなるような形で発表したものという色彩が強かった。
これに対する動脈硬化学会の反論は以下のようなものであった。
(1)ガイドラインでありながらエビデンスレベルが明示されていない。
(2)十分に交絡因子を調整していない観察研究から因果 関係を導きだしている。
(3)介入試験と観察研究であるコホート研究を混同し,介入試験なしに結論を出している。

 

昨年来の議論は鎮静化しているように思われるが,このたび自治医大コホート研究から,比較的しっかりと調整をしてもなお,低コレステロール値が高死亡率と関連していたという興味深い結果が発表された。
 
J Eoidemiol 2011;21:67-74
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed?term=J%20Epidemiol%202011%2C%2021%2C%2067-74
 
Low cholesterol is associated with mortality from stroke, heart disease, and cancer: the Jichi Medical School Cohort Study.
Nago N et al.
 
ABSTRACT
BACKGROUND:

We investigated the relationship between low cholesterol and mortality and examined whether that relationship differs with respect to cause of death.
CONCLUSIONS:
Low cholesterol was related to high mortality even after excluding deaths due to liver disease from the analysis.
High cholesterol was not a risk factor for mortality.
 
 
 
研究のポイント1:日本の12地域1万2,334人の健常者を対象としたコホート研究
自治医大コホート研究は1992年度に開始された,北は岩手県から南は福岡県までの全国12地域での住民健診のデータを集積しているコホート研究である。
この研究は,生活様式,血清脂質などと心血管疾患発症との関連を見ることを目的に開始されたもので,1992年4月~1995年7月に基礎データ が集積され,計1万2,490人が登録された。

 
平均11.9年の経過観察(14万5,312人・年)が行われ,死亡については死亡診断書から死因を判定することとした。
住民健診のデータであるので(論文の抄録のMethodsの項にはhealthy adultsを対象としたと記載されてはいるが),何らかの疾病を抱えている人を除外してはいない。

 
登録時40~69歳であった1万2,334人〔男性4,839人,BMI 23.1,収縮期血圧(SBP)130mmHg程度,拡張期血圧(DBP)78mmHg程度〕を対象にして,基礎データの総コレステロール(TC)値に従って,第1群:160mg/dL未満群,第2群:160~200mg/dL未満群,第3群:200~240mg/dL未満群,第4群:240mg/dL 以上群―の4群に分割し,その後の死亡率や死因を検討したのが今回の報告である。
 
また,NIPPON DATA80において肝疾患が交絡因子となってTC低値群での見かけ上の死亡率を上昇させていたことから,死因から肝疾患を除外した場合についての検討も行われた。

 
研究のポイント2:さまざまな調整をしても低コレステロール群の死亡率が高い
経過観察期間中のデータの欠損を除外して1万1,869人のデータが解析された。
経過観察期間中に635人の男性と423人の女性が死亡し,うち34人の男性と15人の女性が肝疾患(肝臓がん,肝硬変,その他)を死因としていた。
 
基礎データのTC値に従って,群別の比較をすると(第2群を基準として),男性では基準群での死亡率のハザード比が最低であったものの,女性では第3群,第4群(TC高値の群)の方が第2群より低く,第1群(TC低値の群)の死亡率が最も高いという結果であった(表1)。
これは,肝疾患を死因とする死亡を除外しても同様であり(表2),がんや心血管疾患の既往者を除外しても同様であった(表3)。
 
表1. 全体での死亡率のハザード比(年齢,SBP,HDL-C,喫煙,飲酒,BMIで補正)
 
 
表2. 肝疾患以外での死亡率のハザード比(年齢,SBP,HDL-C,喫煙,飲酒,BMIで補正)
 
 
表3. がん,心血管疾患既往者を除外した対象の肝疾患以外での死亡率のハザード比(年齢,SBP,HDL-C,喫煙,飲酒,BMIで補正) 
の出典はいずれも J Epidemimol 2011;21:67-74)

 

第1群の死因として,第2群よりもハザード比が有意に高かったのは,男性ではがん,女性では脳出血,心不全であった。                                                  (続)
 
 
<関連サイト>
日脂質栄養学会コレステロールガイドライン その1
http://blog.m3.com/reed/20101015

日脂質栄養学会コレステロールガイドライン その2
http://blog.m3.com/reed/20101016/_2

高コレステロールで長生き 脂質栄養学会が新ガイドライン
http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy/37020118.html

日本脂質栄養学会の再反論
http://blog.m3.com/reed/20101114/1

日本脂質栄養学会の回答を分析する その1(1/2)
http://blog.m3.com/reed/20110116

日本脂質栄養学会の回答を分析する その2(2/2)
http://blog.m3.com/reed/20110117/_2_2_2_

 
 
 
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MMJ誌に掲載されたLANCETの論文紹介の記事で勉強しました。

HDL cholesterol and residual risk of first cardiovascular events after treatment eith potent statin therapy:an analysis from the JUPITER trial
MMJ 2011 Vol.7 No.1 P24-25
Ridker PM,et al. LANCET 2010;376:333-339.
 
この研究はJUPITER試験の対象集団から得たデータが用いられました。
研究の目的は、高用量スタチン療法によりLDLコレステロール値がきわめて低い範囲に低下した場合でも、HDLコレステロール値と心血管イベントの関連が維持されるのかどうか、ということの解明です。
 
■ JUPITER試験の参加者は、糖尿病および心血管疾患の既往がなく、試験開始時のLDLコレステロール値が130mg/dl未満、高感度CRP値が2mg/L以上をしめした成人。
■JUPITER試験の主要エンドポイントは、非致死的心筋梗塞、不安定狭心症による入院、動脈血行再建、心血管死。
■結論
LDLコレステロール値の測定は、初期の心血管リスク評価の一環としては有用であるが、強力なスタチン療法を受けてLDLコレステロールがきわめて定値に達した患者における残存リスクの予測には役立たない。
 
以下
神戸大学・石田達郎准教授の解説。
■積極的LDL-C低下療法による心血管イベント減少率はいずれの報告においても30%前後であり、残存リスクに対する治療的介入が今後の課題である。
(HDL−C低値も残存リスクに対する治療標的の一つ)
■ HDLは炎症や糖尿病などの病態ではその構成成分が変化し、「dysfunctional=悪玉」となることが報告されている。
HDLの質はHDL−C量では判断できず、HDLの質的変化と心血管イベントとの関係も検討する必要があろう。
■本論文発表直後、欧州心臓病学会(ECS) はプレスリリースにおいて懸念を表明し、1つのサブ解析だけでHDL−C上昇に臨床的な意がないと判断すべきではないと反論している。

<私的コメント>
文中に
「ロスバスタチンの投与量が20mg/日と欧米や日本でも使用可能な用量であることなどから大きな話題を呼んだ」
とあります。
さて、この20mg/日は実際にはどうなんでしょうか。
私はほとんどの症例は2.5mgで十分な効果がえられており、せいぜいごく一部で2錠(5mg)を使用します。
そしてスタチン増量を考える前に エゼチミブの併用を考えます。
他の先生方の処方が分かりませんのでコメントをいただけると有り難いのですが。 
 

ロスバスタチン - MEDICAL LIBRARY

ロスバスタチンの市販後調査結果が明らかに:日経メディカル オンライン

井蛙内科開業医/診療録(2) : hs-CRPとロスバスタチン

 

<関連サイト>
動脈硬化とHDL
http://blog.m3.com/reed/20090129/_HDL


スタチン使用中でのHDL-C低値
http://blog.m3.com/reed/20110114/_HDL-C_


高齢者ではHDL-C値が高い場合にはコレステロール低下薬(スタチン)の効果は期待できない
http://www.m-junkanki.com/topics/topics15h.html
 

ポスト・スタチン”の最右翼はCETP阻害薬か HDLコレステロール値が2倍に--米研究
http://medical.nikkeibp.co.jp/inc/all/hotnews/archives/301941.html
(要パスワード)
■HDLコレステロール値を上昇させる、新しい脂質改善薬の臨床試験結果が、New England Journal of Medicine(NEJM)誌2004年4月8日号に掲載された。
わずか19人を対象とした短期間のパイロット試験だが、8週間の服用でHDLコレステロール値が 2倍になるなど、期待の持てる結果になった。
■今回の臨床試験に使われたのは、脂質代謝で大きな役割を果たしている、コレステロールエステル転送蛋白(CETP)の阻害薬。
CETPには、HDLからコ レステロールエステルを引き抜き、LDLや超低比重リポ蛋白(VLDL)に転送する(中性脂肪と交換する)作用がある。
CETPを阻害すると、HDLコレ ステロールが増え、LDLコレステロールが減ることが期待できる。
■面白いのは、LDLコレステロールやHDLコレステロールの「サブクラス分布」に変化がみられることだ。
作用機序からは当然ともいえるが、HDLコレステロールについては、粒子径が大きいHDL(HDL2)の比率が増えていた。
同様にLDLコレステロールでも、粒子径が小さく、比重が高いLDL(small,denseLDL)が減り、粒子径の大きなLDLが増えていた。
■ただし、CETPを完全に欠損した人(日本人では約1000人に一人と、他の人種より多い)の場合、HDLコレステロール値が高く、HDLの粒子径も大きいが、心疾患リスクはむしろ高いとの報告もある。
つまり、HDL2が増えることが、本当に心疾患予防の方向に働くか否かはまだわからない。
■ 次の課題は、CETP阻害薬によるHDLコレステロール値の増加が、心疾患の予防に結び付くことを、長期間の大規模試験で示すこと。副作用がスタチン並みに少なく、患者の服薬継続率(コンプライアンス)が高いことも必須条件だ。
原著
Effects of an Inhibitor of Cholesteryl Ester Transfer Protein on HDL Cholesterol
N Engl J Med 2004; 350:1505-1515
http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa031766

 

 

 

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CETP阻害剤

戯れ言たれる侏儒 / 2011.04.11 00:00 / 推薦数 : 0
この度の東北地方太平洋沖地震により被災されました方々に、心よりお見舞い申し上げます。
犠牲になられた方、そしてご遺族の皆様に対し、深くお悔やみを申し上げます。
また、福島第一原発事案(事故)で避難中の方、そして計画停電中の首都圏の方にお見舞い申し上げます。
また、被災者支援や原発復旧作業などの災害対策に全力を尽くしてみえる皆様に敬意を表します。

LDL-C低下にはスタチンがあり、完成した薬剤と評価されています。
残るコレステロール関連の薬剤としては、如何にHDL-Cを上げるか」に関心が集まっています。
その中で最も注目されている薬剤はCETP阻害剤です。
CETP阻害剤は、ファイザー社がトルセトラピブ、JTとロッシュ社がダルセトラピブ、メルク社がアナセトラピブを開発中でした。一番先行していたトルセトラピブはプラセボ群より死亡が多くなってしまい,開発を中止
この中でアナセトラピブはHDL-C上昇作用は強く,LDL-C低下作用も強力で大いに期待されています。
きょうは、このアナセトラピブについて勉強しました。

LDL-C半減,HDL-C倍増! CETP阻害薬anacetrapibの驚くべき脂質改善効果
Torcetrapibの開発中止から3年後のAHA 2010で報告,安全性も確認
より有効な脂質管理を目指した新薬の開発が続いているが,中でも有望視されていたのがコレステロールエステル転送蛋白(CETP)阻害薬注1)だ。
注1 CETPは、HDLからコレステロールエステルを回収し超低比重リポ蛋白(VLDL)やLDLに転送、この際にVLDLから中性脂肪がHDLに引き渡される。このため,CETP阻害薬は,HDL-Cを上昇させ,LDL-Cを減少させる作用が期待される
 
このクラスの薬で最初に第Ⅲ相臨床試験が行われたtorcetrapibは,心血管イベントリスクの上昇が認められたため開発中止に至った(N Engl J Med 2007; 357: 2109-2122)。
私的コメント;ILLUMINATE試験の中間安全性解析で有害性が発覚し、07年に開発が中止。アテローム抑制作用を調べたIVUS試験やCIMT試験の結果でも、全く効果がありませんでした。)
それから3年,第83回米国心臓協会年次集会(AHA 2010;11月13~17日,シカゴ)で同クラス2剤目となるanacetrapibの第Ⅲ相臨床試験DEFINE試験注2の結果が明らかにされ,N Engl J Med 11月17日オンライン版に同時掲載された。
注2 Determining the EFficacy and Tolerability of CETP INhibition with AnacEtrapib
 
安全性を確認した今回の試験では,torcetrapibで見られた血圧上昇や副腎への影響などは認められなかった。
また,それ以上に注目されたのが強力な脂質改善効果で,24週後にLDLコレステロール(LDL-C)は半減, HDLコレステロール(HDL-C)は倍増した。
報告した米ハーバード大学ブリガムアンドウィメンズ病院のChristopher P. Cannon氏は,今後,臨床効果(イベント抑制効果)を検証する大規模第Ⅲ相試験を実施することも明らかにした。
 
プラセボとの比較ではLDL-C値は約40%減少,HDL-C値は約140%増加
試験には20カ国153施設が参加し,二重盲検ランダム化比較試験(RCT)として行われた。
対象は冠動脈疾患(CHD),またはCHDのリスク 因子があり,スタチンなどの脂質管理を受けている患者。
脂質レベルは,LDL-C値が50~100mg/dL,HDL-C値が60mg/dL未満,中性脂 肪値は400mg/dL以下の患者と設定された。
 
2,757人がスクリーニングを受け,このうち1,623人がanacetrapib 100mg/日群またはプラセボ群にランダムに割り付けられた。
試験薬は18カ月投与され,その後も3カ月間経過観察された。
両群とも99%はスタチン治療を受けていた。
 
ベースラインから24週後にかけてのLDL-C値の変化を見ると,プラセボ群では82mg/dL→77mg/dLだったのに対 し,anacetrapib群では81mg/dL→45mg/dLとほぼ半減した。
1次エンドポイントとしたこの間の変化率では,プラセボ群に比べ 39.8%の有意な減少が認められた(P<0.001)。
 
同様の期間でのHDL-C値の変化は,プラセボ群の40mg/dL→46mg/dLに対し,anacetrapib群では41mg /dL→101mg/dLと2倍以上に増加した。
2次エンドポイントとしたこの間の変化率では,プラセボ群に比べ138.1%の有意な上昇が示された (P<0.001)。
 
そのため,anacetrapib群のLDL-C/HDL-C比はベースラインの2.1から24~76週後に0.5と大幅に低下した。
 
懸念された有害事象の増加はなし,3万人対象の第Ⅲ相臨床試験REVEALを実施
プラセボ群と比較して,血圧上昇やアルドステロン値,血清カリウム値の上昇は認められなかった。
また,事前に設定された主要心血管イベント (MACE)はプラセボ群2.6%に対してanacetrarpib群2.0%で両群間に差はなかった。
Cannon氏は,臨床効果を比較するには症例数 が少ないことを前置きしながらも,血行再建術の施行数がそれぞれ25例,6例とanacetrapib群で少なかったことを報告した。
 
指定討論者のスイス・チューリヒ大学病院のThomas F. Luscher氏は「torcetrapibは12カ月後にHDL-Cを72%上昇させてLDL-Cを25%低下させた。
しかし,血圧や血清アルドステロ ン値が上昇したほか,酸化ストレスやeNOS発現量の低下などにより血管内皮機能が低下した」と振り返り,anacetrapibでそのような悪影響がな かったのは「同じクラスの薬でもわずかな分子構造の変化が大きな違いを生むため」と説明した。
 
Anacetrapibの安全性が確認され,臨床効果の可能性も示されたことから,Cannon氏は3万例を対照とする第Ⅲ相臨床試験REVEAL注3開始すると明らかにした(英オックスフォード大学公式サイト参照)。
なお,CETP阻害薬としてはdalcetrapibも開発中だ。
 
注3 Randomized Evaluation of the Effects of Anacetrapib through Lipid Modification

 


 
 
 

<関連サイト>
CETP阻害剤
http://www.google.co.jp/search?hl=ja&source=hp&biw=1473&bih=850&q=CETP%E9%98%BB%E5%AE%B3%E5%89%A4&aq=f&aqi=g1&aql=&oq=
 
CETP阻害剤の謎
http://medicineblog.asablo.jp/blog/2007/11/11/1903193
 
脂質降下薬
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%84%82%E8%B3%AA%E9%99%8D%E4%B8%8B%E8%96%AC
■7CETP阻害薬
リポ蛋白のLDLとHDLの間でコレステロールを交換するCETPを阻害し、HDLコレステロールを増やす薬。
ファイザーのトルセトラピブ® (torcetrapib) は血圧が上がり心血管事故が増え、投与群の方が死亡(トルセトラピブ®とリピトール®の併用群82例対リピトール®群51例、各群約7500名)が多かったので2006年(平成18年)12月開発が中止された。
類薬に日本タバコのJTT-705などがある。
  
 
<自遊時間>
日経新聞のスポーツ欄に豊田泰光氏のコラムが時々載っています。
 あえて言う「昔は・・・」  野球評論家・豊田泰光
 ■ナイター開催の是非などが 問題となった今回の件でいうと、我々の世代が声をそろえて「昔はみんなデーゲームだった。あのころを思い出そう。お天道様の下でやる野球も悪くないよ」と訴えるべきだったのかも知れない。
■「昔はこうだった」 は老人の繰り言として嫌われるもとになるが、この局面では「たとえ粗末な球場であれ、夜行列車で移動しながらであれ、昔もちゃんと野球をしていたもんだ」と語ってもいいだろう。
■今年はみんな真っ黒になって野球をやればいい。今プロ野球に必要なのは、立派な球場や練習設備を、好きなように使う中で身についた”ぜい肉” をそぎ落とすことだ。厳しい練習を負った若い人たちに、私はせめて経験を語り、助力していきたい。
出典 日経新聞・朝刊  2011.4.7
版権 日経新聞社
私は本音で物事を語る豊田氏のような直言居士の人が好きです。
欠かさずこのコラムは読むようにしています。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%B1%8A%E7%94%B0%E6%B3%B0%E5%85%89
 
「歯に衣着せた?」お話(例えば「当たり障りのない大規模臨床試験のコメント」など)などは、人生残り少ない身にとっては時間の無駄使いに感じてしまいます。
昨日の東京都知事選で再選を果たした石原氏も(賛否の意見はあるものの )、そんなところが人気なのかも知れません。
 
私の思う「直言居士」は
音楽界では
吉田 秀和氏
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%90%89%E7%94%B0%E7%A7%80%E5%92%8C
■1983年、ホロヴィッツが初来日した際、その演奏を「なるほど、この芸術は、かつては無類の名品だった ろうが、今は──最も控えめにいっても──ひびが入ってる。それも一つや二つ のひびではない」と評して話題となった(ボロビッツと揶揄)が、1986年のホロヴィッツ再来日の時は、「この 人は今も比類のない鍵盤上の魔術師であると共に、この概念そのものがどんなに深く十九世紀的なものかということと、当時の名手大家の何たるかを伝える貴重 な存在といわねばならない」と称賛した。
宇野功芳氏
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%AE%87%E9%87%8E%E5%8A%9F%E8%8A%B3
 
文芸関係では
故 安原顕氏
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%AE%89%E5%8E%9F%E9%A1%AF
 
循環器関係では
桑原巌氏先生
などの方々です。 
 
その他
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見逃されている大動脈弁狭窄症患者の症状
最近のNew England Journal of Medicineから「手術ができない重症な大動脈弁狭窄症(AS)患者のうち,従来の内科的治療では1年生存率50.7%,1年心関連死亡率44.5%」という悲惨な調査結果が報告された。
わが国でも高齢化の進展および動脈硬化性疾患の増加に並行して,高齢者のASが確実に増えている。
本症を放置すれば予後は極めて不良だが,時機を逃さず 大動脈弁置換術(AVR)を実施すれば予後が改善される。
このことをしっかりと認識し,日々の診療に当たることが大事である。
本対談では,手稲渓仁会病院 心臓血管センター センター長の村上弘則氏と大阪市立大学大学院循環器病態内科学准教授の室生卓氏から,わが国での未治療AS患者の現状と,1人でも多くのAS患者を救うために何ができるのかについて,お話いただいた。
Leon MB, et al. N Engl J Med 2010; 363(17): 1597-1607
 
高齢化によるAS患者増加の実態
村上 
以前はリウマチ性のASが主流でしたが,最近では高齢化を背景に動脈硬化が強く関連する硬化性ASがそれに置き換わっています。
当科で診断された新規硬化性AS患者は軽症も含め2000年度に29人でしたが,2006年度には105人へと急増しています(図1)。
食生活の欧米化によって,高齢者にも動脈硬化が増えており,それと関連している硬化性ASもまた,高齢者を中心に増加を続けているのだと思います。
 
 
村上 
残念ながら,未診断で放置されている患者さんがかなり多く存在するものと推測されます。
また,診断されながらも適切なフォローがされ ていないケースもあると思います。
ASは高齢であっても安全に手術が可能で,時機を逃さずに手術できれば良好な予後が期待できます。
それにもかかわらず, 治療はもとより確定診断さえなされず放置されている現状は,残念でなりません。
 
室生 
何故,AS患者が未診断・未治療で放置されているのか。
それをどう解決していくべきなのか。
本日は一緒に考えていきたいと思います。
その前に,重症なAS患者がどの程度手術を受けているか,そしてASを放置することのリスクについて再確認しておきます。
まず,当院では1995年1月から2007年4月に重症ASと診断された269例を調査したところ約50%しか手術を受けていませんでした。
そして,手術が必要ながらも手術を受けなかった患者群の5年生存率は28%であり,手術を受けた群の85%に比べて非常に不良でした(図2)。
もちろん,全身状態が悪かったり,認知症などで手術を受けることができない場合もありますが,それでも重症ASの予後は極めて悪いと言えます。
この結果からも適切な時機にAVRを行えば予後が改善するAS患者も多いと言うことができます。

 

図表
 
村上 
われわれの施設では,2000年1月から2006年12月に手術が必要な重症AS患者を調査したところ,約3割しか手術を受けていませんでした。
理由としては年齢,拒否,合併症などが挙げられます。
 
 
なぜAS患者が放置されてしまっているのか?
村上 
AS患者が増加する一方で,適切な診断・治療がなされていない今の状況に対して,早急な対策が求められています。その対策を講じるに当たっては,まずASが放置されている理由を知っておくべきです。
 
室生 
まず,医師も含め医療者側のASに対する認識が低いことが原因ではないかと感じています。
われわれの反省からですが,循環器内科医でもASは確実に進行している疾患という認識が少し足りない気がします。
軽症であった患者さんが気付いたときにはかなり重症に進行していたということもあり ます。
また,循環器を専門としないプライマリケア医の先生方に関しては,ASの現状に即した正しい情報が行き届いていない,というのも原因の1つではないかと感じています。
われわれが学生のころは,「弁膜症はこれから減る」と教えられたものですが,現実は全く逆になっているのですね。
 
村上 
患者さん側はどうでしょうか。
患者さんの意識の問題も見逃すことはできません。
高齢になれば,当然のごとく息切れくらいは起こすよう になります。
それが実際にはASの症状だったとしても,本人には判断がつきませんから,年齢相応の変化だと勝手に判断して自ら生活を制限します。
このよう に,患者さんが症状を自覚していない場合,医師でも容易にこれを見抜けません。
つまり,問診で高齢者のASを見つけることは難しく,結果としてASが放置 されているのが現状です。
本当に症状があるかどうかを明らかにするためにも日常生活に即した丁寧な問診を心がけることが必要です。
 
 
聴診することがAS診断の第一歩
室生 (ASの診断を早期に確定するには)
まずは,循環器内科医を含め他科,プライマリケア医の先生方にも,高齢者の硬化性ASは増えているという事実を踏まえ,次の点をあら ためて認識していただきたいと思います。
(1)Listen:
ASは聴診(心雑音の聴取)で比較的容易に診断できるので,高齢者であれば,まず聴診をする
(2)Ask:
患者さんがASの症状を自覚していない場合も多いので,本当に症状があるか日常に即した丁寧な問診をする(3)Explain:
タイミング が重要であるので,手術機会を逃すと予後が悪いことをしっかりと患者さんに説明する
(4)Follow:
ASは確実に進行するので,無症候でも定期的に しっかりフォローする—。
 
以上の“AS診断4カ条”をぜひとも念頭に置いていただきたいと思います。
その上で,普段から生活習慣病などでフォローしておられる高齢患者に対して, 聴診を欠かさないよう強くお勧めします。
特に,動脈硬化性疾患を有する高齢者では,ASも高率に潜在していますから聴診が必須となります。
 
村上 
重要なご指摘です。
昨今は聴診を省略する場面も増えていますが,室生先生のおっしゃる“AS診断4カ条”を念頭に置きながら,高齢患 者には必ず聴診を行うようにしていきたいですね。
ASの聴診ポイントとして,「一般的に全胸部の広範囲に荒々しい収縮期雑音を聴取し,しばしば鎖骨部や頸 部に放散を認めること」を挙げておきます。
 
 
地域における医師同士の連携が重要
室生 
プライマリケア医の先生方には,多くの患者さんを救うために,未診断のASを早期に発見していただくことが大変重要です。
そのために も循環器専門医がプライマリケア医の先生方へ,現状に即した情報提供をすることがとても大切です。また,総合病院であれば,院内他科に働きかけることも必 要だろうと思います。
村上先生のご施設では,院内で初めてASを指摘される患者さんは多いですか。
 
村上 
院外から紹介されてくるのと同等もしくはそれ以上の割合の患者さんが院内で見つかっています。
その多くは一般的な循環器疾患でフォ ローアップ中の患者さんが,新規にASを発症した場合です。
それ以外にも,整形外科・外科などでなんらかの手術が計画された際に,術前検査で心雑音を指摘され,ASと診断されることも少なくありません。
院内で見つかるASの約3割が,術前検査に絡んだケースです。
ASが原因で本来の手術が受けられないということもありますので,他科においても早期にASを発見することは重要だと思います。
それと,高齢者では腎機能低下を来している方が多いので,腎臓内科の 先生がASを見つけるケースもまれではありません。
 
室生 
われわれの施設でも,術前検査で異常が認められ,循環器内科にコンサルされ受診してASが見つかるケースは確かにあります。
ただし, 手術を控えて精査するような場合ではASを見つけられますが,通常の診療ではやはり見逃しているケースが多いと言わざるをえません。
循環器専門医,他の専 門医,プライマリケア医を問わず,日常診療で高齢者を診ている先生は,今一度,ASを再認識すべきですね。
 
ところで,われわれは大学全体で定期的な勉強会を行っています。
大学の医師はもちろん,近隣の関連病院,開業医などの先生方にお集まりいただき,各科持 ち回りでテーマを決めています。
このような機会でASについて話し合うのも有用であると思います。
いつも患者さんを紹介していただいている先生方とは循環 器内科として別途ミーティングも行っていますし,今後もこのような活動の充実を図りたいと思います。
 
村上 
われわれの施設では近隣の先生方を対象に各エリアで勉強会を行っています。
ASのテーマを取り上げながら情報交換をする中で,聴診の 重要性を再確認しています。
また,フォローアッププログラムというのがあり,患者さんにフォローアップが必要な場合,必要に応じてご紹介いただいた先生に 次のフォローアップのタイミングを伝えています。
診療情報の共有にもなり,より確実なフォローアップを行うことができています。
 
 
聴診でASを疑ったら心エコー検査へ
室生 
地域での取り組みはとても大事ですね。
ところで,高齢者を診ておられる先生方が,聴診でASを疑う心雑音を聴取したとします。
もし,その先生が循環器専門でなかった場合,どうすべきでしょうか。
 
村上 
心雑音を聴取してASを疑ったら,まず心エコーを備えている最寄りの施設へ検査を依頼して,確定診断と重症度判定を行うことが大切です。
循環器専門クリニックでも総合病院でも構いません。
とにかく一度は専門医の診断を仰ぐことが,予後を損なわないために重要です。
 
室生 
「ASはさほど進行しない」,「症状が出現するまで大丈夫」などと認識されている先生方も少なくないと思いますので,それは本当に重要ですね。
心雑音を聴取してASを疑ったら,まず心エコーで病態把握を行ってから治療方針を立てるべきです。
 
村上 
循環器専門医の立場としては,病態把握のための検査を行うことは,決して迷惑ではありません。
 
室生 
「雑音があります。心エコー検査をしてください」と紹介状を書いていただくだけで結構です。
実際にASがなくても,まずはご紹介いただきたいですね。検査をすることで,患者さんとそのご家族は安心されますので。
 
村上 
普段から病診連携や診診連携を図っていれば,紹介の敷居は下がるでしょうし,ASのやりとりを通じて連携がさらに深まります。
勉強会などで顔を合わせた者同士であれば,連携もスムーズでしょう。地域ぐるみの連携が求められます。
 
 
QOL向上のための適切な手術タイミング
室生 (手術適応に関して)
心エコー検査の結果を踏まえ,主治医の先生と専門医が話し合い,軽症または中等症ならば 経過観察もしくは内科的治療が行われます。
その一方で,手術機会を逃さないために,適応判断をどう考えればよいのかが問題になります。
 
村上 
まずASが重度の場合,症状があればもちろん,症状がなくても心機能が低下すれば手術適応となります。
まだ結論には至っていません が,今後検討すべき課題として,高齢者において上記の基準で手術をしたのでは遅すぎる場合があります。
最近では,ASを心不全リスクと考えるようになっていますから,重症になる前の段階で待機的に手術した方が,予後改善のみならずQOLの維持・向上にもつながる可能性があります。
すなわち,心エコー検査で 大動脈弁圧較差,大動脈弁口面積を測定し,年齢や体表面積,合併症といった患者背景も含め,総合的に判断して手術タイミングを考えるべきです。
 
室生 
今,お話のありました高齢者への手術適応の問題ですが,当施設では主に70歳代の患者さんが手術を受けています。村上先生は年齢のファクターをどのようにお考えですか。
 
村上 
今は平均寿命も延びましたから,80歳代であっても適応があれば積極的に手術し,それで日常生活に復帰できる患者さんも珍しくなくな りました。
手術は安全ですし,予後は良好です。そうした経験から,80歳代という年齢だけで適応除外することはしていません。
むしろ当施設では,80歳代 の手術が増えています。
 
室生 
10年先の日本の状況を見るようですね。
 
 
ASは進行性疾患,フォローアップが大切
室生 
軽症から中等症であれば手術の必要はありませんが,ASは進行性の疾患であるため,心エコーでフォローアップする必要があります。
どのくらいの頻度で行うべきとお考えですか。
 
村上 
状況によりますが,おおむね年齢もしくは重症度で判断し,70歳代で中等症以下ならば年1回の心エコー検査でよいと思います。
一方,80歳代もしくは重症ASならば,より頻繁にフォローする必要があります。
 
室生 
フォローが遅れ,既に手遅れといった患者さんを経験したことがありますが,何か対策をされていますか。
 
村上 
われわれは,先ほど紹介させていただきましたフォローアッププログラムを利用し,院内の地域連携室に協力を仰いでいます。
診断のつい た患者さんを登録しておけば,地域連携室から定期的に主治医の先生と患者さんへ連絡されます。
このシステムにより,病態悪化の見落としをなくしています。
地域ぐるみで医師の連携が取れている状況が望ましく,地域連携室がその橋渡しをしてくれています。
 
 
疾患を理解していただくこと
それが,患者さんを救うこと
室生 
ASは軽症であれば一生涯手術が必要ない場合もありますが,重症であれば手術のタイミングが重要になってきます。
この手術機会を逃さないためには患者さんへの説明がとても重要です。
この点について村上先生はどのようにお考えですか。
 
村上 
医師からの説明は極めて重要ですね。
手術が必要な場合でも,話し方によっては,「もう年ですから手術は結構です」となりかねません。
重要なことは,
(1)珍しい病気ではなく最近増加している病気であること
(2)ASは進行性の病気であるため定期的なフォローアップが非常に大事であること
(3)手術が必要になっても適切なタイミングで行えば手術は安全に行われていること
(4)手術によって予後は改善し日常生活に復帰できること
—を折に触 れ説明しておくことが大切です。
 
 
室生 
わたしは重症ASの患者さんに対しては,「悲観する必要もないが,楽観してもいけない」と言っています。
客観的に,手術の必要性と得 られる利益を説明します。
心エコーでのフォローアップと,患者さんへの説明がしっかりとできていれば,それぞれの患者さんに合った手術のタイミングを逃さずに済みます。
 
 
AS患者を救うためにわたしたちができること
村上 
最後に,AS患者を取り巻くすべての医師が“AS診断4カ条”をあらためて振り返り,より多くの患者さんを救うために取り組んでいただくことを期待しています。
 
 
 
 
出典 Medical Tribune 2011.1.27
版権 メディカルトリビューン社
 
 
 
 

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昨日の

日脂質栄養学会コレステロールガイドライン その1 http://blog.m3.com/reed/20101014/_1

の続きです。

山田先生の考察:相手を裁いた論理で自らをも裁くべき
実は,以前から大櫛氏の主張には興味深いと思うところがあり,英文論文(World Rev Nutr Diet 2009; 100: 63-70)をかなり苦労して入手し,読んだことがある。
その時私が同氏の論文に抱いた印象は「結論を急ぎすぎている」であった。
今回,日本脂質栄養学会ガイドラインに対して抱いた印象は全く同じであり,「ガイドラインの体を成していない」と思った。
実際,このように推奨度やエビデンスレベルを明示していない文章をガイドラインと呼べるのであろうか。  

ここでは,これまでとは逆に,大櫛氏の論文について述べた上で,浜崎氏による日本動脈硬化学会ガイドライン批判について触れ,最後に日本脂質栄養学会に注文を付けさせていただきたい。

 

大櫛氏の論文について
1. 日本総合健診医学会に所属する施設の70万人の健診結果からLDL-Cの基準範囲を求めると上限は男性180mg/dL,女性190mg/dLである。
糖尿病の診断基準がそうであるように,健診受診者と何らかの合併症との関係から閾値を求め,基準範囲とするべきではなかろうか。
大櫛氏がLDL-Cが高い方が長生きすると主張するのであれば,この値より下がると死亡率が上がるという値をもってコレステロールの下限値を設定すべきである。
同氏の主張内容からすれば,健診受診者の平均値や標準偏差から基準値を求めるべきではない。

2. 神奈川県伊勢原市の男性約1万人,女性約1万6,000人(平均年齢63歳程度)の健診データから,平均追跡8.1年での死亡率を解析すると,LDL-Cが高い方が死亡率が低い。

以下のようなデータをお考えいただきたい。


 
ここで見ていただいて分かるように,真には肝硬変を有していても有さなくてもコレステロール高値群の方が死亡率が高いのに,一見,全体としてみるとコレステロール低値群の方が死亡率が高く見えることがある。
このような要素を交絡因子と呼ぶ。
一般には交絡因子を排除することが不可能である観察研究においても,調整と呼ばれる作業によって,既知の交絡因子の排除を試みるわけである。
この伊勢原市の研究では何の調整も実施されていない。
よって,「仮説探索」は可能であっても,「仮説立証」には向いていない。

3. 中性脂肪も高い方が死亡率が低い。
これも同じく「仮説探索」としては成立しているが,「仮説立証」は成されていない。

4. HDL-Cは女性では低値であるほど死亡率が高い(日本動脈硬化学会ガイドラインと同じである)が,男性ではU字型であり,高くても低くても死亡率が高く,善玉コレステロールとは言えない。
これも同じである。

5. 神奈川県伊勢原市と福島県郡山市の健診データから男性2,000人,女性1,800人程度の糖尿病患者の6年間の追跡を行ったところ,女性ではLDL-Cと死亡率に関係はなく,男性ではLDL-C 190mg/dL超で死亡率が高くなるのみであった。
これも基本は観察研究なのであるが,この糖尿病男性のデータを見て,それでも「LDL-Cが高い方が長生きする」という結論がいかにして導き出されたのかが理解不可能である。

6. 脳卒中データベースに登録された脳卒中患者のうち,入院前に高脂血症治療を受けていなかった男性2万2,000人,女性1万5,000人を対象として,高脂血症の有無で群別したところ,高脂血症あり群の方が臨床指標が有意に良かった。
これも観察研究なのであるが,性別・年齢・高血圧の有無・糖尿病の有無での調整をしたと記載があるので,仮説の立証を志したことは理解できる。
しかし,それでも交絡因子は除外し切れていない。

すなわち,高血圧・糖尿病状態において同等で,高脂血症もないのに脳卒中を呈する患者では,高脂血症があって脳卒中を生じた患者よりも喫煙者が多かったり,家族歴が濃厚であったりするなど,重症になりそうな要素を別に持ち合わせていたかもしれないのである。
そうであれば,高脂血症もないのに脳卒中になった患者で重症度が高くなることは,必ずしも高脂血症が脳卒中の予後を改善させることを意味しないことになる。

すなわち,観察研究は調整をしようとも交絡因子を除外し切れないものであり,あくまで仮説探索のための研究として扱うべきなのである。
これに対して既知・未知を問わず交絡因子を均等に割り振って行う研究が無作為介入研究であり,この研究が仮説検証研究となるものである〔だからこそランダム化比較試験(RCT)が過剰なまでに重視されるわけである〕。

ところで,このデータに対しては調整を行った大櫛氏が,なぜ伊勢原市や郡山市のデータに対しては調整をしなかったのであろうか。
この点については同氏は明確な記載をしていないように思う。

7. 脳卒中患者と一般健診対象者を比較すると,脳卒中患者の方が未治療の比率が低く,未治療であることが脳卒中に対して保護的であることが示唆される。

高脂血症を指摘されながら未治療の方の多くが軽度の(投薬不要と医者に判定された)高脂血症患者で,治療中の高脂血症患者の多くが重度の(投薬必要と医者に判定された)高脂血症患者であるとすると,脳梗塞患者に治療中(重度の)高脂血症患者が多かったり,一般健診対象者で未治療(軽症の)高脂血症患者が多かったりしても,あまり疑問には思わない。
症例対照研究を試みられたのだと思うが,この解析から何か結論が得られるとは思われない。

こうして考えると,大櫛氏のデータからは「LDL-Cが高い方の粗死亡率が低く,LDL-Cが高い方が死亡率を下げられるかもしれない」という仮説が立て得るのみで,何も仮説検証のデータはないことがよくご理解いただけると思う。
すなわち,「LDL-Cが高い方が長生きする」可能性と「死亡しやすい人では死の数年前からLDL-Cが低下している」可能性の両方が存在し,いずれが正しいのか(いずれも正しい,あるいは,いずれも誤りである可能性もある)について結論は出せないのである。
浜崎氏の日本動脈硬化学会ガイドラインの批判について
1. LDL-Cの疫学調査が示されていない。
日本動脈硬化学会ガイドラインが示しているのはTCの疫学調査であり,臨床的に分かりやすいようLDL-Cに変換してガイドラインを作ったことが問題だというスタンスであろうか。
LDL-Cがよいのか,TCがよいのか,non-HDLがよいのか,apo-B/apo-Aがよいのか,これは常に議論の対象である。
しかし,ガイドラインとはある物事についての方針を指し示す必要がある。
LDL-Cの疫学調査が示されていないからという理由で,より分かりやすくするためにLDL-Cを指標として選択されたことが誤りであるとまでは言えないのではなかろうか。

2. TC 240-260mg/dLで総死亡率が一番低下しているにもかかわらず,TC 220mg/dLに相当するLDL-C 140mg/dLを基準値にしている。
粗死亡率を重視するのか,調整死亡率や調整合併症発症率を重視するのかの相違であろうか。これもそれだけで誤りとは言えないように思う。

3. 男女別になっていない。
これはぜひ日本動脈硬化学会の次のガイドラインの改訂の際の参考にしていただきたい指摘だと思う。

4. ガイドライン作成委員の利益相反情報が公開されていない。
利益相反情報の公開についての指針は,日本内科学会を中心にして策定されたものが今年公開された。
それ以前に発表された日本動脈硬化学会ガイドラインに対して利益相反情報の公開がなされていないからという理由で批判するのは後出しじゃんけんのごとくに見える。

5. 論拠となるデータの死亡者数が一けたである。
総死亡率にのみ着目すると決めたのは浜崎氏あるいは浜崎氏が理事長をやっておられる日本脂質栄養学会であって,日本動脈硬化学会ではない。
自分たちが注目する指標のみで批判するのはいかがなものであろうか。
また,「LDL-Cが高い方が長生きする」という仮説を検証するための無作為介入研究は歴史上存在していない。
日本脂質栄養学会ガイドラインにおいて採用された介入試験での死亡者数はどの程度の数なのであろうか。
この批判は自らのガイドラインに対する批判としても使用しなくてはなるまい。

6. 食事療法の有効性を示すデータはない。
多くの方がご存じのように,コレステロールの多くは腸肝循環をしており,吸収されるコレステロールの多くは経口摂取に由来していない。
また,コレステロール摂取量が減少すると,肝臓のコレステロール合成が亢進してしまう。
従って,食事療法の有効性は理論的にも低く,その単独での有効性を示すデータはないのであろう。
そうであるならば,なぜ日本脂質栄養学会ガイドラインに食事についての記述をしたのであろうか。
ガイドラインのポイントとして最初に示した項目8,9を自らのガイドラインに上げた理由はどこにあるのであろうか。
この批判も自らのガイドラインに対する批判としても使用しなくてはなるまい。

7. MEGA study(Lancet 2006; 368: 1155-1163)は真には二重盲検試験でなく,かつ,途中で試験期間が延長されており,エビデンスとして採用すべきでない。
臨床研究の質を問題とするのは極めてよいことである。
しかし,質が悪い場合には不採用とせよとするのはいかがなものか。
通常は質が悪ければエビデンスレベルを低いものとして扱うべきなのであって,無視するのは奇異である。

また,仮に問題があるにしても日本人を対象とした無作為介入試験MEGA studyの方が,交絡因子による調整を実施していない観察研究(大櫛氏の論文)よりもはるかにエビデンスレベルは高いと思われる。
日本脂質栄養学会のガイドラインにおいては,エビデンスの採用ルールを明示する必要がある。
また,この批判をした以上は日本脂質栄養学会ガイドラインは二重盲検試験のみを根拠とするべきである。
その点でも同氏の論文(観察研究)を根拠にする姿勢には疑問を感じざるを得ない。
他人を批判するために用いた論理は自らにも当てはめるべきである。

8. 既存の欧米のエビデンスでは,4S試験のみが突出して死亡率を低下させており,うのみにできない。
torcetrapibやエゼチミブではLDL-Cの低下はあっても動脈硬化性疾患や死亡率への有効性は示せていない。
欧米のエビデンスをうのみにするかどうかは個々の臨床家の判断である。日本脂質栄養学会がなすべきは推奨度とエビデンスレベルの明示である。
そして,何よりもその前提となるエビデンスに対する判断ルールも日本脂質栄養学会は明らかにせねばなるまい。

また,スタチン以外でのコレステロールへの介入が有益性を示すのに困難であったことは,スタチンを中心としてコレステロール介入を勧める日本動脈硬化学会のガイドラインには直接は影響しない。


日本脂質栄養学会への注文
上記の大櫛氏,浜崎氏の論文への批判的吟味において述べたごとく,日本脂質栄養学会は,自らが日本動脈硬化学会のガイドラインを批判した理由そのものによって批判されるべきである。

真に二重盲検試験でないことによってMEGA試験を根拠とすべきでないとまで述べる以上は,真の二重盲検試験によって「LDL-Cが高い方が長生きする」という仮説を検証すべきである。
その試験がなされないうちに,あるいはその試験で死亡率に差がつかないうちに,日本脂質栄養学会がLDL-Cについてガイドラインを出すのは時期尚早であり,早急に撤回すべきである。
撤回ができないのであれば,「日本脂質栄養学会は先に結論を出しておいてから採用するエビデンスを選択した」というそしりを受けぬよう,エビデンスの採用ルールとエビデンスの質の評価について緊急に告知(追記)すべきである。
もはや後の祭りであるが,(他学会といえども)既存のガイドラインと対立する意見をガイドラインとして出す際には,患者の混乱を招かぬよう最大限の配慮をすべきであった。
これも後の祭りであるが,ガイドラインの要旨として発表するからには,明確な臨床指針を記載すべきであった。
 
日本脂質栄養学会が日本動脈硬化学会ガイドラインに批判を浴びせることは科学的に良いことだと思う。
しかし,ひとたび自分たちもガイドラインとして世に出した以上,責任が発生する。
少なくとも数年のうちに(LDL-Cを上昇させる介入によって死亡率を低下させる)大規模臨床介入試験を実施するしかあるまい(もちろん本来は既に試験済みであるべきなのだが)。

日本脂質栄養学会が日本動脈硬化学会ガイドラインに向けて振り上げた論理の拳,まさにその論理で自らのガイドラインにも裁きを与えられるかどうかに私は注目したい。

出典 MT pro 2010.10.12
版権 メディカルトリビューン社

 

羽柴正和 『曙光不二』 リトグラフ http://www.seikougarou.co.jp/sell/hashibamasakazu/1035.html

 

 

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