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第34回日本高血圧学会でのシンポジウムの「アンチエイジング」の記事で勉強しました。アンチエイジング目指す高血圧研究成果が明らかに動脈stiffnessの増大や血管リモデリングといった血管の老化は,高血圧の病態と深くかかわっている。第34回日本高血圧学会〔会長=自治医科大学内科学講座循環器内科学部門・島田和幸教授(同大学病院長)〕のシンポジウム「アンチエイジングからみた 高血圧研究」(座長=愛媛大学大学院分子心血管生物・薬理学・堀内正嗣教授,大阪大学大学院臨床遺伝子治療学・森下竜一教授)では,アンチエイジングの視 点でとらえた最先端の高血圧研究の成果が報告され,長寿遺伝子によるレニン・アンジオテンシン系の抑制,抗酸化作用を有するARB,スタチン,タウリンなどによる抗老化作用の可能性や,脈波伝播速度が全身老化の指標としても有望であることを示す報告などが注目を集めた。 Sirtuin 1遺伝子による長寿機序レニン・アンジオテンシン系抑制が関与 長寿遺伝子として知られるsirtuin (SIRT)1による延命効果に,レニン・アンジオテンシン(RA)系の抑制が関与することが判明した。九州大学大学院先端心血管治療学講座の市来俊弘教 授らが,赤ワインに含まれるポリフェノールの一種,レスベラトロール(RSV)のSIRT1活性化機序を検討する中で明らかにした。 AT1受容体発現を抑制 SIRT1はヒストンや転写因子の脱アセチル化により抗炎症作用などを発現し,長寿をもたらす。RSVはSIRT1の活性化を介して,多くの種で延命効果を発現する。 市来教授らは,(1)ARBのfonsartanが高血圧自然発症ラット(SHR)の寿命を2倍に延長(2)AT1受容体欠損マウスは長寿—などの報告に着目。RSVによるSIRT1活性化がAT1受容体の発現と機能に及ぼす影響を検討した。 まず,ラット大動脈由来培養平滑筋細胞(VSMC)をRSV(100μM)で刺激すると,12時間後をピークにmRNA・蛋白レベルでAT1受容体発現が有意に抑制された。この作用はSIRT1拮抗薬のニコチナマイド添加により消失することから,SIRT1活性化を介すると推測された。 そこで,アデノウイルスベクターを用いて,VSMCにSIRT1を過剰発現させたところ,ウイルス量,すなわちSIRT1発現量に依存してAT1受容体発現が減少。SIRT1活性化が,AT1受容体発現をダウンレギュレーションすることが分かった。 機能的にも,VSMCに空ベクターを感染させた群ではアンジオテンシンⅡ(AⅡ)刺激によりERKの活性化が生じたが,SIRT1を含むベクターで SIRT1を過剰発現した群ではERK活性化が生じないことから,SIRT1の活性化がAⅡの作用を抑制することが証明された。 一方,RSVはAⅡにより誘導されるインターロイキン(IL)-6 mRNA発現を濃度依存性に抑制。これには,RSVによる転写因子CREBとNF-κBの抑制が関与していた。 In vivoでの検討により,RSVを投与したマウスでは,AⅡ持続注入によるIL-6産生や冠動脈周囲の線維化が抑制されることも判明した。ヒドララジンではこうした抑制は認められず,降圧を介した効果でないことも確認された。 同教授は「SIRT1による長寿機序には,AT1受容体の発現減少を介したRA系抑制が少なくとも一部関与している」と結論した。なお,今回用いられたRSV量は赤ワイン125~250瓶に相当するという。
ARB,スタチン,タウリン幹細胞・血管内皮前駆細胞の活性化介する抗老化作用に期待 日本大学腎臓高血圧内分泌内科学の福田昇教授らは,抗酸化作用を有するARBやスタチン,抗酸化食品のタウリンなどが,血管内皮前駆細胞 (EPC)の機能改善,心臓・腎臓の幹細胞増加を介して高血圧性臓器障害や血管傷害の修復を促し,抗老化作用を発現する可能性を指摘した。 “保存的再生医療”を提唱 最近,幹細胞やEPCが成人臓器にも存在し,臓器障害や血管内皮傷害を修復していることが分かってきた。一方,高血圧や糖尿病,メタボリックシンドロー ムなど酸化ストレス状態では,組織幹細胞,EPCなど自己修復細胞の機能が低下,最終的に心血管疾患に至ると考えられる。 そこで,福田教授らはこれら自己修復細胞に着目。高血圧性臓器障害,血管傷害における役割と,抗酸化薬,抗酸化食品による抗老化作用を解明するため検討を行った。 脳卒中易発症高血圧ラット(SHR-SP)に食塩を負荷すると,組織AⅡによる酸化ストレスによってEPC数,EPCコロニー形成能の低下や心筋幹細胞,腎髄質幹細胞〔Label-retaining cell(LRC)〕の著明な減少が認められる。この食塩負荷SHR-SPにARBを投与すると,(1)抗酸化薬tempolと同等にEPC数が増加(ロサルタン)(2)EPCコロニー形成能が著明に改善(ロサルタン,バルサルタン,カンデサルタン)(3)心筋幹細胞が有意に増加(カンデサルタン)(4) 腎髄質LRC数が有意に増加(バルサルタン)—が判明した。 EPCコロニー内にはAⅡ産生系のすべての構成因子の存在が認められ,ARBによるEPC機能の改善はARBの直接作用と考えられた。 一方,スタチンにはpleiotropic作用が存在し,強い抗酸化作用を示す。同教授らも,アトルバスタチンによりEPCコロニー形成能の改善,EPC数の有意な増加,酸化ストレスの有意な減少を見いだした。 臨床的にも,本態性高血圧症患者30例におけるロサルタンとサイアザイド系利尿薬・トリクロルメチアジドのクロスオーバー試験で,ロサルタンによる EPCコロニー形成能の有意な改善が判明(P<0.01)。さらに,食生活による抗老化を検討する目的で,健康ボランティアにタウリン3g/日を2週間投 与したところ,酸化ストレスの有意な低下とEPCコロニー形成能の有意な改善が確認された(ともにP<0.05)。 こうした成績を踏まえ同教授らは,幹細胞やEPCの修復機能の改善により心血管疾患を防ぎアンチエイジングを目指す“Conservative regenerative medicine(保存的再生医療)”を提唱しており,「高血圧患者における老化予防の観点からは,抗酸化薬であるARBやスタチン,抗酸化食品のタウリンや,今回成績は示さなかったがマグネシウムが推奨される」との見解を示した。 脈波伝播速度が全身老化の指標に 血管年齢の評価や高血圧性臓器障害の指標として上腕-足首脈波伝播速度(baPWV)が日常診療で広く応用され,その上昇が心血管疾患のリスクであることが分かってきた。そうした中,愛媛大学加齢制御内科の小原克彦准教授らは,抗加齢ドック受診者での検討を基に,baPWVが血管老化だけでなく, 全身老化の指標としても有用であることを明らかにした。 認知機能と有意な負の相関示す 老化は,老年医学的には要介護へ至るプロセスととらえられる。小原准教授らは,抗加齢ドック受診者約1,000例を対象に,baPWVと多彩な老化指標との関連性を検討した。 脳血管障害,中でも小血管病とbaPWVとの強い相関が報告されているが,同准教授らも,年齢や血圧で補正後も無症候性ラクナ,微小脳出血を伴う群で,それぞれbaPWVが有意に上昇することを見いだした(順にP<0.0001,P=0.008)。 こうした成績からは,baPWVと認知機能低下との関連がうかがわれる。 実際,年齢,性,血圧で補正後もbaPWVは,(1)海馬を含む側頭葉内側部萎縮の指標である側脳室下角面積で評価した萎縮の程度が高いほど有意に上昇 (P<0.0001)(2)タッチパネル式認知機能テストの点数と有意な負の相関を示す(r=−0.2,P=0.0008)—などの事実が明らかになっ た。 一方,筋肉減少症や骨塩量低下は,老年症候群や脆弱性(frailty)の重要な要因となる。この点についてbaPWV高値は,(1)男性では筋肉減少 症の指標である体重当たりの大腿筋横断面積と有意な負の相関を示し,内臓肥満と筋肉減少症を合併するsarcopenic obesityと関連(2)女性では骨塩量低下と関連(3)開眼片足保持時間の低下,重心動揺の増加など立位動揺性の増大,起立性血圧変動の増加など,転倒リスクと相関—といった知見も判明した。また,baPWV高値が関節リウマチと関連するとの報告もあるという。 同准教授は,老化のプロセスは多様だが,baPWVで評価される動脈stiffnessが,要介護へと至る病態の共通要因として働いている可能性を指摘(図)。「“人は血管とともに老いる”という言葉は,血管老化が単に寿命を決定するだけでなく,要介護の重要な決定要因でもあることを示唆している」と述べた。
出典 Medical Tribune 2011.11.24
版権 メディカルトリビューン社 <番外編> 本日届いた日内会誌にKYOTO HEART Studyについての興味深い投稿がありました。 専門医部会 シリーズ:日本発臨床研究の紹介と反省点を語る
(日内会誌 第101巻 第1号 H24.1.10P190~196) KYOTO HEART Studyhttp://blog.m3.com/reed/20090911/KYOTO_HEART_Study
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