Na摂取量
多くても少なくても心血管系に悪影響
尿中Na排泄量の解析で明らかに
マクマスター大学(カナダ・ハミルトン)のMartin J. O'Donnell准教授らは,尿中ナトリウム(Na)排泄量(塩分摂取量の代理マーカー)と心血管疾患(CVD)リスクの関連について解析を行い 「CVDと糖尿病の患者では,同排泄量が中間レベルより高ければ心血管イベントリスクが高く,低ければ心血管死亡と入院を要するうっ血性心不全(CHF)リスクが高い」とJAMA(2011; 306: 2229-2238)に発表した。同准教授らはまた,尿中カリウム(K)排泄量が多い場合には脳卒中リスクが低いとしている。
Naの至適摂取量は依然不明
論文の背景情報によると,至適なNa1日摂取量は依然不明で,Na摂取量と心血管イベントの関連を検討した前向きコホート試験の結果には一貫性がない。
至適なNa1日摂取量を明らかにすることは,特にCVD患者で重要で,同患者ではそのような研究がこれまで十分に行われていなかった。
CVD患者は,同摂取量が多い場合と少ない場合に心血管系が特に脆弱で,Na摂取量を制限されることが多い。
また,Kは Na摂取量とCVDの関連に影響を及ぼすことが示されているが,やはり至適な1日摂取量は確立されていない。
O'Donnell准教授らは今回,NaとKの排泄量と,心血管イベントや死亡との関連性について検討した。ONTARGET試験と TRANSCEND試験(募集開始2001年11月〜追跡終了2008年3月)に登録された2コホート(2万8,880例)から得られた朝の空腹時の尿試料データから,NaとKの24時間尿中排泄量を推定。
心血管死亡,心筋梗塞,脳卒中,入院を要するCHFの複合アウトカムと,NaとKの尿中レベルとの関連を多変量モデルにより解析した。
Na1日排泄量4〜5.99gより多くても少なくてもリスク増加
ベースライン時におけるNaとKの推定24時間尿中排泄量の平均値は,それぞれ4.77gと2.19gだった。
追跡期間56カ月(中央値)の時点で,複合アウトカムは4,729例(16.4%)に発生していた。
多変量解析の結果,ベースライン時のNa1日排泄量が4〜5.99gの群(1万4,156例,複合アウトカム発現率15.2%)を基準として,ベースライン時 のNa排泄量が多い群(7〜8g群18.4%,8g超群24.1%)と少ない群(2〜2.99g群18.2%,2g未満群20.2%)では,複合アウトカ ムの発生リスクが高いことが明らかになった。
高Na排泄群では,基準群と比べて心血管死亡(7〜8g群9.7%,8g超群11.2%),心筋梗塞(8g超群6.8%),脳卒中(8g 超群6.6%),入院を要するCHF(8g超群6.5%)リスクが高かった。
低Na排泄群では,同じく心血管死亡(2〜2.99g群8.6%,2g未満群 10.6%),入院を要するCHF(2〜2.99g群5.2%)リスクが高かった。
また,Kの1日排泄量が1.5g以上の場合には,1.5g未満と比べて 脳卒中リスクが低かった。
O'Donnell准教授らは「以前の前向きコホート研究では,Na摂取量と心血管死亡について,正の相関,無相関,逆相関のいずれも報告されていた」と指摘し,こうした不一致は「Na摂取量の検討範囲の差,対象集団や測定方法の違いと非線形関係を考慮しなかったことなどが原因である可能性が高い」と考察している。 さらに「Na排泄量が中等度の群と比べて,高い群では心血管イベントの発現率が高く,低い群では心血管死亡と入院を要するCHFの発現率が高かった。これらの結果は,ランダム化比較試験を実施し,安全なNa摂取量の範囲を確立することが急務であることを意味している。また,尿中K排泄量が多い場合,脳卒中リスクが低いことが明らかになった。Kを標的とした介入はさらに検討する価値がある」と述べている。
減塩による自然な食事への移行が重要
テュレーン大学(ルイジアナ州ニューオーリンズ)公衆衛生熱帯医学部のPaul K. Whelton博士は,同誌の付随論評(2011; 306: 2262-2264)で,減塩の重要性について強調し,「米国のほとんどの成人は生理的に必要とされる量をはるかに超える量の塩分を摂取し,その過剰塩分のほとんどは,加工食品に添加される塩分である。食品に加える塩分の漸減はライフスタイル是正の1つの方法となり,大きな成功につながる可能性が高い。塩分を減らした自然な食事への移行により,食事によって摂取できるKの絶対量も同時に増加し,Na/K比も改善される」と説明。
さらに「減塩による健康上の便益は科学的に裏付けられており,一般人口が対象の場合,食事によるNa摂取量の減量という目標からの逸脱は,これまでに得られているエビデンスからは支持されない」とコメントしている。
出典 Medical Tribune 2012.2.16
版権 メディカルトリビューン社 <自遊時間>きょう、天皇陛下の2枝ACバイパス術が行われます。そこで循環器医なら誰でも思う素朴な疑問あり。何故、ステントではなくACバイパスが選択されたのか。
LADとLCXの狭窄病変で、新聞報道では高度狭窄ではなさそう。狭窄部位がlongなのか、主幹部にかかっている病変なのか、IVUSや血管内視鏡が行われて不安定プラークでも見つかったのか。今後の同様のケースの患者への説明にも関係することなので是非詳細を知りたいものですが、きっと公表されないだろういし。 公表されない限り「同様のケース」という患者はありえない。ちょっとイライラ。 先生方はいかがですか。 <AM7:50 追加> 陛下の手術のことが気掛かりだったので少しサイトで調べてみました。http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120212-00000521-san-soci のサイトで永井良三教授(おそらく主治医)のコメント(病状説明)が比較的詳しく知ることが出来ました。他のサイトと合わせた情報は以下のごとくです。 ■バイパス手術の対象となる2カ所のうち、「左回旋枝」は、75%から90%まで狭窄が進行
■一般的に、冠動脈の血管の狭窄には、(1)投薬治療(2)カテーテルと呼ばれる細い管を使い、内部から血管を広げる(ステント)(3)狭窄部分の回り道を 作るバイパス手術-の選択肢がある。このうち、体への負担が比較的小さい(2)については、「狭窄の場所や形を勘案すると、実施に向いていない」と早期に 判断されており、昨年から実質的には(1)か(3)の選択肢が検討されていた。
■医師団は「薬での治療をお続けになることも不可能ではなかった」と言っている。
■22年9月には、神奈川県の葉山御用邸で静養中に近くの海で小舟をこいだ後、胸部の不調を訴え、海岸沿いでしゃがみこまれたこともあった。
■左冠動脈の左回旋枝の狭いところの場所、形を総合すると、そこは手をつけないほうがいいというのが専門医の判断になりました。 いずれにしろ手術の成功と一日も早い御快癒をお祈り申し上げます。
マクマスター大学(カナダ・ハミルトン)のMartin J. O'Donnell准教授らは,尿中ナトリウム(Na)排泄量(塩分摂取量の代理マーカー)と心血管疾患(CVD)リスクの関連について解析を行い 「CVDと糖尿病の患者では,同排泄量が中間レベルより高ければ心血管イベントリスクが高く,低ければ心血管死亡と入院を要するうっ血性心不全(CHF)リスクが高い」とJAMA(2011; 306: 2229-2238)に発表した。同准教授らはまた,尿中カリウム(K)排泄量が多い場合には脳卒中リスクが低いとしている。
Naの至適摂取量は依然不明
論文の背景情報によると,至適なNa1日摂取量は依然不明で,Na摂取量と心血管イベントの関連を検討した前向きコホート試験の結果には一貫性がない。
至適なNa1日摂取量を明らかにすることは,特にCVD患者で重要で,同患者ではそのような研究がこれまで十分に行われていなかった。
CVD患者は,同摂取量が多い場合と少ない場合に心血管系が特に脆弱で,Na摂取量を制限されることが多い。
また,Kは Na摂取量とCVDの関連に影響を及ぼすことが示されているが,やはり至適な1日摂取量は確立されていない。
O'Donnell准教授らは今回,NaとKの排泄量と,心血管イベントや死亡との関連性について検討した。ONTARGET試験と TRANSCEND試験(募集開始2001年11月〜追跡終了2008年3月)に登録された2コホート(2万8,880例)から得られた朝の空腹時の尿試料データから,NaとKの24時間尿中排泄量を推定。
心血管死亡,心筋梗塞,脳卒中,入院を要するCHFの複合アウトカムと,NaとKの尿中レベルとの関連を多変量モデルにより解析した。
Na1日排泄量4〜5.99gより多くても少なくてもリスク増加
ベースライン時におけるNaとKの推定24時間尿中排泄量の平均値は,それぞれ4.77gと2.19gだった。
追跡期間56カ月(中央値)の時点で,複合アウトカムは4,729例(16.4%)に発生していた。
多変量解析の結果,ベースライン時のNa1日排泄量が4〜5.99gの群(1万4,156例,複合アウトカム発現率15.2%)を基準として,ベースライン時 のNa排泄量が多い群(7〜8g群18.4%,8g超群24.1%)と少ない群(2〜2.99g群18.2%,2g未満群20.2%)では,複合アウトカ ムの発生リスクが高いことが明らかになった。
高Na排泄群では,基準群と比べて心血管死亡(7〜8g群9.7%,8g超群11.2%),心筋梗塞(8g超群6.8%),脳卒中(8g 超群6.6%),入院を要するCHF(8g超群6.5%)リスクが高かった。
低Na排泄群では,同じく心血管死亡(2〜2.99g群8.6%,2g未満群 10.6%),入院を要するCHF(2〜2.99g群5.2%)リスクが高かった。
また,Kの1日排泄量が1.5g以上の場合には,1.5g未満と比べて 脳卒中リスクが低かった。
O'Donnell准教授らは「以前の前向きコホート研究では,Na摂取量と心血管死亡について,正の相関,無相関,逆相関のいずれも報告されていた」と指摘し,こうした不一致は「Na摂取量の検討範囲の差,対象集団や測定方法の違いと非線形関係を考慮しなかったことなどが原因である可能性が高い」と考察している。 さらに「Na排泄量が中等度の群と比べて,高い群では心血管イベントの発現率が高く,低い群では心血管死亡と入院を要するCHFの発現率が高かった。これらの結果は,ランダム化比較試験を実施し,安全なNa摂取量の範囲を確立することが急務であることを意味している。また,尿中K排泄量が多い場合,脳卒中リスクが低いことが明らかになった。Kを標的とした介入はさらに検討する価値がある」と述べている。
減塩による自然な食事への移行が重要
テュレーン大学(ルイジアナ州ニューオーリンズ)公衆衛生熱帯医学部のPaul K. Whelton博士は,同誌の付随論評(2011; 306: 2262-2264)で,減塩の重要性について強調し,「米国のほとんどの成人は生理的に必要とされる量をはるかに超える量の塩分を摂取し,その過剰塩分のほとんどは,加工食品に添加される塩分である。食品に加える塩分の漸減はライフスタイル是正の1つの方法となり,大きな成功につながる可能性が高い。塩分を減らした自然な食事への移行により,食事によって摂取できるKの絶対量も同時に増加し,Na/K比も改善される」と説明。
さらに「減塩による健康上の便益は科学的に裏付けられており,一般人口が対象の場合,食事によるNa摂取量の減量という目標からの逸脱は,これまでに得られているエビデンスからは支持されない」とコメントしている。
出典 Medical Tribune 2012.2.16
版権 メディカルトリビューン社 <自遊時間>きょう、天皇陛下の2枝ACバイパス術が行われます。そこで循環器医なら誰でも思う素朴な疑問あり。何故、ステントではなくACバイパスが選択されたのか。
LADとLCXの狭窄病変で、新聞報道では高度狭窄ではなさそう。狭窄部位がlongなのか、主幹部にかかっている病変なのか、IVUSや血管内視鏡が行われて不安定プラークでも見つかったのか。今後の同様のケースの患者への説明にも関係することなので是非詳細を知りたいものですが、きっと公表されないだろういし。 公表されない限り「同様のケース」という患者はありえない。ちょっとイライラ。 先生方はいかがですか。 <AM7:50 追加> 陛下の手術のことが気掛かりだったので少しサイトで調べてみました。http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120212-00000521-san-soci のサイトで永井良三教授(おそらく主治医)のコメント(病状説明)が比較的詳しく知ることが出来ました。他のサイトと合わせた情報は以下のごとくです。 ■バイパス手術の対象となる2カ所のうち、「左回旋枝」は、75%から90%まで狭窄が進行
■一般的に、冠動脈の血管の狭窄には、(1)投薬治療(2)カテーテルと呼ばれる細い管を使い、内部から血管を広げる(ステント)(3)狭窄部分の回り道を 作るバイパス手術-の選択肢がある。このうち、体への負担が比較的小さい(2)については、「狭窄の場所や形を勘案すると、実施に向いていない」と早期に 判断されており、昨年から実質的には(1)か(3)の選択肢が検討されていた。
■医師団は「薬での治療をお続けになることも不可能ではなかった」と言っている。
■22年9月には、神奈川県の葉山御用邸で静養中に近くの海で小舟をこいだ後、胸部の不調を訴え、海岸沿いでしゃがみこまれたこともあった。
■左冠動脈の左回旋枝の狭いところの場所、形を総合すると、そこは手をつけないほうがいいというのが専門医の判断になりました。 いずれにしろ手術の成功と一日も早い御快癒をお祈り申し上げます。 読んでいただいて有り難うございます。
コメントをお待ちしています。
その他
「葦の髄」循環器メモ帖
http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き)
井蛙内科/開業医診療録(4)2009.10.16~
http://wellfrog4.exblog.jp/
井蛙内科/開業医診療録(3)~2009.10.15
http://wellfrog3.exblog.jp/
井蛙内科/開業医診療録(2)2008.12.10~
http://wellfrog2.exblog.jp/
井蛙内科/開業医診療録~2008.5.21 http://wellfrog.exblog.jp/
(内科医向き)
「井蛙」内科メモ帖
http://harrison-cecil.blog.so-net.ne.jp/
(「井蛙内科開業医/診療録」の補遺版)
があります。
コメント
コメントはまだありません。コメントを書く