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慢性心不全患者の脳卒中発症とその予測に左室機能レベルは影響しない:CHARMプログラム
Incidence and Predictors of Stroke in Patients with Chronic Heart Failure: Does Left Ventricular Function Matter? Insights From the CHARM Program
Davide Castagno
Brigham and Women’s Hospital, Harvard Medical School, Boston, MA, USA
 
左室駆出率(LVEF)が低下した心不全患者は脳卒中リスクが高く,これまでの研究でもLVEFと脳卒中の発症との間に負の相関が示唆されている。
しかしながら,LVEFが保持されている心不全患者も含め,さまざまなLVEFレベルの心不全患者において,脳卒中リスクを検討した報告は少ない。

CHARM(Candesartan in Heart Failure: Assessment of Reduction in Mortality and Morbidity)プログラムは,LVEFレベルおよびアンジオテンシン変換酵素阻害薬による治療の有無に基づき患者を層別化し検討した3件のプラセボ 対照無作為化試験で構成されており,さまざまなLVEFレベルの心不全患者を対象としている1-4)

今回,Castagno氏らは,CHARMプログラムの登録患者を対象に解析を行い,LVEFが低下した心不全患者群とLVEFが保持されている心不全患者群において,脳卒中発症率に差はなく,ベースラインLVEFは脳卒中の予測因子でなかったと報告した。 

 
■脳卒中の予測因子はさまざまなLVEFレベルの心不全患者において特有のものはなかった
Castagno氏らは,さまざまなLVEFレベルの心不全患者において,脳卒中の発症と関連する臨床的特徴を明らかにして主要な予測因子を特定するとともに,LVEFと脳卒中リスクとの関連を明確にすることを目的として検討を行った。
解析対象は,CHARMプログラムの登録患者のうち,脳卒中イベントが 報告されたすべての症例とした。

CHARMプログラムの登録患者7,599例のうち287例(3.8%)が脳卒中を発症しており,脳イメージングを施行した190例のうち157例が虚血 性脳卒中,33例が出血性脳卒中であった。

追跡期間中に死亡した1,831例のうち89例(4.9%)は脳卒中に起因するものと考えられた。

Cox比例ハザードモデルを用いた多変量回帰分析により,高齢,脳卒中の既往,収縮期血圧上昇,糖尿病の既往,ベースライン心電図での心房細動などが,脳 卒中の有意な予測因子であることが示された(図1)。

なお,ベースライン時の経口抗凝固薬使用,ニューヨーク心臓協会(NYHA)心機能分類クラス III~IV,冠動脈バイパス術歴,現喫煙者,治療中の高血圧,女性,カンデサルタン投与は,有意な予測因子ではなかった。 

 
 
 
■ 心不全患者のLVEFレベルは脳卒中の発症にほとんど影響しない
続いて,脳卒中発症率を100患者・年あたりの率で算出し,Kaplan-Meier法によりイベント曲線を描き,LVEFと脳卒中発症率との関連を検討した。
その結果,LVEFが低下した心不全患者群とLVEFが保持されている心不全患者群で,脳卒中発症率に差はみられず(図2A),LVEFレベルと脳 卒中発症率との間にも有意な関連はみられなかった(図2B)。
 
 
以上の結果からCastagno氏は,さまざまなLVEFレベルの心不全患者においても,脳卒中の予測因子は一般に 認識されているものと同様であることが明らかとなったと結論するとともに,「LVEFが低下した心不全患者群とLVEFが保持されている心不全患者群で脳 卒中発症率に差はなく,ベースラインLVEFは脳卒中の予測因子ではなかった」とまとめ,LVEFレベルは心不全患者における脳卒中の発症にほとんど影響 しないことを示唆した。
   引用文献
   1) Lancet 2003;362(9386):772-776
   2) Lancet 2003;362(9386):767-771
   3) Lancet 2003;362(9386):777-781
   4) Lancet 2003;362(9386):759-766

  (メディカルライター 坂井順子)
 
■監修者のコメント
慢性心不全患者の脳卒中リスクを減少させるには:CHARM試験
本研究は,NYHA分類III~IVの症候性心不全患者を対象にカンデサルタンの治療効果を検討したCHARM試験のサブ解析である。
本サブ解析は,標準的治療中の慢性心不全患者の脳卒中のリスク因子として,脳卒中の既往,収縮期血圧の上昇,心房細動,糖尿病,心筋梗塞の既往を明らかにした。
一方,左室機能は脳卒中予後に全く影響を与えていない。
CHARM試験のデータベースは,CHARM-Preserved 群として,左室機能が保たれた心不全患者を多く含んでいる点が特徴である。
対象者を左室駆出率(EF)40%をカットオフ値とし,左室機能低下群と左室機 能保持群に分けても,脳卒中リスクは全く同一であった。
また,EF<20%の超左室低機能群においても,脳卒中リスクの増大はみられなかった。
CHARM試験における脳卒中の絶対的リスクはそう高くはなく,全例7,599名のうち3.8%に過ぎない。
また死亡例1,831名のうち脳卒中死亡は 89名である。
しかし,日本を含む東南アジアは,虚血性心疾患に比し,脳卒中が多いことが特徴であることから,本成績は重要である。
以前,我々は,高血圧または虚血性心疾患による入院心不全患者の退院後の脳卒中予後を検討した。
この中で,夜間血圧>120mmHg(収縮期血圧)とBNP>600pg/mLが,脳卒中のリスク因子であることを明らかにした1)
以上より,慢性心不全の脳卒中リスク管理においては,心房細動に対する抗凝固療法と夜間を含めた血圧管理が重要であるといえる。
   引用文献
   1) Hypertens Res 2008;31(2):289-294

 
監修:自治医科大学内科学講座循環器内科学部門主任教授 苅尾七臣
出典
http://www.biomedisonline.jp/aha2011hl/17352/Poster.php
 
 
読んでいただいて有り難うございます。
コメントをお待ちしています。
その他
「葦の髄」循環器メモ帖 http://yaplog.jp/hurst/
(「葦の髄から循環器の世界をのぞく」の補遺版
ふくろう医者の診察室 http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き) 
井蛙内科/開業医診療録(4)2009.10.16~
http://wellfrog4.exblog.jp/
井蛙内科/開業医診療録(3)~2009.10.15
http://wellfrog3.exblog.jp/
井蛙内科/開業医診療録(2)2008.12.10~
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井蛙内科/開業医診療録~2008.5.21 http://wellfrog.exblog.jp/ 
(内科医向き)
「井蛙」内科メモ帖
http://harrison-cecil.blog.so-net.ne.jp/
(「井蛙内科開業医/診療録」の補遺版)
があります。   
 

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