戯れ言たれる侏儒
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高血圧と疫学 2008.9

戯れ言たれる侏儒 / 2008.09.05 00:30 / 推薦数 : 0

第22回国際高血圧学会/第18回欧州高血圧学会における”疫学”に関する記事で勉強しました。

その1 腎機能低下
高血圧患者でのみ心血管死リスク上昇と関係
腎機能が心血管死に及ぼす影響について10万人余りを前向きに検討した結果,高血圧患者においてのみ腎機能低下が心血管死リスク上昇と関係していることが判明した。Manhes病院(仏Fleury-Merogis)腎臓科のAlain Guerin氏が報告した。

HRはCG式で2.83,MDRD式で5.26
対象は,1972~88年にIPCセンター(パリ)で標準的な健診を受けた45歳以上の男女10万2,374人(男性6万1,438人,女性4万936人,平均年齢はそれぞれ53.3歳,53.7歳)。Cockcroft-Gaultの式(CG式)およびMD RD式から推算糸球体濾過量(eGFR)を求め,60mL/分/1.73m2以上(腎機能障害なし)と未満(腎機能障害あり)の2群に分けた。140/90mmHg以上あるいは高血圧治療中の場合に高血圧と定義したところ,男性の59.3%,女性の47.6%が該当した。
心血管死リスクはCox回帰モデルを用いて評価した。
 
平均15.4±4.6年の追跡期間中に,男性の15.1%と女性の8.2%が死亡。心血管死はそれぞれ4.2%,2.1%であった。
 
腎機能障害ありの割合は,CG式を用いると正常血圧群で5.1%,高血圧群で8.0%となった。
一方,MDRD式ではいずれも約1%と少なかった。
 
15年間の心血管死率をeGFRのレベルで分けて見ると,CG式,MDRD式ともに60mL/分/1.73m2未満で著しく上昇することがわかった。
 
CG式による腎機能障害なし群に比べて腎機能障害あり群の補正後心血管死ハザード比(HR)は1.13〔95%信頼区間(CI)0.97?1.32〕だが,その腎機能障害あり群をさらに高血圧の有無で分けたところ,正常血圧群のHR 1.02(95%CI 0.70~1.49)に対し,高血圧群ではHR 1.23(同1.04~1.46)となり,腎機能障害と血圧状態との間には有意(P=0.04)な相関が認められた。
また,今回の対象ではMDRD式による腎機能障害ありの割合が少なかったため,70mL/分/1.73m2を腎機能障害の閾値として見たところ,CG式と同様の結果が得られた。
 
正常血圧群の心血管死リスクを1とした場合,高血圧群のHRは,CG式で60mL/分/1.73㎡未満では2.83(95%CI 1.87~4.26),MDRD式で70mL/分/1.73㎡未満では5.26(同2.45~11.30)となった。
 
以上から,Guerin氏は「腎機能障害は高血圧患者においてのみ心血管死リスク上昇に独立して関係している」と結論付けた。


その2 ウエスト径増大
高血圧患者における総死亡リスクに
IPCセンター(パリ)のBruno Pannier氏らは,ウエスト径増大や血圧上昇が死亡にもたらすリスクについて,6万人余りのコホート研究から検討。
一般集団においてウエスト径の増大や高血圧が死亡リスクとなりうることや,血圧別の検討では高血圧患者においてウエスト径増大が死亡リスク上昇となりうることが示された。

正常高値と死亡リスクの関係は認められず
対象は,1999年から2004年にIPCセンターで標準的な健診を受けた45歳以上の男女6万7,166人(男性4万3,691人,女性2万3,475人,平均年齢はそれぞれ54.8歳,56.7歳)。2006年の調査終了時点までに男性510人,女性182人の死亡が確認された。
年齢,性,糖尿病,喫煙,LDLコレステロール,運動,職歴,SBPの各因子を調整後,Cox回帰モデルで総死亡のハザード比を見たところ,高血圧(SBP 140mmHg以上もしくはDBP 90mmHg以上),ウエスト径の増大(男性102cm超,女性88cm超)によりリスクの有意な上昇が見られたが,正常高値血圧(SBP 130~139mmHg,もしくはDBP 80~90mmHg)については,上昇が認められなかった。
 
全対象を血圧レベルで分けると,正常血圧63.4%,正常高値血圧10.3%,高血圧26.3%となった。
各群の死亡率は,正常血圧,正常高値血圧でともに0.86%,高血圧で1.51%だった。
男性のほうが高血圧の割合が多く,死亡率も高い傾向にあった。
各血圧分類におけるウエスト径増大の割合は,正常血圧12.4%,正常高値血圧13.8%に対し,高血圧では25.5%と高かった。
 
さらにPannier氏らは,正常血圧,正常高値血圧,高血圧におけるウエスト径増大の死亡リスクへの影響を検討した。ウエスト径増大がない場合に比べて増大ありの補正後死亡ハザード比は,高血圧の場合のみ有意な上昇が認められた。
 
以上から,一般コホートにおいてはウエスト径や高血圧が総死亡リスクとなりうるが,血圧別の検討では高血圧の場合にのみ,ウエスト径増大が総死亡リスクとなることが示された。

出典 Medical Tribune 2008.8.7
版権 メディカル・トリビューン社

 

<自遊時間>


 

昨日、ある医療機器業者が「ワイヤレス12誘導心電計」の紹介をするためにやって来ました。

当院は、エルゴメーターやトレッドミルはありません。
もっぱらマスター2階段負荷です。
紹介された装置は大学レベルに少しずつ採用になっているとのことで、基幹病院での採用もされつつあるという説明でした。
常々、運動負荷中の心電図変化を知りたいと食指も少し動きました。
12誘導というのも魅力です。

しかし、GEの心エコー装置を購入したばかりです。

話をしながらこんなことを思いつきました。
2誘導という限界があるにしても、狭心症を疑われる患者にホルター検査をする際に装着直後と翌日の取り外し直前にマスター負荷をやってもらうというアイデアです。
(以前から、装着中は神社の階段なんかを探して上り下りするようには説明していましたが・・・)
あたかも、マラソンの陸上競技場での出発とゴールインのごとくマスター負荷を使うということです。
まあ、そんな話をして業者を煙に巻いて帰っていただきました。
でも、何だか後ろ髪を引かれるアイテムではあります。

http://www.goodcare.jp/products.html


http://www.kuronowish.com/~davinci333/oldpc/


http://homepage2.nifty.com/medicalteknika/duna2/


http://www.goodcare.jp/link.htm

 

読んでいただいてありがとうございます。
コメントお待ちしています。
他に
ふくろう医者の診察室
http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き) 
「井蛙内科/開業医診療録(2)」
http://wellfrog2.exblog.jp/?2008.5.21
「井蛙内科/開業医診療録」~2008.5.21 
http://wellfrog.exblog.jp/ 
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ESC2008 で発表された”PRoFESS”の記事で勉強しました。

徐放性ジピリダモール・アスピリン併用とクロピドグレルは同等
PRoFESSの結果-脳卒中再発予防効果
2008年5月、フランスのニースで開催された第17回欧州脳卒中学会(ESC2008)のLarge clinical trials のセッションで、脳卒中再発予防の評価を目的とした大規模臨床試験PRoFESS(演題名;Prevention Regimen For Effectively avoiding Second Strokes)の結果が発表された

PRoFESS試験は、脳卒中再発予防の薬物療法として、徐放性ジピリダモール(ER-DP)・アスピリン(ASA)の併用とクロピドグレル(CP)の比較、加えてARBのテルミサルタン(Telmi)の効果をプラセボ(Plac)との比較によって検討している。

ちなみに、欧州脳卒中機構(ESO)のガイドラインでは、脳卒中再発予防では抗血栓療法が推奨されており(Class I、Level A)、抗凝固療法を必要としない患者では抗血小板療法が推奨されている(Class I、 Level A)。
抗血小板療法としては、アスピリンとジピリダモールの併用、クロピドグレル単独、それらの代替としてアスピリン単独、トリフルサル単独が推奨されている(Class I、Level A)。

本試験の対象は、世界35カ国(北米、ヨーロッパ、アジア、南米、アフリカ・中近東、オーストラリア)、695施設の50歳以上の脳卒中患者2万332例。

対象を(1)ER-DP+ASA+Telmi、(2)CP+Telmi、(3)ER-DP+ASA+Plac、(4)CP+Placの4群に分けて検討している。

当初、CP群にもASAの投与が行われていたが、CP・ASAの併用群で出血リスクが増加したMATCH (Management of Atherothrombosis With Clopidgrel in High-Risk Patients Study)試験の結果に基づいて、CP群におけるASAの併用は途中で中止された。

本セッションでは、最初にER-DP+ASA群(1万181人)対CP群(1万151人)の結果が、同研究グループの米マイアミ大学教授Ralph L. Sacco氏によって報告された。

本試験の抗血小板療法の比較における1次アウトカムは脳卒中再発、2次アウトカムは脳卒中、心筋梗塞、あるいは血管死とされた。

本試験はnon-inferiority(非劣性)試験で、ER-DP+ASA群がCP群と比較して6.5%のリスク減少効果(ハザード比0.935)を有すると仮定し、95%信頼区間の上限が1.075未満であれば優位にあるとする基準を使っている。
なお、追跡期間は2.4年(中央値)である。

その結果、1次アウトカムに関しては、ER-DP+ASA群がCP群に対して劣っていない(non-inferiority)とする基準は達成されず(HR 1.01、95%CI 0.92-1.11、 p=0.783)、脳卒中再発と主要血管イベントの発症率は両群間で同等だった。

頭蓋内出血を含む主要出血イベントの発症率は、ER-DP+ASA群の方が高かったが、その絶対発症率は低く、虚血性イベントの抑制によってそのリスクは部分的に代償された。

これらの結果から演者らは、ベネフィット・リスクを合わせて評価すると両群は同等と結論した。

(日経メディカル別冊)
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/special/ATT08/hcp/topics/200807/507180.html

<関連サイト>
PRoFESS試験
http://blog.m3.com/reed/20080524/PRoFESS_
PRoFESS脳卒中再発予防効果
http://blog.m3.com/reed/20080723/PRoFESS__
PRoFESS脳卒中再発
http://blog.m3.com/reed/20080901/PRoFESS___

 「Heart and Kidney - 私たちの近くにあるもの」
制作 Heart and Kidney制作委員会
(シオノギ製薬 配布物)

 

<自遊時間>
昨日の夕方、久しぶりに街へ出ました。
超音波関連の医学書を買いに行くのが目的です。
ぶらついていて、「デジャブ感覚」を覚えました。
いわば、何だか昔の自分に逢っているような妙な懐かしさです。
郊外と違って、町中は意外と何十年も大きな変化がないためです。
大袈裟に聞こえるかも知れませんが、10年以上一人で町中をこんな目的でぶらついたことはなかったような気がします。
全国区のM書店と食材のM屋。
この両方をハシゴするのが私流の昔からの街のぶらつき方です。
都会の雰囲気と文化の香りが一度に満喫できるような気がする、一種の刷り込み現象です。
さて、久しぶりに医学書コーナーを見て違和感を覚えました。
アカデッミックな書籍が何だか減ってしまったような気がしたのです。
くだけた(親しみ易い)タイトルの、研修医向けの「ハウツーもの」の実用書が多いためだというのがしばらくして分かりました。
私はスカパーの医学番組「Care Net TV」の視聴契約をしています。
なかなか見る機会はないのですが、その番組の講師が「山ほど」、彼ら向けの書籍を出して(儲けて?)いるのには驚きました。

ただ大学時代の友人が監修した書籍が平積みになっていたのは嬉しい収穫でした。
私は買わなかったのですが、今度彼と逢った時の話題が出来ました。

<追加>
私は翻訳本は買わないことを原則にしてきました。
原著の方が安いこと、誤訳や熟(こな)れていない訳があること、せっかく英語の勉強が出来るのにそのことを放棄することになるなどがその理由です。
そんな中で「オピーの心臓生理学」が気になりました。
でも開業医がそんな本買うのは・・・。
http://mbc.meteo-intergate.com/bookcenter/public/item/mbc/item75741.html

 

読んでいただいてありがとうございます。
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ふくろう医者の診察室
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(一般の方または患者さん向き) 
「井蛙内科/開業医診療録(2)」
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CHHIPS Pilot Trial

戯れ言たれる侏儒 / 2008.09.03 00:02 / 推薦数 : 0

第22回国際高血圧学会/第18回欧州高血圧学会に関する記事から”CHHIPS Pilot Trial”について勉強しました。
従来、脳卒中の治療では血圧のコントロールが意外と疎かにされていたような気がします。
とくに脳梗塞ではその傾向が強いような気がします。

話は少しそれますが、私は以前から諸外国の論文を読んでいて疑問に思うことがありました。
それはStrokeという医学英語です。
日本語では脳卒中と訳されるようですが、今回の報告でも
その内訳は脳梗塞または脳出血と説明されています。
本来、「詰まる」と「切れる」は病態的に違うはずなのに同一の「くくり」となっているのです。
特にMRが持ってくる日本語訳では脳卒中と訳されており、このあたりを訊いても答えられるMRはいません。
当然といえば当然で、最後の<関連サイト>の学会発表風景で今までの疑問が氷解しました。
要するに平然とStrokeという用語でひとくくりにしているのです。
何だか近頃流行りの(病態を考慮しない)”CKD”を連想してしまいます。
CKDは意識的に病因を無視した概念ですが、Strokeはどうなんでしょうか。

最近の諸外国での大規模臨床試験の紹介でも、専門家はそのことに触れませんが、いつも隔靴掻痒の感があります。

昔と違って画像診断で容易に両者の区別が出来る時代に、あえて両者をひとくくりにする意味がはたしてあるのでしょうか。
逆に分ける必要があるかという意見もあるでしょう。

先生方はどのようなお考えをお持ちでしょうか?

脳卒中急性期の降圧治療
36時間以内の治療開始で3か月後の死亡が半減
脳卒中急性期の高血圧管理については十分なエビデンスがなく,治療の開始時期や降圧薬の種類などについて,論議を呼ぶところとなっている。
East Anglia大学(英ノリッジ)のJohn Potter氏は,発症36時間以内の高血圧を伴う脳卒中患者を対象に,ACE阻害薬リシノプリル,β遮断薬ラベタロールによる降圧療法の有用性をプラセボと比較するCHHIPS Pilot Trialを実施。
ランダム化後2週間の降圧治療により,プラセボ群に比べて3か月後の死亡が半減したと報告した。

短期評価項目には改善認めず
対象は,18歳以上,症状持続が60分を超え発症36時間以内,SBP160 mmHg以上―などの条件を満たす脳梗塞または脳出血患者179例。
(1)血栓溶解療法施行例
(2)高血圧性脳症
(3)原発性脳内出血でSBP200mmHg以上かつまたはDBP 120mmHg以上
(4)意識レベルの障害〔米国立衛生研究所脳卒中尺度(NIHSS)Section 1aスコア ≧ 2〕
(5)治療薬の禁忌
(6)modified Rankin Scale(mRS>3)
―などは除外した。
 
対象を,
(1)リシノプリル
(2)ラベタロール
(3)プラセボ〔嚥下障害がなければ各経口薬,伴う例では i)リシノプリル舌下錠/プラセボ静注, ii)ラベタロール静注/プラセボ舌下錠, iii)プラセボ舌下錠/同静注〕
―の3群にランダムに割り付け,降圧目標をSBP145~155mmHgまたはSBP15 mmHg以上の低下として,ランダム化から2週間治療を実施した。
 
降圧目標の達成率は24時間後にはプラセボ群46%,リシノプリル群65%,ラベタロール群57%と実薬群で高く,プラセボ群とリシノプリル群に有意差(P ≦ 0.05)が認められた。
 
しかし,72時間後の神経学的悪化(NIHSSスコア4以上の増加または死亡)はプラセボ群10%,リシノプリル群12%,ラベタロール群2%に認められ,プラセボ群に対する実薬群の相対リスク(RR)は0.89と有意な変化はなく,降圧の影響は反映されなかった。
 
1次評価項目の発症2週後の「死亡または身体的依存(mRS>3)」の発生は,プラセボ群59%,リシノプリル群,ラベタロール群ともに61%で,プラセボ群に対する実薬群のRRは1.03と有意差はなく,悪化も改善も見られなかった。
 
これに対して,Potter氏も驚いたとしたのが2次評価項目の3か月後の生存率で,実薬群に対するプラセボ群のハザード比は2.2(95%信頼区間1.0~5.0,P=0.05)と,実薬群で死亡が半減することが判明した()。


 
以上から,同氏は「今回のデータが再現されうるか,フルスケールの試験の進行に期待を持たせる結果だ」と述べた。

なお同試験では,脳卒中急性期の低血圧に対する治療も別途検討されており,同試験には約2,000例が登録される予定であるという。
薬剤間に差異が認められるのか,結果が待たれる。

出典 Medical Tribune 2008.8.7
版権 メディカル・トリビューン社

 「Heart and Kidney - 私たちの近くにあるもの」
制作 Heart and Kidney制作委員会
(シオノギ製薬 配布物)

<参考サイト>
Control of Hypertension and Hypotension Immediately Post-Stroke (CHHIPS)Pilot Trial
http://www.scienceondemand.org/stroke2008/lbs/sessions/player.html?sid=080201100.4626&searchQ=undefined
(学会での発表風景がそのままスライドとともに収録されています。臨場感あふれる珍しいサイトで医学英語の勉強にもなると思います)

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地方に比べて都市部の壮年男性では血清総コレステロール(TC)レベルが高く,1980年代の終わりごろから冠動脈疾患(CHD)が増加していることが報告された(J Am Coll Cardiol 2008; 52: 71-79)。
一般住民の観察研究によりCHDの増加が確認されたのはアジアでは初めてで,今回の知見は,欧米の生活様式が浸透しつつあるアジアの都市部を中心に,CHDが増加する予兆を示唆しているものと考えられる。

高血圧や糖・脂質代謝異常の増加が背景
コホート研究の対象は,大阪府八尾市M地区(2000年人口2万3,552人),秋田県I町(同6,116人)の40~69歳の地域住民。
2つのコホートは,全国でも有数の長期観察期間を有し,それぞれ都市部と地方のコホートとして,1964?2003年の循環器疾患の発症動向が明らかにされた。
 
冠動脈インターベンション(PCI)施行を含む心筋梗塞,心臓突然死をCHDと定義して発症率を調べたところ,都市部の男性では,CHDの年齢調整発症率(人口10万人対/年)が1980~87年の56から96~2003年は127に有意に上昇したことが判明した()。


一方,都市部の女性と地方の男性と女性についてはCHD発症率に一定の傾向は見られなかった。
 
男性のCHDは都市部,地方ともに1970年代まで増加傾向にあったが,80~87年にいったん減少し,88年以降は都市部のみで増加に転じている。
今回の分析をまとめた大阪府立健康科学センター健康開発部の北村明彦部長は,脳卒中予防対策が成果を上げた70~80年代に血圧が低下したことでCHDも減少したが,その後,都市部の男性で血清総コレステロールレベルが過度に上昇し続け,さらに高血圧,糖・脂質代謝異常などのリスク要因が集積してきたために,喫煙率の減少のみではCHD増加を抑制し切れなくなったのではないかと見ている。

管理職に多いイメージは過去のもの
従来は管理職に多いとされてきた心筋梗塞であるが,現在では一般住民にも珍しくなくなったことも注目点だ。
都市部男性の生活様式として,高カロリー・高脂肪食,身体活動の低下,職場での過重なストレスなどが一般化してきたことがうかがわれる。
 
対象地域は45年前から疫学研究が行われているため,行政や住民の健康意識が高く,周辺地区より健診受診率が高いことを考慮すると,都市部での平均的なCHD発症率はさらに高い可能性がある。
北村部長は「都市の生活環境下における心血管疾患対策として,個人の生活習慣に焦点を当てた従来の予防対策に加え,都市生活者が健康的な生活様式を選択しやすい環境整備など,集団に対する予防対策を強化する必要があるのでは ないか」と述べている。


わが国で実際に心筋梗塞が増加しているのか,社会的にも医学的にも大きな関心事であったが,その発生動向に関するエビデンスは乏しかった。
今回,大阪府立健康科学センター健康開発部の北村明彦部長らは,都市部において壮年男性の冠動脈疾患(CHD)発症率が増加しつつあることを明示した。
かつて東北や北関東の農村を中心に脳卒中が多発したように,CHDの発症動向にも地域特性があり,特に都市型の食・労働環境と密接に関係して発症することを物語っている。

地方は血清脂質上昇が緩やか
1964~2003年を5期に分け,健診データを用いて心血管リスク要因の推移を検討すると,都市部男性で,1988年以降CHDが増加に転じた背景が浮かび上がってくる()。


2期に比べ,2000年以降の5期では,喫煙率が3割近く減少し,収縮期血圧が有意に低下傾向にあるものの,血清総コレステロール(TC)値,拡張期血圧,BMIが有意に上昇する傾向にある。
高トリグリセライド(TG)血症,高血糖の比率は,いずれも3期から5期にかけて有意に増加し,5期ではいずれも22%に達した。
 
これに対し,地方男性では,血清コレステロール値は増加しているものの,5期においても平均値が198mg/dLと都市部男性の約20年前のレベルにある。
女性については,地方に比べて都市部でCHD発症率は高いものの,男性よりもはるかに低いレベルにあり,増加傾向も認められていない。

危険因子への社会的介入を
北村部長は,CHD増加に歯止めをかけるため,集団を対象とした予防対策を検討する必要性を指摘する。
米国心臓協会は,7月に集団を対象とした肥満対策をより重視する声明を発表し,高脂肪食や糖分の多い飲料の供給制限,飲食店の立地や地域デザインなどを検討し,より好ましい食品選択や運動の習慣化を支援する環境整備を呼びかけている。
 
日本ではこのような対策はまだ耳慣れないが,深夜も多くの店舗が営業する都市の生活環境は,知らず知らずのうちに食品選択に影響を与えている。
同部長は「例えば,大盛りブームに乗って,昔に比べて大きなデザートや惣菜が多く売られるようになった。
大きなサイズの食物を当たり前と思って食べ続けた子供たちが,将来脂質異常症になっても,これを自己責任と捉えるのには,もはや限界を感じる。
集団を対象とした予防対策は,規制と受け止められて物議をかもすかもしれないが,疾病対策の観点から社会的な議論を深めて,国レベルの対策につなげることが求められる」と述べている。

出典 Medical Tribune 2008.8.28
版権 メディカル・トリビューン社

<コメント>
このような、どちらかというと地道な疫学研究がJACC誌にaceptされることに驚きを感じます。

 

<自遊時間>
「お互い顔の見える医療」については、先日
末梢血管インターベンション
http://blog.m3.com/reed/20080830/1
で触れました。

それに関連したお話を少ししたいと思います。

私は現在、多発性嚢胞腎(PCKまたはPKD)の姉妹(実は母親も同病)の症例を診察しています。
妹さんは腹満感と腹痛で悩んでみえます。
彼女の場合は巨大肝嚢胞の合併があります。
ある病院の泌尿器科へ紹介したのですが、けんもほろろの扱いで戻ってみえました。
そんな中、数日前に某病院の腎臓内科部長の講演会を聴きにいきました。
その部長とは面識はありません。
講演後の懇親会の席で、その症例について思い切ってお話しました。
腎臓専門の先生だけに数多くの症例を経験してみえました。
早速、紹介できる病院があること、脳卒中合併が多いから血圧コントロールをきちんとすること、脳MRAを検査する必要があることなどを親切にご教示いただきました。
早速その先生に紹介し、紹介状を書いていただくようにお願いしました。
患者と意思疎通が図れた時はもちろんうれしいのですが、医師同士で心が通うこともとてもうれしいものです。
それは医師になってよかった思う瞬間でもあります。
そんな瞬間があまりないのは寂しいことですが。

読んでいただいてありがとうございます。
コメントお待ちしています。
他に
ふくろう医者の診察室
http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き) 
「井蛙内科/開業医診療録(2)」
http://wellfrog2.exblog.jp/?2008.5.21
「井蛙内科/開業医診療録」~2008.5.21 
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 があります。

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PRoFESS 脳卒中再発

戯れ言たれる侏儒 / 2008.09.01 00:04 / 推薦数 : 0

第22回国際高血圧学会/第18回欧州高血圧学会の記事でPRoFESSの勉強をしました。

標準治療へのARB上乗せ
脳卒中再発の有意な抑制示せず
エッセン大学(独エッセン)のH. Christoph Diener教授は,2万人を超える脳卒中既往例を対象に,標準治療へのARBテルミサルタンの上乗せによる脳卒中再発抑制効果を検討した大規模臨床試験PRoFESSの成績を報告。
平均2.4年の追跡で,プラセボに比べてテルミサルタンにより脳卒中再発リスクが5%減少したものの,有意差は認められなかったことを明らかにした。

認知症発症にも有意差なし
PRoFESSには日本を含む世界35か国695施設が参加。2×2ファクトリアルデザインで,
(1)低用量アスピリン+徐放性ジピリダモールの合剤とクロピドグレルの2種類の抗血小板療法
(2)テルミサルタン80mg/日とプラセボ
―の脳卒中再発予防効果を二重盲検で同時に比較しており,今回は後者の成績が報告された。
 
対象は,50歳以上で,登録前120日以内に脳梗塞を発症した2万332例。テルミサルタンまたはプラセボの2群にランダムに割り付けた。
 
脳卒中発症後ランダム化までの期間は中央値15日で,10日以内が39.9%を占めた。
ベースライン時の平均年齢は66歳,血圧は144/84mmHg。
追跡中の血圧はテルミサルタン群で1か月後には5.4/2.8mmHg,追跡中の平均で3.8/2.0mmHg低かった。
 
1次評価項目の脳卒中再発は,プラセボ群の9.2%に対してテルミサルタン群では8.7%と,5%のリスク減少を示したが,有意差は認められなかった。
2次評価項目については,テルミサルタン群で「脳卒中,心筋梗塞,血管死,うっ血性心不全」が6%(P=0.107),糖尿病新規発症が18%(P=0.101)のリスク減少を示したものの,ともに有意差には至らなかった。
Mini-Mental State Examination(MMSE)スコアを用いた検討では,両群の認知症の発症にも有意な差は認められなかったという。
 
一方,事後(post-hoc)解析では,脳卒中再発・複合イベントともに,追跡6か月以内には有意差はないもののテルミサルタン群でイベント発生が多く,6か月以降はテルミサルタン群で有意な抑制が確認された。
 
これらの成績からDiener教授は,試験は事前の設定イベント数に達して終了されたものの平均2.4年と追跡期間が短かったことや,服薬遵守が適切でなく,他の降圧薬の併用率が異なった点などが結果に影響した可能性を指摘し,「経時的にはテルミサルタンによる利益が増す可能性が示唆された」と述べた。
 
最近,基礎データからARBの脳保護作用が注目されていただけに,予想外の結果となったが,ACE阻害薬ペリンドプリル±利尿薬インダパミドの実薬群が,当時の標準治療に比べて28%の脳卒中再発リスク抑制を示したPROGRESSでは,両群の血圧差は9/4mmHg,脳卒中再発率はプラセボ群14%,実薬群10%であり,PRoFESSの結果には併用薬などの影響により,対象のリスクが低下した影響もありそうだ。
ただし,
PROGRESSでもACE阻害薬単独群では有意な再発リスク減少は認められず,脳卒中再発抑制における厳格な降圧の重要性が明らかになっている。

出典 Medical Tribune 2008.8.7
版権 メディカル・トリビューン社

<コメント>
とにもかくにも確実な降圧が重要ということのようです。
CASE-JでもARBはCCBと同様の降圧を得るにはより多くの他剤併用が必要であるということが、後の論文発表で明らかになりました。

CASE-J
http://www.ebm-library.jp/circ/doc/html/c2002499.html

ARBにこだわるあまり降圧が不確実になる愚だけは避けたいものです。

<関連サイト>
PRoFESS試験
http://blog.m3.com/reed/20080524/PRoFESS_
PRoFESS 脳卒中再発予防効果
http://blog.m3.com/reed/20080723/PRoFESS__
PRoFESS 血小板療法の比較
http://blog.m3.com/reed/20080718/PRoFESS___

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CASE-Jサブ解析

戯れ言たれる侏儒 / 2008.08.31 00:39 / 推薦数 : 0

CASE-Jは
「高リスク高血圧患者において,AII受容体拮抗薬candesartanとCa拮抗薬amlodipineの長期の心血管イベント抑制効果に有意差は認められず。左室肥大,新規糖尿病発症はcandesartan群で有意に低かった。」
といったような内容でした。
今回、このCASE-Jのサブ解析の記事が出ていました。

第22回国際高血圧学会/第18回欧州高血圧学会特集    CASE-Jサブ解析

糖尿病やCKD,左室肥大を有する患者では130/80mmHgレベルからイベントリスク増加
日本人の高リスク高血圧症に対してARBカンデサルタンとCa拮抗薬アムロジピンの有用性を比較した大規模臨床試験がCASE-J(前回のISHで主要結果発表)である。
同試験のサブ解析から,糖尿病や慢性腎臓病(CKD),左室肥大を有する患者では130/80mmHg以上で心血管イベントリスクの増加が見られたと,大阪府立急性期・総合医療センターの荻原俊男院長が発表した。

イベント発生の血圧閾値がシフト
サブ解析の対象は,CASE-J試験の主要解析対象と同じ4,703例。
到達血圧は最終来院時(心血管イベントを起こした患者はその発生前6か月以内に測定したもの)と定義した。
 
糖尿病,CKD,左室肥大の有無で分け追跡期間中の血圧推移を見ると,いずれもベースライン時に比べ最終来院時に有意に低下していた。
 
到達血圧のレベル別に心血管イベント発生率を見ると,ほぼすべての血圧レベルにおいて糖尿病群のほうが非糖尿病群よりもイベント発生率が高かった。
SBP130mmHg未満を1とすると,イベント発生の相対リスク(RR)は,非糖尿病群ではSBP 130~139mmHgで1.14だったのに対し,糖尿病群では1.46。DBPも75~79mmHgを1とすると,80~84 mmHgでのRRはそれぞれ1.38,1.51となった。
CKDも同様で,各血圧レベルで非CKD群よりCKD群のほうがイベント発生率が高く,SBP 130?139mmHgでのRRは非CKD群の1.11に対し,CKD群では1.47。DBP 80~84mmHgでのRRはそれぞれ2.13,1.22。左室肥大もある群のほうがない群より各血圧レベルでイベント発生率が高く,SBP 130~139 mmHgでのRRは非左室肥大群の1.03に対し,左室肥大群は2.21。DBP 80?84mmHgでのRRはそれぞれ1.14,2.28であった。
 
以上のように,糖尿病やCKD,左室肥大の有無にかかわらず,到達血圧が高いほど心血管イベントは増加したが,いずれの到達血圧レベルにおいても,これらの危険因子を持つ患者では持たない患者に比べて心血管イベント発生率が高かった。
危険因子がある患者では,ない患者に比べて心血管イベントが起こる血圧閾値がより低いレベルにシフトしており,130/80mmHg以上からリスクの増加が認められたため,荻原院長は「2型糖尿病やCKD,左室肥大を有する高血圧患者の心血管イベントを予防するには130/80mmHg未満に下げることが重要だ」と結論した。

腎機能高度低下例でより有益
同じくCASE-J試験のサブ解析から,腎機能低下が著しい症例ではカンデサルタンのほうが心血管イベント抑制に優れていたと,慶應義塾大学の猿田享男名誉教授が報告した。
 
対象は,ベースライン時に推算糸球体濾過量(eGFR)が60mL/分/1.73m2未満であったか,または蛋白尿が認められ,CKDと診断された2,720例。

対象例の試験期間中の血圧の推移は,カンデサルタン群とアムロジピン群で差はなかった。
また,心血管イベントの発生率も両群で差は認められなかった。
 
そこで,CKDのレベルで分けて検討したところ,腎機能高度低下のステージ4(eGFR 15~29mL/分/1.73 m2)では,カンデサルタン群で心血管イベント発生率が有意(P=0.043)に低いことが判明。
イベントのなかでもとりわけ腎イベント発生が同群で少なく,両群間の差は有意(P=0.003)であった。
 
同名誉教授は「腎機能低下が著しい高血圧患者に対して,カンデサルタンはアムロジピンよりも心血管イベント予防のうえで有益である可能性が高い」と述べたうえで,「CKD合併の高血圧患者におけるカンデサルタンの効果を明らかにするには,適切にデザインされたランダム化比較試験を行う必要がある」と結んだ。

出典 Medical Tribune 2008.8.7
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<関連サイト>
CASE-J ISH2006
http://www.ebm-library.jp/circ/doc/html/ish2006/caseJ.html
CASE-J
http://www.ebm-library.jp/circ/doc/html/c2002499.html
candesartan群の方が明らかに多くの降圧薬を併用していることが明らかになったことの意味は大きい。すなわちcandesartanは他の薬剤をたくさん併用しなければamlodipine群と同等の降圧が得られないことを証明しているのである。
またエンドポイントの内訳をあらためて見直してみると,candesartan群が優位なのは狭心症,TIAといった客観性に乏しいエンドポイントばかりであり,脳卒中などの客観性のあるエンドポイントはむしろamlodipine優位に傾いているのである。狭心症やTIAが試験薬群に優位という傾向は JIKEI- HEART試験でも同じように認められ,ここに企業支援によるPROBE法の問題点が明瞭に浮かんでくるのである。
トライアル初期から中期にかけてcandesartan群の方の脱落例が明らかに増えており,candesartan群はハイリスク症例で早期にイベントを起こしていることを示している。このような試験ではtime to eventまでの期間を比較するべきであり,その意味ではamlodipine群の方がcandesartan群よりもハイリスク症例のイベント発症をより先送りさせることができたことを示している。amlodipine群の方が治療中の血圧が低かったことが早期のイベント発症抑制に効果があったと考えられる。
(桑島先生の読み応えのある、相変わらずの辛口コメントです)
 

<CASE-J関連ブログ
全国CASE-Jサミット・・・日本人の日本人による・・・
http://blog.m3.com/Aget-KNKblog/20061104/_CASE-J_
(私もこの会に参加しました)
降圧薬の治験:CASE-Jの勉強会
http://blog.m3.com/DrTakechan/20061104/_CASE-J_
(この先生も参加してみえました)

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きょうは、技術の進歩の著しい「末梢血管インターベンション」について勉強しました。
われわれ開業医にとって、これらのup to dateな勉強ももちろん大切です。
しかし、これらの病気の患者さんを紹介する際にどの病院に紹介すればよいかという現実があります。
紹介先によって患者さんの運命が変わる場合も当然ありうることです。
最先端の技術があることを(習得ではなく)勉強しても、手近なロケーションにやっていただける施設があるかどうか、また複数の選択肢があればどちらがよいか。
そのあたりの情報(?)の方が大切かも知れません。

先日、ある病院から病診連携の案内が届きました。
国立病院機構の某病院です。
近くに救急医療にも力を入れている大規模病院があって、(まったくもって失礼ないい方ですが)「終わっている」病院です。
内容は「お互い顔の見える医療を目指して懇親会を持ちましょう。ついては会費・・・」というものです。
いろいろ、苦しい事情はよくわかります。
発起人の先生もよく知っている先生ですでに「顔」はよくわかっています。

私のスタンスはこうです。
(幸い都会に住んでいるというとメリットを生かして)出来るだけ多くの講演会に出席して、近くの病院の医師が演者の場合には、「力量」と「顔」を実際インプットする。

会費まで払って「顔」だけみる会はもちろん欠席しました。

 

 

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ガイドワイヤやステントの改良で安全性,成績が向上
末梢血管インターベンションを安全に施行し成績を向上させるため,デバイスや施行法は年々進歩を遂げている。
郡山市で開かれた第16回日本心血管インターベンション学会(会長=星総合病院心臓病センター・木島幹博副院長)のシンポジウム「末梢血管インターベンションの最近の進歩」(座長=大阪大学先進心血管治療学・南都伸介特任教授,社会保険小倉記念病院循環器科・横井宏佳部長,スペシャルコメンテーター・伊Gruppo Villa Maria Endovascular・Giancarlo Biamino氏)では,ガイドワイヤ,ステント,アプローチ法に改良を加えることにより,腹部大動脈瘤,粥状硬化性腎動脈狭窄症,浅大腿動脈慢性閉塞などに対するインターベンションの安全性,成績が向上していることが明らかとなった。

腹部大動脈瘤に対する血管内修復術
ステント改良によりエンドリークが減少
わが国では昨年から今年にかけて,腹部大動脈瘤(AAA)に対する血管内修復術(EVAR)に用いられる企業製作のステントグラフトが 2 種類保険収載された。
大阪大学心臓血管外科の倉谷徹准教授は,同科においてカスタムメードのステントグラフトを使用したAAAに対するEVARの成績を検討し,「同術は良好な長期成績が得られる安全で有効な治療法で,ステント改良によりエンドリーク発症を減少できた。同術は企業製作のステントグラフトによりさらに普及すると考えられる」と述べた。

5年エンドリーク回避率は83%
対象は,同科で1995年 2 月~2006年12月にカスタムメードのステントグラフトを用いたEVARを施行した563例(胸部大動脈瘤,胸部腹部大動脈瘤,AAA)のうち,AAA 74例(男性58例,女性16例;平均年齢76歳)。
術前合併症は,冠動脈疾患が約 5 割,脳卒中が約 3 割など,高率に存在した。
ステントは, Spiral Z(1995~2000年31例)またはGiantruco Z(2003年以降43例)を,グラフトは薄いポリエステル製を使用した。
手術法は,Straight type 15例,腹部大動脈~片側性腸骨動脈type(片側性腸骨動脈ステントグラフトに大腿~大腿動脈バイパス術を施行)を55例,分岐typeを 4 例に施行した。
 
早期成績を見ると,成功率は全体で86.5%,Spiral Z使用例で80.7%,Giantruco Z使用例で97.5%だった。
入院死亡率は2.7%。
合併症は,一過性脳虚血発作(TIA)が2.7%に認められた。
 
中略

以上から,倉谷准教授は「カスタムメードのステントグラフトを使用したAAAに対するEVARは良好な長期成績が得られる有効な治療法であり,ステントの改良によりエンドリークの発症を減少させることができた。企業製作のステントグラフトの保険収載によりさらに普及すると考えられるが,そのためには心血管外科医と心血管インターベンションを行う循環器内科医の連携が重要である」と述べた。


粥状硬化性腎動脈狭窄症に対する経皮的腎動脈ステント術
ロープロファイルシステム使用で安全に良好な成績が
粥状硬化性腎動脈狭窄症(ARAS)は動脈硬化症患者に高率に認められ,高血圧,腎不全,不安定狭心症,肺水腫と関連し,特に心血管疾患患者の予後を悪化させる。
最近,ARASに対する治療法として,経皮的腎動脈ステント術(PTRS)が行われているが,施行するうえで安全性が問題となる。菊名記念病院(神奈川県)循環器科の宮本明部長は,ロープロファイルステントシステムを用いることで,ARASに対するPTRSを低侵襲,簡便,安全に施行でき,良好な急性期,中期成績が得られることを示した。

急性有害事象発症率は0%
PTRSの適応は,血管造影による狭窄率50%以上,圧較差20mmHg以上の腎動脈狭窄(RAS)で,原因不明のうっ血性心不全または不安定狭心症,治療抵抗性高血圧,両側性または孤立性RASを伴う進行性腎機能不全となっている。
 
今回,PTRSを安全に行う方法として,宮本部長は6FrガイドカテーテルとロープロファイルPalmaz-Genesisステントを用いたPTRSの効果を検討した。
 
現在わが国でARASに対して承認されているステントはPalmazステントのみであるが,同ステントは,8Frガイドカテーテルが必要で, 80cm長のシャフトのみのため大腿動脈からのアプローチしかできず,柔軟性がないため挿入が難しいなどの問題がある。
 
一方,ロープロファイルPalmaz-Genesisステントは,
(1)80cmと135cm長のシャフトがあり経大腿動脈,経上腕動脈,経橈骨動脈アプローチが可能
(2)小径の0.018インチガイドワイヤを使用
(3)より柔軟で6Frガイドカテーテルが使用可能
―であることから,従来のPalmazステントよりも使用しやすくなっている。

対象はARAS患者17例(男性11例,女性 6 例;平均年齢73.3歳)18病変。
そのうち17病変は腎動脈口から 3 mm以内に位置し,病変長は平均11.8mm,対照血管径は平均5.1mm,最小血管径(MLD)は平均1.92mm,狭窄率は平均62.1%だった。

中略(詳細は)

浅大腿動脈慢性閉塞に対するナイチノール製自己拡張型ステント留置術
小プロファイルガイドワイヤの双方向性アプローチで成績向上
浅大腿動脈(SFA)慢性閉塞例に対する血管内治療はまだ確立されておらず,その成功率,慢性期開存率はいまだに低いという問題点がある。
最近開発された末梢動脈閉塞病変治療用の小プロファイルガイドワイヤと従来のステンレス製よりも破損しにくいナイチノール製自己拡張型ステント(NSES)を用いることにより急性期手技成功率の向上とともに慢性期開存率の改善が期待されている。
湘南鎌倉総合病院(神奈川県)循環器科の宮下裕介医長は,SFA慢性閉塞に対する小プロファイルガイドワイヤを用いたNSES留置術は,双方向性アプローチで逆行性にバルーン拡張を行うことで成功率と慢性期開存率が改善したと報告した。

成功率88%,1年開存率82%
対象は,2004年 9 月~06年12月に同科で小プロファイルガイドワイヤ(0.018インチのTreasure,0.014インチのRubyまたはCruise)とNSES(SMART,Luminexx)を用いて血管内治療を施行したSFA慢性閉塞例64例(平均年齢71.2歳),68病変(入口部病変37病変,中位病変31病変)。
分岐部から 5 cm以内に存在する病変を入口部病変,5 cm超に存在する病変を中位病変と定義した。対象の約20%は人工透析患者であった。
 
成功率は全体で88%,入口部病変で78%,中位病変では100%だった。

中略

 

急性期の合併症は,Blue toe症候群が入口部病変の 1 例に,急性閉塞が入口部病変の 1 例に,血栓による遠位部塞栓が中位病変の 1 例に認められたが,ワイヤによる血管穿孔,血管破裂,出血性の合併症などは認められなかった。
 
当初,同科では小プロファイルガイドワイヤを順行性アプローチのみで閉塞病変の通過を試みていた。
その際の手技成功率は入口部病変で60%であった。
そこで,膝窩動脈穿刺を加え双方向性アプローチに変更したところ,成功率が入口部病変でも82%に上昇し,さらに逆行性にバルーンを拡張することで手技成功率を入口部病変でも100%にすることができた。
 
中略
 
以上から,宮下医長は「小プロファイルガイドワイヤを双方向性にアプローチし,逆行性にバルーンを拡張してNSESを留置する血管内治療は,SFA慢性閉塞例の入口部病変,中位病変に有効であることが示唆された。今後は血管内超音波法(IVUS)を用いた多施設の前向き試験で同法の効果を明らかにする必要がある」と述べた。

http://mtpro.medical-tribune.co.jp/article/view?phrase=%E6%A2%A2%E8%A1%80%E7%AE%A1%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%82%BF%E3%83%BC%E3%83%99%E3%83%B3%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%B3&perpage=0&order=1&page=0&id=M4033161&year=2007&type=article
出典 Medical Tribune 2007.8.16
版権 メディカル・トリビューン社

<関連サイト>

大動脈瘤に対する血管内手術:
   ステント・グラフト留置術
http://www.yamaguchi-u.ac.jp/yu/yu47/47-33.html
■ステントとは19世紀のイギリスの歯科医Charles Stentに由来し、内腔を保持する支持物をさします(・・・「ステント」が人名由来とは知りませんでした)
■大動脈瘤の好発部位である腹部大動脈瘤では、腎動脈と動脈瘤の間の正常大動脈(proximal neck)の距離が、遠位弓部大動脈瘤では左総頚動脈または左鎖骨下動脈と動脈瘤の距離が15mm未満ですと、本手術の適応からはずれます。これはproximal neckまたはdistal neckが短いと、エンドリーク(endoleak)という合併症が発生しやすいためです。エンドリークとは動脈瘤内でかつステント・グラフトの外側の血流の漏れで、これが6ヶ月以上続きますと動脈瘤の拡大や破裂をきたします。術後エンドリーク率は、腹部大動脈瘤では5%、胸部大動脈瘤では25%です。

 

大動脈瘤・大動脈解離診療ガイドライン(2006年改訂版)
http://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2006_takamoto_h.pdf
(カテーテル・インターベンション PDF1614 46/78)

大動脈・末梢血管インターベンションの現状
http://www.medicalview.co.jp/catalog/MAGA17541-08-01-0.html
(医学雑誌「Heart View」の特集の目次です)
第8回日本心血管カテーテル治療学会学術集会
http://jacct8.umin.jp/03program/03program.html
(学術集会のプログラムです)
2007年アメリカ心臓学会レポート
Thoracic Aortic Disease II
http://physician.pfizer.co.jp/cardiology/report/aha/2007/44.html

 

<自遊時間>
昨夕の診察中に、知人のA先生(開業医)から電話がありました。
最近、医師会に入会した先生です。
電話の内容はこんなことでした。

昨日、『医師連盟』からの郵便配布物が送られて来たとのこと。
自動的に『医師連盟』に入会させられているのは納得がいかなくて医師会に電話したが明確な返事が得られなかったとのことでした。

 

私「それで連盟費は払っているの」

A先生「納得できないから最初から払っていない」

私「それはえらい。私は今年になって一念発起して蛮勇を奮って払わないことにしたよ」

A先生「それで退会手続きはどうやってすればいいの。医師会では各地域の医師会に相談しろっていっていたよ」

私「医師会の中でたらいまわしされるだけで埒があかないよ。私も以前相談に行ったけどダメだった。奥から理事が出てきて怖かった。とても医師にはみえなかった。後日、ネットで電話番号を調べて『医師連盟』にかけても誰も電話には出なかった。要するに実態がない事務局なんだよ」

A先生「そうだったんだ。」

私「とにかく先生みたいに払っていない会員がいたということがわかっただけでも心強いよ。文面はかなり強制的で高圧的だけど所詮『寄付』だから強制されるようなものではないよ。入会手続きをしてないから退会手続きもないだろうから、払わずに静観ということで・・・」

A先生「ほんじゃ我慢してしばらくそうするわ」

 

迷えるわれわれ子羊に神のご加護を。

 

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洞調律維持と心拍数調節の有効性は同等
〔カナダ・モントリオール〕モントリオール心臓研究所(MHI)とモントリオール大学(ともにモントリオール)の心臓医であるDenis Roy部長らは,心房細動のある心不全患者において,心拍数維持による簡便な管理により,電気的除細動の頻度,入院回数などが減少するとNew England Journal of Medicine(2008; 358: 2667-2677)に発表した。

欧米での前向き多施設試験
今回発表されたのは,心房細動のある心不全患者において,リズムコントロール(洞調律維持)とレートコントロール(心拍数調節)を比較し,心血管死に与える影響を検討した多施設前向き試験Atrial Fibrillation and Congestive Heart Failure(AF-CHF)の結果である。
心不全は死因の上位を占めており,心房細動の合併で死亡リスクはさらに増加する。
 
今回の試験は,カナダ保健研究所(CIHR)から650万ドル以上の助成を受けて実現したもので2001年に開始された。
心房細動と心不全の治療法を改善し,罹患率と死亡率を減少させることを目的に,北米,南米,欧州,イスラエルの123施設で1,376例を登録した。
 
2001年5月~05年6月に,電気的除細動と投薬により洞調律化を行うリズムコントロール群と,β遮断薬とジギタリスにより心拍数を安定させ,特別な洞調律化は行わないレートコントロール群に患者をランダムに割り付けた。
主要エンドポイントは心血管死で,データの整理・解析はMHIに設置された調整センター(MHICC)が統括して行った。
 
Intention-to-treat(ITT)解析において,主要エンドポイントである心血管死亡数は,リズムコントロール群が182例(27%),レートコントロール群が175例(25%)で,両群間に有意差は認められなかった。
総死亡数,心不全の悪化,脳卒中発症に関しても同等であった。
入院回数はリズムコントロール群で多く,その多くは心房細動の管理によるものであった。

重要な新知見を提供
Roy部長は「今回の結果は,心不全患者の心房細動管理で広く適用されている2つの方法に関し,重要な新知見を提供するものである。リズムコントロールをルーチンで行ってもレートコントロールと比べ死亡率は変化せず,さらに,心不全悪化など他の重要なアウトカムに関しても2つの方法の間で有意差は認められなかったが,レートコントロールにより電気的除細動を必要とする頻度と入院率が減少した」と指摘。
「レートコントロールにより心房細動が簡便に管理でき,入院率が減少することがこれで明らかになった。今回の知見は,レートコントロールを心房細動とうっ血性心不全の合併患者に対する第1選択治療とすべきことを示唆している」と述べている。
 
CIHR循環器・呼吸器学研究所の科学責任者であるPeter Liu博士は「今回の示唆に富む知見は,このような患者群に対し,電気的除細動を頻繁に行わない保存的な管理が可能であることを示しており,今後のケアの在り方に関し,新たな基準が提供されるであろう」と評価している。

出典 Medical Tribune 2008.8.14
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「Heart and Kidney - 私たちの近くにあるもの」
制作 Heart and Kidney制作委員会
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<関連サイト>
AF-CHF:心不全の時の心房細動研究 心拍コントロール群 vs 心調律コントロール群
http://intmed.exblog.jp/6411610/
AF-CHF
Atrial Fibrillation and Congestive Heart Failure
http://www.incirculation.net/whatswhat/11093_73472.aspx
AF-CHF試験
http://blog.m3.com/reed/20071210/A_
AF/CHF Trial: Rate as Good as Rhythm Control for AF in Heart Failure
http://www.medscape.com/viewarticle/565469
AF-CHF: Even in heart failure, rate-control strategy best for atrial fib
http://www.theheart.org/article/876415.do
AF-CHF The Atrial Fibrillation and Congestive Heart Failure Trial
心房細動と心不全の合併例において,リズムコントロールの心血管イベント抑制効果はレートコントロールを上回らない。
http://www.ebm-library.jp/circ/trial_AHA_2007.html#aha2007AFCHF

<番外編>
心臓エコー診断装置を入れ替えたお話はすでにしました。
循環器医と名乗りながら従来の装置はカラードップラーのないものでした。
昨日、不整脈で通院中の60代男性に心エコーを行いました。
一通り検査も終わりかけ、そうそうカラードップラーでもやってみようとスイッチをオンにしました。
プローブを当てた途端に大動脈弁に逆流が・・・・。


すっかりあわててしまって「二尖弁は?重症度判定は?」といったことは吹っ飛んでしまいました。
時間外に再度検査してゆっくり評価したいと思いました。
この検査は、診察時間外にたっぷり時間をかけて行うのがよいのかも知れません。
来月から月1回、心強い臨床検査技師が手伝ってくれるので楽しみです。

さて、この患者さんに聴診器をあてましたが心雑音は聴こえません。
リットマンのCardiologyを引っ張り出してきて、前屈位になっていただきましたが聴こえません。

ConstantのBedside Cardiology(2nd Ed.)を見ましたが雑音のないARの記載はありません。
もっともカラードップラーが導入される前のテキストということで当然といえば当然です。
silent or mute AR(私が勝手につけた名前です)は一体どの程度の頻度であるのでしょうか。
数多くの症例を経験された先生なら動脈硬化性のARで臨床的な意味はあまりないといわれると思います。
しかし、気になるので一度専門病院へ紹介して心音図と心エコーの再評価をお願いしようかとも思っています。

やっぱりカラードップラーはすごい。
何を今更と皆さんは思われるでしょう。

 

 

<関連サイト>
大動脈弁閉鎖不全症
http://akimichi.homeunix.net/~emile/aki/html/medical/circulatory/node113.html
大動脈弁閉鎖不全症
カラードップラーを用いた評価
pressure half time
http://medtoolz.xrea.jp/echo/node12.html
後天性弁膜症大動脈弁膜症
http://www.e-clinician.net/vol43/no452/pdf/gp_452.pdf
二尖弁と大動脈疾患
http://blogs.yahoo.co.jp/chibanishi_artery/10510349.html
二尖弁
http://www.kcc.zaq.ne.jp/dfcmd409/echo/echo.html
心エコー検査により術前に診断された大動脈四尖弁の2症例
http://www.jstage.jst.go.jp/article/jjmu/34/2/34_171/_article/-char/ja
(「四尖弁」、初めて聞きました)
先天性大動脈二尖弁
http://blog.m3.com/reed/categories/839

 

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冠動脈疾患と親族リスク

戯れ言たれる侏儒 / 2008.08.28 00:17 / 推薦数 : 0

急性心筋梗塞で病院に搬送された患者が血液検査で脂質異常がみられることはしばしば経験することです。
このことに触れることは、学会や講演会では一種のタブーとされています。
きょうは、そんな疑問のごく一部の解答が得られるかもしれない報告で勉強しました。
 

冠動脈疾患では親族リスクも高い
〔米オハイオ州クリーブランド〕グラスゴー大学(英グラスゴー)のC. K. Chow博士らは,早発性冠動脈疾患(CAD)の家族歴を有する中年層を対象にスクリーニングを行うだけで,早発性急性心筋梗塞(AMI)の42%,AMI全体の 8 %を予防できるとの知見を,BMJ(2007; 335: 481-485)に発表した。

生活習慣と遺伝的素因が同じ
Chow博士らは「同胞(兄弟姉妹)にCAD患者がいる人を一般人口と比較した場合,生活習慣と遺伝的素因を同胞と共有しているという理由から,CADリスクが少なくとも 2 倍になる」とし,さらに「一 親等は高リスク群であるにもかかわらず,臨床では彼らを対象としたスクリーニングは行われていない。例えば,デンマークでは早発性CAD患者325例の同胞のうち高血圧患者の83%,高コレステロール血症患者の33%しか治療を受けていなかった。
しかも,十分な治療域に達していたのは,それぞれ28%,7 %であった」と述べている(Hengstenberg C, et al. European Heart Journal 2001; 22: 926-933)。
 
ジョンズホプキンス大学(メリーランド州ボルティモア)で行われた研究(Yanek LR, et al. Hypertension 1998; 32: 123-128)では早発性CAD患者490例の同胞859例を対象としたが,米国の一般人口と比較した場合,患者の同胞は高血圧リスクに関する認知度が低く(60%対90%),高血圧を管理する方法に関する知識も低かった(16%対24%)。
 
同博士は「早発性CAD患者の親族に対して禁煙を促し,高血圧を治療し,他の危険因子を調整するなどCADを予防できる絶好のチャンスが医師の目前にある。また,家庭内で危険因子について話し合うことにより,家族のAMIを予防できる。だれかが早発性MIで病院に搬送されると,患者家族も来院するが,その家族もMIリスクを有していることから,このときが高リスク家族と接するのに理想的なタイミングである」と述べ,「従来,オンラインでのアンケート,あるいは学校や職場で高リスク者を検出する試みが行われてきたが,家族の来院時にCADリスクを説明し,高リスクとなる生活習慣を改めるよう指導するほうが予防的意義が高い」と主張している。
出典 Medical Tribune 2008.1.17
版権 メディカル・トリビューン社

 

 

早期心疾患とメタボリックシンドロームに
まれな遺伝的変異が関与
〔米コネティカット州ニューへブン〕 エール大学(ニューヘブン)内科心臓病学のArya Mani助教授と同大学遺伝学のRichard Lifton学科長らによる国際的な研究から,メタボリックシンドロームと世界的に主要な死因となっている早期心疾患の実質的リスクである単独の遺伝子のまれな変異を同定したとScience(2007; 315: 1278-1282)に発表した。
新しい経路を特定
今回の研究では,心疾患に関与していると思われる新しい経路が特定された。
今回の知見からメタボリックシンドロームと早期心疾患に対する健康的側面を改善するための新たなアプローチが示唆された。
Mani助教授は「われわれの知見から,よく知られているWntシグナル伝達経路の活性の変化が,心疾患に寄与している複数の代謝経路に大きな影響を与えることが示された」と述べている。
一般に冠動脈疾患(CAD)は,高LDLコレステロール(LDL-C),高トリグリセライド値,低HDLコレステロール,高血圧,糖尿病などの危険因子の集積を含むメタボリックシンドロームにより引き起こされる。
今回の研究は,早期CADの有病率が異常に高いイラン人の大家族の家系に基づいている。
親族58例中28例は,男性が50歳以前に,女性が55歳以前に早期CADと診断された。
この28例中23例は,CADにより若年で死亡した。
対照的に,早期CADを発病しなかった親族は平均81歳で死亡している。
CADと診断された親族は,LDL-Cとトリグリセライドが高値で,高血圧,糖尿病であったが,CADに罹患しなかった親族ではこれらの疾患は認められなかった。
また,CAD罹患者は骨粗鬆症になりやすい素因を有していたが,骨粗鬆症とCADの関連性を示す最近のエビデンスを考えると,これは特に興味深い知見である。

複数の危険因子が関与
研究チームは,この家系のCADの遺伝的形質と各染色体断片の遺伝的形質を比較することにより,疾患の原因となる遺伝子の位置を第12染色体の短断片にまで絞り込むことに成功した。
この染色体領域において,LRP6と呼ばれる遺伝子に単一変異が発見された。
LRP6遺伝子はWntシグナル伝達経路に作用し,特定の癌の発現に関与していることが知られている。
この変異により 1 つのアミノ酸が蛋白質に変換し,この蛋白質がLRP6によりコードされている蛋白質の活動を変化させることがわかった。
Lifton学科長は「複数の危険因子が互いに関連している理由はこれまでなぞに包まれていたが,われわれの知見から多数の危険因子の形成と早期CADにおけるWntシグナル伝達経路の関与が示唆される。
今後,早期CADとメタボリックシンドロームの患者を対象にWntシグナル伝達経路の研究を進めれば,疾患原因の基礎生物学に関する新しい知見が得られるとともに,疾患予防の新たなアプローチが示唆されるのではないか」と見ている。 

出典 Medical Tribune 2007.5.17
版権 メディカル・トリビューン社


<関連サイト>
■ 左主冠動脈と遺伝
http://blog.m3.com/reed/20080102/1

■ 日本人における虚血性心疾患の特徴
http://minds.jcqhc.or.jp/G0000131_0016.html
日本人における狭心症あるいは冠動脈疾患への遺伝学的なアプローチもみられる。
性差や,従来の冠危険因子の有無などの条件にもよるが,apolipoprotein E(ApoE)やstromelysin-1(MMP3),またconnexin-37(GJA4)の特定の遺伝子多型が冠動脈疾患との関連性を示したという報告がある。
また,Heme oxygenase-1遺伝子プロモーターの多型と冠危険因子を有する冠動脈疾患患者との関連性を示す報告がある。
Paraoxonase(PON)のA/B多型は冠動脈疾患の危険性との関連はみられなかった84)が,PON-1については,そのR/R genotypeは冠動脈疾患になりにくいという報告がある。
また,アンジオテンシン変換酵素(ACE)遺伝子の多型性は日本人の血清ACE活性ならびに冠動脈疾患のリスク増加と関連するとされ,DDは冠動脈疾患の危険因子という報告がある。
von Willebrand因子の受容体である血小板GPI bαの大きさが異なる遺伝子多型では,日本人の心筋梗塞患者ならびに狭心症患者においては少なくとも1つの4-repeat alleleを持つものが多いという。
遺伝的背景の差異や対象症例数などにより必ずしも同様の成績が報告されるとは限らないが,今後とも検討の必要な領域である。
■ 心臓病と他の疾患を結びつける遺伝子
Gene Links Heart Disease and Other Disorders
http://www.sciencemag.jp/highlights/20070302.html
冠動脈疾患は、高血圧症や糖尿病など集合的に「メタボリック・シンドローム」と呼ばれる病気と関係している場合が多いが、その理由を解明する新たな手がかりが得られた。冠動脈疾患は心臓発作を引き起こし、全世界で主要な死亡原因となっている。
Arya Maniらは、メタボリック・シンドロームの特徴の多くを備えた、珍しい遺伝性の若年性冠動脈疾患に苦しむ家族を調査し、この疾患の原因となる遺伝子の突然変異が「Wntシグナル経路」の一部であるLRP6遺伝子で起こっていることを報告した。
Wntシグナル経路は幅広い生物学的プロセスに関与するタンパク質の複雑なネットワークで、胚発生や癌との関連が特によく知られている。
この経路でのたったひとつの変異により、冠動脈疾患に付随する様々な種類の疾患が生じるという発見は、これらの疾患が相互に関連していることが多い理由を説明するのに役立つだろう。  


■ Wnt Induces LRP6 Signalosomes and Promotes Dishevelled-Dependent LRP6 Phosphorylation
http://www.sciencemag.org/cgi/content/abstract/316/5831/1619


■ 骨粗鬆症治療画像集
http://www2.eisai.co.jp/motor/gazou/0607v5n3/01.html
http://www2.eisai.co.jp/motor/gazou/0607v5n3/02.html
http://www2.eisai.co.jp/motor/gazou/0607v5n3/03.html

 

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スタチンで血圧低下

戯れ言たれる侏儒 / 2008.08.27 00:41 / 推薦数 : 0

スタチンのclass effectとして血圧がわずかだが下がるというお話です。
血圧計の目盛りとしてわずか1目盛り程度。
測定誤差がきちんと補正されているのか。
どのような測定法だったのかは元文献をあたっていないのでわかりません。
そして、このわずかな血圧低下が本当に心血管イベントの有意な抑制につながるのか。

スタチン系薬で血圧が有意に低下
正常血圧でも降圧効果認められる
〔ニューヨーク〕カリフォルニア大学サンディエゴ校(カリフォルニア州ラホヤ)家庭・予防医学のBeatrice A. Golomb博士らが実施した大規模ランダム化二重盲検試験で,スタチン系薬はプラセボと比べて,血圧を緩徐ながらも有意に低下させることが示された。詳細はArchives of Internal Medicine(2008; 168: 721-727)に発表された。

脂質低下作用と同等の降圧作用
水溶性スタチンと脂溶性スタチンはいずれも収縮期血圧(SBP)値と拡張期血圧(DBP)値を低下させ,その効果は正常血圧者でも認められた。
この緩徐な降圧効果は,これまでに報告されている
スタチン系薬による脳卒中リスクの低下や心血管イベントの減少に寄与するものと考えられる。

今回の研究では,スタチン系薬によってSBP値とDBP値がともに低下することが示された。
さらに,この降圧効果は,正常血圧で降圧薬による治療を受けていない"Pre-Hypertension"の人でも認められた。Golomb博士は「この効果は,ほとんどの水溶性スタチンと脂溶性スタチンによる脂質低下作用に匹敵する」としている。
 
また,同博士は「スタチン系薬による降圧効果は,そのプラークの進展抑制効果のみでは説明できない心血管への速やかな効果に関連するものと考えられる」とし,「スタチン系薬による降圧効果は緩徐である。しかし,脳卒中発症率とLDLコレステロール(LDL-C)値との関連性は一貫していないものの前者は血圧と強く関連するため,この降圧効果は同薬による一過性脳虚血発作や脳卒中の減少に寄与している可能性がある」と考察している。
 
さらに,スタチン系薬による降圧効果は,ベースライン時に血圧が高かった者を除外した解析で顕著であった。
 
なお,被験者の多くは非高血圧者で,研究には比較的低用量のスタチン系薬が用いられた。

治療後6か月で有意に低下
今回の研究対象は,心血管疾患(CVD)や糖尿病の既往歴がなく,LDL-C値115~190mg/dLの男女973例。
被験者はシンバスタチン投与群,プラバスタチン投与群,プラセボ群のいずれかに割り付けられた。
 
ITT解析の結果,スタチン系薬(シンバスタチンおよびプラバスタチン)群ではSBP値が2.2mmHg(P=0.02),DBP値が2.4mmHg(P<0.001)低下し,プラセボ群に比べ有意に血圧が低下した。
 
また,HDLコレステロール(HDL-C)値が中央値(50mg/dL)を超える者ではSBP値が4.7mmHg低下した(P<0.001)が,HDL-C値が中央値を下回る者ではSBP値の低下はわずか1.5mmHgであった(P=0.30)。
 
なお,DBP値は,HDL-C値が中央値を超える者では2.8mmHg低下し(P=0.01),同値が中央値を下回る者ではDBP値の低下は2.7mmHgであった(P=0.01)。
 
さらに,ベースライン時のSBP値が140mmHg超かつDBP値が90 mmHg超の者を除外し,降圧薬を使用せずに8か月間追跡した。
その結果,追跡開始1か月時点ではスタチン系薬群でSBP値とDBP値が低下したものの,有意ではなかった。
開始6か月時点では,プラセボ群に比べスタチン系薬群において, SBP値とDBP値のベースライン時からの有意な低下が認められた(P<0.05)。
これらの血圧の変化は,スタチン系薬による治療の中止後2か月で消失した。
 
同博士らは「この知見は,スタチン系薬の経時的効果に関するさらなる情報を提供するものである」としている。

他疾患患者での効果は不明
今回の研究では,シンバスタチン投与群,プラバスタチン投与群のいずれにおいてもSBP値とDBP値が2.4~2.8mmHg低下した。
この結果は,降圧薬による影響を受けていない者で得られた。
血圧に対するスタチン系薬の効果は,被験者が既に使用していた降圧薬との相互作用に純粋に起因するものでないということは興味深い。
しかし,糖尿病や心血管疾患の既往のある患者,LDL-C値がきわめて高いか,またはきわめて低い患者,高血圧患者などで同様の効果が得られるか否かは不明である。
 
スタチン系薬が血圧を低下させる機序には,強力な血管拡張因子である内皮一酸化窒素合成酵素の発現亢進や活性化,内皮機能の改善,血流による血管拡張が関与すると考えられている。
スタチン系薬は,アンジオテンシンII 1型受容体の発現の低下を引き起こすと言われている。
 
また,
内皮機能や血管拡張に対するスタチン系薬の効果は,その抗酸化作用によるものであると考えられており,HDL-C値が低い者や糖尿病患者などでは効果が消失あるいは減弱すると言われている。

出典 Medical Tribune 2008.8.21
版権 メディカル・トリビューン社

 

<関連サイト>

高血圧 | Minds 医療情報サービス
MindsID S0028666
スタチンは血圧を下げるか?: ランダム化比較試験のメタアナリシス
http://minds.jcqhc.or.jp/G0000085_S0028666_0004.html
脂質異常症治療薬として広く用いられているスタチンを用いた臨床試験において,血圧に及ぼす影響を解析したメタアナリシスの成績である。全体として収縮期血圧-1.9mmHgと僅かながら有意な降圧効果が認められ,その程度は,血清脂質の変化とは関係なく,血圧高値において大きい傾向があった。
降圧効果が小さいため,降圧薬としてのスタチンの使用は勧められないが,多面的作用の存在を示唆する成績である。高血圧に限らず,メタボリック症候群あるいは生活習慣病の総合的な改善を図る上で考慮されるべき情報である。(石光俊彦)


MindsID S0023232
The Brisighella Heart Study研究における異なる脂質低下療法と血圧コントロールとの関係 
http://minds.jcqhc.or.jp/G0000085_S0023232_0004.html
近年,高脂血症を伴う高血圧患者数は着実に増加してきており,降圧薬とともに脂質低下薬としてスタチン製剤がよく用いられるようになってきた。
このような治療において,スタチン製剤が降圧効果をもたらすという報告も出てきている。
そこで,本研究では,イタリアにおけるBrisighellia Heart Studyの参加者の中から高脂血症と高血圧を合併する患者を選出し,スタチン製剤を投与した場合とスタチン以外の脂質低下薬を投与した場合とで,脂質低下効果および降圧効果を検討した。
その結果,脂質低下薬を投与して脂質が低下すると降圧効果がみられた。
高血圧と高コレステロール血症の著明なものほど血圧が低下しやすく,その際,LDL-コレステロールの低下度には両剤で差がないが,スタチン製剤群で特に降圧効果が著明であった。
スタチン製剤と非スタチン製剤で降圧効果になぜ差がみられたか明らかではないが,スタチン製剤の動脈硬化改善作用が強力なことが降圧効果をより著明にもたらした可能性が考えられる。
 <コメント>
降圧の実数値が記載されていないため、どの程度の降圧かを知りたいところです。

<番外編>

〔独デュッセルドルフ〕ザーナ病院(デュッセルドルフ)ドイツ西部糖尿病健康センターのStephan Martin教授は「毎日,1片のビターチョコレートを摂取するだけで血圧が下がり,血管内皮機能が改善される可能性がある」と糖尿病アップデートで報告した。

低用量のポリフェノールでも有効
ポリフェノールが心血管リスクを低下させることは広く知られ,さまざまな試験で,高用量ポリフェノールが血圧と血管内皮機能に与える優れた効果が実証されている。
 
そこで,ケルン大学では低用量のポリフェノールでも効果があるのか,またポリフェノールを含むチョコレートを毎日食べると実際に血圧が下がるのかを検証すべく,正常高値血圧(前高血圧あるいはステージI)だが,ほかに心臓危険因子のない54~73歳の44人に市販のビターチョコレートまたはポリフェノール非含有のホワイトチョコレートを毎日6.3g摂取させた(30kcal/日)。
 
18週間後,ビターチョコレート群で収縮期血圧が平均2.9mmHg,拡張期血圧が平均1.9mmHg下がり,前高血圧(プレ・ハイパーテンション)罹患率が86%から68%に低下した。一方,ホワイトチョコレート群では変化はなかった。
体重,血中脂質,血糖値,酸化ストレスマーカーは両群とも不変であったが,ポリフェノールと酸化窒素の血漿濃度はビターチョコレート群で上昇していた。
 
Martin教授は「患者には,毎日,一片のビターチョコレートを摂取させるのがよいだろう。ただし,すべてのビターチョコレートのポリフェノール含有量が同じとは限らず,しかもチョコレート製品にその含有量は明示されていない」と述べた。
出典 Medical Tribune 2008.8.14
版権 メディカル・トリビューン社

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