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デバイスラグの解消が必要 非リウマチ性弁膜症がわが国でも増えている。特に,加齢とともに頻度が高くなる大動脈弁狭窄症の増加が目立つ。予後不良なため,早期に人工弁置換 術(AVR)を行う必要があるが,高齢者や高リスク患者は適応外とされることが多い。こうした中,低侵襲手術として開発された経カテーテル的大動脈弁留置 術(TAVI)に期待が寄せられている。最近は,経カテーテル的僧帽弁留置術(TMVI)も考案され,両手術に用いるさまざまなデバイスの開発が進められ ている。大阪市で開かれた第20回日本心血管インターベンション治療学会(会長=大阪大学大学院先進心血管治療学寄附講座・南都伸介教授)のタウンホール ミーティング「経皮的弁膜症治療は,欧州では,すでに日常臨床として使用されている!果たして本邦にいつやってくるのか?」(座長=東邦大学医療センター 大橋病院循環器内科・中村正人教授,米スタンフォード大学循環器科・池野文昭氏,Boston Scientific社・内田毅彦氏)で,デバイス開発の最新情報が報告された。TAVIの一部で治験進行,TMVIは出遅れ 座長の池野氏は「日本ではTAVIデバイスの一部で最近治験が開始されたところで,欧米,特に欧州からは大きく後れを取っている」と指摘。行政,医師,企業によるチームワークの重要性を強調した。SAPIEN XTの米国認可は年内か 池野氏は「日本ではごく一部の施設を除き,弁膜症のカテーテルインターベンションの研究が始まったばかり。世界の潮流に乗り遅れないようにする必要がある」とした。 TAVIデバイスは,フランスの心臓血管外科医Cribierが1990年代末に動物で有用性を確認。2000年代に入って最初のヒトへの留置が行われた。以後,さまざまなデバイスが開発され,現在はバルーン拡張型のEdwards Lifesciences社のSAPIEN XTと,自己拡張型のMedtronic社のCoreValveが,欧州で治験を終え,CE(European Conformity)マークを取得している。SAPIEN XTに関しては,米国でもごく最近,治験が終了した。同氏は「米食品医薬品局(FDA)のパネルでかなりポジティブな意見が出されたので,おそらく米国で も今年中に認可されるのではないか」と述べた。日本では,大阪大学など3施設共同の治験が進められている。そのほか,Boston Scientific社のSadraなど,多数のデバイスの開発が欧州で進められている(図1)。
TMVIにおけるデバイスラグはさらに大きい。同氏によると,米国の循環器医Goreが2000年ころに考案したMitra Clipは,2003年にヒトへの最初の応用が試みられた。その後Abbott社により開発が進められ,欧州では2008年にCEマークを取得。米国で は多数例を対象とした治験EVEREST-Ⅰ,Ⅱが終了したが,いつごろ承認されるかは明らかではない。さらに,TMVIデバイスとして,米国 Cardiac Dimensions社が開発したCARILLONの治験が欧州で行われ,CEマークを取得している。そのほかのデバイスの開発は欧州や中南米で進められている。日本では,いずれのTMVIデバイスも治験開始にも至っていない(図2)。
同氏は「device innovationには莫大なコストと時間,手間がかかる。弁膜症のカテーテルインターベンションのデバイスでも同じだが,日本の患者にもできるだけ早 く最新の治療を提供できるようにしなければならない。少しでもデバイスラグを解消するためには,行政,医師,企業によるチームワークが非常に重要だ」と訴えた。
日本のSAPIEN XT開発は順調に進展 日本のTAVIのパイオニアである大阪大学大学院心臓血管外科学の澤芳樹主任教授は,SAPIEN XTを用い,4例の臨床研究で良好な成績が得られたこと,現在3施設共同の国内治験が進行中であることを報告。デバイスラグはおそらく生じないだろうとの見方を示した。20mmサイズの治験が日本から 澤主任教授らは2009年秋に,TAVIの臨床研究を開始。2010年3月までに4例(年齢81~91歳,平均85歳)に実施した。アプローチ法は,カ テーテルを肋骨間から入れ,肺,心尖部を通過,弁に到達させるtransapical approach(TA)が1例,transfemoral approach(TF)が3例。ニューヨーク心臓協会(NYHA)心機能分類はⅡ度1例,Ⅲ度2例,Ⅳ度1例。間質性肺炎,慢性閉塞性肺疾患 (COPD),慢性腎不全などを有し,EuroScoreは平均26.8%と高い。しかし,手術は全例成功し,TA例で心尖部出血が認められ,抜管がやや 遅れたものの,ほか3例では手術合併症はなく,術後平均9.2カ月のフォローアップで全例生存している。同主任教授は,同じ年齢層のAVRに勝るとも劣ら ない成績が得られたとした。圧較差の有意な低下も認められた。NYHA分類は全例1段階改善した。 一方,SAPIEN XTの治験は,上記4例を含む大阪大学症例31例(TF 23例,TA8例)と,榊原記念病院,倉敷中央病院の症例を併せた60例を対象に進められ,ごく最近終了した(23mm,26mmサイズ)。さらに,弁輪 の小さい日本人に適した20mmサイズの治験が今年6月,世界に先駆けてスタートした。 同主任教授は,左室補助人工心臓(LVAD)が承認時既に製造中止になっていたという過去の苦い教訓を基に改革が進み,デバイスラグは明らかに短縮され つつあるとし,「SAPIEN XTの国内治験の進ちょくを見ると,おそらくデバイスラグが生じることはないだろう」と述べた。また,承認までにTAVIを実施する施設,医師の基準案を 作成する必要があると指摘した。 臨床試験基盤とFIM試験体制の整備を 医薬品医療機器総合機構(PMDA)医療機器審査第二部の鈴木由香部長は,TAVIデバイスの開発は「かなり順調に進んでいる」としながらも,先 進的な医療機器全般の国内開発をより促進するために,欧米に劣らない臨床試験の基盤とFirst in Man(FIM)試験ができる体制整備の必要性を強調した。シーズが欧米に流出 日本でSAPIEN XTの治験届けが提出されたのは米国よりも半年早い2010年4月。鈴木部長は「デバイスラグを生まないという企業の努力により,SAPIEN XTについては,かなり順調に開発が進んでいる」と評価した。ただし,デバイスラグを回避するための体制は,いまだ理想的なものではないとも述べた。 デバイスラグの主な原因とされてきた承認審査の遅れは,現在,米国と同等レベルまで改善された。しかし「審査期間の短縮だけではデバイスラグは解消しない」と同部長。「有望なシーズが欧米に流出してしまい,欧米で開発後に日本で治験着手となることがデバイスラグの根本的な要因だ」と指摘。「先進的な医療 機器の国内開発を促進するためには,自国で臨床試験を行い,エビデンスを構築できる体制をつくること,さらに,開発したデバイスを製品化できる仕組みを持 つことが重要だと考えている」。そのためには「欧米に劣らない臨床試験の基盤を整備すること,FIM試験が拠点病院以外でも広く実施できる体制を整備する ことが必要だ」と述べた。 PMDAでは7月から,新医薬品・医療機器の創出を促すため,初期段階からの薬事戦略相談事業を開始した。出典 MT pro 2011.9.22版権 メディカル・トリビューン社 <関連サイト> PARTNER試験■術適応と判断された高リスクの重度症候性大動脈弁狭窄患者において,TAVIの1年後の生存率は心臓外科手術(大動脈弁置換術)と同等であった。
僧帽弁逆流に経皮的クリップ術■中等症から重症の僧帽弁閉鎖不全症(僧帽弁逆流)があり、手術が適応になる患者を対象に、低侵襲の僧帽弁閉鎖不全治療デバイスであるMitraClipを用いた経皮的修復術と外科的治療の有効性と安全性を比較したEVERESTⅡ試験の結果が、NEJM誌2011年4月14日号に報告された。経皮的修復術群には、手術群に比べてその後に外科的治療が必要になった患者が多く存在したが、短期的な安全性とQOL、1年後の心不全の程度や左室駆出分画低下率などにおいては外科的治療に優っていた。 経カテーテル的僧帽弁尖クリッピング術■左心不全の独立予後規定因子ともいわれる僧帽弁逆流(閉鎖不全:MR)を、経カテーテル的にMR ジェット噴射部で僧帽弁両葉の弁尖を左室側からクリッピング接合することにより軽減するデバイス(MitraClip)が開発されたため、術後12ヵ月までの治療成績を従来の外科的僧帽弁形成・置換術と比較検討した。■新しいデバイス MitraClipは、外科手術に比べて治療効果は劣るが安全性では上回り、結果的に外科手術と同等の臨床予後を示した。 無症状の大動脈弁狭窄症への外科手術■
ASは高齢者に多く,進行性で,生命予後が悪い疾患ですが,手術で劇的に改善します。しかし,現実には多くの高齢者で手術は敬遠されています。最近の欧州の多施設研究では,手術適応であっても,75歳以上で手術を受けた患者は7割しかいなかったとされています。実際には高齢でも手術は十分可能で, 治療成績も良好なので,より積極的な手術の施行が望まれます。また,より高リスクな症例でも欧米では経カテーテル的大動脈弁植え込み術(TAVI)が普及し,RCTで有用性が確認されています。わが国では治験中ですが,今後はTAVI導入と外科治療のさらなる適用によって,ASの治療成績がますます向上す ると期待されます。
<自遊時間>MRさんが血管外科の研究会の案内を持って来ました。「・・・に対してステントグラフト内挿術を施工した1例」何だか変だなと思って少し考えました。「施工」は「施行」の間違い?。 血管外科も職人化が進んでいるんでしょうか。 読んでいただいて有り難うございます。コメントをお待ちしています。その他「葦の髄」循環器メモ帖 http://yaplog.jp/hurst/(「葦の髄から循環器の世界をのぞく」の補遺版)ふくろう医者の診察室 http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy(一般の方または患者さん向き) 井蛙内科/開業医診療録(4)2009.10.16~http://wellfrog4.exblog.jp/井蛙内科/開業医診療録(3)~2009.10.15http://wellfrog3.exblog.jp/井蛙内科/開業医診療録(2)2008.12.10~http://wellfrog2.exblog.jp/井蛙内科/開業医診療録~2008.5.21 http://wellfrog.exblog.jp/ (内科医向き) 「井蛙」内科メモ帖 http://harrison-cecil.blog.so-net.ne.jp/ (「井蛙内科開業医/診療録」の補遺版)があります。 読んでいただいて有り難うございます。コメントをお待ちしています。その他「葦の髄」循環器メモ帖 http://yaplog.jp/hurst/(「葦の髄から循環器の世界をのぞく」の補遺版)ふくろう医者の診察室 http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy(一般の方または患者さん向き) 井蛙内科/開業医診療録(4)2009.10.16~http://wellfrog4.exblog.jp/井蛙内科/開業医診療録(3)~2009.10.15http://wellfrog3.exblog.jp/井蛙内科/開業医診療録(2)2008.12.10~http://wellfrog2.exblog.jp/井蛙内科/開業医診療録~2008.5.21 http://wellfrog.exblog.jp/ (内科医向き) 「井蛙」内科メモ帖 http://harrison-cecil.blog.so-net.ne.jp/ (「井蛙内科開業医/診療録」の補遺版)があります。
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