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兵庫県立尼崎病院循環器内科・佐藤幸人部長の高感度トロポニンTに関する記事で勉強しました。 
高感度トロポニンTがBNPに次ぐ心不全の第2のマーカーに
Val-HeFT,GISSI-HF試験のデータ解析から


研究の背景:進歩する高感度トロポニン測定系
血中心筋トロポニンTは,初発の心筋梗塞の診断,リスク評価のためのバイオマーカーとして開発された。
しかし,15年ほど前から予後不良の心不全 患者においては,心筋梗塞で検出される数値よりもはるかに低い10ng/L(0.01ng/mL) 前後の数値が検出されることが報告され,心不全における微小心筋障害を反映する指標と考えられている。

最近開発された高感度トロポニンT(hs-TnT)測定系ではさらに低値が検出可能であり,3ng/L(0.003ng/mL)まで測定できる。
従来のトロポニン測定系では測定値自体が意味を持たず,陽性・陰性だけの判定に使用されるだけであったが,Val-HeFT〔心不全におけるアンジオテン シンⅡ受容体拮抗薬(ARB)バルサルタンの効果を検討したランダム比較試験(RCT)〕のバイオマーカーによるサブ解析からは,観察開始時のhs- TnT値のわずかな差が予後に反映されることが示されており,測定値自体に意味があることが報告されていた(Circulation 2007; 116: 1242-1249)。

今回取り上げる研究は,同一著者らによる上記研究の延長線上の研究であり,観察中のhs-TnTの変動の持つ意義が検討された(Circulation 2011年12月2日オンライン版)。

 
研究のポイント:観察期間中の15%の増減でも総死亡に差
Val-HeFTとGISSI-HF(心不全におけるω-3不飽和脂肪酸,スタチンの効果を検討したRCT)における慢性心不全患者のデータをそ れぞれ4,053例,1,231例用いた。3ng/L以上のhs-TnT値がVal-HeFTで86%,GISSI-HFでは98%の患者で検出された 〔観察開始時hs-TnT中央値:Val-HeFT 12.1ng/L(0.012ng/mL),GISSI-HF:11.9ng/L(0.011ng/mL)〕。

Val-HeFTでは観察開始から4カ月後,GISSI-HFでは3カ月後のhs-TnTの測定結果が得られた。
いずれの試験においても,この期 間のhs-TnT値の変化は年齢,糖尿病,推算糸球体濾過量(eGFR)の低下,観察開始時および観察期間中のN末端プロB型ナトリウム利尿ペプチド (NT-proBNP)の増加とそれぞれ独立して関連していた。

観察期間中hs-TnTが15%以上増加した群をI,増減の変動が15%以内と変動しなかった群をS,15%以上減少した群をDとすると,いずれの試験でも総死亡のリスクはDが最も低く,S,Iの順に増加した()。
 

図

Hs-TnT増加の総死亡に対する補正後のハザード比はVal-HeFTが1.59(95%CI 1.39~1.82),GISSI-HFが1.88(同1.50~2.35)であった。

 
佐藤先生の考察:国内外のガイドラインで“第2のマーカー”の地位が不動に
Hs-TnTを用いると,経過中の15%程度のわずかな変動自体が予後と相関するという結論であった。
実は,バイオマーカーが臨床上,真に有用で あるためには,経過中の数値の変動自体が予後の変動と連動しなければならない。
BNPについては同一著者らの検討により以前にこのことが報告されているが (Circulation 2003; 107: 1278-1283),このような証明はかなり困難であり,他の心不全のバイオマーカーでは証明されていない。

今回の検討により,心不全のバイオマーカーとしてはBNPに次いで,2番目にhs-TnTについてそのことが証明された。
現在,国内外の心不全の ガイドライン,バイオマーカーガイドラインでは心不全のリスク評価に用いられるバイオマーカーとしてBNPの次にトロポニンを挙げているが,将来的にもこ の傾向は続くことが予想される。

なお,hs-TnTを用いると,心不全のリスクの段階の高血圧,心肥大,一般住民でも予後不良の場合,さらに低い値ではあるがhs-TnTが検出されることが相次いで報告された(JAMA 2010; 304: 2503-2512JAMA 2010; 304: 2494-2502Am Heart J 2010; 159: 972-978)。
このことにより,hs-TnTは心不全のリスクの段階,心不全,心筋梗塞とあらゆるステージに応用できるバイオマーカーであることも判明してきた。

最後に,高感度トロポニンIは複数の測定系があり,すべて値が異なるので解釈に注意が必要である。
 
出典 Medical Tribune  2011.12.20
版権 メディカル・トリビューン社

 
読んでいただいて有り難うございます。
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