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急性期から慢性期へつなぐ非心原性脳梗塞治療司会新井 基弘 氏 医療法人祐生会 みどりヶ丘病院 院長コメンテーター田中 美千裕 氏 亀田総合病院 脳神経外科 部長出席(五十音順)川端 信司 氏 大阪医科大学脳神経外科 講師豊田 真吾 氏 大阪脳神経外科病院脳神経外科 部長中野 美佐 氏 市立豊中病院神経内科 部長松下 達生 氏 社会医療法人愛仁会 高槻病院神経内科 部長八木田 佳樹 氏 大阪大学大学院医学系研究科神経内科学 (脳卒中センター) 助教 非心原性脳梗塞治療においては,急性期から慢性期にかけて適切に抗血小板薬を選択し,切れ目のない治療を将来にわたり継続する必要がある。さらに 慢性期においては,出血性合併症リスクを可能な限り低下させつつ良好な服薬アドヒアランスを維持しなくてはならない。先ごろわが国で行われたCOMPASS試験では,1日1回服用の経口抗血小板薬クロピドグレル(商品名:プラビックス®)50mg/日投与群と75mg /日投与群を比較し,脳出血年間発症率は両群ともに0.20人・年%であることが示された。
急性期は抗血小板薬2剤併用 慢性期は単剤でフォロー
田中 (非心原性脳梗塞の急性期治療の現在での問題点)近年,日本でもアテローム血栓症(ATIS)の増加が指摘されていますが,特に頭蓋内主幹動脈の高度狭窄に対する薬物療法の成績は必ずしも良好とはいえません。こうした背景から,最良の内科的治療群を対照群とし,血管内治療(血管形成術+ステント留置群)の脳卒中予防効果を検討したSAMMPRIS試験が行われたものの,脳梗塞と死亡が多かったことから中止を余儀なくされました。
それでは薬物治療はどうかといいますと,脳血管狭窄病変を有する脳卒中患者に対する積極的な抗血小板療法の有用性を検討したTOSSⅡでは,脳梗塞の再発リスクが高い急性期や亜急性期における経口抗血小板薬の2剤併用の有用性が示されました。また,主幹動脈,頸動脈の狭窄を有する患者を対象にした CLAIR試験,CARESS試験では,アスピリン(ASA)+クロピドグレル群において微小塞栓シグナル(MES)の発生を抑制しうることが示されています。このように,EBMの観点からは,現時点では急性期に有効な抗血小板療法を行うことがbest medical treatmentであると考えています。
主幹動脈,頸動脈に狭窄が見られるアテローム血栓性脳梗塞の発症機序において,血行力学的な関与は少なく,血小板活性化に伴うartery to artery (A to A)embolismの関与が大きいことが知られています。実際,欧米では脳梗塞急性期治療において抗血小板薬の2剤併用がスタンダードとなりつつあり, カナダのガイドラインでは短期のASA+クロピドグレルの併用を推奨しています(表)。
田中(非心原性脳梗塞の抗血栓療法レジメン) 注射薬を用いる場合,ATISの全例にアルガトロバンを1週間,ラクナ梗塞の全例にオザグレルを2週間投与し,腎機能に問題がなけれ ばエダラボンを併用することもあります。その際,最も重要なことは,血小板凝集能が亢進している急性期にASA+クロピドグレルを併用することだと思いま す。当施設では入院当日からASA+クロピドグレルを1カ月間併用し,以後,クロピドグレル単剤でフォローしています(図)。また,注射薬を使用しない場合も同様に経口抗血小板薬を用いています。
クロピドグレルの年間脳出血発症率は75mg/日投与でも0.20人・年%新井 先生方の施設では,どのように経口抗血小板薬を選択されていますか。
川端 入院当日から病型に応じて選択し,注射薬と併用しています。実際には,アルガトロバンとクロピドグレルを短期間併用し,クロピドグレル単剤でフォローする症例が多数を占めます。また,既にASAを内服中の症例も多く,その場合はASAにクロピドグレルを併用し,慢性期にはクロピドグレル単剤で管理しています。 八木田 慢性期の再発予防を視野に入れて薬剤を選択し,嚥下障害などがない限り入院当日から開始しています。ATISの典型例である症候性の主幹動脈狭窄症例ではクロピドグレルを選択し,内皮障害の進展が疑われる例やBAD(branch atheromatous disease)ではシロスタゾールを使うこともあります。 豊田 脳血管内治療を行う立場としては,十分な降圧療法を行った上で急性期に経口抗血小板薬を2剤併用して出血性合併症を来した経験はほと んどなく,抵抗はありません。病型に応じてASAにクロピドグレルまたはシロスタゾールを併用し,1~3カ月以降に単剤に切り替えています。 松下 病型を考慮した薬剤選択が重要だと思います。高血圧,脂質異常症,糖尿病などのリスクが多ければASAにクロピドグレルを加え,少なければ心エコーを含め循環器系の評価をした上でシロスタゾールを加えています。 中野 最近,頸動脈に認められる中等度のプラークから血栓が飛んでA to Aの塞栓を来したと推察されるケースが多く,その場合,クロピドグレルとシロスタゾールを併用することがあります。やはり,症候性で頸動脈に高度狭窄がある症例にはクロピドグレルを選択するのがいいのではないかと思います。 新井 血小板凝集が亢進した急性期に経口抗血小板薬2剤を併用し,慢性期には単剤でフォローされる先生方が多いようです。 田中 リーズナブルな治療方針だと思います。クロピドグレルは確実な抗血小板作用を期待できる薬剤ですが,日本人脳梗塞患者1,110例を 対象に適正用量を検討したCOMPASS試験の結果,出血性イベント発現率は50mg/日群,75mg/日群で差がなく,脳出血発生率はどちらの用量も 0.20人・年%という結果でした。また,クロピドグレルはPRoFESS試験において単剤でASAとジピリダモールの配合薬と同等の有効性を示しま た。こうしたエビデンスに基づき,慢性期には血圧管理に努めた上でクロピドグレル単剤でフォローすることが望ましく,今後,こうした治療がトレンドとなると考えています。
1日1回服用でアドヒアランス良好
ATISは全身疾患の観点でリスク管理 豊田(慢性期の抗血小板療法)服薬アドヒアランスを維持しやすい薬剤を選択することが望ましく,基本的には急性期治療から1~3カ月たった時点で1日1回投与のクロピドグレルを残す方針を取っています。患者さんをプライマリケア医の先生方にお返しした後も,半年に1度は当科を受診していただき,MRIと頸部エコー を施行しています。その際,あらためて抗血小板薬を服薬する意義をお話ししています。 松下 急性期以降,血小板凝集能や血圧などが安定する2,3カ月を目途に単剤に替えるか,服薬アドヒアランスや副作用を考慮して薬剤を変更しています。脳梗塞患者さんは,もともと血圧,脂質,血糖のコントロールが不十分だった方が多いため,厳格なリスク管理に努めることも重要です。新規発症の方であれば,「来年の同じ日にもう1度診てみましょう」とお話しし,微小出血などが認められなければ治療の成果であることを強調して,再びモチベーションを高めていただくよう努めています。 川端 服薬アドヒアランスを把握するための工夫の1つとして,患者さんに「手元にお薬が残っていたら,もったいないから教えてください」と尋ねています。残薬が多く服薬アドヒアランスが不良なようであれば,あらためて抗血小板薬を生涯服薬する意義を強調するようにしています。 中野 抗血小板薬の服薬を継続していただくためには,脳卒中の地域連携パスにプライマリケア医の先生方に参画していただき,急性期病院と回復期,維持期の診療を担われる先生方とのクロストークの機会を持つ必要があると思います。 八木田 出血性合併症が少なく,アドヒアランスが維持しやすいことから,最近はクロピドグレルの処方頻度が上がっています。当施設でも退院後のフォローは積極的に行うようにしており,患者さんにMRIと頸動脈エコーの画像所見をお見せして,自己判断で服薬を中止されることのないようお話ししています。 田中(慢性期治療のポイント) 慢性期に再発を予防するためには,患者さんはもとより,プライマリケア医の先生方との協力と情報の共有を進めていくことも大切です。 当施設では,患者さんをご紹介いただいた先生方に,礼状,薬剤処方とともに3DCTやMRIの画像をCD-ROMに記録してお送りしています。こうして画像情報を共有することにより再発予防に向けた治療努力が実ることを期待しています。 新井 クロピドグレルは,CAPRIE試験において有用性が証明されています。先生方のご討議を通じ,非心原性脳梗塞急性期から慢性期へと 切れ目なく治療を継続し,再発予防へつなげていくためには,クロピドグレルの有用性が高いことが確認できました。 出典 Medical Tribune 2011.10.27
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読んでいただいて有り難うございます。コメントをお待ちしています。その他 「葦の髄」循環器メモ帖 http://yaplog.jp/hurst/(「葦の髄から循環器の世界をのぞく」の補遺版)ふくろう医者の診察室 http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy(一般の方または患者さん向き) 井蛙内科/開業医診療録(4)2009.10.16~http://wellfrog4.exblog.jp/井蛙内科/開業医診療録(3)~2009.10.15http://wellfrog3.exblog.jp/井蛙内科/開業医診療録(2)2008.12.10~http://wellfrog2.exblog.jp/井蛙内科/開業医診療録~2008.5.21 http://wellfrog.exblog.jp/ (内科医向き) 「井蛙」内科メモ帖 http://harrison-cecil.blog.so-net.ne.jp/ (「井蛙内科開業医/診療録」の補遺版)があります。
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