戯れ言たれる侏儒
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スタチンのpleiotropic作用はどの程度の臨床的インパクトがあり,どのようにして評価されるのか。
スタチンの中のアトルバスタチンに焦点を当てAHA開催中のディスカッション記事で勉強しました。
 (発言内容をピックアップ)

 
司会
平山 篤志
氏 日本大学内科学系循環器内科学分野教授
出席者(発言順)
David D. Waters
氏 Professor of Medicine, San  Francisco General Hospital University of California
代田 浩之
氏 順天堂大学循環器内科教授
石井 秀樹
氏 名古屋大学大学院循環器内科学
 
心血管系イベント抑制およびプラーク退縮を目指した脂質管理の重要性
スタチンはプラーク容積を減少させ心血管系イベントの発症を抑制
(平山)日本国内においても,経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を施行した急性冠症候群(ACS)患者70例を,アトルバスタチン投与群または通常療法群に無作為に割り付け,6カ月間追跡したESTABLISHや,ACS患者307例を対象にプラーク容積の変化率を検討したJAPAN-ACSなどにおいて,ストロングスタチンの投与による冠動脈プラーク容積の退縮に及ぼす影響が検討されています。

 <私的コメント>
JAPAN-ACSはピタバスタチンにおける検討。
 
(平山)最近発表されたPROSPECTでは,心血管系イベントの原因となるプラークは,薄い線維性被膜(TCFA)を伴い,血管腔が狭小化した,大型のプラークであることが示されています(図1)。
 
(平山)スタチンによりプラーク容積を減少させれば,心血管系イベントの発症率は低下するのでしょうか。
言い換えれば,スタチンによるプラーク容積の減少は,そのまま心血管系イベントの発症率の低下につながるといえるのでしょうか。
 この点については,これで得られている事実を総合すると,その可能性は十分考えられるものの,直接的に検証した試験がないことから,今後さらなる検証をしていく必要があると思います。
(平山)スタチンに関するもう1つの疑問は,スタチンによるプラーク容積の減少は,LDL-C低下だけによってもたらされるものかどうかということです。スタチン にはLDL-C低下とは独立したいわゆるpleiotropic作用があり,直接的にプラークに作用して容積を減少させることが指摘されています。

(平山)ロスバスタチンとアトルバスタチンという2つのストロングスタチンの最大用量を用い,冠動脈プラーク容積への減少効果を比較するSATURNが実施され,その成績が今回のAHAで報告されました。
 
アトルバスタチンによるプラーク容積の減少に抗炎症作用が関与
(Waters)MIRACLではACSによる入院患者約3,000例を対象に,アトルバスタチンの高用量を用いた積極的脂質低下療法群とプラセボ群に無作為割り付けし,16週間追跡して虚血性イベント再発の抑制作用を検討しています。
ここで興味深かったのは,試験開始時および治療中のLDL-Cレベルはどちらも,転帰の有意な予測因子となっていなかったことです。
しかし,C反応性蛋白(CRP)が関与し,抗炎症作用が影響した可能性が示唆されています。
さらに,他のスタチンとアトルバスタチンで相対リスクおよび両群間の差がいつから認められるかも検討されており,その他の報告も含め考えると,アトルバスタチンは効果発現が速く,LDL-C低下以外の作用が関与していることが考えられます。
 
アトルバスタチンについてのさまざまなエビデンス
(Waters)安定冠動脈疾患患者を対象としたTNTでは,アトルバスタチンの高用量を用いた積極的脂質低下療法と通常用量を用いた脂質低下療法における脳心血管イベント再発に与える影響を検討しています。
TNTの結果を治療中のLDL-Cレベルで5群に分けて層別化し,LDL-Cレベ ルと主要心血管イベント(MACE)発症の抑制作用も解析しており,アトルバスタチンによる治療では,LDL-Cは低ければ低いほどよいといえるのではないかと感じています。
また,eGFRはさまざまな患者集団において強力な予後予測因子になることが知られていますが,同様にTNTでは,eGFRへのアトルバスタチンの影響についても検討されており,eGFRを改善する可能性が示されています。
さらに,アトルバスタチン投与中のeGFRの変動により腎機能低下群,不変群,改善群に分けて,心血管イベント発症との関係についても検討されています。
アトルバスタチンの長期治療によりeGFRの改善が見られた患者群では,アウトカムの改善にもつながることが期待されています。
 
高まるアトルバスタチンの臨床的意義
(代田)わたしたちは腹部大動脈瘤の手術予定患者20例を対象に,アトルバスタチン20mg/日群と通常治療群に無作為割り付けして4週間治療後,腹部大動脈瘤置 換術を施行,組織における炎症への効果を比較しています。
その結果,アトルバスタチン群では炎症性細胞やマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)の発現が有意に抑制されていました(図2)。
 
4週間という短い期間でアトルバスタチンが組織での抗炎症作用を示したということは,直接的な pleiotropic作用の部分が寄与しているのではないかと考えています。
こうした抗炎症作用は,より炎症反応の強いACS患者において,さらなる有 用性が期待できるのではないかと考えています。
事実,わたしたちが実施したExtended-ESTABLISHのLDL-C別サブ解析でも,ACS患者 におけるアトルバスタチン20mgのイベント抑制作用がより早期から見られています(図3)。

血管内視鏡により明らかとなったアトルバスタチンのプラーク安定化作用
(平山)わたしたちはIVUSと血管内視鏡を同一患者に施行することで,アトルバスタチンが冠動脈プラークにどのように作用するかを検討しています。
その結果,IVUSで確認されるプラークの退縮は80週の試験期間を通じ持続的に確認された一方,血管内視鏡で確認されるプラークの色調変化については,28週目までは黄色調から白色調への変化が認められたものの,その後80週の時点まで一定でした(図4)。

(石井)IB(integrated backscatter)-IVUSでは脂質成分は青色に,線維成分は緑色に映ります。
したがって青色部分の多いプラークは脂質含有量の多い,不安定なプラークと判断できます。
わたしたちは特に慢性腎臓病(CKD)患者でIB-IVUSを実施し,PCIの目標ステント留置部位には,脂質に富むプラークが多く存在することを報 告しています。
また最近,対象をeGFR(mL/min/1.73m2)60未満と60以上に分けてIB-IVUSの結果を解析し,前者は後者に比べて脂質容積が有意に大きく,線維容積が小さいことも報告しています。
また,岐阜大からの報告では,アトルバスタチン20mgで6カ月間治療すると,IB-IVUS所見の青色部分,すなわち脂質成分が有意に減少することも報告されており,虚血性心疾患のハイリスクグループと考えられるCKD患者に対しては,アトルバスタチンの効果が期待されています。

(Waters)エゼチミブをスタチンに併用すると,LDL-Cは低下するので有効だとは思いますが,エゼチミブでLDL-Cを低下させたことでイベントを抑制したという臨床試験のデータがないため,現状では,エゼチミブを加えるよりも,まずはスタチンを増量する方が良いと考えています。
 
出典  Medical Tribune 2012.2.9
版権  メディカルトリビューン社


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