メタボリックシンドロームモデルラットにおいてARBとCCBの併用は血管インスリン抵抗性を改善―脂肪細胞サイズ減少と抗炎症作用の相乗効果
Combination Therapy of an Angiotensin Receptor Blocker and a Calcium Channel Blocker Ameliorates Vascular Insulin Resistance in Metabolic Syndrome Model Rats Synergistically via a Reduction in Adipocyte Size and an Anti-Inflammatory Effect
アンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)とカルシウム拮抗薬(CCB)の併用療法がメタボリックシンドロームに有用な効果をもたらす機序については,まだ十分には検討されていない。
今回,末田氏らは,メタボリックシンドロームモデルラットを用いてARB・CCB併用療法の有効性について検討し,両剤併用により血管インスリン抵抗性が大幅に改善され,その機序としてp22phox関連酸化ストレスの減弱と内臓脂肪細胞サイズの縮小が相乗的に関与していることを明らかにした。
■SHRcpラットを用いARB・CCB併用と各単剤の血管への効果を比較
末田氏らは,メタボリックシンドロームのモデルとして肥満・高血圧自然発症ラットSHR/NDmcr-cp(SHRcp)を用いて検討を行った。
SHRcpラットを,
(1)プラセボ群
(2)カンデサルタン0.3㎎/㎏/日(ARB)群
(3)アムロジピン3㎎/㎏/日(CCB)群
(4)カンデサルタン0.3㎎/㎏/日+アムロジピン3㎎/㎏/日(ARB+CCB)群
の4群に分け,4週間の経口投与を行った。
血管インスリン抵抗性は,インスリン誘発内皮依存性血管弛緩反応を検査して評価した。
SHRcpラットにおいて,収縮期血圧はARB群,CCB群,ARB・CCB併用群のいずれにおいてもプラセボ群と比べ有意な低下を示した (p<0.05)。
ARB群とCCB群での低下は同等であったが,ARB・CCB併用群では各単剤群よりもさらに有意に大きな低下を示した (p<0.05)。
アセチルコリン誘発内皮依存性血管弛緩障害に対しては,SHRcpラットにおいてARB群,CCB群,ARB・CCB併用群ともに同様の改善を示した。
インスリン誘発内皮依存性血管弛緩障害に対しては,ARB群でプラセボ群と比べ有意な改善を認めたが(p<0.01),CCB群では有意な変化は認められなかった。
興味深いことに,ARB・CCB併用群では,プラセボ群と比べ有意な改善を認めたほか,ARBあるいはCCB単剤群よりも大きな改善が認められ,ARB群との間に有意差が確認された(p<0.01)(図1)

ARB・CCB併用は血管インスリン抵抗性に対して相乗的な効果を示した。この機序を検討するため,p22phoxの発現をウエスタンブロッティング法で評価したところ,SHRcpラットにおいて,ARBおよびCCB各単剤群よりもARB・CCB併用群でp22phoxの発現が有意に抑制されていた。このことから,p22phox発現亢進阻害によるp22phox関連酸化ストレスの大幅な減弱が機序として一部関与している可能性が示唆された。 p22phoxは,活性酸素種生成にかかわる細胞膜中の酵素NADPHオキシダーゼ(nicotinamide adenine dinucleotide phosphate-oxidase,Nox)の活性化に必要な蛋白質のひとつである。p22phoxは,細胞膜貫通型蛋白質であるチトクロームb558pのサブユニットであり,その発現亢進は酸化ストレス亢進をもたらし,内皮依存性血管弛緩反応の異常や血管障害の成因となることが示唆されている。 ■内臓脂肪細胞サイズの縮小と抗炎症作用が相乗的に作用 次に末田氏らは,代謝異常と血管インスリン抵抗性との関連を調べるため,肥満および炎症に対する各薬剤の効果を比較検討した。その結果,ARB・CCB併 用群ではSHRcpラットの肥大化した内臓脂肪細胞サイズの有意な縮小を認めたが,プラセボ群,ARB群,CCB群では有意な変化は認められなかった(図2)。
またARB・CCB併用群では,ARBあるいはCCB単剤群に比べ,内臓脂肪細胞のマクロファージ浸潤と腫瘍壊死因子-α(TNF-α)レベルが有意に抑制され,これらに対しても相乗的な効果が示された。このことから,ARB・CCB併用は肥満を相乗的に改善し,その結果として抗炎症作用を増強すると考えられる。 以上より末田氏は,ARB・CCB併用は,メタボリックシンドロームにおける血管インスリン抵抗性を相乗的に改善し,その背景にはp22phox関連酸化ストレスの減弱,内臓脂肪細胞サイズの縮小を介した抗炎症作用の増強などの機序が関与していると結論した。 (メディカルライター 坂井順子) ■監修者の自治医科大学内科学講座循環器内科学部門 苅尾七臣主任教授のコメント ARB・CCB併用療法の血管・脂肪細胞への相乗効果 本研究は,メタボリックシンドロームのモデルラットにおいて,ARB・CCB併用が酸化ストレスを減少させ,血管に対してはインスリン誘発内皮依存性血管弛緩反応を改善し,さらに脂肪細胞に対してはサイズを縮小させ,抗炎症性に働くことを示した。つまり,ARB・CCB併用は血管・脂肪細胞の両側面よりイ ンスリン抵抗性を改善することになる。 また,これらのARB・CCB併用の効果は,ARBあるいはCCBそれぞれの単剤治療よりも,有意に相乗的に増強することが示された。 これらの実験成績は,ヒトにおける高血圧患者を対象とした臨床研究から得られた成績と一致する。以前,我々はARBで治療中の高血圧患者を対象としたJCORE研究において,ARB・CCB併用の効果をARB・利尿薬併用と比較した。2群とも同程度に血圧レベルが低下したにもかかわらず,酸化ストレス指標である8-isoprostaneや高感度CRP,さらにインスリン抵抗性指標であるHOMA指数の改善はARB・CCB併用のほうが優れていた。 以上の実験ならびに臨床研究の結果から,ARB・利尿薬併用と同程度の降圧が得られた場合には,血管保護や糖代謝の面から考えると,ARB・CCB併用はよい組み合わせであるといえる。 引用文献 1) Am J Hypertens 2011;24(4):466-473 出典http://www.biomedisonline.jp/aha2011hl/?link=mail
<番外編 その1>シタグリプチンと血管内皮シタグリプチンの動脈硬化抑制作用 <番外編 その2>[メディカル版]最新の話題 第34回日本高血圧学会 http://www.m3.com/news/GENERAL/2011/11/25/144956/?fullArticle=true ■高血圧治療と心不全治療は、前者は高血圧との、後者は低血圧との戦いという点で大きく異なるという。 このため、高血圧を基盤とした心不全の場合、後負荷を軽減するという意味では、ARBは有効でしかも使いやすい。だが、血圧が低めの心不全では、ARBやβ遮断薬は降圧効果が強く、使い難くなる。■心不全の重症度が増すほどレニン・アンジオテンシン(RAA)系やその他の多彩な血管収縮系のホルモン群、それに関連した酵素が活性化するため、アンジオ テンシンII(AII)の作用を抑制するだけでは不十分となる。ACE阻害薬は、AII合成抑制効果は弱いが、ブラジキニンの増加、それに引き続く一酸化 窒素(NO)の増強作用があり、その他の複数の酵素群にも干渉する。 ■ACE阻害薬の使い方では、海外では比較的高用量が使われている。国内では、血圧低下が心配になり、心不全の重症度に伴って投与量が減量されているケース が目立つが、心不全の重症度に伴い、増量すべきであると考えられる。その理由は、ACE阻害薬がAIIの合成を強く抑制できないことが、心不全ではむしろ 有利に働き、血圧をあまり下げることなく増量できる可能性があり、増強された多面的効果で心不全の病態に対抗できるためだ。■ACE阻害薬の空咳は、高血圧治療では高頻度に空咳が出現するが、心不全では極めて少ない。同剤は、心不全の予防薬としても期待も大きい。 ■アリスキレンの腎保護効果は、降圧剤の中で最も期待できる。■ACE阻害薬、ARBで尿蛋白が出現する患者に対してアリスキレンを投与すると、尿蛋白は減少する。最大量のARBで降圧効果が不十分な症例に対して、アリスキレンを併用すると、さらなる降圧効果が期待できることも報告されている。■高血圧性臓器障害やイベントに対するリスク評価に対する中心血圧の応用は、その特性を十分に理解する必要がある。○利尿薬やβ遮断薬の投与では、上腕血圧は下がっても中心血圧は下がらない。 ○減塩は中心血圧の変化が大きい。○内臓脂肪の蓄積あるいは肥満では、上腕血圧測定の方が精度が高く、中心血圧測定は肥満に関連するリスクを過小に評価する可能性がある。○軽症候性脳血管障害のように、血圧の要因が強い臓器障害に関しては、中心血圧測定の精度は高い。○肥満や糖尿病、インスリン抵抗性も重要な成因となる動脈硬化や腎障害などでは、中心血圧は臓器障害との関連性において上腕血圧に劣る可能性がある <番外編 その3>[医療費] 薬局調剤費が医療費の伸びのもっとも大きな要因と分析 日医 http://www.m3.com/news/GENERAL/2011/11/21/144761/?fullArticle=true 読んでいただいて有り難うございます。コメントをお待ちしています。その他「葦の髄」循環器メモ帖 http://yaplog.jp/hurst/(「葦の髄から循環器の世界をのぞく」の補遺版)ふくろう医者の診察室 http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy(一般の方または患者さん向き) 井蛙内科/開業医診療録(4)2009.10.16~http://wellfrog4.exblog.jp/井蛙内科/開業医診療録(3)~2009.10.15http://wellfrog3.exblog.jp/井蛙内科/開業医診療録(2)2008.12.10~http://wellfrog2.exblog.jp/井蛙内科/開業医診療録~2008.5.21 http://wellfrog.exblog.jp/ (内科医向き) 「井蛙」内科メモ帖 http://harrison-cecil.blog.so-net.ne.jp/ (「井蛙内科開業医/診療録」の補遺版) があります。
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