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2型糖尿病患者の左室拡張能はピオグリタゾンで改善するか:PICCOLA試験Cardiac Outcomes of Pioglitazone on Cardiac Function and Large Arteries, the PICCOLA Trial ピオグリタゾンなどのチアゾリジン系薬は,インスリン抵抗性を改善する薬剤として2型糖尿病患者の治療に広く用いられているが,心不全リスクを上昇させるとの試験結果も得られている。
Park氏らはピオグリタゾンが左室拡張能に及ぼす影響をプラセボ対照クロスオーバー試験(PICCOLA試験)で検討し,心エコー検査による左室機能評価により,ピオグリタゾンが左室拡張能を改善し,全末梢血管抵抗の低減をもたらすことを示した。 ■ピオグリタゾン投与前後の心機能を心エコーで評価チアゾリジン系薬はペルオキシソーム増殖因子活性化受容体-γ(PPAR-γ)作動薬であり,糖尿病患者に対して単独使用で,あるいはメトホルミンやスルホニルウレア系薬剤との併用で広く用いられている。
第1世代薬のトログリタゾンは肝毒性のため市場から撤退したが,ピオグリタゾンやロシグリタゾンなどの第2世代薬は肝毒性をもたない。しかしグリタゾン系薬の使用に伴い心不全リスクが上昇するとの試験結果も出て,ロシグリタゾンは心不全や心筋梗塞が増加するとの理由でEU市場から撤退した。
Park氏らは,2型糖尿病患者24例を対象にプラセボと比較したピオグリタゾン投与時の心室拡張・収縮機能を検討するクロスオーバー試験を行い,ピオグリタゾンは心不全リスクを上昇させるのか検証した。
被験者は,使用中の治療薬に加えてピオグリタゾン(45mg/日)またはプラセボを12週間服用し,試験薬切り替えの際には2週間のウォッシュアウト期間をおいた。対象者は18歳以上でHbA1cが7.5%超,心収縮能が正常で血圧がコントロールされている2型糖尿病患者とし,冠動脈疾患,心不全,拡張不全の患者などは除外した。
心エコー検査はPhilips iE33と5-1 MHzフェーズドアレイトランスデューサーを用い,クロスオーバーデザインにより各2回の投与開始時と終了時の計4回行った。主要評価項目は組織ドップラー法による拡張早期僧帽弁輪部移動速度波(e')とした。 通常のドップラー法にて僧帽弁血流波形を求め,E波とA波を得てE/A比とE/e'比を求めた。傍胸骨長軸像を得て駆出率,1回拍出量,左室心筋重量係数と全末梢血管抵抗を求めた。 ■ピオグリタゾンにより左室拡張能と末梢血管抵抗が改善 12週間のピオグリタゾン投与後,空腹時血糖とHbA1cが有意に低下したが,体重は有意に増加した。ウエスト・ヒップ比,血圧と心拍数には変化がなかった。
心エコー所見では,ピオグリタゾン投与によりプラセボ投与に比べe'が0.7cm/s(p=0.02)上昇した。またE/A,MDI(mitral deceleration index),駆出率,1回拍出量が有意に上昇し,全末梢血管抵抗と収縮末期の経線方向壁応力が有意に低下した。重篤な有害事象の発生はなかった。 Park氏は,PICCOLA試験は被験者数が少なく投与期間が短いため心収縮能の評価が行えなかったという限界はあるものの,12週間のピオグリタゾン 投与により2型糖尿病患者の左室機能が改善することが示されたことから,糖尿病管理における血糖降下薬としてピオグリタゾンを引き続き使用することが妥当であることが支持されたとの結論を示した。(メディカルライター 森口理恵) ■監修者のコメント 2型糖尿病患者の左室拡張能はピオグリタゾンで改善するか-クロスオーバー試験で証明 本研究は,チアゾリジン誘導体ピオグリタゾンが2型糖尿病患者の左室拡張能を改善することをクロスオーバーデザインで示した研究である。
ピオグリタゾンはアディポネクチンを増加させ,インスリン抵抗性を改善し,2型糖尿病患者において血糖レベルを低下させ,さらに,最近の臨床研究においては心血管イベントを抑制することが知られている。
本研究では主要エンドポイントとして,組織ドップラーを用いて評価した左室拡張能指標である拡張早期僧帽弁輪部移動速度波(e')の変化をみている。12 週間のピオグリタゾン投与により,血圧の変化はみられなかったが,HbA1cは低下し,e'に改善がみられた。
左室拡張能の改善とコラーゲン代謝マーカーなどのバイオマーカーの変化との関連については,本研究では評価していない。
以前,秋田大学の伊藤教授のグループより同様の研究が発表されている1)。6か月のピオグリタゾン投与により,2型糖尿病患者の左室拡張能とコラーゲン代謝マーカーであるPIIIP(aminoterminal propeptide of type III procollagen)が改善し,これらの改善程度に相関がみられている。
これまでに名古屋大学の室原教授のグループの動物実験においても,アンジオテンシンIIにより引き起こされる左室肥大と線維化がピオグリタゾンにより抑制されることが示されている2)。このピオグリタゾンの心保護効果はアディポネクチン欠損マウスで消失することから,この効果はアディポネクチンの増加を介してもたらされると考えられる。
したがって,ピオグリタゾンは糖尿病患者の左室の線維化を抑制し,拡張能を改善すると考えられ,今後,左室収縮能が保たれた糖尿病心不全患者や,その前段 階である拡張障害を合併する糖尿病性心筋症を合併する患者でより心保護効果が臨床的に示されることが期待される。 引用文献
1) J Cardiol 2009;54(1):52-58
2) Hypertension 2010;55(1):69-75 監修:自治医科大学内科学講座循環器内科学部門主任教授 苅尾七臣 出典
http://www.biomedisonline.jp/aha2011hl/13277/Oral.php (要パスワードです。同時通訳音声、英語音声や動画も視聴できます。)
ハビタブルゾーン中心に地球に似た惑星 http://www.nationalgeographic.co.jp/news/news_article.php?file_id=20111206003&expand&source=gnews 読んでいただいて有り難うございます。 コメントをお待ちしています。 その他 「葦の髄」循環器メモ帖 http://yaplog.jp/hurst/ (「葦の髄から循環器の世界をのぞく」の補遺版) ふくろう医者の診察室 http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy (一般の方または患者さん向き) 井蛙内科/開業医診療録(4)2009.10.16~ http://wellfrog4.exblog.jp/ 井蛙内科/開業医診療録(3)~2009.10.15 http://wellfrog3.exblog.jp/ 井蛙内科/開業医診療録(2)2008.12.10~ http://wellfrog2.exblog.jp/ 井蛙内科/開業医診療録~2008.5.21 http://wellfrog.exblog.jp/ (内科医向き) 「井蛙」内科メモ帖 http://harrison-cecil.blog.so-net.ne.jp/ (「井蛙内科開業医/診療録」の補遺版) があります。
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