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来年に予定されている動脈硬化性疾患ガイドラインの改訂では,CKDを新たな高リスク群として,脂質管理目標値を考慮する因子に追加する方針を打ち出しています。このことに関する大阪市立大学大学院代謝内分泌病態内科学・庄司哲雄講師へのインタビュー記事で勉強しました。脂質異常症の管理アップデート CKDの脂質管理慢性腎臓病(CKD)が,冠動脈疾患(CAD)などの動脈硬化性疾患の高リスク群であることが,種々の疫学調査で明らかになり,またCKDにおける脂質介入試験の結果も明らかになってきた。こうした状況にかんがみて日本動脈硬化学会では,来年に予定されている動脈硬化性疾患ガイドラインの改訂で,CKD を新たな高リスク群として,脂質管理目標値を考慮する因子に追加する方針を打ち出している。
動脈硬化性疾患の高リスク群としてCKDのより厳重な脂質管理を CKDが心血管疾患(CVD)の高リスク群であることについては,国内外の疫学調査で明らかにされてきている。一方で,脂質代謝障害の機序は原疾患や病期によって異なるため,一様ではないことを踏まえておく必要がある。さらに,CKDにおける脂質管理の意義についても近年明らかにされてきているが,具体的な目標値の設定には至っていないのが現状だ。 少なくとも糖尿病と同程度のリスク意識を CKDがCVDの高リスク群であることについては,Foleyらが透析患者では一般住民に比べてCVDによる死亡リスクが,55~74歳の年齢層でおよそ10~30倍高いことを報告している〔Am J Kidney Dis 1998; 32(Suppl 3): S112〕。<私的コメント>透析患者がCVDの高リスク群であることとCKDがCVDの高リスク群であるというのは違うのでは?
また,Goらは,推算糸球体濾過量(eGFR)で評価した腎機能が低いほどCVD発症リスクが高く,古典的危険因子で多変量調節後も有意であり,eGFR 60mL/分/1.73m2(以下単位省略)以上に比べて45~59では1.4倍,30~44では2.0倍,15~29では2.8倍,15未満では3.4倍になることを示した(NEJM 2004; 351: 1296-1305)。<私的コメント>
「腎機能が低い」原因は何なのでしょうか。腎細動脈(細小血管)などの内皮障害が原因であるとすれば、腎障害もCVDも同じものを見ているだけになってしまいます。つまり、腎障害が原因でCVDが結果というより両者とも内皮障害の結果ということになります。このあたりがいつもCKDが理解出来ないところです。 わが国のデータでは,まず,CKDが動脈硬化を促進することについて,庄司講師が報告している非糖尿病症例での検討で,健康群に比べて,慢性腎不全保存期症例では内膜中膜複合体厚(IMT)が有意に高値で,維持透析患者と同レベルであることを明らかにした(Kidney Int 2002; 61: 2187-2192)。Kimotoらも糖尿病性腎症患者では健康群に比べて,脈波伝播速度(PWV)が有意に大きいことを報告している(J Am Soc Nephrol 2006; 17: 2245-2252)。 CKDがCVDの高リスク群であることを示したわが国の疫学調査としては,久山町研究,茨城県住民集団研究,NIPPON DATA 90,JALS-ECC,吹田研究などが挙げられる。その中でも比較的新しい2008年のJALS-ECCでは,2万3,000人以上を7.4年追跡して,eGFR低値とCVDのリスク増大とが関連することが示されている(Circulation 2008; 118: 2694-2701)。同講師は「JALS-ECCでは,eGFR低値が男性では心筋梗塞のリスク増大と,女性では脳卒中のリスク増大と強く関連しており,腎機能低下とCVDリスク増大との関連に若干の性差があることが示されているのも興味深い」としている。 2009年の吹田研究では,約5,500人を11.7年追跡した結果,やはりeGFR低値とCVDのリスク増大とが関連することが示されている。ちなみ に,eGFR 90以上と比較したeGFR 50未満の多変量調整後のCVD(心筋梗塞および脳卒中)発症の相対リスクは2.48〔95%信頼区間(CI)1.56~3.94, P<0.001〕となっていた(Stroke 2009; 40: 2674-2679)。 CKDがCVDの高リスク群であることは確かであるとして,では,そのほかのリスクと比較したインパクトはどれくらいなのか。これについて,同講師は 「日本人の高リスク高血圧患者を対象にARBカンデサルタンとCa拮抗薬アムロジピンの予後に与える影響を比較した大規模臨床試験Case-Jの post-hoc解析が1つの参考になる」と言う。同解析(Yasuno S, et al. J Hypertens 2009; 27: 1705-1712)によると,種々のリスクのCVD発症のハザード比は,糖尿病1.97,虚血性心疾患2.19,脳血管障害2.22,CVD 2.38,左室肥大(125g/m2超)2.59であるが,腎疾患(蛋白尿および/または血清クレアチニン1.3mg/dL以上)では2.82となっている。 すなわち,腎疾患のCVD発症リスクのインパクトは糖尿病や,CVD既往よりも大きいことになる。「これは高リスク高血圧患者だけを対象にした成績であ ることを考慮する必要があるが,少なくともCKDは糖尿病と同程度にはCVDのリスクとしてのインパクトがあると考えた方がよいだろう」というのが,同講師の見解である。 CKDの脂質異常は動脈硬化・CVDリスクと独立した関連CKDに伴う脂質異常は,原疾患や病期などによって異なり,一様ではない。ネフローゼ症候群の場合には高コレステロール血症も見られるが,GFRの低下した腎不全では高トリグリセライド(TG)血症が中心になる。リポ蛋白分画では超低比重リポ蛋白質(VLDL)および中間比重リポ蛋白(IDL)は増加し,HDLは低下するが,LDLは不変のことが多い。そのほか動脈硬化惹起性の強いリポ蛋白(a)〔Lp(a)〕の増加もしばしば見られる。 庄司講師によると,「CKDに伴う脂質異常の表現型が複雑なのは,脂質代謝が蛋白尿,腎機能(GFR),糖尿病などにより,複合した影響を受けているからとみることもできる」と言う。蛋白尿が優位なCKDでは低蛋白血症を来し,肝臓での非特異的な蛋白合成が高まり,VLDL産生が増加して,VLDLや LDLレベルが上昇する。GFR低下が優位な場合は,末梢組織でリポ蛋白リパーゼ(LPL)や肝性TGリパーゼ(HTGL)の作用低下による異化障害が起こり,VLDLおよびIDLは増加するが,LDL,HDLは低下する。糖尿病の場合は,肝臓からのVLDL産生亢進とLPLの作用低下によりVLDLは増 加し,HDLは低下する(図1)。
同講師らは,糖尿病患者を「腎症なし」,「微量アルブミン尿」,「顕性アルブミン尿」,「クレアチニン上昇」の4つに層別化し,「非糖尿病」を加えた5 群で,脂質プロファイルを比較検討している。それによると,腎症のステージが進むにつれてVLDLコレステロール(VLDL-C)とIDLコレステロール (IDL-C)は著明に上昇し,HDLコレステロール(HDL-C)は低下したが,LDL-Cにはほとんど変化がなく,「クレアチニン上昇」ではむしろ 「非糖尿病」のレベルよりも低下していたという(Atherosclerosis 2001; 156: 425-433)(図2)。
すなわち,糖尿病患者ではLDL-Cだけを測定していたのでは,その脂質異常をとらえられないことになる。同講師は「糖尿病患者も含めたCKD患者の脂質異常では,LDL-Cよりも,総コレステロールからHDL-Cを減じたnon-HDL-Cを指標として評価する方がよい」と言う。 同講師らは非糖尿病性透析患者205例を対象に,リポ分画ごとの動脈硬化惹起性についても検討している。大動脈PWVとの関連を,年齢,性,血圧,喫煙 で調整した重回帰モデルで解析した結果,VLDL高値,IDL高値,LDL高値はいずれも大動脈PWVの増大と有意に関連していたが,関連の程度の最も強いのはIDLで,次いでVLDLとLDLが同程度であった。なお,HDLと大動脈PWVとの間には有意な関連は認められなかったという(J Am Soc Nephrol 1998; 9: 1277-1284)。 同講師らはまた,透析患者4万5,000例以上を対象に,non-HDL-CおよびHDL-Cでそれぞれ4分位に層別化し,心筋梗塞発症リスクとの関連を検討している。その結果,non-HDL-Cは高値の層になるほど,HDL-Cは低値の層になるほど心筋梗塞発症リスクが高いことが示された。さら に,non-HDL-Cが最も低くHDL-Cが最も高い層でのリスクを1とした場合,non-HDL-Cが最も高くHDL-Cが最も低い層でのリスクは 2.9倍であることも示されたという(Clin J Am Soc Nephrol 2011; 6: 1112-1120)。
脂質低下の介入試験でCVDリスクが低下CKD患者を対象とした脂質低下の介入試験は極めて乏しい。しかし,いくつかの介入試験の成績や,そのサブ解析の結果から,脂質低下がCKD患者の粥状動脈硬化性CVDリスクを低減することが示唆されている。 Die Deutche Diabetes Dialyse(4D)試験は2型糖尿病患者1,255例を対象に,アトルバスタチンによるCVDリスク抑制効果を検討した二重盲検試験である。結果は,4年の追跡でアトルバスタチン群ではプラセボ群に比べて「心臓死+非致死的心筋梗塞+脳卒中」の発症リスクが8%抑制されていたが,有意差までは認められなかった(NEJM 2005; 353: 238-248)。 しかし,庄司講師によると,4Dには(1)1次エンドポイントに脳出血,不整脈死,心不全死も含まれていたため,真のアテローム動脈硬化抑制効果が希釈 されていた可能性がある(2)狭心症で経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を実施し成功すれば心筋梗塞や心臓死とは見なされないため,1次エンドポ イントに達したと判定されない—などの問題点があるという。同講師の指摘は,虚血性心事故のみの抑制効果を見た場合,アトルバスタチンのリスク抑制効果は18%と有意水準(P<0.05)に達することからも裏付けられた。 Study of Heart and Renal Protection(SHARP)試験は,CKD患者(保存期6,247例,透析期3,023例)を対象に,シンバスタチンとエゼチミブの併用による動脈硬化性イベントの抑制効果を検討する二重盲検比較試験。4.9年の追跡の結果,1次エンドポイントの「非致死的心筋梗塞+冠動脈死+非出血性脳血管障 害+なんらかの動脈血行再建術」は,プラセボ群に比べて実薬群では17%の有意なリスク低下が示された(Lancet 2011; 377: 2181-2192,図3)。
MEGA studyは,CADの既往のない軽度~中等度の脂質異常症患者約8,000例を対象に5年以上追跡し,プラバスタチンによるCVDの1次予防効果を検討した,わが国初の大規模ランダム化比較試験。CKDステージ3の約3,000例を対象としたサブ解析の結果,プラバスタチンによりCHD,CVD,脳卒 中,総死亡のいずれもが有意に抑制されることが示された(Atherosclerosis 2009; 206: 512-517)。 以上のような成績を踏まえて,同講師は「CKDでは原疾患や合併する高血圧の管理が重要であることは言うまでもないが,加えてCVD対策としての脂質管理も重要である」としている。 では,CKDにおける脂質管理の目標値はどれくらいに設定されるのが適当なのか。これについては日本動脈硬化学会も現在までのところ,目標値に関するコメントは発表していない。しかし,高リスク群ではより厳格な脂質管理を目指すという従来の原則が踏襲されるのであれば,ガイドライン改訂版では厳格な管理目標値が設定されることは間違いない。同講師は「前述のように,CKDは糖尿病よりもCVD発症に及ぼすインパクトが大きいことが示唆されている以 上,CKDの脂質管理目標値も糖尿病と同じか,それより厳しく設定するのが妥当であろう」と言う。 すなわち,少なくともCVDの1次予防ではLDL-Cが120mg/dL未満,2次予防では100mg/dL未満と設定される可能性が高い。いずれにせ よ,CVDリスクとしてのCKDの意義はますます高まっていることを,すべての臨床家が十分認識しておくべきであるといえる。 出典 Medical Tribune 2011.11.24
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