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日本をはじめとする世界の主要な高血圧診療ガイドラインは,冠動脈疾患や脳卒中など脳心血管疾患リスク抑制の観点から,平均血圧を指標とした血圧管理を推奨しています。
しかし最近,高血圧患者の血圧変動が平均血圧とは独立した脳卒中リスク因子となりうることが報告され,注目を集めています。
きょうは2010年にLancet,Lancet Neurologyに5本の論文を発表したJohn Radcliffe HospitalのPeter M. Rothwell氏を交えた、脳卒中抑制の観点から血圧変動のリスクとCa拮抗薬アムロジピンを中心とした降圧について討議の記事で勉強しました。
新たな血管イベント予測因子 -血圧変動を視野に入れた高血圧治療戦略-
- 司会
- 苅尾 七臣 氏 自治医科大学内科学講座 循環器内科学部門主任教授
- 出席者(発言順)
- Peter M. Rothwell 氏 Professor of Clinical Neurology, Nuffield Department of Clinical Neurosciences, John Radcliffe Hospital
- 神出 計 氏 大阪大学大学院 老年・腎臓内科学講師
- 田村 功一 氏 横浜市立大学大学院 病態制御内科学准教授
SBP変動は独立した脳卒中発症の予測因子である苅尾 本日は脳心血管イベントの予測因子としての血圧変動の意義と,その抑制を目的とした薬剤治療を中心に討議していきたいと思います。 Rothwell先生は2010年に血圧変動のリスクについて,複数の興味深い論文を発表されました。最初にこの研究の概要をご紹介いただけますか。 Rothwell 各国の高血圧診療ガイドラインでは,収縮期血圧(SBP)の平均値を診療指標として重視しています。しかし,一過性脳虚 血発作(TIA)・脳卒中既往がある高齢の患者では,平均血圧がそれほど高くなくとも血圧に日日変動や週変動を生じ,経過観察か降圧治療を開始するかの判 断に迷うことがあります。 そこで,われわれはTIA既往患者を対象にした欧州の複数のコホート研究のデータに基づき,血圧の変動が独立した脳卒中予測因子となりうるかどうかについて検討しました。まず,2,435例を対象として英国で行われたUK-TIAから7回以上の外来診療を受けたTIA既往患者1,324例を選択し,外来診療ごと(visit-to-visit)のSBP変動量〔標準偏差(SD)〕が 小さい群から大きい群まで10群に分けて脳卒中発症リスクを比較しました。その結果,SBP変動量が最も大きい群(最高十分位群)のリスクはSBP変動量 が最も小さい群(最低十分位群)の6.22倍となりました(図1)。たとえ後に正常血圧に戻るとしても,一時的な高血圧(episodic hypertension)が臨床的に無視できない危険な現象であることが分かります。また,外来診療ごとのSBPの最高到達値が平均SBPの40%以上上昇した群で0~9%上昇群の6.21倍,SBPの最低値が平均SBPの20%以上低下した群で0~9%低下群の1.64倍,それぞれ脳卒中発症リスクが 高くなり,SBPのピーク/トラフの程度が,脳卒中発症の予測因子となることが示されました。
われわれは次に,高リスク高血圧患者1万9,257例を対象とした大規模臨床試験からTIA/脳卒中の既往を持つ2,011 例の高血圧患者を選択し,血圧変動と脳卒中リスクの関係について検討しました。その結果,外来診療ごとのSBP変動量(SD)が最も大きい群(最高十分位 群)の脳卒中発症リスクは,SBP変動量が最も小さい群(最低十分位群)の6倍以上となり,治療後に残存する血圧変動が脳卒中の予測因子となっていまし た。 なお,この大規模臨床試験をベースにした検討では,24時間自由行動下血圧測定(ABPM)による日中血圧変動,血圧モーニングサージ(MS:夜間最低 血圧との差が大きい早朝高血圧),診療時の数分内の血圧変動などの,より短期的な血圧変動と脳心血管イベントリスクの関係についても分析し,いずれの血圧 変動でも脳心血管イベントリスクとの相関が見られる一方,脳卒中発症の予測能については,長期的血圧変動でより高くなる結果が得られました。UK-TIA をベースにした検討でも,外来診療ごとのSBP変動量(VIM)が最も大きかった群(最高五分位群)における脳卒中発症リスクは診療2回で1.25,診療 10回で15.35と,回数が増えるほど血圧変動に基づく脳卒中予測能は高くなりました。 血圧MS,日内変動も脳心血管イベント・標的臓器障害の予測因子に 苅尾 Rothwell先生には,主に外来診療ごとの血圧変動についてご解説いただきましたが,脳心血管イベントの有力な予測因子としての血圧MSに関しても,ここで討議したいと思います。高齢の高血圧患者519例を対象にしたわれわれの検討では,ABPMで測定された血圧MS群の脳卒中発症リスクが対照群の2.7倍となっていました。血圧MSは,起立性高血圧の起因となり,大血管・細小血管障害や臓器障害にも関与すると考えられています(図2)。
未治療の高血圧患者356例の14日間の家庭血圧の最高血圧平均値と標的臓器障害の関連を調べた研究では,最高SBPの3分の2が早朝血圧であること,最高SBPは左室重量指標(LVMI),頸動脈内膜中膜複合体厚(IMT),尿中アルブミン/クレアチニン比(UACR)に相関し,平均血圧135 /85mmHg以上の群で特に相関性が高いことが分かりました。また,血圧MS群と対照群の比較では,平均血圧未満にコントロールされていても,血圧MS群でLVMI,頸動脈IMTが上昇しており,血圧MSの心血管リモデリングへの関与が示唆されました。 神出 わたしは仮面高血圧患者のLVMIが,持続性高血圧患者より高く,尿中アルブミン排泄量,アルブミン尿症罹患率も高値となることから,ABPM や家庭血圧の血圧変動が標的臓器障害の有用な予測因子になると考えています。最近では,外来診療ごとのSBP変動量の大きさで患者を4群に分け,アルブミ ン尿症や腎動脈の抵抗性指標との関連を分析し,高血圧性腎症進展にSBP変動がどのようにかかわっているかを調べています。今後は血圧変動の主因を突き止 めるために薬剤の影響や自律神経の作用,遺伝子的影響を視野に入れて研究を続けていきます。 Rothwell 脳と腎の循環コントロール機序には共通点が多く,非常に興味深い研究だと思います。 田村 これまでの知見から,短期的血圧変動には交感・副交感神経を介して心拍数,血管収縮力,末梢血管抵抗を制御する圧受容器の機能異常,または血管収縮を通じて血圧上昇に関与する交感神経優位への偏位,および動脈硬化性変化が影響し,長期的血圧変動には動脈硬化性変化が主に影響していると 考えられています。われわれが糖尿病性腎症を伴う高血圧入院患者36例を対象とし,冠動脈疾患の合併の有無でABPMでの血圧日内変動に差を生じるかどうかを調べた横断的研究では,冠動脈疾患合併群で夜間SBP変動量が大きくなりました。また,日中のSBP変動・心拍変動と心血管死の関係について1,542人,平均8.5年のABPMを解析した大迫研究では,SBP変動高値群,心拍変動低値群で心血管死リスクの増加が報告されています。これらの試験結果から,圧受容器の機能異常,交感神経優位,および動脈硬化性変化をもたらす心血管病変により短期的血圧変動が発生している可能性が示されました。 現在は,慢性腎臓病(CKD)の短期的血圧変動が著しい例で,腎機能障害進展抑制および心血管合併症予防のために高血圧,糸球体性高血圧,血圧変動を改善することを目的とした薬物介入試験に取り組んでいます。 血圧変動抑制作用を持つCa拮抗薬の投与で脳卒中リスクが低下 苅尾 それでは,血圧変動抑制を目的とした薬剤選択の話題に移りたいと思います。Rothwell先生は,血圧変動性の抑制に降圧薬のクラスエフェクトが存在するのではないかという研究も行われています。 Rothwell 先の大規模臨床試験に基づく検討では,アムロジピンベース(+ACE阻害薬)群において外来診療ごとのSBPや日中SBPの変動量が減少し,Ca拮抗薬の血圧変動抑制作用が注目されました。また,アムロジピン投与量が5mg/日から10mg/日に増量されるに伴い,血圧変動量が減少することから,血圧変動の抑制が用量依存性であることも示唆されています。 一方,6つの主要な大規模ランダム化比較試験において複数の薬剤の降圧作用と脳卒中発症リスクを調べたメタ解析の結果,Ca拮抗薬群では血圧変動量が減少し,脳卒中の発症が抑制されていました。さらに,389のランダム化比較試験のメタ解析でも,Ca拮抗薬のSBP変動量が他剤全体と比べて19%低く,脳卒中リスクは12%低いことが示され,Ca拮抗薬によるSBP変動の抑制が脳卒中発症リスクを低下させることが明らかになりました。 苅尾 アムロジピンに関しては,ACE阻害薬+アムロジピン,ACE阻害薬+利尿薬の降圧効果を比較したJamersonらの研究でも,増量に伴い心血管イベントが抑制されており,アムロジピンが他剤との併用療法で用量依存性に血圧変動を抑制することが確認されています。 田村 併用療法では,スタチンの投与も考慮の対象になります。Ca拮抗薬の長期的血圧変動の抑制作用は,スタチン併用で増強するでしょうか。 Rothwell Severらの研究では,アムロジピンベース+スタチン併用群で,脳卒中リスクが最も低下しており,可能性はあると思います。 田村 Ca拮抗薬はどのような機序で血圧変動を抑制するのでしょうか。 Rothwell 細小血管の拡張作用に基づいていると考えています。 苅尾 血圧変動は,大動脈硬化による圧受容体反射機能不全が主原因とされていますが,血圧MSの原因には細小血管リモデリングによる血管抵抗性亢進も挙げられています。Ca拮抗薬には血管平滑筋に作用して血管を拡張すると同時に,細小血管リモデリングを修復する働きがあると考えられます。 Rothwell 通常,血圧が上昇すると細小血管は徐々に収縮して脳血流量を調節しますが,血圧変動の大きな患者では,脳血流量と灌流圧の関係が不安定になります。細小血管の自動調節能に障害がある患者や脳白質が菲薄化する高齢者では皮質下に小さな梗塞を生じやすく,血圧変動時に細小血管の収縮に伴い,虚血が進展します。このように,SBPのピークは直接的に脳梗塞を惹起することがあるため,大きなピークを出現させないようにすることが血圧管理上のポイントとなるでしょう。 神出 頸動脈狭窄などの高リスク高血圧患者は,平均血圧がコントロールされていても血圧変動による虚血性イベント発生のリスクを抱えています。虚血性イベントの発生にはSBPのピークだけでなくトラフも関与すると考えてよいでしょうか。 Rothwell そうですね。特に脳底動脈狭窄患者などでは,SBPのトラフに起因する虚血性イベント発生のリスクがあるように思います。 苅尾 睡眠時の血圧低下で虚血状態が生じやすいextreme dipperでは無症候性の小さなラクナ梗塞が多発します。こうした患者で血圧MSにより,一時的に大幅に血圧が上昇すると虚血が悪化する恐れがあります。アムロジピンは,投与前血圧に依存した降圧作用を持ち,夜間の血圧低下が少ないnon-dipperでは血圧を十分低下させ,extreme- dipperでは過度に血圧を下げずに,適正に血圧変動を抑制する(図3)ことが知られていますので,こうした患者にアムロジピンを投与し,血圧変動を抑制するのは理にかなっていると思います。 
出典 Medical Tribune 2011.10.27(一部改変)
版権 メディカル・トリビューン社
<関連サイト>
外来血圧変動は腎機能低下の有用な予測因子になる
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/gakkai/jsh2011/201110/522160.html
(要パスワード)
■(要旨)
外来血圧の変動が大きい症例では腎内の血管障害の度合いが大きく、腎機能が低下している可能性が示された。
外来血圧変動と腎機能の関連を示した初めての研究成果だという。大阪大学大学院老年・腎臓内科学の河合達男氏らが、10月20日から22日に宇都宮で開催された日本高血圧学会(JSH2011)で報告した
■対象としたのは、自施設で腎血流ドプラを実施し、その前後で6回以上、外来受診し、血圧を測定し得た連続143人とした。
外来血圧変動として、血圧値の標 準偏差(SD)と標準偏差を平均値で除した変動係数(CV)を用い、eGFR、蛋白尿、腎区域動脈の抵抗性指標(RI:resistive index)との関連性を調べた。
■このRIは腎ドプラによる測定で得た腎区域動脈の最高流速から拡張末期流速を引き、それを最高流速で 除した値で、腎内の血管抵抗や動脈硬化度を反映する指標とされる(高値ほど血管抵抗が高い)。
河合氏らもこれまでに、RIがeGFRよりも鋭敏に腎内血管 障害を評価できることを報告してきた。
中略
■河合氏はこれらの結果から、外来血圧変動は他の因子と独立に腎機能と相関し、腎機能の有用な予後予測因子として利用できると結論した。
また、「前向き研究 の結果を待たなければならないが、外来血圧変動をサロゲートエンドポイント(治療行為に対する評価を短期間で行うための評価項目)として、治療目標にでき る可能性があるのではないか」と考察した。
血圧変動も高血圧の危険因子に
http://blog.m3.com/reed/20100909/1
2011.10.9撮影 山梨県・清里にて
いいえ、ぜんぜん
いいえ、私は何も後悔していない
私が人にした良いことも、悪いことも
何もかも、私にとってはどうでもいいこと
いいえ、ぜんぜん
いいえ、私は何も後悔していない
私は代償を払った、清算した、そして忘れた
過去なんて、もうどうでもいい
私は多くの過去を束にして
火をつけて焼き去ってしまった
私の味わった苦しみも、喜びも
今となっては必要がなくなった
私は過去の恋を清算した
トレモロで歌う恋を、清算した
永遠に清算してしまった
私はまた、ゼロから出発する
私の人生はすべて、喜びも
今は、あなたと共に始まる……
があります。
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~2型糖尿病3万人超のコホート研究~
血圧値と心血管イベントリスクは“U字関係”
ウプサラ大学(スウェーデン・ウプサラ)の Johan Sundström氏らは大規模コホート研究から,血圧値と心血管イベントリスクに“U字関係”が見られたこと,また降圧薬服用者ではSBP最低五分位 (130mmHg未満)の方が第2五分位よりも心血管イベントや死亡のリスクが高かったことを,第47回欧州糖尿病学会(EASD 2011)で明らかにした。
SBP 130mmHg未満はリスク増に
現行のガイドラインでは2型糖尿病に対して厳格な降圧目標値を推奨しているが(日本のガイドラインでは糖尿病合併高血圧の降圧目標値は130/80mmHg未満),Sundström氏によると,最近,この目標値に関して疑問の声が上がっているという。
そこで同氏らは,プライマリケアでの患者データを基に,心血管イベントや死亡のリスクが最も低くなる血圧値について検討を行った。
同国のプライマリケア施設76カ所で1999~2008年に2型糖尿病と診断されたか血糖降下薬を処方されたのは5万8,326例。
35歳未満,血圧/ 降圧療法のデータが不完全な者,心血管イベントで入院歴のある者を除外し,3万961例で心血管イベントを,3万4,009例で死亡を追跡した。
追跡期間 は前者が中央値4.2年で5,900件のイベントが発生。後者は同4.9年で6,237例が死亡した。
全体の約4割が降圧薬を服用しており,服用群の方が非服用群よりやや年齢が高く,血圧値も高かった。
対象を降圧薬服用の有無で分け,血圧値と心血管イベントリスクとの関係を検討したところ,性,年齢で補正したモデルでも,それらに喫煙,教育,BMIも加えて補正したモデルでも,降圧薬服用群,非服用群ともにU字を描いた。
死亡に関しても,降圧薬服用の有無にかかわらず,血圧値とはU字の関係が示された。
血圧レベルで五分位に分けると,降圧薬服用者ではSBP最低五分位(130mmHg未満)群の方が第2五分位群より心血管イベントおよび死亡のリスクが高かった。
非服用者でも死亡に関しては同様の結果だった。
心血管イベントリスクが最低となる血圧値を求めたところ,降圧薬非服用群でSBP 132mmHg,拡張期血圧(DBP)76mmHg,服用群ではそれぞれ142mmHg,72mmHgとなった。
死亡リスクが最低となる血圧値はより高く,降圧薬非服用群でSBP 151mmHg,DBP 79mmHg,服用群では152mmHg,79mmHgだった。
リスク上昇度(10%,25%,50%,100%)に対応する血圧値もそれぞれ算出されており,例えば降圧薬服用の糖尿病患者ではSBP 131mmHgで死亡リスクが25%上昇となった。
以上から,同氏は「今回の検討で示された最低リスクと関連する血圧値は,現行のガイドラインで推奨されている治療目標値と一致するものではなかった」と結んだ。
出典 Medical Tribune 2011.10.20
版権 メディカル・トリビューン社
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~緊急PCIと待機的PCI~ 米で適正な施行の割合に差
聖ルカ・ミッド米国心血管研究所(ミズーリ州カンザスシティー)のPaul S. Chan博士らは,50万件超の経皮的冠動脈インターベンション(PCI)データを解析し,PCIの広範な適応の妥当性を検討した。
その結果,緊急PCIではほぼ全例が適正な施行理由を伴っていたのに対し,待機的PCIでは適正に施行されていたのは約半数のみであることが分かった。
詳細はJAMA(2011; 306: 53-61)に発表された。
6学会合同基準に基づいて分類
PCIは,バルーン血管形成術やステント留置を用いて狭窄した冠動脈を再開存させる手技である。
米国では年間約60万件のPCIが施行されており,総費 用は120億ドルを超えている。
PCI施行患者は,周術期合併症と長期の出血,ステント血栓症リスクにさらされる。
さらに,急性冠症候群を伴わない病状が安定した患者を対象とした最近の試験により,PCIによる症状緩和は薬物療法と比べ,人口平均値を若干改善するにすぎないことが示唆されている。
論文の背景説明では,PCIの費用と侵襲性の高さから判断すると,適正なPCIと不適正なPCIの施行範囲を把握することにより,PCIにおける質的改善,コスト削減が可能な領域を同定できるかもしれないとしている。
Chan博士らは「PCIに関するこれまでの研究は,PCIが現在のように進歩する以前に行われている。また,現在では多くの冠動脈血行再建術に関する臨床試験が実施されているが,これらの研究はそれ以前に実施されているものが多い」と指摘している。
2009年に米国の関連6学会は,PCIの合理的かつ賢明な適用を促進するために,冠動脈血行再建術の適正施行基準(Appropriateness Criteria for Coronary Revascularization)を合同で策定した。
今回の研究では,全米心血管データ登録より2009年7月から2010年9月の間に米国の 1,091施設でPCIを施行された患者のデータを抽出し,同基準に基づいて緊急PCIと待機的PCIのそれぞれで適応理由を「適正」,「不適正」,「適正性不明」の3通りに分類して定量化を試みた。
緊急PCIはST上昇型急性心筋梗塞(STEMI),非ST上昇型心筋梗塞(NSTEMI),高リスクの不 安定狭心症に対するPCI施行とし,待機的PCIと層別化した。
ST上昇は心筋梗塞心電図の特徴的所見の1つである。
不適切な施行の比率に施設間格差
計50万154件のPCI施行のうち,10万3,245件(20.6%)がSTEMI,10万5,708件(21.1%)がNSTEMI,14万 6,464件(29.3%)が高リスクの不安定狭心症,14万4,737件(28.9%)が緊急性の低い選択的PCIであった。
さらに,冠動脈血行再建術 の適正施行基準に基づくと,前3者の計35万5,417件(71.1%)が緊急PCI,後者の14万4,737件(28.9%)が非緊急PCIとなる。
緊急PCIの適応理由の58.8%を心筋梗塞が,残り41.2%を不安定狭心症が占めていた。
緊急PCI群は,そのほとんど(98.6%)が「適正」な適応に分類され,「適正性不明」は0.3%,「不適正」は1.1%であった。
一方,待機的 PCIで「適正」と分類されたのは50.4%にすぎず,38.0%が「適正性不明」,11.6%が「不適正」であった。
全体的に,「不適正」なPCIに分類された群では,「適正」または「適正性不明」に分類された群に比べ,狭心症状を伴わない患者や非侵襲的負荷試験で低リスクであった患者,狭心症治療が最適でなかった患者が多かった。
さらに,不適正な待機的PCI施行率には,施設により著明なばらつきが認められた。
四分位範囲による検討で,不適正なPCIの比率が最低四分位に属する施設では,不適正なPCIの施行率が6%未満であったのに対し,最高四分位に属する施設では16%を超えていた。
この解析結果は,同一病態の患者が別々の施設で治療を受けた場合,一方の施設では他方と比べ不適正なPCIが施行される確率が80%高まる可能性を示唆している。
Chan博士は「総合的に見て,今回の知見は緊急性の低い患者に対するPCI適応基準の検討と改善について,重要なきっかけを提供するものである」と指摘。
さらに「質的改善を図るためには,不適正なPCI施行を生み出している臨床的条件をさらに解明し,施設間の格差を是正することに焦点を合わせるべきで ある」とコメントしている。
出典 Medical Tribune 2011.10.20
版権 メディカル・トリビューン社
<自遊時間>
■「先天性二尖弁」は日本人、欧米人ともに1~2%の割合で患者がいるといわれ、前カリフォルニア州知事で米俳優、アーノルド・シュワルツェネッガー(64)も手術を受けたことで知られる。
<関連サイト>
があります。
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心不全症状のある高齢患者死亡リスクを予測する2つのバイオマーカー発見リンチェピング大学(スウェーデン・リンチェピング)心血管学科のUrban Alehagen博士らは「血中コペプチン(copeptin)濃度や,同濃度と血中N末端プロ脳性ナトリウム利尿ペプチド(NT-proBNP)濃度の組み合わせは,心不全症状を有する高齢患者の全死亡リスクと関連しているようだ」とJAMA(2011; 305: 2088-2095)に発表した。 コペプチンは代替マーカー Alehagen博士らは「心不全症状のある高齢患者を診る際,最も大切なのは高リスクと低リスクの患者を判別することである。そのため,リスクの鑑別に役立つ簡便なツールが必要とされてきた。心筋で産生されるバイオマーカーと中枢で産生されるマーカーを併用すれば,心不全症状のある患者のリスクが特定できるかもしれない。これまでの研究でも,循環器疾患とさまざまなバイオマーカーとの関連や臨床応用化が検討されている」と説明している。 脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)は既に確立されているマーカーの1つで,NT-proBNPはBNPの前駆体N末端フラグメントである。一方,バ ソプレシン(VP)は脳下垂体から分泌される心血管疾患のマーカーで,その血中濃度は心不全患者で上昇し,左室機能不全との相関が示されている。コペプチンは,VP濃度測定の代理マーカーの候補として最近注目されており,心不全で死亡リスクの高い患者や同リスクの低い患者を特定するのに役立つ可能性があ る。同博士らは今回,血中のコペプチン濃度およびNT-proBNP濃度と心不全症状を有する高齢患者の死亡率との関連について検討した。対象は1996年 1~12月にプライマリケアで診察を受けたスウェーデンの高齢患者470例。全例が息切れ,浮腫,全身倦怠感などの心不全症状を示していた。血液検査,心 エコー検査などを行い,2009年12月まで追跡した。 VPは今後の治療介入の標的 追跡期間(中央値13年)中の全死亡は226例で,そのうち146例が心血管死であった。コペプチン濃度により患者を四分位に分けたところ,心血管死の 死亡率は最低四分位の26.5%に比べ,最高四分位では46.6%〔ハザード比(HR)1.96〕,全死亡は最低四分位の38.5%に比べ最高四分位では 69.5%(HR 2.04)と高かった。同様にNT-proBNPでも,心血管死亡率,全死亡率は最低四分位に比べ最高四分位で高かった。 また,最低四分位と各四分位を比較しても,コペプチンとNT-proBNPの濃度は,それぞれ長期の全死亡,心血管死と相関した。 さらに,NT-proBNP濃度が上昇している患者ではコペプチン濃度も上昇している傾向が認められた。予後に関しては,両マーカーを組み合わせた方がより正確に予測できた。Kaplan-Meier法を用いた生存曲線によると,全死亡データでは両マーカーの血中濃度がともに低い群の生存率が 63.7%,ともに高い群の生存率が16.5%と顕著な差が見られた。心血管死データでも,それぞれ74.6%,23.0%と同様の傾向が認められた。 Alehagen博士らは,今回の研究について「当初の目的は,プライマリケアの場でよく遭遇するが他の疾患も併発しているため,たびたび診断に難渋する高齢者集団用のマーカーを突き止めることであった。そこで対象をプライマリケアを受診した集団に限定し,マーカーから得られる予後の情報のみに焦点を合 わせた」と説明。さらに「今回のデータから,心不全症状を有する高齢患者のコペプチン濃度を測定することで,予後を予測できる可能性が示された。この知見 は,今後VPが治療介入の標的となることも示唆している」と結論付けている。 出典 MT Pro 2011.10.13
版権 メディカル・トリビューン社 <自遊時間>ノキア日本法人社員の過労死認定=「24時間体制の勤務過重」―大阪地裁http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20111026-00000125-jij-sociという記事が目にとまりました。「『24時間、携帯の電源をオンにする勤務体制を求められていた』などとして過労死と認め、遺族補償年金などの不支給処分を取り消した。 」「時間外労働が1カ月当たり約63~81時間 」「休暇中や就寝中を含め、顧客からの通信障害などの連絡に24時間いつでも対応しなければならない不規則な状態に置かれた」「量的にも質的にも過重な勤務だったとして、業務起因性を認めた」というものです。我が子は現在後期研修で循環器を専攻していますが、オンコールで病院まで ○分以内でかけつけれる場所から離れてはいけないということになっています。当然 『24時間、携帯の電源をオンにする勤務体制』です。インターベンションを行っている病院はどこでも同じ状況のはずです。重症入院患者もいて二重に、「目に見えない鎖」で縛られています。今では3Kの1つといわれる勤務医。診療科によってこの差は大きいのですが、こういった労働環境の改善はどうなっているのでしょうか。どうにもならないことは分かっているのですが・・・。 当直明けに、ナースが「夜勤明け」で帰っていくのをうらやましく見送った、はるか昔の勤務医時代を思い出しました。
医師の待遇を改善、たとえば自宅待機分やサービス残業をすべて時間外手当をカウントするといったことだけでも医療は崩壊します。(医師以外のパラメディカルの残業はきちんと支払われているかどうかは分かりません。)ノキアの社員と同等ないしはそれ以上の過酷な労働条件により、現在の医療は支えられていることを再認識させる記事でした。最近、皮膚科や精神科などへの大学入局者が、女性を中心として増えていると聞きます。これはこれで賢い(?)選択です。医師の偏在だけでなく診療科目の偏在も確実に起こっているのです。 読んでいただいて有り難うございます。コメントをお待ちしています。その他「葦の髄」循環器メモ帖 http://yaplog.jp/hurst/(循環器専門医向き)ふくろう医者の診察室 http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy(一般の方または患者さん向き) 井蛙内科/開業医診療録(4)2009.10.16~http://wellfrog4.exblog.jp/井蛙内科/開業医診療録(3)~2009.10.15http://wellfrog3.exblog.jp/井蛙内科/開業医診療録(2)2008.12.10~http://wellfrog2.exblog.jp/井蛙内科/開業医診療録~2008.5.21 http://wellfrog.exblog.jp/ があります。
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ペースメーカー使用者もMRIを安全に行える可能性米国などで行われた前向き試験で555件のMRI検査を追跡心疾患でペースメーカーや埋め込み型除細動器(ICD)を使用している患者でも、あらかじめ適切に準備し、心臓電気生理学的モニタリングを行えば、MRI検査を安全に行える可能性があることが、大規模な前向き試験で分かった。米Johns Hopkins大学のSaman Nazarian氏らが、Ann Intern Med誌2011年10月4日号に報告した。
現時点では、米食品医薬品局(FDA)もデバイス製造会社も、すべてのICDとほとんどのペースメーカーについて、使用中の患者のMRI検査を禁忌としている。だが、これらの埋め込み型デバイスの使用開始後に、約75%の患者がMRI検査が必要と判断される状態になると推算されている。近年、MRI検査が可能なMRI対応ペースメーカーが開発され、臨床試験で安全性が示されているが、既存のデバイスについてMRIが安全に行えるかどうかを調べた大規模研究はこれまでなかった。
そこで著者らは、埋め込み型デバイス使用者向けに、一般に適用されている1.5テスラでMRI検査を安全に行うためのプロトコルを作成し、その安全性を調べる前向き試験を行った。
in vitro、in vivo研究と予備的な臨床試験で得られた情報に基づいて患者を選択し、MRI中のデバイスの不適切な刺激作動または不適切な抑制作動を最小限に抑えるよう事前にプログラムを変更する方法で、安全に検査を完了することを目指した。
具体的には、ペースメーカー使用者についてはペーシングモードを変更、ペースメーカー依存患者は非同期モード(VOO/DOO)に、それ以外の患者は抑制モード(VVI/DDI)にした。除細動器は、モニタリング機能と頻拍性不整脈に対する機能をオフにした。MRI終了後、すべての設定をMRI前の状態に戻した。
MRI検査中は、心血管生命維持とデバイスのプログラミングの経験を積んだ看護師が患者の血圧、心電図、動脈血酸素飽和度(パ ルスオキシメトリーを使用)、症状をモニターし、万一の場合には心臓電気生理学の専門医が速やかに手助けできる状態を維持した。検査自体は、それぞれの施 設で各標的部位に対して日常的に用いている方法で行った。
03年2月から10年4月まで、米国の1施設とイスラエルの1施設で、埋め込 み型デバイスを使用している、MRI検査が必要な患者438人(年齢の中央値は66歳、32%が女性)を登録。54%がペースメーカーを、46%が埋め込 み型除細動器を使用していた。除細動器を使用しているペースメーカー依存患者などは除外した。
これらの患者に、計555件のMRI検査 を実施した(94%は米国で行った)。検査部位は、脳が222件(40%)、脊椎が122件(22%)、心臓が89件(16%)、腹部または骨盤が72件 (13%)、上下肢が50件(9%)だった。15%の患者が149日(中央値)で複数回のMRI検査を受けた。最も多く検査を受けていた患者は、4回の MRI検査を問題なく完了していた。
評価指標は、ぺーシングの不適切な刺激または抑制、症状、デバイスの機能的変化とした。
3人の患者(全体の0.7%)でデバイスが一時的にバックアッププログラミングモードに切り替わった(パワーオンリセット)が、長期間追跡してもデバイ スに異常は現れなかった。1人は除細動器使用者で、胸部に引っ張られるような感じがあると訴え、MRI検査は中止された。残りの2人はペースメーカー使用者で、脳の検査と頸椎の検査を受けていた。これらの患者についてはMRIは継続された。
すべての患者において、短期的にも長期的にも、MRIが原因とみなされるデバイスの機能異常による症状や問題は認められなかった。
デバイスの機能を示す数値として、センシング、リードインピーダンス、キャプチャ閾値のMRI前からの変化をMRI直後と6カ月時に調べた。臨床的に意義 のある変化は、一般に、センシングは40%超、リードインピーダンスが30%超、キャプチャ閾値が50%超となっているが、どの値についても、ベースライ ンと比較したMRI直後の差、6カ月後の差は20%以内の患者がほとんどだった。
なお、MRI前に比べMRI直後には以下のような変化 が認められた。右心室のセンシングの低下(変化の中央値は0mV、四分位範囲は-0.7から0mV、Wilcoxonの符号付き順位検定の P<0.001)、心房のリードインピーダンスの低下(変化の中央値は-2Ω、四分位範囲は-13から0Ω、P<0.001)、右心室のリードインピーダ ンスの低下(-4Ω、-16から0Ω、P<0.001)、左心室のリードピンピーダンスの低下(-11Ω、-40から0Ω、P=0.002)。
6カ月後までの長期追跡が可能だった61%の患者(追跡期間の中央値は214日)の6カ月時の評価では、ベースラインに比べ以下のような差が見られた。右心室のセンシングの低下(変化の中央値は0mV、四分位範囲は-1.1から0.3mV、P=0.004)、右心室リードインピーダンスの低下(-3Ω、 -29から15Ω、P=0.044)、右心室キャプチャ閾値の上昇(0V、0から0.2V、P=0.012)、バッテリー電圧の低下(-0.01V、 -0.04から0V、P<0.001)。
観察されたこれらの変化は、デバイスの修正または再プログラミングなどを必要するレベルではなかった。
デバイス機能を示す値の変化にかかわる要因を探したところ、リードの長さと、MRIの標的(胸部かそれ以外か)が有意な関係を示した。
胸部MRI検査の結果にはデバイスの影響が認められたが、ほとんどの場合は臨床的に意義のある情報が得られた。
あらかじめ適切に準備し、デバイス変数の変化とプログラミングの変化に備えて心臓電気生理学的モニタリングを行えば、埋め込み型デバイスを使用している心疾患患者にもMRI検査を安全に行える可能性が示された。ただし著者らは、「今回MRI検査を受けた患者が使用していたタイプ以外のデバイスについては、 安全性は不明だ」と述べている。
原題は「A Prospective Evaluation of a Protocol for Magnetic Resonance Imaging of Patients With Implanted Cardiac Devices」、概要は、Ann Intern Med誌のWebサイトで閲覧できる。http://www.annals.org/content/155/7/415.abstract?aimhp 出典 NM online 2011.10.21
版権 日経BP社
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死亡23例・重篤出血138例に,ダビガトラン市販直後調査最終報告
9割が添付文書の注意喚起事項に合致,禁忌例への投与も
新規抗凝固薬ダビガトラン(商品名プラザキサ)の市販直後調査の最終報告(期間終了後報告)が,販売元の日本ベーリンガーインゲルハイムから発表された。
同薬発売後9月13日までの6カ月間に,薬剤との因果関係が否定できないと判断された死亡が23例,重篤な出血性副作用が138例報告されている。
138 例中122例(88.4%)は添付文書に明記されている注意喚起事項を有しており,出血症状,高度腎機能障害などの禁忌事項に合致する症例も少なからず含まれていた。
同社では引き続き安全性情報の収集・提供に努める方針を示している。
死亡例の6割に重篤な出血性副作用
最終報告では,ダビガトランが発売された今年(2011年)3月14日~9月13日に収集された1,492例2,357件の副作用情報がまとめられている。
重篤な出血性副作用は138例に認められたが,そのうち6例(4.3%)は消化管出血の既往例で,6例中3例は消化管出血を合併していた(出血 症状,出血性素因,止血障害のある患者への同薬の投与は禁忌)。
138例の出血部位(重複集計)は消化管83例(60.1%),頭蓋内30例 (21.7%)などであった。
調査期間中に認められた死亡例のうち,23例が薬剤の副作用との因果関係が否定できないと判断された。副作用の内訳は以下の通り。
・重篤な出血性の副作用:14例(60.9%)
・間質性肺炎:4例
・多臓器不全:2例(1例は間質性肺炎を併発)
・急性呼吸不全:1例
・うっ血性心不全,肺炎:1例
・敗血症性ショック:1例
・詳細不明:1例
(因果関係が確認されていないものを含む)
重篤出血例の14%が禁忌事項の高度腎機能障害例
注目されたのは138例中122例(88.4%)が添付文書に明記されている注意喚起事項を有していたことだ。具体的には,以下のような内容。
・高齢者(70歳以上):114例(82.6%)
・腎機能障害:57例(41.3%)
・消化管出血の既往・合併:6例(4.3%)
・消化管潰瘍の既往・合併:10例(7.2%)
・併用注意薬剤の併用:56例(40.6%)
特に注意すべきと考えられたのは,腎機能障害例のうち19例(13.8%)が禁忌事項となっている高度腎機能障害である点だ。
見方を変えると,重篤出血による死亡14例中9例が腎機能障害を,7例は高度腎機能障害を有していた。
併用注意薬剤の併用の内訳(重複集計)は,抗血小板薬33例,抗凝固薬8例,P-糖蛋白質阻害薬21例,非ステロイド抗炎症薬(NSAID)8例。
「今後も安全性情報を収集・提供する」
日本ベーリンガーインゲルハイムでは,調査結果の分析を踏まえ,以下のことに注意するよう呼びかけている。
・投与前,出血や出血傾向がないことを確認する
・必ず腎機能を確認する
・投与中は出血や貧血などの徴候を十分に観察する
・患者には出血があった場合は直ちに医師に連絡するよう指導する
・抗血小板薬との併用は慎重に判断する
(平田 直樹)
出典 MT Pro 2011.10.21
版権 メディカル・トリビューン社
<自遊時間>
ちょっと古い話で恐縮です。今年の6月の新聞でフィンランド首相にカタイネン氏が選出されたという記事が掲載されていました。
きっと悪いことはしない固い人と思われます。
そういえばフィンランドにはスキーのジャンパーでアホネンという選手がいましたね。
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1010381420
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スタチンによる脳出血リスク,メタ解析発表関連性認められずカナダ・西オンタリオ大学のDaniel G. Hackman氏らは,スタチン投与と脳出血(頭蓋内出血)リスクとの関連性は認められなかったとのシステマチックレビューとメタ解析の結果を,Circulation 10月17日オンライン版に報告した。近年,大規模ランダム化比較試験(RCT)でスタチン投与による脳出血リスクの増加が示唆されていた。 17のデータベースから42報を抽出脂質低下療法のRCTにおいて,スタチンを用いたより強力な治療が心血管イベント発生リスクを低下させたとするCholesterol Treatment Trialists'(CTT)Collaborationのメタ解析(Lancet 2010; 376: 1670-1681)がある一方で,脳卒中例への高用量スタチン投与で脳出血リスクをわずかながら増加させるとの報告(N Engl J of Med 2006; 355: 549-559)もあり,特に脳卒中既往例ではスタチン投与によるリスクとベネフィットが不確かであった。 そこでHackman氏らは,コクラン臨床試験レジストリー,Medline,米国立衛生研究所(NIH),米食品医薬品局(FDA),欧州医薬 品庁(EMEA)などの17のデータベースから,2人の独立したレビュアーが今年(2011年)1月までに,スタチンおよび脳出血の頻度について報告され たRCT 23報と観察研究19報を抽出。スタチンと脳出血リスクとの関連性をDerSimonian-Laird 法により検討した。 なお,スタチン併用による報告および,急性脳梗塞による血栓溶解療法後の出血に焦点を置いた報告は除外した。 心疾患発症抑制のベネフィットに比べリスク小さい42報の全対象者24万8,391例中,脳出血を来したのは1万4,784例。 RCT(追跡期間中央値3.9年)においてスタチン投与の脳出血のリスク比(RR)は1.10(95%CI 0.86~1.41,I2=30%,P=0.67),同等性の絶対リスク増加は0.27%(同-0.042~0.096)であり,脳出血との関連性は認められなかった(図1)。
また観察研究(追跡期間中央値3.0年)のうち,コホート研究(12報)におけるスタチン投与の脳出血のRRは0.94(同0.81~1.10,0%,P=0.67),症例対照研究(6報)では0.60(同 0.41~0.88,66%,P=0.06,図2)であり,いずれも有意差は認められなかった。
Hackman氏らは「スタチンによる脳出血リスクがあるとしても,心疾患発症抑制のベネフィットに比べるとリスクの程度は小さい可能性がある」 と指摘。脳梗塞の危険因子はアテローム動脈硬化性疾患と類似しているため,同氏らは「臨床医は冠動脈疾患イベント抑制のためにスタチン使用を継続すべき だ」と述べている。 (田上 玲子) 出典 MT pro 2011.10.21
版権 メディカル・トリビューン社
<関連サイト>
昨年,日本脂質栄養学会のガイドライン発行に伴い,コレステロールを低下させる医療の是非についてホットな議論が展開されました。
今回の論文を報告したCholesterol Treatment Trialists'(CTT)Collaborationは,すでに 2005年にランダム化比較試験(RCT)のメタ解析を報告しており,LDLコレステロール (LDL-C)を低下させることにより動脈硬化性疾患(冠動脈死,非致死性心筋梗塞,冠動脈再灌流,脳卒中)を20%程度減らせることを示しています(Lancet2005; 366: 1267-1278)。
脳卒中の結果については今回のCTT Collaborationの介入研究のメタ解析ではスタチン群・積極的スタチン使用群の方が成績が良かったが,PSCの観察研究ではTCと脳卒中死の間に関係性を認めることができなかった。
この差異の説明は困難であるが,PSCでは収縮期血圧の相違によりTCと脳卒中死の関係性が変化していることが示されている。
よって,血圧の影響が介在しており,直接的にコレステロールと脳卒中死の関係を評価できていない可能性がある。
今回のCTT Collaborationのメタ解析は血圧を含めた交絡因子の影響を理論的に除外できる介入研究のみを取り扱っており,この解析でスタチン群・積極的ス タチン使用群の方が脳卒中の成績が良かったことは,そのまま受け取ってよいように思われる。
出典 MT pro 2010.11.16(一部改変)
版権 メディカル・トリビューン社
石垣定哉「春のセーヌ」6F
http://www.umeda-garou.jp/kako2009.htm
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~PCI前の至適薬物療法~ 実際の施行は半数に満たず
コーネル大学Weill医学部(ニューヨーク)のWilliam B. Borden博士らは「経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を施行する安定冠動脈性心疾患(CAD)患者に対して,至適薬物療法(OMT)を行うことの重要性がガイドラインで強調されているにもかかわらず,PCI前にOMTを受けている患者は半数に満たず,PCI後の退院時にOMTを受けていない患者も約3分の1に上ることが分かった」とJAMA(2011; 305: 1882-1889)に発表した。
<私的コメント>
この結果はあくまでも米国でのものです。
例えが悪いかも知れませんが(悪いですが・・汗)JAMAは、いわば日本医師会雑誌の米国版です。
安定CAD患者でPCIの有益性認められず
急性冠症候群(ACS)患者では,PCIによるアウトカムの改善が期待できるが,安定CAD患者ではPCIとOMTで心血管イベント率に差はないことが複数の臨床試験で示されている。
例えば,11件の臨床試験を対象としたメタアナリシスからは,安定CAD患者では,心筋梗塞や死亡を予防する上でPCIの有益性は認められないとの結論が導かれている。
また, OMTにPCIを加えた場合とOMTのみの場合で比較したCOURAGE試験(Clinical Outcomes Utilizing Revascularization and Aggressive Drug Evaluation)でも,安定CADでは狭心症発作に関連するQOL以外のアウトカムにおいて同等性が示されている。
しかし,日常臨床でPCI前にどの程度OMTが施行されているのか,また2007年3月の同試験の結果発表後にOMTの施行が増加したかどうかは不明であった。
そこで,Borden博士らは今回,National Cardiovascular Data Registry(NCDR)のデータを用いて,PCI前後のOMTの施行状況を調査し, 同試験発表後のOMT施行率の変化について検討した。
対象は2005年9月~09年6月にPCIが施行された安定CAD患者とした。
OMTは,抗血小板薬,β遮断薬,スタチン系薬のすべての薬剤の処方を受けている(ただし,これらの薬剤のいずれか,あるいは全薬剤が禁忌であることが確認された場合は,処方されていなくてもOMTと見なす)と定義した。
<私的コメント>
ごこ最近、某教授の講演を某所で聴く機会がありました。
その中で、米国の雑誌に投稿しても日本からの(梗塞二次予防に関する)投稿論文がβ遮断薬よりCCBが多く処方されていることにEditorから指摘を受ける、ということを話されていました。
懇親会で少しお話をする機会がありましたが、とてもopenheartedな教授で「ブログを時々覗いてます」 という嬉しい言葉をいただきました。
偉い先生なのですが、少しも偉ぶらず随分好印象でした。
以前、東北大学のS教授にも懇親会で少しお話させていただきましたが、循環器学にかける情熱やopenでtruthfulな態度は大いに感心しました。
二人の教授ともに、これからの日本循環器学会を背負って立つ立場にある方です。
これからの日本循環器学会は明るいと確信しました。
(ちょっと従来の「偉い」方々とは違うと感じました)
大幅に改善の余地あり 解析対象は46万7,211例で,そのうち17万3,416例(37.1%)がCOURAGE試験前に,29万3,795例(62.9%)が試験後に PCIを受けていた。また,20万6,569例(44.2%)はPCI前に,30万3,864例(65%)は退院時にOMTが施行されていた。 PCI前にOMTが施行された患者の割合は,同試験前の43.5%から試験後には44.7%に有意に増加したが,臨床的意義はほとんどなかった。46カ月の観察期間におけるPCI前のOMT施行率を月ごとに見ると,2005年9月の43.4%から2009年6月には45.0%とわずかながらも増加傾向に あった。 PCI後の退院時のOMT施行率は,同試験前の63.5%から試験後には66%に増加していた。 Borden博士らは,今回の研究結果について「PCI前にOMTを施行することで血行再建によるさらなる効果が期待できることから,ガイドラインでは OMTの施行を推奨しているにもかかわらず,実際にPCI施行前にOMTを受けた患者は半数に満たないことが明らかになった。また,このような診療パターンは同試験の発表後もほとんど変化していなかった」と結論付けている。 さらに,「退院前のOMT施行は増加し,抗血小板薬はほぼ例外なく処方されていたが,患者の約3分の1は依然OMTを受けておらず,同試験の発表後もこ のパターンに変化は見られなかった。全体的に改善の余地は多いにあり,費用をかけて大々的に発表される臨床試験の結果が日常臨床に及ぼす影響は限定的であ ることも示唆された」と付言している。
出典 Medical Tribune 2011.10.13
版権 メディカルトリビューン社
<私的コメント>この論文から、われわれは何を学ぶべきでしょうか?いうまでもなく、本来循環器内科医はあくまでも(思慮深い)内科医です。インターベンショニスト (昔は「カテ屋さん」とか「風船屋さん」とか、カテのできない旧来の循環器内科医から、ある種の「憧れ」と「皮肉」を込めて言われていました)が、知らぬ間に「外科医化」しているということに対する警鐘と捉えるべきなのでしょうか。
<関連サイト>循環器内科医
読んでいただいて有り難うございます。コメントをお待ちしています。その他「葦の髄」循環器メモ帖 http://yaplog.jp/hurst/(循環器専門医向き)ふくろう医者の診察室 http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy(一般の方または患者さん向き) 井蛙内科/開業医診療録(4)2009.10.16~http://wellfrog4.exblog.jp/井蛙内科/開業医診療録(3)~2009.10.15http://wellfrog3.exblog.jp/井蛙内科/開業医診療録(2)2008.12.10~http://wellfrog2.exblog.jp/井蛙内科/開業医診療録~2008.5.21 http://wellfrog.exblog.jp/ (内科医向き) 「井蛙」内科メモ帖 があります。
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加齢に伴う拡張機能の悪化が心不全リスク上昇と関連メイヨー・クリニック(ミネソタ州ロチェスター)のGarvan C. Kane博士らは「左室拡張機能障害の有病率は加齢に伴い上昇し,拡張機能が悪化した患者では心不全の発症リスクが高まる」とした住民ベースのコホート研究の結果をJAMA(2011; 306: 856-863)に発表した。 心機能の経時的な変化を追跡 近年,心不全の危険因子を持つ人では,無症候性心室機能障害から症候性の心不全へ,さらに死亡へと進行する過程を理解することが重要と指摘されている。そのためには経時的な心機能の変化を住民ベースで検討したデータが必要となる。 Kane博士らは今回,拡張機能の経時的変化を調べ,拡張機能障害とその後の心不全リスクとの関連について検討した。Olmsted County Heart Function Study(OCHFS)の参加者のうち,45歳以上の2,042例をランダムに抽出し,臨床評価と診療記録の要約,心エコー検査(実施期間 1997~2000年)を行った。左室拡張機能は,検査結果を基に正常,軽度,中等度,重度障害に分類した。4年後,生存患者1,960例中1,402例 (72%)に2回目の心エコー検査(同2001~04年)を行い,2010年まで追跡し心不全の新規発症を確認した。 65歳以上の年齢と強い関連 その結果,左室拡張機能障害の有病率は1回目の検査時の23.8%から2回目には39.2%に有意に上昇していた(P<0.001)。中等度~重度の同障害の有病率は,1回目の6.4%から16.0%に上昇していた(P<0.001)。 1回目から2回目の検査の間に23.4%で拡張機能が悪化し,67.8%では変化がなく,8.8%で改善した。拡張機能の悪化は特に65歳以上の年齢と強く関連していた〔オッズ比(OR)2.85〕。 一方,高血圧,糖尿病,冠動脈疾患,心不全の既往がなく,心血管疾患の治療薬を服用していない健康な参加者531例を解析した結果,拡張機能障害(重症度を問わない)の有病率は,1回目の検査時の11.3%から2回目には29.8%に上昇していた(P<0.001)。健康な参加者のうち,両検査とも拡張 機能を評価できた423例では,19.9%で同機能が悪化し,75.2%で変化がなく,5.0%で改善していた。 2010年までの追跡期間(中央値6.3年間)における心不全発症率は,拡張機能正常維持または正常化群で2.6%,軽度障害維持または進行群で7.8%,中等度~重度障害維持または進行群で12.2%であった(P<0.001)。 以上の結果から,左室機能障害の有病率は経年的に上昇し,加齢と関連することが明らかになった。Kane博士らは「今後の研究で検証する必要はあるが,今回の結果は高齢者では拡張機能障害の持続または進行が心不全発症の危険因子であることを示している」と述べている。 出典 Medical Tribune 2011.10.13版権 メディカル・トリビューン社 <私的コメント>
当然の結論のような気もします。 どこにNeuesがあるのでしょうか。 ちょっと不思議な論文です。 <拡張不全 関連サイト> 拡張不全を見据えた心不全の治療戦略拡張期心不全への対応 その1(1/2)拡張期心不全への対応 その2(2/2) 拡張不全の病態と背景 初診患者と拡張性心不全HFPEF 読んでいただいて有り難うございます。
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心肥大に代わり心筋リモデリングを
欧州心臓病学会が用語の変更を提案
欧州心臓病学会(ESC)の心機能に関する作業グループ(Working Group on Myocardial Function)は,心肥大(cardiac hypertrophy)という用語の再定義を提案し,方針説明論文をEuropean Journal of Heart Failure(2011; 13: 811-819)に発表した。
現在,心肥大という語は,心臓の形態学的変化,つまり構造変化を表す用語として使用されている。
同作業グループは,心肥大の代わりに,心筋リモデリング(myocardial remodelling)というより一般的な用語の使用を提案している。
現行の心肥大は“肥大”と“過形成”の両方を含む
同作業グループの前委員長でルーベンカトリック大学(ベルギー・ブリュッセル)のJean-Luc Balligand博士は「用語の定義を明確にすることで,循環器領域の研究者間のコミュニケーションが改善されるものと期待している。そして,心筋リモデリング研究推進のきっかけになることを望んでいる」と述べている。
同作業グループによると,心筋肥大(myocardial hypertrophy)という用語は正確さに欠ける言葉であるという。
細胞生物学においては,肥大とは,細胞分裂による増殖/増大を指す過形成 (hyperplasia)という言葉に対して,細胞拡大(cell enlargement)による増殖/増大を意味する。
現在,心臓病学において,肥大は心臓全体で肥大と過形成の両方を伴う心筋拡大 (myocardial enlargement)が発生している状況で使用されている。
<私的コメント>
一瞬混乱しましたが心拡大(cardiac enlargement)とは区別が必要なようです。
さらに,肥大には,心臓の非筋細胞(線維芽細胞など)が,ただ受け身の存在にとどまらない事実や,心臓のリモデリングに際してその数を増減させるという事実が考慮されていない。
また,心臓へは炎症細胞の侵入も考えられ,血管新生も起こっている可能性がある。 今回の論文の筆頭著者でインペリアルカレッジ心肺研究所(ロンドン)のRalph Knöll博士は「心筋リモデリングという用語の良い点は,単にさまざまな心筋組織の構成要素の再構成を定義しており,左室重量の増減を表す言葉であるだけでなく,細胞成分の要素の変化も指し示す言葉である点だ」と述べている。 肥大は心筋細胞に限定し心臓全体には使用すべきでない 同作業グループは,肥大は,将来的には心筋細胞(cardiac myocyte)に限定して使用し,心臓全体には使用すべきでないとしている。成体哺乳類の心筋細胞は,円筒状の非対称の形状をしている。負荷がかかると,細胞の長軸に沿ったサルコメアの増加を介して心筋細胞が不均衡にする。 Knöll博士らは,論文の中で「心筋リモデリングはすべて有害である」という広く受け入れられている意見に反論し,心不全につながる適応的でないリモ デリング(maladaptive remodelling)と心不全につながらない適応的なリモデリング(adaptive remodelling)には根本的な違いがあると強調している。 同博士は「最も重要な研究課題の1つは,これら2種類のリモデリングについてさらによく理解し,適応的でないリモデリングを適応的リモデリングに変換し,有害型への変化を予防あるいは抑制することである」と述べている。 動物実験による知見を臨床に生かすアルゴリズムを提案 今回の方針説明論文では,モデル動物を用いた基礎実験によって,心筋リモデリングを制御している遺伝子レベル(分子レベル)でのイベント情報が得られる可能性が高いことが示されている。血液動態負荷(横大動脈の結紮による圧負荷),心筋梗塞(冠動脈結紮による),そして心不全(急速心室ペーシングにより 誘発)の動物モデルは,心筋リモデリングに至る過程の解明に有効である。また,ヒトの肥大型心筋症(HCM),拡張型心筋症(DCM)のモデルとして作製 されたトランスジェニックマウスは,生物学的変化のさらなる解明に役立つとしている。 方針説明論文の結論部分では,動物モデルとヒトにおける心筋リモデリングの研究経路を示すアルゴリズムが提案されている。 Knöll博士は「このアルゴリズムの作成に当たっては,研究者や臨床家が,心不全の型を正しく評価し,リスク層別化と個別治療(tailored treatment)を実施するのに役立つよう配慮した。われわれは,このアルゴリズムが新しい治療プロトコル確立のために今後実施される前向き試験で重 要なツールとなることを確信している」と述べている。 出典 MT pro 2011.10.13版権 メディカル・トリビューン社 読んでいただいて有り難うございます。
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