戯れ言たれる侏儒
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J-TOP研究

戯れ言たれる侏儒 / 2012.03.31 00:20 / 推薦数 : 0
自治医科大学内科学講座循環器内科学部門・宮崎大学医学部地域医療学講座の矢野裕一朗先生の、昨年のAHA2011(第84回米国心臓協会学術集会)での発表記事で勉強しました。

診察室外血圧は降圧治療中の心血管バイオマーカーの変化の予測に有用:J-TOP研究
家庭血圧(HBP)や自由行動下血圧測定(ABPM)などの診察室外血圧(out-of OBP)が標的臓器障害との関連および心血管疾患の進行予測においても診察室血圧(OBP)より優れていることは,すでに認識されている。
しかし,高血圧 患者を治療していく中で,out-of OBPが標的臓器障害の進行・改善の予測においてOBPよりも有用な指標となりうるかどうかを検証したエビデンスは少ない。

今回,矢野氏らは,OBP,HBP,ABPMと心血管バイオマーカーを検討した結果,HBPおよびABPMによる夜間血圧をOBPと併せて評価することにより,高血圧治療に伴う心血管バイオマーカーの変化を有意に予測できることを明らかにした。 

 
■SBPを評価指標とし5つの変量モデルで検討
矢野氏らは,高血圧患者252例を対象に,カンデサルタン(±サイアザイド系利尿薬)による治療前および治療6か月後の血圧と心血管バイオマーカーとの関連を検討した。

患者の平均年齢は68.2±13.0歳,男性は103例(41%)であった。高血圧治療期間中央値は2.0(0.0~10.0)年で,スタチンを使用して いたのは47例(19%),2型糖尿病を41例(16%),冠動脈疾患を16例(6%),脳血管疾患を7例(3%)が有していた。

血圧はOBP,HBP,ABPMによる測定値を評価,また心血管バイオマーカーとして,尿中アルブミン排泄量(UAE)と脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)を測定した。

HBPは,上腕カフ・オシロメトリック法に基づく小型自動血圧計を使い,朝・晩,1機会に3回ずつ測定した。ABPMとして,測定開始時間,測定間隔,測 定時間(24~48時間)などをあらかじめプログラムして,自動血圧計により睡眠時,仕事中を含む自由行動下の血圧を測定した。

夜間血圧は,午前2時,3 時,4時の3機会に各1回自動測定した。

今回の解析には,血圧の評価指標としてSBPを用い,次の5つの変量モデルで検討した。
1) 診察室SBP
2) 診察室SBP+家庭SBP
3) 診察室SBP+家庭SBP+24時間SBP*
4) 診察室SBP+家庭SBP+昼間SBP*
5) 診察室SBP+家庭SBP+夜間SBP*
(*ABPMによる測定値)

6か月間の治療介入により,OBP,HBP,24時間BPおよびUAE値はいずれも有意に低下した(いずれもp<0.05 )。

BNPは利尿薬を使用した患者においてのみ低下した(p=0.003)。

 
■夜間SBPは治療中のUAE値とBNP値の予測に有用
 家庭SBPと夜間SBPの変化は,それぞれ独立して有意に,治療によるUAE値の変化を予測した(いずれもp<0.05 )。
これらは診察室SBPよりも優れた予測因子であった。
昼間SBPはUAEの予測因子ではなかった。

一方,治療に伴うBNP値の変化は,夜間SBPの変化により有意に予測された(p<0.05 )。

これは診察室SBPより優れた予測因子であった。
家庭SBP,昼間SBPはBNPの予測因子ではなかった。

治療によりSBPの3指標(OBP,HBP,夜間)すべての低下を達成した患者(A群)は,そうでない患者(B群)より,UAEの低下率が有意に大きかった(p=0.001)(図1)。


 
また,SBPの2指標(OBP,夜間)の低下を達成した患者(C群)は,そうでない患者(D群)より,BNPの低下率が有意に大きかった(p<0.05)(図2)。 
 


 
以上の結果から矢野氏は,高血圧治療に伴う心血管バイオマーカーの変化の予測に,治療中の家庭SBPおよびABPMによる夜間SBPを診察室SBPと併せて評価することが有用であると結論した。
  (メディカルライター 坂井順子)
 
 
■監修者(苅尾七臣主任教授)のコメント
カンデサルタンを用いた降圧療法による心血管バイオマーカーの改善を家庭血圧とABPMにより予測:J-TOP研究
本研究は,カンデサルタンを用いた降圧療法による心血管バイオマーカーの改善には,家庭血圧とABPMによる夜間血圧の低下が重要であることを示した。

家庭血圧に基づく降圧療法の心血管バイオマーカーに与える影響を検討したJ-TOP(Japan Target Organ Protection)研究1)に おいて,ABPMを施行した252名の高血圧患者のサブ解析である。
J-TOP研究では,家庭血圧に基づきカンデサルタンの朝または就寝時投与を行い,脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)と尿中アルブミン排泄量(尿中アルブミン/クレアチニン比:UACRを測定)の変化を検討した。

本研究から,UACRとBNPの低下には,ともに夜間血圧の低下が重要であることが示された。
また,診察室血圧,家庭血圧,さらに夜間血圧のすべての血圧 がコントロールされている群では,いずれかがコントロールされていない群に比較して,有意にUACRとBNPレベルが低下していた。
ABPMによる血圧指 標では,昼間の血圧に比較して,特に夜間血圧の下降が重要であった。

これまでの研究において,夜間高血圧は慢性腎臓病や左室肥大のリスクになることがよく知られている。
本研究から,ARBを用いた降圧療法により,夜間から早朝にかけて亢進しているレニン・アンジオテンシン系を十分に抑制し,夜間血圧を低下させておくことが,より有効な腎・血管保護につながるといえる。
  
引用文献
   1) J Hypertens 2010;28(7):1574-1583


監修:自治医科大学内科学講座循環器内科学部門 ・苅尾七臣主任教授
 
<関連サイト>
 J-TOP試験
診察室外血圧は降圧治療中の心血管バイオマーカーの変化の予測に有用:J-TOP研究 
早朝高血圧と心血管リスク
 
出典
http://www.biomedisonline.jp/aha2011hl/11407/Poster.php
 
読んでいただいて有り難うございます。
コメントをお待ちしています。
その他
「葦の髄」循環器メモ帖
http://yaplog.jp/hurst/
(「葦の髄から循環器の世界をのぞく」の補遺版
ふくろう医者の診察室 
http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き) 
井蛙内科/開業医診療録(4)2009.10.16~
http://wellfrog4.exblog.jp/
井蛙内科/開業医診療録(3)~2009.10.15
http://wellfrog3.exblog.jp/
井蛙内科/開業医診療録(2)2008.12.10~
http://wellfrog2.exblog.jp/
井蛙内科/開業医診療録~2008.5.21 http://wellfrog.exblog.jp/ 
(内科医向き)
「井蛙」内科メモ帖
http://harrison-cecil.blog.so-net.ne.jp/
(「井蛙内科開業医/診療録」の補遺版)
があります。 
 

 


   
 

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安定冠疾患への初期治療、ステント留置に利益なし
最新の系統的レビューとメタ分析の結果
安定冠動脈疾患患者に対する初期治療として、冠動脈ステント留置と薬物療法を適 用しても、薬物療法のみの場合に優る利益は得られないことが、米Stony Brook大学のKathleen Stergiopoulos氏らが行った最新のメタ分析で明らかになった。論文は、Arch Intern Med誌2012年2月27日号に掲載された。

急性冠症候群の患者に対する経皮的冠動脈インターベンション(
PCI)は、死亡と非致死的心筋梗塞のリスクを低減する。
しかし、安定冠動脈疾患の治療におけるPCIの役割については議論が続いている。

安定冠動脈疾患に対する初期治療として、PCIを行った場合と薬物療法を適用した場合の転帰を比較したメタ分析は複数行われているが、生存利益に関する一 貫した結果は得られていない。

分析対象となった研究の一部は1980~90年代に患者登録を行っており、その時代に適用された介入法と、現在一般に用いられている方法は大きく異なる。
当時は、患者の多くにバルーン血管形成術が適用され、スタチンやACE阻害薬、ARBなどは利用できなかった。

著者らは、現行の介入法の利益を、系統的レビューとメタ分析を行って評価する必要があると考えた。

安定冠動脈疾患患者に対する初期治療に、冠動脈ステント 留置術と薬物療法を用いた場合と、薬物療法のみを用いた場合の転帰を比較していた全ての無作為化試験を選出し、死亡、非致死的心筋梗塞、予定外の血行再建 術施行、狭心症への影響を比較した。

MEDLINEに1970年から2011年9月までに登録された無作為化試験のうち、安定冠動脈疾 患患者を対象に「PCI+薬物療法」と「薬物療法のみ」を比較し、死亡や非致死的心筋梗塞などの発生を報告していた、追跡期間が1年以上の試験を抽出した。

PCIにおけるステント使用率が50%未満の試験は除外した。

個々の試験から、全死因死亡、非致死的心筋梗塞、予定外の血行再建術(PCIまたは冠動脈バイパス術〔CABG〕)施行、狭心症に関するデータを抽出し、ランダム効果モデルを用いてサマリーオッズ比を求めた。

条件を満たしたのは8件の臨床試験(TOAT、MASS II、DECOPI、OAT、COURAGE、JSAP、BARI2Dと、Humbricht氏らの2004年発表の試験)だった。

これらは、97年から 05年までに7229人の患者を登録していた。
うち3617人がステント+薬物療法に、3612人が薬物療法のみに割り付けられていた。

 
3件は安定した状態にある心筋梗塞後の患者を、5件は安定狭心症の患者と負荷試験で虚血が出現した患者のいずれかまたは両方を登録していた。
8試験のそ れぞれの登録患者に占める男性の割合は68%から100%で、糖尿病患者の割合は14%から100%だった。
ステント+薬物療法に割り付けられた患者のうち、実際にステント留置を受けたのは72%から100%だった。
薬剤溶出ステントが適用されていたのは、3件の試験のステント群の2.7%から35%の患 者だった。

薬物療法には主にアスピリン、β遮断薬、ACE阻害薬、スタチンが用いられていた。

JSAP試験は、β遮断薬、ACE阻害薬、スタチンが投与された患者の割合が他の試験に比べ低かった。

加重平均追跡期間は4.3年になった。

全死因死亡は649人に発生。内訳は、ステント+薬物療法群3617人中322人(8.9%)と、薬物療法群3612人中327人(9.1%)となった。

薬物療法と比較したステント+薬物療法のオッズ比は0.98(95%信頼区間0.84-1.16、P=0.83)で、有意差を示さなかった。

非致死的心筋梗塞は、ステント+薬物療法群が3617人中323人(8.9%)、薬物療法群が3612人中291人(8.1%)に発生。

オッズ比は1.12(0.93-1.34、P=0.22)だった。

予定外の血行再建術はステント+薬物療法群が3617人中774人(21.4%)、薬物療法群が3420人中1049人(30.7%)に行われた。

オッズ比は0.78(0.57-1.06、P=0.11)になった。

狭心症に関するデータが得られたのは4122人の患者。狭心症発生はステント+薬物療法群が2070人中597人(29%)、薬物療法群が2052人中 669人(33%)だった。

オッズ比は0.80(0.60-1.05、P=0.10)となり、やはり有意差は見られなかった。

サブグ ループ解析でも、心筋梗塞後の患者、狭心症と虚血のいずれかまたは両方がある患者のいずれにおいても、ステント群と薬物療法群の、死亡、予定外の血行再建 術施行、狭心症の発生率は同様だった。

非致死的心筋梗塞のオッズ比は、心筋梗塞後の患者では、1.49(1.00-2.21、P=0.05)となり、ステ ント+薬物療法群のリスク上昇傾向を示した。
一方、狭心症と虚血のいずれかまたは両方がある患者では1.04(0.84-1.28)で、有意差はなかっ た。

安定冠動脈疾患患者に対する初期治療におけるステント留置の利益を示すエビデンスは得られなかった。

得られた結果は、安定冠動脈疾患の患者には、速やかにステント留置を行うのではなく、まずは薬物療法を適用する、という治療戦略を支持した。

原題は「Initial Coronary Stent Implantation With Medical Therapy vs Medical Therapy Alone for Stable Coronary Artery Disease: Meta-analysis of Randomized Controlled Trials」、概要は、Arch Intern Med誌のWebサイトで閲覧できる。

 

出典 NM online 2012.3.14
版権 日経BP社

 

 

 
遠くに見える建物はヒルトン・ハワイアン・ビレッジ
ヒルトン・ハワイアン | Hilton.co.jp
手前はフォート・デ・ルッシー公園の一角にある、アメリカ陸軍博物館。 
「アメリカ陸軍博物館」でハワイの歴史を学ぼう ワイキキ@オアフ島 ...
現地時間 2012.3.17  10:39 撮影

 

 

 

 

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徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部脳神経外科学分野教授の永廣信治氏の司会の下,コメンテーターとして東京都済生会中央病 院神経内科部長・脳卒中センター長の星野晴彦氏を迎えて,斯界のエキスパート4氏による討議がなされ,今後の方向性が示された。
 
急性期から慢性期の非心原性脳梗塞治療を考える
日本人の死因の上位を占める脳血管障害であるが,近年,特に非心原性脳梗塞の救命率が向上している。
現在,急性期を乗り切った後の慢性期の再発予防を見据えた長期的な対応が求められている。
徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部脳神経外科学分野教授の永廣信治氏の司会の下,コメンテーターとして東京都済生会中央病 院神経内科部長・脳卒中センター長の星野晴彦氏を迎えて,斯界のエキスパート4氏による討議がなされ,今後の方向性が示された。
 

急性期治療の今日的基本戦略

星野 (非心原性脳梗塞急性期の治療について)
急性期の保存的治療・薬物療法については,発症3時間以内に投薬可能で,重症度が高く禁忌項目がない症例には,病型を問わず,rt-PA静注療法(rt-PA)血栓溶解療法を行います。
アテローム血栓性脳梗塞には,rt-PA適応例ではその24時間後から,適応がなければ最初から経静脈的にアルガトロバンを用い,同じ要領で,純粋なラクナ梗塞の場合はオザグレルを点滴で用います。
 
さらに,エダラボンや抗浮腫薬なども用います。
経口抗血小板薬は,大半のアルガトロバン・ベースの症例では当初から併用しますが,抗血小板作用を有するオザグレル投与例では経口投与が可能になり次第切り替えるようにします。
最終的に慢性期の再発予防として抗血小板薬を残すのが原則だと思います。
 
抗血小板薬は,クロピドグレル(商品名:プラビックス®)を,アルガトロバン減量のタイミングに合わせて十分な薬効が得られるように早くから投与するのが理にかなっていると思います(図1)。
アスピリン製剤(ASA)とクロピドグレルの併用に関しては,いくつかの大規模臨床試験でその有用性が示唆されています。
 
図表
 
徳島県での急性期治療の現状
里見 
徳島大学病院では,全国に先駆けて1999年にstroke care unit(SCU)を開設し,2005年に脳卒中センターに発展しました。
チーム構成は,永廣先生をトップに,脳外科,神経内科,神経放射線科,集中治療部,その他のコメディカルの協力を得て運営しています。
SCUの意義として,脳卒中の救急医療の実践,病態や問題点などを把握し研究を推進していくことは もとより,地域医療に広げていくことと,医学教育への貢献が挙げられます。
 
当センターの病態診断の特徴としては,24時間体制で最初からMRIを撮像し,拡散強調画像と灌流画像のミスマッチを積極的に把握するようにして います。
2005年以降,rt-PAが認可されファーストチョイスとなっていますが,2010年には全国平均から見ても高い13%にrt-PAを適用することができました。
また,rt-PA非適応例にも,きちんとした病態診断の下で外科的治療・血管内治療による血行再建に積極的に取り組んでいます。
 
脳梗塞のrt-PA後,あるいはその不適応例の治療では,抗血小板薬を早期から可能な限り投与していきます。
特に最近では,脳血栓症とラクナ梗塞の中間のBranch atheromatous disease(BAD)の病態に対してもアルガトロバンをベースに抗血小板薬も追加します。
超急性期の抗血小板薬に何を使用するかというと,現時点では まずASA 200mg/日を投与していますが,血管内治療例などで抗血小板薬を併用したい場合,当初からクロピドグレルもしくはシロスタゾールを追加します。特に糖 尿病の合併,もしくは全身血管病の合併例では,クロピドグレルの使用を考慮する方向で臨んでいます。
 
ただ,出血性の問題もあり,2剤を長期併用するのはリスクが高いため,超急性期のASA+αが基本ですが,微小出血多発例などにはASAの代わりにシロスタゾールを使うようにしています。
最近はCOMPASS試験などに見られるように,頭蓋内出血の頻度が低いクロピドグレルの使用を考慮します(図2)。
 
図表
 
阿川 
当院では,3時間以内の超急性期については,rt-PA適応例には積極的に使用するようにしています。
画像診断は,他科の宿直 医が診る場合もあり,まずCTを撮る場合が多いです。
MRIを用い,できるだけ速やかに徳島県下で決められたプロトコルにのっとって脳梗塞診断を行いま す。
 
薬物療法は静注療法を基本とし,ラクナ梗塞,アテローム血栓性脳梗塞のいずれにもオザグレルを原則2週間投与しています。
BADのような進行性の脳卒中には,オザグレルにアルガトロバンを追加するように考えています。
 
経口抗血小板薬については,できるだけ早期に(入院後1週間以内)開始し,ASA,シロスタゾール,クロピドグレルの3剤から症例に応じて選択しますが,主幹動脈のアテローム血栓性の場合はクロピドグレルを使うようにしています。
 
一方,外科的治療・血管内治療についても,必要な場合にはできるだけ早期に行おうと考えています。
 
新野 
当科での急性期脳梗塞の治療方針は,まずERで病歴聴取をして,バイタルサインをチェックし,神経学的な重症度を評価します。
同時に,輸液,血液検査,心電図検査を行った後,MRIあるいは胸部写真を撮ります。
中等症以上で禁忌事項がなく3時間以内の適応症例であれば,全例 ICUでrt-PA治療を行います。
これ以外の症例では,病型別に治療法を選択しますが,主として救命センターで治療を行います。
 
心原性の中大脳動脈のM1梗塞や脳底動脈塞栓症で,rt-PAが無効かつ病巣がなお限局性の場合,あるいは発症から3〜8時間程度で広範な早期虚血性変化の見られない場合は,血管内治療も考慮します。
 
高瀬 
わたしの薬物治療,保存的治療では,まずはオザグレル,ASA,チエノピリジン系薬剤など,抗血小板薬を駆使しています。
もちろん,フリーラジカル・スカベンジャーも投与します。
また,比較的大きい,上下に幅が広いラクナ梗塞はBADへの進展が懸念されるため,ヘパリンも積極的 に使用します。
もちろん,その例にもASAやクロピドグレルを併用もしくは単剤で用います。
 
それ以外に,神経超音波検査にも取り組んでおり,その所見からは,心原性ではない小さな塞栓症,おそらく大動脈弓のアテロームではないかと思われる症例があり,その一部がBADの中に隠れている可能性や,早期の再発例では同じ血管系へ血栓が飛ぶことが多いことなどが示唆されています。

 

慢性期治療のポイント
星野 
脳卒中治療ガイドライン2009では,非心原性脳梗塞の再発予防について,「抗血小板薬の投与が推奨される」(グレードA)と し,ASA,クロピドグレル,シロスタゾール,チクロピジンなどが挙げられています。
最近の臨床試験の結果からは,クロピドグレルの安全性の高さ,特に出 血リスクが低いことが示されています(図2)。
ただし,コスト面ではASAが有利であり,冠動脈疾患などを有する症例では循環器医がASAを強く推奨していることが多く,実際問題として悩ましいところです。
臨床試験結果からは,糖尿病の合併例,あるいは血管イベント既往例ではクロピドグレルの優れた効果が認められています〔Lancet 1996; 348: 1329-39,Drugs 2000 Aug; 60(2): 347-377,Stroke 2004; 35: 528-532〕。
最近,欧米ではジェネリック医薬品への移行が進んでいることもあり,英国国立医療技術評価機構(NICE)のガイダンスでは,クロピドグレルは,血管閉塞性疾患の発症予防を目的として,虚血性脳卒中への投与が推奨されています。
 
抗血小板薬を選ぶ上でもう1つ重要なのはコンプライアンスです。
最近,棚橋先生らの検討から,脳梗塞新患患者での抗血小板薬の服薬継続率はクロピ ドグレルが最も高い,すなわち忍容性が高いことが示されました(棚橋紀夫: 新薬と臨牀 2011; 60: 707-714)。
 
また内山先生からも,抗血小板薬の脱落率に関する大規模臨床試験のデータをまとめるとクロピドグレルの脱落率が10%前後と低いことが示されています。
このような点を考慮して,脳梗塞の再発予防には,シロスタゾールかクロピドグレルをまず使うようにしています。
 
里見 
ASAで再発が予防され,副作用の問題がなければ継続できますが,何かイベントが発生すれば変えることになります。
ただ,その見極めが難しく,できれば急性期から慢性期を見据えてより有用な薬剤を選ぶ必要がありそうです。
 
阿川 
アテローム血栓性であれば主にクロピドグレルを選ぶ方向だろうと思います。
 
新野 
やはり,有効性と安全性の面からクロピドグレルを使うことが退院時処方では圧倒的に多いです。
 
出典 MT pro  2012.3.15
版権 メディカル・トリビューン社

 

<自遊時間 その2> 
田辺三菱製薬のMRさんが、講演会の案内のついでに「2011年版 循環器大規模臨床試験要約集 」を持って来てくれました。
厚労省(実は財務省?)が進(勧)めているジェネリックに走れば、こういった学術的恩恵は享受出来なくなります。
ジェネリックに切り替えれば、医師自体が「ジェネリック医者」になってしまうことを私は恐れます。
国側はどう考えているのでしょうか。
医療に関しては部外者の寄せ集めの財政制度等審議会や行政刷新会議などを含め国側は、もちろん、こういったことは一切考えていないはずですが。

 

<自遊時間 その2>
ハワイに行ってちょっとビックリしたことがあります。
いわゆる「に本車」 も日本とデザインが違うクルマが走っていました。
そしていずれも日本国内 のクルマよりデザインがいいのです。
ひょっとして米国製日本車なのでしょうか。
トヨタのマークをつけた「便座」 というクルマを見つけた時には日本ではあり得ない名前だな、と思いました。
 
 
 
 
 
現地時間 2012.3.17 12:40 撮影

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ARISTOTLE試験サブ解析

戯れ言たれる侏儒 / 2012.03.28 00:58 / 推薦数 : 0
新規抗凝固薬apixabanの日本人データが発表
有効性・安全性ともにワルファリンに勝る,ARISTOTLE試験サブ解析
apixabanは,ダビガトラン(トロンビン阻害薬)やリバーロキサバン(Xa阻害薬)に続いて開発中の新規経口抗凝固薬(Xa阻害薬)で,非弁膜症性心房細動患者の脳卒中予防におけるワルファリンへの優位性がARISTOTLE試験で明らかにされている。
第76回日本循環器学会学術集会(3月16~18日,福岡市)では,同試験に参加した日本人300人余りのデータが明らかにされた。
日本の試験統括を行っ た後藤信哉氏(東海大学内科学系教授)は,サンプルサイズが小さく今回の解析で結論付けることはできないとしているが,同試験全体の結果と同様に,ワルファリンに勝るapixabanの有効性と安全性の傾向が日本人症例でも示唆された。
 
試験全体より脳卒中リスク低い患者群,登録例の完全追跡が達成
ARISTOTLE試験は,非弁膜症性心房細動患者1万8,201例をワルファリン群〔標的プロトロンビン時間国際標 準化比(INR)2.0〜3.0〕とapixaban群にランダムに割り付けた二重盲検ダブルダミー試験。
apixaban群の用量は5mg×2/日で,
(1)80歳以上,
(2)体重60kg以下,
(3)血清クレアチニン1.5mg/dL以上
―の2項目に該当すれば2.5mg×2/日に減量した。
 
Intention to treat解析による同試験全体の1次評価項目の結果は,脳卒中と全身性塞栓症の発生がワルファリン群1.60%/年に対してapixaban群 1.27%/年,国際血栓止血学会(ISTH)基準による大出血の発生がワルファリン群3.09%に対してapixaban群2.13%と,いずれの評価 項目でもapixabanの優位性が示された〔順にハザード比(HR)0.79,95%CI 0.66~0.95,同0.69,0.60~0.80〕。
 
今回の解析対象は同試験に参加した日本人336人(40施設)。

日本人データの特徴は,CHADS2スコア1点が多く,脳卒中リスクが試験全体よりも低い患者群である点。
特筆されるのは,日本では登録例の完全追跡が達成された点だ。
 
平均追跡期間は2.1年で,解析の結果は以下の通り。
有効性評価の脳卒中と全身性塞栓症の発生率がワルファリン群 1.67%/年に対してapixaban群0.87%/年。総死亡も3.02%/年,1.74%/年とapixaban群で下回り,有意差を持ってリスク低下が示された試験全体と一貫した結果であった。
 
安全性評価の大出血の発生は,ワルファリン群5.99%/年に対してapixaban群1.26%/年と少なく,消化 管出血や臨床関連出血でも同様の結果だった。
なお,ワルファリン群ではいずれの出血評価項目でも,日本の発生率が試験全体の発生率を上回っていたが,apixaban群では同等か下回っていた。
 
多くの出血イベントは6カ月以内に発生
以上の項目については,サンプルサイズおよびイベント発生数が十分でないために統計解析が行われなかった。ただし,す べての出血事象の発生率は,ワルファリン群40.13%/年,apixaban群20.95%/年と高く,Kaplan-Meier曲線よる統計解析が行われた。
その結果,ワルファリン群に比べてapixaban群は40%ハザード比が低下しており(95%CI 0.42~0.85),ほとんどの出血事象が開始6カ月以内に発生していることがわかった。
 
脱落率は,apixaban群18.0%に対してワルファリン30.0%とapixaban群で少なかった。
同試験全体と比べると,apixaban群では日本での脱落が少なく,ワルファリン群では日本でやや多い結果であった。
 
後藤氏は「標的INRが2~3のワルファリン治療に比べたapixabanによる治療の結果は,日本でも同試験と違っていなかった」と述べるにとどめたが,同試験では安全性委員会も設置した評価体制を取っており,データの信頼性は高いとしている。
 
非弁膜症性心房細動患者で良好な結果,急性冠症候群患者には?
指定討論者としてコメントした熊本大学大学院循環器病態学教授の小川久雄氏は,ARISTOTLE試験全体の報告を「(apixabanの)副作用が少なく,かつ有効で,良い意味で驚いた」と振り返り,日本でも同様の結果が確認された点は意義深いとしている。
 
今回,ワルファリン群での出血リスクが試験全体のリスクを上回っていたが,実際の出血発生数が多かったのか,レポート数が多かったのかは定かでは ない。
出血評価についての今後の課題として「現在,ISTH基準やTIMI出血分類などさまざまな基準があるが,日本人にふさわしい出血基準が必要ではな いか」と提案した。
 
非弁膜症性心房細動患者以外でapixabanの有効性を検証した第Ⅲ相試験としては,急性冠症候群患者の虚血性心イベント予防を目的に行われたAPPRAISE-2試験が挙げられるが,安全性への懸念から早期中止となっている。
APPRAISE-2試験の日本の試験統括者でもある同氏は,ARISTOTLE試験の良好な結果を受け,用量を再考して再実施してもよいのではないかとの見解を示した。
(田中 かおり)
出典  MT Pro 2012.3.19
版権  メディカルトリビューン社

 

<関連サイト>
ARISTOTLE試験を分析
<自遊時間>
埼玉大学で前代未聞の「留年式」 暗いイメージを笑い飛ばす
■国立大学の埼玉大学で、卒業式ならぬ「留年式」が開かれた。学生主体の有志団体が「暗いイメージを抱かれがちな留年」を笑い飛ばそうと企画、運営したものだ。当日は学長自ら式辞を送って、留年生を激励。
笑いたっぷりの式の中で、参加者全員が「来年こそは卒業」と誓った。
■「これより平成23年度、埼玉大学留年式を開催いたします」
 開式の辞の直後、なぜか鳴り響くファンファーレ。
司会者が自己紹介を始める。
「教養学部4年、来年から5年」と言うと、どっと笑いが起きた。企画した学生も留年が決まっていたのだ。
■続いて留年生の代表1人に、卒業証書の代わりとして「留年記」が授与された。
司会者が「本学所定の課程を修められず本学を留年したことを認めここに証す」 と読み上げ、手渡す際に「残念です」と告げるとまたしても笑いの渦、後に拍手喝さいだ。
受け取った代表者も、満面の笑みを見せた。
■「サプライズ」となったのは、学長が式辞を寄せたことだ。本人は姿を見せなかったものの、司会者は「本物」だと繰り返し強調した後、代読を始めた。上井学長は「このような式は、おそらく 埼玉大学創立以来初めてでしょう」としつつ、「みなさんのユーモア精神に、たくましささえ感じてしまいます」と評価した。一方で、「留年自体を歓迎しているわけではありません」とくぎを刺すのも忘れない。
ただし「中には、大学は豊かな知に満ちていて4年で卒業するにはもったいない、もっと吸収したいと自らの意思で留年する人もいるでしょう」と理解も示す。
■学長は、「留年できるのはむしろ幸運かもしれません。4年で卒業する学生には経験できない、留年生ならではの濃密で有意義な1年を過ごしてください」とエールを送った。
■ こんな場面もあった。
ミュージシャン・尾崎豊さんの代表曲「卒業」を替え歌にして合唱したのだ。実際の歌詞にある「ひとつだけ解(わか)ってたこと、この支配からの卒業」との部分を、「ひとつだけ解ってたこと、今年4月からの留年。来年こそは卒業」と変えて笑い合った。
式の最後にも、大学の校歌をわざわざ短調のメロディーに直して全員で斉唱。
本来なら力強く響き渡るであろうサビの「埼玉大学、埼玉大学わが母校」の部分の歌声が、何ともうら悲しく会場内に漂った。
http://www.excite.co.jp/News/society_g/20120326/JCast_126668.html
 
 
 
 
ホノルル空港の青空 現地時間 2012.3.17 9:42
 
 
 

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J-MELODIC試験

戯れ言たれる侏儒 / 2012.03.27 00:10 / 推薦数 : 0
長時間作用型利尿薬は心不全の予後改善に寄与する可能性
ループ利尿剤の長時間作用型製剤が短時間作用型製剤に比べ、心不全患者の予後に対して、より優れた改善効果があることが報告された。
長時間作用型利尿薬アゾセミドと短時間作用型利尿薬アフロセミドを比較した臨床試験J-MELODIC (Japanese Multicenter Evaluation of Long- versus short-acting Diuretics In Congestive heart failure)の結果で、兵庫医科大学の増山理氏が、3月16日から18日に福岡で開催された第76回日本循環器学会(JCS2012)のLate Breaking Clinical Trialsセッションで発表した。

日本の慢性心不全治療ガイドラインにおいて、利尿薬は収縮不全、拡張不全のいずれについてもクラス1の選択薬に位置付けられている。
一方、観察研究ではあ るものの、利尿薬投与が心不全患者の予後不良因子であるとの報告もある。
その機序として、利尿薬投与による血圧や循環血液量の低下に伴い、血漿中のレニン やノルエピネフリン、バソプレシンなどの心刺激体液因子が活性化することの影響が推察されてきた。

増山氏らは、利尿薬を使用する際、血 圧、循環血液量、交感神経活性の変動が繰り返されることが予後に影響すると考えた。
そこで、長時間作用型ループ利尿薬であれば、短時間作用型に比べて変動 の波が緩やかになり、予後改善にも期待できるのではないかとの仮説を立て、「利尿薬のクラス効果に基づいた慢性心不全に対する効果的薬物療法の確立に関する多施設共同臨床研究」として、J-MELODICを開始した。

対象はNYHA心機能クラス分類II/III度で、6カ月以内にフラミ ンガムの心不全診断基準を満たした症例とし、拡張不全も含めた。
年齢は20歳以上。
ループ利尿薬を使用しており、ACE阻害薬、ARB、β遮断薬、ジギタ リス、アルドステロン拮抗薬などによる標準治療を1カ月以上受けていることを基準とした。

除外基準は、糖尿病および高血圧のコントロール不良、症候性の低血圧症、血清クレアチニン>2.5mg/dL、急性冠症候群、悪性疾患など循環器疾患以外の重症疾患などとした。

2006年6月から2008年8月にかけ、上記の基準を満たすうっ血性心不全患者320例を登録した。
検討は前向き無作為化オープンラベル結果遮蔽試験 (PROBE)法を用い、対象患者をフロセミド40mg投与群(160例)とアゾセミド60mg投与群(160例)に無作為に割り付けた。
8週間の調整期 間を設けて各患者における用量調整を実施した上で、フォローアップを開始した。

主要評価項目は、心血管死または心不全による予期せぬ入院。副次評価項目は、総死亡、心不全の悪化、BNPの30%以上の上昇、心不全による予期せぬ入院または治療の変更とした。

フォローアップは1年ごとに実施し、最後の症例登録から2年後まで継続した。
その間、治療拒否や患者希望による治療法変更などがあり、当初の割り付け通り に2年間のフォローアップを終えたのは、フロセミド群が133例、アゾセミド群が131例だった。
しかし解析は320例全例を対象に実施した。

年齢、男女の割合、喫煙習慣、NYHAクラス、SASスコア、血圧値、心拍などの患者背景には、両群間で差はなかった。
使用薬物については、両群ともに ACE阻害薬・ARBが約7割、β遮断薬が約5割、ジギタリスが約2割、アルドステロン拮抗薬とワルファリンが、ともに約4割で使用されていた。

主要評価項目の心血管死または心不全による予期せぬ入院では、フロセミド群に対するアゾセミド群のハザード比が0.55(95%信頼区間:0.32-0.95、P=0.03)となり、45%の有意なリスク低減が示された。

副次評価項目のうち、心不全による予期せぬ入院または治療の変更においても、フロセミド群に対するアゾセミド群のハザード比は0.60(95%信頼区 間:0.36-0.99、P=0.048)となり、40%の有意な減少が示された。
総死亡では両群間に有意な差を認めなかった。

さらに 脱落例を除いた解析では、アゾセミド群は主要評価項目のハザード比が0.47(95%信頼区間:0.26-0.83、P=0.01)、副次評価項目のうち 心不全による予期せぬ入院または治療の変更で0.52(95%信頼区間:0.30-0.90、P=0.02)と、より著明かつ有意な効果が示された。

安全性については、低カリウム血症、低血圧、ジギタリス毒性、発疹、関節炎などを数例認めたにとどまった。

増山氏は、本検討において、アゾセミドが心血管死または心不全に伴う予期せぬ入院を減少させる可能性を示したことを踏まえ、「短時間作用型の利尿薬の長時間作用型への切り替えにより、うっ血性心不全患者の予後改善が期待できる」と結論した。

出典 NM online 2012.3.19
版権 日経BP社

 

 

<関連サイト>
J-MELODIC
慢性心不全とループ利尿剤 その2(2/2)

 

<自遊時間 その1>
金星・月・木星、スカイツリーと光の競演 西の空で天文ショー

直線に並んだ(上から)金星、月、木星とスカイツリー=東京都墨田区で2012年3月26日午後6時42分、三浦博之撮影
http://mainichi.jp/select/wadai/graph/20120326/3.html
私的コメント;数日前にハワイ・マウイ島の標高3000m超のハレアカラ山頂で金星と木星が同じ位置関係で見えたのが何だか不思議です。ガイドが望遠鏡で木星の4つの衛星を見せてくれました。「
ハレアカラ」の名前の通りの快晴、日没前にブロッケン現象も見れたのはいい冥途への土産になりました)
ブロッケン現象 - Wikipedia

 
<自遊時間 その2>
昨日、某外資系のMRと面接。
「今年度の予算が余ったので今月中(つまりは今週中)一度食事でもいかがですか」 との言葉。
一度もお誘いのかかったことのないメーカーです。
即座にお断りしました。
前にも書きましたが、同じく(他の)外資系のMRからは、「4月から、講演をしていただいてもその後の食事はありませんよ。お弁当なら用意できます」といわれています。

 

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重症川崎病へのステロイド初期併用で冠動脈病変リスクが低下
日本で行われたRAISE試験の結果
重症の川崎病患者に対する免疫グロブリン(γグロブリン)+アスピリンの標準的な初期治療に、ステロイドを追加すると、冠動脈病変の発生を抑制できることが、群馬大学医学部の小林徹氏らが行った無作為化試験で明らかになった。
論文は、Lancet誌電子版に2012年3月8日に掲載された。

川崎病は原因不明の全身性の血管炎症疾患で、冠動脈瘤の発生を誘導するという特徴がある。

患者の多くは幼児と小児だ。
免疫グロブリンの高用量静脈内投与とアスピリンの併用は、炎症を軽減し冠動脈病変の発生リス クを低減する。だが、この治療を完了しても、患者の約20%に発熱の持続または再発が見られ、それらの患者には冠動脈病変が発生しやすいことが知られてい る。

重症の川崎病患者に対するステロイドの利益を示唆した報告はこれまでにもあった。

著者らは、免疫グロブリン療法に反応しない可能性が高い川崎病患者に当初からプレドニゾロンを追加すれば、免疫グロブリン療法のみの場合に比べて冠動脈病変の発生率を減らせるのではないかと考え、オープンラベルの多施設試験RAISEを行った。

日本国内の74病院で、08年9月29日から10年12月2日まで、群馬大学が作成したリスクスコアが5ポイント以上となり、免疫グロブリンを用いた初期治療に反応しない可能性が高いと判断された川崎病患者を登録。

再発例や既に冠動脈病変のある患者などは除外した。

最小化法を用いて免疫グロブリン療法(IVIG群、123人)または免疫グロブリン療法+プレドニゾロン(IVIG+PSL群、125人)に割り付けた。

免疫グロブリン療法は、免疫グロブリン2g/kgを24時間静脈内投与し、同時にアスピリン30mg/kg/日を開始。解熱後はアスピリンを3~5mg/kg/日に減量して28日以上投与した。

プレドニゾロンは、当初は2mg/kg/日を1日3回に分けて静注し、5日後に解熱していれば経口投与に変更可とした。CRP値が正常化(5mg/L以下)してから、15日かけて減量・中止した(5日間ごとに2mg/kg/日、1mg/kg/日、0.5mg/kg/日と減量)。

プレドニゾロン投与中は、 ファモチジン0.5mg/kg/日を投与した。

 患者と担当医は非盲検だが、心エコー検査を実施し読影する小児心臓医は盲検化した。

主要エンドポイントは試験期間中の冠動脈病変の発生とし、心エコーにより検出した。

冠動脈病変の定義は、
(1)冠動脈管腔の最大径が、5歳未満は 3.0mm超、5歳以上は4.0mm超、
(2)冠動脈管腔の内径が周囲に比べ1.5倍以上に拡大した部分が存在、
(3)内腔が明らかに不整
―のいずれかを 満たす場合とした。
2次エンドポイントとして、右冠動脈、左冠動脈主幹部、前下行枝のZスコアと冠動脈の最大Zスコアなどを1週時、2週時、4週時に測定し、比較した。
分析はintention-to-treatで行った。

組み入れ条件を満たしていなかった患者6人を除外し、242人(IVIG+PSL群121人、平均年齢は生後31カ月、IVIG群121人、同30カ月)を分析対象にした。

試験期間中の冠動脈病変発生は、IVIG群が28人(23%)、IVIG+PSL群が4人(3%)で、リスク差は0.20(95%信頼区間 0.12-0.28、P<0.0001)と有意だった。治療必要数は5だった。

治療開始から4週の時点でも両群間の差は有意だった。
それぞれ15人 (13%)と4人(3%)で、リスク差は0.09(0.02-0.16)、治療必要数は10となった。

1週時、2週時、4週時の右冠動脈、左冠動脈主幹部、前下行枝のZスコアとそれぞれの最大値はすべてIVIG+PSL群で有意に低かった(Mann-Whitney U検定のP値に基づく)。

IVIG+PSL群では解熱までに要した日数が有意に短く、レスキュー治療の必要性も低く、CRP値の低下も早かった。

重症有害事象の発生率に差はなかった。

IVIG+PSL群では、2人に総コレステロール値の上昇、1人に好中球減少症が見られた。
IVIG群では、1人が総コレステロール値上昇を、1人が非閉塞性血栓症を経験した。
全ての有害事象は治療することなく改善した。

標準的に用いられる免疫グロブリン静脈内投与にプレドニゾロンを追加することにより、重症川崎病患者の冠動脈の転帰は向上した。

著者らは、「今回患者登録 に用いたリスクスコアが、日本人以外の川崎病患者にも広く適用できるかどうかは明らかではない」と述べている。
より正確で、適用範囲の広いリスク予測アル ゴリズムの作成が待たれる。

Efficacy of immunoglobulin plus prednisolone for prevention of coronary artery abnormalities in severe Kawasaki disease (RAISE study): a randomised, open-label, blinded-endpoints trial」

Lancet誌のWebサイト (概要)
出典  NM online 2012.3.21
版権 日経BP社

 

<私的コメント>
「川崎病」は小児の病気ということで急性期を診察する経験はさほど多くはありません。
私も開業してから数人の患児を経験しただけです(もちろん即刻病院の小児科へ紹介しました)。
診断をつけられた小児は当然冠動脈瘤の経過観察がされます。
一方、若年発症の急性心筋梗塞や若年の突然死は、「川崎病」が鑑別診断としてしばしば挙げられます。

循環器内科医として興味のある(知りたい)のは、診断がつけられないまま成人した患者がどのくらいいるかということです。
中には 「冠動脈瘤を認めない川崎病を既往に有する若年発症の急性心筋梗塞の一例」といった症例報告もあるようです。

 

<番外編>
あすへの話題“解る”とはなにか? 
私的コメント 東京大学・和田昭允名誉教授が日経新聞・夕刊「あすへの話題」が書かれている記事は読み応えがあります。

 

 

 

 

ママラ湾沖の船上から見たホノルル市街遠望
現地時間 2012.3.20 13:47撮影
 

 

 

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低用量リバロキサバンで心血管イベント2次予防効果
急性冠症候群後の1万5526人を対象としたフェーズ3試験の結果
急性冠症候群(ACS)を経験した患者は、アスピリンなどを用いた標準治療を受けていても心血管イベントのリスクが高い状態にある。
米Brigham and Women’s HospitalのJessica L. Mega氏らは、こうした患者にリバロキサバンを追加すると心血管イベントが抑制されること、利益とリスクのバランスが良いのは1日5mg(2.5mg1日2回)という低用量であることを、二重盲検の無作為化試験ATLAS ACS 2-TIMI 51によって明らかにした。
論文は、NEJM誌電子版に2011年11月13日に掲載された。

第Xa因子を阻害するリバロキサバンの心血管イベント抑制効果を調べる研究では、1日最大20mgまでの有効性が示されてきたが、用量依存的な出血リスクの上昇も報告されている。

著者らは低用量のリバロキサバンを用いて、より利益とリスクのバランスが良い用量を見極めようと、このフェーズ3試験を実施した。

08年11月から11年9月まで、44カ国766施設で患者登録を行った。

 
<私的コメント>
今まで、多数の国にまたがる大規模臨床試験の論文を何気なく読んでいました。
その臨床試験を立案し実行するだけでも大変なことです。
ましてやデータを回収し分析する手間隙(てまひま)は想像を絶するばかりです。
しかし、こういった臨床試験にはちょっとした落とし穴があるのではないかと、ふと思いました。それは薬効を調べるための大規模臨床試験にありがちな製薬メーカーの介在です。
世界規模の臨床試験になればなるほど巨額の金銭が動きます。
そしてその額が大きければ大きいほど研究代表者の薬効についてのバイアスも大きくなりそうです。
もう一つ気になることがあります。
それは、人種差です。
スタチンやARBそしてACE阻害剤に代表されるように、通常投与量やその薬効は異なることがあります。
そういった場合、Nの数の大きさに引っ張られて実際に効果の少ない人種にも、その薬剤が「有効」という結果が得られてしまう可能性があります。
得てして人種差の検討はされないことも多く、「人種」の定義もやっかいです。
「性差」と同じく「人種差」も永遠のテーマともいえるのではないでしょうか。
 
ACS(ST上昇心筋梗塞、非ST上昇心筋梗塞、不安定 狭心症)を発症した、入院から7日以内の18歳以上の患者で、血行再建術などにより症状が安定している1万5526人(平均年齢62歳)を登録し、全員に標準的な治療(低用量アスピリンのみ、またはチエノピリジン〔クロピドグレルまたはチクロピジン〕と併用)を適用した上で、リバロキサバン2.5mgを1日2回投与する群(1日投与量5mg、論文では2.5mg群と表記)、同5mgを1日2回投与する群(1日投与量10mg、論文では5mg群と表記)、偽薬の3群のいずれかに割り付けて投与した。

有効性の主要評価指標は心血管死亡、心筋梗塞、脳卒中を合わせた複合イベントに、2次評価指標は全死因死亡、心筋梗塞、脳卒中を合わせた複合イベントに設定。安全性の主要評価指標は冠動脈バイパス術(CABG)関連ではないTIMI基準に基づく大出血とした。

分析はmodified intention-to-treatで行った。

割り付けられた患者全員を対象とし、イベント発生は、割り付け後から治療期間終了まで、割り付け薬の服用を中止した患者については中止から30日以内、割り付け薬を1回も使用しなかった患者については割り付けから30日以内のものをカウントした。

登録された患者の50.3%がST上昇心筋梗塞、25.6%が非ST上昇心筋梗塞、24.0%が不安定狭心症と診断されていた。

ACS発生から割り付けまでの日数の中央値は4.7日だった。
標準治療として93%にアスピリン+チエノピリジンが適用されており、チエノピリジンの投与期間の平均は13.3カ月 だった。

リバロキサバンの投与期間は平均13.1カ月(最長は31カ月)で、1回以上割り付け薬を服用し、その後治療を中止した患者の割合は、2.5mg群が26.9%、5mg群は29.4%、偽薬群は26.4%だった。

理由として多かったのは、有害事象と患者自身の選択だった。

主要評価指標に設定された複合イベントは、リバロキサバン群で有意に少なかった。

用量の異なる2グループを合わせたリバロキサバン群全体のイベント発生率 は8.9%、対照群は10.7%で、ハザード比は0.84(95%信頼区間0.74-0.96、P=0.008)になった。
複合イベントを構成する心血管 死亡のハザード比は0.80(P=0.04)、心筋梗塞も0.85(P=0.047)と有意なリスク低下を示したが、脳卒中は1.24(P=0.25)で 偽薬群との間に有意差は認められなかった。

リバロキサバンの用量別にみると、2.5mg群では複合イベント発生率は9.1%(偽薬と比較したP=0.02)、5mgは8.8%(P=0.03)で、いずれも有意なリスク低減効果を示した。

加えて2.5mg群では、偽薬群に比べて心血管死亡が有意に少なかった(2.7%と4.1%、ハザード比0.66、0.51-0.86、 P=0.002)。

全死因死亡リスクも有意に低下していた(2.9%と4.5%、ハザード比0.68、0.53-0.87、P=0.002)。
一方、 5mg群にはこれらの生存利益は認められなかった。
偽薬群と比較した心血管死亡のハザード比は0.94(P=0.63)、全死因死亡のハザード比は 0.95(P=0.66)。
 
2次評価指標に設定された全死因死亡、心筋梗塞、脳卒中を合わせた複合イベントも、リバロキサバン群で有意に少なかった。
リバロキサバン群全体で 9.2%、偽薬群は11.0%で、ハザード比は0.84(0.74-0.95、P=0.006)。
さらに、リバロキサバンはステント血栓症のリスクも低下 させていた(2.3%と2.9%、ハザード比0.69、0.51-0.93、P=0.02)。

サブグループ解析を行ったところ、主要評 価指標に設定された複合イベント抑制におけるリバロキサバンの利益は、ほとんどのサブグループに認められた。

例外は脳卒中または一過性脳虚血発作歴を有する患者で、このグループでは、有意ではないものの偽薬群の方が複合イベントは少ない傾向が見られた。

安全性の評価指標では、リバロキサ バン群全体で、CABGに関連しない大出血が偽薬に比べて有意に多かった(2.1%と0.6%、ハザード比3.96、2.46-6.38、 P<0.001)。

用量別では、2.5mg群がハザード比3.46(2.08-5.77、P<0.001)、5mg群は4.47(2.71-7.36、 P<0.001)だった。

頭蓋内出血についても同様で、リバロキサバン群全体(0.6%と0.2%、ハザード比3.28、 1.28-8.42、P=0.009)、2.5mg群(2.83、1.02-7.86、P=0.04)、5mg群(3.74、1.39-10.07、 P=0.005)のいずれも、偽薬群と比較したリスク上昇が有意になった。

致死的出血の発生率には有意な差はなかった(リバロキサバン 群0.3%、偽薬群0.2%、ハザード比1.19、0.54-2.59、P=0.66)。2.5mg群は0.67(0.24-1.89、P=0.45)、 5mg群は1.72(0.75-3.92、P=0.20)だった。

2.5mg群と5mg群の間で出血リスクを比較すると、TIMI小出血、処置を必要とするTIMI出血、致死的出血は2.5mg群で有意に少なかった。

出血に関連しない有害事象の発生率は、2.5mg群、5mg群、偽薬群の間で同様だった。


以上の結果より、ACS後の患者に標準治療と共にリバロキサバンを用いる場合は、2.5mg1日2回の用量が好ましいと著者らは結論している。

原題

Rivaroxaban in Patients with a Recent Acute Coronary Syndrome」
http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa1112277(概要)
(大西淳子=医学ジャーナリスト)
出典 NM online 2011.12.2
版権 日経BP社

<関連サイト> リバロキサバン
新規抗凝固剤「リバロキサバン」を考える:六号通り診療所所長のブログ ...

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ATLAS ACS2-TIMI51 ACS患者に低用量のリバロキサバン投与で心 ...

リバロキサバン、日本人でもワルファリンに対する非劣性を証明:日経 ...

井蛙内科開業医/診療録(4) : 急性冠症候群に対するリバロキサバン
今回、ACS患者において、低用量リバロキサバン2.5mg×2/日の投与が、安全かつ有効に予後を改善することがRCTで示されことの臨床的意義は大きい。
心血管死・心筋梗塞・脳卒中の複合主要エンドポイントは、リバロキサバンにより15%抑制され、危惧された出血合併症は増加したが、致死的出血イベントの増加は見られなかった。
■これまで、ハイリスク心房細動患者に対する総死亡の低下をARISTOTLE試験で示したXa阻害薬・アピキサバンにおいても、ACS患者を対象としたAPPRAISE-2 では、有用性は見られず、出血合併症のみが増加した。
今後、経口Xa阻害薬がACS治療の臨床に導入されるであろう。
その際、本研究でも示されたように、リバロキサバンの出血合併症には、用量依存性があることに留意する必要がある。
したがって、我が国で使用する場合には、欧米人と同程度の用量で良いかを十分に検討する必要がある。

 
<関連サイト> チエノピリジン
抗血小板剤 - Wikipedia

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チエノピリジン系抗血小板剤(チクロピジン、クロピドグレル)と胃酸分泌抑 ...

 

<自遊時間>
5泊7日で家族でハワイに行って来ました。
実は開業してからだけでも20年余が経ちますが 、こういった家族での長期旅行自体初めての経験です。
空港で日本からの出発の際、昔からの知り合いの開業医のドクターご夫婦と出発ロビーでバッタリ。
彼らは颯爽とビジネスクラスに搭乗。
エコノミークラス搭乗の私は少し気まずい思いを。
甲斐性の無さを痛感しました。
ハワイはほとんどの先生方は経験済みのことと思います。
かく言う私も、随分昔の新婚旅行はもハワイでした。
このハワイ。
今の季節に行くとまさに楽園です。
まずは、定番のワイキキ海岸です。


現地時刻 2012.3.17  15:16 撮影

 
アウトリガー・リーフ・オンザビーチないしはハレクラニから海岸をデューク・カハモナク像までの散策が、距離も景観(実は水着姿?)も良く、何回も歩きました。
 
■「ワイキキ」はハワイ語で「水が涌くところ」の意味で、元々は湿地帯であり、ハワイが独立国であった19世紀末までは、ハワイ王朝の王族の保養地であった。
■ワイキキ・ビーチにはもともと砂浜はなく、1920年代から1930年代にかけて、オアフ島北部のノースショア、カリフィルニア州のマンハッタンビーチから白砂を運んで作られた人工の砂浜である。
出典
ワイキキ - Wikipedia

 

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「Circulation Journal 2012.No.1の注目論文」として東北大学循環器内科教授の下川宏明編集長が取り上げた論文で勉強しました。

PCI後の抗血小板薬・PPI併用で心血管イベントリスクは増大しない
多施設の前向き観察研究KICSで米国のRCTの妥当性検証
経皮的冠動脈インターベンション(PCI)による冠動脈ステント留置後の血栓予防として,アスピリンとチエノピリジン系薬の2剤併用抗血小板療法が推奨 されている。
とりわけ,わが国には2004年に登場し,現在主流となっている薬剤溶出ステント(DES)の留置後は,半年から1年程度の長期にわたり同療 法が行われている。
その際,同療法の副作用である上部消化管出血の予防措置も考慮する必要がある。
現に,米国のガイドラインは,2剤併用療法を実施する際 に消化管出血リスクの高い患者にはプロトンポンプ阻害薬(PPI)の使用を推奨している(Circulation 2008; 117: 261-295)。
 
こうした中,2008年にクロピドグレルの抗血小板作用がPPI併用で減弱するとの検討結果が報告され(JACC 2008; 52: 1502-1517),両薬の相互作用に対する懸念が広がった。
血小板活性の亢進が著しい急性冠症候群(ACS)患者では,両薬併用による心血管イベント再発リスクの上昇も指摘され,Interventional Cardiologistの関心を集めたが,2010年に米国から前向き二重盲検ランダム化比較試験(RCT)のCOGENT試験が報告され(NEJM 2010; 363: 1909-1917),数年にわたる議論に終止符が打たれる形となった。
同試験の結果,クロピドグレルとPPI併用による臨床イベント発生への影響が否定されたからである。
 
わが国でも,PCI施行後のクロピドグレルとPPI併用は広く行われているが,その是非は十分に検討されてこなかった。
そこで,熊本大学大学院循環器病態学の千年忠祐氏らが,多施設観察研究KICS(Kumamoto Intervention Conference Study)を実施。冠動脈ステント留置後のPPI使用に伴う心血管イベントリスク上昇は認められなかったことを明らかにした(Circ J 2012; 76: 71-78)。
 
2剤併用抗血小板療法にPPIの併用で心血管イベント増加示されず
KICSは,熊本大学関連病院のPCI施行施設間の交流や多施設登録研究の実施を目的として2006年に発足した。
年間3,000例余りのPCI例,約1,000例の心筋梗塞例が登録されている。
 
今回の解析では,2008年6月~09年3月のPCI施行連続1,956例(16施設)のうち,院内死亡,退院時チエノピリジン系薬非使用,登録後PCI再施行,段階的PCI施行を除く1,270例が対象となった。
抗血小板療法のレジメンは,アスピリン100mg/日とチエノピリジン系薬(クロピドグレル75mg/日またはチクロピジン200mg/日)の併用。PPI使用の是非については,上部消化管潰瘍や出血の既往,ステロイドや非ステロイド抗炎 症薬(NSAIDs)の併用などから治療者が判断した。
 
解析対象者は,PPI併用群(331例)とPPI非併用群(939例)の2群に分けられた。
両群間に有意差が認められた患者背景は年齢のみで,PPI併用群平均70.3歳,PPI非併用群同68.9歳であった。
 
18カ月間の追跡の結果,1次評価項目の心血管死と非致死性心筋梗塞,虚血性脳卒中の発生率はPPI併用群3.3%(11件),PPI非併用群3.4%(32件)で,群間差はなかった(P=0.58,図上)。
2次評価項目の消化管イベント発生率も同0.3%(1件),1.8%(17件)で有意差はなかったが,PPI併用群で低い傾向が認められた(P=0.08,図下)。
PPI使用による調整後ハザード比は,心血管イベントが1.20(95%信頼区間0.60~2.40)で有意な危険因子とは認められなかった。

図表
 
なお,チエノピリジン系薬の選択については,クロピドグレルとチクロピジンの比率がほぼ半々であったことから,クロピドグレル使用者に限定して,PPI 併用群187例と非併用群443例の解析も行われたが,1次評価項目の発生率がPPI併用群3.7%,PPI非併用群3.6%と両群間に有意差は示されなかった。
さらに,血小板活性が亢進していると思われるACS患者のみのサブ解析(PPI併用群151例,PPI非併用群450例)においても両群で差は見 られなかった。
 
消化管出血リスクが高い患者にはPCI施行後のPPIをためらうべきでない
クロピドグレルとPPIの代謝機序にはともにCYP2C19が関与するため,併用するとプロドラッグであるクロピドグレルの活性代謝物への変換はPPI によって阻害される。
一方で,PPIとの相互作用が生じても,クロピドグレルの薬効は有効閾値内にあり,心血管イベント抑制には影響しないという推測も成 り立つ。PPIとクロピドグレルの相互作用を検証したRCT(COGENT試験)で,心血管イベントの増加が認められなかったためである。
 
ただし,CYP2C19の機能喪失対立遺伝子を少なくとも1つ有するキャリアの割合は,欧米人の約25%に比べ,日本人は約60%と多く,このキャリア の影響を検討する必要がある。さらにPPIは種類によって代謝経路が異なり,CYP2C19の関与の度合いが異なることが報告されている。
千年氏は抗血小 板療法について明らかにすべき点がまだ多く残されているとしながらも,今回の調査から「高齢者や消化性潰瘍の既往者,ステロイドやNSAIDs連日服用者 など,消化管出血リスクの高い患者には,抗血小板療法中でもPPI使用をためらうべきではない」としている。
 
出典  Medical Tribune 2012.1.26
版権  メディカルトリビューン社
 
<私的コメント>
文中の千年忠祐氏は「研究者の横顔」で、「循環器内科はACSなどの急性期カテーテルインターベンションから予防治療までの幅広い診療に携われる点で魅力がある」と述べています。
個人的な話で恐縮ですが、私の循環器内科との出会いは"Hurst's the Heart 3rd Ed"でした。
その後、恩師が「循環器内科は悪性疾患を診なくていい数少ない内科だよ」 と言われて、その意を強くしました。
進行性の心不全などは悪性疾患ともいえますが、悪性腫瘍とは趣を異にします。
「がん」 と日夜闘ってみえる先生方には「軟弱な姿勢だ」、とお叱りを受けそうです。
 

J. Willis Hurst, MD, 1920-2011
http://www.emoryhealthcare.org/heart-center-atlanta/history/j-willis-hurst.html
 

 
<自遊時間>
ご存知のように4月から、製薬メーカーの自主規制によりドクターとの関係が稀薄になります。
MRの訪問が五月蝿いと日頃思っている先生にはむしろ朗報です。
昨日、外資系のMRが来訪し、「近々先生にお願いしている(スタチンに関する)講演会の件ですが、講演の後の食事会が出来なくなりました。お弁当なら用意出来ます。そのままお持ち帰りいただいても結構です」 とのたまいました。即座に「結構です」と断りました。
これから製薬メーカーとは一線を画すいい機会でもあります。
 
明日から少しの間、出張します。

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LEM試験

戯れ言たれる侏儒 / 2012.03.16 00:37 / 推薦数 : 1
CKD合併症例における脂質治療戦略について
~バスキュラースタチン ローコールの可能性~
司会
佐賀大学 内科学 野出 孝一教授
出席者
獨協医科大学 心臓・血管内科 井上 晃男教授
東京女子医科大学 高血圧・内分泌内科 市原 淳弘教授

近年,慢性腎臓病(CKD)では,早期の段階から心血管イベントを発症することが明らかとなった。
また,脂質異常症は,CKDの進展,心血管イベント発症の危険因子であることが分かっている。
そのため,CKD患者に対しては,早期に適切な脂質管理を行う必要がある。
 
本座談会では,Vascular Statinの腎保護作用,血管の弾力性に着目した脂質異常症治療,フルバスタチンの多面的作用からCKD合併症例に期待できる点について討論し,さらに,最近報告されたフルバスタチンの長期投与による大規模観察研究LEM(Lochol Event Monitoring)試験の結果を紹介して,日本人に適した脂質治療戦略におけるフルバスタチンの可能性について考察した。
 

フルバスタチンの腎保護作用には強力な抗酸化作用が関与
野出 
近年,脂質異常症は,CKDの新規発症,CKDの進行に関与するとともに,心血管イベント発症の危険因子であることが明らかになりました。
本日は,CKD合併症例における脂質治療戦略について,討論したいと思います。


井上スタチンの腎保護作用)
フルバスタチンの血管保護作用を示唆するエビデンスとして,Serruysらは,経皮的冠動脈インターベンション(PCI)後の患者 さんにフルバスタチンを投与した大規模臨床試験であるLIPS(Lescol Intervention Prevention Study)で,フルバスタチンの長期の心血管イベント抑制効果を報告しています。

Serruys PW, et al. JAMA 2002; 287: 3215-3222.
 
また,わたしたちの検討では,脂質異常症患者さんにフルバスタチンを16週間投与した結果,上腕血流量の変化率,すなわち内皮依存性血管拡張反応が投与前に比べて有意(P<0.001)に改善しました(図1)。
 
図表
 
そこで,わたしたちは,CKDを合併した脂質異常症患者さんにおいて,フルバスタチンの腎保護作用を検証する目的で,FRET(Fluvastatin Renal Evaluation Trial)を実施しました。
 
対象患者さん43例に,フルバスタチン(10,20,30mg/日)を3カ月間投与した結果,LDLコレステロール(LDL-C)値は131±30mg /dLから119±22mg/dLと有意(P=0.0097)に低下し,尿中アルブミン排泄量(UAE)≧30mg/g・Crの群(23例)で は,LDL-C(P=0.08),L-FABP(尿細管障害のマーカー)(P=0.042),8-OHdG(酸化ストレスマーカー)(P=0.043)が 有意に低下しました(図2)。
 
図表
 
以上より,フルバスタチンは,CKD合併脂質異常症患者さんにおいて,腎保護作用を有することが示唆され,フルバスタチンの腎保護作用には,LDL-C低下作用に加えて,抗酸化作用が関与していると考えられました。
 
野出 
FRETにおいて,フルバスタチンが3カ月という短期間で蛋白尿を減少させたことについて,フルバスタチンが直接,メサンギウム細胞や尿細管に作用している可能性が考えられますね。

市原 
動物実験によると,酸化ストレスを抑制する薬剤により,腎組織の増悪が抑制されたというデータがありますから,人間の体でも同じようなことが起きているとすれば,酸化ストレスの抑制がメサンギウム細胞,尿細管細胞の保護に有効であることは十分に考えられます。
 
野出 
ただし,フルバスタチンの投与によってGFRの改善には至りませんでした。
GFRに関しては,スタチンの長期的な腎保護という観点で,より長期にわたる臨床試験によって検証する必要があり,今後の検討課題ですね。
 

Vascular Statinとしての血管保護作用が期待できるフルバスタチン
市原スタチンの血管柔軟性に関する臨床試験成績)
わたしたちは,高血圧合併高コレステロール血症患者さん85例を対象に,スタチンの長期投与による脈波伝播速度(PWV)への影響について検証しました。
フルバスタチンを含む各種スタチン,非スタチン系脂質異常症治療薬は,12カ月間投与され,3カ月ごとにPWV,LDL-C値を測定 しました。
 
結果として,PWVを12カ月間にわたって有意(P<0.05)に低下させたのは,フルバスタチンのみでした(図3)。
以上より,フルバスタチンは,血管柔軟性を改善すると考えられました。
 
図表
 
野出 
一般に,心血管イベントの発症には,不安定プラークが関連していますが,糖尿病の場合は,血管の構造の変化が関与していることが分かっています。
そこで,糖尿病に対しては,LDL-Cを強力に低下させるというよりは,血管の構造を改善させるようなスタチンを使用することが重要であると思います。
 
井上 
フルバスタチンは,C反応性蛋白(CRP)を改善するといわれていますので,血管平滑筋細胞増殖のトリガーである炎症を抑制する可能性も考えられます。
 
野出 
ここまでの先生方のお話から,フルバスタチンの血管内皮細胞障害血管平滑筋の硬化に対する有効性が明らかになり,フルバスタチンに対して,Vascular Statinとしての血管保護作用が期待できることが示されました。

 

フルバスタチンは,脂質低下と血管保護の双方から心腎連関を抑制
野出 
最近,日本人におけるフルバスタチンのVascular Statinとしてのエビデンスである大規模観察研究,LEM試験の結果が報告されました。


市原LEM試験の概要)
LEM試験は,日本人の高コレステロール血症患者さんを対象に,フルバスタチン長期使用時の有効性・安全性および脳・心血管イベント発症率を検討する目的で実施された大規模観察研究です。
本研究では,全国約2,500施設から登録された19,084例(平均年齢62.3歳)に対して,フルバスタチン(20~60mg/日)を投与し,一次予防群では5年間,二次予防群では3年間追跡しました。
1次エンドポイントは心・脳イベント発現頻度,2次エンドポイントは脂質パラメータの変化,心・脳 イベント以外の副作用の種類,重症度および頻度です。
 
登録症例の特徴として,44.9%(8,563例)が65歳以上の高齢者であり,実臨床の患者さんの年齢分布に近いこと,ほぼ全例(99%)が未治療例であることが挙げられます。
 
結果として,LDL-C値の低下率は,一次予防群で27.1%,二次予防群で25.3%であり,特に一次予防群では,非高齢者に比べて高齢者でLDL-C値の低下率が有意に高いことが示されました(P<0.0001)(図4)。
一方,安全性については,非高齢者と高齢者で副作用発現率に差は見られず,同等でした。
 
図表
 
また,本研究では,腎障害の有無で心イベントの発症率に有意差が認められませんでした。
つまり,フルバスタチンでは,心腎連関による心イベント発症を抑制する可能性が示唆されました。
 
野出 
LEM試験では,フルバスタチンの投与量を最大60mg/日まで増量していますが,特に問題は生じませんでしたか。
 
市原 
通常,腎機能障害のある患者さんにスタチンは使いづらい面がありますが,フルバスタチンは,腎機能障害に対して比較的安全に使用できる薬剤ですので,血管の炎症を抑える目的で増量することに問題はないと思います。
 
 
フルバスタチンへの期待についてのコメント
井上 
わたしは,フルバスタチンを高用量投与し,炎症をしっかりと抑えることで,糖尿病合併腎障害患者さんにおける心血管イベントの発症をどれだけ抑制することができるかという点に期待したいと思います。
 
市原 
LEM試験では,一次予防群のLDL-C値が180mg/dL以上で,心イベントの相対リスクが有意(P<0.05,wald検定) に上昇しますが,LDL-C値が180mg/dL未満で十分な心イベント抑制が得られました。
つまり,比較的軽度のLDL-Cの低下でフルバスタチンの有効性が認められました。
日本人では,LDL-C値を厳格に低下させるというよりは,フルバスタチンの多面的作用を十分に発揮させることが重要ですね。

出典 Medical Tribune 2012.1.26(一部改変)
版権 メディカルトリビューン社
 
 
<自遊時間>
当院へ通院される80歳の男性で、毎朝ツイッターをされている患者さんがみえます。
このバイタリティーと衰えぬ知識欲にはいつも感心させられます。
ある日の内容。(一部改変)
 
『少々古い新聞記事で、在日米軍幹部に国民にコッソリ叙勲と云う記事。当時の佐藤栄作首相が原爆投下の責任者で、日本の都市を無差別に焦土と化したあの「カーチス・ルメイ」に最高ランクの「勲一等旭日大綬章」を贈った事実。敗れたりとはいえ、戦争犯罪人とも云うべき人物へ何故の叙勲』
 
この中のカーチス・ルメイという人物を知らなかったので自分なりに調べてみました。

カーチスルメイ - Wikipedia

カーチスルメイ少将が受勲した理由 - 歴史 - 教えて!goo

http://nekomeshi2525.blog25.fc2.com/blog-entry-772.html
 
こういった人物が居たことを知らなかった私は恥じ入るばかりです。
遠い昔の高校での現代史でも教えてもらえませんでした。
今やパートナーシップの国ですから当然といえば当然です。
しかし、他国(隣国)なら豊臣秀吉や加藤清正みたいに歴史で教える筈です。

 

ここでちょっと思い出すことがあります。
現在はどうか知りませんが、私立大学の入学試験に難問奇問が、一時期話題になったことがありました。
某予備校の先生が一冊の本にしたほどです。
ある年の慶応大学の、とある学部の問題(イメージです)。

『1942年4月18日に、アメリカ軍が、航空母艦に搭載した陸軍の爆撃機によって行った日本本土に対する空襲の指揮官の名前は?
正解  
ジミー・ドーリットル中佐

ドーリットル空襲 - Wikipedia

 

 
読んでいただいて有り難うございます。
コメントをお待ちしています。
その他
「葦の髄」循環器メモ帖
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(「葦の髄から循環器の世界をのぞく」の補遺版
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(一般の方または患者さん向き) 
井蛙内科/開業医診療録(4)2009.10.16~
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ステントグラフト内挿術は大動脈瘤に対する有効な治療手段
血行障害には閉塞性疾患と拡張性疾患(瘤)があり,これらに対する血行再建外科の治療成績は特殊例を除いておおむね良好で,さらにQOLの向上を 目指した低侵襲治療の開発が進められている。
2月4日に東京都で開かれたMedical Tribune血管病セミナー「見逃さない! 今話題の血管病」において,戸田中央総合病院(埼玉県)副院長の石丸新氏は「血管病治療の最前線―病診連携を踏まえて―」をテーマに講演。
その中で「現在ステントグラフト内挿術は大動脈瘤に対して,外科的人工血管置換術に並ぶ有効な治療手段である」と述べた。
 
PAD重症例ではチーム医療が重要
まず,石丸氏は,閉塞性の血行障害である末梢動脈疾患(PAD)について解説。
PADの臨床症状による重症度の分類として,Fontaineの分 類が用いられている。
この分類では,PADの重症度をⅠ度(無症状,冷感,痺れ感),Ⅱ度(間欠性跛行),Ⅲ度(安静時疼痛),Ⅳ度(潰瘍・壊疽)に分類している。
PADの国際的な治療指針であるTASCⅡ(Trans Atlantic Inter-Society ConsensusⅡ )では,Ⅰ~Ⅱ度(軽症)症例は5年後に5~10%がⅢ~Ⅳ度(重症下肢虚血)に至るとしている。
また,重症下肢虚血症例は1年後に30%が下肢切断に至り,25%が死亡するとしている。
間欠性跛行の治療では、
(1)薬物療法,
(2)監視下運動療法,
(3)血行再建術(外科手術,血管内治療)
―が行われている。
(3)の血行再建術 は,患者の自然予後と治療成績により相対的に適応が決定される。
TASCⅡによると血行再建術の5年開存率は,大動脈・大腿動脈バイパスが約90%,大腿 動脈交叉バイパス,腋窩・大腿動脈バイパス,腸骨動脈経皮的血管形成術(PTA),大腿・膝窩動脈バイパスが約70~80%,大腿・膝窩動脈PTA,足底 動脈バイパスが約40%となっている。
 
重症下肢虚血の治療では,
(1)血行再建術(外科手術,血管内治療),
(2)薬物療法,
(3)潰瘍ケア,交感神経ブロック,高圧酸素療法,血管新 生療法
―が行われている。
(1)の血行再建術では,閉塞領域に応じた術式を第一選択としている。
わが国の再建部位別のバイパス術と血管内治療の年間総治療 症例数を見ると,腎動脈,腸骨動脈ではPTAが多数を占めるが,大腿動脈,下腿動脈ではPTAとバイパス術がほぼ同数となっている。
 
しかし,こうした治療を行っても下肢を救うことができない症例が存在する。
したがって,石丸氏は,重症下肢虚血では,フットケアチーム,感染制御 チーム,医療ソーシャルワーカー(MSW),褥瘡対策チーム,栄養サポートチーム(NST)などによるチーム医療が重要であると強調した(図1)。

figure
ステントグラフト内挿術での低侵襲治療が可能に
次に石丸氏は,拡張性疾患(瘤)について解説。胸部あるいは腹部大動脈瘤の大部分は無症状で経過するとし,こうした大動脈瘤自体の存在によって身 体に影響を及ぼすことはあまりないものの,瘤径が拡大するにつれて破裂の危険性が増すとした。
瘤が破裂するとその治療成績は不良となることから,瘤病変が 発見された時点で適切な患者管理の方針を定める必要がある。
 
従来,大動脈瘤に対する治療の第一選択は破裂予防を目的とした外科的人工血管置換術とされてきた。
しかし,現在でも外科手術は侵襲の大きい治療法 であり,患者の身体状況によっては適応が制限されることも多い。
そこで,大動脈瘤に対する低侵襲治療法としてステントグラフトが注目されている。
ステント グラフトは,金属ステントを人工血管材料で被覆した新しい発想による代用血管で,その方法としてステントグラフト内挿術の名称を用いている(図2)。

figure
 
2006年にわが国で初めて腹部大動脈瘤に対する低侵襲血管内治療を目的としたステントグラフトシステムZenith AAA(Cook Japan)の臨床使用が承認され,これが保険償還された翌2007年はステントグラフト元年となった。
これらを契機として,安全で質の高いステントグラ フト治療の普及を目的として基準が作成され,これを管理運用する組織として日本ステントグラフト実施基準管理委員会(JACSM)が設立され,基準審査と 実施症例の追跡調査が行われている。
 
わが国の腹部大動脈瘤の外科手術とステントグラフト内挿術の年間総治療症例数の推移を見ると,2007年にはステントグラフト内挿術は全体の 4.2%であったが,2010年には28.5%に増加している。
さらに,胸部下行大動脈瘤ではステントグラフト内挿術は2007年の39.9%から 2009年には65.5%に増加している。
これは,胸部下行大動脈瘤が解剖学的にステントグラフト内挿術に適しているためであり,治療症例数はさらに増加 して,外科手術の適応はすますます限定されたものになる可能性が予測されるという。
 
わが国の胸部大動脈瘤の治療成績の推移を見ると,入院死亡率は2006年の6.2%から2007年には5%台になり,さらに2009年には 4.6%に低下している。
これらの手術成績の向上には,外科的高リスク症例をステントグラフト内挿術の適応としたことが関与しているとも考えられるが,石丸氏はその確証を得るにはさらに詳細な実態調査が必要であろうとした。
 
なお,今回の血管病セミナーではCook JapanのZenith AAAなどのステントグラフトシステムの展示ブースが設けられ,参加者の関心を集めていた。
(医学ライター・市原 巌)
 
出典  MT Pro 2012.2.17
版権  メディカルトリビューン社 

 

<番外編>
拡張機能障害による心不全
■LVEFが保持された心不全は拡張機能障害は拡張機能障害が病態の主因と考えられることから「拡張不全(heart failure with preserved ejection fraction)」と呼ばれ、心不全症例の40~50%を占める。
ただし、拡張不全と拡張機能障害は同義語ではない。
拡張機能障害を有し臨床的に心不全を呈する病態を拡張不全と呼ぶ。
(心不全症状を呈さない状態は無症候生拡張機能障害と呼ぶ)
■拡張機能障害の特徴は、女性と高齢者に多く、基礎疾患として高血圧が多いという点である。
■左室拡張機能障害、特に左室stiffnessが増高して左室が硬くなる原因は、左室組織における繊維化の亢進、および心筋細胞そのもののstiffness増大にあるとされる。
出典; 
日医雑誌 第140巻・第4号/平成23(2011)年7月 P781

 

 

<きょうの一曲>Try A Little Tenderness
http://www.youtube.com/watch?v=Sb88IUzYW9Q&feature=fvsr
歌詞
http://blog.goo.ne.jp/attached_c/e/aaec81fca83a50c6b54b76bd90989e08


 
読んでいただいて有り難うございます。
コメントをお待ちしています。
その他
「葦の髄」循環器メモ帖
http://yaplog.jp/hurst/
(「葦の髄から循環器の世界をのぞく」の補遺版
ふくろう医者の診察室 
http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き) 
井蛙内科/開業医診療録(4)2009.10.16~
http://wellfrog4.exblog.jp/
井蛙内科/開業医診療録(3)~2009.10.15
http://wellfrog3.exblog.jp/
井蛙内科/開業医診療録(2)2008.12.10~
http://wellfrog2.exblog.jp/
井蛙内科/開業医診療録~2008.5.21 http://wellfrog.exblog.jp/ 
(内科医向き)
「井蛙」内科メモ帖
http://harrison-cecil.blog.so-net.ne.jp/
(「井蛙内科開業医/診療録」の補遺版)
があります。   

 

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