戯れ言たれる侏儒
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高齢者大動脈弁狭窄症

戯れ言たれる侏儒 / 2011.12.15 00:19 / 推薦数 : 0
AVRが困難な症例にTAVIを選択
高齢者の大動脈弁狭窄症(AS)の外科治療として大動脈弁置換術(AVR)が標準術式とされる。
一方,海外では高齢者や合併疾患などAVRが困難な症例に対して,より低侵襲の経皮的大動脈弁留置術(TAVI)が施行されている。
わが国でも近い将来,AVRとTAVIそれぞれの適応が問題となる可能性がある。
名古屋市で開かれた第64回日本胸部外科学会(会長=名古屋大学大学院心臓外科学・上田裕一教授)のシンポジウム「弁膜症 高齢者のAS手術成 績:TAVI導入後の手術適応を考慮して」(座長=九州大学大学院循環器外科学講座・富永隆治教授,大阪大学大学院心臓血管外科学・澤芳樹教授)では AVRおよびTAVIの手術成績が紹介された。

TAVI適応は手術拒否例や高齢者の一部
AVRの手術成績は著しく向上しており,TAVIの適応症例の選択が重要となる。
兵庫県立尼崎病院心臓センター心臓血管外科の大野暢久部長は,手術治療に至っていないAS患者の背景を分析。
「高齢者や手術拒否例の中には,TAVIを検討する余地がある症例もあると考えられた。しかし, TAVIが考慮される症例は少ないため,センター化した施設でTAVIを施行することが望ましいと考えられる」と述べた。
 
AVR短・中期成績は良好
大野部長らは2005年1月1日~11年4月30日に同院の電子カルテシステムに登録されたAS患者280例をAVR施行108例と非施行172例に分け,さらに非施行群のうち有症状または中等症(圧較差40mmHg以上,弁口面積1.0cm2未満)以上のAS(+)群85例を対象に,手術に至っていない理由を診療録から分析し検討した。
その結果,医学的理由から積極的治療が考えられない(DNR),超高齢,認知症,担がん患者,悪性疾患以外の重篤な合併症,手術拒否,無症状のため経過観察,不明が挙がった。
 
非施行群は施行群に比べて有意に高齢(80.2±8.5歳対68.8±11.1歳)で,心臓外科手術のリスク評価指標であるlogistic Euroscore(LE)も有意に高く(14.0±9.3%対10.5±8.0%),病院死亡率も有意に高率であった(0%対11.8%)。
AVR非施行群のうちDNR群,超高齢群,認知症群,手術拒否群の年齢は高く,LEはDNR群,超高齢群,認知症群で高かった。
また,AVR施行群に比べて非施行群の心臓死の頻度は有意に高く,特に認知症群,DNR群,不明群の予後は不良であった。
 
以上から,同部長は「AVRの短期・中期成績は良好で,AVR適応症例がTAVIの適応症例になるとは考えにくい。一方,AVR非施行例のうちDNR例および認知症例の予後は不良であるが,これらの症例になんらかの治療的介入を行うことは社会的に問題があると思われる。経過観察例はAVRの良い適応と考えられる。担がん患者のうち予後良好例や合併症を有する患者は,AVRまたはTAVIの適応となる」とまとめた。
さらに「高齢者の一部はTAVIの適応を検討する余地があり,手術拒否例でもTAVIが低侵襲であることを説明することで受け入れられるケースもあるだろう」と指摘した。

~高齢者AVR遠隔期死亡~
CABGの合併手術などが危険因子

神戸市立医療センター中央市民病院心臓血管外科の小山忠明医長は,70歳以上に施行されたASに対する単独AVRの成績および内科でフォローされた70歳以上の重症ASの成績をそれぞれ検討。
「手術成績は近接期,遠隔期とも良好であったが,退院時の自立障害は80歳以上で多く,遠隔期死亡の危険因 子として冠動脈バイパス術(CABG)の合併手術,術前ニューヨーク心臓協会(NYHA)心機能分類Ⅲ度以上,退院時の自立障害が挙げられた」と述べた。

内科医との連携が重要
小山医長らは,70歳以上のAS患者で単独AVRが施行された126例を,70歳代(96例)と80歳代(30例)の2群に分けて,47.2±35.5 カ月追跡し,治療成績を比較検討した。
その結果,両群の術前因子では80歳代群のLEは有意に高かった(10.1±4.2%対5.7±2.0%)。
術中因子および術後合併症の頻度は両群間で差は認められず,病院死亡も80歳代群0例,70歳代群4例(4.2%)と,両群で差はなかった。
しかし,退院時に自立障害が認められた割合は,80歳代群で有意に高かった(20.0%対3.2%)。
5年生存率は70歳代群90.2±3.4%,80歳代群 93.3±6.4%とも良好であり,全体の再手術回避率は8年間で97.3±1.5%で,両群間で有意差は認められなかった。
 
遠隔期死亡の危険因子を検討したところ,CABG合併手術施行例,NYHAⅢ度またはⅣ度例,退院時自立障害例で遠隔期死亡が有意に高かった(ハザード比:CABG合併手術施行10.1,NYHAⅢ度またはⅣ度例3.67,退院時自立障害例5.538)。
 
また,内科で保存的に投薬治療された74例で手術が行われなかった理由を検討したところ,「拒否」が27.0%で最も多かった()。
内科的治療例の遠隔期死亡は27例(うち心臓死は17例)で,1年生存率83.6±4.3%,5年生存率55.7±6.9%と手術群と比べて有意に低かった。
 

図表
 
同医長は,TAVIの適応として「年齢(80歳)は絶対的な因子ではないが,考慮すべき因子である。NYHAⅢ度またはⅣ度の症例はTAVIを考慮すべきであろう。CABGが危険因子であったことから,AVR,TAVIいずれでも症例によっては経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を考慮すべきである」と指摘。
さらに,「内科的治療を受けていた患者の27.0%は手術拒否例であったことから,手術に対する正確な情報提供が重要で,そのためには内科医との連携が必要である」と述べた。

TAVIは高齢者高リスクASの重要な治療選択肢に

大阪大学大学院外科学講座心臓血管外科学の吉川泰司氏は,高齢者高リスクAS症例に対するAVRおよびTAVIの成績を紹介。
AVRは高齢者重症AS患者に対するゴールドスタンダードであるが,今後,高齢者重症AS患者の治療戦略においてTAVIは重要になると考えられる」と述べた。
 
TAVI症例では合併症は認められず
同大学関連施設から成るOSCAR study groupは2009~10年にAS患者288例(平均年齢75±9歳,75歳以上168例,80歳以上86例)に単独AVRを施行し,その30日死亡率は0.7%,病院死亡率は1.0%と,良好な成績であった。
 
また,同大学では2001~10年に75歳以上のAS患者33例(平均年齢78±4歳,Euroscoreは11.8±5.5%)に単独AVRを施行 し,1,140±1,093日観察したところ,手術死亡例および病院死亡例はなく,術後在院期間は21±9日であった。
術後合併症は,心房細動10例 (30%),一過性脳虚血発作3例(9%),肺炎1例(3%)が認められたが,脳梗塞は認められなかった。
以上から,吉川氏は「高齢者AS症例に対する AVRは安全で,満足のいく早期成績が得られた」と述べた。
 
しかし,超高齢者や併存重症疾患などの理由でAVRがなされていない高リスク症例がAS症例の30~60%を占めているといわれており,それらの症例に対してTAVI治療は今後,新たな治療法として定着することが予想される。
 
同大学で,75歳以上の開心術困難な高リスク重症AS症例70例を検討し,そのうち29例にTAVIが施行され,また19例はTAVIが予定され,TAVI不適応と判断された症例は22例であった。
これら70例の平均年齢は85歳,Euroscoreは20.1±10.2%であった。
TAVI施 行例のうちデータ公表が可能な6例の平均年齢は85歳,Euroscoreは22%で,病院死亡例は認められなかった。
TAVIのうち経大腿動脈アプロー チ例(5例)では合併症は認められず,左小開胸下,心尖部アプローチ例(1例)では心不全,出血などの合併症が認められたものの術後49日に独歩退院となった。
術後NYHA分類は全例改善し,1例に他病死(がん死)が認められたが,5例は現在外来通院中である。
 
TAVI不適応と判断された22例の内訳は,解剖学的に不適応と判断された症例が9例,重度併存症例が7例,超高齢(97歳)1例,家族拒否3例などであった。
これら22例中6例にAVRが施行され,その多くは解剖学的にTAVI不適応例であった。
 
最後に同氏は,高齢者重症ASに対する治療戦略()を示した。
 

図表
 
出典 Medical Tribune  2011.12.8
版権 メディカル・トリビューン社

 
 
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経皮的弁膜症治療

戯れ言たれる侏儒 / 2011.11.17 00:42 / 推薦数 : 0
デバイスラグの解消が必要
非リウマチ性弁膜症がわが国でも増えている。
特に,加齢とともに頻度が高くなる大動脈弁狭窄症の増加が目立つ。
予後不良なため,早期に人工弁置換 術(AVR)を行う必要があるが,高齢者や高リスク患者は適応外とされることが多い。
こうした中,低侵襲手術として開発された経カテーテル的大動脈弁留置 術(TAVI)に期待が寄せられている。最近は,経カテーテル的僧帽弁留置術(TMVI)も考案され,両手術に用いるさまざまなデバイスの開発が進められ ている。大阪市で開かれた第20回日本心血管インターベンション治療学会(会長=大阪大学大学院先進心血管治療学寄附講座・南都伸介教授)のタウンホール ミーティング「経皮的弁膜症治療は,欧州では,すでに日常臨床として使用されている!果たして本邦にいつやってくるのか?」(座長=東邦大学医療センター 大橋病院循環器内科・中村正人教授,米スタンフォード大学循環器科・池野文昭氏,Boston Scientific社・内田毅彦氏)で,デバイス開発の最新情報が報告された。

TAVIの一部で治験進行,TMVIは出遅れ
座長の池野氏は「日本ではTAVIデバイスの一部で最近治験が開始されたところで,欧米,特に欧州からは大きく後れを取っている」と指摘。
行政,医師,企業によるチームワークの重要性を強調した。

SAPIEN XTの米国認可は年内か
池野氏は「日本ではごく一部の施設を除き,弁膜症のカテーテルインターベンションの研究が始まったばかり。世界の潮流に乗り遅れないようにする必要がある」とした。
TAVIデバイスは,フランスの心臓血管外科医Cribierが1990年代末に動物で有用性を確認。
2000年代に入って最初のヒトへの留置が行われた。
以後,さまざまなデバイスが開発され,現在はバルーン拡張型のEdwards Lifesciences社のSAPIEN XTと,自己拡張型のMedtronic社のCoreValveが,欧州で治験を終え,CE(European Conformity)マークを取得している。
SAPIEN XTに関しては,米国でもごく最近,治験が終了した。同氏は「米食品医薬品局(FDA)のパネルでかなりポジティブな意見が出されたので,おそらく米国で も今年中に認可されるのではないか」と述べた。
日本では,大阪大学など3施設共同の治験が進められている。そのほか,Boston Scientific社のSadraなど,多数のデバイスの開発が欧州で進められている(図1)。

 
図表
 
TMVIにおけるデバイスラグはさらに大きい。
同氏によると,米国の循環器医Goreが2000年ころに考案したMitra Clipは,2003年にヒトへの最初の応用が試みられた。
その後Abbott社により開発が進められ,欧州では2008年にCEマークを取得。
米国で は多数例を対象とした治験EVEREST-Ⅰ,Ⅱが終了したが,いつごろ承認されるかは明らかではない。
さらに,TMVIデバイスとして,米国 Cardiac Dimensions社が開発したCARILLONの治験が欧州で行われ,CEマークを取得している。
そのほかのデバイスの開発は欧州や中南米で進められている。
日本では,いずれのTMVIデバイスも治験開始にも至っていない(図2)。

図表
同氏は「device innovationには莫大なコストと時間,手間がかかる。弁膜症のカテーテルインターベンションのデバイスでも同じだが,日本の患者にもできるだけ早 く最新の治療を提供できるようにしなければならない。少しでもデバイスラグを解消するためには,行政,医師,企業によるチームワークが非常に重要だ」と訴えた。


日本のSAPIEN XT開発は順調に進展
日本のTAVIのパイオニアである大阪大学大学院心臓血管外科学の澤芳樹主任教授は,SAPIEN XTを用い,4例の臨床研究で良好な成績が得られたこと,現在3施設共同の国内治験が進行中であることを報告。
デバイスラグはおそらく生じないだろうとの見方を示した。

20mmサイズの治験が日本から
澤主任教授らは2009年秋に,TAVIの臨床研究を開始。2010年3月までに4例(年齢81~91歳,平均85歳)に実施した。
アプローチ法は,カ テーテルを肋骨間から入れ,肺,心尖部を通過,弁に到達させるtransapical approach(TA)が1例,transfemoral approach(TF)が3例。
ニューヨーク心臓協会(NYHA)心機能分類はⅡ度1例,Ⅲ度2例,Ⅳ度1例。間質性肺炎,慢性閉塞性肺疾患 (COPD),慢性腎不全などを有し,EuroScoreは平均26.8%と高い。
しかし,手術は全例成功し,TA例で心尖部出血が認められ,抜管がやや 遅れたものの,ほか3例では手術合併症はなく,術後平均9.2カ月のフォローアップで全例生存している。
同主任教授は,同じ年齢層のAVRに勝るとも劣ら ない成績が得られたとした。
圧較差の有意な低下も認められた。NYHA分類は全例1段階改善した。
 
一方,SAPIEN XTの治験は,上記4例を含む大阪大学症例31例(TF 23例,TA8例)と,榊原記念病院,倉敷中央病院の症例を併せた60例を対象に進められ,ごく最近終了した(23mm,26mmサイズ)。
さらに,弁輪 の小さい日本人に適した20mmサイズの治験が今年6月,世界に先駆けてスタートした。
 
同主任教授は,左室補助人工心臓(LVAD)が承認時既に製造中止になっていたという過去の苦い教訓を基に改革が進み,デバイスラグは明らかに短縮され つつあるとし,「SAPIEN XTの国内治験の進ちょくを見ると,おそらくデバイスラグが生じることはないだろう」と述べた。
また,承認までにTAVIを実施する施設,医師の基準案を 作成する必要があると指摘した。

臨床試験基盤とFIM試験体制の整備を
医薬品医療機器総合機構(PMDA)医療機器審査第二部の鈴木由香部長は,TAVIデバイスの開発は「かなり順調に進んでいる」としながらも,先 進的な医療機器全般の国内開発をより促進するために,欧米に劣らない臨床試験の基盤とFirst in Man(FIM)試験ができる体制整備の必要性を強調した。

シーズが欧米に流出
日本でSAPIEN XTの治験届けが提出されたのは米国よりも半年早い2010年4月。
鈴木部長は「デバイスラグを生まないという企業の努力により,SAPIEN XTについては,かなり順調に開発が進んでいる」と評価した。
ただし,デバイスラグを回避するための体制は,いまだ理想的なものではないとも述べた。
 
デバイスラグの主な原因とされてきた承認審査の遅れは,現在,米国と同等レベルまで改善された。
しかし「審査期間の短縮だけではデバイスラグは解消しない」と同部長。
「有望なシーズが欧米に流出してしまい,欧米で開発後に日本で治験着手となることがデバイスラグの根本的な要因だ」と指摘。
「先進的な医療 機器の国内開発を促進するためには,自国で臨床試験を行い,エビデンスを構築できる体制をつくること,さらに,開発したデバイスを製品化できる仕組みを持 つことが重要だと考えている」。
そのためには「欧米に劣らない臨床試験の基盤を整備すること,FIM試験が拠点病院以外でも広く実施できる体制を整備する ことが必要だ」と述べた。
 
PMDAでは7月から,新医薬品・医療機器の創出を促すため,初期段階からの薬事戦略相談事業を開始した。

出典 MT pro 2011.9.22
版権 メディカル・トリビューン社
 
<関連サイト>
PARTNER試験
■術適応と判断された高リスクの重度症候性大動脈弁狭窄患者において,TAVIの1年後の生存率は心臓外科手術(大動脈弁置換術)と同等であった

僧帽弁逆流に経皮的クリップ術
■中等症から重症の僧帽弁閉鎖不全症(僧帽弁逆流があり、手術が適応になる患者を対象に、低侵襲の僧帽弁閉鎖不全治療デバイスであるMitraClipを用いた経皮的修復術と外科的治療の有効性と安全性を比較したEVERESTⅡ試験の結果が、NEJM誌2011年4月14日号に報告された。
経皮的修復術群には、手術群に比べてその後に外科的治療が必要になった患者が多く存在したが、短期的な安全性とQOL、1年後の心不全の程度や左室駆出分画低下率などにおいては外科的治療に優っていた。

経カテーテル的僧帽弁尖クリッピング術
左心不全の独立予後規定因子ともいわれる僧帽弁逆流(閉鎖不全:MR)を、経カテーテル的にMR ジェット噴射部で僧帽弁両葉の弁尖を左室側からクリッピング接合することにより軽減するデバイス(MitraClip)が開発されたため、術後12ヵ月までの治療成績を従来の外科的僧帽弁形成・置換術と比較検討した。
新しいデバイス MitraClipは、外科手術に比べて治療効果は劣るが安全性では上回り、結果的に外科手術と同等の臨床予後を示した。
 
無症状の大動脈弁狭窄症への外科手術
ASは高齢者に多く,進行性で,生命予後が悪い疾患ですが,手術で劇的に改善します。
しかし,現実には多くの高齢者で手術は敬遠されています。
最近の欧州の多施設研究では,手術適応であっても,75歳以上で手術を受けた患者は7割しかいなかったとされています。
実際には高齢でも手術は十分可能で, 治療成績も良好なので,より積極的な手術の施行が望まれます。
また,より高リスクな症例でも欧米では経カテーテル的大動脈弁植え込み術(TAVI)が普及し,RCTで有用性が確認されています。
わが国では治験中ですが,今後はTAVI導入と外科治療のさらなる適用によって,ASの治療成績がますます向上す ると期待されます。

<自遊時間>
MRさんが血管外科の研究会の案内を持って来ました。
「・・・に対してステントグラフト内挿術を施工した1例」
何だか変だなと思って少し考えました。
「施工」は「施行」の間違い?。
血管外科も職人化が進んでいるんでしょうか。
 
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大動脈狭窄の新規予後予測因子:非侵襲的な心筋線維化の評価とは
中等度または高度の大動脈弁狭窄患者に関し、左室心筋中層(midwall)の線維化が、新たな死亡率の独立予測因子となることが示された。
英国・ Royal Brompton HospitalのMarc R. Dweck氏らが、非侵襲的に心筋線維化を検出できる心血管MR(CMR)を利用した評価の結果、「midwallの線維化は、左室駆出率よりも予測因子として有用であり、リスク層別化にも有用である可能性が示された」と結論している
 
LGE非検出群と比較してmidwall検出群の全死因死亡ハザード比は8倍
Dweck氏らは、大動脈狭窄患者でのCMRによるmidwallと梗塞のガドリニウム遅延造影(late gadolinium enhancement :LGE)検出パターンを評価することを目的とした前向き観察研究を行った。
LGEの使用は他の心臓病において、予後不良となることが明らかになっていたが、大動脈狭窄については、評価がされていなかった。
対象は、2003年1月~2008年10月に、LGE法でのCMRを受けているレジストリ連続登録された中等度または高度の大動脈狭窄患者143例であった。
患者は、LGE検出パターンについて、非検出、midwall、梗塞のそれぞれに分類され、患者調査票、診療記録、国家戦略追跡サービス(National Strategic Tracing Service)を利用し、ブラインドされた独立オブザーバーによる、フォローアップが行われた。
おもな結果は以下のとおり。
 
●143例(平均年齢68±14歳、男性97例)の平均追跡期間は、2.0±1.4年であった。
 
●その間に、72例が大動脈弁置換術を受け、27例が死亡に至った(心臓病24例、突然死3例)。
 
●一変量解析の結果、midwall線維化検出群(54例)の全死因死亡率は、LGE非検出群(49例)と比較して、同程度の大動脈弁狭窄重症度および冠動脈疾患にもかかわらず8倍に上ることが示された。
 
●梗塞検出群(40例)については、6倍であった。
 
●多変量解析の結果、midwall線維化(ハザード比:5.35、95%CI:1.16~24.56、p=0.03)と左室駆出率(ハザード比:0.96、95%CI:0.94~0.99、p=0.01)は、全死因死亡の独立した予測因子であることが示された。

 
<監修者 自治医科大学循環器科・苅尾七臣教授のコメント>
本研究は、中等度・高度の大動脈弁狭窄患者では約1/3に、心臓MRIで左室心筋中層(midwall)にガドリニウム遅延造影(LGE)がみられ、その存在は、心機能低下とは独立して、約8倍の心臓死亡の予測因子となること示した貴重な臨床研究である。
重症・大動脈弁狭窄患者は、冠動脈疾患を合併することが多い。
心筋虚血に起因するLGEは心内膜にLGEがみられるが、本研究でも約1/3に心内膜層にLGEがみられている。
心筋中層LGEは、この心内膜LGEの死亡リスクと、同程度以上である点が、注目に値する。
これまでに、拡張型心筋症などでも、この心筋中層のLGEが予後の規定因子であることが示されていた。
心内膜層に見られるLGEは虚血を反映するが、心筋中層のLGEは心筋線維化を反映するといわれており、本研究の剖検例でも組織学的に確認されている。
心筋中層LGEの心臓死亡リスクを軽減できたのは大動脈弁置換術で、リスクを1/4に減少させている。
今後、大動脈弁狭窄患者のリスク層別化と手術時期の判定に、“心筋の質”の評価が取り入れられる可能性が高い。

 
出典 Care Net. com 2011.10.3
版権 ケアネット社

 
<循環器・ひとくちメモ>
 ■ 日本の冠動脈造影のパイオニア  山口 洋先生
「Dr.Sonesのもとで冠動脈造影を修得して帰国し、虎の門病院で冠動脈造影を始めた第一例目が、心尖部肥大型心筋症だった。
(出典; 循環器専門医第19巻第2号 2011.9 P347)

<私的コメント> いきなりのセレンディピティー。

 
 
2011.10.10撮影 長野・蓼科(標高1650m)
入道雲も消え、すっかり秋空になりました。「天高く・・・」
 
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帝京大学心臓血管外科・真鍋 晋講師による、無症候性ASの解説です。同先生によるMRの解説
無症状の僧帽弁閉鎖不全症
については2011.8.4で勉強しました。

 
無症状の大動脈弁狭窄症に外科手術は勧められるか
大動脈弁狭窄症(AS)は,高齢者では非常に有病率の高い疾患です。
米国の調査では65歳以上の4人に1人は大動脈弁に硬化性変化があり(大動脈弁硬化症),そのうち6人に1人が血流障害を伴うASと診断されます。
つまりASは65歳以上人口の約4%に見られます。
ASでも軽度~中等度ではすぐに治療の必要はありませんが,その約半数が重度ASへと進行し,外科手術が検討されます。
このようにASは遭遇する機会が多い疾患です。
 
無症候性でも重度では多くが5年以内に症状
ASでは症状が出現すると,平均余命は2~3年しかなく予後は極めて不良です。
自覚症状の出現は,病気の始まりではなく,むしろ重い負担に耐え, 必死に代償してきた心臓の破たんを意味します。
よって,ガイドラインでは自覚症状があればclassⅠですぐに外科治療が推奨されます)。
 
図表
 
メイヨー・クリニックのPellikkaらは,症状のない重度AS 622人の自然予後を報告しています(Circulation 2005; 111: 3290)。
重度ASは診断時症状がなくても,早い時期に高率に自覚症状が出現します。
全体の3分の1が2年以内,3分の2は5年以内に自覚症状が現れました(症状回避率2年:67%,5年:33%)。症状が出現すればすぐに手術が勧められるので,全体の4分の3の症例が5年以内に手術または心臓死となっています。
つまり,5年間無事に経過できる可能性は25%にすぎません。では,すぐに手術を行うべきでしょうか。
 
現行では症状がなければ保存的治療
現行のガイドラインでは,単独ASの手術適応は自覚症状の出現が原則です。
症状のない症例では心機能低下や各種検査の異常など特別な条件が伴わないと手術は勧められません()。
保存的治療を推奨する根拠として,突然死の頻度が低く,生存率も悪くないことが挙げられています。
無症候性ASの突然死の頻度は確かに低く,9件の前向き臨床試験の集計でも,1年当たり0.8%程度と報告されています(Heart 2011; 97: 253)。
 
しかし,生存率に関しては最近の報告では必ずしも良好ではなく,手術治療に比べ,保存的治療は遠隔期死亡率が高いとされています。
前述のPellikkaらは,無症候性の重度ASの遠隔期生存率を見ていますが,保存的治療群と比べて手術治療群の方が生存率は良好でした(図1)。
さらにKangらは前向き追跡調査を行い,早期手術の有用性を報告しています(6年死亡率:手術群2%,保存的治療群32%,Circulation 2010; 121: 1502)。
 
図表
 
安全性高く高齢者も積極的に手術可能
大動脈弁置換術は,比較的安全性が高い手術と考えられています。
入院死亡率は低く,国内データでは2.84%です(2008年度日本胸部外科学会調査)。
遠隔期生存率も1年目は94.2%,3年目は89.3 %と良好でした〔ローマ多施設臨床レジストリー,J Thorac Cardiovasc SurgJTCS)2011; 141: 940〕。
特に症状の軽い症例に限定すると,遠隔期生存率は一般人口と同等と報告されています。
 
大動脈弁置換術では,高齢者の手術も決して珍しくありません。
米国では,大動脈弁置換術を受ける患者の5人に1人が80歳代というのが現状です。
また,80歳代の手術死亡率は4.7%です(JTCS 2009; 137: 82)。
前述のローマのデータでは,高齢者の術後生存率は同年代の一般人口とほぼ同等とされています。
このように80歳代でも手術は決して禁忌ではなく,若年者同様に手術の恩恵は十分に享受できることが示されています。
 
人工弁の選択は何を根拠に選ぶのか
手術は人工弁を使用しますが,人工弁には機械弁と生体弁の2種類があります。
何を基準に選べばよいのでしょうか。
機械弁は耐久性に優れ,弁が壊れる(構造的弁劣化)可能性はほとんどありません。
ただ,抗血栓性が悪く,血栓予防のためにワルファリンによる抗凝固療法を生涯にわたって行う必要がありま す。
一方,生体弁は抗血栓性に優れ,ほかにリスクがなければ抗凝固薬を服用する必要はありません。
しかし,耐久性に制限があり,弁が劣化すると再手術が必 要となります。
 
では,生体弁は何年持つのでしょうか。
その耐久性は手術時年齢に左右されます(図2)。
術後15~20年で壊れる確率は,40歳で約60%,70歳では10%程度です。


図表
 
2種類の人工弁に治療成績に差はあるのでしょうか。
最新のランダム化比較試験(RCT)(JACC 2009; 54: 1862)では,生存率と塞栓症には差は見られませんでした。
しかし,機械弁は出血合併症が多く,生体弁は再手術が多く見られました。
Van Geldorpらは,どちらの人工弁を選択すれば合併症は起こりにくいのか,一生涯の発生頻度を年齢ごとに算出し,合併症が少ないのは,60歳以下では機械弁,60歳以上では生体弁であることを示しました(図3)。
ただし,再手術の死亡率7.3%に比べ,出血合併症の致命率は22%で,合併症としては出血合併症の方がより重篤だと報告しています。
 
図表
 
ガイドラインでは,65歳以上で生体弁,それ未満で機械弁を推奨しています。
ただ,「年齢は大事な要素であるが,患者の嗜好も十分考慮すべき」としています。
生涯にわたる抗凝固療法を受け入れるのか,将来的な再手術の必要性を受け入れるのかを十分に検討した上で,人工弁を選択することが望ましいとしています。
 
 

ASは高齢者に多く,進行性で,生命予後が悪い疾患ですが,手術で劇的に改善します。
しかし,現実には多くの高齢者で手術は敬遠されています。
最近の欧州の多施設研究では,手術適応であっても,75歳以上で手術を受けた患者は7割しかいなかったとされています。
実際には高齢でも手術は十分可能で, 治療成績も良好なので,より積極的な手術の施行が望まれます。
また,より高リスクな症例でも欧米では経カテーテル的大動脈弁植え込み術(TAVI)が普及し,RCTで有用性が確認されています。
わが国では治験中ですが,今後はTAVI導入と外科治療のさらなる適用によって,ASの治療成績がますます向上す ると期待されます。
 
出典 Medical Tribune 2011.8.25
版権 メディカル・トリビューン社

 
<AS 関連サイト>
[TOPICS from EUROPE]大動脈弁狭窄症に炎症が関連
■大動脈弁狭窄症には石灰化や細胞外基質リモデリングのほか,炎症も関連している可能性が示唆されている。
■大動脈弁狭窄症の現行の治療法は,狭窄を来した大動脈弁の外科的置換術であるが,進行を遅延させるための薬剤開発を目指した研究も行われている。
■動脈硬化と大動脈弁狭窄との間には類似性が認められるが,動脈硬化の予防効果がある脂質異常症治療薬のスタチン薬に大動脈弁石灰化の進展を抑制する効果は示されていない。

「低侵襲化の波押し寄せる」第6回国際心臓弁膜症学会印象記  
■PARTNER A試験は,手術リスクの極めて高い症例に対してTAVIと従来の大動脈弁置換手術を比較したランダム化比較試験(RCT)である。
全体の治療成績は両治療の間に大きな差は見られなかったが,ここでは手術に比べてTAVIの脳合併症がやや多いことが問題とされていた。
 N Engl J Med2011: 364; 2187-2197
■今後のカテーテル治療の展開についてもレクチャーがあった。
生体弁が劣化した際の再手術としてTAVIを行うバルブ・イン・バルブの治療成績も紹介された。
この治療が普及すれば生体弁の適応の若年化にさらなる拍車がかかるであろう。
■自己組織再生人工弁(Tissue engineered valve)についても非常に多くの発表があった。
現在用いられている生体弁の最大の弱点はその耐久性にある。生体弁劣化の原因として,異種生物の抗原性を取り除く化学処理のために遠隔期の石灰化が生じることや,基本的に死んでしまった組織であるため新陳代謝が行われないことが以前から指摘されてきた。
■一方で,自己組織再生人工弁はまさに“自らの生きた人工弁”であるため,これらの問題点をすべて克服可能な“未来の人工弁”として非常に期待されている
 
[循環器疾患版]Focus/TAVI導入で広がる大動脈弁狭窄症の治療選択
■手術適応のない重症大動脈弁狭窄症患者に対する低侵襲治療として登場した経カテーテル的大動脈弁植え込み術(TAVI)の導入が急速に広がっている。

欧州 では2007年にTAVI用人工弁が販売承認を取得。
以来年間数千例に施行されており,米国では食品医薬品局(FDA)の審査が進行中で,中国でも臨床試験が始まった。
わが国でも臨床試験の患者登録が終了し,2013年内の認可取得を目指した動きが着々と進められている。
■大動脈弁置換術(AVR)の手術適応はガイドラインで定められているが,狭窄は弁口面積で年0.1cm2程度進行していくため,手術に踏み切るタイミングは難しい判断となる。

 
 
■無症状であっても高齢で重症狭窄がある患者では狭窄の進行と手術リスクを説明して早めの手術を勧める施設が多いのが現状だ。
■AVRの手術死亡率はわが国では高くて5%程度,施設によっては1~2%と,心臓手術の中では決して高くない。ただ,開胸して人工心肺装置を長時間稼働させる手術になるため侵襲が大きく,適応がない患者も少なくない。

■外科から見れば成功率の高い手術であるが,そもそも外科へ紹介されてくる患者は大動脈弁狭窄症の5~6割で,本当の重症患者には内科も外科もなすすべがないのがこの疾患だった
■欧米では症状を伴う大動脈弁狭窄症患者1,058例を対象として人工弁置換術のリスクを評価するPARTNER試験が2007年に開始された。
使用デバイスはEdwards SAPIEN heart valve system。
コホートA(700例)では高リスクながら手術可能な患者を対象にTAVIとAVRの術後1年死亡率を比較,コホートB(358例)では手術不可の患者を対象にTAVIと従来の保存的治療を比較する2本立てのランダム化比較試験だ。
■欧米では症状を伴う大動脈弁狭窄症患者1,058例を対象として人工弁置換術のリスクを評価するPARTNER試験が2007年に開始された。
使用デバイ スはEdwards SAPIEN heart valve system。コホートA(700例)では高リスクながら手術可能な患者を対象にTAVIとAVRの術後1年死亡率を比較,コホートB(358例)では手 術不可の患者を対象にTAVIと従来の保存的治療を比較する2本立てのランダム化比較試験だ。
 
■今年4月には米国心臓病学会(ACC)でコホートAの結果が発表され,TAVI群の1年後総死亡率は24.2%と,AVR群の26.8%に比べ非劣性 (P=0.44)であることが明らかにされた。
ただし,重度血管合併症と脳神経イベントの発生率はTAVI群で有意に高く,重度脳卒中の発生も高くなる傾 向が認められた
■現在の状況で考えられるTAVIの適応として,
(1)手術リスクが非常に高いか不適応
(2)80歳以上の後期高齢者
(3)合併症がありLogistic EuroSCOREで20%程度の手術リスクのある患者
―の3点を挙げられる。
■60歳前後の比較的若い患者ならば,本人にTAVIの希望があっても,人工弁より耐久性の高い機械弁の方が望ましい。
ただし,年齢が若くても弁の状態が悪かったり,一度手術で置換した生体弁が破損して再留置しなければならないといった場合にはTAVIを用いることも考えられる。
 
■TAVIでは術中緊急手術になるケースが1~2%,手技に成功しても術後30日以内の死亡率は5%近くある。
■現在TAVIで用いられる人工弁では,留置した弁のすき間にわずかながら逆流が残存する。AVRではそうした逆流は残らない。
高齢の重症患者であれば TAVIで残る逆流は許容範囲といえるが,比較的若く手術適応がある患者ではAVRを選択すべきだ。
低侵襲という理由だけで低リスク患者にTAVIを施行することは決して行うべきではない
 
<番外編>
新着の「日本心臓病学会誌・第59回日本心臓病学会学術集会抄録集 神戸 2011.9.23-25」にも 関連発表の抄録が載っていました。
コントロバーシー  重症無症候性弁膜症は早期に手術すべきか P189-190
大動脈弁狭窄症患者における血小板粘着異常と術後変化
P273
大動脈弁狭窄症患者の左室肥大を決定する因子についての検討 P294
先天性2尖弁による大動脈弁狭窄症の組織学的検討:加齢変性に伴う3尖弁の大動脈弁狭窄症との比較 P295
 
 
読んでいただいて有り難うございます。
他にもブログがあります。

その他
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無症状の僧帽弁閉鎖不全症(MR)、その中でも一般的な弁尖逸脱の僧帽弁形成術についての症例検討の記事で勉強しました。
僧帽弁逸脱症は昔はなかった概念です。
いまや「一般的な」弁膜症ということで、時代の流れを感じます。
 
弁尖逸脱への僧帽弁形成術  外科手術は勧められるか
症例
60歳,男性。健康診断で心雑音を指摘される。
息切れや動悸などの症状はなく,現在も定期的にジョギングを楽しんでいる。
心電図は洞調律だが,心エコー検査で重度MR(逆流弁口面積0.46cm2)が認められる。
心機能正常〔左室駆出率(LVEF)68%〕,心拡大もなし〔左室拡張末期径(LVDs)54mm,収縮末期径30mm〕。
 
無症状でも重度の逆流では予後不良
自覚症状がまるでなく,胸に聴診器を当てることさえなければどこにも病気の深刻さをうかがわせる異常所見は見当たらない,このような症例で手術は本当に必要でしょうか。
 
この症例が手術を受けずにいた場合にたどる自然予後を考えてみましょう。
メイヨー・クリニックのSaranoらは,無症状MRの456例の自然予後を報告していますが,逆流弁口面積0.4mm2以上と逆流が最も強く,外科治療を選択しなかった群では,5年生存率が58.9%でした(図1)。
同じ年齢(平均63歳),性(男性63%)の一般米国人口の5年生存率は78%ですので,重度MR患者では,たとえ無症状であっても生存率は明らかに不良であることが示されました。
さらに,5年以内の心臓死が全体の3分の1以上あり,心臓死や心不全,心房細動などの心臓合併症の発症は過半数に上りました。
 
図表
 
そのため,無症状の重度MR症例の84%が,追跡中に死亡または外科手術が必要となったと報告しています。
つまり今回提示したような症例が手術をすることなく5年間生き延びている可能性は16%のみでした。

いまだ議論の残る外科治療のタイミング

では,すぐに手術を行った方がいいのでしょうか。
米国心臓病学会のガイドラインによると,無症状の重度MRの手術適応は,軽度~中等度心機能低下 (LVEF 30~60%, LVDs 40mm以上)があればクラスⅠ,心房細動や肺高血圧の出現があればクラスⅡaとなっています。
その一方で,合併症もなく心機能が正常であっても,外科医が90%以上の確率で弁形成が可能であると判断すればクラスⅡaとなっています。
つまり今回のような症例には,症状や心機能低下を待つ“保存的アプロー チ”と,早急に外科医にコンサルトし,弁形成が可能と判断されればすぐに手術を行う“早期手術アプローチ”の2通りの選択肢が提示されているのです。
 
どちらのアプローチが良いか,ガイドラインでは言及されていません。
過去に行われた比較試験では,いずれも早期手術を選択した方が心臓死や心血管イベントが少ないとされています〔Circulation 2009; 119: 797, J Thorac Cardiovasc SurgJTCS) 2009; 138: 1339〕。
しかし,保存的アプローチでも経過観察を厳密に行い症状や心機能低下があればすぐに手術を行うことで,一般人口と同等の生存率が得られたとの報告もあります(Circulation 2006; 113: 2238)ので,どちらが良いのかはまだ結論が得られていません。
弁形成 vs. 弁置換,成績は弁形成術の方が良好
外科治療といっても,手術成績は一様ではありません。逆流の原因となっている病変部を修復する弁形成術と,自己弁を取り除いて人工弁を移植する弁置換術がありますが,前述のSaranoらは,弁置換術に比べて弁形成術の方が,短期・遠隔期ともに優れていると報告しました。
特に遠隔期生存率は,弁形成術群の生存率が一般人口と全く同等であるのに比べ,弁置換術群の生存率は明らかに低下しています(図2)。
 
図表
 
重度MRでは,無症状でも自然予後が非常に悪いと伝えましたが,適切な時期に弁形成術を施行すれば一般人口と同等なレベルまで生命予後は改善するのです。
しかし,弁置換術を施行してしまうと,生命予後は悪いままとなり,元に戻ることはありません
こうした成績の差には,いくつかの原因が考えられます。
 
弁置換術では腱索の多くを切除します。
本来収縮能のある弁輪には硬い人工弁が入り,弁輪収縮能は失われます
これらが心機能悪化を引き起こし,弁置換患者は術後の心不全再発が多いとされています。
また,人工弁は現在でも完ぺきなものはなく,塞栓症や感染,ワルファリン服用に伴う出血合併症といった人工弁関連合併症も年2~3%程度で発症します。
 
僧帽弁形成術は隔期成績も良好
僧帽弁形成術はどのように行われるのでしょうか。
弁尖逸脱とは,弁尖の伸展や腱索の断裂・延長により,収縮期に弁尖が左房側に落ち込み,前尖と後尖の間で十分な接合が得られなくなることです。
僧帽弁形成術は,逸脱弁尖の矯正と弁輪形成術といった2つの手術手技から成ります。
まず逸脱した弁尖の矯正には2 通りの方法があり,伸びた弁尖を切除し縫合する弁尖切除術と,新たな腱索を移植して弁尖の高さを矯正する人工腱索移植術があります(図3)。
後尖病変に弁尖切除術を,前尖病変に人工腱索移植術を行うことが一般的です。
いずれの方法を行った場合にも,人工弁輪を弁輪部に縫着する弁輪形成術が追加されます。
 
図表
 
弁輪形成術は,拡張した弁輪を縫縮することが本来の目的ですが,手術操作を行った弁尖や腱索に加わる負荷を軽減する効果もあるとされ,弁輪拡大の有無にかかわらず,弁輪形成を併施するのが現在では一般的です。
 
僧帽弁形成術は,現在の心臓血管手術の中では比較的安全性が高い手術と考えられています。
2008年度日本胸部外科学会学術調査によると,僧帽弁置換術の在院死亡率が4.50%,大動脈弁置換術では2.84%ですが,僧帽弁形成術の在院死亡率は1.34%となっています。
 
僧帽弁形成術の効果はどのくらい長持ちするのでしょうか。
クリーブランド・クリニックのGillinovらは,僧帽弁形成術の術後10年間の再手術回避率は93%と報告しています(JTCS 1998; 116: 734)。
またトロント総合病院のDavidらは,術後12年間の再手術回避率が94%と報告していますが,病変部位によっても違いがあり,後尖病変では96%の回避率でしたが,前尖病変では88%と若干再発が多いと報告しています(JTCS 2005; 130: 1242)。
全体として見れば術後10年以内に再発し,手術が必要となる可能性は10%に満たないという結果でした。
 
まだまだ実施率の低い僧帽弁手術
最後に残念な報告が1つ。
これまで見てきたように,MRは生命予後に直接影響を及ぼす悪性疾患ですが,適切な時期に外科治療を実施することで目覚ましい治療効果が得られる疾患ともいえます。
エビデンスレベルの高い前向きランダム化比較試験がなされていないことは問題ですが,蓄積されたデータに基づきガイドラインでは明確な治療指針も提示されています。
しかし,最近の米国の報告では,ガイドラインで手術適応と判断されるMR症例のうち,実際に手術が行われたのはわずか53%にすぎませんでした(JACC 2009; 54: 860)。
この状況はわが国でも変わらないと思われるので,ガイドライン遵守率の向上が今後の課題といえます。
(帝京大学心臓血管外科・真鍋 晋 講師)
 
出典 Medical Tribune 2011.7.28
版権 メディカル・トリビューン社
 
<関連サイト>
僧帽弁閉鎖不全症
http://www.geocities.jp/shin_zou_geka/mrtop.htm
僧帽弁逸脱症
http://www.gik.gr.jp/~skj/Vhd/mvp.php3
僧帽弁疾患
http://mymed.jp/di/ctn.html
心臓手術体験記 (僧帽弁閉鎖不全症弁形成術)
http://comebackheart.blog14.fc2.com/
僧帽弁閉鎖不全症⑧
http://www.youtube.com/watch?v=Fx1Ik9tgMBQ&feature=related
Mitral valve prolapse
http://en.wikipedia.org/wiki/Mitral_valve_prolapse
■Early studies estimated a prevalence of 38% among healthy teenagers; with improved echocardiographic techniques and clear diagnostic criteria, the true prevalence of MVP is estimated at 2-3% of the population.
■The condition was first described by John Brereton Barlow in 1966,hence called BARLOW'S SYNDROME too.and was subsequently termed mitral valve prolapse by J. Michael Criley.
■Current ACC/AHA guidelines suggest that early repair of mitral valve, performed in centers of surgical excellence, should be considered even in patients without symptoms of heart failure.
■Symptomatic patients, those with evidence of diminished left ventricular function or left ventricular dilatation need urgent attention.
What is the treatment for mitral valve prolapse?
http://www.medicinenet.com/mitral_valve_prolapse/page4.htm#4whatis
■The vast majority of patients with mitral valve prolapse have an excellent prognosis and need no treatment.
For these individuals, routine examinations including echocardiograms every few years may suffice.
■Since valve infection, endocarditis, is a rare, but potentially serious complication of mitral valve prolapse, patients with mitral valve prolapse are usually given antibiotics prior to any procedure which can introduce bacteria into the bloodstream.
These procedures include routine dental work, minor surgery, and procedures that can traumatize body tissues such as colonoscopy, gynecologic, or urologic examinations.
■Because of the success of valve repair, it is being performed earlier in patients with mitral regurgitation, thus reducing the risk of abnormal heart rhythms and heart failure.
Mitral valve prolapse Treatments and drugs
http://www.mayoclinic.com/health/mitral-valve-prolapse/DS00504/DSECTION=treatments-and-drugs
Mitral Valve Prolapse 2d 3d echo
http://www.youtube.com/watch?v=T5686ZYCjRs&feature=related
 
 
<きょうの一曲> ニュルンベルグのマイスタージンガー序曲
フルトヴェングラー、ニュルンベルグのマイスタージンガー序曲
http://www.youtube.com/watch?v=CBeMGGN-U0c&feature=related
(私的コメント;ハーケンクロイツが掲げられるている演奏会場での フルトヴェングラーを見るのは辛いものがあります。執拗に聴衆を映していてナチスの施策が伺える貴重な映像です。)
 
フルトヴェングラー、ニュルンベルグのマイスタージンガー序曲 1951年
http://www.youtube.com/watch?v=N7T73EhA79s&feature=related
(私的コメント;戦後のフルトヴェングラーの演奏です。先生方はもう生まれていましたか?)
 
ニュルンベルクのマイスタージンガーより第一幕への前奏曲
http://www.youtube.com/watch?v=MYXFp5O75Ow&feature=related
( 私的コメント;ご存知の先生方も多いと思いますが、指揮者のシノーポリはパドヴァ大学で精神医学を学んだドクターです。2001年4月20日、ベルリン・ドイツ・オペラでヴェルディの歌劇「アイーダ」を指揮中、心筋梗塞で倒れ54歳で急逝しています。)
 
ワーグナー 楽劇「ニュルンベルクのマイスタージンガー」第1幕への前奏曲 ノリントン、L・C・P
http://www.youtube.com/watch?v=hLOmoIVPsnU&feature=related
(私的コメント;新解釈の随分軽いワーグナーです。)
 
 
読んでいただいて有り難うございます。コメントをお待ちしています。
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健康人の生理的弁逆流

戯れ言たれる侏儒 / 2011.07.21 00:34 / 推薦数 : 1
第22回日本心エコー図学会の記事で勉強しました。
 
健康人で生理的弁逆流を高頻度に検出
心エコー図装置の性能向上に伴い,弁膜症や弁逆流の診断は容易になったものの,カラードプラ法の感度が高まった結果,生理的弁逆流も高率に検出されるようになってきた。
ベルランド総合病院(大阪府)臨床検査室の山邊梓氏と川崎医科大学循環器内科の大倉宏之准教授は,現在使用可能な心エコー図装置を用いて,健康人で検出される弁逆流の頻度と予測因子について検討。
その結果,健康人で生理的弁逆流が高率に検出されることを示し,大動脈弁逆流(AR)と 僧帽弁逆流(MR)で予測因子となる年齢は,三尖弁逆流(TR)では関連しないことを報告した。
 
年齢はARとMRの予測因子
対象は,さまざまなスクリーニング目的で心エコー図検査を受けた症例のうち,不整脈や高血圧を有さず,器質的心疾患もない健康人1,333例(年齢 10~89歳,平均55歳)。
カラードプラ法により,各年代別にMR,AR,TRの頻度とそれぞれの予測因子を検討した。
超音波装置は,GE Medical Systems社製のVivid7を使用した。

年代別に各弁逆流の頻度を見たところ,MRは30歳以上で約3分の2と過去の報告に比べて頻度が高く,また,TRは年齢にかかわらず80%以上と高率に 検出された。
一方で,ARは50歳未満の頻度はまれであったが,加齢とともに増加を示し,80歳代では約半数で検出された。
 
また,多変量解析により各弁逆流の独立した予測因子を検討した結果,MRでは年齢と女性,駆出率(EF),左房径が,ARでは年齢と左室流入血流速波形のA波が有意な因子として浮かび上がった。
また,TRは年齢とは直接関連していなかったが,MRとAR,左房径が有意な予測因子であった()。


図表
 
以上をまとめ,山邊氏は「健康人で生理的弁逆流が高率に検出されたが,この予後への影響は十分に検討されていない」とし,「ARやMRと異なりTRでは年齢との関連は認められなかったが,TRではARとMRが有意な予測因子であった」と結んだ。

出典 Medical Tribune 2011.7.7
版権 メディカル・トリビューン社

<私的コメント>
「生理的弁逆流」と「病的弁逆流」の線引きが問題となります。
「予後への影響は十分に検討されていない」ということですが、予後に問題があれば「病的」ということになります。
「生理的弁逆流」の定義付けが一番問題ではないでしょうか。

MRでは年齢と女性,駆出率(EF),左房径が有意な予測因子→駆出率(EF),左房径の異常自体が病的ではないのか?
ARでは年齢と左室流入血流速波形 のA波が有意な予測因子→左室流入血流速波形のA波の変化は血行動態の異常を意味していないのか?
TRでMRとAR,左房径が有意な予測因子→連合弁膜症の可能性?、左房径が大きいこと自体が病的ではないか?

ちょっと頭の中が混乱してしまいます。

<三尖弁閉鎖不全症 関連サイト> 
http://yaplog.jp/hurst/archive/169
 
<Vivid 7 関連サイト>
http://japan.gehealthcare.com/cwcjapan/static/rad/us/msujvivid7.html

 


 
2011.7.17撮影 
早朝の日差しを浴びる白樺(蓼科・長野)
 
 
 
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重症大動脈弁狭窄症

戯れ言たれる侏儒 / 2011.07.12 00:29 / 推薦数 : 0
~大動脈弁狭窄症~
重症例では弁口狭窄の進行は遅く,圧較差で速い
欧米における大動脈弁狭窄症(AS)の進行度は,大動脈弁口面積(AVA)の年間減少度0.12±0.19cm2/年と報告されているが,わが国では十分検討されていないのが現状だ。
大阪市立大学大学院循環器病態内科学の武田久輝氏と室生卓准教授は,6カ月以上追跡しえたAS 患者111例を対象に,ASの進行度について検討。
わが国では欧米に比べてAS進行度が遅いこと,また,重症例では軽症~中等症例に比べて大動脈弁口の狭 窄は進行が遅く,圧較差では進行が速い可能性があることを,鹿児島市で開かれた第22回日本心エコー図学会(会長=国立病院機構鹿児島医療センター第一循 環器科・皆越眞一統括診療部長)で報告した。
 
欧米に比べて遅いAS進行度
対象は,1996~2008年に同大学でASと診断され,6カ月以上追跡しえた連続した111例(平均年齢68.8歳)。AVA/体表面積(AVAI)が0.6cm2/m2未満を重症群38例(同70.8歳),0.6cm2/m2以 上を軽症~中等症群73例(同67.8歳)に分けて検討した。患者背景は,重症群では軽症~中等症群に比べて有意に男性が多く(61%対33%),観察期 間が短かった(27.2カ月対46.0カ月)。
なお,AVAはパルスドプラ法により連続式を用いて,また,大動脈弁血流の圧較差(PG)は,最大血流速度 を連続波ドプラ法により測定し,簡易ベルヌーイ式で算出した。
 
初期評価の結果から,重症群のAVAおよびAVAI,PGの平均値,最大値ともに,重症ASの基準を満たしていることが確認された。
 
全対象におけるASの進行度(AVAの年間減少度)は0.059±0.083cm2/年と,欧米に比べて遅い傾向が見られた。
重症群では軽症~中等症群に比べてAVAおよびAVAIの年間進行度は遅かったが,PGに関しては,平均,最大ともに重症群で進行が速く,最大値では有意差が認められた()。
 
図表
 
 また,ASの進行度は個体差が大きく,AVAと年間のAVAI進行度およびPGの進行度との間には相関は認められなかった。
 
以上から,武田氏は「わが国では,欧米に比べてASの進行は遅い可能性がある」と指摘。
「AS重症例では,軽症~中等症例に比べて大動脈弁口の狭窄は進行が遅いが,圧較差の進行は速いこと,また,ASの進行度には個体差が大きい可能性が示唆された」と結んだ。
 
出典 Medical Tribune  2011.7.7
版権 メディカル・トリビューン社

 

<関連サイト>
増加する心臓弁膜症,診断・治療の最前線
大動脈弁狭窄症
手術タイミングの見極めが大事

出典 Medical Tribune  2010.4.22
■大動脈弁狭窄症の特徴は,無症状の期間が長いことだ。
■しかしこの間に狭窄は確実に進行し,これを止める手立てはない(図3)。
例えば,加齢変性の大動脈弁狭窄症の場合,弁間圧較差は年に平均約7mmHg増加し,弁口面積は約0.1~0.14cm2減 少していく。
 
 
■そして,いったん心不全,失神,狭心症などの症状が発現すると,心臓の状態は加速度的に悪化し,放置しておくと2~5年以内に半数が死亡するという。
■ただし,僧帽弁閉鎖不全症と違って大動脈弁狭窄症は弁形成術が難しく,人工弁による弁置換術が一般的だ。
このため,冠動脈バイパス術や他の心臓手術を受ける患者は別にして「手術は症状が出てから」というのが世界的なコンセンサスとなっている。
■しかし,無症状とは言え放置しておくわけにはいかない。
心負荷と症状を軽減するため薬物治療を行うと同時に,定期的に重症度を確認する。
重症度は, 心エコーによる大動脈弁口面積,弁間圧較差で評価する。
ここでも重要な指標は定量的に測定できる弁口面積で,日本人の場合,0,75cm2以下が重症と判定される。
■そこでポイントとなるのが,手術のタイミングの見極め。
症状が出現した場合は当然だが,無症状でも重症の狭窄と判断された患者は,外科医に紹介するのが望ましい。
■動脈弁狭窄症の有効な治療法は弁置換で,年齢に制限はない。
しかし,高齢患者のなかには,開心術が負担になるケースもあることから,最近カテーテルを用いて生体弁を置換する方法(経カテーテル人工弁置換術)が導入された。
 
生体弁,機械弁の選択は患者の社会的背景を配慮
出典 Medical Tribune  2010.4.22

■大動脈弁狭窄症では,変性した弁を人工弁に取り換える弁置換術が確立された治療法だ。
■弁置換術の場合,患者は再手術(生体弁)やワルファリンの継続使用(機械弁)といった負担を強いられる。
■ACC/AHAガイドライン(図5)によると,手術適応となるのは,まず重症で心不全,狭心症,失神などの症状がある場合。
症状が発現する と予後不良なので早期に弁置換を行う。また無症状でも,左室駆出率が50%未満に低下した重症例も対象となる。
さらに,狭窄が中等度でも冠動脈バイパス術など他の心・大血管手術を受ける場合は弁置換術の適応だ。
 
 
 
■無症状の大動脈弁狭窄症に対する弁置換術の適応については議論がある。
しかし,なかには心筋障害が進行し,不可逆的な心機能低下を来すような症例もあり, 早めに手術したほうがよい場合も多い。
ただそれには,弁膜症手術の実績が十分で,高い技量を持つ外科医がいる施設という条件が必要。
■弁置換術でもう1つポイントとなるのが,生体弁か機械弁かの選択だ。
生体弁の比率が高い欧米と異なり,わが国では機械弁の使用が多く,以前は8割を占めていた。
その理由として,日本では患者のフォローアップがきめ細かく,ワルファリンのコンプライアンスが比較的良好だったことが挙げられるが,一方 で,医師側が再手術を忌避し,耐久性の優れた機械弁に誘導する傾向があったことも見逃せない。
しかし生体弁が進化し,長期成績が向上したことで,事情は変わり,最近では生体弁が全体の5割を超えるようになっているという。
■ 従来,人工弁の選択は,65歳以上は生体弁,それ以下は機械弁と年齢で決めることが多かった。
しかし,ワ ルファリンのリスクや弁の劣化による再手術のリスクを十分に評価したうえで,患者の希望や社会的背景を考慮して選択すべきである

 

 


家族同様に暮らしていくうちに、猫はしだいに家庭の中心的存在になってくる。
この愛らしくも不思議な動物は生き生きとした静けさをかもしだし、王のような気品を漂わせながら悠然とわれわれのあいだを歩きまわり、自分にとっておもしろそうなもの、楽しそうなものを見つけたときのみ足をとめる。
(ジャン・コクトー)
 
ジャン・コクトー (1889~1963)
JEAN COCTEAU  LE CHAT/THE CAT
70歳の時に描かれた絵です。
年齢のせいかも知れませんが、 サインの字は、味があるというよりはっきり言って下手ですよね。
でも色彩感覚は素晴らしいです。
ちなみに、カルティエの三連リングをデザインしたのは彼だそうです。
 
ジャン・コクトー
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B8%E3%83%A3%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%82%B3%E3%82%AF%E3%83%88%E3%83%BC
 
ジャンコクトー美術館
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きょうも昨日同様、univadisの記事で勉強しました。
 
経カテーテル的僧帽弁尖クリッピング術は、中等以上の僧帽弁逆流に対し開心術と同等に臨床予後を改善するPercutaneous repair or surgery for mitral regurgitation
Feldman T, et al.
N Engl J Med 2011; 364: 1395-1406
執筆:
大阪大学大学院医学系研究科循環器内科学
 真田 昌爾 先生  
監修:
大阪大学大学院医学系研究科循環器内科学 教授 小室 一成 先生  

左心不全の独立予後規定因子ともいわれる僧帽弁逆流(閉鎖不全:MR)を、経カテーテル的にMRジェット噴射部で僧帽弁両葉の弁尖を左室側からクリッピング接合することにより軽減するデバイス(MitraClip)が開発されたため、製造元のAbbott Vascular社から資金提供を受け、術後12ヵ月までの治療成績を従来の外科的僧帽弁形成・置換術と比較検討した。
米国とカナダの37施設でMR3度(中等)以上の外科手術適応患者279例を、無作為にMitraClip群または従来の僧帽弁形成・置換術群(手術群)に2対1の割合で割り付け、複合一次エンドポイントを死亡、僧帽弁再手術、12ヵ月以内の3度以上のMR再出現に、安全性一次エンドポイントを30日以内の主要合併症発生に、それぞれ 設定して追跡した。
デバイスでMR軽減が得られない場合、その場でデバイスをいったん取り外して再留置を試み、なお効果がなければ一次エンドポイント発生 として待機的に外科手術を施行した。
結果として、MitraClip群178例、手術群80例(僧帽弁置換11例、僧帽弁輪形成のみ16例、弁輪形成+弁葉切除38例、弁輪形成+弁 葉・腱索修復14例、詳細不明1例)が解析に付された。12ヵ月後、MitraClip群の55%と手術群の73%が治療効果の判定基準を満たし(p=0.007)、 イベント発生は死亡が両群ともに6%、僧帽弁再手術がMitraClip群20% vs 手術群2%、3度以上のMR再出現がMitraClip群21% vs 手術群20%であった。30日以内の主要合併症はMitraClip群15% vs 手術群48%にみられた(p<0.001)。
術後12ヵ月で、両群ともに左室径の縮小、症候のNYHA心機能分類の改善、およびQOL指標測定(SF-36)の改善を認めた。
よって、新しいデバイス MitraClipは、外科手術に比べて治療効果は劣るが安全性では上回り、結果的に外科手術と同等の臨床予後を示した。
 
<なぜMust-readなのか>
昨今の新しい経カテーテル的心疾患治療デバイスは、いよいよシャント疾患などの先天性疾患や弁膜疾患をも治療ターゲットにしてきており、目覚ましい進歩がみられる。
今回のMitraClipも、本文の詳細なイラストやSupplementのイメージ動画にみられるように、鼠径静脈から経心房中隔・経僧帽弁的に左室に入り、左室側からエコーガイド下に位置とMRジェットを確認しながら両弁尖をジェットの最も強い点でクリップするという画期的な 手技である。
侵襲性が比較的高い試験内容である割には脱落率も非常に低く、本文にもあるように試験集団の高い実効性を追求したことが、全体として本試験 EVEREST IIのクオリティを引き上げていると考える。
さて、本論文の結論では、外科手術との直接比較でMitraClipが「同等」に臨床予後を改善すると述べられている。
Table 1をみると、うっ血性心不全症例がMitraClip群でやや多いため、後から振り返ると無作為化の手法に改善の余地はあったかもしれない。
また、外科手 術は弁置換または弁形成が選択され、弁形成は弁輪形成を基本として弁葉切除や腱索修復などのオプションが高率に施行されているが、術式選択に関する具体的 な基準は示されておらず、おそらく症例ごとの判断に任された可能性が高い。
一方で、これを「リアルワールドな外科手術群の再現」というには、手術群の症例数をもう少し蓄積することや、他の一般的な多数の症例の術後成績報告との比較検証がなされてもよかったと感じる。
さらに、Table 2以降で両群の成績をみると、外科手術が劣った点はひとえに「術後管理」に関連した急性期挿管人工呼吸管理時間(48時間以上)と輸血(2単位以上)のみであり、それらが克服された後、長期の心機能や弁機能に関する成績は、いずれも外科手術が統計的に明らかに上回っていることがわかる。
つまり、数字の上では確かに術後12ヵ月の臨床予後を両群で「同等」に改善したことになるが、本質的に異なる事象を反映させた結果であり、とくに本 試験のようなintention-to-treat解析では、試験割り付け後の脱落をすべて拾いあげるためバイアスが減少されるものの、エンドポイントの 初期設定内容次第で結果が大きく変わりうることに注意しなければならない。
この点、プロトコールを初期設定する際のrisk stratificationの正確性、およびそれを見越した評価項目の設定が試験の成功を大きく左右することは論をまたない。
しかし一方では本試験の結果から、両治療法にはそれぞれの適合性と得意分野があり、「外科的治療の周術期合併症リスクが相対的に低い患者には積極的に外科的修復を選択すべきで、高 い患者にはMitraClipを導入すべき」という大まかな指針が示されたともいえる。
これらを鑑みるに、次のステップとして、各症例により有利な術式の選択指針を確定していくこと、そしてMitraClipの予測される長期的合併症、たとえば僧帽弁の相対的狭窄の発生やクリップの脱落、長期的な弁破壊の有無や左房機能、血栓発生などが、より大規模な患者集団で検討されることが重要 である。
さらに、外科手術とMitraClipとの予後の差異が、仮にMRの数値的軽減だけではなく、外科手術のみで施行される弁輪形成がもたらす成果なのであれば、外科手術の優位性は今後さらに変化する可能性があることも念頭に入れる必要がある。
少なくともこれらの考察は抄録だけではもたらされず、また上記以外にも本文データから研究の課題点や次のステップを多数考えることができるうえで、本論文は典型的な示唆に富んだ一報として挙げられる。
 
http://www.univadis.jp/Services/CardioPro/Pages/mustreadarticles1106_03.aspx
 
<私的コメント> <なぜMust-readなのか>の文中のTable 1、Table 2については原著を取り寄せ後日追加する予定です。
 
以下はN Engl J Med誌に掲載された”To the Editor”の内容です。
 
Percutaneous Repair or Surgery for Mitral Regurgitation
N Engl J Med 2011; 365:90-91 July 7,2011
http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMc1105564?query=TOC 

Article
To the Editor:
Feldman et al. (April 14 issue)1 report on their randomized trial comparing percutaneous repair with surgery for mitral regurgitation. Interestingly, the percutaneous approach was associated with a higher rate of subsequent surgery for mitral-valve dysfunction, with persistent grade 3+ or 4+ mitral regurgitation in 23% of patients. Implantation of a second device, though permitted, was not mandated by the protocol. Moreover, the proportion of patients who received a second device was not reported. The importance of this issue is underscored by the growing body of data from European studies suggesting that one clip may not suffice in the presence of severe mitral regurgitation. In an Italian multicenter study involving 31 patients with functional or degenerative mitral regurgitation, 39% required two clips to achieve an adequate reduction of mitral regurgitation.2 A similar study of functional mitral regurgitation indicated that two or more clips were required in 20% of patients.3 Naturally, in an unbiased comparison of surgical versus percutaneous approaches, it is essential that both treatment groups be optimized. With regard to the percutaneous intervention, perhaps two clips are better than one?
Anita W. Asgar, M.D.
Paul Khairy, M.D., Ph.D.
Institut de Cardiologie de Montréal, Montreal, QC, Canada
1. Feldman T, Foster E, Glower DG, et al. Percutaneous repair or surgery for mitral regurgitation. N Engl J Med 2011;364:1395-1406
2. Tamburino C, Ussia GP, Maisano F, et al. Percutaneous mitral valve repair with the MitraClip system: acute results from a real world setting. Eur Heart J 2010;31:1382-1389
3. Franzen O, van der Heyden J, Baldus S, et al. MitraClip(R) therapy in patients with end-stage systolic heart failure. Eur J Heart Fail 2011;13:569-576 
 
To the Editor:
The Endovascular Valve Edge-to-Edge Repair Study (EVEREST II; ClinicalTrials.gov number, NCT00209274) is important, since the technology under study is an initial step toward extending percutaneous therapy for valvular heart disease to patients with mitral regurgitation. Of equal or greater importance, however, is that the study represents the first time a multi-institutional cohort of patients undergoing surgical mitral-valve repair has been followed prospectively with echocardiography for any length of time. The results in the surgery group of the trial are highly disappointing: within 1 year after surgery, 20% of the patients had grade 3+ or 4+ mitral regurgitation and 2% of the patients had such severe recurrent mitral regurgitation that repeat surgery was required. A surgically placed valve prosthesis that was associated with such poor early results would probably not receive regulatory approval. These sobering(反省させる) findings call into question the widespread enthusiasm for mitral repair that is now supported by current American College of Cardiology and American Heart Association guidelines.1 The results of EVEREST II also set a low standard against which emerging percutaneous approaches for mitral regurgitation need be compared.
Robert C. Gorman, M.D.
University of Pennsylvania, Philadelphia, PA
1. Bonow RO, Carabello BA, Kanu C, et al. ACC/AHA 2006 guidelines for the management of patients with valvular heart disease: a report of the American College of Cardiology/American Heart Association Task Force on Practice Guidelines (writing committee to revise the 1998 Guidelines for the Management of Patients With Valvular Heart Disease): developed in collaboration with the Society of Cardiovascular Anesthesiologists: endorsed by the Society for Cardiovascular Angiography and Interventions and the Society of Thoracic Surgeons.
Circulation 2006;114:e84-e231
 
 
Author/Editor Response
Asgar and Khairy note that grade 3+ or 4+ mitral regurgitation was seen in 19% of patients assigned to percutaneous mitral-valve repair with the use of the MitraClip device at 12 months of follow-up in our trial. Despite more frequent mitral regurgitation, left ventricular volumes improved and the New York Heart Association heart failure class was better in patients who underwent percutaneous repair as compared with those assigned to surgery. At 2 years of follow-up, 78% of patients in the percutaneous-repair group of the trial did not require surgery.
In our trial, 40% of patients who underwent percutaneous repair received a second clip during the index procedure. This frequency of use of a second clip is similar to that observed in the Real World Expanded Multicenter Study of the MitraClip(R) System continued-access registry conducted in the United States since the conclusion of our randomized trial and with clinical use of the device in Europe.
Gorman et al. comment that our trial is the first multicenter trial with prospective core-laboratory determination of the mitral-regurgitation grade in long-term follow-up. In fact, the lack of certainty regarding long-term results of mitral-valve surgery was one reason that we chose to conduct a randomized comparison with surgery1 to evaluate percutaneous repair. The trial was reported with the use of an intention-to-treat analysis, so patients who were assigned to surgery but did not undergo surgery (15 of 95 patients) were considered to have the same degree of mitral regurgitation at 1 and 2 years as at baseline; this group accounted for most of the patients with residual mitral regurgitation and reflected the reality that some patients do not undergo surgery. Among the 80 patients assigned to and treated with surgery, 3% had grade 3+ or 4+ mitral regurgitation at 1 year of follow-up. The evaluation of new procedures may require a randomized trial not only to compare with the standard of care without bias, but also to determine the success rate of the comparison procedure when a body of evidence to provide this rate with certainty does not already exist.
 
Ted Feldman, M.D.
NorthShore University Health System, Evanston, IL
1. Mauri L, Garg P, Massaro JM, et al. The EVEREST II trial: design and rationale for a randomized study of the evalve MitraClip system compared with mitral valve surgery for mitral regurgitation.
Am Heart J 2010;160:23-29

 
<関連サイト>
僧帽弁逆流に経皮的クリップ術
http://blog.m3.com/reed/20110515/1
経カテーテル的僧帽弁尖クリッピング術
http://blog.m3.com/reed/20110708/1
僧帽弁閉鎖不全症のカテーテル治療
http://blog.m3.com/reed/20100413/2


 
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多彩な症状の陰に感染性心内膜炎
回診時の聴診で心雑音に気付き、事なきを得る
「感染性心内膜炎の診断は難しいことを改めて認識した症例だった」。
こう話すのは、国立病院機構長野病院循環器科の関年雅氏。
関氏が2年前、長野赤十字病院(長野市)で経験したのは、75歳の女性のケースだ。

当初は感冒様症状や関節痛のため、近医で抗菌薬の治療を受けたが改善せず、膠原病も疑われステロイドも投与されていた。

原因が分からないまま全身状態が不良となり、喘鳴・呼吸苦が出現。
SpO2 88%(room air)、胸部単純写真で心拡大や両側胸水が認められ、自院の呼吸器科に入院した。

 入院後の検査結果などから、感染症のほか、膠原病、多関節炎、リウマチ性多発筋痛症、悪性リンパ腫、Crow-Fukase症候群なども鑑別に挙がった。

そんな中、腰背部痛の精査で行った腰椎MRIやガリウムシンチ所見に加えて血液培養や腰椎穿刺の結果から、化膿性脊椎炎と診断された。
そこで抗菌薬による治療を続けたが、37℃台の熱は一向に下がらない。
 
そんなとき、病棟回診中の聴診で拡張期雑音が増強していることが判明。
感染性心内膜炎の疑いで循環器科に紹介され、心エコーの所見写真1から確定診断に至った。
「感染性心内膜炎の存在に気付かずに、病巣部の掻爬などを行っていたら術後の二次感染は免れなかったかもしれない」と関氏は振り返る。

写真1


(エコーの説明)患者の心エコー所見 大動脈弁直下の心室中隔基部に、ひも状構造物の付着を認めた(→)。形態と付着部位から細菌性疣贅と考えられ、最終的に感染性心内膜炎と診断された。

 
不明熱プラス塞栓症の症状に注意
感染性心内膜炎は、弁膜や心内膜などに疣贅が形成され、菌血症や血管塞栓などを生じる疾患。

逆流性雑音を聴取したり心エコーで疣贅などを確認できれば診断に結びつくが、症状は発熱や全身倦怠感、関節痛など多彩で、しばしば診断に難渋する。

これは血栓が血行性に飛散し、様々な部位で塞栓症を起こすためだ。

感染性心内膜炎の44%に関節痛や関節炎、腰背部痛が認められたという海外の報告がある。
一方で、化膿性脊椎炎の9.3%に感染性心内膜炎が合併していたという論文もある。

感染性心内膜炎の発症リスクが高いのは、
僧帽弁逸脱症先天性心疾患などがある患者だ。
しかし冒頭に紹介した症例の基礎疾患は高血圧のみ。
関氏は「このケースのようにハイリスクな患者でなくても、突然発症することがある。原 因不明の発熱が続く場合の鑑別疾患として、感染性心内膜炎を念頭に置くべきだろう。脊椎炎を診ることの多い整形外科の医師もぜひ知ってほしい」と強調する。
なお、不明熱に加え脳梗塞を疑える症状が表れているときも要注意という。
 

出典  NM online 2008.9.4
版権 日経BP社
 
<私的コメント>
私がこの記事に興味を示したのは、まさにこの写真にあります。
以前にこのブログにもUPしたことがあるのですが、よく似た症例を経験したことがあったからです。




当院の症例です。(以前にもアップしたことがありました)
81歳 女性
AR(Ⅲ度) BNP 123.8pg/mL
問診上は心内膜炎の既往なし。
ルーチンのUCGで左室流出路(大動脈弁下部)に可動性の索状物あり。
 
精査目的で 某大病院循環器科来へ紹介。
TEE (経食道エコー法) 検査によるレポートは以下の如し。
 
『異常構造物は僧帽弁後尖の余剰弁膜様構造物と思われました。現在は弁膜症もひどくなく、感染性心内膜炎を疑わせる所見も乏しいため経過観察とさせていただきます』
 
これがどうして「僧帽弁後尖の 」ということになるのか不思議です。
vegitation(贅) かどうかもコメントされていません。
この 「異常構造物」は、はたして何なのか今もって私にはわかりません。
 
 
<番外編>
慢性心不全に適応 高血圧薬で追加承認取得
田辺三菱製薬は高血圧症や狭心症の治療薬「メインテート(一般名ビソプロロールフマル酸塩錠)」が慢性心不全への効能追加の承認を取得したと発表した。
効果が広く知られていることから臨床試験(治験)を省略できる「公知申請」の形で昨秋に追加申請していた。6月3日に慢性心不全の専用薬として 0.625ミリグラムの錠剤を発売する。
メインテートは心拍数や心収縮力を低下させて心臓への負担を抑え、心機能を改善する。
低用量の投与から始め、段階的に増量する必要があるため、従来の2.5ミリグラム、5ミリグラムに加え、新たに0.625ミリグラム錠を用意した。
慢性心不全は心筋がうまく働かずに心臓のポンプ機能が低下し、臓器に十分な酸素が届かない。
国内に約400万人の患者がいるという。
出典 日経産業新聞
 
版権 日経新聞社 2011.5.25

 
<私的コメント>
「心拍数や心収縮力を低下させて・・・ 」で思い出したことがあります。
随分昔の勤務医時代に、メインテートの治験に参加したことがありました。
市販後調査だったかも知れませんが、発売前だったような気もします。
著明な徐脈が出現したことがあって脱落症例になったのです。
MR(当時はプロパー) さんに、「著明な徐脈で脱落した」旨を告げました。
返った来た言葉が「全国で今までにそのような報告はありません」 とのこと。
以後、私はメインテートは一切処方しないようにして来ました。
 

 

 

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僧帽弁逆流に対し、経皮的クリップ術が好成績
外科的治療と比較したEVEREST II 試験の結果
中等症から重症の僧帽弁閉鎖不全症(僧帽弁逆流があり、手術が適応になる患者を対象に、低侵襲の僧帽弁閉鎖不全治療デバイスであるMitraClipを用いた経皮的修復術と外科的治療の有効性と安全性を比較したEVERESTⅡ試験の結果が、NEJM誌2011年4月14日号に報告された。
著者の米NorthShore大学Evanston病院のTed Feldman氏らは、経皮的修復術群には、手術群に比べてその後に外科的治療が必要になった患者が多く存在したが、短期的な安全性とQOL、1年後の心 不全の程度や左室駆出分画低下率などにおいては外科的治療に優ることを明らかにした。

僧帽弁閉鎖不全症は、心臓収縮時に僧帽弁弁尖が完全に閉じないために血液が左心房に逆流する疾患で、心臓弁膜症の中で最も一般的だ。

逆流量が多いと代償的に左室肥大が生じる。
重症の閉鎖不全は左室機能不全とうっ血性心不全を引き起こし、患者の生命を危険にさらす。
重症度に応じて薬物療法または外科的治療が選択されており、現行のガイドラインは、中等症から重症(グレード3+または4+)の逆流があり左室機能不全が見られる患者に手術を推奨している。

一方、今回の試験で検討された経皮的修復術は、Abott Vascular社のMitraClipシステムを用いたもの。

大腿静脈から心臓にカテーテルを挿入、心エコーガイド下で、僧帽弁を形成する2枚の弁尖の 開口端部中央をコバルトクロム合金製のクリップで留め、開口部分を2つに分けることで逆流量を減らす。
クリップを留めた後に逆流レベルを測定し、グレード 2+以下になっていることを確認し、逆流量が減少していなければ、2つめのクリップを適用するか、クリップを外して外科的治療に変更する。治療はカテーテ ル検査室で行われる。拍動を止めなくても実施できるため、人工心肺は不要だ。
MitraClipを適用された患者は、クロピドグレル75mg/日を30日間、アスピリン325mg/日を6カ月間服用する。

多施設無作為化試験EVEREST IIの患者登録は、05年9月から08年11月まで、米国とカナダの37施設で行われた。

中等症から重症(グレード3+または4+)の僧帽弁閉鎖不全症で 手術が適用となる人々を選び、症候性の患者は左室駆出分画が25%超で左室収縮末期径が55mm以下であること、無症候の場合には、以下の条件を1つ以上 満たすことを組み込み条件とした:
左室駆出分画が25~60%、左室収縮末期径が40~55mm、新規心房細動あり、肺高血圧症あり。
解剖学的には僧帽弁 を形成する前尖と後尖の中央部が適切に合わさらないために逆流が生じていることを条件とした。

279人を登録し、経皮的修復術(184人)または外科的治療(95人)に割り付けた。

主要エンドポイントは、12カ月間の複合イベント(死亡なし、僧帽弁機能不全による外科的治療の適用なし、グレード3+または4+の僧帽弁逆流なし)に設定、安全性評価指標は、30日以内の主要な有害事象(死亡、心筋梗塞、外科的治療失敗による再手術、有害事象による非待機的心血管手術、脳卒中、腎不全、 深部創感染、48時間を超える機械的換気、合併症による消化管の手術、新たな永続性心房細動の発生、敗血症、2単位以上の輸血)を合わせたものとした。

分析はintention-to-treatで行った。
 
21人が割り付けられた治療を受けなかった。
外科治療群で実際に手術を受けたのは80人で、うち11人(14%)に僧帽弁置換術が、69人(86%)には僧帽弁形成術が行われた。
経皮的修復群のうち41人(23%)は、退院前の評価で手術が必要と判断された。

12カ月時の複合イベント達成率は、経皮的修復群では55%(181人中100人)、外科治療群では73%(89人中65人)と、外科治療群で良好だった (P=0.007)。複合イベントに設定した各イベントの発生率は、死亡がどちらも6%(P=1.00)と差はなく、僧帽弁機能不全による外科的治療施行は20%と2%(P≦0.001)で経皮的修復群で多かった。

グレード3+または4+の僧帽弁逆流は21%と20%(P=1.00)で同程度だった。

術後24カ月の時点では、複合イベントの達成率は経皮的修復群が52%、外科治療群が66%(P=0.04)で、死亡率は両群共に11%、僧帽弁機能不全により手術が必要と判断された患者は経皮的修復群22%と外科治療群4%だった。

30日以内の主要な有害事象は経皮的修復群の15%と外科治療群の48%に発生(P<0.001)。

個々の有害事象の中で両群間に有意な差が見られたのは、48時間を超える機械的換気が必要だった患者の割合で、経皮的修復群0%と外科治療群4%(P=0.02)だった。

12カ月の時点で、両群共にベースラインに比べ、左室拡張末期容積、左室拡張末期径、左室収縮末期容積が有意に低下し、心機能は向上していた。

左室拡張末 期容積と左室拡張末期径は外科手術群の改善が有意に大きかった。
左室駆出分画は両群共にベースラインより低下していたが、低下幅は経皮的修復群の方が有意 に小さかった。

また、12カ月時でNYHA心機能分類がクラスIIIまたはIVだった患者は経皮的修復群の2%、外科手術群の13%で、差は有意だった(P=0.002)

12カ月時のSF-36によるQOLは両群共にベースラインから改善を示し、両群間に有意差はなかった。

ただし、30日時のSF-36の身体的健康度は経皮的修復群で有意に良好だった(P<0.001)。

主要エンドポイントに関するサブグループ解析の結果は、年齢が70歳未満の患者では外科手術の方が転帰良好だが、70歳以上の場合には両群間に差はないこと(交互作用のP=0.009)、変性による僧帽弁逆流(DMR)患者には手術の方が転帰は良好だが、機能性僧帽弁逆流(FMR)患者の場合には差は有意 にならないこと(P=0.02)が明らかになった。

加えて、左室駆出分画が60%以上の患者は手術による利益が有意に大きいが、60%未満であればどちら を用いても転帰に差は無いことが示唆された(交互作用のP=0.06)。

経皮的修復の効果は持続しており、24カ月後まで外科的修復を必要としなかった患者が78%いたことから、MitraClipシステムを用いた経皮的修復術は治療の選択肢として有望と考えられた。

この製品は、欧州では08年3月にCEマークを得ており、米国でも米食品医薬品局(FDA)に承認申請されている。       
大西淳子医学ジャーナリスト)


出典  NM online 2011.5.12
版権 日経BP社
 

原文
Percutaneous Repair or Surgery for Mitral Regurgitation
http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa1009355
 
 

<MitraClip 関連サイト>
MitraClip Mitral Valve Repair System
http://www.abbottvascular.com/int/mitraclip.html

Mitra Clip 動画
http://www.metacafe.com/watch/2908701/mitra_clip/

MitraClip 3D Animation for MDs 動画
http://www.youtube.com/watch?v=GwDgPDYf3Qo

Dr. Ted Feldman discusses EVEREST II Trial and MitraClip for Mitral Regurgitation 動画
http://www.youtube.com/watch?v=3_OuZMa2IWI

Abbott's EVEREST II Study Demonstrates MitraClip Benefits at Two Years Post-Surgery 動画
http://medgadget.com/archives/2011/04/abbotts_everest_ii_study_demonstrates_mitraclip_benefits_at_two_years_postsurgery.html

MitraClip recalled due to problems with delivery system
http://www.theheart.org/article/1223259.do

Data from Landmark Clinical Trial of Abbott's MitraClip® System Demonstrate Durable Clinical Benefits for Patients with Mitral Regurgitation Two Years After Treatment
http://www.abbott.com/PressRelease/2011Apr04.htm

EVEREST II: Mitral-clip device noninferior to surgical repair or replacement
http://www.theheart.org/article/1054941.do

MitraClip recalled | theheart.org
http://www.theheart.org/article/1223259.do

Abbott recalls MitraClip on faulty catheter fears
http://www.massdevice.com/news/abbott-recalls-mitraclip-faulty-catheter-fears

[PDF]
Mitral Regurgitation and the MitraClip Device: An Overview
http://docs.google.com/viewer?a=v&q=cache:StuLLY24s2YJ:www.hull.co.uk/websitefiles/MitraClip_Press%2520Kit%2520Materials.pdf+mitral+cip&hl=en&pid=bl&srcid=ADGEESj04ezR_kZ0sckkKIGcTVc1-litIeHKUA8LCLCFpMjRoNYuRzU2P9i8fDtUm9kJ9YkVMQvcnDkYqQwLC_IX2nYnGf9CkpTgiYKFRh9UiHAZD-Ch_uOpZR5FbC8Lzytb5YzABjVR&sig=AHIEtbR6Mtwy-P_dBkIMTl-dgUtziOeIlw

 

僧帽弁逆流に経皮的クリップ術
http://blog.m3.com/reed/20110515/1
僧帽弁閉鎖不全症のカテーテル治療
http://blog.m3.com/reed/20100413/2

 

 

 

その他
「葦の髄」循環器メモ帖 http://yaplog.jp/hurst/
(循環器専門医向き)
ふくろう医者の診察室 http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き) 
井蛙内科/開業医診療録(4)2009.10.16~
http://wellfrog4.exblog.jp/
井蛙内科/開業医診療録(3)~2009.10.15
http://wellfrog3.exblog.jp/
井蛙内科/開業医診療録(2)2008.12.10~
http://wellfrog2.exblog.jp/
井蛙内科/開業医診療録~2008.5.21 http://wellfrog.exblog.jp/ 
(内科医向き)
「井蛙」内科メモ帖 
http://harrison-cecil.blog.so-net.ne.jp/  
があります

 

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