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新規抗凝固薬apixaban,心房細動の脳卒中・出血・死亡抑制でワルファリン上回る ESC 2011発表のARISTOTLE試験非弁膜性心房細動患者の抗凝固療法として,ワルファリンに替わる新規抗凝固薬が相次いで登場している。わが国ではトロンビン阻害薬のダビガトランが今年(2011年)3月から使用されているが,消化管出血による死亡例の報告もあり,慎重な導入が望まれている。このような中,第33回欧州心臓病学会(ESC Congress 2011;8月27~31日,仏ロワシー)では,apixaban(Xa阻害薬)とワルファリンを比較したARISTOTLE試験※1が発表された。ダビガトランを対象にしたRE-LY試験,rivaroxaban(Xa阻害薬)を対象にしたROCKET-AF試験に続き,apixabanでもワルファリンへの非劣性が証明された上に,脳卒中やその他の塞栓症,大出血,さらに総死亡のエンドポイントにおいて,いずれも apixabanの有意な優位性が示されたことを米デューク大学メディカルセンター(ダーラム)循環器科ディレクターのChristopher B. Granger氏が明らかにした。試験の結果は,N Engl J Med 8月28日オンライン版でも同時に掲載された。 CHADS2スコア1点以上が対象ARISTOTLE試験の対象は,18歳以上で脳卒中リスクを1つ以上有する(CHADS2スコア1点以上)心房細動患者※2。血清クレアチニン2.5mg/dL超の腎機能障害例などは除外された。ダブルダミーによる二重盲検ランダム化比較試験(RCT)として行われ,39カ国1,012施設から1万8,201例が登録された。 仮説では,脳卒中と全身性塞栓症の有効性エンドポイントと大出血の安全性エンドポイントにおけるapixabanのワルファリンに対する非劣性を想定。それぞれ非劣性が確認された場合は,優位性の評価が予定されていた。Apixaban群では特定の患者※3以外,5.0mg錠を1日2回服用,ワルファリン群は2.0mg/日から始めてプロトロンビン時間国際標準比(PT-INR)2.0~3.0を目標範囲として調整が行われた。エンドポイントの解析は,intention to treat(ITT)解析で行われた。 登録患者の平均年齢は70歳で,女性の割合が35%,一過性脳虚血発作(TIA)または脳卒中の既往が19%を占め,平均CHADS2スコアは2.1だった。CHADS2スコア1点の患者の割合は34%で,抗凝固療法未経験者は43%だった。 有効性・安全性項目ともにapixaban群が有意に優れる追跡期間中央値は1.8年。有効性1次エンドポイントの脳卒中とそれ以外の塞栓症の発生は,ワルファリン群1.60%/年に対して apixaban群1.27%/年で,apixaban群が有意に低かった〔ハザード比(HR)0.79,95%CI 0.66〜0.95,非劣性評価P<0.001,優位性評価P=0.01〕。脳出血についてもHR 0.51で有意な低下が認められた(P<0.001)。また,2次エンドポイントの総死亡は,ワルファリン群3.94%/年に対してapixaban群は 3.52%/年とHR 0.89で有意に低下した(P=0.047)。 安全性の1次エンドポイントである大出血は,ワルファリン群3.09%に対してapixaban群2.13%で,apixaban群で有意に低下した(HR 0.69,95%CI 0.60〜0.80,P<0.001)。個々の出血項目については,apixaban群のHRが頭蓋内出血で0.42(P<0.001)となるなど,消化管出血以外はすべてapixaban群が有意に低下していた。消化管出血についてもHRは0.89(P=0.37)だった。 これらの結果,1次エンドポイントの有効性および安全性項目を合わせた全体の臨床有効性評価で,apixaban群のHRは0.77と有意に優れていた(P<0.001)。今回のARISTOTLE試験の結果に基づけば,心房細動患者1,000人をapixabanで1.8年治療した場合,ワルファリンと比べて脳卒中が6件(うち4件が出血性,2件が虚血性)と大出血が15件,死亡が8人減ることが見込まれる。なお,治療の脱落例はapixaban群が25.3%,ワルファリン群が27.5%だった。 ワルファリンの治療状況はapixabanの優位性に影響せずワルファリンとの比較試験では,ワルファリンのコントロール状況によって結果が左右されることになる。そこで,プロトロンビン時間国際標準比 (PT-INR)2.0~3.0の範囲に調整された有効な治療域にある時間(TTR)とイベント発生率の関係が調べられた。このデータは,ウプサラ臨床研 究センター(スウェーデン)教授のLars C. Wallentin氏が報告した。それによると,全体のTTRは66%で,TTRが72超の管理良好な患者群でも,TTRが58未満の管理不良な患者群に おいてもapixabanが優位な傾向は変わらなかった。 指定討論者のランケナウ医学研究所(米国)のMichael D. Ezekowitz氏は,近年立て続けに発表されてきた3つの新規抗凝固薬がワルファリンとの比較でそれぞれ頭蓋内出血を有意に抑制していること,ARISTOTLE試験では1次エンドポイントに加えて総死亡も有意に抑制した点などを挙げ,「新たな時代の夜明け」と評した。また,残された課題は 「抗凝固療法からの脱落者をいかに減らしていくか」と指摘した。 (田中 かおり) ※1 Apixaban for the Prevention of Stroke in Subjects with Atrial Fibrillation(ARISTOTLE)※2 以下のいずれかを有する場合:75歳以上,脳卒中既往,TIAまたは全身性塞栓症,症候性うっ血性心不全または左室駆出率40%以下の左室機能障害,治療を要する糖尿病または高血圧※3 80歳以上,60kg以下,血清クレアチニン1.5mg/dL以上に2つ以上該当する場合は2.5mg錠を1日2回 出典 MT pro 2011.8.29
版権 メディカル・トリビューン社 <関連サイト>
第Xa因子阻害薬アピキサバン(apixaban)の実力:ARISTOTLE試験
http://stroke-memorandum.blogspot.com/2011/09/xaapixabanaristotle.html
心房細動に対する新規Xa阻害薬アピキサバンの大規模試験:ARISTOTLE試験「何が最高善か」
http://dobashin.exblog.jp/13416606/
ARISTOTLE
http://circ.ebm-library.jp/trial/doc/c2004793.html
堀正二先生と井上博先生のコメント
■心房細動患者に対する直接Xa因子阻害薬apixabanの第III相大規模臨床試験(ARISTOTLE試験)の結果は,warfarinに対する非劣 性のみならず,優越性を示す良好な内容であった。
有効性エンドポイント(脳卒中および全身性塞栓症)を21%抑制すると同時に大出血のリスクを31%抑制し,層別解析において日本を含むアジア・太平洋地域住民における有効性も安全性も優れた結果を示唆したことはさらに歓迎すべき成績であった。
本試験によって,トロンビン阻害薬(dabigatran)およびXa因子阻害薬(rivaroxaban,apixaban)の心房細動患者における心原性塞栓症の予防効果が明らかにされ,これらの新規抗凝固薬がいずれもwarfarinの欠点を克服しているのみならず,その有効性においてもwarfarinを超え る成績が得られたことは,抗凝固療法の新しい時代の幕開けを確信させた。
これらの新規薬剤の比較については,3試験間の試験デザイン,患者背景(CHADS2ス コアなど),薬剤投与方法(用量・用法),warfarin群のTTRなどの差異があるため単純比較は困難であり,2剤間の突合試験を待たねばならないが,共通して明らかになったことは,これらの新規抗凝固薬がwarfarinに比し,頭蓋内出血を著明に抑制している一方,本来期待される虚血性脳卒中 (脳梗塞)の抑制は弱く,有効性のかなりの部分が出血性脳卒中の抑制によることである。
これは,warfarinが頭蓋内出血・出血性脳卒中を特異的に増 加させていたことによるのかも知れないが,新しい抗凝固薬が有効性と安全性においてwarfarinより特段に優れた薬剤ではないことを銘記する必要があろう。
(堀正二先生)
■Xa阻害薬のアピキサバンが,塞栓症リスクを1つ以上もつ心房細動患者の脳卒中,全身性塞栓症の予防においてワルファリンよりも優れており,かつ出血性合 併症が少ないことが示された。
さらには,死亡リスクもワルファリンに比べて低かったことは注目すべき結果である。
これまでは心房細動塞栓の予防(経口薬) にはワルファリンしか手段がなかったが,直接抗トロンビン薬に加えてXa阻害薬の有効性が示され,我々の選択肢が大きく広がった。 【緊急コメント】apixabanの優位性には出血リスクを考慮した用量設定が奏効かARISTOTLE試験について是恒之宏氏と一問一答
http://mtpro.medical-tribune.co.jp/mtpronews/1108/1108088.html■新規抗凝固薬の中で初めて,有効性,安全性ともにワルファリンを上回った。■有効性,安全性両面で素晴らしい結果だった。新規抗凝固薬での増加が懸念されている消化管出血に関して,有意差はないがワルファリンに比べて若干少なくなっていたことを含め,安全性の面での懸念事項がクリアされていたと言える。■新規抗凝固薬には1日2回投与のダビガトラン,apixaban,1日1回投与のrivaroxaban,エドキサバンがある。rivaroxabanの場合,ROCKET-AF試験で消化管出血が増加しており,推測ではあるが,最大血中濃度が影響した可能性もある※。同じ1日1回投与のエドキサバンのデータも含めて検討していくことになると思う。 ■apixabanでは2用量が設定されていた。年齢80歳以上,体重60kg以下,腎機能障害(血清クレアチニン1,5mg/dL以上)の3条件のうち2 つに相当する場合は,投与量を半減させることになっていた。これが奏効した可能性もある。腎排泄が少ない点(25%)は,薬剤選択の幅が広がったことを意味するだろう。■臨床試験の結果は,経験豊富な医師が厳格に調整しながら治療する,いわば「優等生の治療」によるもの。安全なイメージが先行して市販後に適切に使われない と,出血事故につながる。これは抗血栓薬すべてに当てはまることであるが,試験で安全性が示されていても,やはり導入の際には慎重な姿勢が求められる。 <私的コメント>臨床試験が「優等生の治療」 には少し疑義があります。私は最近、随分前から市販されている某ニューキノロン系抗菌剤を投与し、意識障害による交通事故を起こした症例を経験しました(症例報告としては本邦初症例)。市販後に副作用が見つかるケースも多く、臨床試験に関わった経験のある身として、大学病院を含めた勤務医が十分な観察をしているとは思えません。
アイズピリ 赤い背景の花束 リトグラフ(石版画)
http://www.suiha.co.jp/?cat=9&pid=1477&aid=89 読んでいただいて有り難うございます。 コメントをお待ちしています。 その他 「葦の髄」循環器メモ帖 http://yaplog.jp/hurst/ (循環器専門医向き) ふくろう医者の診察室 http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy (一般の方または患者さん向き) 井蛙内科/開業医診療録(4)2009.10.16~ http://wellfrog4.exblog.jp/ 井蛙内科/開業医診療録(3)~2009.10.15 http://wellfrog3.exblog.jp/ 井蛙内科/開業医診療録(2)2008.12.10~ http://wellfrog2.exblog.jp/ 井蛙内科/開業医診療録~2008.5.21 http://wellfrog.exblog.jp/ (内科医向き) 「井蛙」内科メモ帖 があります。
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