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ACSに伴う出血は重要なアウトカム指標ESC血栓症ワーキンググループが声明 急性冠症候群(ACS)の治療において,出血が重要なアウトカムであるとの認識が高まっている。特に,急性期の出血がその後の死亡リスクを高めたとする報告もある。欧州心臓病学会(ESC)の血栓症に関するワーキンググループ(Working Group on Thrombosis)は, ACSあるいは経皮的冠動脈インターベンション(PCI)に伴う出血の疫学,その評価と定義などの最新知見を概観するとともに,これまでの出血に関する研究を踏まえ,アウトカム指標としての出血の重要性や,今後の研究課題などについての見解を示す声明(position paper)をEuropean Heart Journal(2011; 32: 1854-1864)に発表した。 治療の進歩で重要性増す 筆頭研究者でビシャ・クロードベルナール病院(パリ)のPhillippe Gabriel Steg博士によると,急性期の抗血栓療法と血行再建術の普及を基盤としたACS治療の進歩によって,従来は軽視されていた出血のアウトカムに及ぼす影響 が重要視されるようになった。 一方,PCIに関連した出血は,さまざまな要因の組み合わせによって惹起される。同ワーキンググループの前委員長でWilhelminenspital 病院(オーストリア・ウィーン)のKurt Huber博士は「出血は抗血栓治療の結果として発生する場合もあるが,胃潰瘍や腎不全といった併存疾患が原因である可能性もある。さらに,血管穿刺の際に動脈に生じる外傷が原因であることも考えられる」と説明している。 近年,出血と有害なアウトカムとの修正可能な関連性の存在を強く示唆するエビデンスが蓄積されつつある。2006年,ハミルトン総合病院(カナダ・ハミ ルトン)のJohn Eikelboom博士らは,ACS患者3万4,146例を対象としたクロピドグレルの試験で出血と死亡あるいは虚血性イベントとの関連を検討。大出血を経験した患者の30日死亡率は経験しなかった患者に比べて5倍高く,30日~6カ月間の死亡率は1.5倍高いとの結果をCirculation(2006; 114: 774-782)に発表した。 さらに,OASIS 5試験など複数の試験により,出血が極めて少ない患者では,その後の死亡率が低いことも明らかになった。Steg博士は「われわれは,これが単なる偶然ではないかもしれないことに気付き始めている」と述べている。 出血と有害アウトカムとの関係については,既知の出血の予測因子が虚血性イベントの予測因子と重複しており,出血が虚血リスク上昇のマーカーの役割を果たしている可能性があるとの考え方がある。しかしHuber博士によると,現在議論されているもう1つの可能性として,出血には直接的な有害作用があることも指摘されているという。 高齢者への抗凝固薬投与量に注意をどのような出血であれ,なんらかの臨床的結果をもたらす可能性がある。Steg博士は「例えば,単なる鼻血や歯を磨いたときの歯肉出血でも,ステントを留置している患者の抗血小板療法を中止することがありうる。そのようなことが続くと,ステント内血栓や死亡にもつながりかねない」と指摘している。<私的コメント> このような具体的な説明なら分かりやすいのですが、その前の抽象的な話はちょっと理解が困難でした。 今回の声明で出血を最小限に抑えるための戦略として提示されているのは,(1)血管造影やPCIを行う際,大腿動脈アクセス(femoral access)ではなく橈骨動脈アクセス(radial access)を選択する<関連サイト>TRA vs. TFA RIVAL試験ACSのCAGには橈骨動脈アクセス (2)抗凝固薬の用量を可能な限り体重,年齢,腎機能に応じて調整する—ことなどである。<私的コメント> 原文も(抗血小板薬ではなく)「 抗凝固薬」なのでしょうか。 同博士は「忘れてならないのは,患者の高齢化がますます進んでいることである。高齢者では腎機能が低下していることが多いため,抗凝固薬を過量に投与してしまう可能性も高まる」と注意を促して いる。 複数の尺度による評価を提案 また,声明では心血管系の臨床試験における出血の定義に関するコンセンサス形成を目指す学術研究コンソーシアム(BARC)の取り組みに触れ,独立した学術集団,研究団体(ESCもその1つ),製薬業界と規制当局からの代表者によって定められ,Circulation(2011; 123: 2736-2747)に発表されたBARCの定義を紹介している。 この定義について,Huber博士は「データに基づくというよりも,コンセンサスに基づく定義である。したがって,今後の臨床試験で妥当性を検討していく必要がある」と指摘。ただし,これまでさまざまな臨床試験で出血の定義が定まっていなかったために混乱が生じていたことを考慮すると,この発表は大きな 進歩ととらえられているという。Steg博士は「試験の対象集団が同じでも,分析に用いる尺度が統一されていないと全く異なる出血率となり,採用する定義 によって出血率に3倍も差が開くことは既に立証されている」と述べている。 そこで,ワーキンググループはBARCの定義を含む2つ以上の尺度を用いて出血を評価することを提案している。同博士は「2つ以上の尺度を用いることは,出血イベントを選択的に報告するバイアスリスクを回避する1つの方法である」と説明している。 同博士によると,例えば出血を引き起こす可能性のある薬剤の試験を担当する研究者が,出血を過小評価してしまう可能性のある尺度を採用することによっ て,有害事象を過小に報告する可能性もある。一方,感度の高い尺度を選択することで,試験薬以外の薬剤の安全性を過度に強調することもありうる。 さらに,声明は出血発生率とその基礎にある機序に関する知識にはまだギャップがあり,出血は今後の研究の重要なテーマであることを強調。今後の研究課題として(1)出血はその後の死亡の直接的な原因なのか,あるいはベースラインの背景因子の悪化に関係したリスク増大の単なるマーカーなのか(2)自然出血のアウトカムとPCIや血行再建術により生じた出血のアウトカムは異なるのか(3)ACS患者にとって,最適な輸血戦略はどのようなものか—などが挙げら れている。 出典 Medical Tribune 2011.9.15版権 メディカル・トリビューン社 読んでいただいて有り難うございます。 コメントをお待ちしています。 その他 「葦の髄」循環器メモ帖 http://yaplog.jp/hurst/ (循環器専門医向き) ふくろう医者の診察室 http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy (一般の方または患者さん向き) 井蛙内科/開業医診療録(4)2009.10.16~ http://wellfrog4.exblog.jp/ 井蛙内科/開業医診療録(3)~2009.10.15 http://wellfrog3.exblog.jp/ 井蛙内科/開業医診療録(2)2008.12.10~ http://wellfrog2.exblog.jp/ 井蛙内科/開業医診療録~2008.5.21 http://wellfrog.exblog.jp/ (内科医向き) 「井蛙」内科メモ帖 があります。
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