戯れ言たれる侏儒
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新デバイスの生体吸収性スキャフォールド(BVS)、留置2年後においても血管内腔が維持される
ABSORB Cohort B試験は、エベロリムス溶出性の生体吸収性スキャフォールド(bioresorbable vascular scaffold:BVS)の有効性と安全性を検討する第2相試験である。
11月16日までフロリダ州オーランドで開催されていた第84回米国心臓協会・ 学術会議(AHA2011)において、同試験を代表してオランダErasmus Medical CenterのRobert-Jan van Geuns氏が、留置2年後までの追跡で、BVS留置部位の血管内腔が良好に維持されていることを報告した。
 
BVSのプラットフォームは生体吸収性の材質で、冠動脈に留置すると徐々に代謝・吸収され、最終的には完全に分解されて消失する。
こうした特性を持つ薬剤溶出性BVSは従来の金属製プラットフォームを有する薬剤溶出性ステントに比べて、遠隔期の血管内腔損失(late lumen loss)が生じにくい
ただし、第1世代として開発された「ABSORB BVS 1.0」は6カ月後に血管内腔が狭まってしまう傾向が見られたため、プラットフォームを改良し血管支持強度を高め、血管内での支持期間を延長するようにした第2世代の「ABSORB BVS 1.1」が開発された。
今回用いられたのは第2世代のABSORB BVS 1.1で、6カ月後の血管内腔損失は第1世代の0.43mmに比べて0.19mmと、さらに成績が向上していることが示されている。

ABSORB試験は複数の試験から構成され、ABSORB Cohort B試験は2年間のフォローアップ期間の有効性と安全性について検討するもの。

本試験は欧州、オーストラリア、ニュージーランドの12施設で実施されたオー プンラベルのプロスペクティブ試験であり、2009年3月~11月の期間に101例が登録された。

今回の解析対象はそのうち45例で、 ABSORB BVS 1.1の留置から2年間フォローアップされた44例を対象にMACE(心臓死、心筋梗塞、血行再建術再施行の複合エンドポイント)の発生率を調べ、さらに 44例のうち光干渉断層計(OCT)検査を受けた28例を対象にBVS留置領域の血管内腔を評価した。

45例の背景については、男性比 率が73%、平均年齢が65歳。

また、心筋梗塞の既往が36%、糖尿病が13%、高コレステロール血症(治療中)が93%、高血圧(治療中)が60%、喫 煙者が11%であった。
病変部位は、左前下行枝(LAD)が38%、右冠動脈(RCA)が36%、左回旋枝(LCX)が24%などで、病変分類はB1と B2で95%を占めた。なお、デバイス留置成功率は100%、手技成功率は98%であった。

2年後のフォローアップでは、心臓死は認められず、非Q波心筋梗塞が1例で発生し、PCI再施行が2例で行われたため、MACEの発生は3例(6.8%)だった。

なお、スキャフォールド血栓症(ARC定義)の発生は認められなかった。

また、OCTを用いた観察では、BVS留置部位の血管内腔は2年間にわたり安定して維持されること、BVSは想定されていたとおり吸収が進んでいること、血管内膜の過形成は最低限に留まっていることが確認された。

 以上の検討からvan Geuns氏は、「BVS留置2年後のMACEの発生率は6.8%と低く、金属製のプラットフォームを持つ従来のエベロリムス溶出性ステントの治療成績と同等であった。また、BVSは想定通り吸収が進んでいるが、BVS留置領域の血管内腔は安定して維持されていた」と結論した。

ディス カッサントである米国University Hospitals Case Medical CenterのMarco Costa氏は、BVSでは留置後にデバイスが破損するリスクがあることを指摘しつつも、「その有効性と安全性は優れており、いまや薬剤溶出性の金属製ス テントとの直接比較試験を行うときである」とコメントした。

出典  NM online 2011.11.19

版権 日経BP社

 
<関連サイト>
生体吸収性ステント

生体吸収性エベロリムス溶出ステント

 
生体吸収性スキャフォールド(BVS)
 
ABSORB試験
 
生体吸収性ステントの安全性
 
溶けて消えるDES
 
<番外編>
オルメサルタンは血漿中ATⅡを低下させる!?
http://yaplog.jp/hurst/archive/206
<私的コメント>
一般的にARBは血漿中ATⅡが上昇するはずです。
オルメサルタン→血漿中ATⅡ↓のメカニズムを知りたいところです。
 
<きょうの一曲> ゴルトベルク変奏曲
Glenn Gould, Goldberg Variations, 1981
http://www.youtube.com/watch?v=zpx6hJZ0-9o&feature=related

 
 
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感染性心内膜炎はいつ,どのように手術を決断するか
“その患者は以前から大動脈弁の病気があり,心不全の治療が施されていた。あるときから不規則な発熱が見られ,夜になると発熱し,胸の痛みを訴え, 落ち着きがなくなり,憔悴した。数日後には,次々と塞栓症状が見られるようになった。片麻痺,脾臓辺りの痛み,背部痛と血尿が出現した”



これは,1885年William Oslerが行った有名な講義Gulstonian lectureの一節で,典型的な感染性心内膜炎の1症例を紹介しています。
当時,この疾患が感染によるものかどうかさえはっきりせず,有効な治療法はなく,ほとんどが死に至ったとされています。
その後,病因が解明され,抗生物質が普及し,ようやく有効な治療が可能となります。
さらに心エコーをはじめとしたさまざまな診断技術が導入され,外科的治療も開始されます。
しかし,感染性心内膜炎では今なお高い死亡率が報告されています。
ここでは,感染性心内膜炎 治療の現況,特に外科手術の有用性を検討してみます。
 
今月の症例
60歳,女性。倦怠感と発熱を主訴に受診。
現在は軽労作でも強い息切れが認められる。
血液検査では,白血球数が2万2,000/μLと著明に上昇。心臓超音波検査では,心拡大はなく,心機能も正常だが,重度の大動脈弁逆流と,直径12mmの疣贅の付着が認められる
 
今なお高い入院死亡率,手術は有効か
本症例は心不全〔ニューヨーク心臓協会(NYHA)心機能分類Ⅲ度〕を合併した感染性心内膜炎と考えられます。
まずは血液培養で起炎菌を同定し,抗生物質療法を中心とした内科的治療を行うことになります。

では,死亡率や重篤な合併症の発症率はどの程度あるのでしょうか。
国際共同研究(ICE-PCS)が,2,781例を対象に前向きコホート研究を報告しています(Arch Intern Med 2009; 169: 463)。
彼らの報告では,感染性心内膜炎全体の入院死亡率は現在でも17.7%と高く,5~6人に1人が命を落としていることになります。
重篤な合併症 の発症頻度も高く,脳梗塞が16.9%,それ以外の塞栓症が22.6%,心不全が32.3%,心内膿瘍が14.4%です。
多くの症例で経過中に外科治療が 必要となり,約半数(48.2%)で手術が行われています。
 

本症例では手術は必要でしょうか。
手術の有効性については,手術治療群と内科治療群の治療成績を比較した7件のpropensity score解析がこれまでに報告されています。
そのうちいくつかの報告で,初回入院中の手術治療により死亡率が低減することが示されています。
最初の報告 であるVikramらの513例を対象とした後ろ向き研究では,手術治療群で急性期の生存率が明らかに良好でした()。

図表

さらに彼らは,中等度以上の心不全を合併した症例で,特に外科治療の有用性が高いと報告しました。

また,ICE-PCSが行ったこれまでで最大規模の解析でも,手術により11.2%の死亡率軽減効果があると報告されています(Circulation 2010; 121; 1005)。
こちらでは弁周囲の膿瘍や全身の塞栓症,黄色ブドウ球菌感染症がある場合に手術の有用性が高いと報告されています。
ただ,必ずしもすべての報告で統一した見解が得られているわけではありません。
 

こうした報告を受けて,2009年の欧州心臓病学会(ESC)ガイドラインでは外科手術の適応として,心不全,全身塞栓症の予防,感染のコントロールの 3つを挙げています。
本症例でも心不全があり,さらに10mm以上の大きな疣贅があるため,外科治療を積極的に考慮すべきであると考えられます。
 
なお,心不全に関しては,前述のICE-PCSからの最新報告(JAMA 2011; 306: 2239)で,特に重度の心不全症例で手術の有用性が確認されています。
 
議論の残る手術のタイミング
では,すぐに手術を行った方がよいのでしょうか。
手術に踏み切るタイミングはさらに議論の残る課題です。
通常,感染性心内膜炎ではプロトコルに沿った 2~6週間の抗生物質投与が行われます。
手術のタイミングには,抗生物質投与を完了させてから行う非活動期手術と,完了を待たずに手術を先行する活動期手術に分けられます。
 
手術時期を早めることで成績は向上するのでしょうか。米国胸部外科学会レジストリーによる1万9,543件の解析では,活動期手術は非活動期より死亡率が高い(オッズ比2.00)ことが示されています〔J Thorac Cardiovasc SurgJTCS) 2011; 141: 98〕。
またDavidらの活動期手術383例の15年成績では,感染の再燃が14%,再手術が30%に見られ,生存率は44%と低く,術後成績は決して良好とはいえません(JTCS 2007; 133: 144)。
さらにThunyらは,活動期心内膜炎の中でも診断から7日以内の早期手術は,それ以降の手術と比べて,感染の再燃が有意に高くなるとしています(Eur Heart J 2011; 32: 2027)。
 
では,心不全と感染のコントロールができるまで,手術を行うべきではないのでしょうか。
手術を遅らせた場合,保存的には心不全や感染のコントロールができず,死亡してしまう危険性も考えられます。
しかし,こうした死亡例は前述の報告では対象に含まれていません。
このような場合に早期に外科的に介入することで救命できるでしょうか。
 
そこで,こうした手術非施行例も含めた早期手術プロトコルと保存的プロトコルを比較したpropensity score解析がわが国から報告されています(JTCS 2011; 142: 836)。
そこでは,心内膜炎関連死亡やイベント回避において,2週間以内に手術を行った方が治療成績は良好であったと報告されています。
また前述の Thunyらは,対象を重症度の最も高いグループに限定すれば,早期手術は後期手術より明らかに死亡率が低かったとしています。
これらの結果は,特に内科的に心不全や感染のコントロールが難しい症例で,早期に手術に踏み切ることで治療成績を改善できる可能性が示されています。
このように,早期手術では高い 手術侵襲や感染再燃が危惧され,一方,手術を遅らせれば,内科的にコントロールができなかった場合,さらなる症状の悪化を迎えるというジレンマで,まさに 苦渋の選択となるわけです。
 
前述のESCガイドラインでは,手術のタイミングに関する指針を提唱しています()。
例えば心不全では,肺水腫や心原性ショックがあり,内科治療に反応がなければ緊急手術,治療後も心不全が持続,または肺高血圧や早期僧帽弁閉鎖などにより心エコー指標が悪い場合には数日以内の早期手術を施行し,心不全がコントロールできれば待機手術の検討を推奨しています。
本症例でもまず内科的な心不全や感染の管理を試み,その反応で手術時期を検討することになります。
 
図表


現在の感染性心内膜炎治療は,冒頭のOslerの時代とは大きく様変わりしています。
中でも抗生物質の導入は,治療成績を大きく改善しました。
ところが,外科的治療が本格的に導入された最近20年間の治療成績はそれほど改善していないとの報告も見られます。
感染性心内膜炎に対する外科的治療は,その適 応やタイミングについて,いまだ明らかにされていないことが多く残されています。
 
出典  Medical Tribune 2011.11.22
版権  メディカルトリビューン社
 
<番外編>
「コ・メディカル」使用しないで…英語では“喜劇的”と誤解も? 日本癌治療学会
■日本癌治療学会理事長の西山正彦氏は1月25日,学会発表などの場で「コ・メディカル(コメディカル)」ではなく,個別の医療専門職名を使用するよう会員 向けに通知した。今年(2012年)秋の第50回学術集会から,このルールが適用されるという。

学会では「コ・メディカル」が“comedy”の形容詞 と誤解される可能性などを指摘している。
■コ・メディカルという用語が登場する前は,英語のパラメディック(paramedic,paramedical staff)との呼称が用いられていたようだ。

しかし,その後,チーム医療を推進するための意識向上を図る「共同」や「仲間」を意味する英語の接頭辞を付 けた和製英語として提唱され,特に日本の医療関係者の間では広く知られる用となった。
しかし,同学会は,

(1)意味する職種の範囲が不明確,
(2)Comedy(喜劇)の形容詞(comedical:通知原文ママ)と解釈される場 合があり,和製英語としても不適切,
(3)「医師とそれ以外」といった上下関係を暗示させすべての医療人が対等に参画することが原則のチーム医療の精神に反するなどの問題点がかねてより指摘されている
-として,今後この用語を使用しないことを決めたという。
出典  MT Pro 2012.1.27
版権  メディカルトリビューン社

最初は「ごもっとも」と思いましたが、 「通知原文ママ 」がひっかかりました。
ちょっと考えたら comedical という言葉は英語にはなく、comicやcomicalがcomedyの形容詞です。
ちょっと「笑え」ました。


コ・メディカル
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B3%E3%83%BB%E3%83%A1%E3%83%87%E3%82%A3%E3%82%AB%E3%83%AB

 
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第34回日本高血圧学会でのシンポジウムの「アンチエイジング」の記事で勉強しました。
アンチエイジング目指す高血圧研究成果が明らかに
動脈stiffnessの増大や血管リモデリングといった血管の老化は,高血圧の病態と深くかかわっている。
第34回日本高血圧学会〔会長=自治医科大学内科学講座循環器内科学部門・島田和幸教授(同大学病院長)〕のシンポジウム「アンチエイジングからみた 高血圧研究」(座長=愛媛大学大学院分子心血管生物・薬理学・堀内正嗣教授,大阪大学大学院臨床遺伝子治療学・森下竜一教授)では,アンチエイジングの視 点でとらえた最先端の高血圧研究の成果が報告され,長寿遺伝子によるレニン・アンジオテンシン系の抑制,抗酸化作用を有するARB,スタチン,タウリンなどによる抗老化作用の可能性や,脈波伝播速度が全身老化の指標としても有望であることを示す報告などが注目を集めた。

Sirtuin 1遺伝子による長寿機序
レニン・アンジオテンシン系抑制が関与
長寿遺伝子として知られるsirtuin (SIRT)1による延命効果に,レニン・アンジオテンシン(RA)系の抑制が関与することが判明した。
九州大学大学院先端心血管治療学講座の市来俊弘教 授らが,赤ワインに含まれるポリフェノールの一種,レスベラトロール(RSV)のSIRT1活性化機序を検討する中で明らかにした。
 
AT1受容体発現を抑制
SIRT1はヒストンや転写因子の脱アセチル化により抗炎症作用などを発現し,長寿をもたらす。
RSVはSIRT1の活性化を介して,多くの種で延命効果を発現する。

市来教授らは,
(1)ARBのfonsartanが高血圧自然発症ラット(SHR)の寿命を2倍に延長
(2)AT1受容体欠損マウスは長寿
—などの報告に着目。
RSVによるSIRT1活性化がAT1受容体の発現と機能に及ぼす影響を検討した。

まず,ラット大動脈由来培養平滑筋細胞(VSMC)をRSV(100μM)で刺激すると,12時間後をピークにmRNA・蛋白レベルでAT1受容体発現が有意に抑制された。
この作用はSIRT1拮抗薬のニコチナマイド添加により消失することから,SIRT1活性化を介すると推測された。
 
そこで,アデノウイルスベクターを用いて,VSMCにSIRT1を過剰発現させたところ,ウイルス量,すなわちSIRT1発現量に依存してAT1受容体発現が減少。
SIRT1活性化が,AT1受容体発現をダウンレギュレーションすることが分かった。
 
機能的にも,VSMCに空ベクターを感染させた群ではアンジオテンシンⅡ(AⅡ)刺激によりERKの活性化が生じたが,SIRT1を含むベクターで SIRT1を過剰発現した群ではERK活性化が生じないことから,SIRT1の活性化がAⅡの作用を抑制することが証明された。
 
一方,RSVはAⅡにより誘導されるインターロイキン(IL)-6 mRNA発現を濃度依存性に抑制。
これには,RSVによる転写因子CREBとNF-κBの抑制が関与していた。
 
In vivoでの検討により,RSVを投与したマウスでは,AⅡ持続注入によるIL-6産生や冠動脈周囲の線維化が抑制されることも判明した。
ヒドララジンではこうした抑制は認められず,降圧を介した効果でないことも確認された。
 
同教授は「SIRT1による長寿機序には,AT1受容体の発現減少を介したRA系抑制が少なくとも一部関与している」と結論した。
なお,今回用いられたRSV量は赤ワイン125~250瓶に相当するという。


ARB,スタチン,タウリン
幹細胞・血管内皮前駆細胞の活性化介する抗老化作用に期待
日本大学腎臓高血圧内分泌内科学の福田昇教授らは,抗酸化作用を有するARBやスタチン,抗酸化食品のタウリンなどが,血管内皮前駆細胞 (EPC)の機能改善,心臓・腎臓の幹細胞増加を介して高血圧性臓器障害や血管傷害の修復を促し,抗老化作用を発現する可能性を指摘した。

“保存的再生医療”を提唱
最近,幹細胞やEPCが成人臓器にも存在し,臓器障害や血管内皮傷害を修復していることが分かってきた。
一方,高血圧や糖尿病,メタボリックシンドロー ムなど酸化ストレス状態では,組織幹細胞,EPCなど自己修復細胞の機能が低下,最終的に心血管疾患に至ると考えられる。
 
そこで,福田教授らはこれら自己修復細胞に着目。
高血圧性臓器障害,血管傷害における役割と,抗酸化薬,抗酸化食品による抗老化作用を解明するため検討を行った。

脳卒中易発症高血圧ラット(SHR-SP)に食塩を負荷すると,組織AⅡによる酸化ストレスによってEPC数,EPCコロニー形成能の低下や心筋幹細胞,腎髄質幹細胞〔Label-retaining cell(LRC)〕の著明な減少が認められる。
この食塩負荷SHR-SPにARBを投与すると,
(1)抗酸化薬tempolと同等にEPC数が増加(ロサルタン)
(2)EPCコロニー形成能が著明に改善(ロサルタン,バルサルタン,カンデサルタン)
(3)心筋幹細胞が有意に増加(カンデサルタン)
(4) 腎髄質LRC数が有意に増加(バルサルタン)
—が判明した。

 
EPCコロニー内にはAⅡ産生系のすべての構成因子の存在が認められ,ARBによるEPC機能の改善はARBの直接作用と考えられた。
 
一方,スタチンにはpleiotropic作用が存在し,強い抗酸化作用を示す。
同教授らも,アトルバスタチンによりEPCコロニー形成能の改善,EPC数の有意な増加,酸化ストレスの有意な減少を見いだした。
 
臨床的にも,本態性高血圧症患者30例におけるロサルタンとサイアザイド系利尿薬・トリクロルメチアジドのクロスオーバー試験で,ロサルタンによる EPCコロニー形成能の有意な改善が判明(P<0.01)。
さらに,食生活による抗老化を検討する目的で,健康ボランティアにタウリン3g/日を2週間投 与したところ,酸化ストレスの有意な低下とEPCコロニー形成能の有意な改善が確認された(ともにP<0.05)。
 
こうした成績を踏まえ同教授らは,幹細胞やEPCの修復機能の改善により心血管疾患を防ぎアンチエイジングを目指す“Conservative regenerative medicine(保存的再生医療)”を提唱しており,「高血圧患者における老化予防の観点からは,抗酸化薬であるARBやスタチン,抗酸化食品のタウリンや,今回成績は示さなかったがマグネシウムが推奨される」との見解を示した。


脈波伝播速度が全身老化の指標に
血管年齢の評価や高血圧性臓器障害の指標として上腕-足首脈波伝播速度(baPWV)が日常診療で広く応用され,その上昇が心血管疾患のリスクであることが分かってきた。
そうした中,愛媛大学加齢制御内科の小原克彦准教授らは,抗加齢ドック受診者での検討を基に,baPWVが血管老化だけでなく, 全身老化の指標としても有用であることを明らかにした。
 
認知機能と有意な負の相関示す
老化は,老年医学的には要介護へ至るプロセスととらえられる。
小原准教授らは,抗加齢ドック受診者約1,000例を対象に,baPWVと多彩な老化指標との関連性を検討した。
 
脳血管障害,中でも小血管病とbaPWVとの強い相関が報告されているが,同准教授らも,年齢や血圧で補正後も無症候性ラクナ,微小脳出血を伴う群で,それぞれbaPWVが有意に上昇することを見いだした(順にP<0.0001,P=0.008)。
 
こうした成績からは,baPWVと認知機能低下との関連がうかがわれる。
 
実際,年齢,性,血圧で補正後もbaPWVは,
(1)海馬を含む側頭葉内側部萎縮の指標である側脳室下角面積で評価した萎縮の程度が高いほど有意に上昇 (P<0.0001)
(2)タッチパネル式認知機能テストの点数と有意な負の相関を示す(r=−0.2,P=0.0008)
—などの事実が明らかになっ た。
 
一方,筋肉減少症や骨塩量低下は,老年症候群や脆弱性(frailty)の重要な要因となる。
この点についてbaPWV高値は,
(1)男性では筋肉減少 症の指標である体重当たりの大腿筋横断面積と有意な負の相関を示し,内臓肥満と筋肉減少症を合併するsarcopenic obesityと関連
(2)女性では骨塩量低下と関連
(3)開眼片足保持時間の低下,重心動揺の増加など立位動揺性の増大,起立性血圧変動の増加など,転倒リスクと相関
—といった知見も判明した。
また,baPWV高値が関節リウマチと関連するとの報告もあるという。
 
同准教授は,老化のプロセスは多様だが,baPWVで評価される動脈stiffnessが,要介護へと至る病態の共通要因として働いている可能性を指摘()。
「“人は血管とともに老いる”という言葉は,血管老化が単に寿命を決定するだけでなく,要介護の重要な決定要因でもあることを示唆している」と述べた。
 
図表
 
出典  Medical Tribune 2011.11.24
版権  メディカルトリビューン社

 
<番外編>
本日届いた日内会誌にKYOTO HEART Studyについての興味深い投稿がありました。
専門医部会 シリーズ:日本発臨床研究の紹介と反省点を語る
(日内会誌 第101巻 第1号 H24.1.10P190~196)
 
KYOTO HEART Study
http://blog.m3.com/reed/20090911/KYOTO_HEART_Study
 

 

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高齢者高血圧の治療現場

戯れ言たれる侏儒 / 2012.01.27 00:39 / 推薦数 : 0
第34回日本高血圧学会での島田和幸会長による会長講演「高齢者高血圧の研究」の記事で勉強しました。

地域医療の現場から高齢者高血圧を追究
第34回日本高血圧学会で島田和幸会長は「高齢者高血圧の研究-地域医療の現場から」と題する会長講演(座長=高知医科大学・小澤利男名誉教授)を行った。
米タフツ大学リサーチフェローを経て,1981年以降高知医科大学(現高知大学)老年病科で10年,次いで自治医科大学で20年にわたり,高齢者高血圧にフォーカスした研究の軌跡を語り,高齢者高血圧の治療が極めて今日的な問題であることを示した。
 
高齢者血圧の規定因子は構造的要因が優位
高知医科大学に赴任した1980年代前半,加齢に伴う心拍出量の減少は必ずしも一様ではなく,日常活発に活動している高齢者では心拍出量は意外にも維持されていることがCirculationに報告され,生理的加齢変化の考え方に大きな変革がもたらされた。
当時提唱されたsuccessful agingの概念は,個々人の生活習慣や生活環境によって老化が左右されることを示し,島田会長にとって,従来加齢変化と考えられていた多くの現象を根本から見直す契機となった。
それにはまず,心血管系の正常加齢変化とは何かを明らかにしなければならない。
高知県の地域住民ボランティアを正常対象者とし て,精力的な研究が開始された。
 
まず,同大学の理工学系の研究者らとの共同研究を通じて生物統計学の手法を取り入れ,地域ボランティアの測定値を基に,年齢,調圧反射機能,SBP,血漿カテコールアミンの相関関係を検証。
大動脈硬化が起こると,頸動脈内の圧受容体が血管壁の張力変化を感知しにくくなり,結果として交感神経が亢進し,血圧上昇の一因となることを証明した。
すなわち高血圧の病態は,神経・液性循環調節因子よりも,心血管系が肥大し,血管が硬くなるという構造的要因が加齢とともに優位になることが明らかになった。
 
実際に健康若年者と健康老年者を比較すると,心係数や末梢血管抵抗に大きな変化は見られない。
しかし健康高齢者と高血圧高齢者を比較すると,後者で末梢血管抵抗係数や左室重量係数が有意に増加する。
当時,60歳以上を対象とした研究はほとんどなく,一連の成果をHypertensionに報告すると,“much needed data”と高い評価を受けた。
 
同会長は,高齢者高血圧の研究について「高齢者の究極のテーマは,老いてなおいかに健やかさを保つかであり,心拍出量が何%低下したかではなくて,最大の関心は脳卒中にだけはなりたくないということだ」と指摘。研究のフォーカスは,高齢者高血圧による臓器障害,特に心疾患以上にQOLに深刻な影響をもた らす脳血管障害となった。
同会長は,MRIを導入して高血圧の高齢者における無症候性脳血管障害の定量的な解析を開始した。
この試みは全国でも初の試みであり,同時にこの時 期,24時間血圧計が臨床で使えるようになったため,いち早く血圧日内変動と脳血管障害の関連を追究し,dipper,non-dipperの概念を提唱。
ラクナ梗塞の数は夜間の血圧降下が少ないnon-dipperで有意に多いことを1992年にHypertensionに報告。「
脳卒中は夜間の血圧低下によって発症する」という当時の定説を覆した。
 
1991年に自治医科大学に赴任後は,日本各地で地域医療に従事する同大学出身者と連携して,高齢者高血圧と脳卒中の関連をさらに広範に追究していった。
 
超高齢者,要介護老人の降圧治療をどうするか
 当時,兵庫県淡路島の診療所に在勤していた苅尾七臣氏(現自治医科大学循環器内科主任教授)は,島田会長との共同研究を通じて,夜間の血圧が過度に低下するextreme-dipperもnon-dipperと同様に無症候性脳血管障害が増加していることを報告。
その後,起床直後に血圧が急上昇する morning surge群で無症候性脳梗塞の頻度が有意に高い(P=0.02)ことを見いだし,同会長と共著でCirculationに報告した。
 
これらの長年にわたる先駆的な研究の蓄積から,現在は外来以外の血圧が重要であることが周知となっている。自治医科大学関連グループが約1,000例の 高血圧患者で外来血圧と家庭血圧を調べたところ,外来・家庭のいずれでも高血圧の範ちゅうに入る例が38%,外来血圧のみ高い白衣高血圧が18%,外来は 正常だが家庭血圧が高い仮面高血圧が23%,いずれの血圧も正常値を示すものが21%だった。
同会長は現在,約2万例の高血圧患者を対象とする前向き観察 研究HONEST studyを進めており,降圧薬の投与を開始した症例で外来血圧と家庭血圧を測定し,心血管イベントの発症との関連を調べている。
同会長は同試験の意義に ついて,現在の診療形態において家庭血圧をどう理解し臨床に組み込むか,示唆となる研究と位置付ける。
 
心血管イベントの予防のために,高齢者高血圧をどう治療すべきか。
最近,米国心臓病学会財団(ACCF)/米国心臓協会(AHA)指針は,80歳以上でもSBPは140mmHg未満とするが,忍容性を考慮して140~145mmHgも許容される。
同時にgeneal health conditionもサポートすべきとした。
同会長は,これは非常に重要なメッセージであるとして,「地域医療にとって切実な問題である超高齢者や要介護 老人の降圧治療をどうするかなど,定量的なルールを明確にすべき問題は少なくない」と結んだ。
 
出典 Medical Tribune  2011.11.12
版権 メディカル・トリビューン社

 

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女性のHDL-C低値で心房細動発症リスクが有意に増大
東北大学循環器内科教授・下川 宏明 
Circulation Journal編集長のコメント
大規模な健康診断データを利用した本研究において,HDL-Cの低値が女性でのみ,心房細動発症の危険因子であることが示唆されました。
LDL-C高値では逆相関も示唆されたことから,このcholesterol paradoxに関する今後の検証が期待されます。
 
脂質値と心房細動発症の関係は未確立
心房細動の患者数は2000年の時点で約72万人に上り,増加傾向は今後も続くと指摘されている。
そうした中,高血圧,糖尿病,心不全や冠動脈疾患が発 症に関与することが明らかになり,血圧や血糖など動脈硬化性疾患危険因子の管理が,心房細動の発症予防にもつながることが分かってきた。
一方,脂質代謝に 関しては心房細動発症との関係が十分に明らかにされていなかった。
そこで,新潟大学第一内科循環器学分野の渡部裕氏らは,住民健診のデータから脂質代謝と 心房細動発症リスクの関係を検証した。
その結果,女性におけるHDLコレステロール(HDL-C)低値では心房細動発症リスクが上昇していた。
一方で,LDLコレステロール(LDL-C)高値では発症リスクが低下傾向にあるなど,脂質代謝全般での一貫した結果は示されなかった(Circ J 2011; 75: 2767-2774)。
 
LDL-C値では予想と相反する結果に
渡部氏らの調査は,新潟県内の住民健診に基づいたもので,県内約25万人の健診データのうち,1996~98年(登録時点)に空腹時血糖値を測定しており,それ以降2005年までに1回以上毎年連続して健診を受診した者を対象に解析した。
また,登録時点での心房細動既往例や,ペースメーカ植え込み例,脂 質異常症治療薬服用例は除外した。
 
解析対象は2万8,449例で,平均年齢は59歳,女性が約65%(1万8,644例)を占めた。
追跡期間の4.5年間で265例(全体の0.9%)が 心房細動を発症。年齢調整後の発症率は2.07/ 1,000人・年で,女性の1.39/1,000人・年に対して男性では3.28/1,000人・年と高率だった。
 
動脈硬化性疾患ガイドラインに準じた脂質基準値で心房細動発症率との関係を見たところ,総コレステロール(TC)値220mg/dL未満群に比べて 220mg/dL以上群では心房細動発症率が有意に低かった(P=0.001)。また,LDL-C値140mg/dL未満群に比べて140mg/dL以上 群では有意に発症率が低かった(P=0.004)。
しかしLDL-C値については,降圧薬服用例や糖尿病,冠動脈疾患患者を除いた解析では有意差が示されず,LDL-C低値による心房細動発症リスクの上昇には他の危険因子も影響していることが示唆された。
同氏は,心血管疾患の危険因子として確立されているLDL-C高値が心房細動発症リスクにも関係すると推測していたが,結果はそれに反するものだった。
これまでの報告でもLDL-C値と心房細動発症リスクの関係について一貫した答えが得られていないため,同氏は,この解析のみから結論を導くことはできないと強調する。
しかし,ある程度確立した知見としてLDL-C低値と脳出血リスク上昇も示されていることから,「LDL-Cには適正値があり,高値がすべての心血管リスクの上昇に結び付いているわけではないのではないか」と考察している。
 
HDL-C値,女性で強い相関示すが男性で認めず
HDL-C値については,40mg/dL以上群に比べて40mg/dL未満群で有意に発症率が高くなっており(),この両群間の差は,降圧薬服用例や糖尿病,冠動脈疾患患者を除いた場合にも認められた。
一方,トリグリセライド(TG)値については150mg/dL以上群と150mg/dL未満群で同等の発症率だった。
 
図表
 
さらに,男女別で脂質値と心房細動発症リスクの関係を見たところ,女性ではHDL-C 40mg/dL未満群のハザード比(HR)が2.86で40mg/dL以上群に比べて有意なリスク上昇〔95%信頼区間(CI)1.49~5.50〕が示されたが,男性ではHR 1.35(95%CI 0.77~2.38)で有意差は示されなかった()。
 
図表
 
渡部氏は,HDL-C値の低下に伴う心臓への悪影響や,抗炎症薬やスタチンによる心房細動の進展抑制の報告もあることから,今回の解析で示された HDL-C低値と心房細動発症リスク増大の関係については,ある程度一貫性のある成績であると考察している。
ただし,脂質値と心房細動発症の関係について は不明な点も多く,今回の調査はあくまでも1つのコホートで示された結果であり,治療介入がリスク低下につながるかどうかは新たな知見が必要と慎重な解釈を促している。
出典  Medical Tribune 2011.12.22
版権  メディカルトリビューン社
 
<私的コメント>
このサイトhttp://mtpro.medical-tribune.co.jp/mtnews/2011/M44511021/で紹介された「研究者の横顔」もちょっといいですね。
 
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SHRで降圧効果と腎保護作用を確認
アンジオテンシンⅡ(AⅡ)ワクチンの効果を検証する第Ⅱa相試験の結果が2008年にLancetに報じられ,特に早朝から日中 での有意な降圧効果が明らかになった。
しかし,降圧作用の機序や腎障害に対する効果など不明な点が多い。慶應義塾大学腎臓内分泌代謝内科(伊藤裕教授,篠 村裕之准教授)のグループは,AⅡタイプ1(AT1)受容体ワクチンの高血圧自然発症ラット(SHR)への効果を検証。
降圧効果だけでなく,腎保護作用も確認。
3回接種で約半年間効果が持続することが判明したと,同グループの畔上達彦氏が第34回日本高血圧学会〔会長=自治医科大学内科学講座循環器内科学部門・島田和幸教授(同大学病院長)〕で報告した。
 
3回接種が至適,効果は約半年持続
検証は,AT1受容体ワクチンの降圧効果と腎保護効果の解析,至適接種回数と降圧の機序,同ワクチンの長期効果の3局面で行った。
 
まず,AT1受容体第2細胞外ループの181~188アミノ酸にシステインを付加し,キャリア蛋白質KLHと結合させた。さらにフロイントアジュバント を加えて,AT1受容体ワクチンを作製。
また,無処置のSHR以外の全群に,18~21週齢にかけてNO合成酵素阻害薬L-NAMEを投与,高血圧・腎症 モデルとした。
これらのSHRを,L-NAMEのみ投与のコントロール群,4週齢,6週齢,8週齢にワクチンを皮下接種したワクチン群,KLHのみ接種し たvehicle群,ヒドララジン投与群,カンデサルタン投与群の5群に分けた。
降圧薬は,ワクチン接種群と同等の血圧を維持するよう用量を調節した。
 
SBPは,9週齢以降,コントロール群,vehicle群と比べてワクチン群,降圧薬投与群では有意に低下した(P<0.05)。
尿蛋白は,コントロール群,vehicle群で著明に増加したが,ワクチン群,カンデサルタン群で抑制された。
ヒドララジン群では,上記2群と同等の血圧を維持したが,尿蛋白 抑制効果は認められなかった。
また,糸球体スリット膜蛋白ネフリンとポドシンの発現を蛍光免疫染色で検討したところ,ワクチン群とカンデサルタン群でいず れの蛋白質も発現量が有意に増加していた。
 
次いでワクチン接種回数を1,3,6回とし,降圧効果と抗体機能を評価。1回接種では有意な降圧効果は得られず,3回接種群で10週齢以降に血圧が有意に低下。
6回接種でもほぼ同等の結果が得られた。
抗体価も3回接種,6回接種でほぼ同等の良好な上昇を示した。
抗体機能を評価するため,vehicle 群,ワクチン群の尾静脈からAⅡを投与したところ,vehicle群では注射後著明に血圧が上昇したが,ワクチン群では血圧上昇は抑制された。
ラットの培養血管平滑筋細胞にvehicle群の血清IgG,ワクチン群の血清IgGをそれぞれ添加した後,AⅡを投与した実験では,ワクチン群の血清IgG投与でのみ,細胞増殖に関与する細胞外シグナル調節キナーゼ(Erk)のリン酸化が抑制された。
 
ワクチン群とvehicle群を約1年にわたり追跡した結果,ワクチン群の降圧効果は接種後約半年間持続し,抗体価は10~14週齢でピークに達した後,半年~1年で漸減した()。
 
図表
畔上氏は一連の実験結果から,「AT1受容体ワクチンにより,高血圧だけでなく腎障害の予防効果も期待できるのではないか」と述べた。
出典 Medical Tribune  2012.11.24
版権 メディカル・トリビューン社

 

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酸化ストレス関連の新規マーカー
d-ROMsテストとBAPテストを提唱
高血圧性血管障害の成因には,酸化ストレスが重要な役割を果たしていると考えられている。
しかし,内膜肥厚やプラークの有無などは超音波検査で評 価できるが,画像上把握できない,サロゲートマーカーとして日常診療上有用かつ簡便な酸化ストレスマーカーは十分ではないのが現状だ。
三井記念病院(東京都)総合健診センターの山門實所長は,酸化ストレスの新規マーカーとして,diacron-Reactive Oxygen Metabolites(d-ROMs)テストとBiological Anti-Oxidant Potential(BAP)テストの導入を提唱。
人間ドック受診者での検討で,いずれも血圧の上昇に伴って数値が上昇するなど,高血圧性血管障害の多くの臨床指標との相関が示されたと,第34回日本高血圧学会〔会長=自治医科大学内科学講座循環器内科学部門・島田和幸教授(同大学病院長)〕で報告した。
 
複数の臨床指標と有意な相関
d-ROMsテストは,血清中の活性酸素代謝物であるヒドロペルオキシドを測定・数値化し,酸化ストレス度としたテスト。
BAPテストは,血清中の抗酸 化物の鉄還元能を測定することにより抗酸化度を推定するテストである。
これらが酸化ストレスマーカーとして有用か,2010年4月~11年3月に同センターの人間ドック受診者で統計学的に検討した。
 
対象は,高血圧をはじめとする生活習慣病の治療中ではなく,かつインフォームド・コンセントが得られた3,045人。
内訳は男性1,968人(平均年齢 60.6±9.2歳),女性1,077人(同61.5±8.2歳)だった。
D-ROMsとBAPは生化学自動分析装置試薬(ウイスマー研究所)を東芝 Acute自動分析装置に適応して測定。
高血圧性血管障害は頸動脈内膜中膜複合体厚(IMT)を超音波で評価した。
 
d-ROMsテストおよびBAPテストの結果と有意な相関が認められた臨床指標は,SBP,DBP,BMI,LDL/HDL,トリグリセライド(TG),空腹時血糖値,HbA1c,HOMA-IR,高感度C反応性蛋白(CRP)だった。
 
血圧値との関連では,男性はSBP 120mmHg以上でd-ROMsが有意に高値となり,BAPも140mmHg以上で有意に上昇した。
また,DBP 80mmHg以上でd-ROMsが有意に上昇,BAPは90~99mmHgで有意な上昇を示した。
女性ではSBP 140mmHg以上でd-ROMsが有意に上昇,BAPは90mmHg台で有意となった。
DBPでは既に80mmHg台で酸化ストレスが有意に上昇,抗酸化能も同様だった。
さらに,男女ともにIMT 2.1mm以上でd-ROMsのみ有意に上昇した。
多変量解析の結果,特に男性でd-ROMsテストがBMI,食塩摂取量,実年齢に次ぐ高血圧の独立した予知因子であることが分かった。
女性は,BMI,実年齢,食塩摂取量が独立の予知因子だった。
 
山門所長は「特に酸化ストレスの指標d-ROMsは正常高値血圧群で既に有意な高値を示し,とりわけ男性で高血圧性血管障害の有用なマーカーになりうる可能性がある」と述べた。

出典 Medical Tribune  2011.11.24
版権 メディカル・トリビューン社

 
 
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胸郭内インピーダンスは心室性不整脈イベント予測にも有用
胸郭内の電気抵抗を評価するデバイスが登場
心機能の悪化に伴い同期不全が生じると,心不全がさらに進行し,不整脈イベントの発生リスクも高まる-重症心不全で多く見られるそのような悪循環に対して,両室ペーシング機能を有する心臓再同期療法(CRT)や除細動機能も有するCRT-Dが臨床効果を上げてきた。
さらに2007年には,胸郭内の電気抵抗(胸郭内インピーダンス)を評価する機能を搭載したCRT-Dが登場。
心不全の悪化徴候をいち早くとらえることができるようになった。
筑波大学大学院循環器病態医学分野の関口幸夫講師は,国際多施設研究Concerto-ATのコホートを後ろ向きに解析し,CRT-Dに搭載された胸郭内インピーダンスの測定で閾値を超えた変化が生じた場合には,心不全の悪化だけでなく,心室性不整脈の発生リスクも高いことを明らかにした(Circ J 2011; 75: 2614-2620)。
 
未確立の指標でも臨床的意義は高い
胸郭内インピーダンスは胸郭内の電気抵抗のことで,前胸部に留置されたデバイス本体と右室内に挿入されたリードのコイル電極間の抵抗を測定した値だ(図1)。
肺に水がたまると電気伝導性が高まる原理を利用して肺うっ血の徴候をとらえるものだが,胸郭内の電気抵抗は,肺炎や胸部の傷害といった他の影響も受けるため,心不全以外の症状も反映してしまうことがある。
 

図表

 
OptiVol®はメドトロニック社が開発した胸郭内インピーダンスのモニター装置で,CRT-Dや植え込み型除細動器 (ICD),ペースメーカにも搭載されている。
このOptiVolでは,植え込み後30日間の胸郭内インピーダンス測定値を参考値として,30~34日の間に正常範囲が設定される。
これが完了すると,毎日心機能が比較的安定している12時~17時の間,20分ごとに計測が行われ,閾値を超えると警告される仕組みになっている。

胸郭内インピーダンスは,このように,一般医や患者が測定できる血圧や左室駆出率などとは異なり,仕組みも閾値の設定も複雑な未確立の指標といえる。
それでも,注目されるのはなぜか。
 
CRT-Dが植え込まれる重症心不全患者は,致死性不整脈の発生リスクも高く管理が難しい状態にある。
うっ血などの心不全症状の悪化は不整脈を誘発しやすい重要な徴候であるが,これまで心不全の悪化を評価できる機能はデバイスに備わっていなかった。
「OptiVolが登場して,胸郭内インピーダンスが測定できるようになったことは,重症心不全に向き合う臨床医にとって画期的なことであった」と関口氏は言う。
 
心室性不整脈イベントは閾値超後早期に多発
Concerto-AT研究は,日米欧41施設でOptiVol機能を有するCRT-Dが植え込まれた282例を対象に,慢性重症心不全における心房への電気的除細動の有用性を示した前向きコホート研究だ(Pacing Clin Electrophysiol 2009; 32: 13)。
関口講師らは「OptiVolで評価される心不全悪化の徴候は,不整脈イベントにもつながっている」という仮説を証明すべく,このコホートの後ろ向き解析を行った。
対象患者282例は男性が7割,平均年齢68.3歳,ニューヨーク心臓協会(NYHA)心機能分類Ⅲ度が93%,Ⅳ度が7%の重症心不 全群だった。

CRT-D植え込み後の平均観察期間は10カ月。
OptiVolによる胸郭内インピーダンスの測定で閾値を超えたのは145例(51%)221件で,正常範囲内で推移したのは137例だった。
この閾値を超えた閾値逸脱群と正常範囲群に分け,頻脈性不整脈発生率を比較した。
 
その結果,全体で発生した頻脈性不整脈は129例(46%)4,725件で,うち閾値逸脱群(145例)では3,241件のイベントが発生しており,正常範囲群(137例)の1,484件に比べて有意に多く発生した(P<0.0001)。
また,心室性不整脈と心房性不整脈の内訳を見ると,ともに閾値逸脱群の方が正常範囲群よりも発生が有意に多くなっていた()。
 

図表

 
さらに,閾値を超えた後に発生した不整脈イベントを抽出し,発生時期を確認したところ,心室性不整脈イベントについては,閾値を超えてから1カ月以内の発生数がそれ以降の発生数より有意に多くなっており(図2),閾値逸脱後早期に起こりうる心室性不整脈の発生に注意を要することが示された。
 

図表

 
同講師は「胸郭内インピーダンスの閾値を超えた患者では,まず心不全の悪化が予測されるが,その際には心室性不整脈のリスクも認識すべきことが分かっ た」と述べる。
具体的な対応としては,利尿薬の追加や塩分摂取の減量などで体循環の血液量を減少させることが重要になるという。
つまり,心不全の進行をより厳格に食い止めることで,不整脈イベントも抑制できるということだ。
同講師は,現在の閾値設定の妥当性の検証や,心不全の予測能を高める方法の開発が今後の課題であると指摘している。

出典 Medical Tribune  2011.11.24
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<自遊時間>
自覚症状や体重変化との関係はどうなのでしょうか。
欧米の臨床研究では、こういった知見を日常臨床にフィードバックさせる手法をしばしば用いています。
少なくとも、こういった「物入り」な装置を使用する限りは、従来の手法(自覚症状はもちろん体重変化や尿量チェックなど) よりはるかに鋭敏でかつ有用でなければいけないと思うのですが。
 
 
 

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AIM-HIGH 

戯れ言たれる侏儒 / 2012.01.21 00:24 / 推薦数 : 0
【AHAリポート】AIM-HIGH スタチン治療へのナイアシン追加投与の有用性見いだせず
HDL-C低値の心疾患患者に対し、積極的な脂質低下療法に、徐放性ナイアシンを追加投与することで、心血管イベントの発生リスクは抑制できず、追加投与の意義は認められなかった。
11月12~16日まで、米国・オーランドで開催された米国心臓協会年次学術集会(AHA)2011で、11月15日に 開催された「Late-Breaking Clinical Trials」セッションで、AIM-HIGH Investigatorsを代表して、William E.Boden氏が、「AIM-HIGH(Atherothrombosis Intervention in Metabolic Syndrome with Low HDL/High Triglycerides : Impact on Global Health Outcomes)」試験の結果を報告する中で明らかにした。(望月英梨)

心疾患患者の治療に際し、スタチン治療により目標としたLDL-C値に到達しているにもかかわらず、心血管系リスクが残存することが指摘されている。
試験は、心疾患と診断され、スタチンと必要に応じたエゼチミブによる最適化した脂質低下療法を受けているにもかかわらず、HDL-C値が低い患者に、徐放 型ナイアシンを上乗せすることで、残されている心血管イベント発症リスクを軽減することができるか、長期間追跡し、検討した。


対象は、

①冠動脈性疾患、脳血管疾患、末梢血管疾患(PAD)のいずれかを合併する45歳以上
②脂質異常症(ベースライン時のHDL-C低値:男性 <40mg/dL、女性<50mg/dL、TG:150~400mg/dL、LDL-C<180mg/dL)
――を満たす患者。
米国とカナダの92施設か ら登録された。
すべての患者は、シンバスタチン40~80mg/日を投与し、必要に応じてエゼチミブ10mg/日を追加投与し、LDL-C値が40~80mg/dLにコ ントロールした。

その上で、試験開始時に4~8週間のrun-in期間を設け、シンバスタチン40mg/日に加え、徐放性ナイアシンを500mg/日から 1週間ごとに2000mg/日まで増量した。
①徐放性ナイアシン1500~2000mg/日投与群1718例②プラセボ投与群1696例

――の2群に分け、治療効果を比較した。
主要評価項目は、冠動脈疾患死+非致死性心筋梗塞、虚血性脳卒中+急性冠動脈疾患(ACS)による入院+冠動脈、脳血行再建による症状。

同試験は、有効性を満たしていないこと、徐放性ナイアシン投与群で虚血性脳卒中の発生が増加していることが懸念されたことから、データ安全性モニタリング委員会が中止を勧告し、2011年5月25日に中止された、追跡期間(平均)は、36カ月間。


患者背景は、平均年齢が64±9歳、男性が85.2%、白人が92.2%、糖尿病合併が33.9%、高血圧合併が71.4%などだった。シンバスタチンの投与は40mg/日未満、40mg/日、40mg/日以上がプラセボ群で11%、50%、25%。一方、ナイアシン群では19%、50%、18%だった。

一方、エゼチミブは、プラセボ群で22%に対し、ナイアシン群では10%でプラセボ群で有意に高い併用率となった(P<0.001)。


◎ナイアシン投与群でHDL-C値は有意に上昇
ベースライン時にスタチンを投与されていた群(3196例)では、LDL-C値(中央値)が71mg/dL、平均HDL-C値が35mg/dL、TG値が 161mg/dLだった。ベースライン時のスタチン投与群は、全体の94%を占め、スタチンの投与期間は1年以上が76.2%、5年以上が39.5%だっ た。
一方、スタチン非投与群(218例)では、LDL-C値が119mg/dL、HDL-C値が33mg/dL、TG値が215mg/dLだった。


2年経過時点の脂質のプロファイルをみると、ナイアシン群では、HDL-C値(中央値)が35mg/dLから42mg/dLで25.0%上昇したのに対し、プラセボ群では35mg/dLから38mg/dLで9.8%の上昇にとどまり、ナイアシン群で有意に上昇した(p<0.001)。

TG値は、プラセボ 群の8.1%に対し、ナイアシン群は28.6%、LDL-C値は、プラセボ群の5.5%に対し、ナイアシン群で12.0%いずれも有意に減少した (p<0.001)。

主要評価項目の発生率は、プラセボ群の16.2%(274例)に対し、ナイアシン群では16.4%(282例)で、ハザード比は1.02で、ナイアシン群で上昇する傾向がみられた([95%CI:0.87-1.21]、p=0.79 log-rank test)。
一方で、虚血性脳卒中の発生率は、プラセボ群の0.9%(15例)に対し、ナイアシン群では1.6%(27例)で有意差はないものの、上昇する傾向が示された(HR:1.61 [0.89-2.90]、p=0.11)。


そのほか、ナイアシン群は副次評価項目である冠動脈疾患死+心筋梗塞+虚血性脳卒中+ハイリスクのACS(1.08 [0.87-1.34]、p=0.49)、冠動脈疾患死+心筋梗塞+虚血性脳卒中(1.13 [0.90-1.42]、p=0.30)、心血管系死亡(1.17 [0.76-1.80]、p=0.47)で、いずれもナイアシン群で高い発生率となる傾向がみられた。
これらの傾向は、年齢、性別などによらず一貫した傾向を示した。


結果を報告したBoden氏は、前治療としてスタチンが94%、ナイアシンが20%投与されていたことに触れ、「ナイアシンの良好な効果を示すには限界が あった」と指摘した。

また、プラセボ群でも予期せぬHDL-C値の上昇がみられたことから、2群間の有意差を少なくしたと指摘した。

Boden氏は一方で、主要評価項目の発生率が16.2%だったことから、5.4%/年の心血管イベント発生リスクがあることを指摘。

その上で、 「LDL-C値が70mg/dL未満で、安定、非急性冠動脈疾患患者に対し、スタチン治療にナイアシンを追加投与した積極的な治療を実施することは、36 カ月の追跡期間で、HDL-C値とTG値の有意な改善をを認めたものの、臨床的効果は認められなかった」と結論付けた。
また、この結果から脂質治療におい てLDL-C値が主なターゲットであると記載された現行のガイドラインである「NCEP ATP-Ⅲ」の内容を再確認したとした。

http://www.mixonline.jp/Article/tabid/55/artid/41685/Default.aspx
 
読んでいただいて有り難うございます。
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北里研究所病院糖尿病センター・山田悟先生の記事で勉強しました。

高齢者の高コレステロール血症をどうするか
コレステロールについての残された難問

研究の背景:コレステロール治療の議論続き,新たな医学的根拠も発表
2010年以降,コレステロールの治療についてさまざまな議論がなされてきた。
そして,それにかかわるさまざまな医学的根拠は今もなお発表されているところである。
このたび,米国老年医学会雑誌に高齢者においては低コレステロールが心血管死以外の死亡の増加と関連していることを示す観察研究・ロッテルダム研究のデータが示された(J Am Geriatr Soc 2011; 59: 1779-1785)。
 
研究のポイント1:ロッテルダム市の住民を対象とした前向きコホート研究
ロッテルダム研究は,高齢者における慢性疾患の発症率や危険因子を検討する目的に行われている前向きコホート試験であり,1990年から93年にかけて,オランダ・ロッテルダム市のオンモールト地区の55歳以上の全住民に登録への協力が呼びかけられ,7,983人(住民の78%)が同意し,ベース ラインの採血を受けた。
 
今回の報告もその研究の一環としてなされたもので,2007年1月までの死亡を特定し,ベースラインでの脂質プロファイルと死亡率や死因との関係を見たものである。
採血を完了できた7,009人のうち,コレステロール値が極端に異常を呈する者〔総コレステロール(TC)>463mg/dL,HDLコレス テロール(HDL-C)>135mg/dLなど〕12人,心血管疾患の既往のある者717人,心血管疾患についての情報の取れなかった者433人,脂質低 下療法薬を内服している者93人を除外し,計5,750人(4人のずれが生じているが理由は不明;平均年齢68.8歳,女性62%)が解析の対象とされ た。
なお,ベースラインの採血は随時で実施されたため,TCおよびHDL-Cのみが測定され,トリグリセライド(TG)やFriedwald式から求める LDL-Cは解析項目としなかった。
 
中央値で13.9年のフォローアップがなされ,2,462人(42.8%)が死亡した。そのうち,807人(32.8%)が心血管疾患に関連した死亡であり,残る1,655人(67.2%)が心血管死以外の死亡であった。
 
研究のポイント2:高コレステロールは心血管死以外の死亡の低さと関連  
5,750人のベースラインでの特徴はのようなものであった。
 
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年齢・性で調整後の心血管死以外の死亡とTCの関係は,TCが38.61mg/dL(1mmol/L)上昇するごとに死亡率が12%減少していた〔ハ ザード比(HR)0.88,P<0.001〕。
HDL-Cと心血管死以外の死亡との間には統計学的な関係はなく,非HDL-Cコレステロール(TCから HDL-Cを減じたもの)が38.61mg/dL上昇するごとに死亡率が11%減少していた(HR 0.89,P<0.001)。
 
年齢層別に検討してみると,TCについては,38.61mg/dL高値であるごとに,65歳以上のすべてのグループで心血管死以外の死亡率が有意に低下しており,85歳以上のグループでは心血管死の死亡率が有意に低下していた。
同様にHDL-Cについては,55〜64歳のグループにおいての み心血管死以外の死亡率が低下しており,85歳以上のグループにおいてのみ心血管死の死亡率が低下していた()。
 
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山田先生の考察:生存者バイアスや低栄養患者の存在だけでは説明が難しいかもしれない
本研究はコレステロールが高くなるほど心血管死以外の死亡率が低下することを示したという点で,日本脂質栄養学会ガイドラインの主張の根拠にもなりうる内容になっている。
しかし,この研究結果を単純に解釈することには抵抗感を覚える。
 
例えば,生存者バイアスの存在である。
ベースラインの年齢ごとの特徴を見てみると,75歳以上になると症例数が少なくなっており,また,女性や非喫煙者 の比率が高くなっている。
このことは,75歳以上のグループではベースラインで死亡者が多く,特に男性や喫煙者での死亡者が多かったことを示唆する。
男性や喫煙者での死亡というと,考えやすいのは心血管疾患と呼吸器系疾患(悪性腫瘍)であり,このコホートは本来の母集団に比較して心血管系疾患や呼吸器系疾患に対して抵抗性がある集団となっているかもしれない。このことは糖尿病患者が19.1%,降圧薬内服者が47.7%も存在しながら85歳以上のグループ でTC値が上昇するごとに心血管死すら低下しているということにも合致する。
 
もう1つは,低栄養の関与である。ベースラインの特徴でも高齢になるほどコレステロール値が低下するとともにアルブミン値も低下している。
このことは高齢になるにつれて,生存者においてすら低栄養の問題が生じていることを示唆する。
本研究でもコレステロール値で三分位しての解析をしているが,その 際に正コレステロール血症と低コレステロール血症を区別していない。
低栄養患者が存在していればコレステロール値が高いほど予後が良いのも当然であり,高コレステロール血症の治療の必要性とは独立して考えねばならない。
 
ただし,症例数があまり減っておらず,コレステロールの平均値も55~64歳のグループとさほど変わっていない65~74歳のグループにおいても,TCが高くなるほどに心血管死以外の死亡が減っているというデータの解釈は,生存者バイアスや低栄養患者の存在だけでは説明が難しいかもしれない。
 
個人的には,「高コレステロール血症は動脈硬化性疾患の危険因子であり,(スタチン非投与下での)低コレステロール血症は低栄養のマーカーである。
いずれもよいことではない」と考えているが,「(スタチン投与中の低コレステロール患者を対象に,スタチンを中止して)コレステロールを上げることによって生命予後が良くなるかどうか」を検証するランダム化比較試験を(日本脂質栄養学会に)早く実施してもらいたいところである。
 
Morley氏のコメント:高齢者でも70歳代の再発予防にはスタチン使用を
ところで,この解釈の難しい論文を対象に,同じ号のJ Am Geriatr Soc2011; 59: 1955-1956)にeditorialが記載されていた。
これを執筆したセントルイス大学の老年学教室のJE. Morley氏が「(低栄養を発症しやすい)高齢者に対するスタチンの意義」についての意見を明確に述べていたのでご紹介したい。
1. 高齢者に対するスタチンの効果

(1)冠動脈疾患に対して

2つのメタ解析により60歳以上(J Gerontrol A Biol Sci Med Sci 2007; 62: 879-887)あるいは65歳以上(J Am Coll Cardiol 2008; 51: 37-45)においてスタチンの投与によって30~37%の冠動脈疾患死亡リスクの低下を見込むことができることが示されている。
また,PROSPER試験(Lancet 2002; 360: 1623-1630)においても70歳以上の高リスク高齢者を対象にプラバスタチン投与により冠動脈疾患の予防効果が示されている。
〔山田補足:なお,PROSPER試験では脳卒中の予防については示されなかったものの,HPS試験では冠動脈疾患のみならず脳卒中も予防されていた(Lancet 2002; 360: 7-22)〕

2)全死亡に対して
上記の2つのメタ解析において,スタチンの投与による15~22%の全死亡リスクの低下が示されている。PROSPER試験(Lancet 2002; 360: 1623-1630) においては全死亡率の低下は認められなかったものの,心血管疾患の既往のある高齢者に限定すると死亡率を低下させていた。
また,観察研究ではあるが Intermountain Heart Collaborative Studyにおいて,冠動脈疾患が血管造影に確認された集団では,80歳以上の超高齢者グループも含めて死亡率の低下が認められていた(J Am Coll Cardiaol 2002; 40: 1777-1785)。
(3)認知症に対して
認知症に対してスタチンが予防効果を持つというものから,中立的,あるいは認知機能障害を増悪させるかもしれないというものまで,さまざまなデータがある(J Alzheimers Dis 2010; 20: 737-747)。
(4)がんに対して
PRSOPER試験ではプラバスタチン群でがんが増加していたが,メタ解析ではそうした現象は認められなかった(Eur J Cancer 2008; 44: 2122-2132)。
 
2. 高齢者に対するスタチンの使用法
(1)70~80歳の人に対して
冠動脈疾患の既往のある患者の二次(再発)予防に対してはスタチンを使用すべきである。
しかし,The lower, the betterであるかどうかは不明なので,少量のスタチンが推奨される。
ただし,転倒やうつに対しての注意を要する。
 
一次(初発)予防としてのスタチンの使用を支持するエビデンスは存在しない。
 
(2) 80歳以上の人に対して
一般に80歳以上の患者にスタチンを使用することを勧める良好な医学的根拠はない。
ただし,観察研究からすると,冠動脈疾患の既往のある患者の二次(再発)予防にはスタチンを使用してもよいかもしれない。
 
80歳以上でスタチンを内服している患者にはLDLのサイズ測定をすべきである。その上でsmall dense LDLが優位である場合のみスタチンを継続すべきである。
 
出典  MT Pro 2012.1.12
版権  メディカルトリビューン社


<番外編>
2012.1.18に武田薬品が持続性AT1レセプターブロッカー
「アジルバ錠20mg・40mg」(アジルサルタン錠)の製造販売承認を取得。
http://www.takedamed.com/hpdr/rootDir/medicine/azilva/index.jsp?link=120118mail
http://www.takedamed.com/hpdr/rootDir/medicine/medicineDetail.jsp?MEDICINE_CODE=151

 
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