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PALLAS試験http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa1109867について兵庫県立尼崎病院・佐藤幸人循環器科部長の解説で勉強しました。
「抗不整脈薬の多くは慢性心不全に見られる不整脈に対して漫然と使用すべきでない」という約20年前にCAST試験から得られた教訓の重みを再認識する内容です。
「慢然と抗不整脈薬を使用すべきでない」20年前の教訓を再認識
抗不整脈薬であるアミオダロンは有用性の高い薬剤ではあるが,ヨウ素に関連した甲状腺の障害,肺線維症などの多種多様な副作用が問題となってい る。dronedaroneは,アミオダロンの改良タイプとして開発され,ヨウ素を含まず水溶性であるために,甲状腺の障害,肺線維症などの副作用は示さ ないといわれている。アミオダロン,dronedaroneともに期待される効果は,
(1)心室性抗不整脈作用を介した突然死予防,
(2)上室性心房細動 患者における洞調律維持
―に分けられる。
ATHENA試験(N Engl J Med 2009; 360: 668-678)では,発作性心房細動患者において,dronedaroneはプラセボに比べ心血管イベントによる入院,心血管死を有意に減少させた。
また,この効果は経過中に持続性心房細動を発症した患者においても観察されたことにより,同薬の心拍数抑制効果,降圧効果,抗アドレナリン効果,抗致死性心室性不整脈効果が予想されたため,今回のPALLAS試験が行われた。
しかし,その結果は,持続性心房細動患者においてdronedarone投与は,脳卒中,心不全,心血管死の頻度を上昇させたという予想に反した ものであった。
しかも,プラセボ群との差は投与開始後1カ月以内から認められ,試験期間中さらにその傾向は顕著になっていった。
以前報告された,駆出率 (EF)35%以下の重症心不全患者において突然死予防を目的としたANDROMEDA試験(N Engl J Med 2009; 360: 668-678)では,dronedarone群で心不全が悪化し,かえって予後が悪化したと報告されている。
PALLAS試験では,対象患者が高齢で心不全合併も多かったため,今回のような結果につながったと思われる
1990年代初頭,CAST試験によりⅠ群抗不整脈薬は不整脈抑制効果を示すにもかかわらず,心機能抑制効果や催不整脈作用を介して,かえって突然死の頻度を高めることが報告された(N Engl J Med 1991; 324: 781-788)。
このため,抗不整脈薬の多くは慢性心不全に見られる不整脈に対して漫然と使用することは避けるべきと考えられている。
ANDROMEDA試験とPALLAS試験の結果を踏まえて,dronedaroneも同様に,心不全患者において突然死予防効果を期待して使用することは避けるべきであると考えられた
出典 MT Pro 2011.11.21
版権 メディカル・トリビューン社
<関連記事より>
dronedaroneの臨床試験が問いかける新規抗不整脈薬開発の課題
AHA 2011で発表のPALLAS試験などを山下武志氏が解説
心不全患者の割合によって全く異なる結果に
(1)アミオダロンと異なりヨウ素を含まないdronedaroneには高い忍容性と安全性が期待されていたが,心不全患者や永続性心房細動患者では予後が悪化していた。なぜこのような結果になったのか
ヨウ素を含まないことによって期待されるdronedaroneとアミオダロンの違いは,
(1)脂溶性が減少し半減期が減少する,
(2)アミオダロン特有の甲状腺機能障害や肺障害が減少する
―ことの2点であり,これ以外の安全性については不明な点が多い。
そして,今回の臨床試験結果を見れば,この 不明な点に1つの一貫性があることに気付く。
dronedaroneを用いてなされた一連の臨床試験の患者背景を知ればそのことを容易に理解できるはずで ある(表)。

(1)および(3)では心房細動の再発が有意に抑制され,心不全や催不整脈作用の増加あるいは死亡率の増加は認められなかった。
しかし,(2)と(4)ではともに心不全,催不整脈イベントが倍増し,その結果死亡率が有意に増加した。
つまり,心不全患者が含まれる割合によって全く異なる結果になっていることが重要だ。
これは,Ⅰ群抗不整脈薬が歩んだ歴史に似ている。dronedaroneはⅢ群薬に分類されるが,患者の予後という観点からはⅠ群薬と同様であるといえる。
発作性心房細動に比べ持続性心房細動,永続性心房細動はより進行した病態であり,一般的に患者の背景因子も悪化している。
背景因子が比較的単純な 発作性心房細動患者ではATHENA試験の結果が応用可能であるが,より背景因子が複雑となり,心房細動の合併症である心不全歴を有しやすい永続性心房細 動患者ではANDROMEDA試験の成績に近くなる。
これが,各種臨床試験の教えるところだろう。dronedaroneにはⅠ群薬と同等の陰性変力作用や催不整脈作用があると考えることが,患者アウトカムから見て妥当であろう。
“心臓電気生理学が必須”の“信仰”を棄却しないと抗不整脈薬の開発は難しい
(2)今回の結果からもうかがえる抗不整脈薬開発の難しさは何に起因するのか
「心房細動に対峙する」という根本的概念がまだ整理不十分だと考えられる。
これまでの長い歴史の中で,いまだ証明されていないにもかかわらず,心 房細動を治療するためには心臓電気生理学が必須だと信じられてきた。
これはSicilian Gambitの考えによく象徴されている。
そして今,これほどにネガティブ試験の山が10年以上にわたり連続的に築かれたのはなぜかを考えてみれば,その理由は単純だと思う。
それは,これ までのとらえ方の基本が間違っていたのではないかと考えるのが一番素直だろう。
これまでの長い「信仰」が棄却されない限り,抗不整脈薬の開発は難しいと感 じる。
心房細動は心電図を用いて診断されるため,単純に心臓電気生理学の異常がその原因だと考えられてきた歴史がある。
しかし,他の未知な原因が本質的 なものとして存在し,その結果として電気現象の異常が生じている可能性の方が高いのではないだろうか。
つまり,心電図は結果でしかなく,この場合,心臓の 電気生理学的異常を修正しようとしてもそれは表面的なものにならざるを得ない。
そしてこの考え方は,これまでの「心電図は一時的に正常化しても患者の予後 は改善しない」という一連の臨床試験の結果に符合しているように感じる。
新しい心房細動治療薬は,心臓電気生理学的異常以外の本質的な心房細動の原因に迫 る必要がある。
(3)臨床現場において,抗不整脈薬のさらなる開発のニーズはどの程度あるのか
現時点で,心房細動治療の主流は薬物療法からカテーテルアブレーションに大きく変化している。
カテーテルアブレーションの両翼が「抗不整脈薬」であり,「心拍数治療薬」であるという絵図は当分変わらないだろう。
それは,これほど多様化した,また著増した心房細動患者すべてにカテーテルアブレーションを応用することができないこともまた自明の理だからである。
その意味で,抗不整脈薬というツールが増加することはいつでも歓迎すべきだろう。
その際に必要な条件は,多様化した背景因子を有する心房細動患者 すべてで副作用発現が許容できるレベルであるということだろう。
心不全に限れば,心不全に安全に用いることができ,肺障害・甲状腺障害がない抗不整脈薬が あれば歓迎されるが,dronedaroneではそれを証明できなかったわけである。
Ⅲ群薬に分類されたdronedaroneは,実は患者の視点から見ればⅠ群薬とほぼ同様であるが,わが国では必要以上といえるほどにI群薬の選択肢が多い状況がある。
そのような点では,欧米とは異なる状況にあるのかもしれない。
「永続性心房細動患者に抗不整脈薬は不要」に同意
(4)論文のエディトリアルでは,永続性心房細動患者が抗不整脈薬を服用する必要はないと指摘されているが,この患者層への抗不整脈薬のニーズはあるのか。
永続性心房細動患者に対する心拍数調節治療は立派な1つの治療方針であり,β遮断薬を筆頭とする薬物治療は許容できる副作用発現率で,現 在も実地臨床で行われている。
そもそも,なぜ永続性心房細動で抗不整脈薬が必要なのか? PALLAS試験の問いかけ自体が,まず問われるべきだろう。 (まとめ・田中 かおり)
出典 MT Pro 2011.11.21
版権 メディカル・トリビューン社
<関連サイト>
PALLAS試験
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井蛙内科/開業医診療録(4)2009.10.16~
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