戯れ言たれる侏儒
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Circulation Journal(日循の機関誌)2011.No.10で「日本人において冠動脈CTから得られる冠動脈石灰化の情報が,冠動脈疾患の予後予測因子として重要である可能性がある」という主旨の論文が掲載されました。
編集長の東北大学循環器内科・下川 宏明教授のこの論文に関するコメントで勉強しました。
下川 宏明教授は以前、講演会での懇親会でお話する機会がありましたが、私のような一介の開業医に対しても真摯にお話していただけました。学問に対する情熱がひしひしと伝わって来ましたが、医局員の先生方にもこの情熱が伝わっているといいのですが。
 

単純CTによる石灰化スコアから予後予測が可能
CT黎明期からのデータを解析
石灰化スコアは,冠動脈単純CTの所見から得られる石灰化の定量評価スコアだ。
カルシウム(Ca)沈着面積と濃度から算出され,プラーク量を反映する指標であることも明らかにされている。造影剤を使用しない単純CTの被ばく量は1mSv程度と少なく,年々多列化が進むCTの機種に関係なく得られるスコアであることから,実用性も高い。
しかし,日本ではこの石灰化スコアが重視されず,冠動脈疾患(CHD)リスクとの関係を検証した臨床データもほとんどなかった。
 
今回,広島大学大学院循環器内科学の山本秀也診療准教授らは,12年に及ぶ自施設での追跡調査から,石灰化スコアが日本人においてもCHDリスクや予後と関係があることを明らかにした(Circulation Journal2011; 75: 2424-2431)。
今でこそ冠動脈CTは全国に普及しているが,国内でいち早く同大学に導入された電子線CTの時代から16列CTへの移行期を経た初の長期追跡結果だ
 
スコア上昇に伴いリスクも増大
今回の検討対象は,狭心症の症状か負荷試験による心電図異常などでCHDが疑われ,1993年から2005年までに心臓CTが撮影された723例のうち,冠動脈造影が施行され,うち冠動脈血行再建術施行例,弁膜症,心筋疾患,腎不全,進行期悪性腫瘍および追跡1年未満の症例を除いた317例(男性 205例,女性112例)。
 
2003年までは電子線CTが,2004年以降には16列CTが用いられたが,両機種によるスコアの整合性には問題がないことが確認されている。
また,石灰化スコアの算出には,一般的に使用されているAgatston法が用いられた(図1)。
 
 
 
石灰化スコアの結果から,0(64例),1~100(58例),101~400(76例),401~1,000(70例),1,000超(49例)の5群に分け,スコアと患者背景の関係を見た。
すると,スコアが上昇するほど加齢傾向にあり,男性比率が高まることが分かった。
また,スコアの上昇に伴い心筋梗塞既往率が増加し,高血圧・糖尿病の有病率も増加していた。
 
1,000超群は100以下群と比べて心臓死が有意に増加

平均6年(1~10年)の追跡中に総死亡が34例(年率1.78%),心臓死が13例(同0.68%),非致死性心筋梗塞を含むハードイベントは24例 (同1.30%)に発生した。
この追跡結果を,石灰化スコア0~100,101~1,000,1,000超で3群に分けて総死亡,心臓死,総イベントの発 生リスクを比較したところ,スコアと各項目に有意な相関が認められた(図2)。

図表
 
0~100群と比較した101~1,000群,1,000超群の調整後ハザード比は,総死亡が順に 1.03(P=0.92),1.61(P=0.15),心臓死が1.30(P=0.37),2.98(P= 0.024),ハードイベントは1.56(P=0.18),2.14(P=0.045)で,1,000超群の場合は心臓死と心イベントが100以下群と比 べて有意に増加していた。
 
さらに,心臓死の予測因子をCox-Proportionalモデルで解析したところ,高血圧や糖尿病,心筋梗塞既往は予測因子とはならず,石灰化スコアのみが有意な因子であることが示された()。
 


図表

 

石灰化スコアは無視できない臨床指標

なお,2万5,000人余りを対象にした米国の調査では,石灰化スコア0群と比べた死亡の相対リスクは400~699群で9.2倍,700~999群が10.4倍,1,000超群が12.5倍といずれも有意なリスク上昇が認められた(
JACC 2007; 49: 1860-1870)。
山本准教授によると,今回の検討においては,イベント数が少なかったため,スコアを細分化すると予後との関連が見いだしにくかったという。
 
しかし,イベントの少ないわが国においても石灰化スコアと予後の有意な関係が得られた事実は,「臨床的に無視できない」とも指摘。
今後,よりリスクの低い患者における測定やカットオフ値の検討などを進めていく必要があるとしている。

 

現時点での臨床への応用としては,「単純CTで石灰化スコアが0付近であれば,造影CTの是非を慎重に判断する。一方,
1,000超の高リスクであればCHDが強く推定されることから,造影CTは行わずにカテーテル検査に進むなどの判断が可能ではないか」としている。

研究者の横顔
広島大学大学院循環器内科学診療・山本 秀也准教授
山本准教授が「石灰化スコア」と巡り合ったのは,研究が始まった1993年。
当時はCTが臨床現場に登場した黎明期である。
広島大学でもCTの臨床知見を見いだそうとさまざまな研究がスタートした。
その中で石灰化スコアの研究は「とても地味に映った」と言う。
冠動脈石灰化部位が狭窄を示すものでないことは周知の事実であり,「周囲の循環器の先生方からも白い目で見られていたと思う」と振り返る。
同准教授自身も循環器内科医として「治療が必要な冠動 脈病変を見つけて対応するのが務め」という認識が強かったからだ。
 

そのような意識が打ち破られたのが,2000年の米カリフォルニア州Harbor-UCLAメディカルセンター留学中のことだった。
CHD発症率の高い米国では,安価で確実な治療をいかに効率的に行うかが重視されていた。
生活習慣病を有する患者に対して「現状維持でよい」,「薬物治療強化が必要」,「血行再建術などより強力な介入が必要」といったリスク分類を確実に行うための研究が盛んに行われていた。
 

また,石灰化スコアに関しては疫学的データだけでなく,病理組織との対比によるデータの裏付けがなされていた。
その結果として,石灰化スコアは心血管疾 患の予後予測因子として重視されていた。
「循環器内科医が予防的な検査治療を熱心に研究していることに驚いた」と振り返る。
 

一方で,留学中は日本の臨床レベルの高さにもあらためて気付かされた。
今回の研究においても,平均追跡期間6年という長期の調査でありながら,全死亡34例,心臓死はわずかに13例という少なさで,日本の臨床レベルの高さを再認識したという。
 

現在は後輩の指導に当たる立場となったが,若手医師には「時代の流れに左右されず,自分が興味の持てることをやっていくこと」とアドバイスしている。
同准教授自身,当時は注目されていなかった石灰化スコアの意義を,今は実感しているからだ。
 

なお,同科では造影CTによって描出される冠動脈プラークと予後の関係を探るPREDICT研究も進行中だ。
 「造影CTで発見されるプラークに注目が集まっているが,石灰化スコアのようなエビデンスがないのが現状であることに注意しなければならない」と同准教授は言う。

出典 Medical Tribune  2011.10.27
版権 メディカル・トリビューン社

 

 

読んでいただいて有り難うございます。
コメントをお待ちしています。
その他
 「葦の髄」循環器メモ帖 http://yaplog.jp/hurst/
(「葦の髄から循環器の世界をのぞく」の補遺版
ふくろう医者の診察室 http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き) 
井蛙内科/開業医診療録(4)2009.10.16~
http://wellfrog4.exblog.jp/
井蛙内科/開業医診療録(3)~2009.10.15
http://wellfrog3.exblog.jp/
井蛙内科/開業医診療録(2)2008.12.10~
http://wellfrog2.exblog.jp/
井蛙内科/開業医診療録~2008.5.21 http://wellfrog.exblog.jp/ 
(内科医向き)
「井蛙」内科メモ帖
http://harrison-cecil.blog.so-net.ne.jp/
(「井蛙内科開業医/診療録」の補遺版)
があります。

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