戯れ言たれる侏儒
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女性のHDL-C低値で心房細動発症リスクが有意に増大
東北大学循環器内科教授・下川 宏明 
Circulation Journal編集長のコメント
大規模な健康診断データを利用した本研究において,HDL-Cの低値が女性でのみ,心房細動発症の危険因子であることが示唆されました。
LDL-C高値では逆相関も示唆されたことから,このcholesterol paradoxに関する今後の検証が期待されます。
 
脂質値と心房細動発症の関係は未確立
心房細動の患者数は2000年の時点で約72万人に上り,増加傾向は今後も続くと指摘されている。
そうした中,高血圧,糖尿病,心不全や冠動脈疾患が発 症に関与することが明らかになり,血圧や血糖など動脈硬化性疾患危険因子の管理が,心房細動の発症予防にもつながることが分かってきた。
一方,脂質代謝に 関しては心房細動発症との関係が十分に明らかにされていなかった。
そこで,新潟大学第一内科循環器学分野の渡部裕氏らは,住民健診のデータから脂質代謝と 心房細動発症リスクの関係を検証した。
その結果,女性におけるHDLコレステロール(HDL-C)低値では心房細動発症リスクが上昇していた。
一方で,LDLコレステロール(LDL-C)高値では発症リスクが低下傾向にあるなど,脂質代謝全般での一貫した結果は示されなかった(Circ J 2011; 75: 2767-2774)。
 
LDL-C値では予想と相反する結果に
渡部氏らの調査は,新潟県内の住民健診に基づいたもので,県内約25万人の健診データのうち,1996~98年(登録時点)に空腹時血糖値を測定しており,それ以降2005年までに1回以上毎年連続して健診を受診した者を対象に解析した。
また,登録時点での心房細動既往例や,ペースメーカ植え込み例,脂 質異常症治療薬服用例は除外した。
 
解析対象は2万8,449例で,平均年齢は59歳,女性が約65%(1万8,644例)を占めた。
追跡期間の4.5年間で265例(全体の0.9%)が 心房細動を発症。年齢調整後の発症率は2.07/ 1,000人・年で,女性の1.39/1,000人・年に対して男性では3.28/1,000人・年と高率だった。
 
動脈硬化性疾患ガイドラインに準じた脂質基準値で心房細動発症率との関係を見たところ,総コレステロール(TC)値220mg/dL未満群に比べて 220mg/dL以上群では心房細動発症率が有意に低かった(P=0.001)。また,LDL-C値140mg/dL未満群に比べて140mg/dL以上 群では有意に発症率が低かった(P=0.004)。
しかしLDL-C値については,降圧薬服用例や糖尿病,冠動脈疾患患者を除いた解析では有意差が示されず,LDL-C低値による心房細動発症リスクの上昇には他の危険因子も影響していることが示唆された。
同氏は,心血管疾患の危険因子として確立されているLDL-C高値が心房細動発症リスクにも関係すると推測していたが,結果はそれに反するものだった。
これまでの報告でもLDL-C値と心房細動発症リスクの関係について一貫した答えが得られていないため,同氏は,この解析のみから結論を導くことはできないと強調する。
しかし,ある程度確立した知見としてLDL-C低値と脳出血リスク上昇も示されていることから,「LDL-Cには適正値があり,高値がすべての心血管リスクの上昇に結び付いているわけではないのではないか」と考察している。
 
HDL-C値,女性で強い相関示すが男性で認めず
HDL-C値については,40mg/dL以上群に比べて40mg/dL未満群で有意に発症率が高くなっており(),この両群間の差は,降圧薬服用例や糖尿病,冠動脈疾患患者を除いた場合にも認められた。
一方,トリグリセライド(TG)値については150mg/dL以上群と150mg/dL未満群で同等の発症率だった。
 
図表
 
さらに,男女別で脂質値と心房細動発症リスクの関係を見たところ,女性ではHDL-C 40mg/dL未満群のハザード比(HR)が2.86で40mg/dL以上群に比べて有意なリスク上昇〔95%信頼区間(CI)1.49~5.50〕が示されたが,男性ではHR 1.35(95%CI 0.77~2.38)で有意差は示されなかった()。
 
図表
 
渡部氏は,HDL-C値の低下に伴う心臓への悪影響や,抗炎症薬やスタチンによる心房細動の進展抑制の報告もあることから,今回の解析で示された HDL-C低値と心房細動発症リスク増大の関係については,ある程度一貫性のある成績であると考察している。
ただし,脂質値と心房細動発症の関係について は不明な点も多く,今回の調査はあくまでも1つのコホートで示された結果であり,治療介入がリスク低下につながるかどうかは新たな知見が必要と慎重な解釈を促している。
出典  Medical Tribune 2011.12.22
版権  メディカルトリビューン社
 
<私的コメント>
このサイトhttp://mtpro.medical-tribune.co.jp/mtnews/2011/M44511021/で紹介された「研究者の横顔」もちょっといいですね。
 
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新年あけましておめでとうございます
   平成二十四年元旦
 
 
アブレーション成功例で腎機能回復を確認
心腎連関の概念はさまざまなデータで裏付けられているが,不整脈と腎機能の関係についてはあまり検討されていなかった。
横須賀共済病院(神奈川 県)循環器内科の高橋良英医長らは,心房細動に対するカテーテルアブレーション治療を施行した患者において,推算糸球体濾過量(eGFR)の変化を前向きに評価。
心房細動消失例では術後3カ月でのeGFRは有意に上昇し,その値は1年後まで維持される一方,再発例ではeGFRが1年間で徐々に低下していることを確認し,Circulation(2011; 124: 2380-2387)に発表した。

明らかでなかった腎機能への影響
アブレーションの登場で検討可能に

eGFR 60mL/分/1.73m2(以下単位省略)未満を慢性腎臓病(CKD)とする定義は近年登場したが,腎疾患合併患者では循環器疾患の予後が悪いという心腎連関の概念は,臨床上の実感として古くから共有されてきた。
「末期腎不全患者では心不全による再入院が起こりやすい」「腎機能低下患者では冠動脈血行再建術の成功率が低い」などは周知の事実であった。
しかし,不整脈と腎障害がどのように関係するかについては,これまでほとんど検討されておらず,あまり注目もされてこなかった。
 
「薬物治療による心房細動患者の洞調律維持は難しかったため,完全なリズムコントロールによって生命予後や他の合併症にどれだけ影響するのかは明らかにされていなかった。裏を返せば,不整脈が全身にどれほど悪影響を与え,予後を悪くするのかも証明されていなかったということになる」と高橋医長は背景を説明する。
 
そうした不整脈診療に大きな転換をもたらしたのがカテーテルアブレーションの登場だ。
エビデンスはまだ確立されたとはいえないが,患者の7~8割で心房細動の完全消失も可能となり,不整脈が全身に及ぼす影響や,不整脈治療によって得られる効果の検討が可能になってきた。
 
そこで同医長らは,薬物治療抵抗性の心房細動でカテーテルアブレーションを施行した同院患者386例〔発作性心房細動135例,持続性心房細動106 例,長時間持続性心房細動(1年以上持続)145例〕を対象に,ベースライン時と治療後3カ月および1年のeGFRを評価し,心房細動消失による腎機能へ の影響を分析した。
ベースライン時の平均eGFRは68±13だった。
 

腎機能低下患者ほどアブレーション成功による便益大きい
アブレーションの成功によって,1年間心房細動の再発がなかったのは278例(72%)だった。
対象全体の平均eGFRは70へ有意に上昇していた。
再発なし群と再発群で,ベースライン時のeGFRには差がなかったが,1年後では再発なし群で平均3±8上昇していたのに対し,再発群では平均2±8低下しており,有意差が認められた。
血清クレアチニン値もeGFR同様,再発なし群ではわずかながら改善していたのに対し,再発群では悪化が認められた。
 
治療前の心房細動が発作性であるか持続性であるかは,治療後の腎機能改善の有無とは関係していなかった。治療前の心房細動頻度も,治療後の腎機能改善には影響していなかった。
 
また,治療後3カ月時点のeGFRが得られた218例について推移を検討したところ,アブレーション成功によって心房細動が消失した患者では3カ月時点でeGFRが改善し始めており,治療後1年まで状態が継続されることが分かった。
しかし心房細動が再発した群では,発作性の場合はわずかにeGFRが改善した後に急激に低下,持続性の場合には1年を通じて徐々にeGFRが低下していた。
 
また,ベースライン時のeGFRで対象を四分位に分け,治療1年後のeGFRの変動の大きさを比較したところ,ベースライン時の腎機能が悪い患者ほど治療後の回復が大きいこと,逆にベースライン時に腎機能が保たれていた患者ほど心房細動再発後の腎機能の低下が大きいことが示された()。

 
 

コメント
横須賀共済病院循環器内科 高橋 良英 医長
薬物治療と電気的除細動後に同様の検討を行った研究が過去にあったが,その研究では1年間に半数以上の症例で心房細動の再発が認められていた。

より強力に心房細動を抑制できるカテーテルアブレーションで今回のような腎機能改善の結果が出たということは,今後アブレーションの適応が広がる可能性を示 したといえるかもしれない。
また,腎機能を直接的に改善させる薬剤がない現状に照らしても,今回の結果は興味深く,腎臓病患者の管理において大きな意義を 持ってくるのではないかと考えている。

<私的コメント>
心房細動では、洞調律に比較して心拍出量(心臓が血液を送り出す力)が約25%低下するといわれています。
当然のことながら心房細動の洞調律化(除細動化)により心拍出量が増加します。
腎血流量も増加する筈です。
eGFRの改善もそのためと思われるのに、その点に関して一切触れられていないのはちょっと不思議です。
<参考>
 
■腎血流量(RBF)は心拍出量の25%である.
  RBFは腎動脈圧と腎静脈圧の差に正確に比例し,腎臓の脈管抵抗に反比例する
 
 



 
 
 


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PALLAS試験 アゲイン

戯れ言たれる侏儒 / 2011.12.16 00:36 / 推薦数 : 0

PALLAS試験http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa1109867について兵庫県立尼崎病院・佐藤幸人循環器科部長の解説で勉強しました。
「抗不整脈薬の多くは慢性心不全に見られる不整脈に対して漫然と使用すべきでない」という約20年前にCAST試験から得られた教訓の重みを再認識する内容です。
 
「慢然と抗不整脈薬を使用すべきでない」20年前の教訓を再認識
抗不整脈薬であるアミオダロンは有用性の高い薬剤ではあるが,ヨウ素に関連した甲状腺の障害,肺線維症などの多種多様な副作用が問題となってい る。dronedaroneは,アミオダロンの改良タイプとして開発され,ヨウ素を含まず水溶性であるために,甲状腺の障害,肺線維症などの副作用は示さ ないといわれている。アミオダロン,dronedaroneともに期待される効果は,
(1)心室性抗不整脈作用を介した突然死予防,
(2)上室性心房細動 患者における洞調律維持
―に分けられる。
 
ATHENA試験(N Engl J Med 2009; 360: 668-678)では,発作性心房細動患者において,dronedaroneはプラセボに比べ心血管イベントによる入院,心血管死を有意に減少させた。
また,この効果は経過中に持続性心房細動を発症した患者においても観察されたことにより,同薬の心拍数抑制効果,降圧効果,抗アドレナリン効果,抗致死性心室性不整脈効果が予想されたため,今回のPALLAS試験が行われた。
 
しかし,その結果は,持続性心房細動患者においてdronedarone投与は,脳卒中,心不全,心血管死の頻度を上昇させたという予想に反した ものであった。
しかも,プラセボ群との差は投与開始後1カ月以内から認められ,試験期間中さらにその傾向は顕著になっていった。
以前報告された,駆出率 (EF)35%以下の重症心不全患者において突然死予防を目的としたANDROMEDA試験(N Engl J Med 2009; 360: 668-678)では,dronedarone群で心不全が悪化し,かえって予後が悪化したと報告されている。
PALLAS試験では,対象患者が高齢で心不全合併も多かったため,今回のような結果につながったと思われる
 
1990年代初頭,CAST試験によりⅠ群抗不整脈薬は不整脈抑制効果を示すにもかかわらず,心機能抑制効果や催不整脈作用を介して,かえって突然死の頻度を高めることが報告された(N Engl J Med 1991; 324: 781-788)。
このため,抗不整脈薬の多くは慢性心不全に見られる不整脈に対して漫然と使用することは避けるべきと考えられている。
ANDROMEDA試験とPALLAS試験の結果を踏まえて,dronedaroneも同様に,心不全患者において突然死予防効果を期待して使用することは避けるべきであると考えられた
出典 MT Pro 2011.11.21
版権 メディカル・トリビューン社
 
<関連記事より>
dronedaroneの臨床試験が問いかける新規抗不整脈薬開発の課題
AHA 2011で発表のPALLAS試験などを山下武志氏が解説
心不全患者の割合によって全く異なる結果に
(1)アミオダロンと異なりヨウ素を含まないdronedaroneには高い忍容性と安全性が期待されていたが,心不全患者や永続性心房細動患者では予後が悪化していた。なぜこのような結果になったのか
ヨウ素を含まないことによって期待されるdronedaroneとアミオダロンの違いは,
(1)脂溶性が減少し半減期が減少する,
(2)アミオダロン特有の甲状腺機能障害や肺障害が減少する
―ことの2点であり,これ以外の安全性については不明な点が多い。
そして,今回の臨床試験結果を見れば,この 不明な点に1つの一貫性があることに気付く。
dronedaroneを用いてなされた一連の臨床試験の患者背景を知ればそのことを容易に理解できるはずで ある()。
 
photo
 
(1)および(3)では心房細動の再発が有意に抑制され,心不全や催不整脈作用の増加あるいは死亡率の増加は認められなかった。
しかし,(2)と(4)ではともに心不全,催不整脈イベントが倍増し,その結果死亡率が有意に増加した。
つまり,心不全患者が含まれる割合によって全く異なる結果になっていることが重要だ。
これは,Ⅰ群抗不整脈薬が歩んだ歴史に似ている。dronedaroneはⅢ群薬に分類されるが,患者の予後という観点からはⅠ群薬と同様であるといえる。
発作性心房細動に比べ持続性心房細動,永続性心房細動はより進行した病態であり,一般的に患者の背景因子も悪化している。
背景因子が比較的単純な 発作性心房細動患者ではATHENA試験の結果が応用可能であるが,より背景因子が複雑となり,心房細動の合併症である心不全歴を有しやすい永続性心房細 動患者ではANDROMEDA試験の成績に近くなる。
これが,各種臨床試験の教えるところだろう。dronedaroneにはⅠ群薬と同等の陰性変力作用や催不整脈作用があると考えることが,患者アウトカムから見て妥当であろう。
“心臓電気生理学が必須”の“信仰”を棄却しないと抗不整脈薬の開発は難しい
(2)今回の結果からもうかがえる抗不整脈薬開発の難しさは何に起因するのか
「心房細動に対峙する」という根本的概念がまだ整理不十分だと考えられる。
これまでの長い歴史の中で,いまだ証明されていないにもかかわらず,心 房細動を治療するためには心臓電気生理学が必須だと信じられてきた。
これはSicilian Gambitの考えによく象徴されている。
そして今,これほどにネガティブ試験の山が10年以上にわたり連続的に築かれたのはなぜかを考えてみれば,その理由は単純だと思う。
それは,これ までのとらえ方の基本が間違っていたのではないかと考えるのが一番素直だろう。
これまでの長い「信仰」が棄却されない限り,抗不整脈薬の開発は難しいと感 じる。
心房細動は心電図を用いて診断されるため,単純に心臓電気生理学の異常がその原因だと考えられてきた歴史がある。
しかし,他の未知な原因が本質的 なものとして存在し,その結果として電気現象の異常が生じている可能性の方が高いのではないだろうか。
つまり,心電図は結果でしかなく,この場合,心臓の 電気生理学的異常を修正しようとしてもそれは表面的なものにならざるを得ない。
そしてこの考え方は,これまでの「心電図は一時的に正常化しても患者の予後 は改善しない」という一連の臨床試験の結果に符合しているように感じる。
新しい心房細動治療薬は,心臓電気生理学的異常以外の本質的な心房細動の原因に迫 る必要がある。
(3)臨床現場において,抗不整脈薬のさらなる開発のニーズはどの程度あるのか
現時点で,心房細動治療の主流は薬物療法からカテーテルアブレーションに大きく変化している。
カテーテルアブレーションの両翼が「抗不整脈薬」であり,「心拍数治療薬」であるという絵図は当分変わらないだろう。
それは,これほど多様化した,また著増した心房細動患者すべてにカテーテルアブレーションを応用することができないこともまた自明の理だからである。
その意味で,抗不整脈薬というツールが増加することはいつでも歓迎すべきだろう。
その際に必要な条件は,多様化した背景因子を有する心房細動患者 すべてで副作用発現が許容できるレベルであるということだろう。
心不全に限れば,心不全に安全に用いることができ,肺障害・甲状腺障害がない抗不整脈薬が あれば歓迎されるが,dronedaroneではそれを証明できなかったわけである。
Ⅲ群薬に分類されたdronedaroneは,実は患者の視点から見ればⅠ群薬とほぼ同様であるが,わが国では必要以上といえるほどにI群薬の選択肢が多い状況がある。
そのような点では,欧米とは異なる状況にあるのかもしれない。
「永続性心房細動患者に抗不整脈薬は不要」に同意

(4)論文のエディトリアルでは,永続性心房細動患者が抗不整脈薬を服用する必要はないと指摘されているが,この患者層への抗不整脈薬のニーズはあるのか。
永続性心房細動患者に対する心拍数調節治療は立派な1つの治療方針であり,β遮断薬を筆頭とする薬物治療は許容できる副作用発現率で,現 在も実地臨床で行われている。
そもそも,なぜ永続性心房細動で抗不整脈薬が必要なのか? PALLAS試験の問いかけ自体が,まず問われるべきだろう。    (まとめ・田中 かおり)
出典  MT Pro 2011.11.21
版権 メディカル・トリビューン社

 
 
<関連サイト>
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AHA2011(第84回米国心臓協会学術集会)ハイライトの記事で勉強しました。
 
発作性心房細動に対する第一選択治療として高周波アブレーション
A Randomized Multicenter Comparison of Radiofrequency Ablation and Antiarrhythmic Drug Therapy as First-Line Treatment in 294 Patients with Paroxysmal Atrial Fibrillation
 
抗不整脈薬投与歴のある症候性発作性心房細動(atrial fibrillation: AF)に対して,高周波アブレーションが第二選択治療として薬剤療法より優れていることが報告されているが,第一選択治療としての有用性を多数の患者で長 期にわたり検討した試験はない。

今回,Nielsen氏らは第一選択治療としての両治療法を多数の患者を対象に複数の施設で比較検討し,24か月後には高周波アブレーションのほうが薬物療法よりも優れていたという成績を報告した。 

 

■第一選択治療として高周波アブレーションと薬剤療法を比較した初めての大規模試験
MANTRA-PAF(Medical Antiarrhythmic Treatment or Radiofrequency Ablation in Paroxysmal Atrial Fibrillation)試験では,症候性発作性AFに対する第一選択治療として高周波アブレーション(radiofrequency ablation: RFA)と抗不整脈薬(antiarrhythmic drug : AAD)投与を比較検討した。

対象患者は294例で,RFA群146例,AAD群148例であった。

RFA群では肺静脈隔離術を実施し,AAD群では,主にクラスIc群の薬剤を投与して,これが無効あるいは忍容できない場合はクラスIII群の薬剤に変更した。
無作為割付の3,6,12,18,24か月後に7日間のホルターモニターを実 施し,経過を評価した。

主要評価項目は,各ホルター記録期間中のAF burden(全心拍時間に占めるAF持続時間の割合)と累積AF burdenとし,副次評価項目は,24か月後のすべてのAFおよび症候性AFの欠如,ホルター記録期間中の症候性AF burden,心房粗動,12か月後と24か月後のQOL,重篤な副作用とした。

24か月後にはRFA群の140例に223回のRFAを実施し,13例(9%)に抗不整脈薬を投与した。

AAD群では,146例に投薬を開始し,使用した 薬剤数は平均1.24±0.48であり,24か月後には54例に87回のRFAを実施した。
抗不整脈薬を継続投与したのは100例(73%)であった。
 

■24か月後のAF burdenは高周波アブレーション群で著明に減少
AF burdenについてはベースライン,3,6か月後には両群間に差は認められず,12,18か月後にはRFA群のほうが少ない傾向が示され,24か月後にはRFA群のほうが有意に少ないことが示された。
累積AF burdenに両群間の有意差はなかった。
 
SF-36を用いて調査したQOLをみると,身体的健康度は両群とも上昇したが,12か月後,24か月後ともRFA群のほうがAAD群よりも高い値を示した。
精神的健康度は両群とも同等に上昇した。
また心房粗動を発現した患者数に両群間の差はなかった。
重篤な有害事象はRFA群で25例,AAD群で22例 に認められたが,両群に差はなかった。 
 
Niesen氏は,以上の結果から発作性AFの第一選択治療として高周波アブレーションが支持されるという結論を示した。
これはまた早期アブレーションに より長期的にAFの進行が回避されるという見解を支持するものでもある。
ただ,この試験の対象患者は合併症がほとんどない比較的若い患者であったことか ら,発作性AF患者すべてに一律に高周波アブレーションを実施するという根拠としてこの試験結果を用いるべきではないと添えた。
  (メディカルライター 野崎由美)
 
■監修者のコメント
発作性心房細動の長期的な進展抑制:第一選択治療はアブレーションか薬物治療か
本研究は,発作性心房細動患者に第一選択治療として,アブレーションと薬物療法のいずれが長期心房細動抑制効果に優れるかについて,初めて検討した重要な研究である。

クラスIc群を中心とした抗不整脈薬に比較して,アブレーション群で2年目の単独長期予後に有意差がみられた。
不整脈の2年間の累積発生率や,最初の1年間の発生率は2群間で有意差がない。
したがって,アブレーションは短期の発生抑制よりも,より長期の心房細動への進展抑制に優れる。

さらに,両群間でSF36で評価した「QOL,生活の質」に改善がみられ,特に精神的QOLよりも,身体的QOLがアブレーション群で優れていた。

本研究の要点は,発作性心房細動でも心機能障害のない比較的健常な者を対象としたエビデンスである点である。
対象者のうち高血圧の合併は約30%にみられ,器質的疾患として高血圧性心疾患はあるかもしれないが,糖尿病や他の心血管合併症はほとんどみられない。
また,左房径は40mmで,左室機能も大半が保たれていることから,左室や左房のリモデリングが進展する前の対象者である。

本研究より,心房細動のより早期からの予防・治療戦略において,アブレーションが選択肢の1つであることが支持される。
しかし,死亡を含む他の重篤な合併症に2群間で差はないものの,アブレーション群では心タンポナーデ3例,肺静脈狭窄1例などの侵襲的手技に直接関連した合併症が生じている。

心房細動のアブレーション適応に関しては,主治医が客観的視点に立ち,患者に施行者の技術や施設成功率に関する情報を開示し,その利点とリスクを十分に話し合った後に決定することが望まれる。

 
監修:自治医科大学内科学講座循環器内科学部門主任教授 苅尾七臣

http://www.biomedisonline.jp/aha2011hl/LBCT03/Oral.php
(同時通訳音声、英語音声および動画を見ることが出来ます。)
 

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PALLAS試験

戯れ言たれる侏儒 / 2011.12.05 00:11 / 推薦数 : 1
“永続性”心房細動では予後が悪化,新規Ⅲ群抗不整脈薬dronedarone
発作性・持続性とは異なる結果に,AHA 2011で発表のPALLAS試験
アミオダロンよりも安全性が高いⅢ群抗不整脈薬として開発されたdronedaroneは,発作性および持続性心房細動患者で予後改善が認められたATHENA試験の結果(N Engl J Med 2009; 360: 668-678)を基に,欧米ではガイドラインでもアミオダロンとともに重要な位置付けがされている。
しかし,心不全患者を対象にしたANDROMEDA試験N Engl J Med 2009; 360: 668-678)に続き,第84回米国心臓協会年次集会(AHA 2011;11月12~16日,オーランド)で発表された永続性心房細動患者を対象としたPALLAS試験(Permanent Atrial fibrillation Outcome Study Using Dronedarone on Top of Standard Therapy)N Engl J Med 2011年11月14日オンライン版)においても,臨床的有用性は認められなかった。
試験結果を紹介したマクマスター大学(カナダ)教授のStuart J. Connolly氏は「永続性心房細動患者にはdronedaroneを使用すべきでない」と述べた。
 
洞調律維持や心拍数抑制を認めるも服薬中止率は増加
Dronedaroneは,アミオダロンに似た電気生理学的特徴を有するが,アミオダロンとは異なりヨウ素を含まないため,高い安全性が期待されている
心房細動患者において心拍数を緩やかにし,降圧作用や抗アドレナリン作用を示すことで,心室性不整脈の発生を阻害する

欧米では,心血管疾患による入院や死亡を有意に低下したATHENA試験を基に同試験対象患者の適用が速やかに承認されている。
心不全患者を対象にしたANDROMEDA試験において,予後の悪化が認められたことから,心不全患者は適用から除外されているが,現在,同薬はアミオダロンとともにガイドライン上,重要な位置付けを占めている。
 
今回報告されたPALAS試験では,永続性心房細動へのdronedaroneの有用性が検証された。
対象は,65歳以上の心血管危険因子を有する永続性心房細動(6カ月以上の心房細動持続)。
2010年7月から登録が開始されたが,安全性の懸念から2011年7月に試験は早期中止となった。

二重盲検ランダム化比較試験(RCT)として,37カ国489施設が参加した。
登録された3,236例(当初の目標登録数1万800人)は dronedarone(400mg×2回)群とプラセボ群に割り付けられた。
試験が中止されるまでの追跡期間中央値は3.5カ月だった。

追跡期間における洞調律の維持はdronedarone群で有意に多くなっており(3.5%対1.4%),同群では心拍数も7拍超の低下,収縮期血圧3.5mmHgの低下が認められていた。
しかし,服薬中止率も同群で有意に多くなっていた(21%対11%)。
 

1次評価は有意に上昇,服用患者が永続性心房細動でないか定期的な検査が必要
その結果,脳卒中,心筋梗塞,全身性塞栓症,心血管死から成る1次評価項目の発生は,プラセボ群19例(1.2%)に比べdronedarone 群43例(2.7%)で有意に高かった(ハザード比2.29,95%CI 1.34〜3.94,P=0.002)。
2次評価項目の心血管疾患による予期せぬ入院や死亡についても,プラセボ群67例(4.1%)に比 べ,dronedarone群 127例(7.8%)で有意に高くなっていた(P<0.001)。

死亡数,心血管疾患死,不整脈死,脳卒中の発生がいずれもdronedarone群で有意に多く,ANDROMEDA試験の成績から懸念されていた心不全の悪化による入院はdronedarone群43件でプラセボ群24件に比べてやはり有意に多くなっていた。

Conolly氏は「dronedaroneの1次評価項目の有意な上昇は主に死亡や心不全,脳卒中の増加による。
副作用による脱落率も高かった」として永続性心房細動に対しては同薬は使用すべきでないと結論した。
 
なお,指定討論者のタフツ大学内科教授のN. A. Mark Estes Ⅲ氏は,「発作性および持続性心房細動の患者にdronedaroneを投与し続ける場合,医師は半年ごとに検査を行い,有効性が認められている ATHENA試験の対象患者群に該当しているかどうか(永続性心房細動でないか)を確認していく必要がある」と指摘した。(田中 かおり)
 
出典 MT Pro  2011.11.21
版権 メディカル・トリビューン社
 
<自遊時間>
先週の土曜日の夕方、ある講演会に出席しました。
演者は某大学循環器科教授ですが、若い頃某病院で一緒に仕事をしていた先生です。
講演後、場所を移動して昔話に花が咲きました。
いろんな話が出た中で、共通の知人が癌にかかり闘病生活を送っている話が心に残りました。

特に、彼の気心の知れた5〜6人の仲間のうち自分以外は癌になったという話題はショッキングでした。
癌はかかりたくない病気の代表ですが、今や二人に一人がかかる病気です。
かかっても甘受しなければいけないのかも知れません。

しかし、宣告を受けたらきっと取り乱す自分しか想像出来ません。
 
<関連サイト>
慢然と抗不整脈薬を使用すべきでない
 
 
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ダビガトランとワルファリンどう使い分けるか? 専門家が議論
日本循環器学会プレスセミナー
非弁膜症性心房細動(AF)患者における心原性脳梗塞・全身性塞栓症の予防で期待される抗凝固療法。
ダビガトランの登場により治療選択肢が広がった。
しかし,同薬の市販後調査から重篤な出血例やそれに伴う死亡例が報告され,薬剤の適正使用のさらなる推進が急務となった。
9月30日に東京都で開かれた第5回日本循環器学会プレスセミナー「心房細動と心原性脳塞栓症」の総合討論で専門家5氏が,どのような例にワルファリンを処方継続し,どのような例にはダビガトランを処方すべきなのか,抗凝固薬の使い分けをめぐり議論を交わした。
【出席者】
東京大学大学院循環器内科教授・永井良三氏(座長)
国際医療福祉大学三田病院院長・小川聡氏(座長)
心臓血管研究所所長(同病院院長)・山下武志氏
弘前大学大学院循環呼吸腎臓内科学講座副研究科長・
奥村謙氏
大阪医療センター臨床研究センター長・是恒之宏氏
 
ワルファリンで問題なければ継続も
会場から,ダビガトランとワルファリンの使い分けをどうするのかとの質問があった。
これについて,弘前大学大学院循環呼吸腎臓内科学講座副研究科長の奥村謙氏は,ダビガトラン投与の条件は比較的年齢が若く,腎機能が正常であること,出血リスクが低い例だとし,大阪医療センター臨床研究センター長の是恒之宏氏も同意見であるとした。
 
しかし,腎機能低下例ではワルファリンを投与しても出血が生じるため,是恒氏は「どちらにせよ,薬剤のリスク・ベネフィットはきちんと説明すべき」という。
また「ワルファリンでコントロールできている患者にも,ダビガトランが食事に左右されない薬剤であること,しかしながら薬価が高くなることなどを説明し,どちらにするか選択してもらう」(同氏)。
 
一方,心臓血管研究所所長(同病院院長)の山下武志氏はワルファリン投与例で問題がなければ処方を継続し,新規の患者にはダビガトランとワルファリン両方の情報を提供し選択してもらうという形を取っている。
もし,プロトロンビン時間国際標準化比(PT-INR)のコントロールが悪ければダビガトラン投与が望ましく,胃腸障害がある患者にはダビガトランの副作用を考慮し,ワルファリンを処方するという。
 
また,同氏の施設では,ダビガトラン処方後の活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)測定から出血リスクが想定される患者には,処方経験の豊富なワルファリンに切り替えるのが望ましいと判断しているという。
 
腎機能,コンプライアンス,転倒リスクがダビガトラン処方の判断材料
国際医療福祉大学三田病院院長の小川聡氏からは,これまでワルファリンが使用されていなかったCHADS2スコア1以下のAF患者に対し,今後ダビガトランを使用していくことはありうるのかとの質問が寄せられた。
 
これに対し奥村氏は,CHADS2スコアで1点と算定される「75歳以上」が,CHAD2S2-VAScスコア〔欧州心臓病学会(ESC) 心房細動ガイドライン〕を用いると2点と算定されるため,まずCHADS2のスコア1を慎重に評価する必要性を指摘した。
その上で,抗凝固薬の適応になる CHAD2S2-VAScスコアで2点となった「75歳以上」へのダビガトラン投与について「出血リスクが増すのではないかという印象を持っている」と話 した。
 
同氏によると,高齢者では腎機能低下例や体重が少ない例が多く,ダビガトランの血中濃度が上昇する可能性を考えると「ダビガトランは出血リスクが低い薬剤とはいえない」という。
 
一方,是恒氏はCHADS2スコアが1点の患者にワルファリンが投与されない理由として,服薬コンプライアンスが不良であること,転倒などによる出血リスクがあることなどを挙げた。
「ワルファリンで服薬コンプライアンス不良なら,ダビガトランに切り替えても同じこと。ダビガトランの処方は腎機能に問題がなく,服薬コンプライアンスが良好な例,転倒リスクがさほど高くない例ということになる」(同氏)
 
“ワルファリンより出血少ない”結果だけ先行
わが国でもAF患者が増加している現状を考えると,非専門医との病診連携が重要になってくる。
 
ワルファリンはPT-INRによってコントロールできるため,非専門医による高リスク例へのワルファリン投与も不可能ではない,と奥村氏。
一方, ダビガトラン110mgは欧米と同じ用量であり「まず,われわれ専門医が十分な経験を蓄積し情報を提供していきたい。今の段階では,できるだけ専門医によ る処方が望ましい」との見方を示した。
 
「当院でもまだダビガトラン処方は166例(9月30日現在)。これが300例,400例になったら何が起こるのかは,われわれにも予測がつかない」というのは山下氏。新しい薬剤には,新しい知識や注意点が伴うため,現段階では専門医が処方に伴うリスクを取るべきだ,と述べた。
 
是恒氏は,ワルファリン処方例における病診連携を挙げ「ワルファリン同様,ダビガトラン導入時に専門医が患者の腎機能,出血リスク,消化管症状などをきちんと評価し,これでいけると思った段階で非専門医に返していけばよいのではないか」と話した。
 
新薬の情報構築の仕方に一石
さらに,小川氏は「出血の合併症がワルファリン群に比べてダビガトラン群で少なかったというRE-LY試験(N Engl J Med 2009; 361: 1139-1151)の結果だけが先行し,より安全な薬剤であるとの誤った認識につながって非専門医の処方へと拡大していったように思う」と振り返った。
 
東京大学大学院循環器内科教授の永井良三氏は「ランダム化比較試験(RCT)で良い結果が出てそれに飛び付くことがEBMだと考えるのは大きな間違いだ」と述べ,今回の問題が臨床研究の考え方を見直す機会になったのではないか,との認識を示した。
 
また,新しい薬剤の副作用は市販後調査で初めて分かることもあり,副作用例が報告された場合,速やかに情報を伝えていくことの重要性を指摘した。
 
同氏は,今回の問題に対する対応は早かったと評価し「新薬の開発から市販後の副作用までの情報構築の仕方について,重要な示唆を与えたものと思う」と述べた。
                (田上 玲子)
 
<番外編>
武田薬品、高脂血症薬を承認申請
武田薬品工業は、高脂血症の新薬候補「TAK-085」を厚生労働省に製造販売承認申請したと9月29日発表した。
  中略
ノルウェーのプロノバ・バイオファーマから2005年に導入した新薬で、イコサペンタエン酸(EPA)エチル・ドコサヘキサエン酸(DHA)エチルを含むオ メガ-3脂肪酸製剤。
国内第3相臨床試験ではEPA製剤と効果を比較し、血中のトリグリセライド値を有意に改善させることができた。
米国や欧州ではすでに販売されている。
高脂血症薬の国内市場は約3800億円。
うち約1割をEPA製剤が占める。
http://www.kagakukogyonippo.com/
 

 <自遊時間>

スティーブ・ジョブズの感動スピーチ(翻訳)字幕動画

ジョブズ氏に仰天させられ続けたマックユーザーの幸福

 
http://www.nikkei.com/news/headline/article/g=96958A9C93819696E2E4E29B8B8DE2E4E3E2E0E2E3E38698E2E2E2E2
 
 
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ARISTOTLE試験を分析

戯れ言たれる侏儒 / 2011.09.30 00:27 / 推薦数 : 1

ワルファリンを上回る心房細動の脳卒中予防効果を示したARISTOTLE試験を分析
新規抗凝固薬導入時の注意点も再確認
3月に新規抗凝固薬ダビガトラン(抗トロンビン薬)が発売されてから約半年が経過した。
心房細動患者6万4,000例余りに使用されているが,重篤な出血性副作用が81例,薬剤との因果関係が否定できない死亡も5例報告された(8月11日時点)。
そのような中,第33回欧州心臓病学会(ESC 2011)ではARISTOTLEの報告があり,apixaban(Ⅹa薬)が有効性・安全性ともにワルファリンを上回り,注目を集めた。
そこで,国立病 院機構大阪医療センター臨床研究センターの是恒之宏センター長と心臓血管研究所(東京都)の山下武志所長に試験結果の背景分析や,新規抗凝固薬導入時の注 意点をあらためて解説してもらった。

綿密な用量設定が奏効
ARISTOTLEでapixabanの有効性・安全性評価がワルファリンを上回った背景として,是恒センター長,山下所長はともに綿密な用量設定を挙げる。
試験における用量設定は,通常が5mg錠を1日2回であるが,
(1)80歳以上
(2)体重60kg以下
(3)血清クレアチニン (Cr)1.5mg/dL以上
—のうち2項目が当てはまる場合は,1回量を半量の2.5mgに減量することとなっている。
山下所長は「出血リスクが高い患者で出血を予防する手段が講じられていたことが,大出血の発生抑制につながった」と分析する。
脳出血は有意に抑制しながら脳梗塞については差がなかったことから,「リスクを増やさずに効果を最大限に引き出した用量設定だったのではないか」(山下所長)としている。

加えて是恒センター長は1日2回投与であるため,1回投与の場合よりも最大血中濃度の上昇が抑えられて出血リスクが最小で済んだ可能性を挙げる。
消化管出血の増加も見られなかった。
 
さらに同薬は腎排泄が25%と少ないことから,「薬剤選択の幅が広がったことを意味する」と両氏は口をそろえる。

 
抗血小板薬との併用は慎重にすべき
Apixabanを用いた試験としては,ワルファリンとの比較試験の前に,ワルファリン回避例でのアスピリンとの比較試験(AVERROES)も行われ ている。
2試験の結果から,apixabanの大出血はアスピリンと同程度でワルファリンよりも有意に少なく,脳卒中予防効果はワルファリンより優れてい た。
 
また,抗血小板薬との併用は慎重にすべきことも明らかになった。
apixaban群の大出血率は,アスピリン群との比較で1.4%/年,ワルファリン群との比較では2.1%/年と異なっていたが,「アスピリンとの比較試験ではアスピリン併用はないが,ワルファリンとの比較試験では約30%で併用されていた。それにより大出血が増加した」(山下所長)と考えられるからだ。
 
3剤併用ではさらに注意が必要だ。
ARISTOTLEにおいてクロピドグレルとの併用は2%未満だったが,apixabanを用いた急性冠症候群の第Ⅲ相試験では,大出血事象のため早期中止となっている。
これらの結果から,同所長は「3剤併用は行うべきでなく,2剤併用も可能な限り避けた方がよいことを教えてくれた」とまとめた。

 
心房細動の脳卒中予防=腎機能を診る時代に
治療薬の進化によって,出血リスクの低減は期待できるのか。是恒センター長と山下所長は,
(1)あくまでも臨床試験で得られた結果であって実臨床は別
(2)どの抗血栓薬も適切に使用しなければリスクを伴う—という意見で一致している。
 
是恒センター長は「臨床試験は,経験豊富な医師が厳格に調整する,いわば優等生の治療によるもの。安全なイメージが先行して市販後に適切に使われないと,出血事故につながる」と注意を促す。
 
山下所長はこれまでの出血性事象の報告について「ワルファリンの時代が長く続いたために,“心房細動の脳卒中予防=腎機能に注意”という図式がなかった。
新しい時代の抗凝固療法に,まだ十分に適応できていない」と指摘する。
新規抗凝固薬はクレアチニンクリアランス30mL/分以下の患者には用いることができない点を再確認する必要があると強調した。
 
患者の出血リスクを把握することや出血があった場合の連絡網を確認することが求められる。
 
ARISTOTLE試験
対象 
脳卒中危険因子を1つ以上有する18歳以上の非弁膜性心房細動患者
デザイン 
二重盲検ランダム化比較試験(39カ国1,034施設)。apixaban 5mg×2回/日(出血高リスク患者は半量に)とワルファリン群をダブルダミーで比較
結果 
中央値1.8年の追跡の結果,intention-to-treat解析で,脳卒中・全身性塞栓症の発生がapixaban群 1.27%/年,ワルファリン群1.60%/年でハザード比(HR)0.79,95%信頼区間(CI)0.66~0.95,非劣性評価P<0.001,優 位性評価P=0.01。
大出血の発生が順に2.13%/年,3.09%/年でHR 0.69,95%CI 0.60~0.80,P<0.001。全死亡が3.52%/年,3.94%/年でHR 0.89(P<0.047)。
投与脱落例25.3%,27.5%(NEJMオンライン版)
 
出典 Medical Tribune 2011.9.22
版権 メディカルトリビューン社

 
<関連サイト>
新規抗凝固薬はワルファリンへの優位性が必要

ARISTOTLE試験
 
ARISTOTLE(循環器トライアルベース)

http://circ.ebm-library.jp/trial/doc/c2004793.html
堀 正二先生のコメント
心房細動患者に対する直接Xa因子阻害薬apixabanの第III相大規模臨床試験(ARISTOTLE試験)の結果は,warfarinに対する非劣性のみならず,優越性を示す良好な内容であった。

有効性エンドポイント(脳卒中および全身性塞栓症)を21%抑制すると同時に大出血のリスクを31%抑制し,層別解析において日本を含むアジア・太平洋地域住民における有効性も安全性も優れた結果を示唆したことはさらに歓迎すべき成績であった。
本試験によって,トロンビン阻害薬(dabigatran)およびXa因子阻害薬(rivaroxaban,apixaban)の心房細動患者における心原性塞栓症の予防効果が明らかにされ,これらの新規抗凝固薬がいずれもwarfarinの欠点を克服しているのみならず,その有効性においてもwarfarinを超える成績が得られたことは,抗凝固療法の新しい時代の幕開けを確信させた。
これらの新規薬剤の比較については,3試験間の試験デザイン,患者背景(CHADS2スコアなど),薬剤投与方法(用量・用法),warfarin群のTTRなどの差異があるため単純比較は困難であり,2剤間の突合試験を待たねばならないが,共通して明らかになったことは,これらの新規抗凝固薬がwarfarinに比し,
頭蓋内出血を著明に抑制している一方,本来期待される虚血性脳卒中 (脳梗塞)の抑制は弱く,有効性のかなりの部分が出血性脳卒中の抑制によることである。
これは,warfarinが頭蓋内出血・出血性脳卒中を特異的に増加させていたことによるのかも知れないが,新しい抗凝固薬が有効性と安全性においてwarfarinより特段に優れた薬剤ではないことを銘記する必要があろう
 
井上 博先生のコメント
Xa 阻害薬のアピキサバンが,塞栓症リスクを1つ以上もつ心房細動患者の脳卒中,全身性塞栓症の予防においてワルファリンよりも優れており,かつ出血性合併症が少ないことが示された。
さらには,死亡リスクもワルファリンに比べて低かったことは注目すべき結果である。
これまでは心房細動塞栓の予防(経口薬)に ワルファリンしか手段がなかったが,直接抗トロンビン薬に加えてXa阻害薬の有効性が示され,我々の選択肢が大きく広がった。
 

<記事加筆しました>

たこつぼ心筋障害

 

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ARISTOTLE試験

戯れ言たれる侏儒 / 2011.09.14 00:39 / 推薦数 : 1
新規抗凝固薬apixaban,心房細動の脳卒中・出血・死亡抑制でワルファリン上回る
ESC 2011発表のARISTOTLE試験
非弁膜性心房細動患者の抗凝固療法として,ワルファリンに替わる新規抗凝固薬が相次いで登場している。
わが国ではトロンビン阻害薬のダビガトランが今年(2011年)3月から使用されているが,消化管出血による死亡例の報告もあり,慎重な導入が望まれている。
このような中,第33回欧州心臓病学会(ESC Congress 2011;8月27~31日,仏ロワシー)では,apixaban(Xa阻害薬)とワルファリンを比較したARISTOTLE試験※1が発表された。
ダビガトランを対象にしたRE-LY試験,rivaroxaban(Xa阻害薬)を対象にしたROCKET-AF試験に続き,apixabanでもワルファリンへの非劣性が証明された上に,脳卒中やその他の塞栓症,大出血,さらに総死亡のエンドポイントにおいて,いずれも apixabanの有意な優位性が示されたことを米デューク大学メディカルセンター(ダーラム)循環器科ディレクターのChristopher B. Granger氏が明らかにした。
試験の結果は,N Engl J Med 8月28日オンライン版でも同時に掲載された。
 
CHADS2スコア1点以上が対象
ARISTOTLE試験の対象は,18歳以上で脳卒中リスクを1つ以上有する(CHADS2スコア1点以上)心房細動患者※2
血清クレアチニン2.5mg/dL超の腎機能障害例などは除外された。
ダブルダミーによる二重盲検ランダム化比較試験(RCT)として行われ,39カ国1,012施設から1万8,201例が登録された。
 
仮説では,脳卒中と全身性塞栓症の有効性エンドポイントと大出血の安全性エンドポイントにおけるapixabanのワルファリンに対する非劣性を想定。
それぞれ非劣性が確認された場合は,優位性の評価が予定されていた。
Apixaban群では特定の患者※3以外,5.0mg錠を1日2回服用,ワルファリン群は2.0mg/日から始めてプロトロンビン時間国際標準比(PT-INR)2.0~3.0を目標範囲として調整が行われた。
エンドポイントの解析は,intention to treat(ITT)解析で行われた。
 
登録患者の平均年齢は70歳で,女性の割合が35%,一過性脳虚血発作(TIA)または脳卒中の既往が19%を占め,平均CHADS2スコアは2.1だった。
CHADS2スコア1点の患者の割合は34%で,抗凝固療法未経験者は43%だった。
 
有効性・安全性項目ともにapixaban群が有意に優れる
追跡期間中央値は1.8年。
有効性1次エンドポイントの脳卒中とそれ以外の塞栓症の発生は,ワルファリン群1.60%/年に対して apixaban群1.27%/年で,apixaban群が有意に低かった〔ハザード比(HR)0.79,95%CI 0.66〜0.95,非劣性評価P<0.001,優位性評価P=0.01〕。
脳出血についてもHR 0.51で有意な低下が認められた(P<0.001)。
また,2次エンドポイントの総死亡は,ワルファリン群3.94%/年に対してapixaban群は 3.52%/年とHR 0.89で有意に低下した(P=0.047)。
 
安全性の1次エンドポイントである大出血は,ワルファリン群3.09%に対してapixaban群2.13%で,apixaban群で有意に低下した(HR 0.69,95%CI 0.60〜0.80,P<0.001)。
個々の出血項目については,apixaban群のHRが頭蓋内出血で0.42(P<0.001)となるなど,消化管出血以外はすべてapixaban群が有意に低下していた。
消化管出血についてもHRは0.89(P=0.37)だった。
 
これらの結果,1次エンドポイントの有効性および安全性項目を合わせた全体の臨床有効性評価で,apixaban群のHRは0.77と有意に優れていた(P<0.001)。
今回のARISTOTLE試験の結果に基づけば,心房細動患者1,000人をapixabanで1.8年治療した場合,ワルファリンと比べて脳卒中が6件(うち4件が出血性,2件が虚血性)と大出血が15件,死亡が8人減ることが見込まれる。
なお,治療の脱落例はapixaban群が25.3%,ワルファリン群が27.5%だった。
 
ワルファリンの治療状況はapixabanの優位性に影響せず
ワルファリンとの比較試験では,ワルファリンのコントロール状況によって結果が左右されることになる。
そこで,プロトロンビン時間国際標準比 (PT-INR)2.0~3.0の範囲に調整された有効な治療域にある時間(TTR)とイベント発生率の関係が調べられた。
このデータは,ウプサラ臨床研 究センター(スウェーデン)教授のLars C. Wallentin氏が報告した。
それによると,全体のTTRは66%で,TTRが72超の管理良好な患者群でも,TTRが58未満の管理不良な患者群に おいてもapixabanが優位な傾向は変わらなかった。
 
指定討論者のランケナウ医学研究所(米国)のMichael D. Ezekowitz氏は,近年立て続けに発表されてきた3つの新規抗凝固薬がワルファリンとの比較でそれぞれ頭蓋内出血を有意に抑制していること,ARISTOTLE試験では1次エンドポイントに加えて総死亡も有意に抑制した点などを挙げ,「新たな時代の夜明け」と評した。
また,残された課題は 「抗凝固療法からの脱落者をいかに減らしていくか」と指摘した。  (田中 かおり)
 
※1 Apixaban for the Prevention of Stroke in Subjects with Atrial Fibrillation(ARISTOTLE)
※2 以下のいずれかを有する場合:75歳以上,脳卒中既往,TIAまたは全身性塞栓症,症候性うっ血性心不全または左室駆出率40%以下の左室機能障害,治療を要する糖尿病または高血圧
※3 80歳以上,60kg以下,血清クレアチニン1.5mg/dL以上に2つ以上該当する場合は2.5mg錠を1日2回
 
出典 MT pro 2011.8.29
版権 メディカル・トリビューン社


 
<関連サイト>
第Xa因子阻害薬アピキサバン(apixaban)の実力:ARISTOTLE試験
http://stroke-memorandum.blogspot.com/2011/09/xaapixabanaristotle.html
 
心房細動に対する新規Xa阻害薬アピキサバンの大規模試験:ARISTOTLE試験「何が最高善か」
http://dobashin.exblog.jp/13416606/

ARISTOTLE
http://circ.ebm-library.jp/trial/doc/c2004793.html
堀正二先生と井上博先生のコメント
■心房細動患者に対する直接Xa因子阻害薬apixabanの第III相大規模臨床試験(ARISTOTLE試験)の結果は,warfarinに対する非劣 性のみならず,優越性を示す良好な内容であった。
有効性エンドポイント(脳卒中および全身性塞栓症)を21%抑制すると同時に大出血のリスクを31%抑制し,層別解析において日本を含むアジア・太平洋地域住民における有効性も安全性も優れた結果を示唆したことはさらに歓迎すべき成績であった。
本試験によって,トロンビン阻害薬(dabigatran)およびXa因子阻害薬(rivaroxaban,apixaban)の心房細動患者における心原性塞栓症の予防効果が明らかにされ,これらの新規抗凝固薬がいずれもwarfarinの欠点を克服しているのみならず,その有効性においてもwarfarinを超え る成績が得られたことは,抗凝固療法の新しい時代の幕開けを確信させた。
これらの新規薬剤の比較については,3試験間の試験デザイン,患者背景(CHADS2ス コアなど),薬剤投与方法(用量・用法),warfarin群のTTRなどの差異があるため単純比較は困難であり,2剤間の突合試験を待たねばならないが,共通して明らかになったことは,これらの新規抗凝固薬がwarfarinに比し,頭蓋内出血を著明に抑制している一方,本来期待される虚血性脳卒中 (脳梗塞)の抑制は弱く,有効性のかなりの部分が出血性脳卒中の抑制によることである。
これは,warfarinが頭蓋内出血・出血性脳卒中を特異的に増 加させていたことによるのかも知れないが,新しい抗凝固薬が有効性と安全性においてwarfarinより特段に優れた薬剤ではないことを銘記する必要があろう。
(堀正二先生)
■Xa阻害薬のアピキサバンが,塞栓症リスクを1つ以上もつ心房細動患者の脳卒中,全身性塞栓症の予防においてワルファリンよりも優れており,かつ出血性合 併症が少ないことが示された。
さらには,死亡リスクもワルファリンに比べて低かったことは注目すべき結果である。
これまでは心房細動塞栓の予防(経口薬) にはワルファリンしか手段がなかったが,直接抗トロンビン薬に加えてXa阻害薬の有効性が示され,我々の選択肢が大きく広がった。
 
【緊急コメント】apixabanの優位性には出血リスクを考慮した用量設定が奏効か
ARISTOTLE試験について是恒之宏氏と一問一答

http://mtpro.medical-tribune.co.jp/mtpronews/1108/1108088.html
■新規抗凝固薬の中で初めて,有効性,安全性ともにワルファリンを上回った。
■有効性,安全性両面で素晴らしい結果だった。新規抗凝固薬での増加が懸念されている消化管出血に関して,有意差はないがワルファリンに比べて若干少なくなっていたことを含め,安全性の面での懸念事項がクリアされていたと言える。
■新規抗凝固薬には1日2回投与のダビガトラン,apixaban,1日1回投与のrivaroxaban,エドキサバンがある。rivaroxabanの場合,ROCKET-AF試験で消化管出血が増加しており,推測ではあるが,最大血中濃度が影響した可能性もある
同じ1日1回投与のエドキサバンのデータも含めて検討していくことになると思う。
■apixabanでは2用量が設定されていた。
年齢80歳以上,体重60kg以下,腎機能障害(血清クレアチニン1,5mg/dL以上)の3条件のうち2 つに相当する場合は,投与量を半減させることになっていた。
これが奏効した可能性もある。
腎排泄が少ない点(25%)は,薬剤選択の幅が広がったことを意味するだろう。
■臨床試験の結果は,経験豊富な医師が厳格に調整しながら治療する,いわば「優等生の治療」によるもの。
安全なイメージが先行して市販後に適切に使われない と,出血事故につながる。これは抗血栓薬すべてに当てはまることであるが,試験で安全性が示されていても,やはり導入の際には慎重な姿勢が求められる。
<私的コメント>
臨床試験が「優等生の治療」 には少し疑義があります。
私は最近、随分前から市販されている某ニューキノロン系抗菌剤を投与し、意識障害による交通事故を起こした症例を経験しました(症例報告としては本邦初症例)。
市販後に副作用が見つかるケースも多く、臨床試験に関わった経験のある身として、大学病院を含めた勤務医が十分な観察をしているとは思えません。
 
 
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出血性副作用死亡例受け、販売元がブルーレターで注意喚起
抗凝固薬ダビガトラン(商品名プラザキサ、2011年3月発売)を服用し、因果関係を否定できない重篤な出血性副作用を起こした患者が8月11日までに81例報告され、そのうち5例が死亡したことから、製造販売元の日本ベーリンガー インゲルハイムは厚生労働省の指示を受けて安全性速報(ブルーレター)による注意喚起と添付文書の改訂を行った。   
死亡したのは、70歳代男性1人、80歳代女性3人、100歳代女性1人。

うち4人は心房細動のほか、腎障害や心不全など複数の合併症を有していた。
1例目の死亡例(80歳代女性)が報告された6月にも、同社は厚労省の指示を受け、高齢者や腎障害のある患者に対して慎重投与を求める「適正使用のお願い」を配布していた。

今回のブルーレターでは、以下の項目について改めて注意を喚起した。

(1)患者の状態(腎機能、高齢者、消化管出血の既往など)による出血の危険性を考慮し、投与の適否を慎重に判断する。

投与中は出血や貧血などの徴候を十分観察し、これらの徴候が認められた場合には直ちに適切な処置を行う。

(2)患者に対し、出血しやすくなることを説明し、鼻出血、歯肉出血、皮下出血、血尿、血便など異常な出血が認められた場合には直ちに医師に連絡するよう指導する。

(3)投与前は必ず腎機能を確認し、投与中は適宜、腎機能検査を行い、腎機能の悪化が認められた場合には投与の中止や減量を考慮する。

添付文書の改訂に当たっては、警告欄を新たに設け、上記(1)の項目を記載するとともに、「慎重投与」の対象として、「
P-糖蛋白阻害薬[経口剤]を併用している患者」(ダビガトランの血中濃度が上昇する恐れがある)を追記するなどした。

添付文書の相互作用欄には、併用に注意すべきP-糖蛋白阻害薬として、イトラコナゾール(併用禁忌)、ベラパミル、アミオダロン、キニジン、タクロリムス、シクロスポリン、リトナビル、ネルフィナビル、サキナビル、クラリスロマイシンなどが記載されている。

ダビガトランは非弁膜症性の心房細動患者における脳や全身の塞栓症の発症抑制を適応とする国内初の経口直接トロンビン阻害薬であり、ワルファリンと異なり血液凝固モニタリングが不要であるなど使い勝手が良いことから、3月の販売以降、処方数が伸びており、現在の推定使用患者数は約6万4000人。

同薬は腎排泄型の薬剤であるため、腎機能に障害があると薬剤の血中濃度が上昇し、出血性副作用が発生しやすいことは開発段階から分かっており、従来の添付文書においても高齢者や腎障害のある患者に対しては慎重な投与を求めていた。

 
(財)心臓血管研究所所長・付属病院長の山下武志氏は、「ダビガトラン使用と因果関係が否定できない今回の死亡例の内容を見ると、いずれも高齢者であり、高度の腎機能障害例、腎機能不明例を含むだけでなく、年齢とクレアチニン値から腎機能障害を合併していると推定される症例が目立つ。ダビガトランはその 80%を腎排泄に依存する薬物であり、クレアチニンクリアランス30mL/分を下回る患者に投与禁忌であり、30〜50mL/分の患者でも慎重な投与を要すること、特に高齢者はクレアチニン値から感じられる以上にクレアチニンは低下していることを処方する医師は改めて認識する必要がある。例えば、 eGFR(推算糸球体濾過量)という、クレアチニンクリアランスより低めに出る厳しい基準をクレアチニンクリアランス値として用いながら適応を判断することも一つの安全対策になる」と話している。
 
出典 NM online 2011.8.19
版権 日経BP社
 
 
<私的コメント> 2011.8.22 PM11追加
奇しくも今日の昼、B社のMRさんがダビガトランのブルーレターを持って来ました。
死亡例5例について、「全例が慎重投与ないし投与禁忌例に該当する」とのこと。
はたして本当だろうか。
これらの症例を添付文書改定前の文面で深読みする必要がありそうです。
添付文書は薬剤を投与するわれわれ医師にとってはいわばバイブルです。
ドラッグラグの問題が取り沙汰されて来ましたが、ダビガトランに関しては製造認可や薬価収載が早すぎる気がします。
F社の末梢性神経障害性疼痛治療剤リリカ(一般名プレガバリン) についても問題があります。
死亡例が15例もあるのにかかわらず 「バイブル」には「通常、成人には初期用量として1日150mgを2回に分けて経口投与」と記載されています。
この初期量は明らかにオーバードーシスです。
MRさんも「1日50mgを2回に分けて経口投与(25mg×2)」を推奨しています。
「バイブル」通りに投与するととんでみない結果を招きます。
厚労省のお役人さん、早く対処して下さいよ。
 
話は脱線しましたが、ダビガトラン投与患者にaPTT (80秒以内にコントロール?)の検査をして支払基金で、はねられるか認められるかをMRさんに訊きました。
ブルーレターを引っぱり出して 「本剤による出血リスクを正確に評価できる指標は確立されておらず、・・・、本剤投与中は、血液凝固に関する検査のみならず、出血や貧血等の徴候を十分に観察すること。」の部分を指差しました。
二人で読みましたが、 「血液凝固に関する検査」を認めながら「正確に評価できる指標は確立されておらず」という矛盾に満ちた文章にアホらしくなってしまいました。
諸先生方はaPT検査は行われますか?
 
 
 
<自遊時間>
昨日、F社主催の
「富士山シンポジウム 臨床現場からエビデンスを発信する!」(ヒルトン大阪 午前10時〜12時) の講演を聴きに言って来ました。
座長 愛媛大学 檜垣實男 教授
基調講演 琉球大学 植田真一郎 教授
 「臨床研究を成功させる鍵は?」
 
勤務医や開業医なども、日頃の臨床体験で疑問に思ったことを是非臨床研究という形にして欲しい、という内容です。
企業色を余り感じさせない点(但し「第1部 実践者が語る臨床研究」はアムロジピンを持ち上げていました) で好感の持てる講演会でした。
どうしてこのような企画がされたのかは、ちょっと不思議ではありましたが、来年も第2回が行われるようです。


 
 
 

 
 
 
 

2011.8.21撮影 ヒルトン大阪 午前9時40分
 
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非選択的NSAID、選択的COX-2阻害薬が、心房細動/粗動リスクを増大
非選択的NSAIDの使用によって心房細動/粗動のリスクが増大することが、デンマーク・Aarhus大学病院のMorten Schmidt氏らの検討で示され、BMJ誌2011年7月9日号(オンライン版2011年7月4日号)で報告された。
NSAIDは世界で最も広範に使用されている薬剤の1つであり、新世代の選択的COX-2阻害薬は消化管毒性を改善したNSAIDとして開発された。
一方、心房細動は一般診療で最も高頻度にみられる持続性の心調律障害だが、NSAIDは腎臓への有害作用を介して心房細動のリスクを増大させる可能性が示唆されている。
NSAIDの使用や心房 細動の発生率は加齢とともに増加するため、その関連性は特に高齢者の治療で大きな関心事となっているという。
 
デンマーク北部における10年間の地域住民ベースの症例対照研究
研究グループは、非選択的NSAID(イブプロフェン、ナプロキセンなど)および選択的COX-2阻害薬(ジクロフェナク、エトドラク、セレコキシブなど)の心房細動/粗動リスクへの影響を検討するために、データベースを用いた地域住民ベースの症例対照研究を行った。
デ ンマーク北部地域(人口170万人)において、1999~2008年までに新規に心房細動/粗動の診断を受けた入院および外来患者3万2,602人と、年齢および性別をマッチさせリスク集団サンプリング(risk-set sampling)で抽出した対照群32万5,918人を比較した。
受診時のNSAID使用者を「現使用者」、以前に使用歴のある者は「使用経験者」とし、前者はさらに「新規使用者(診断日前60日以内に初処方)」と「長期 使用者(診断日前60日以前に初処方)」に分けた。
条件付きロジスティック回帰モデルで算出したオッズ比から罹患率比(incidence rate ratio)を推算した。
 
新規使用者でリスクが40~70%増大
非選択的NSAIDあるいは選択的COX-2阻害薬のいずれかの現使用者は、症例群が2,925人(9%)、対照群は2万1,871人(7%)であった。
非 使用者(対照群)との比較における非選択的NSAID現使用者の心房細動/粗動の罹患率比は1.33(95%信頼区間:1.26~1.41)であり、選択 的COX-2阻害薬の現使用者の罹患率比は1.50(同:1.42~1.59)であった。
年齢、性別、心房細動/粗動のリスク因子で調整すると、非選択的 NSAID現使用者の心房細動/粗動の罹患率比は1.17(同:1.10~1.24)、選択的COX-2阻害薬の罹患率比は 1.27(同:1.20~1.34)にまで低下した。
新規使用者の調整罹患率比は、非選択的NSAIDが1.46(95%信頼区間:1.33~1.62)、選択的COX-2阻害薬が1.71(同:1.56~1.88)であった。
個々のNSAIDの罹患率比に差はみられなかった。
著者は、「非選択的NSAIDの使用によって心房細動/粗動のリスクが増大していた。特に新規使用者では40~70%もの増大が確認された」と結論し、 「NSAIDを処方する際に考慮すべき心血管リスクに、心房細動/粗動を加える必要があることを示すエビデンスが得られた」と指摘している。       (菅野守:医学ライター)
出典 Care Net.com 2011.7.22
版権 ケアネット
 

原文
Schmidt M et al. Non-steroidal anti-inflammatory drug use and risk of atrial fibrillation or flutter: population based case-control study. BMJ. 2011 Jul 4;343:d3450. doi: 10.1136/bmj.d3450.

 
<私的コメント>
最近、某病院でTIAとしてプレタールOD錠( 一般名シロスタゾール)200mg(100mg×2)を処方された70代の男性が来院されました。
服用開始後8日目の来院でしたが、主訴はプレタール開始後2日目からの息切れ、胸内苦悶、全身倦怠感、動悸が出現したとのこと。
もともと糖尿病で当院へ通院中の方で、数回の発作性心房細動のエピソードがあります。
心電図で頻脈型心房細動だったので、これで症状の説明はつきました。
血圧124/80mmHg。


プレタールによる動悸(洞性頻脈)は周知のことですが、同薬剤による心房細動誘発の実例もあるのでしょうか。

余談になりますが、「プレタールは懲りたからもう絶対服用しない」と患者は言っていました。


ちなみに病院の処方は45日分という長期投薬でした。
恐らく、いきなりの200mgそして長期処方は、かなりの確率で副作用が心配されます
この長期処方を行ったのは次回の予約日の都合と思われます。

さて最近、大病院では予約制という、妙な(?)システムが横行するようになりました。
多くは、患者の利便性を考えてのものではなく、病院の都合で出来上がったシステムと邪推しています。
その証拠に予約とはいいながら数時間は待たせるようなオーバーブッキングをしています。
そして、予約の日以外には受診出来ず、たとえ受診出来ても主治医の外来担当の曜日でなければ「けんもほろろ」な扱いを受けます。

要するに体のいい受診規制です。
今回の薬剤のように、本来なら少量から開始して漸増した方が良い薬剤もあります。

結構、開業医はこういった大病院の患者さんの「尻拭い」もしていることを知って欲しいものです


<きょうのCD> 
J.S.バッハ:無伴奏チェロ組曲(全曲) 今井信子


 
 
http://www.universal-music.co.jp/classics/artist/imai/imai.html
http://www.sarasate.net/cd/cd4.html
J.S. Bach 6th Cello Suite transcribed for viola: Courante
http://www.youtube.com/watch?v=QJjOM7SpbhM&feature=related
(動画)
 
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