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第25回日本冠疾患学会(大阪)で記事で勉強しました。冠血行再建術ガイドラインの作成委員である帝京大学循環器内科の一色高明教授と日本医科大学心臓血管外科の落雅美教授の講演およびシンポジウム後のディスカッション内容を紹介した記事で勉強しました。 冠血行再建術ガイドライン初の改訂が来月発表に今年3月開催の第76回日本循環器学会で「冠動脈疾患におけるインターベンション治療の適応ガイドライン〔待機的インターベンションにおける経皮的冠動脈インターベンション(PCI)と冠動脈バイパス術(CABG)の適応〕」の改訂が発表される見込みだ。数年ごとに改訂が行われてきた欧米とは異なり,わが国では2000年の発表以降12年ぶりの初改訂となる。大阪市で開かれた第25回日本冠疾患学会では,外科内科合同シンポジウム「ガイドラインに基づく冠血行再建治療」が企画され,改訂作業のプロセスや課題などが整理された。 12年ぶりの初改訂 今回の改訂に当たっては冠動脈血行再建術協議会が結成され,2010年4月から11年11月まで,外科系6人,内科系9人の委員が12回にわたって協議を重ねた。外科・内科双方の治療の進歩やエビデンスの変遷を背景に,両者の見解には相違が生まれ,議論は白熱したものとなった。協議会のメンバーである一色教授や落教授は,内科・外科それぞれの意見の取りまとめを行う立場で作成に当たった。内科側の見解 ガイドラインがPCI適応を規定している実態一色教授はまず,ガイドラインの位置付けを論じた著書から「主治医と患者が治療方法を決める際の仲介資料のようなもの」,「既存エビデンスの集合体であり,臨床場面における意思決定に影響する要因の1つ」などの見解を紹介し,これに賛意を示したが,現実的にはガイドラインが保険診療におけるPCIの適応を規定していると問題提起した。実際,2008年の診療報酬改訂の際には,1998~99年作成のガイドラインに基づいて待機的PCIの手技料 が,2007年の改訂版を根拠に急性冠症候群(ACS)の手技料が算定された。 同教授らは医師の裁量権が認められない行政対応に改善を求めてきたが,ガイドラインが保険診療の縛りとなっているのが実態だ。欧米のように2~3年置きに改訂がなされなければ,その時々の標準療法と保険診療上の適応が乖離していくばかりであると指摘した。 PCI実施の透明性確保が課題日本の冠血行再建術については,「PCIが行われ過ぎている」という批判があるのも事実で,薬剤溶出ステント(DES)が登場してからもPCIとCABGの割合が4対1程度である米国に対してわが国では約10対1となっている。一色教授は,日本でPCIが多い理由を次のように説明した。合理的な理由としては,多枝病変を有する可能性の高いACS患者に段階的にPCIを実施するstaged PCIが挙げられる。さらに,一部の施設では必要性の有無によらず多枝病変に対してstaged PCIが実施されたり,無症状の末梢病変や側枝病変といった適応外症例に対してPCIが実施されている例がある。その背景には,保険診療上,多枝病変に対するPCIの診療報酬加算が認められておらず,PCI実施件数が多いほど収入が増加するといった,ガイドラインとは別の要因があるという。同教授はこのような状況を踏まえ,PCI実施に当たっての透明性の確保を今後の課題に挙げた。その上で「ガイドラインの存在は,自らが行う治療の立ち位 置を明確にする。それに沿わない診療行為を選択する場合には,他の医療スタッフにも妥当性を説明する必要が生じる。これが適正な医療につながる」と述べた。さらに,内科と外科の連携強化の重要性が盛り込まれた欧米のガイドラインと同様に,日本でもガイドラインがハートチームを象徴するものになると期待を 寄せた。外科側の見解CABGと同様にPCIの全国調査を外科側を代表して発表した落教授は,外科側が行っている全国レベルの全件調査を内科側も実施し,透明性を担保した上でそれぞれの適応を検討していく姿勢が重要であると強調した。 わが国の冠血行再建術をめぐる比較データとしては,ランダム化比較試験(RCT)は皆無であり,前向き観察研究のCREDO-KYOTOが近年報告されているのみだ。しかし,CABGについては学会主導の全例調査で95%超の回収率で手術成績が集計されており,一部のハイボリューム施設だけでなく,全国 の平均的な成績を概観することができる。一方,PCIの国内成績については,一部の専門施設の優れた成績が公表されるのみで網羅的な調査が行われていな い。これが,外科側が懸念を抱く根拠となっているという。 約10年前の実態調査(厚生科学研究)では,年間施行件数が経皮的冠動脈形成術(PTCA)10万9,788件(1,086施設),CABG 1万7,445件(582施設)と報告され,PTCAをめぐっては「左室駆出率が不明」,「症状のみを根拠として客観的な根拠がない」といった問題点が挙げられていた。同教授は,この調査以降,内科系PCIの全国調査が行われておらず,10年前に指摘されていた問題が現在も放置されているとした。 近年,日本心血管インターベンション治療学会(CVIT)が中心となり全国調査の基盤を築きつつあるが,学会への参加もレジストリー登録についても強制力がない。そのため,ガイドラインが作成されても,一部施設の不透明なPCI施行が放置される懸念が残るという。 ハートチームの推進を特に問題視されているのが,手技の成否が生命にもかかわる非保護左冠動脈主幹部(LMT)病変の扱いだ。欧米のガイドライン改訂の根拠となったRCTの SYNTAXでは,LMTを含む解剖学的高リスク病変(SYNTAXスコア33以上)における冠血行再建術を含む主要心血管イベント発生率(MACCE) が,3年でCABG群19.5%,PCI群34.1%とPCI群で有意に高く,追跡が長期になるにつれて差が広がってきている。 この結果から,落教授は「特に非保護LMT病変に対するPCI施行は慎重に行う必要がある」と警鐘を鳴らす。米国では,LMT病変へのPCI推奨レベル が2009年に「有益でない,根拠がない」とするⅢから,「有用とする根拠が乏しい,意見が少ない」のⅡbへ引き上げられたものの,「多枝病変でない症例 に限定されるべき」,「外科医のバックアップが不可欠」などの詳細なただし書きが添えられている。 同教授は「日本のガイドライン改訂においても多枝病変や非保護LMTの扱いが焦点になったが,最も重要なのは欧米で重視されてきている外科・内科のハートチームによる協力体制を日本でも推進していくことだ」と締めくくった。 全件調査の重要性が強調される講演後のディスカッションでは,ガイドライン改訂を踏まえた問題点などが討議された。その中で,京都大学大学院心臓血管外科探索医療センターの丸 井晃准教授は,日本で唯一の比較レジストリーの解析に当たった経験を踏まえ,術件数や術成績の施設間格差が厳然と存在するため,「ガイドラインという1つ の枠組みで治療選択を決めるのは困難であると実感した」と述べた。榊原記念病院循環器内科の浅野竜太部長は,外科側の優れた長期成績を造影検査などで目の当たりにする経験を積み重ねてきたことが,現在の治療選択 に大きく影響していると説明した。一方,東京医科歯科大学心臓血管外科の田村清氏は,内科でステントを10本以上留置した後に外科に依頼が来る症例も存在する現状を指摘。ガイドラインにも掲げられることが予想される「ハートチームによる患者中心の良識的な治療が望まれる」とした。PCI施行困難例にも優れたPCI成績を残している大阪大学大学院先進心血管治療学講座の角辻暁准教授は「ガイドラインを評価し,改訂を行う作業 を順次進めていくことが重要」と指摘した。この点については一色教授も同意。現在,日本循環器学会では各ガイドラインについて5年ごとの改訂を進めているが,進化の速い領域であり,また内科と外科で協議を円滑に進めるためにも,数年ごとの更新が望ましいとした。さらに,同教授は「ガイドラインを検証し,書き換える作業は重要であるが,基本的には遵守していくものである」と確認した。落教授が講演の中で要望したPCIの全国・全件調査については,一色教授が専門医や研修施設の認定制度にリンクさせたレジストリー体制の構築を進めていると説明。それでもなお,非学会員については野放しの状況になることから,内科側シンポジストからも,診療報酬とリンクさせるなどの強制力を持った 全件登録の実施を推す意見が挙がった。
出典 Medical Tribune 2012.2.9
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<きょうの一曲> Miles Davis Quartet - My Funny Valentine
http://www.youtube.com/watch?v=HS2BUr83O-8
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スタチンのpleiotropic作用はどの程度の臨床的インパクトがあり,どのようにして評価されるのか。
スタチンの中のアトルバスタチンに焦点を当てAHA開催中のディスカッション記事で勉強しました。
(発言内容をピックアップ) 司会
平山 篤志 氏 日本大学内科学系循環器内科学分野教授
出席者(発言順)
David D. Waters 氏 Professor of Medicine, San Francisco General Hospital University of California
代田 浩之 氏 順天堂大学循環器内科教授
石井 秀樹 氏 名古屋大学大学院循環器内科学 心血管系イベント抑制およびプラーク退縮を目指した脂質管理の重要性スタチンはプラーク容積を減少させ心血管系イベントの発症を抑制■(平山)日本国内においても,経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を施行した急性冠症候群(ACS)患者70例を,アトルバスタチン投与群または通常療法群に無作為に割り付け,6カ月間追跡したESTABLISHや,ACS患者307例を対象にプラーク容積の変化率を検討したJAPAN-ACSなどにおいて,ストロングスタチンの投与による冠動脈プラーク容積の退縮に及ぼす影響が検討されています。
<私的コメント>JAPAN-ACSはピタバスタチンにおける検討。 ■(平山)最近発表されたPROSPECTでは,心血管系イベントの原因となるプラークは,薄い線維性被膜(TCFA)を伴い,血管腔が狭小化した,大型のプラークであることが示されています(図1)。
■(平山)スタチンによりプラーク容積を減少させれば,心血管系イベントの発症率は低下するのでしょうか。言い換えれば,スタチンによるプラーク容積の減少は,そのまま心血管系イベントの発症率の低下につながるといえるのでしょうか。 この点については,これで得られている事実を総合すると,その可能性は十分考えられるものの,直接的に検証した試験がないことから,今後さらなる検証をしていく必要があると思います。■(平山)スタチンに関するもう1つの疑問は,スタチンによるプラーク容積の減少は,LDL-C低下だけによってもたらされるものかどうかということです。スタチン にはLDL-C低下とは独立したいわゆるpleiotropic作用があり,直接的にプラークに作用して容積を減少させることが指摘されています。 ■(平山)ロスバスタチンとアトルバスタチンという2つのストロングスタチンの最大用量を用い,冠動脈プラーク容積への減少効果を比較するSATURNが実施され,その成績が今回のAHAで報告されました。 アトルバスタチンによるプラーク容積の減少に抗炎症作用が関与■(Waters)MIRACLではACSによる入院患者約3,000例を対象に,アトルバスタチンの高用量を用いた積極的脂質低下療法群とプラセボ群に無作為割り付けし,16週間追跡して虚血性イベント再発の抑制作用を検討しています。 ここで興味深かったのは,試験開始時および治療中のLDL-Cレベルはどちらも,転帰の有意な予測因子となっていなかったことです。しかし,C反応性蛋白(CRP)が関与し,抗炎症作用が影響した可能性が示唆されています。 さらに,他のスタチンとアトルバスタチンで相対リスクおよび両群間の差がいつから認められるかも検討されており,その他の報告も含め考えると,アトルバスタチンは効果発現が速く,LDL-C低下以外の作用が関与していることが考えられます。 アトルバスタチンについてのさまざまなエビデンス■(Waters)安定冠動脈疾患患者を対象としたTNTでは,アトルバスタチンの高用量を用いた積極的脂質低下療法と通常用量を用いた脂質低下療法における脳心血管イベント再発に与える影響を検討しています。TNTの結果を治療中のLDL-Cレベルで5群に分けて層別化し,LDL-Cレベ ルと主要心血管イベント(MACE)発症の抑制作用も解析しており,アトルバスタチンによる治療では,LDL-Cは低ければ低いほどよいといえるのではないかと感じています。 また,eGFRはさまざまな患者集団において強力な予後予測因子になることが知られていますが,同様にTNTでは,eGFRへのアトルバスタチンの影響についても検討されており,eGFRを改善する可能性が示されています。さらに,アトルバスタチン投与中のeGFRの変動により腎機能低下群,不変群,改善群に分けて,心血管イベント発症との関係についても検討されています。アトルバスタチンの長期治療によりeGFRの改善が見られた患者群では,アウトカムの改善にもつながることが期待されています。 高まるアトルバスタチンの臨床的意義■(代田)わたしたちは腹部大動脈瘤の手術予定患者20例を対象に,アトルバスタチン20mg/日群と通常治療群に無作為割り付けして4週間治療後,腹部大動脈瘤置 換術を施行,組織における炎症への効果を比較しています。その結果,アトルバスタチン群では炎症性細胞やマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)の発現が有意に抑制されていました(図2)。
4週間という短い期間でアトルバスタチンが組織での抗炎症作用を示したということは,直接的な pleiotropic作用の部分が寄与しているのではないかと考えています。こうした抗炎症作用は,より炎症反応の強いACS患者において,さらなる有 用性が期待できるのではないかと考えています。事実,わたしたちが実施したExtended-ESTABLISHのLDL-C別サブ解析でも,ACS患者 におけるアトルバスタチン20mgのイベント抑制作用がより早期から見られています(図3)。
血管内視鏡により明らかとなったアトルバスタチンのプラーク安定化作用■(平山)わたしたちはIVUSと血管内視鏡を同一患者に施行することで,アトルバスタチンが冠動脈プラークにどのように作用するかを検討しています。その結果,IVUSで確認されるプラークの退縮は80週の試験期間を通じ持続的に確認された一方,血管内視鏡で確認されるプラークの色調変化については,28週目までは黄色調から白色調への変化が認められたものの,その後80週の時点まで一定でした(図4)。
■(石井)IB(integrated backscatter)-IVUSでは脂質成分は青色に,線維成分は緑色に映ります。したがって青色部分の多いプラークは脂質含有量の多い,不安定なプラークと判断できます。わたしたちは特に慢性腎臓病(CKD)患者でIB-IVUSを実施し,PCIの目標ステント留置部位には,脂質に富むプラークが多く存在することを報 告しています。また最近,対象をeGFR(mL/min/1.73m2)60未満と60以上に分けてIB-IVUSの結果を解析し,前者は後者に比べて脂質容積が有意に大きく,線維容積が小さいことも報告しています。また,岐阜大からの報告では,アトルバスタチン20mgで6カ月間治療すると,IB-IVUS所見の青色部分,すなわち脂質成分が有意に減少することも報告されており,虚血性心疾患のハイリスクグループと考えられるCKD患者に対しては,アトルバスタチンの効果が期待されています。
■(Waters)エゼチミブをスタチンに併用すると,LDL-Cは低下するので有効だとは思いますが,エゼチミブでLDL-Cを低下させたことでイベントを抑制したという臨床試験のデータがないため,現状では,エゼチミブを加えるよりも,まずはスタチンを増量する方が良いと考えています。 出典 Medical Tribune 2012.2.9
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初回心筋梗塞患者の院内死亡率がCHDの危険因子数と逆相関
ワトソンクリニックLLP(フロリダ州レークランド)のJohn G. Canto博士らは,初めての心筋梗塞で入院した患者における喫煙や高血圧などの冠動脈性心疾患(CHD)の危険因子と院内死亡リスクとの関連について観察研究で検討し,「初回心筋梗塞による入院患者では,CHD危険因子の数と院内死亡リスクが逆相関していた」との結果をJAMA(2011; 306: 2120-2127)に発表した。
54万2,008例のデータを解析
研究の背景情報によると,心筋梗塞患者における高血圧,喫煙,脂質異常症,糖尿病などのCHD危険因子の保有率を評価した研究は複数あるが,初回心筋梗塞による入院患者の院内死亡率に焦点を合わせた研究は少ない。しかし最近,合併症のない非ST上昇型心筋梗塞患者においてCHD危険因子の数と死亡率との間に軽度ではあるが逆相関が認められたとする予想外の研究結果が報告されている。
そこでCanto博士らは今回,1994~2006年の全米心筋梗塞登録データのうち,心血管疾患の既往のない初回心筋梗塞による入院患者54万 2,008例のデータを用い,CHDの5大危険因子(CHDの家族歴,高血圧,喫煙,脂質異常症,糖尿病)と入院中の全死亡率との関連性について検討し た。
対象患者のうち14.4%は入院時のCHD危険因子の数が0個であったが,81%は1~3個,4.5%は4~5個を有していた。
最も多く見られた危険因子は高血圧(52.3%)で,次いで喫煙(31.3%),脂質異常症(28.0%),CHDの家族歴(28.0%),糖尿病(22.4%)が続いた。
危険因子数ごとに患者を分類したところ,各群の平均年齢は危険因子数が多いほど低く,0個の群では71.5歳,5個の群では56.7歳であった。
危険因子多いほど死亡率低い
院内死亡は計5万788例であった。
危険因子数が0個の患者では調整前の院内死亡率は14.9%,1個では10.9%,2個では7.9%,3個では 5.3%,4個では4.2%,5個では3.6%であった。
年齢などアウトカムと関連する入院時の因子で調整して解析したところ,院内死亡率とCHD危険因子数との間に有意な逆相関が認められた。
この逆相関は年齢などで層別化しても認められた。
Canto博士らは「CHDの危険因子がないからといって,必ずしも予後が良好であると考えてはならない」と指摘。
「今回の結果はこれまでの研究結果と一致するものであった。今後,危険因子数と院内死亡率の逆相関を説明しうる機序を解明するためには,さらなる研究が必要である」と付け加えている。
出典 Medical Tribune 2012.2.2
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“ハートチーム”による治療選択の重要性を強調
ACCF/AHA/SCAIがPCIガイドライン2011発表
米国心臓病学会財団(ACCF),米国心臓協会(AHA),心血管造影・インターベンション学会(SCAI)は,経皮的冠動脈インターベンション(PCI)施行時の患者管理に関するガイドラインを改訂し, Journal of the American College of Cardiology(2011; 58: e44-e122),Circulation(2011; 124: e574-e651),Catheterization and Cardiovascular Interventions(2011; オンライン版)に発表した。
この2011年版ガイドラインでは,PCIあるいは冠動脈バイパス術(CABG)の適用を含む治療方針の決定に, “ハートチーム”による集学的アプローチを取り入れることをクラスⅠの推奨事項としているほか,PCIとCABGの比較についても,かつてない規模でペー ジを割いている。
PCIとCABGの作成委員が合同で血行再建術の項目を作成
発表に当たって,ガイドラインのタスクフォース委員長であるAlice K. Jacobs博士は,今回のガイドライン改訂で目指した包括的目標について「エビデンスに基づいた臨床診療の指針を示すと同時に,妥当性を維持しながら, 使いやすさを向上させることにあった」と説明。
特に,使いやすさを向上させるための新たな試みとして,「ガイドライン中のエビデンスやサマリーは簡潔な表にまとめ,エビデンスレベルとともに推奨事項を分かりやすく表示したほか,参考文献もカラーの表にまとめた」ことを挙げている。
さらに,今回のガイドラインでは初めて,臨床での利便性を考慮し, PCIとCABGの作成委員が合同で血行再建術の項目を作成した。
PCIガイドライン作成委員会委員長のGlenn N. Levine博士は「2011年版のPCIガイドラインでは,冠動脈疾患(CAD)に対する血行再建術の推奨をまとめる上で,最大の協力体制が組まれた。 このセクションでは,どのような患者が血行再建術を受けるべきなのか,またCABGとPCIのどちらが適しているのかといった内容が検討されている」と説明している。
インターベンション専門医と心臓外科医の連携を推進
また,CABG,ST上昇型心筋梗塞(STEMI),安定虚血性心疾患,不安定狭心症/非STEMIなど複数のガイドラインで重複する草稿の作成 に当たっては,各ガイドラインの作成委員が協働してコンセンサス会議でまとめることで,ガイドライン全体の一貫性を保ちつつ,作成に必要な時間を短縮した。
ガイドライン作成委員会は今回のガイドラインで,こうした作成プロセスのほか,“ハートチーム”アプローチなどの新たな概念を提示。
特に,保護されていない左冠動脈主幹部病変あるいは複雑病変を有するCAD患者に対するPCIあるいはCABGの治療選択における“ハートチーム”アプローチの導入に
ついては,最高の推奨レベルであるクラスⅠの推奨事項としている。
このアプローチは,PCIとCABGの治療選択に当たってはインターベンション専門医と心臓外科医が連携して患者の状態を精査し,それぞれの治療選択肢の長所と短所を評価して,患者にその情報を推奨内容とともに伝えるというものである。
SYNTAXスコアによる評価を推奨
改訂ガイドラインのそのほかの特記事項としては,多枝病変を有する患者の治療法の決定に際してSYNTAXスコアによる評価が推奨されていることが挙げられる。
Synergy between Percutaneous Coronary Intervention with Taxus and Cardiac Surgery
PCIガイドライン作成委員会副委員長のJames C. Blankenship博士は「このスコアは,冠動脈造影所見を基にコンピュータによって算出され,CAD病変の程度や複雑さを測定し,分類するツールとして用いられている。計算は複雑だが,このスコアを用いて疾患の程度をより客観的に分類することで,CABGとPCIのいずれが適切かを決定する一助となるだろう」と述べている。
なお,同スコアが導入されたSYNTAX試験の結果はNew England Journal of Medicine(2009; 360: 961-972)に発表されている。
改訂ガイドラインではまた,初めてCAD患者に対する生存率と症状の改善を目的とした血行再建術に関して,解剖学的サブグループごとに推奨が示された。
同博士は「それぞれのサブグループについてデータを入手することはこれまでも困難で,データがない場合はガイドラインから除外せざるをえなかった。そこで,今回のガイドライン作成委員会ではエビデンスレベルがA(複数のランダム化比較試験や比較試験で支持)であれ,C(専門家の意見あるいは症例 研究で支持)であれ,それぞれのグループが含まれるよう広範囲にわたる調査を行い,データ収集に努めた」と説明している。
倫理的問題にも言及
Levine博士はまた,通常のステントあるいは薬剤溶出ステント(DES)の留置術の推奨に関して「慎重かつバランスの取れたアプローチが取られるよう特に留意した」としている。
例えば,狭窄の再発を予防するためのDESの使用はクラスⅠの推奨とする一方,まず医師がPCIの施行前に抗血小板薬2剤併用療法に患者が耐えられるか否か,また遵守されるか否かを評価すべきとする推奨も示されている。
そのほか,改訂ガイドラインは,PCIのインフォームド・コンセントや主治医が利害関係のある専門的施設に患者を紹介する(self-referral)問題,利益相反の可能性などの倫理的な問題についても触れている。
また,スタチン療法や血管閉塞デバイスの使用,外科のバックアップ体制がない医療機関におけるPCIの施行,術中の放射線データのモニタリングと記録に関する推奨も明記されている。
なお,今回のガイドラインはACCとAHAが新たに導入した「委員長を含む作成委員のうち50%超が関連業界との関係がないこと」とする方針に基づいて作成された。
出典 Medical Tribune 2012.2.2
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高血圧性網膜症の進行で心血管疾患リスクが高まることはこれまでに明らかにされていたが,軽度の段階から,また一般住民でもリスクとなるのかは未解明であった。そこで,獨協医科大学公衆衛生学講座の西連地利己准教授らが,茨城県健康研究の住民コホートを調べたところ,軽度網膜症の段階から総死亡や心血管 疾患死亡リスクが上昇していた。この傾向は正常血圧者でも示され,正常血圧段階からのリスク上昇の原因解明が期待される結果となった。調査の詳細はCirculation(2011; 124: 2502-2511)に発表された。 約10万人の一般住民から得た眼底所見を分類・解析茨城県健康研究(Ibaraki Prefectural Health Study;IPHS)は,1993年から茨城県と同県総合健診協会が主体となって健診事業とともに進めているもので,西連地准教授も同協会の研究員の1 人として,健診の実施やデータ解析を進めてきた。 健診は9万7,042人(うち男性3万3,130人)が受け,健診項目には眼底所見も含まれていた。所見の評価法について指導を受けた医師が Keith-Wagener-Barker分類に基づき4段階(網膜細動脈に軽度の狭窄や硬化が認められるグレード1,それらが進行したグレード2,さら に浮腫が認められるグレード3~4)で網膜症の進行を評価した。 今回の検討では,8万7,890人について,1993年のベースラインで網膜症の所見がない正常群(2万2,444人)とグレード1群 (6,117人),グレード2群(1,356人)に分け,2008年までのデータを解析した。データが不完全な4,067人と脳卒中・冠動脈疾患既往を有 する4,996人,さらに同分類でグレード3以上だった89人は除外された。 対象集団の患者背景は,男性の平均年齢が正常群58.5歳,グレード1群64.7歳,グレード2群66.2歳。同様に男性の収縮期血圧(SBP) は順に133.7mmHg,142.5mmHg,151.2mmHgで,グレードが上がるにつれて心血管危険度が強まる傾向が示された。
これは女性でも同様だった。 軽度網膜症例の心血管疾患死リスクは正常血圧であっても高い平均14.1年の追跡の結果,総死亡は1万2,946人で,そのうち心血管疾患死が3,697人,脳卒中による死亡が1,746人であった。 年齢,SBPレベル,降圧薬の使用などの心血管危険因子に関連する因子で調整したCox proportionalハザードモデルでこれらの死亡リスクを算出したところ,心血管疾患死のハザード比は,正常者と比べて男性ではグレード1群が 1.24〔95%信頼区間(CI)1.12~1.38〕,グレード2群が1.23(同1.03~1.47),女性では同様に1.12(同 1.01~1.24),1.44(同1.24~1.68)といずれもリスクが有意に上昇した。また,脳卒中による死亡リスクについても,男性ではグレード 1群が1.31(95%CI 1.12~1.50),グレード2群が1.38(同1.08~1.77),女性では順に1.30(同1.12~1.50),1.70(同 1.36~2.11)とそれぞれ有意なリスク上昇が示された。 なお,総死亡については,男性ではグレード1群1.09(95%CI 1.04~1.15),グレード2群1.17(同1.06~1.28)と有意なリスク上昇が示された。女性ではそれぞれ1.02(同 0.96~1.08),1.23(同1.11~1.35)とグレード1では有意ではなかったが,グレードの進行に伴う傾向を見たトレンドP値は有意だっ た。 今回の検討では,降圧薬服用なしでSBP140 mmHg未満,拡張期血圧(DBP)90mmHg未満の正常血圧者と高血圧者に分けた検討も行われた。その結果,高血圧者だけでなく,正常血圧者でもグ レード1,2の網膜症と総死亡,心血管疾患死,脳卒中による死亡のいずれも網膜正常例と比べて有意なリスク上昇が示された(図)。
近年,正常血圧の段階でも心血管疾患リスク上昇の可能性があると指摘されていたが,今回の検討結果がそうした正常血圧の段階でのリスク上昇解明の手がかりになることが期待される。 <私的コメント>
「正常血圧の段階でも心血管疾患リスク上昇の可能性がある」 ・・・ちょっと理解しにくい表現でした。「網膜症があれば」という但し書きが抜け落ちていたとも思えません。 西連地 利己 准教授のコメント 高血圧性網膜症の進行とその心血管疾患リスクについては,米国高血圧合同委員会第7次報告(JNC-7)や欧州における高血圧ガイドライン(ESH- ESC 2007)などで,Keith-Wagener-Barker分類グレード3~4の網膜症における心血管疾患リスク上昇が指摘されている。しかし,グレード1~2の軽度網膜症でリスク上昇が認められるのか,また,一般住民においてもそのような傾向があるのかどうかは分かっていなかった。今回,眼底所見が評価項目に含まれた住民健診のデータから,軽度網膜症の段階から一般住民においても心血管疾患死亡リスクが上昇することが明らかになった。特筆に値するのは,正常血圧者においてもそのようなリスクが確認された点である。これには仮面高血圧が関与していると推測しているが,定かではない。今後,この背景が明らかになれば,正常血圧の段階からの心血管疾患リスク上昇の機序が解明されるのではないか。 <私的コメント>動脈硬化の原因は実に多様(多要素、multifactorial)です。 脂質異常、糖尿病、高血圧の各専門家は、その原因をしばしば我田引水的に自らの専門フィールドで語ろうとします。昔から、AMIで救急搬送される患者は、かなりの割合でその危険因子が不明であるということを臨床医は経験で知っています。講演会を聴きに行くと、その臨床事実(リアルワールド)をつい忘れて講演内容に酔いしれてしまいます。 出典 Medical Tribune 2012.1.26
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東北労災病院 高血圧内科・宗像正徳部長による「高血圧患者を初診で診察する際の心得」についての解説記事で勉強しました。問診の勘所:高血圧の罹病期間は注意深く聞く 日本人の高血圧人口は4,000万人です。高血圧は一般内科医が診る患者の中で最も多い疾患の1つだと思います。特に2008年からは40歳以上の被保険者に特定健診が義務付けられましたので,高血圧患者が発見される機会も増えてきたと思われます。先のアンケートでも,半数以上の方は患者の3分の1超が 高血圧であると答えています。患者数が多い分,病態もさまざまで,すぐに薬物治療が必要な患者がいる一方で,まず非薬物療法で開始すべき患者もいます。初診では,直ちに投薬すべきかどうかの判断が重要になると思います。 そこでまず把握したいのが,血圧の推移と臓器障害の情報です。外来では,「症状はないが健診で血圧が高いから受診を勧められた」あるいは「症状があって 自分で血圧を測ってみたら高かった」というような方が多いと思います。「親が高血圧で脳卒中になったので心配だ」というような方もいます。まず,どれくらいの期間,高血圧が続いていたのかを聞き取りましょう。かなり以前から高血圧を指摘されていた方であれば,その影響は臓器に現れる可能性が高く,降圧薬を速やかに開始した方がよいことが多いと思います。 一方,最近になって血圧が上がってきたという場合は,臓器の変化が読み取れない可能性があります。この場合,ストレスや不眠,あるいは体重の増加など, 血圧を上昇させる外的要因,身体変化についてもよく聞き取る必要があります。痛み止めなどの薬も血圧を上昇させることがありますので,服用中の薬については念入りに聴取します。 なんらかの原因で一過性に血圧が上がった方に,そのときの血圧だけで判断して,強力な降圧薬を投与すると,低血圧の副作用が発生しやすくなります。高血圧の履歴を正確に把握することが大切です。健診を初めて受けて高血圧を指摘された方の多くが,かなり以前から血圧が高かったとしても,「初めて高血圧を指摘された」と答えますので,健診をいつごろから受診していたかについても把握する必要があります。 検査の主眼:薬物治療開始のタイミングを把握 次に検査です。臓器障害のチェックと併存するリスクの有無を明らかにします。臓器障害については,通常,一般医家で行えるのは,胸部写真と心電図,尿一 般と血液生化学(肝機能,腎機能,尿酸,脂質,糖代謝)ではないかと思います。さらに細かい検査として,頸部エコーや心エコー,足関節上腕血圧比 (ABI)の計測などがあります。それらの計測が可能な施設では積極的に利用し,臓器障害を明らかにするとよいでしょう。以上のデータと問診,血圧値から 患者の重症度を明らかにし,治療方針を決定します(表1)。
なお,病院で測定する血圧は変動しやすいため,日を替えて複数回血圧を測定し,判定するのが原則です(表2)。
Ⅱ度以上の高血圧の場合は基本的に,薬物治療を即開始することが多いと思います。Ⅰ度の高血圧の場合は,高血圧以外のリスクや臓器障害を慎重に見極めて 薬物治療を開始するか,まず非薬物療法でいくかを判断します。臓器障害が全くない患者では,白衣高血圧の存在を念頭に置き,家庭血圧を記録してもらってから,薬物療法を考慮するという選択もあります。 なお,減塩や減量など高血圧の非薬物療法は,患者の生活実態を把握した上で,実行可能な目標を設定することが求められます。指導に当たっては,患者の食生活や身体活動に関するアンケートを行い,その内容に基づいて,ピンポイントに指導するのがよいと考えます。 家庭血圧の測定は可能な限り最初の段階から指導します。家庭での自己血圧測定により,白衣高血圧,仮面高血圧を診断できますし,薬物療法,非薬物療法の効果を評価しやすくなり,治療に対するアドヒアランスも向上します。 ところで,一般医家の先生から,2次性高血圧の鑑別の仕方が分からないとよく言われます。高血圧の90%以上は本態性高血圧ですから,まずは本態性と考えて問診や検査を進めます。その過程で特殊な症状,検査所見が見られた場合,あるいは降圧薬を3剤投与しても目標レベルまで血圧が下がらないというような場合に,2次性高血圧を疑って精査する,あるいは専門医に紹介するという姿勢でよいと思います。<私的コメント>私もそんな感じで初診の高血圧患者の診察を行っています。しかし、こういった方法では必ず二次性高血圧の見逃しが出て来ます。理屈では初診のチェックが重要と分かっていても左右の血圧差のチェックも行わないのが実情ではないでしょうか。もっとも最近ではABIの計測が出来るため、四肢血圧のチェック漏れはなくなっています。高血圧患者の心電図、胸部写真のチェック漏れもしばしばある私としては、検査は「思い立ったが吉日」の方がよいのでは、と思います。 腎性の高血圧は尿所見やクレアチニンから,睡眠時無呼吸による高血圧は肥満体質や昼間の眠気などから比較的容易に推測できます。低カリウム血症が見られれば副腎性のものが考えられます。<私的コメント>正常K性原発性アルドステロン症の見逃しが心配です。 また,胃薬に含まれる甘草製剤や非ステロイド抗炎症薬(NSAID)が高血圧の原因になることもありますので,薬剤は念入りに聴取しましょう。 出典 Medical Tribune 2012.1.26
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帝京大学心臓血管外科・真鍋 晋講師の「大動脈解離」の解説記事で勉強しました。“男性は突然の右腕の痛みに見舞われ,すぐに痛みは左へと移動した。その後見る見るうちに胸骨上部に腫瘤が出現した。彼はこの世からの旅立ちを深淵に受け 止めざるをえず,しかも死はすぐ近くに差し迫り,どうしても逃れることはできなかった”(J. B. Morgagni, 1761)。 これは,大動脈解離に関する医学史上最初の記述とされています。突然降りかかり,あっという間に命を奪い去るこの病気の恐ろしさを伝えたこの言葉から250年が経過していますが,今なお大動脈解離が厄介な病気であることに変わりはありません。わが国では人口10万人当たり約3人発症するとされ,これは 鑑別が難しいとされる急性心筋梗塞の10分の1程度の頻度です。発症から1時間ごとの死亡率は1~2%と非常に高く,極めて迅速な対応が要求されますが, 診断は難しく,救急領域では大動脈解離症例の約30%が,当初は他疾患と誤って治療がなされていたとも報告されています。ここでは,大動脈解離の初期対応 や自然経過,外科治療成績について紹介します。 症例 58歳,男性。生来健康で,いつも通り仕事を終えて家で夕飯を食べていた。食事中に突然胸部に鋭い痛みが生じ,意識を失う。すぐに意識は回復したが,痛みは背中へと移動し,その後も背部痛が持続。高血圧で受診している近医で診てもらうと,心音,呼吸音には特に異常はなかったが,血圧が高く,左右差が認められた。 いかに迅速に初期診断を付けるか 本症例は意識消失を伴う突然の胸背部痛を主訴としています。大動脈解離の可能性をどの程度疑うべきでしょうか。CTなどの画像診断が可能であれば診断は容易ですが,胸痛を訴える症例は極めて多く,全例に施行するわけにはいきません。臨床症状から高リスク群を特定する必要があります。 米国心臓病学会(ACC)/米国心臓協会(AHA)ガイドラインでは,大動脈解離検出のための体系的なリスク評価法を提唱しています(表1)。 患者背景,痛みの性状,身体所見の3つの観点からリスク評価を行い,リスクが2つ以上,または1つでも心電図,胸部X線部写真で他疾患が考えにくい場合には,積極的に画像診断(造影CT,MRI,経食道エコー)を行うという方針が示されています。この症例では突然発症の鋭い疼痛と血圧の左右差から2項目が 満たされ,高リスク群と評価されるので,造影CTなど画像診断の施行が推奨されます。
このような大動脈解離リスク評価法の有用性は,国際多施設共同登録試験(IRAD)で評価されています。2,538例にACC/AHAのリスク評価法を適用すると,95.7%は中等度以上と評価され,極めて感度が高く有用であると報告しています。また,臨床所見からは全くリスクのなかった残りの症例でも,約半数(48.6%)は胸部X線写真で縦隔影の拡大が見られました(Circulation 2011; 123: 2213)。 分刻みで病状は進行,致命率も高い では本症例で大動脈解離の診断がなされず,そのまま様子を見た場合,どのような経過が予想されるでしょうか。それには,現在のような治療体系が確立される約40年前の,Anagnostopoulosらの報告が参考になります(表2)。 過去の文献から大動脈解離963例の自然経過が集計されました。診断から6時間以内に死亡したのは約4例に1例,2日後にはそれが半数まで増え,2週間後に生存している人はたった5例に1例でした。つまり,この症例で大動脈解離を見逃した場合は突然死となる可能性が2日で50%に上ることが予想されます。
発症から突然死までの時間経過をより詳細に見てみましょう。東京都監察医務院は,剖検を行った大動脈解離による突然死1,320例の発症からの時間経過を報告しています。突然死の半数以上は病院到着前に既に死亡していますが,到着から6時間以内に死亡している割合も全体の20%近くを占めています。つま り,病状は分刻みで進行しており,初期診断がいかに重要であるかが分かります。 A型解離では緊急手術が原則 大動脈解離の確定診断がなされた場合,どのような治療が推奨されるでしょうか。治療方針は,上行大動脈を含むA型解離では外科治療が,含まないB型解離では保存的治療が原則です。前述のIRADでは,大動脈解離464例の臨床経過を報告しています(JAMA 2000; 283: 897)。A型解離の内科治療では,血圧をモニターし積極的な降圧に努めます。しかし,内科治療の死亡率は極めて高く,手術により治療成績は劇的に改善す ることが分かります。一方,B型解離の内科治療の急性期死亡率は低く,合併症などを理由に外科治療を選択した場合には若干死亡率が高くなっています。 では,A型大動脈解離に対してどのような手術が行われるのでしょうか。手術では,傷んだ大動脈を切除し,人工血管で置換しますが,解離の進展は,上行から下行,腹部大動脈など広範囲に及ぶことが多く,解離した動脈すべてを切除するわけではありません。解離は通常エントリーと呼ばれる,内膜に亀裂が生じた 部位から動脈壁内に血液が流入することで生じているので,このエントリー部分を含めた一定範囲の解離大動脈を切除します。よって,術式としては上行大動脈 置換術が一般的ですが,エントリーが弓部や基部にあれば弓部置換や基部置換(Bentall手術)が施行されます。 そのほかにも解離の手術に特徴的なことがあります。通常開心術では大動脈に遮断鉗子をかけ,人工心肺装置で脳や腹部臓器など他臓器の血流を保った状態で行います。ところが大動脈解離では,遮断することでさらに脆弱になった解離大動脈が,術後再拡張や破裂を起こすことが危惧されます。そこで末梢吻合では遮断は行わず,脳など重要臓器を保護するために体温を下げ,全身の循環を止めて手術を行います(低体温循環停止法)。そのため手術侵襲は,一般的な開心術よ りやや大きくなることが予想されます(図)。
外科治療でもリスクは高い A型解離の手術リスクはどの程度でしょうか。IRADの報告では,急性A型解離に対する外科治療の入院死亡率は25.1%もあります。特に,心タンポ ナーデや臓器虚血などの合併症を有する場合は入院死亡率が31.4%と非常に高いのですが,合併症がない場合でも16.7%です(JTCS 2005; 129: 112)。一方,2008年度の日本胸部外科学会の集計では13.0%でした。このように,報告により若干のばらつきがありますが,A型解離に対する緊急 手術は今なおリスクが高い手術であることに変わりはありません。ただし,手術さえ乗り切れば,遠隔期の成績は比較的良好です。IRADの報告では,A型大 動脈解離の生存退院症例の遠隔期成績は,外科治療群の3年生存率で90.5%と良好です(Circulation 2006; 114; 350)。 ◇ 250年前のMorgagniの時代からは大動脈解離の診療は大きく様変わりしています。その中でも特に影響が大きかったのは,CTの普及と外科治療の 確立といえるでしょう。とはいえ,A型解離では致命率は今なお高く,課題も残されています。1つには,初期診断向上の必要性が叫ばれ体系的な初期診断法の 普及が望まれます。また外科治療においても,置換範囲の決定や循環停止時の至適温度では今なお統一した見解は得られておらず,手術成績のさらなる向上が望まれています。 出典 Medical Tribune 2011.12.22版権 メディカルトリビューン社
<自遊時間>新聞の広告に「『言葉の配置』と『テンの打ち方』がわかれば すっきり!分かりやすい!文章が書ける」という本の広告が。宣伝文句は「書いているうちに、回りくどい文になる」「書いたことが、上手く伝わらない」など、文章に対する苦手意識も一気に解消! 以下内容の紹介が。●主語と述語はできるだけ近くに●長い修飾語を先に、短い修飾語を後に●文末・語尾に変化をつける●接続詞はたいてい省ける●長い主語や修飾語、目的語に読点を打つ●同じフレーズや語句をだぶらせない●かな書きと漢字を上手に使い分ける ここまで親切に内容が紹介されていれば、わざわざ本を購入する人がなくなってしまうのでは。
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有効性と安全性を確認 スタチン療法の長期継続 Heart Protection Study (HPS)Collaborative Groupは,心血管疾患の高リスク者を対象としたランダム化比較試験(RCT)による長期追跡研究を行い,「スタチン療法から得られる心血管イベントのリスク低下などの便益は,同療法の長期継続でより増大し,治療中止後も5年以上にわたって持続していた」との結果をLancet(2011; 378: 2013-2020)に発表した。また,同研究では平均11年の追跡期間中,がん発生率やがんによる死亡率,心血管疾患以外の原因による死亡率の上昇は見られず,その安全性も確認された。 試験終了後さらに6年間追跡 HPSでは心血管疾患の高リスク者2万人超をシンバスタチン(40mg/日)群またはプラセボ群のいずれかにランダムに割り付け,約5年間にわたり治療 を行った。その結果,LDLコレステロール(LDL-C)が約38mg/dL低下することで心血管疾患や心血管死のリスクが約4分の1低減することが示された。しかし,スタチン系薬の長期使用による有効性と安全性をめぐっては,現在も議論が続いている。そのため,HPSでは試験終了後さらに約6年にわたり追跡調査を実施した。主要エンドポイントは,ランダム化後の初回主要心血管イベントとした。 その結果,試験終了後の追跡期間中,スタチン系薬の使用率と血中コレステロール値は両群で同等であったにもかかわらず,シンバスタチン群では試験期間中 に認められた心血管イベントや心血管死のリスク低下はその後の追跡調査期間中も維持された。また,試験期間と試験後の追跡期間を合わせた平均11年間で, すべての部位のがん発症〔リスク比(RR)0.98〕,がんによる死亡(RR 1.01),心血管以外の原因による死亡(RR 0.96)に有意差はなかった。 信頼性の高いエビデンス 今回の結果を踏まえ,同グループは「スタチン療法の長期的な便益に関する信頼性の高いエビデンスが得られた。また,試験後の追跡結果も,長期的に LDL-C値を低下させることの安全性に関して,スタチン系薬を処方する側と処方される側の双方に安心感を与えるものであった」と結論付け,「心血管疾患 の高リスク者にはスタチン療法の迅速な開始と長期継続を考慮すべき」との見解を示している。 さらに,同グループの一員で心臓保護共同研究グループ臨床試験サービスユニット(オックスフォード)のRichard Bulbulia博士は「試験後約6年間の追跡期間中もスタチン療法の便益が持続していたことは注目に値する。さらに,11年間にわたる追跡期間中にがんや他の重要な疾患のリスク上昇が認められず,その安全性についても信頼できるエビデンスが得られた」とコメントを寄せている。 医師は安全性に自信が持てる Brigham and Women's病院(ボストン)心血管部TIMI研究グループのPayal Kohli博士らは,今回の研究結果について同誌の付随論評(2011; 378: 1980-1981)で「HPSを含む複数のRCTから,長期のスタチン療法の有効性と安全性を示すエビデンスが得られた。これらの結果を考慮すれば,ス タチン系薬の使用に際しては懸念の必要はなく,心血管リスクの高い患者の治療では,医師はその安全性に関して自信を持って同薬を活用してよいだろう」と述べている。 出典 Medical Tribune 2012.2.2
版権 メディカル・トリビューン社
熊谷守一 『鬼百合に揚羽蝶』 http://kokura.keizai.biz/headline/photo/252/
東京国立近代美術館蔵
■百合の花とアゲハが逆三角形の構図を成し、下部に黒色を配したことが、画面に安定感を与えている。
■画面を縦に走る百合の茎のか細さが緊張感を生み出す。アゲハの羽ばたきにも、揺れてしまいそうだ。
■筆は一方向に動くのが特徴。この絵は百合の花びらの中も横に塗られている。
■1964年、初めてのパリでの個展でポスターに採用されたこの作品は、シャープで洗練されている。
■アゲハの下部の黒色には濃淡があり、ゆらぎが生じている。
■さらりと描くようでいて、二次元にどう落とし込むか色や画面の配置を考え抜いている。
■いのちの形をふっととらえ、作品の中に生きながらえさせている。
(「朝日新聞・夕刊 2021.25 」より)
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減塩の第一歩は食塩摂取量の適正評価こうしたジレンマがある中で,どのように減塩指導を進めていけばよいのか。土橋医長は「各個人の食塩摂取量を正しく知ることが基本。摂取量が分かれば,目標達成に向けての具体的な指導と,指導の評価が可能になる」と指摘する。 食塩摂取量の評価法には,食事内容に基づく評価と尿中Na排泄量の測定による評価の2通りの方法がある(表3)。
一般のクリニックなどで実施しやすいのは,1日ないし数日間の食事内容を詳しく聞き取り,食塩量を推測する方法だが,実測値との間にはやや差がある。最も信頼性が高いのは,24時間蓄尿し,Na排泄量を求めて食塩摂取量を算定する方法だ。客観的評価が可能なため,多くの疫学研究や INTERSALTなどの疫学研究でも用いられている。ただ,日中オフィスなどで働いていて蓄尿が難しい患者が少なくない上,反復して測定するのも難し い。 そこで,より簡便な測定法として「減塩モニター」が開発された(写真)。夜間尿(8時間相当)をプールし,それを基に24時間尿中Na排泄量を推定する。24時間蓄尿に比べ信頼度は劣るものの,毎日家庭での自己測定が可能で,日常生活習慣の改善効果も期待できる。
減塩モニターの有用性は,九州医療センターに通院する高血圧患者34例に健康ボランティア25例を加えた59例で検証されている。同モニターを用い て30日間の尿中食塩排泄量を測定した結果,最初の10日間の平均は8.5±1.6g/日であったが,最後の10日間は8.3±1.5g/日と有意に低下した。この間の減塩指導は,ごく一般的で画一的なものだったという。 同医長は「血圧を毎日測るように,減塩モニターで食塩排泄量を反復して測定することで,食塩摂取量への意識が高まり,それが日常生活の見直しへフィード バックされる。減塩を始める動機付けや確認のセルフモニタリング・ツールとして有用」とし,クリニックなどでの積極的な使用を勧める。 肥満の是正も減塩効果アップにつながる 減塩効果を上げるための重要なポイントとなるのが肥満の是正だ。一般に肥満者では過食傾向があり,たとえ薄味を心がけていても,食事全体の量が多くなれば食塩摂取量は増えていく。実際,土橋医長が高血圧患者290例(男性123例,女性167例)を調べると,男性の39%,女性の18%がメタボリックシ ンドロームと診断された。これらの患者の尿中食塩排泄量は10.1g/日で,非メタボリックシンドローム例の8.5g/日と比べて有意に多かった。 翻って考えれば,肥満を伴うメタボリックシンドローム患者にカロリー制限による減量を指導すれば,おのずと食塩摂取量も減る可能性があるといえる。ま た,メタボリックシンドローム合併高血圧例には食塩感受性が高いことが報告されており,「減塩の効果がより期待できる」(土橋医長)と言う。 減塩による降圧効果は実証済み では,こうした減塩対策は血圧値にどのように影響するのか。同センターにおける最近10年間の,尿中食塩排泄量と血圧管理状況を見ると,24時間家庭蓄 尿を繰り返すことによって,食塩排泄量は1998年の9.8g/日から2010年には8.5g/日まで低下。6g/日未満の達成率も12.6%から 23.6%まで改善した。減塩指導と降圧薬治療の進歩が相まって,収縮期血圧も143mmHgから129mmHgへと大幅に是正された(図2)。
土橋医長は「尿中食塩排泄量の反復測定と,患者個々のライフスタイルに合わせた減塩指導の成果」としながらも,一方で,6g/日未満の達成例が4分の1弱にとどまっていることに「あらためて減塩の難しさを実感する」と評す。 減塩は高血圧の予防はもとより,心血管イベントやがんの予防にも有効だ。そのため日本では半世紀も前から減塩が叫ばれ,啓発活動も広く展開されてきた。しかし前述のように,減塩意識が必ずしも食塩摂取量の減少に結び付いてこなかった。 減塩を厳格に達成するには,今後何が必要なのだろう。同医長は「多様なライフスタイルに合った減塩手法の提供が急務だが,個人の努力だけでは限界がある。医師や栄養士だけでなく行政や外食産業などへの働きかけ,協力も欠かせない。食品の食塩表示を変えるのも一案。現在義務付けられているNa表示では, 食塩量を把握するためにはNa量を2.5倍しなければならないが,食塩量が表示されれば,国民の意識は高まっていくだろう。こういった点を少しずつ改善していくことが求められる」と指摘する。 日本における食育と減塩 高血圧,肥満,糖尿病などの生活習慣病を予防するには,生活習慣が確立する以前の介入,つまり幼児期から青年期にかけての“食育”が効果的といわれる。幼いころから身に付いたライフスタイルを成人になってから修正するのは大変だからだ。 そこで,日本では2005年に食育基本法が交付され,翌年に5年間の食育基本計画が策定された。このプランでは,(1)食育に関心を持つ国民の割合を 90%以上にする(2)朝食を食べない子供をなくす(3)食事バランスガイドなどを参照する国民の割合を60%以上とする(4)メタボリックシンドローム の認知度を60%以上にする—などの目標が掲げられている。また,食育の場として,家庭,学校・保育所を挙げ,それぞれが協調して食育にまい進することを 提唱している。 食育では,当然ながら食塩やエネルギーの適正量摂取も重要な柱となるが,実行するのは難しいようだ。例えば,土橋医長が地域の3歳児の食塩摂取量を調べ たところ,平均4.4g/日と同年代(平均体重14kg)の必要所要量を上回っており,過剰摂取(10g/日以上)しているケースも少なくなかった。味覚はだいたい幼児から小児期にかけて形成される。そして年齢が上がるほど,濃い味に慣れた舌を変えるのは難しくなっていく。 幼小児を抱える母親は20~30歳代が多く,減塩よりもダイエットの関心が高い世代といえる。日本高血圧学会の減塩ワーキンググループは,減塩レシピを作成して具体的な減塩方法を提唱しているが,こうした母親への啓発にも力を入れていくことが重要だ。同医長は「幼児期からの減塩の実践が生活習慣病を未然に防ぐ第一歩となる」と力説する。 出典 Medical Tribune 2012.1.26
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減塩の臨床的効果の評価とともに,減塩を進めていく上での課題や具体策を,滋賀医科大学生活習慣予防センターの上島弘嗣特任教授(同 大学名誉教授)と九州医療センター高血圧内科の土橋卓也医長にインタビューした記事で勉強しました。2011年に発表された2件の論文を引き金として,減塩の臨床的効果をめぐる論争が展開された。1つはJAMAに報告された観察研究,もう1つはコクランレビューのメタ解析で,ともに減塩が心血管リスクや死亡の上昇を招く可能性を指摘した。しかし,このデータについては異論が噴出しており,米食品医薬品局(FDA)もあらためて減塩を推進する旨の声明を出した。では,これまで減塩について多くの検討を重ねてきた日本の研究者は,今回の報告をどのように受け止めているのか。 減塩効果に疑問を呈した2論文の解析方法に重大な瑕疵あり 減塩論争の発端となった論文の1つは,ベルギー・ルーベンス大学の研究グループによる観察研究(JAMA 2011; 305: 1777-1785)。
欧州の地域住民を対象とした2件の前向きコホート研究(FLEMEGHO:1985~90年,EPOGH:99~2001年)の参 加者のうち,心血管疾患のない成人男女3,681例(平均40.9歳,追跡期間中央値7.9年)を抽出。
24時間尿中ナトリウム(Na)排泄量別に3群に 分けて,総死亡,心血管死,高血圧の発生を比較したところ,Na排泄量の最も少ない群で,心血管死のリスクが上昇傾向にあったという。
つまり,食塩摂取量が少ないほど,心血管死のリスクが高いと解しうる。
上島教授は,この試験の目的自体は妥当であるが,解析方法に大きな問題があると指摘する。「最大の誤りは,調査期間が10年以上違う2件のコホート研究 を併せて解析してしまっていることだ。イベント発生率を比べても,古いコホートであるFLEMEGHOは高く,新しいコホートのEPOGHは低い。喫煙率 も同様で,学歴も前者で低く,後者で高いという差がある。このように背景因子の大きく異なる集団をプールして一緒に解析するのは非科学的。なぜこのような 方法を取ったのか,首をかしげざるをえない」 もう1つは,24時間尿中Na排泄量を調べるための蓄尿の仕方だ。通常,尿量は男性の方が多いはずだが,このデータではむしろ女性が上回っている(表1)。また,1日の尿量が3,000mLを超える人が多いのに2,500mLしか蓄尿されず,それ以上の排泄量がある人の尿量が反映されていない。
では,コクランレビューのメタ解析はどうか。対象は,2008年10月までに発表された追跡期間6カ月以上のランダム化比較試験(RCT)で,減塩指導か減塩対策による介入を行い,死亡や心血管疾患の発生を指標として検討したもの。この選択基準に合致した論文は7件あり,対象総数は6,489例(正常血 圧3,518例,高血圧758例,両者の混在1,981例,心不全232例),観察期間は7~36カ月(最長12.7年)だった。メタ解析の結果,656 例が死亡していたが,総死亡,心血管死の相対リスクは正常血圧者と高血圧者で差がなかった。一方,心不全患者の全死亡リスクは2.59倍に上昇していた。 この結果について解析したグループは「死亡や心血管死を抑制する減塩のベネフィットは明らかにならなかった」とコメントしている。 しかし上島教授は,このメタ解析にも重大な問題点があると指摘する。まず,取り上げた研究の追跡期間が短すぎるという点だ。中には7カ月というものもあり,これで結論を出すのは無理があるという。さらに,減塩効果を均質な集団で比較していない点を挙げる。「正常血圧者と高血圧,心不全などの患者の減塩は 全く別のもの。次元の違う集団をメタ解析しても正しい結論は出てこない。この論文から分かるのは,心不全という特殊な病態を抱えた患者では,減塩が良くないということだけ。心不全患者は,既にループ利尿薬などを多量に使っているケースがほとんどで,そこへさらに厳しい減塩を行っている。そうした治療方針そ のものも疑問だし,そのデータを踏まえて,減塩による心血管死抑制のベネフィットが明らかでないと言うのは不適切だ」
減塩効果を高めるには全国的な環境整備が不可欠
ルーベンス大学グループによる観察研究やコクランレビューに対する,他の日本人研究者の評価も上島教授の考えに集約されるようだ。
同教授も「2つの論文 によって,これまでわが国で積み重ねてきた減塩対策に水を差されることはない。むしろ,論争が起こったことで,減塩への関心がいっそう高まる可能性がある」と前向きにとらえる。
そこで問題となるのは,さらなる減塩対策をどう進めていくかだ。
日本人の平均食塩摂取量は,20~30g/日余り取っていた時代から見るとかなり減少した。
しかし現在でも11g/日と,高血圧ガイドラインの目標(6g/日未満)にはほど遠く,世界的に見てもかなり多い。最新のNIPPON DATAによると,食塩摂取量が多く,野菜・果物摂取量が少ないと,10年以内の循環器疾患死亡リスクが高くなる(表2)。
逆に,国民全体で1日当たり1g減塩すれば,収縮期血圧が1mmHg,2g減塩すれば2mmHg下がり,それによって脳卒中など心血管イベントによる死亡者数が大幅に減るという試算もあるという。

とはいえ,減塩は容易ではない。
特に難しいのが健康な一般人への啓発だ。
高血圧や心不全などの通院患者では,合併症の予防という動機付けが比較的簡 単で,しっかりした知識と情報を伝えれば,ある程度の減塩は可能になる。
しかし健康人の場合は,減塩への意識が薄く,舌は濃い味,おいしい味に流れてしま う。
それを変えるには,国全体の環境整備が欠かせない。
例えば,現在,食品や調理品に表示されているNaに加えて塩分も明記し,食塩への注意を喚起するのも 1つの手だ。
また,加工品の塩分量を少しずつ減らしていくことも大事だ。
同教授は「日本人の舌を濃い味文化から薄味文化に転換していくのは大変だが,減塩 のためにはそのハードルを越えていく必要がある」と話す。
減塩の意義や臨床効果は日本で確認されている
土橋医長も今回の論争を巻き起こした2件の研究には否定的で,「欧米諸国に比べ食塩摂取量の多い日本では,高血圧の管理,そして心血管イベントの予防という観点から減塩の意義は極めて大きい」と主張する。
とはいえ,日本人の食文化に深くかかわっている食塩摂取を減らすのは容易ではない。
同医長らのグループはアンケートを行い,高血圧患者の多くは減塩の意識を強く持っているものの,それが尿中食塩排泄量に反映されていないことを確かめている(図1)。
また,日本全体で見ても食塩摂取量は,目標の6g/日未満からはるかに遠い11g/日で足踏みしているのが実情だ。

出典 Medical Tribune 2012.1.26
版権 メディカルトリビューン社 <番外編>武田薬品が高血圧治療薬アジルサルタンの承認を厚生労働省より取得
1月18日: 武田薬品は、高血圧治療薬アジルサルタン(アジルバ)の製造販売承認を厚生労働省より取得したことを発表した。
本承認は国内で実施された4つのフェーズ3試験に基づいており、カンデサルタンと比較した試験では、軽度から中等度の高血圧患者636人において、アジル サルタンによる治療を受けた群で、座位拡張期血圧、24時間自由行動下血圧などにおいて有意に高い降圧効果が示され、安全性と忍容性は同等であった。
本薬剤は、武田薬品が創製した1日1回経口投与の新規ARBである。
https://www.tcross.co.jp/details.php?category=market&no=1534
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