戯れ言たれる侏儒
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ENDEAVOR Ⅳ試験

戯れ言たれる侏儒 / 2011.11.30 00:25 / 推薦数 : 0
Kandzari氏が報告したENDEAVOR Ⅳ試験の5年追跡から、Endeavorステントの長期安全性と有効性の検証結果がTCT2011で報告されました。
きょうは、その記事で勉強しました。
 
TCT2011がカリフォルニア州サンフランシスコで2011年11月7日から11日の5日間にわたり開催された。
世界最大級のこのライブコースには、本年は12,000人もの参加者が集まり、初日から多くのセッションで立ち見が出るほどの賑わいであった。
薬物溶出ステント(DES)が2003年にアメリカで認可され、7年以上が経過した。
今日では複数のDESが使用可能となり、長期追跡において各DESの 特徴も明らかになってきている。
中でも世界で3番目に認可を受けたEndeavorゾタロリムス溶出ステントは、PCコーティングを使用し薬剤を溶出する という、その他のDESとは一線を画すユニークな特徴を有する。
このEndeavorステントを第一世代のTaxusパクリタクセル溶出ステントと比較したENDEAVOR Ⅳ試験の最終結果となる5年の長期臨床試験結果が、TCT2011のPeer-Reviewed Researchセッションにおいて、Piedmont Heart InstituteのDavid Kandzari氏により報告され、注目が集まった。


初期成績でZESはPESと比べて非劣性を証明
ENDEAVOR Ⅳ試験の最初の報告は、今から4年前のTCT2007に遡る。
本試験では、アメリカの80施設よりデノボのシングル冠動脈疾患を有する1,548人を登録し、773人をEndeavorゾタロリムス溶出ステント(ZES)群、775人をTaxusパクリタクセル溶出ステント(PES)群に無作為に割り付け た。
8ヶ月の造影追跡では、ZES群のlate lossはPES群と比べ大きかったものの、主要評価項目に設定した9ヶ月の標的血管不全(TVF: 心臓死、MI、TVR)の割合は、PES群の7.2%に対し、ZES群では6.6%と非劣性が証明された(pNI<0.001)。
Kandzari氏は、「今回の報告では、8ヶ月時の造影追跡時のlate lossが長期の標的病変再血行再建術(TLR)に影響するか、また、ZESとPESの長期安全性が確保できるものか、そして、ZESの長期成績がこれま でにZESを評価した臨床プログラムで示された成績と一貫するかを検証した」と本解析の目的を述べた。
既に報告されているように、ZES群とPES群の患者背景は、年齢(63.5歳 vs 63.6歳)、男性(66.9% vs 68.5%)、心筋梗塞(MI)歴(21.1% vs 23.2%)、糖尿病(31.2% vs 30.5%)、不安定狭心症(51.6% vs 49.9%)の割合など両群で差はなく、リファレンス血管径(2.73mm vs 2.70mm)、病変長(13.41mm vs 13.80mm)、B2/C病変の割合(69.6% vs 70.9%)などの病変特徴も類似していた。
 
ZESが長期追跡でMIの発症率を有意に低下させる
Kandzari氏は、5年の全死亡と心臓死の割合は両群に差はなかったものの、MIの発症率はZES群で有意に低いことを強調し(2.6% vs 6.0%: p=0.002)、非Q波MIがZES群で少なかったことを指摘した(2.1% vs 5.3%: p=0.001)。
CKMBの上昇は、ZES群では正常上限値10倍以上を記録した患者が8人に対して、PES群では17人であった。
その結果、1年時に観察された心臓死/MIの累積率の差は、5年時には統計学的な差に至り〈図1〉、ZES群で有意に心臓死/MIが少ないとの結果が示された(相対リスク減少30%、p=0.048)。
Kandzari氏は、「これにはMIと遅発性ステント血栓症による影響が示唆される」と述べた。

 

 

図1 Cumulative Incidence of Cardiac Death/MI to 5 Years

本試験では、DESの臨床試験では初めて超遅発性ステント血栓症(VLST)の発症率に有意差が認められている。
 
TLRが1年時と5年時で逆転
TVFの累積率についても1年以降に、〈図2〉のように両群の差が拡大し、有意差には至らなかったものの、ZES群はPES群に比べて、TVFの約18%の相対リスク低下をもたらしたことが確認された。

 

図2 Cumulative Incidence of TVF to 5 Years

 

また、1年追跡でのTLRは数値的にはPES群で低かったが、5年追跡では逆転しており、ZES群ではPES群よりも低かった〈図3〉。

 

図3 TLR Rate Over Time


Kandzari氏は、「当初のlate lossの値とは相反して、TLRの増加率はZES群では時間の経過とともに減少していた」とまとめている。
Endeavorプログラムの統合解析においても、ZESの5年のTLRの割合は7.4%であることが報告されており、本試験においても一貫していた。
 
ZESはVLSTの懸念が少ない
更に、5年のARC定義のdefinite/probableステント血栓症のVLSTの累積発症率は、PES群が1.8%に対し、ZES群が0.4%を 記録し、全体では有意差はないものの、〈図4〉のように1-5年の超遅発性ステント血栓症(VLST)の発症率はZES群ではPES群よりも顕著に低いこ とが示された(相対リスク減少78%、p=0.012)。
2剤抗血小板療法下にあった患者の割合は、1年時はZES群、PES群で類似していたが(57.6% vs 57.2%)、2年時にはZES群ではPES群と比較して顕著に低下し(65.4% vs 71.3%: p=0.02)、5年時も同様にZES群で有意に低かった(41.8% vs 47.9%: p=0.03)。

 

図4 Cumulative Incidence of Very Late ST to 5 Years


以上により、Kandzari氏は、「本試験においても、その他のEndeavorステントの臨床試験プログラムで観察されたZESの長期における安全性 と有効性が一貫して認められた」と、まとめている。

本調査結果はZESの安全性と有効性を再認識させた。第一世代のDESとは異なった様式で薬剤を溶出させるEndeavorゾタロリムス溶出ステントの長 期的なVLSTのリスク低下は特記すべき事項である。全ての患者に同じような治療選択を行うのではなく、長期予後の改善を目指して、個々の患者に応じた DESを選択し、術後の管理にまでも介入して行くことが必要である。

 

出典
https://www.tcross.co.jp/pickup_TCT2011/index.php

 

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CKDの脂質管理

戯れ言たれる侏儒 / 2011.11.29 00:43 / 推薦数 : 0
来年に予定されている動脈硬化性疾患ガイドラインの改訂では,CKDを新たな高リスク群として,脂質管理目標値を考慮する因子に追加する方針を打ち出しています。
このことに関する大阪市立大学大学院代謝内分泌病態内科学・庄司哲雄講師へのインタビュー記事で勉強しました。
脂質異常症の管理アップデート CKDの脂質管理
慢性腎臓病(CKD)が,冠動脈疾患(CAD)などの動脈硬化性疾患の高リスク群であることが,種々の疫学調査で明らかになり,またCKDにおける脂質介入試験の結果も明らかになってきた。
こうした状況にかんがみて日本動脈硬化学会では,来年に予定されている動脈硬化性疾患ガイドラインの改訂で,CKD を新たな高リスク群として,脂質管理目標値を考慮する因子に追加する方針を打ち出している。


動脈硬化性疾患の高リスク群としてCKDのより厳重な脂質管理を
 CKDが心血管疾患(CVD)の高リスク群であることについては,国内外の疫学調査で明らかにされてきている。
一方で,脂質代謝障害の機序は原疾患や病期によって異なるため,一様ではないことを踏まえておく必要がある。
さらに,CKDにおける脂質管理の意義についても近年明らかにされてきているが,具体的な目標値の設定には至っていないのが現状だ。
 
少なくとも糖尿病と同程度のリスク意識を
CKDがCVDの高リスク群であることについては,Foleyらが透析患者では一般住民に比べてCVDによる死亡リスクが,55~74歳の年齢層でおよそ10~30倍高いことを報告している〔Am J Kidney Dis 1998; 32(Suppl 3): S112〕。
<私的コメント>
透析患者がCVDの高リスク群であることとCKDがCVDの高リスク群であるというのは違うのでは?

 

また,Goらは,推算糸球体濾過量(eGFR)で評価した腎機能が低いほどCVD発症リスクが高く,古典的危険因子で多変量調節後も有意であり,eGFR 60mL/分/1.73m2(以下単位省略)以上に比べて45~59では1.4倍,30~44では2.0倍,15~29では2.8倍,15未満では3.4倍になることを示した(NEJM 2004; 351: 1296-1305)。
<私的コメント>
「腎機能が低い」原因は何なのでしょうか。
腎細動脈(細小血管)などの内皮障害が原因であるとすれば、腎障害もCVDも同じものを見ているだけになってしまいます。つまり、腎障害が原因でCVDが結果というより両者とも内皮障害の結果ということになります。
このあたりがいつもCKDが理解出来ないところです。
 
わが国のデータでは,まず,CKDが動脈硬化を促進することについて,庄司講師が報告している非糖尿病症例での検討で,健康群に比べて,慢性腎不全保存期症例では内膜中膜複合体厚(IMT)が有意に高値で,維持透析患者と同レベルであることを明らかにした(Kidney Int 2002; 61: 2187-2192)。
Kimotoらも糖尿病性腎症患者では健康群に比べて,脈波伝播速度(PWV)が有意に大きいことを報告している(J Am Soc Nephrol 2006; 17: 2245-2252)。
 
CKDがCVDの高リスク群であることを示したわが国の疫学調査としては,久山町研究,茨城県住民集団研究,NIPPON DATA 90,JALS-ECC,吹田研究などが挙げられる。
その中でも比較的新しい2008年のJALS-ECCでは,2万3,000人以上を7.4年追跡して,eGFR低値とCVDのリスク増大とが関連することが示されている(Circulation 2008; 118: 2694-2701)。
同講師は「JALS-ECCでは,eGFR低値が男性では心筋梗塞のリスク増大と,女性では脳卒中のリスク増大と強く関連しており,腎機能低下とCVDリスク増大との関連に若干の性差があることが示されているのも興味深い」としている。
2009年の吹田研究では,約5,500人を11.7年追跡した結果,やはりeGFR低値とCVDのリスク増大とが関連することが示されている。
ちなみ に,eGFR 90以上と比較したeGFR 50未満の多変量調整後のCVD(心筋梗塞および脳卒中)発症の相対リスクは2.48〔95%信頼区間(CI)1.56~3.94, P<0.001〕となっていた(Stroke 2009; 40: 2674-2679)。
 
CKDがCVDの高リスク群であることは確かであるとして,では,そのほかのリスクと比較したインパクトはどれくらいなのか。
これについて,同講師は 「日本人の高リスク高血圧患者を対象にARBカンデサルタンとCa拮抗薬アムロジピンの予後に与える影響を比較した大規模臨床試験Case-Jの post-hoc解析が1つの参考になる」と言う。
同解析(Yasuno S, et al. J Hypertens 2009; 27: 1705-1712)によると,種々のリスクのCVD発症のハザード比は,糖尿病1.97,虚血性心疾患2.19,脳血管障害2.22,CVD 2.38,左室肥大(125g/m2超)2.59であるが,腎疾患(蛋白尿および/または血清クレアチニン1.3mg/dL以上)では2.82となっている。
 
すなわち,腎疾患のCVD発症リスクのインパクトは糖尿病や,CVD既往よりも大きいことになる。
「これは高リスク高血圧患者だけを対象にした成績であ ることを考慮する必要があるが,少なくともCKDは糖尿病と同程度にはCVDのリスクとしてのインパクトがあると考えた方がよいだろう」というのが,同講師の見解である。

CKDの脂質異常は動脈硬化・CVDリスクと独立した関連CKDに伴う脂質異常は,原疾患や病期などによって異なり,一様ではない。
ネフローゼ症候群の場合には高コレステロール血症も見られるが,GFRの低下した腎不全では高トリグリセライド(TG)血症が中心になる。
リポ蛋白分画では超低比重リポ蛋白質(VLDL)および中間比重リポ蛋白(IDL)は増加し,HDLは低下するが,LDLは不変のことが多い。
そのほか動脈硬化惹起性の強いリポ蛋白(a)〔Lp(a)〕の増加もしばしば見られる。
 
庄司講師によると,「CKDに伴う脂質異常の表現型が複雑なのは,脂質代謝が蛋白尿,腎機能(GFR),糖尿病などにより,複合した影響を受けているからとみることもできる」と言う。
蛋白尿が優位なCKDでは低蛋白血症を来し,肝臓での非特異的な蛋白合成が高まり,VLDL産生が増加して,VLDLや LDLレベルが上昇する。
GFR低下が優位な場合は,末梢組織でリポ蛋白リパーゼ(LPL)や肝性TGリパーゼ(HTGL)の作用低下による異化障害が起こり,VLDLおよびIDLは増加するが,LDL,HDLは低下する。
糖尿病の場合は,肝臓からのVLDL産生亢進とLPLの作用低下によりVLDLは増 加し,HDLは低下する図1)。
 
図表

 
同講師らは,糖尿病患者を「腎症なし」,「微量アルブミン尿」,「顕性アルブミン尿」,「クレアチニン上昇」の4つに層別化し,「非糖尿病」を加えた5 群で,脂質プロファイルを比較検討している。
それによると,腎症のステージが進むにつれてVLDLコレステロール(VLDL-C)とIDLコレステロール (IDL-C)は著明に上昇し,HDLコレステロール(HDL-C)は低下したが,LDL-Cにはほとんど変化がなく,「クレアチニン上昇」ではむしろ 「非糖尿病」のレベルよりも低下していたという(Atherosclerosis 2001; 156: 425-433)(図2)。

 
図表
 
すなわち,糖尿病患者ではLDL-Cだけを測定していたのでは,その脂質異常をとらえられないことになる。
同講師は「糖尿病患者も含めたCKD患者の脂質異常では,LDL-Cよりも,総コレステロールからHDL-Cを減じたnon-HDL-Cを指標として評価する方がよい」と言う。
 
同講師らは非糖尿病性透析患者205例を対象に,リポ分画ごとの動脈硬化惹起性についても検討している。
大動脈PWVとの関連を,年齢,性,血圧,喫煙 で調整した重回帰モデルで解析した結果,VLDL高値,IDL高値,LDL高値はいずれも大動脈PWVの増大と有意に関連していたが,関連の程度の最も強いのはIDLで,次いでVLDLとLDLが同程度であった。
なお,HDLと大動脈PWVとの間には有意な関連は認められなかったという(J Am Soc Nephrol 1998; 9: 1277-1284)。

同講師らはまた,透析患者4万5,000例以上を対象に,non-HDL-CおよびHDL-Cでそれぞれ4分位に層別化し,心筋梗塞発症リスクとの関連を検討している。
その結果,non-HDL-Cは高値の層になるほど,HDL-Cは低値の層になるほど心筋梗塞発症リスクが高いことが示された。
さら に,non-HDL-Cが最も低くHDL-Cが最も高い層でのリスクを1とした場合,non-HDL-Cが最も高くHDL-Cが最も低い層でのリスクは 2.9倍であることも示されたという(Clin J Am Soc Nephrol 2011; 6: 1112-1120)。

 

脂質低下の介入試験でCVDリスクが低下
CKD患者を対象とした脂質低下の介入試験は極めて乏しい。
しかし,いくつかの介入試験の成績や,そのサブ解析の結果から,脂質低下がCKD患者の粥状動脈硬化性CVDリスクを低減することが示唆されている。
 
Die Deutche Diabetes Dialyse(4D)試験は2型糖尿病患者1,255例を対象に,アトルバスタチンによるCVDリスク抑制効果を検討した二重盲検試験である。
結果は,4年の追跡でアトルバスタチン群ではプラセボ群に比べて「心臓死+非致死的心筋梗塞+脳卒中」の発症リスクが8%抑制されていたが,有意差までは認められなかった(NEJM 2005; 353: 238-248)。
 
しかし,庄司講師によると,4Dには
(1)1次エンドポイントに脳出血,不整脈死,心不全死も含まれていたため,真のアテローム動脈硬化抑制効果が希釈 されていた可能性がある
(2)狭心症で経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を実施し成功すれば心筋梗塞や心臓死とは見なされないため,1次エンドポ イントに達したと判定されない
—などの問題点があるという。
同講師の指摘は,虚血性心事故のみの抑制効果を見た場合,アトルバスタチンのリスク抑制効果は18%と有意水準(P<0.05)に達することからも裏付けられた。
 
Study of Heart and Renal Protection(SHARP)試験は,CKD患者(保存期6,247例,透析期3,023例)を対象に,シンバスタチンとエゼチミブの併用による動脈硬化性イベントの抑制効果を検討する二重盲検比較試験。4.9年の追跡の結果,1次エンドポイントの「非致死的心筋梗塞+冠動脈死+非出血性脳血管障 害+なんらかの動脈血行再建術」は,プラセボ群に比べて実薬群では17%の有意なリスク低下が示された(Lancet 2011; 377: 2181-2192,図3)。

図表
 
MEGA studyは,CADの既往のない軽度~中等度の脂質異常症患者約8,000例を対象に5年以上追跡し,プラバスタチンによるCVDの1次予防効果を検討した,わが国初の大規模ランダム化比較試験。
CKDステージ3の約3,000例を対象としたサブ解析の結果,プラバスタチンによりCHD,CVD,脳卒 中,総死亡のいずれもが有意に抑制されることが示された(Atherosclerosis 2009; 206: 512-517)。
 
以上のような成績を踏まえて,同講師は「CKDでは原疾患や合併する高血圧の管理が重要であることは言うまでもないが,加えてCVD対策としての脂質管理も重要である」としている。
 
では,CKDにおける脂質管理の目標値はどれくらいに設定されるのが適当なのか。
これについては日本動脈硬化学会も現在までのところ,目標値に関するコメントは発表していない。
しかし,高リスク群ではより厳格な脂質管理を目指すという従来の原則が踏襲されるのであれば,ガイドライン改訂版では厳格な管理目標値が設定されることは間違いない。
同講師は「前述のように,CKDは糖尿病よりもCVD発症に及ぼすインパクトが大きいことが示唆されている以 上,CKDの脂質管理目標値も糖尿病と同じか,それより厳しく設定するのが妥当であろう」と言う。
 
すなわち,少なくともCVDの1次予防ではLDL-Cが120mg/dL未満,2次予防では100mg/dL未満と設定される可能性が高い。
いずれにせ よ,CVDリスクとしてのCKDの意義はますます高まっていることを,すべての臨床家が十分認識しておくべきであるといえる。
 
出典 Medical Tribune  2011.11.24
版権 メディカル・トリビューン社

 

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第52回日本脈管学会総会(2011年10月20日~22日)で発表された、「救急外来で見逃された急性大動脈解離患者の臨床的特徴の検討」という演題(演者 横浜市立みなと赤十字病院循環器内科・倉林 学先生)記事で勉強しました。
 
大動脈解離「誤診」低いCT施行率
誤診の予測因子は、「歩いて来院すること」と「前胸部痛」
急性大動脈解離は、救急外来で見逃しや誤診されることが少なくない。
今回、救急外来で見逃された急性大動脈解離患者の臨床的特徴を検討した。
誤診率は16%で、CT施行率や画像検査施行件数が有意に低かった。
また、「歩いて来院すること」と「前胸部痛」 が有意な誤診の予測因子であった。
鑑別診断には細心の注意を払い、少しでも急性大動脈解離を疑った場合は、躊躇せずに画像検査を行うことが重要である。
 
 
急性大動脈解離は、CT、経食道心エコー、MRIなどの画像検査で正確に診断できると言われているが、救急外来での初期評価で見逃されたり、急性冠症候群などと誤診されたりすることが少なくない。
今回、我々は救急外来で見逃された急性大動脈解離患者の 臨床的特徴を検討した。
 
対象・方法
2005年4月から2010年3月までの5年間に当院救急外来を受診して、最終的に急性大動脈解離と診断された患者が124人いた。
そのうち、他院で診断後に搬送された13人と、外傷に伴う大動脈解離の2人を除いた109人(Stanford A:42人、Stanford B:67人)を後向きに検討した。
救急外来の初期評価の終了時までに診断がつかなかった群を「誤診群」、診断された症例を「正診群」と定義した。
年齢、性別、症状、来院手段、身体所見、既往歴などの臨床的所見と、血液検査(WBC、CRP、CK、Dダイマー)、心電図、胸部レントゲンなどの検査所見、救急外来で施行された画像診断検査の種類と数、手術施行率や院内死亡率などの臨床経過を両群で比較検討した。
また、誤診の予測因子を多変量解析で検討した。
 
結 果
109人中、17人(16%)で誤診が生じた。
誤 診群17人は、急性冠症候群(10人)、他の心血管疾患(3人)、腹部疾患(3人)、脳梗塞(1人)と誤診された。誤診群では正診群に比べて、前胸部痛の ある患者(71% vs. 41%、p=0.025)と、歩いて来院した患者(29% vs. 10%、p=0.042)が多く、胸部レントゲンでの縦隔拡大の頻度(25% vs. 55%、p=0.023)が低かった。
その他の臨床的所見や検査所見では、両群で有意差がなかった。
救急外来で施行された画像診断検査に関しては、誤診群では正診群に比べて、CTの施行率は有意に低く(41% vs. 100%、p<0.001)、患者ごとの画像検査施行件数も有意に少なかった(0.82±0.81 vs. 1.53±0.52、p<0.001)。
大動脈解離に対する緊急手術施行率(29% vs. 37%、p=0.349)と院内死亡率(18% vs. 15%、p=0.520)は両群で有意差がなかった。
多変量解析では、「歩いて来院すること」が最も強い誤診の予測因子であった(オッズ比 4.777、95%CI 1.267-18.007、p=0.021)。
また、「前胸部痛」も有意な誤診の予測因子であった(オッズ比 3.465、95%CI 1.061-11.314、p=0.040)。
 
少しでも疑った場合は画像検査を
急性大動脈解離の症状の種類や程度は様々で、診断は難しい。
救急外来において“Walk-in patient”は軽症とみなされがちであるが、その中にも大動脈解離などの重篤な疾患の患者が含まれており、トリアージを含めて初期診療をする医療従事 者は細心の注意が必要である。
また、大動脈解離は時に無痛性であることがあり、胸部レントゲンにおける縦隔拡大、身体所見における血圧の左右差や移動性の疼痛などの典型的な所見を示さない患者も少なくない。
さらに、大動脈解離は、大動脈から分岐するいかなる分枝でも閉塞を来たし得る疾患であり、脳、脊髄、 心臓、血管、呼吸器、消化器、腎、四肢などのあらゆる疾患と類似した臨床症状や検査所見を示し得るので、他疾患との鑑別が困難なことがある。
Dダイマーは、上昇していなければ大動脈解離を否定できる有用な除外診断マーカーではあるが、Dダイ マーの上昇は多岐の疾患で生じるので、特定の疾患を診断するには至らない。
平滑筋ミオシン重鎖のような、急性大動脈解離の診断における感度、特異度ともに高いバイオマーカーは、一般臨床ではまだ用いることはできない。
急性大動脈解離を疑った場合には、感度も特異度も高い造影CTなど画像検査を行うことが重要であり、それにより見逃しを減らすことができると思われる。
(Journal of Cardiology. 2011; 58; 287-293に掲載予定)
http://www.m3.com/academy/report/article/144995/
 
 
<番外編 その1> PL顆粒、クラリスロマイシン(CAM)とQT延長
http://medqa.m3.com/doctor/showMessageDetail.do?messageId=103222
 
<番外編 その2> 血圧は低すぎても、脳卒中再発
http://www.m3.com/news/THESIS/2011/11/25/11765/?portalId=mailmag&mm=EA111125_111&scd=0000163094
文 献:Ovbiagele B et al.Level of Systolic Blood Pressure Within the Normal Range and Risk of Recurrent Stroke.JAMA. 2011;306(19):2137-2144.
http://jama.ama-assn.org/content/306/19/2137.abstract
非 心原性虚血性脳卒中患者2万330人を対象に、最大血圧(SBP) と脳卒中再発リスクの関連を多施設試験の事後観察分析で評価。脳卒中再発リスクと、正常値内で非常に低い(<120mmHg)、高い (140-<150mmHg)、非常に高い(≧150mmHg)群が再発性脳卒中のリスク増加と関連していた。
 
<関連サイト>
急性大動脈解離 SGで良好な遠隔成績
http://mtpro.medical-tribune.co.jp/mtnews/2011/M44270171/
従来は,Stanford A型には緊急の人工血管置換術,同B型で破裂,臓器虚血などの合併症を持たない場合には保存的治療,合併症を有する場合には手術が必要とされていた。しかし近年,合併症を有するB型に対して,SG内挿術の有用性が広く認識されつつある。
また,A型でも手術困難例に実施する施設も見られるようになった。
■札幌医科大学救急集中治療部・第二外科の栗本義彦准教授らは,破裂,臓器虚血などの合併症を有するDeBakey Ⅲ型急性大動脈解離に対して,中枢側エントリー閉鎖目的の緊急SG内挿術を行い,術後早期だけでなく,中期においても良好な成績が得られたと報告した。
■大阪大学大学院心臓血管外科学の吉田卓矢氏らは,合併症のないB型急性大動脈解離のうち,遠隔期大動脈拡大高リスク症例に対して,SG内挿術が良好な初期成績と遠隔期の大動脈拡大防止効果をもたらしたことを報告した。
■埼玉医科大学国際医療センター心臓血管外科の朝倉利久准教授らは,A型急性大動脈解離に対する新しい治療法として,部分弓部置換術(HAR)の循 環停止時に下行大動脈へSGを内挿する術式「open stent-graft変法」を開発。簡便,安全に行えること,術後中期における下行大動脈径拡大を有意に抑制することを明らかにした。
 
~大血管疾患診断上のポイント~ 瘤や解離では血管壁性状に注意
http://yaplog.jp/hurst/archive/208
■急性期の大動脈解離の診断では,正確に分類をした上で臓器虚血の有無を確認することが重要。
■通常,解離が上行大動脈に存在するStanford A型では緊急手術を行うが,同B型でも臓器虚血や切迫破裂の合併例では手術を検討する。
■解離腔の状態(偽腔開存型解離/血栓閉鎖型解離)やulcer-like projection(ULP)の有無(血流が内腔から外腔に入るポイントの有無)も確認すべきである。
■血栓閉鎖型解離の場合は単純CTで三日月形の高吸収域を呈する解離腔内血腫が認められ,予後は比較的良好だが,ULPがあれば再解離に注意すべきである。
また,偽腔開存型解離では,真腔が圧排されて虚血が生じる恐れがあるため,解離部位などの確認が重要となる。
■慢性期の大動脈解離では,大動脈径が拡大する場合に手術適応がある。
 
<自遊時間> 
例年、インフルエンザワクチンを接種に来院する50代の女性。先日も接種のために来院されました。
「先生、2回目の手術のため今年入院しました」。
この方はもともとマルファン症候群があって以前にも胸部大動脈解離の手術歴があります。
こういったケースではすぐに診断がつくため誤診することはないはずです。
今回はSatnford Aでかつ大動脈弁に解離が及ん大手術だったようでしたがすっかり回復した様子でした。
 
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end_line メタボリックシンドロームモデルラットにおいてARBとCCBの併用は血管インスリン抵抗性を改善―脂肪細胞サイズ減少と抗炎症作用の相乗効果
Combination Therapy of an Angiotensin Receptor Blocker and a Calcium Channel Blocker Ameliorates Vascular Insulin Resistance in Metabolic Syndrome Model Rats Synergistically via a Reduction in Adipocyte Size and an Anti-Inflammatory Effect
アンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)とカルシウム拮抗薬(CCB)の併用療法がメタボリックシンドロームに有用な効果をもたらす機序については,まだ十分には検討されていない。
今回,末田氏らは,メタボリックシンドロームモデルラットを用いてARB・CCB併用療法の有効性について検討し,両剤併用により血管インスリン抵抗性が大幅に改善され,その機序としてp22phox関連酸化ストレスの減弱と内臓脂肪細胞サイズの縮小が相乗的に関与していることを明らかにした。

■SHRcpラットを用いARB・CCB併用と各単剤の血管への効果を比較
末田氏らは,メタボリックシンドロームのモデルとして肥満・高血圧自然発症ラットSHR/NDmcr-cp(SHRcp)を用いて検討を行った。
SHRcpラットを,
(1)プラセボ群
(2)カンデサルタン0.3㎎/㎏/日(ARB)群
(3)アムロジピン3㎎/㎏/日(CCB)群
(4)カンデサルタン0.3㎎/㎏/日+アムロジピン3㎎/㎏/日(ARB+CCB)群
の4群に分け,4週間の経口投与を行った。
血管インスリン抵抗性は,インスリン誘発内皮依存性血管弛緩反応を検査して評価した。
SHRcpラットにおいて,収縮期血圧はARB群,CCB群,ARB・CCB併用群のいずれにおいてもプラセボ群と比べ有意な低下を示した (p<0.05)。
ARB群とCCB群での低下は同等であったが,ARB・CCB併用群では各単剤群よりもさらに有意に大きな低下を示した (p<0.05)。
アセチルコリン誘発内皮依存性血管弛緩障害に対しては,SHRcpラットにおいてARB群,CCB群,ARB・CCB併用群ともに同様の改善を示した。
インスリン誘発内皮依存性血管弛緩障害に対しては,ARB群でプラセボ群と比べ有意な改善を認めたが(p<0.01),CCB群では有意な変化は認められなかった。
興味深いことに,ARB・CCB併用群では,プラセボ群と比べ有意な改善を認めたほか,ARBあるいはCCB単剤群よりも大きな改善が認められ,ARB群との間に有意差が確認された(p<0.01)(図1

 

図

 

ARB・CCB併用は血管インスリン抵抗性に対して相乗的な効果を示した。
この機序を検討するため,p22phoxの発現をウエスタンブロッティング法で評価したところ,SHRcpラットにおいて,ARBおよびCCB各単剤群よりもARB・CCB併用群でp22phoxの発現が有意に抑制されていた。
このことから,p22phox発現亢進阻害によるp22phox関連酸化ストレスの大幅な減弱が機序として一部関与している可能性が示唆された。
p22phoxは,活性酸素種生成にかかわる細胞膜中の酵素NADPHオキシダーゼ(nicotinamide adenine dinucleotide phosphate-oxidase,Nox)の活性化に必要な蛋白質のひとつである。
p22phoxは,細胞膜貫通型蛋白質であるチトクロームb558pのサブユニットであり,その発現亢進は酸化ストレス亢進をもたらし,内皮依存性血管弛緩反応の異常や血管障害の成因となることが示唆されている。
 

■内臓脂肪細胞サイズの縮小と抗炎症作用が相乗的に作用
次に末田氏らは,代謝異常と血管インスリン抵抗性との関連を調べるため,肥満および炎症に対する各薬剤の効果を比較検討した。
その結果,ARB・CCB併 用群ではSHRcpラットの肥大化した内臓脂肪細胞サイズの有意な縮小を認めたが,プラセボ群,ARB群,CCB群では有意な変化は認められなかった(図2)。
 図

 

またARB・CCB併用群では,ARBあるいはCCB単剤群に比べ,内臓脂肪細胞のマクロファージ浸潤と腫瘍壊死因子-α(TNF-α)レベルが有意に抑制され,これらに対しても相乗的な効果が示された。
このことから,ARB・CCB併用は肥満を相乗的に改善し,その結果として抗炎症作用を増強すると考えられる。
以上より末田氏は,ARB・CCB併用は,メタボリックシンドロームにおける血管インスリン抵抗性を相乗的に改善し,その背景にはp22phox関連酸化ストレスの減弱,内臓脂肪細胞サイズの縮小を介した抗炎症作用の増強などの機序が関与していると結論した。
(メディカルライター 坂井順子)


■監修者の自治医科大学内科学講座循環器内科学部門 苅尾七臣主任教授のコメント
ARB・CCB併用療法の血管・脂肪細胞への相乗効果
本研究は,メタボリックシンドロームのモデルラットにおいて,ARB・CCB併用が酸化ストレスを減少させ,血管に対してはインスリン誘発内皮依存性血管弛緩反応を改善し,さらに脂肪細胞に対してはサイズを縮小させ,抗炎症性に働くことを示した。
つまり,ARB・CCB併用は血管・脂肪細胞の両側面よりイ ンスリン抵抗性を改善することになる。
また,これらのARB・CCB併用の効果は,ARBあるいはCCBそれぞれの単剤治療よりも,有意に相乗的に増強することが示された。
これらの実験成績は,ヒトにおける高血圧患者を対象とした臨床研究から得られた成績と一致する。
以前,我々はARBで治療中の高血圧患者を対象としたJCORE研究において,ARB・CCB併用の効果をARB・利尿薬併用と比較した。
2群とも同程度に血圧レベルが低下したにもかかわらず,酸化ストレス指標である8-isoprostaneや高感度CRP,さらにインスリン抵抗性指標であるHOMA指数の改善はARB・CCB併用のほうが優れていた。
以上の実験ならびに臨床研究の結果から,ARB・利尿薬併用と同程度の降圧が得られた場合には,血管保護や糖代謝の面から考えると,ARB・CCB併用はよい組み合わせであるといえる。
   引用文献
   1) Am J Hypertens 2011;24(4):466-473

出典
http://www.biomedisonline.jp/aha2011hl/?link=mail

 

<番外編 その1>
シタグリプチンと血管内皮
シタグリプチンの動脈硬化抑制作用 
 
<番外編 その2>
[メディカル版]最新の話題 第34回日本高血圧学会
http://www.m3.com/news/GENERAL/2011/11/25/144956/?fullArticle=true
■高血圧治療と心不全治療は、前者は高血圧との、後者は低血圧との戦いという点で大きく異なるという。
 このため、高血圧を基盤とした心不全の場合、後負荷を軽減するという意味では、ARBは有効でしかも使いやすい。だが、血圧が低めの心不全では、ARBやβ遮断薬は降圧効果が強く、使い難くなる。
■心不全の重症度が増すほどレニン・アンジオテンシン(RAA)系やその他の多彩な血管収縮系のホルモン群、それに関連した酵素が活性化するため、アンジオ テンシンII(AII)の作用を抑制するだけでは不十分となる。ACE阻害薬は、AII合成抑制効果は弱いが、ブラジキニンの増加、それに引き続く一酸化 窒素(NO)の増強作用があり、その他の複数の酵素群にも干渉する。
■ACE阻害薬の使い方では、海外では比較的高用量が使われている。国内では、血圧低下が心配になり、心不全の重症度に伴って投与量が減量されているケース が目立つが、心不全の重症度に伴い、増量すべきであると考えられる。その理由は、ACE阻害薬がAIIの合成を強く抑制できないことが、心不全ではむしろ 有利に働き、血圧をあまり下げることなく増量できる可能性があり、増強された多面的効果で心不全の病態に対抗できるためだ。
■ACE阻害薬の空咳は、高血圧治療では高頻度に空咳が出現するが、心不全では極めて少ない。同剤は、心不全の予防薬としても期待も大きい。
■アリスキレンの腎保護効果は、降圧剤の中で最も期待できる。
■ACE阻害薬、ARBで尿蛋白が出現する患者に対してアリスキレンを投与すると、尿蛋白は減少する。最大量のARBで降圧効果が不十分な症例に対して、アリスキレンを併用すると、さらなる降圧効果が期待できることも報告されている。
■高血圧性臓器障害やイベントに対するリスク評価に対する中心血圧の応用は、その特性を十分に理解する必要がある。
○利尿薬やβ遮断薬の投与では、上腕血圧は下がっても中心血圧は下がらない。
○減塩は中心血圧の変化が大きい。
○内臓脂肪の蓄積あるいは肥満では、上腕血圧測定の方が精度が高く、中心血圧測定は肥満に関連するリスクを過小に評価する可能性がある。
○軽症候性脳血管障害のように、血圧の要因が強い臓器障害に関しては、中心血圧測定の精度は高い。
○肥満や糖尿病、インスリン抵抗性も重要な成因となる動脈硬化や腎障害などでは、中心血圧は臓器障害との関連性において上腕血圧に劣る可能性がある
 
<番外編 その3>
[医療費] 薬局調剤費が医療費の伸びのもっとも大きな要因と分析  日医
http://www.m3.com/news/GENERAL/2011/11/21/144761/?fullArticle=true 
 
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CAD/CKD患者の冠動脈リスクはレムナントリポ蛋白
冠動脈疾患(CAD)や慢性腎臓病(CKD)を有する患者では、レムナントリポ蛋白が心血管イベントの強力な予測因子になる可能性が新たに指摘された。
フロリダ州オーランドで開催された第84回米国心臓協会・学術集会(AHA2011)で、山梨大学の斉藤幸生氏らが発表した。
 
CKD症例では、冠動脈イベントのリスクとなるトリグリセライド値が高い。
トリグリセライドに富むリポ蛋白は多彩に存在するが、それらの中でどのリポ蛋白が冠動脈リスクになるのかは未だ明らかではない。
今回、斉藤氏らは、レムナントリポ蛋白がCAD患者やCKD患者における冠動脈イベントの予測因子となる可能性についての検討結果を報告した。

対象は、山梨県において冠動脈インターベンションを施行した患者を前向きに連続して登録している多施設共同研究FUJISUN registry(2008年5月開始)から、連続で抽出したCAD/CKD患者229例。

CKDは、糸球体濾過量(GFR)60mL/分/1.73m2未満と定義した。
レムナントリポ蛋白の量的評価では、血漿中のレムナント様リポ蛋白コレステロール(RLP-C)を免疫分離法で定量して指標とした。

対象のうち、46例が冠動脈イベントの既往を有し、183例はイベントを経験していなかった。

両群のベースラインの患者背景では、既往あり群のBMIは24.8±3.3kg/m2で、既往なし群の23.4±3.8kg/m2に比べて有意に高く(P<0.05)、糖尿病罹患率(68% 対 41%)も有意に高かった(P<0.05)。

また、既往あり群ではトリグリセライド値(142±49mg/dL 対 124±54mg/dL)、BNP(287±326pg/mL 対 238±296pg/mL)、血清クレアチニン値(2.98±3.00mg/dL 対 1.69±1.92mg/dL)、RLP-C値(6.2±3.8mg/dL 対 4.3±1.8mg/dL)が有意に高かった(P<0.05)。

一方で、既往あり群のHDL-C値(39±10mg/dL 対 43±10mg/dL)、クレアチニンクリアランス(33±20mL/分/1.73m2 対 42±15 mL/分/1.73m2)は有意に低かったP<0.05)。

試験開始後、心臓死、非致死性心筋梗塞、冠動脈血管再建術を要する不安定狭心症、心不全の発症を記録した。対象をRLP-C値5.7mg/dL以上74例 と5.7mg/dL未満152例に分けて解析すると、18カ月の時点でRLP-C高値群では28例(38%)でいずれかのイベントが生じ、RLP-C低値 群の18例(12%)に比べて有意に多かった(P<0.0001)。

内訳は、心臓死5例 対 0例、心筋梗塞4例 対 2例、不安定狭心症15例 対 14例、心不全4例 対 2例だった。

Kaplan-Meier曲線による4つのイベント非発症率の解析でも、RLP-C高値群は低値 群に比べ、有意に低かった(P<0.01)。

さらに、段階的多変量Cox比例ハザードモデルによる解析では、RLP-C高値が冠動脈イベントの予測因子であることが示唆された(ハザード比1.8、95%信頼区間:1.3-6.9、P<0.01)。

ROC曲線の解析でも、既にリスクとされている加齢、男性、喫煙、糖尿病、LDL-C高値、HDL-C低値、収縮期血圧高値にRLP-C高値が加わると、ROC曲線化面積が0.63から0.76に有意に拡大し、予測値が高まることが示された(P<0.05)。

斉藤氏は以上の結果を踏まえ、「RLP-Cの定量は、CADおよびCKDの患者の冠動脈イベントリスクの層別化にも活用できると考えられる。今後は、実臨 床にRLP-Cの評価をより積極的に取り入れ、エビデンスを蓄積し、パラメータとしての信頼性を確立していきたい」と、さらに一歩踏み込んだ研究を見据え、意欲を示した。

 
出典   NM online 2011.11.22
版権 日経BP社
 

<私的コメント>

少し調べてみると「運動療法が脂質代謝、特に中性脂肪改善効果を通して、腎保護作用をもたらす可能性がある」、「ΔeGFRとΔ中性脂肪が有意な負の相関」といったCKDと中性脂肪の関連をみた論文が見つかりました。さらには「CKD患者において中性脂肪が独立した危険因子である」(Am J Med Sci. 2009;338(3):185-9)、
「高中性脂肪・低HDLがCKDにおける腎機能悪化の条件の一つで、この悪循環を断ち切ることも腎保護につながった可能性がある」(J Am Coll Cardiol. 2008;51(25):2375-84)」といった論文もあります。

論文を読んでいないので両者の関係をどのように考察しているのかわかりませんが、CKDといういわば漠然とした病態概念にTGがどのように関与するのか知りたいところです。

一方、家族性高コレステロール血症においては腎障害の
発症は報告されていないようです。

しかし,健常人における健診時の脂質異常症は,CKD 発症の危険因子であることが示されています。
Physician's Health Study では,健常男性においてTC,非HDLコレステロールの上昇,HDL コレステロールの低下は,CKD 発症の危険因子であることが示されています。
またHelsinki Heart Study では,LDL コレステロー
ル/HDL コレステロール比の上昇がCKD 進行の
危険因子であったと報告されています。

脂質異常症のCKD に対する影響は多くのコホート研究により示されており,TC 上昇,TG 上昇,LDL コレステロール上昇,HDL コレステロール低下は,それぞれCKD
進行の危険因子であったとのことです。

ARIC Study では,CKD におけるTC 上昇とTG 上昇がCVD 発症の危険因子であったということです。
Muntner P, He J, Astor BC, Folsom AR, Coresh J. Traditional and nontraditional risk factors predict coronary heart disease in chronic kidney disease: results from the atherosclerosis risk in communities
study. J Am Soc Nephrol 2005;16:529-538.


臨床というリアルワールドではCKDに対してフィブラート系薬を使用することについては細心の注意が必要となります。
ベザフィブラートとフェノフィブラートの投与はCKDス
テージ3で慎重投与,CKD ステージ4,5 においては原則禁忌とっているからです。



<自遊時間>
http://mtpro.medical-tribune.co.jp/mtpronews/1111/1111016.html
 
  
http://mtpro.medical-tribune.co.jp/mtpronews/1111/1111073.html
 
こういったデモは世界的に流行しています。
開業医と勤務医は同床異夢の部分もあります。
何事もそうですが、どんな組織でも「総意」というものがあっても完全に細部にわたって意見が一致することはありません。
総論賛成、各論反対また逆の場合もあります。
私がこういった組織に深入り出来ないのはこういった理由です。
東京でのデモをされた先生方の多くは病院関連の先生であると想像されます。
この先生方が日本医師会に加入されているのかどうかは知りませんが、日本医師会との関係を断ち切ってのデモなのでしょうか。
彼らは医学部新設を唱えています。
いわば、日本医師会とは立場を異にしています。
この団体に対して、今年は日本医師会の副会長が挨拶のために壇上に上がったとのこと 。
このことにはいささかの違和感を覚えます。
 
<関連サイト>
全国医師ユニオン

全国医師ユニオン - Wikipedia
 
 
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http://wellfrog3.exblog.jp/
井蛙内科/開業医診療録(2)2008.12.10~
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AHA 2011で発表で発表されたSATURN試験についてのNissen先生のコメントが発表されました。

SATURN試験
http://blog.m3.com/reed/20111118/SATURN_

 
スタチンのアンダーユースは世界共通の課題
AHA 2011で発表のSATURN試験についてSteven Nissen氏と一問一答
冠動脈疾患の再発(二次)予防に重要な位置付けを占める2つのストロングスタチンの比較試験SATURNから学ぶべき点は何か―。
試験統括者であり,米クリーブランド・クリニック循環器科部長のSteven E. Nissen氏に聞いた。
同氏はスタチンのアンダーユースは世界共通の課題だと主張している。
 
PAV変化率は最も信頼性の高い評価項目
――なぜ,プラーク容積率(PAV)の変化率が1次評価項目に設定されたのか。
わたしたちは,プラークが進展するほどに臨床イベントは増加すると考えている。
したがって,治療では常に,冠動脈プラークの退縮を目指すことになる。
PAV変化率は最も信頼性の高い評価項目で,また,臨床イベントとも最も強い相関があることが分かっている。
この評価項目を用いることで,患者の予後を推測することができる。

――25%の脱落率は結果に影響を与えていないか。
血管内超音波法(IVUS)という侵襲的なカテーテル検査を評価項目に置く限り,相当数の患者が2回目(試験終了時)のIVUSを希望せずに脱落することは想定しなければならない。
脱落は両群間で同等に起きているので,試験結果にバイアスがかかったということは考えられない。

――最大用量のスタチン治療において安全性の懸念はないか。
この試験で,われわれは最大用量のスタチンを問題なく投与することができ,優れた安全性も担保された。
もちろん,欧州や北米,オーストラリア,南米で実施されているということを考慮すると,スタチンの高用量投与に対してより慎重なアジアでは,最大用量がわれわれの地域よりも低く設定されるだろう。
ただ,スタチンが治療されるべき患者に十分な用量で投与されていないということは,どこでも共通した課題である。
 
高用量スタチンが,少量~中等量スタチンよりも有益な臨床効果をもたらすことをわれわれは証明してきた。
副作用の発現率は確かに多少増えるが,それは,高用量スタチンであっても非常に低い。
今回の試験での副作用発現率を見ると,ロスバスタチンでは蛋白尿が多い傾向に,アトルバスタチンでは肝機能異常が多い傾向にあったが,全体で見ると非常に少ない発現率だ。
2つの薬剤はともに安全性が担保されている。
試験対象は,高リスクの冠動脈疾患患者群であるにもかかわらず,2年間での心血管イベント発生率はわずか7%だった。

――この試験から高用量スタチン療法を推薦されるのか。
高用量スタチンで心血管イベントリスクを低下させることは,複数のエビデンスで既に十分に明らかになっている。
この試験は,それをさらに確実なものにしたといえるだろう。                                      (田中 かおり)
 
出典 MT pro 2011.11.17
版権 メディカル・トリビューン社


<自遊時間>
首相がTPP参加表明をした後になって、日本の医療制度はどうなるのだろうか、といったことがマスコミで取り上げられるようになって来ました。
昨日の某報道番組でも米国の製薬メーカーが薬価引き上げを迫ってくるようなシミュレーションをしていました。
いわゆる医療界に新自由主義が持ち込まれるというものです。
ちょっと古い記事(2008.8.10)になりますが、「日経メディカル オンライン」に「医師すらも貧困層に転落する米国の現実」という記事が出ていました。
永六輔氏の「大往生」(1994年刊)以来の岩波新書の大ベストセラーとなった「ルポ貧困大国アメリカ」の著者・堤未果氏へのインタビュー記事です。
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/report/200807/507412.html

■2006年出版の前著の『報道が教えてくれないアメリカ弱者革命』(海鳴社刊)では、貧困層の高校生が軍にリクルートされ、イラク戦争に行かされている現実など、戦争をテーマに、マイノリティーが国の捨て駒にされている実情を書きました。
出版後も取材を続けていくうちに、大学も出て仕事にもきちんと就いている中間層の人たち、さらには社会的に尊敬されていた医師や教師といった人たちの中にも貧困層に転落し、低所得者食糧配給を受けているケースが少なくないことが分かってきました。

今年(2008年)の『文藝春秋』6月号に医療過誤保険の負担で年収が2万ドル以下になった医師のことを書きましたが、それは決してまれなケースではありません。
なぜ中間層、さらには医師までもが転落するようになってしまったのか。

最大の原因は、競争と規制緩和を推し進めて、これまで政府がつかさどっていた、医療や教育さえも市場原理に任せてしまおうとする新自由主義政策にあります。
新自由主義政策はレーガン政権のころから、大企業を減税し社会保障費を減らすという形で展開されてきましたが、特にそれが顕著になったのはブッシュ政権になってからです。
■中間層がしっかりといるときは、競争原理を入れなくても国内でモノが消費されていく。

ところが、中間層が減り、消費が萎んできたとき、それを喚起させるには、より安いモノを海外から入れなければならない。
すると国内の製造業が駄目になり、そこで働いていた中間層が落ちていく。
そういったことが見えてくると、これはアメリカだけの問題ではなく、国を超えて世界で起きていることではないかと考えるようになりました。
■小泉政権で経済財政諮問会議が混合診療や株式会社の病院経営などの解禁を主張していましたが、その根底にあるのは新自由主義そのものです。
アメリカ人からしてみると、日本の国民皆保険は理想的な制度で、なぜそれをわざわざ壊そうとするのか分からない。
■今、アメリカの医師が置かれた状況はひどいものです。開業医で患者さんをたくさん抱えている人以外、特に病院勤務が中心の医師たちは追いつめられています。
特にひどいのは医療過誤訴訟のリスクが高い産婦人科や心臓外科の医師たちです。

年収20万ドルだった外科医が、保険料が18万ドルになったため差し引き年収2万ドルのワーキングプア・レベルにまで転落、廃業に追い込まれた例もあります。
■さらに、保険会社が病院の経営方針に大きく介入するようになり、効率や採算性を優先するその経営手法が医療現場を激しい競争にさらしています。

過剰労働と十分な治療を患者に提供できない罪悪感などから、心や体を病む医師が増えています。
医師はまだ貧困層じゃないからいいじゃないか、と言う人もいますが、経済的には大丈夫でも、心が壊れていくのです。
今、医師の抗うつ薬の使用量は莫大なものになっています。
■国が守るべき国民の生存権は、単に経済的な要素ばかりでなく、誇りを持って働けるとか、人間らしい働き方ができるといったことも含めてのものだと私は思います。

しかし、かつて国が守ってくれていた医師や教師といった社会インフラの要となる人々ですら、国は守ってくれなくなったのです。
3年以上前の記事ですが、今回のTPP問題をあたかも予見しているような内容だったので取り上げさしていただきました。
以下のブログもご覧下さい。

<TPPを問う> 混合診療、現場に賛否
http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy/39186619.html
 
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ビール愛好家には朗報です。
 
ビールにワインと同様の心血管イベント予防効果イタリア・メタ解析でJ字型の関係,蒸留酒では効果なし
ワインに心血管リスクを低下させる効果があることはよく知られているが,ビールや蒸留酒の影響については明らかではない。
イタリアGiovanni Paolo II,Fondazione di Ricerca e CuraのSimona Costanzo氏らはメタ解析を行い,ビールによるアルコール消費量と心血管イベントリスクはJ字型の関係にあり,ワインとほぼ同様の結果だったと発表した(Eur J Epidemiol 2011年11月11日オンライン版)。
蒸留酒ではリスク低減は認められなかった。
「ワインとビールのどちらかを選ぶかではなく,適度に飲むことがより重要だ」としている。

いずれも25g/日のアルコール消費でリスク低下最も大きく
Costanzo氏らは,2011年3月までにPubMedとEMBASEに掲載されたアルコール消費と心血管リスクに関する論文データを検索。
97研究を抽出し,ビール,ワイン,蒸留酒の区別がない研究などを除く欧米,オーストラリアの18研究(前向き研究12,症例対照研究6)を分析した。
 
アルコール消費量を横軸に,心血管イベントの相対リスクを縦軸にとって17研究の集積データを見ると,ワインによるアルコール消費量と心血管イベントリスクとの間にはJ字型の相関関係が認められた。
最もリスクが低いのはアルコール消費量21g/日で31%(95%CI 19~42%)のリスク低減があり,リスク低減がなくなる消費量は72g/日だった。
同様の関連がファンネルプロットにより出版バイアスが示唆された研究や年齢のみで調整した研究を除外した分析でも確認された。
 
また,13研究の解析でビールでもワインと同じ傾向が見られ,43g/日のアルコール消費で42%(同19~58%)の心血管イベントリスクの低減があった。
リスク低減がなくなるのは55g/日であった。

<私的コメント> 
ビール大ビン1本は5.5%のアルコール濃度としてアルコール35gとなります。
いわゆる「治療域」が随分低いので「ほどほど」が難しいですね

ワインとビールそれぞれについて報告がある12研究の分析では,ワインとビールはほとんど重複したカーブを描いた。
特に少量から中等量のアルコール消費ではワインとビールの結果はほぼ同じであり,いずれも25g/日のアルコール消費で最も大きいリスク低減(ワイン32%,ビール33%)を示した。
 
なお,蒸留酒に関する10研究の解析では,心血管イベントリスクとの間にJ字型の相関関係は認められなかった。
 
同氏によれば,同研究はビールとワインで心血管イベントに対する同様の効果があることを明らかにした初めてのメタ解析。
ただし,少量から中等量の 結果が多数の経験的データに基づくのに対し,より多い飲酒量はむしろ数学的な結果であるとことわり,「飲み過ぎの害は常に強調されなければならない」と指摘している。(木下 愛美)
 
出典 MT pro 2011.11.17
版権 メディカル・トリビューン社
 
<私的コメント> 
今回の結果では、ワインとビールの心血管イベントリスクの低減効果はほぼ同じということです。
ポリフェノールの関与(学説)はどうなってしまったのでしょうか。
 
<自遊時間 その1>
こんなサイトはいかがですか?
トマソン・トーキョー
 
<自遊時間 その2
ある講演会に出席して信じられない光景に遭遇しました。
講演も酣(たけなわ)、高齢の参加者が心地よくイビキをかき始めました。
前の席の30代の若い参加者がじっと振り返って睨みつけていました。
その光景自体も異様でしたが、鼾が最高潮に達した時に老医師の席に置いてあったコップをしこたま顔と体に勢いよく浴びせて中途退席しました。
至近距離にいたのですが一瞬何が起こったのか分かりませんでした。
隣席の参加者も、この水を浴びて被害を被りました。
衆人環視のもとで行われたこういった破廉恥な行為に対して誰も注意しない、そして出来ないということがいかにも情けないことです。
医師というものは紳士淑女であるというのが最低条件であり、世間からも一定の評価を受けているというのが暗黙の了解事項です。
昔はこういったこと(はっきりいって暴力行為です)はとても考えられませんでしたが、ドクターの質もここまで落ちてしまっているのです。
全く知らないヒトではありません。
偏見という謗りは甘受してのことですが、「あの大学の出身者ならあり得るというのが、今の直な彼に対する感想(怒り)です。 
後味の悪い講演会になってしまいました。
 
<自遊時間 その3> RPVI
ボストンでVascular Imagingの講習会
Registered Physician in Vascular Interpretation (RPVI)
 
 
 
佐伯祐三(1898~1928)「自画像」(1917年)
http://white.ap.teacup.com/syumoku/300.html

 
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心臓インターベンション医
放射線曝露に抵抗する防御反応が体内で促進
心臓カテーテル検査(以下,心カテ)を用いて治療を行う心臓病専門医(以下,心臓インターベンション医)は,一般の放射線科医と比べて年間2~3倍の電離放射線に被ばくするが,イタリア国立研究評議会(CNR)臨床生理学研究所(伊ピサ)のEugenio Picano所長らは「心臓インターベンション医では,低線量放射線に継続的に曝露されることにより,放射線の有害な影響に拮抗する作用と考えられる自発的な変化が細胞レベルで起こっていることが分かった」とEuropean Heart Journal(2011; オンライン版)に発表した。
こうした変化をエビデンスとして示したのは,今回の研究が初めてである。
 
アポトーシス感受性も亢進
今回の研究では,職業上定期的にX線にさらされている心臓インターベンション医10人において,血中のグルタチオンと過酸化水素(H2O2)濃度が上昇していることが分かった。
グルタチオンは抗酸化物質で,活性酸素種(ROS)による細胞損傷を防ぐ役割を果たしていると考えられており,H2O2はROSによる酸化ストレスの指標である。
これら化学物質の変化に加え,リンパ球では,細胞のアポトーシスの誘導に関与する酵素カスパーゼ-3の発現が亢進していた。
 
研究責任者のPicano所長は「心臓インターベンション医では,放射線被ばくのない人と比べ,H2O2濃 度が3倍に上昇していた。
これは,放射線による有害な変化が細胞レベルで増大していることを示している。
しかし,その一方でグルタチオンが約2倍に上昇していること,白血球のアポトーシス感受性が高まっていることは,こうした有害な変化に対する防御反応の促進を反映していると思われる。
細胞のアポトーシス 感受性亢進は,DNAが損傷し,がん細胞になりうる細胞を排除するための防衛機構と考えられる」と述べている。
 
有益か有害かはまだ不明
筆頭研究者でCNR食品化学研究所(伊アベリーノ)の上級研究員であるGian Luigi Russo博士は「心臓インターベンション医では,規制基準では“安全”と考えられている一定レベルの放射線への曝露が,複雑な生化学的適応反応や細胞適 応反応を誘発する可能性が示された。
また,そうした反応により抗酸化防御が改善され,これら医師の体内で増大したROS濃度とのバランスが保たれていることも示唆された」と述べている。
さらに「こうした変化が適応上の有益な変化であるのか,それとも臨床的に重要な有害な変化の前兆であるのかはまだ明らかではない。なぜならDNA損傷や酸化ストレス,アポトーシス感受性の増大は,さまざまな疾患の発症に関与しているからだ」と指摘している。
 
線源近傍という作業環境が要因
職業上,電離放射線に曝露される人口は,軍人を除いても世界中で約2,300万人と多く,うち約700万人は医療従事者であるが,代表的なものとして心臓インターベンション医のX線被ばくや核医学者のγ線被ばくなどが挙げられる。
過去20年間に心カテの施行件数は増加してきており,それに伴い心臓イン ターベンション医が放射線に曝露される機会も増えている。
米国の心カテ施行件数は,1993年の245万件から2006年には460万件へと増加しており,欧州でも同様の傾向が見られる。
Picano所長によると,こうしたカテーテルインターベンションを施行された患者は,1回当たり胸部X線撮影300~5,000回に相当する大量のX 線を浴びる可能性がある。
経皮的冠動脈インターベンション(PCI)や心臓ラジオ波焼灼術による平均被ばく量は,胸部X線撮影750回分に相当する。
心臓インターベンション医の職業的被ばく量は放射線科医の3倍相当で,1人当たりの年間被ばく量が胸部X線撮影250回分に達しているのは,放射線源の近傍で 作業しなければならないという職業環境が原因である。
生涯リスクの推算にはまだ不明瞭な点もあるが,30年間従事することにより,約100人に1人ががん を発症するほど,生涯リスクが増大するという。
 
意識付けで被ばく量は90%削減可能
今回の研究では,心臓インターベンション医10人と放射線被ばくのない医療従事者10人を比較した。
前者の放射線曝露量は,着用している放射線バッジから入手し,そのデータに基づいて生涯予想被ばく量を算出した。
また,血液を採取し,グルタチオンとH2O2の血中濃度,さらに分離したリンパ球のカスパーゼ-3活性を調べた。
 
Russo博士は「今回の知見は,臨床的にも科学的にも示唆に富んでいる」とコメントしている。カテーテル処置室に「放射線を防ごう」という風潮が根付 いていれば,同じ治療行為を行っても,医師や他のスタッフ,患者の被ばく量を90%削減できることが示されていることに言及。「したがって,心臓インター ベンション医は,被ばく量を最小限にとどめるよう日常の業務であらゆる努力を払うべきである」と指摘している。
 
また,「心臓インターベンション医は,慢性的な低線量被ばくの影響を調べるのに適した特異な集団である」と説明している。
イタリアでは現在,この問題を 検討するHealthy Cath Lab研究という大規模研究が進行中であるという。
同博士は「同研究は“心臓インターベンション医による心臓インターベンション医を対象とした心臓イン ターベンション医のための研究”で,慢性的な低線量被ばくのがんまたは非がんに関する影響を解明することを目的としている」と述べている。
 
さらに「優秀な心臓インターベンション医は,救命のための放射線を恐れるべきではないが,それと,放射線に対して認識不足なことや無頓着であることとは全く異なる」と付け加えている。
 
認識を高め防御手段を講じるべき
ヨハネス・グーテンベルク大学医療センター(独マインツ)心臓医学部門のThomas Münzel教授とTommaso Gori博士は,同誌の付随論評(2011; オンライン版)で,今回の研究の限界として
(1)小規模研究であること
(2)関連機序に関する洞察が不完全であること(3)BMIの差
(4)他の心血管危 険因子に関する情報が欠落していること
—などを指摘している。
その一方で,興味深い研究であるとして「心臓インターベンション医の体内では,放射線による 酸化ストレス(より正確には放射線ストレス)が起こりやすいが,幸いにもそれに拮抗する抗酸化防御が働くようだ」と述べている。
 
また,心臓インターベンション医自身が認識を高め防御手段を講じるべきであることと,さらなる研究が必要である点に関してRusso博士らに賛同。
「電離放射線の影響はまだ完全には理解されておらず,心臓インターベンション医は患者,同僚,また自身においても,あらゆるリスク低減策を講じる必要がある。 現代の画像診断技術は目覚ましく,また複雑で長時間にわたるインターベンション手技を成功させた後には相当な自己充実感が得られるのは確かだが,これらと 手技の費用,臨床的有用性,リスクとの間でバランスを図ることが重要で,中でも長時間放射線に曝露される術者のリスクについては注意を払う必要がある」と述べている。
 
出典 Medical Tribune 2011.11.17
版権 メディカル・トリビューン社
 
 
<一口メモ>
カルシウム拮抗薬とグレープフルーツの相互作用
かなり強い 
ムノバール(一般名フェロジピン)、バイミカード、アダラート
強い
カルブロック、カルスロット、バイロテンシン
やや強い
ベラパミル、ランデル、ペルジピン
少ない
アムロジン、ヘルベッサー
 
(ベニジピン?)
 

<トピックス> ・グレープフルーツジュースとカルシウム拮抗薬の相互作用 ...

 

 
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SATURN試験

戯れ言たれる侏儒 / 2011.11.18 00:50 / 推薦数 : 0
ロスバスタチン vs. アトルバスタチン,プラーク退縮を直接比較
同等の“前例のない”大きな効果,AHA 2011で発表のSATURN試験
強化スタチン療法による動脈硬化進展抑制の検証において,初のスタチン間比較が実施された。
このロスバスタチンとアトルバスタチンのプラーク退縮効果を検証したSATURN試験の 結果を,第84回米国心臓協会年次集会(AHA 2011:11月12~16日,オーランド)において,米クリーブランドクリニック臨床研究センターディレクターのStephen Nicholls氏が発表した。
その結果,症候性冠動脈疾患患者への24カ月間の最大用量投与により,標的冠動脈のプラーク容積率(PAV)がともに有意に減少した。
両薬間の効果に差は見られなかった。
同氏は「至適なLDLコレステロール(LDL-C)値やHDLコレステロール(HDL-C)値を可能とする最大用量の強化スタチン療法において,高い忍容性と前例のない高頻度かつ大きなプラーク退縮が示された」と述べた。
この成績は,N Engl J Med 2011年11月15日オンライン版に同時掲載された。
 
20%以上の狭窄有する冠動脈疾患患者に最大用量のスタチンを投与
SATURN試験は,北米,欧州,南米および豪州の208施設が参加した二重盲検ランダム化比較試験(RCT)だ。
対象は血管内超音波法 (IVUS)で冠動脈に1カ所でも20%以上の狭窄が認められた症候性冠動脈疾患患者。
LDL-C値の登録基準は,4週間以上のスタチン服用中の場合で80mg/dL超,それ以外ではLDL-C 100mg/dL超と設定された。
2008年1月〜09年6月にかけて1,578例が登録され,1,385例がランダム化割り付けされた。
まず,試験用量の半量で忍容性とLDL- C 116mg/dL未満の達成を確認する2週間のスクリーニング期間が設けられ,その後に,ロスバスタチン40mg群(R群)とアトルバスタチン 80mg(A群)に割り付けられ,104週間の投薬期間を経て再びIVUSが施行された。
割り付けが行われた1,385例のうち346例(25%)はIVUSの未実施などにより脱落したため,R群520例,A群519例の計1,039例が解析対象となった。
 

標的冠動脈プラーク退縮率は同等,全プラーク容積はロスバスタチンでより大きく減少
対象患者の平均年齢は57歳で,男性が約4分の3,BMI中央値は30%弱,高血圧7割程度,糖尿病15%程度,スタチン使用歴は6割程度だった。
他の治療薬としては抗血小板療法が98%に行われており,β遮断薬が6割程度,ACE阻害薬は4割強,アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)は 15%程度に投与されていた。
登録時点のLDL-C値は両群ともに約120mg/dLだった。

試験終了時の脂質値は,LDL-C値がR群62.6mg/dL,A群70.2mg/dLとR群で有意に低く(<0.001),HDL-C値はR群 50.4mg/dL,A群48.6mg/dLとR群で有意に高かった(P=0.01)。
そのため,LDL/HDL比はR群1.3,A群1.5とR群で有意に小さかった(P<0.01)。
一方,高感度C反応性蛋白(hsCRP)中央値はR群1.1mg/L,A群1.0mg/Lと,A群で有意に低かった (P=0.05)。

1次評価項目は,IVUSにより求められる標的冠動脈のPAV変化率で,R群の1.22%縮小に対してA群では0.99%縮小と両群間で差はなかった(P=0.17)。
しかし,両群ともベースラインに比べて有意な退縮が示された()。
Nicholls氏は「スタチンが用いられた試験の中でも最も大きい退縮率であった」と述べた。
 

photo
一方,2次評価項目の全プラーク容積(TAV)のベースラインからの変化は,A群4.42mm3減少に対してR群では6.39mm3の減少と,R群の方が有意に減少していた(P=0.01)。
なお,1次評価項目でPAV縮小が認められた患者は全体の3分の2に上り,その頻度はR群が68.5%とA群63.2%を上回ったが,有意差はなかった(P=0.07)。

 
最大用量の強化スタチン療法でも3分の1で動脈硬化が進展
観察期間に発生した主要心血管疾患イベント(MACE)は,R群7.5%,A群7.1%とともに低かった。
副作用として,肝機能異常を示すALTの3×正常値上限(ULN)がA群2.0%に対してR群0.7%,蛋白尿がR群3.8%に対してA群1.7%と両群間に有意差が認められたが,全般に低率だった。
HbA1cの変化も両群で0.1%以下にとどまった。

脂質値の変化に違いは認められたものの,PAV変化率は両群同等であったことから,Nicholls氏は「いずれの強化スタチン療法でも前例のないプラーク退縮作用と高い忍容性が認められた。
しかし,3分の1の患者では動脈硬化が進展していたことから,さらなる抗動脈硬化治療の模索が必要といえ る」と結んだ。
指定討論者でノースウエスタン大学フェインバーグ予防医学教授のDarwin R. Labarthe氏は,1次評価項目と2次評価項目の結果に一貫性がない点や,割り付けの4分の1が脱落した点を挙げ,2剤の違いについて今回の成績から 臨床効果の違いを示すことはできないと指摘した。
 
出典 MT pro 2011.11.17
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<私的コメント>
昨日の診療終了後。
たまたまファイザーのMRさんがSATURN試験の結果の説明に来ました。
iPadで発表内容を、見せてくれたのですが一見アトルバスタチンに比較してロスバスタチンが有利な結果でした。
RCTということでバイアスはないものと思われますが、スポンサーはアストラゼネカのようです。
 
<自遊時間 その1>
 
 
 
 
ルイ・ダゲールは写真を発明した人とのことです。
ノーベル賞は物理学賞、化学賞、生理学・医学賞、文学賞、平和賞の6部門がありますが「物造り」の部門がありません。
じょの中の平和賞は本来ノーベルの遺志で作られたものですが、非常に軽い人(?)も受賞しています。
該当者がない年には無理に受賞者を選ばないでこういった飛行機、自動車、コンピューターなどの「物造り」の人に光りをあてていただけないものでしょうか。
もっともノーベル賞は1901年からですから、ルイ・ダゲールは受賞できなかったでしょうが。
 
スティーブ・ジョブズ氏なども「人類のために最大たる貢献をした人々」ということでは、立派な該当者かも知れません。
こんなことをふと思った次第です。
 
<自遊時間 その2> 
定期購読の医学雑誌の継続更新の季節となりました。
私は長年「週刊・日本医事新報」を大学生協で定期購読して来ました。
ご存知のように4月から模様替えをして、内容も随分若い先生向きに変わりました。
いわゆる「ハウツー物」が増えました。
これを良しとするかどうかは購読者が決めることです。
私はモデルチェンジしてからのこの雑誌に個人の読み物として毎週777円を投資する価値はない、と判断しました。
来年から購読中止する旨、生協に電話をしました。
すっきりしたような後ろ髪を引かれるような複雑な心境です。
 
<ちょっと気になるサイト>
ウィキペディア創設者ジミー・ウェールズからのお願い
 
 
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経皮的弁膜症治療

戯れ言たれる侏儒 / 2011.11.17 00:42 / 推薦数 : 0
デバイスラグの解消が必要
非リウマチ性弁膜症がわが国でも増えている。
特に,加齢とともに頻度が高くなる大動脈弁狭窄症の増加が目立つ。
予後不良なため,早期に人工弁置換 術(AVR)を行う必要があるが,高齢者や高リスク患者は適応外とされることが多い。
こうした中,低侵襲手術として開発された経カテーテル的大動脈弁留置 術(TAVI)に期待が寄せられている。最近は,経カテーテル的僧帽弁留置術(TMVI)も考案され,両手術に用いるさまざまなデバイスの開発が進められ ている。大阪市で開かれた第20回日本心血管インターベンション治療学会(会長=大阪大学大学院先進心血管治療学寄附講座・南都伸介教授)のタウンホール ミーティング「経皮的弁膜症治療は,欧州では,すでに日常臨床として使用されている!果たして本邦にいつやってくるのか?」(座長=東邦大学医療センター 大橋病院循環器内科・中村正人教授,米スタンフォード大学循環器科・池野文昭氏,Boston Scientific社・内田毅彦氏)で,デバイス開発の最新情報が報告された。

TAVIの一部で治験進行,TMVIは出遅れ
座長の池野氏は「日本ではTAVIデバイスの一部で最近治験が開始されたところで,欧米,特に欧州からは大きく後れを取っている」と指摘。
行政,医師,企業によるチームワークの重要性を強調した。

SAPIEN XTの米国認可は年内か
池野氏は「日本ではごく一部の施設を除き,弁膜症のカテーテルインターベンションの研究が始まったばかり。世界の潮流に乗り遅れないようにする必要がある」とした。
TAVIデバイスは,フランスの心臓血管外科医Cribierが1990年代末に動物で有用性を確認。
2000年代に入って最初のヒトへの留置が行われた。
以後,さまざまなデバイスが開発され,現在はバルーン拡張型のEdwards Lifesciences社のSAPIEN XTと,自己拡張型のMedtronic社のCoreValveが,欧州で治験を終え,CE(European Conformity)マークを取得している。
SAPIEN XTに関しては,米国でもごく最近,治験が終了した。同氏は「米食品医薬品局(FDA)のパネルでかなりポジティブな意見が出されたので,おそらく米国で も今年中に認可されるのではないか」と述べた。
日本では,大阪大学など3施設共同の治験が進められている。そのほか,Boston Scientific社のSadraなど,多数のデバイスの開発が欧州で進められている(図1)。

 
図表
 
TMVIにおけるデバイスラグはさらに大きい。
同氏によると,米国の循環器医Goreが2000年ころに考案したMitra Clipは,2003年にヒトへの最初の応用が試みられた。
その後Abbott社により開発が進められ,欧州では2008年にCEマークを取得。
米国で は多数例を対象とした治験EVEREST-Ⅰ,Ⅱが終了したが,いつごろ承認されるかは明らかではない。
さらに,TMVIデバイスとして,米国 Cardiac Dimensions社が開発したCARILLONの治験が欧州で行われ,CEマークを取得している。
そのほかのデバイスの開発は欧州や中南米で進められている。
日本では,いずれのTMVIデバイスも治験開始にも至っていない(図2)。

図表
同氏は「device innovationには莫大なコストと時間,手間がかかる。弁膜症のカテーテルインターベンションのデバイスでも同じだが,日本の患者にもできるだけ早 く最新の治療を提供できるようにしなければならない。少しでもデバイスラグを解消するためには,行政,医師,企業によるチームワークが非常に重要だ」と訴えた。


日本のSAPIEN XT開発は順調に進展
日本のTAVIのパイオニアである大阪大学大学院心臓血管外科学の澤芳樹主任教授は,SAPIEN XTを用い,4例の臨床研究で良好な成績が得られたこと,現在3施設共同の国内治験が進行中であることを報告。
デバイスラグはおそらく生じないだろうとの見方を示した。

20mmサイズの治験が日本から
澤主任教授らは2009年秋に,TAVIの臨床研究を開始。2010年3月までに4例(年齢81~91歳,平均85歳)に実施した。
アプローチ法は,カ テーテルを肋骨間から入れ,肺,心尖部を通過,弁に到達させるtransapical approach(TA)が1例,transfemoral approach(TF)が3例。
ニューヨーク心臓協会(NYHA)心機能分類はⅡ度1例,Ⅲ度2例,Ⅳ度1例。間質性肺炎,慢性閉塞性肺疾患 (COPD),慢性腎不全などを有し,EuroScoreは平均26.8%と高い。
しかし,手術は全例成功し,TA例で心尖部出血が認められ,抜管がやや 遅れたものの,ほか3例では手術合併症はなく,術後平均9.2カ月のフォローアップで全例生存している。
同主任教授は,同じ年齢層のAVRに勝るとも劣ら ない成績が得られたとした。
圧較差の有意な低下も認められた。NYHA分類は全例1段階改善した。
 
一方,SAPIEN XTの治験は,上記4例を含む大阪大学症例31例(TF 23例,TA8例)と,榊原記念病院,倉敷中央病院の症例を併せた60例を対象に進められ,ごく最近終了した(23mm,26mmサイズ)。
さらに,弁輪 の小さい日本人に適した20mmサイズの治験が今年6月,世界に先駆けてスタートした。
 
同主任教授は,左室補助人工心臓(LVAD)が承認時既に製造中止になっていたという過去の苦い教訓を基に改革が進み,デバイスラグは明らかに短縮され つつあるとし,「SAPIEN XTの国内治験の進ちょくを見ると,おそらくデバイスラグが生じることはないだろう」と述べた。
また,承認までにTAVIを実施する施設,医師の基準案を 作成する必要があると指摘した。

臨床試験基盤とFIM試験体制の整備を
医薬品医療機器総合機構(PMDA)医療機器審査第二部の鈴木由香部長は,TAVIデバイスの開発は「かなり順調に進んでいる」としながらも,先 進的な医療機器全般の国内開発をより促進するために,欧米に劣らない臨床試験の基盤とFirst in Man(FIM)試験ができる体制整備の必要性を強調した。

シーズが欧米に流出
日本でSAPIEN XTの治験届けが提出されたのは米国よりも半年早い2010年4月。
鈴木部長は「デバイスラグを生まないという企業の努力により,SAPIEN XTについては,かなり順調に開発が進んでいる」と評価した。
ただし,デバイスラグを回避するための体制は,いまだ理想的なものではないとも述べた。
 
デバイスラグの主な原因とされてきた承認審査の遅れは,現在,米国と同等レベルまで改善された。
しかし「審査期間の短縮だけではデバイスラグは解消しない」と同部長。
「有望なシーズが欧米に流出してしまい,欧米で開発後に日本で治験着手となることがデバイスラグの根本的な要因だ」と指摘。
「先進的な医療 機器の国内開発を促進するためには,自国で臨床試験を行い,エビデンスを構築できる体制をつくること,さらに,開発したデバイスを製品化できる仕組みを持 つことが重要だと考えている」。
そのためには「欧米に劣らない臨床試験の基盤を整備すること,FIM試験が拠点病院以外でも広く実施できる体制を整備する ことが必要だ」と述べた。
 
PMDAでは7月から,新医薬品・医療機器の創出を促すため,初期段階からの薬事戦略相談事業を開始した。

出典 MT pro 2011.9.22
版権 メディカル・トリビューン社
 
<関連サイト>
PARTNER試験
■術適応と判断された高リスクの重度症候性大動脈弁狭窄患者において,TAVIの1年後の生存率は心臓外科手術(大動脈弁置換術)と同等であった

僧帽弁逆流に経皮的クリップ術
■中等症から重症の僧帽弁閉鎖不全症(僧帽弁逆流があり、手術が適応になる患者を対象に、低侵襲の僧帽弁閉鎖不全治療デバイスであるMitraClipを用いた経皮的修復術と外科的治療の有効性と安全性を比較したEVERESTⅡ試験の結果が、NEJM誌2011年4月14日号に報告された。
経皮的修復術群には、手術群に比べてその後に外科的治療が必要になった患者が多く存在したが、短期的な安全性とQOL、1年後の心不全の程度や左室駆出分画低下率などにおいては外科的治療に優っていた。

経カテーテル的僧帽弁尖クリッピング術
左心不全の独立予後規定因子ともいわれる僧帽弁逆流(閉鎖不全:MR)を、経カテーテル的にMR ジェット噴射部で僧帽弁両葉の弁尖を左室側からクリッピング接合することにより軽減するデバイス(MitraClip)が開発されたため、術後12ヵ月までの治療成績を従来の外科的僧帽弁形成・置換術と比較検討した。
新しいデバイス MitraClipは、外科手術に比べて治療効果は劣るが安全性では上回り、結果的に外科手術と同等の臨床予後を示した。
 
無症状の大動脈弁狭窄症への外科手術
ASは高齢者に多く,進行性で,生命予後が悪い疾患ですが,手術で劇的に改善します。
しかし,現実には多くの高齢者で手術は敬遠されています。
最近の欧州の多施設研究では,手術適応であっても,75歳以上で手術を受けた患者は7割しかいなかったとされています。
実際には高齢でも手術は十分可能で, 治療成績も良好なので,より積極的な手術の施行が望まれます。
また,より高リスクな症例でも欧米では経カテーテル的大動脈弁植え込み術(TAVI)が普及し,RCTで有用性が確認されています。
わが国では治験中ですが,今後はTAVI導入と外科治療のさらなる適用によって,ASの治療成績がますます向上す ると期待されます。

<自遊時間>
MRさんが血管外科の研究会の案内を持って来ました。
「・・・に対してステントグラフト内挿術を施工した1例」
何だか変だなと思って少し考えました。
「施工」は「施行」の間違い?。
血管外科も職人化が進んでいるんでしょうか。
 
読んでいただいて有り難うございます。
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その他
「葦の髄」循環器メモ帖 http://yaplog.jp/hurst/
(「葦の髄から循環器の世界をのぞく」の補遺版
ふくろう医者の診察室 
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井蛙内科/開業医診療録(4)2009.10.16~
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井蛙内科/開業医診療録(3)~2009.10.15
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井蛙内科/開業医診療録~2008.5.21 http://wellfrog.exblog.jp/ 
(内科医向き)
「井蛙」内科メモ帖
http://harrison-cecil.blog.so-net.ne.jp/
(「井蛙内科開業医/診療録」の補遺版)
があります。

 
 
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