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降圧治療において,多くのメリットを持つ配合薬が広く普及しつつあり,主にARBと利尿薬またはCa拮抗薬を組み合わせた配合薬が用いられている。どちらがより望ましいかについて,さまざまな議論が行われているが,決着はついていない。第34回日本高血圧学会〔会長=自治医科大学内科学講座循環器内科学 部門・島田和幸教授(同大学病院長)〕のディベート「配合薬の選択:ARB/利尿薬 vs. ARB/CCB」(座長=愛媛大学大学院病態情報内科学・檜垣實男教授,旭川医科大学内科学講座循環・呼吸・神経病態内科学分野・長谷部直幸教授)では, それぞれの組み合わせを推奨する立場から報告が行われた。このディベートでは、メタボリックシンドローム・糖尿病合併例,慢性腎臓病(CKD)合併例における優劣が論じられた。 メタボ糖尿病
サロゲートマーカーも改善するCa拮抗薬を旭川医科大学内科学講座循環・呼吸・神経病態内科学分野の中川直樹氏らは,メタボリックシンドロームや糖尿病を合併する高血圧に用いる配合薬としては,心血管イベントの抑制に加え,中心血圧,血圧変動性,アディポネクチンの改善が期待できるARB/Ca拮抗薬配合薬を使用すべきと指摘した。 高分子量アディポネクチン上昇 ACCOMPLISH試験では,レニン・アンジオテンシン(RA)系抑制薬+Ca拮抗薬群の心血管イベントが,RA系抑制薬+利尿薬群よりも少ないことが示されたが,糖尿病合併例を対象としたサブ解析でも同様の結果が得られている。 中川氏は,RA系抑制薬+Ca拮抗薬により,心血管イベント抑制効果だけでなく,さまざまなサロゲートマーカーの改善効果が期待できるとした。例えば, 中心血圧をより低下させ,心血管リスク低減の一因になることが報告されている。また,糖尿病性腎症の進展リスクを高めるとされる血圧変動性に対して,ARB+利尿薬は増大させるが,Ca拮抗薬は安定化作用をもたらすことが報告されている。アディポネクチンに対しては,ARB+Ca拮抗薬がARB+ 利尿薬に比べ,メタボリックシンドローム合併高血圧患者で上昇させることが明らかにされている。透析患者を対象とした同氏らの検討では,ARB+Ca拮抗 薬群で生理活性の高い高分子量アディポネクチンの上昇が確認された。 同氏は「ARB/Ca拮抗薬配合薬は厳格な血圧管理,臓器保護に加え,血圧変動性軽減,アディポネクチン増加,さらには浮腫,頭痛といったCa拮抗薬の副作用の軽減も期待できる」(図)とし,「メタボリックシンドローム,糖尿病を合併する高血圧にはARB/Ca拮抗薬配合薬を使用すべき」と強調した。
メタボ糖尿病
食塩感受性是正する利尿薬併用が合理的慶應義塾大学腎臓内分泌代謝内科の中谷英章氏らは,メタボリックシンドローム合併高血圧患者は食塩感受性が亢進し,non-dipperの場合が多いため,食塩感受性を是正する利尿薬が合理的であること,また利尿薬をRA系抑制薬と組み合わせると代謝系副作用を打ち消し合うことから,ARB/利尿 薬配合薬がベストチョイスだとした。 血糖上げるK低下を打ち消す メタボリックシンドローム患者は食塩摂取量が多く,食塩感受性高血圧の割合も高い。食塩感受性が亢進して,低レニン状態になるとRA系抑制薬による降圧効果が減弱するが,低ナトリウム(Na)の状態にすると逆に降圧効果が増強する。また,食塩感受性高血圧の患者では,心血管イベントのリスクを高める non-dipper型高血圧を呈することが多い。こうしたことから,中谷氏は,メタボリックシンドロームを合併する高血圧患者には,食塩感受性を是正するサイアザイド系利尿薬が有用だと指摘した。 一方,利尿薬は代謝系の副作用が問題となるが「低用量ならほとんど起こらないし,利尿薬は少量でも十分な降圧効果が期待できる」と同氏。RA系抑制薬と組み合わせると,利尿薬によるカリウム(K)低下に伴う血糖上昇が,RA系抑制薬の副作用であるK上昇により相殺されることも考えられるとした。 以上から,「ARB/利尿薬配合薬は,特にメタボリックシンドローム,糖尿病を合併した高血圧患者のベストチョイスだ」と結論した。GFR保持という点でCa拮抗薬が有利愛媛大学大学院病態情報内科学の三好賢一氏らは,糸球体濾過量(GFR)保持という点では利尿薬よりもCa拮抗薬の方が有利とするデータが多いことから,CKD合併高血圧に対してはARB/Ca拮抗薬配合薬が望ましいとした。尿蛋白減少効果は利尿薬 三好氏は,Ca拮抗薬と利尿薬を比較した各種試験のデータを次のように紹介した。ACCOMPLISH試験では,心血管疾患高リスク患者の複合イベント 相対リスクが,ACE阻害薬+Ca拮抗薬群においてACE阻害薬+利尿薬群より約20%低かった。ALLHAT試験のCKDサブ解析では,GFR保持効果はCa拮抗薬がACE阻害薬や利尿薬よりも大きかった。
糖尿病患者に限った場合も同じ結果だった。 アルブミン尿を伴う2型糖尿病合併高血圧患者を対象としたGUARD試験では,尿蛋白の減少はACE阻害薬+利尿薬群がACE阻害薬+Ca拮抗薬群に比べて大きかったが,GFR保持効果はACE阻害薬+Ca拮抗薬群の方が大であった。<私的コメント> 腎臓専門家は「尿蛋白の減少」と「GFR保持効果」とどちらが重要と考えるでしょうか。多分前者のことと推測されます。勿論両者の改善を目指すなら3剤を併すればよいだけのことですが。 ACCOMPLISH試験でも,尿中アルブミン/クレアチニン(Cr)比の低下はACE阻害薬+利尿薬群が大きく,CKD進行(血清Cr2倍化)抑制効果はACE阻害薬+Ca拮抗薬群が勝った。J-CORE試験でも同様の結果が得られている。 以上から,「尿蛋白減少効果は利尿薬,GFR保持効果はCa拮抗薬の方が有利」と同氏。末期腎不全の進行でどちらが有利かはまだ不明としながらも,GFR保持の面からはARB/Ca拮抗薬配合薬が望ましいと述べた。 CKD
尿蛋白の方が腎予後に重要な可能性横浜市立大学循環器腎臓内科学の押川仁氏らは,ARB+利尿薬はARB+Ca拮抗薬に比べ,GFRは低下するものの,低下は一過性とする報告があること,また利尿薬併用で認められる尿蛋白減少はGFR改善よりも予後への影響が大きい可能性が示唆されていることなどから,CKD合併高血圧には ARB+利尿薬を積極的に選択すべきと強調した。RENAALやKDIGOメタ解析で 押川氏はまず,GUARD試験,ACCOMPLISH試験,J-CORE試験において,利尿薬併用群はGFR低下が大きいが,尿中アルブミン低下も著しいことが報告されているとした。また一部の試験で,糖尿病性腎症患者ではCKD進行の程度にCa拮抗薬併用群と差がないこと,CKD患者ではGFR低下が著明でないことが示されていると述べた。 尿蛋白減少の意義については,RENAAL試験で,尿蛋白減少に伴って腎予後が改善するデータが得られているとした上で,今年報告された KDIGO(Kidney Disease: Im- proving Global Outcome)におけるメタ解析の結果を紹介。各種イベントのリスクに及ぼす影響は,GFRよりも尿蛋白の方が大きいことが明らかにされたと述べた。さらに,利尿薬併用によるGFR低下は一過性と考えられるデータもある。同氏らが行ったK-CAT試験でも,利尿薬併用群におけるGFRの著明な低下は投与3カ月後までだったという(図)。
以上のデータと,利尿薬による代謝への悪影響はARBとの併用で相殺されるという利点を合わせ,同氏は「ARB/利尿薬併用はCKD患者において積極的に選択すべき降圧療法だ」と結んだ。 出典 Medical Tribune 2011.11.24
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