戯れ言たれる侏儒
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< 日本人でのスタチンによる強化脂質管理 | メイン | ARISTOTLE試験 >

高リスク糖尿病の目標LDL-C値100mg/dL未満で変わらず
糖尿病の脂質管理目標値は,わが国では一次予防が120mg/dL未満 ,二次予防で100mg/dL未満と2007年版GLで設定されている。
しかし,欧米ではより厳格になっており,一次予防でも100mg/dL未満,二次予防では70mg/dL未満となっている。
日本でもより厳格な目標値を設定すべきか。
江草玄士クリニック(広島県)の江草玄士院長が解説した。
 
一次予防の糖尿病患者のCADリスクは,J-LIT研究において非糖尿病二次予防患者の3分の1程度であることが示されている。
そのため同院長は,現時点で日本人では糖尿病を二次予防と同等のリスクがあるとする根拠は不十分としている。
<私的コメント> 
糖尿病による大血管障害については、最近注目されている一方、糖尿病専門医の「話題づくり」という一面もあります。
これは腎臓専門医による「CKD」と、ちょっと似た構図といえば言い過ぎでしょうか。
実際、糖尿病による大血管障害については、細小血管障害ほどにはエビデンスがありません。
むしろ、混沌としている、ないしはcontroversialと言った方がいいかも知れません。
糖尿病は高脂血症やMetSを始めとした種々の代謝異常なども合併しており、糖尿病単独で大血管障害との関係を評価することは困難です。
「現時点で日本人では糖尿病を二次予防と同等のリスクがあるとする根拠は不十分 」というコメントも、少し痛快ではあります。


一方で,同研究から糖尿病の厳格な脂質管理の必要性も明らかにされている。
LDL-C値とCVD発症リスクの関係を非糖尿病と糖尿病で比較したところ,糖尿病ではLDL-C値が30mg/dL低い段階で非糖尿病と同程度のイベント発症リスクとなっていたAtherosclerosis 2006; 191: 440)。
 
なお,一次予防でリスクが重積した患者,メタボリックシンドローム合併,網膜症やCKDなど細小血管症合併,PAD,脳梗塞の合併などはCADリスクをさらに高めることが報告されている。
同院長は「欧米のようにCHD既往と同等リスクにあるという認識と対応が必要な症例もあるのではないか」と指摘 した。
 
二次予防の段階はどうか。
JAPAN ACSでは,急性冠症候群(ACS)合併糖尿病患者のプラーク変化率が調査されたが,スタチン治療によるプラーク変化率は非糖尿病患者より糖尿病患者の方が小さかった。
また,サブ解析でも糖尿病ではLDL-C 70~75mg/dLの段階で初めて最大変化率が得られており,より厳格な脂質管理の重要性が示された。
さらに,二次予防患者でも,一次予防患者で示された危険因子合併によりCAD再発リスクがいっそう高まることが示された。
 
2006年の国内調査では,GL管理目標値に達した患者は一次予防患者で半数弱,二次予防患者では3割程度だった。
現在はLDL-C低下効果の高いスタチンやエゼチミブが登場しているものの,同院長は「現在でも目標達成率が不十分な状況にあるのではないか」と推測している。
 
以上から,現時点で糖尿病の管理目標値を変更する必要はないものの目標値に到達することが大前提で,症例によってはさらに厳格な目標値を想定すべき場合もあるとまとめた。
 
現時点で二次予防100mg/dL未満の目標値設定にはエビデンス不十分
わが国のGLにおいても二次予防の段階で欧米並みのLDL- C 70mg/dL未満という厳格な目標値を設定するべきかどうか,順天堂大学循環器内科の代田浩之教授が報告した。
<私的コメント> LDL- C 70mg/dL未満という考え方に一律に拘ることなくL/H比も考慮することは当然のことです。
HDL−C値が30mg/dl と70mg/dlで、同じLDL- C 70mg/dL未満を目指す必要があるのでしょうか。

CAD既往患者のLDL-C目標値は,現行GLで100mg/dL未満となっている。
しかし,2002年に報告されたJ-LIT研究で は,LDL-C値110~119 mg/dLと110mg/dL未満に有意な発症リスクの差は示されておらず,この傾向は追跡を10年間延長したJ-LIT Extension(2008年)でもLDL-C 100mg/dL未満までリスク低下の傾向が認められるものの,介入試験ではMUSASHI AMI以外に,LDL-C 100mg/dL未満を目指す根拠は国内成績では必ずしも十分ではなかった。
 
一方で,わが国のCAD症例での再発率は欧米と比べて低率ではあるが,リスクが重積すると再発リスクが高まることは複数の報告で示されている。
JCAD研究ではリスク2点以下に対する3点以上のCVDリスクハザード比が1.26と有意に上昇。
糖代謝異常がある場合にも1.33と有意に高かった(Circ J 2006; 70: 1256)。
 
また,同教授らはeGFRが低下するほどにACS患者のCVDリスクが増大することを報告している。
<私的コメント> 当然、年齢は考慮されているとと思います。eGFRは、年齢補正(残念ながら体重補正はされていない)がされているので年齢は考慮しなくてもいい、という考え方もあるかも知れません。
しかし、どう考えても高齢者ほどeGFR低下例の割合は増加している筈です。

二次予防の大規模レジストリーとしてはCREDO-Kyotoがあり,昨年,この国内レジストリーと米国テキサス心臓研究所データの比較が報告されている(Am J Cardiol 2010; 105: 1698)。
この研究でも,CAD患者の死亡リスクは米国の方が高いものの,その危険因子には同様の項目が挙げられており,同じCAD症例でもよりリスクの高い症例が存在することは明らかである。
これらの症例には積極的な治療が必要となる。
 
しかし,日本における介入試験の報告は限られている。臨床転帰ではなく動脈硬化の進展度を検証したものとしては,ACSを対象にした ESTABLISH試験とJAPAN ACS試験,慢性期CHD患者対象のCOSMOS試験がある。
これらの試験では,70~85mg/dL程度へのLDL-C低下によるプラークの退縮効果が認められている。
 
二次予防における脂質管理の効果を臨床転帰で検討した介入試験としては, Extended ESTABLISH試験やOASIS試験があるが,サンプルサイズや介入時期などの観点から,確立されたエビデンスというには現時点ではまだ不十分と評価した。
 
これらの結果から同教授は,現時点ではLDL-C値100mg/dL未満を確実に達成することが必要であり,さらなる厳格な低下療法が有効であるかどうかは,現在進行中の介入試験の結果を待って検証すべきとしている。「さらに積極的なLDL-C低下療法については,個々の症例リスクを考慮して主治 医が目標値を判断すべきではないか」とまとめた。
 
実地医家による診断を視野に家族性高コレステロール血症GL作成
高LDL-C血症や若年性冠動脈疾患,腱黄色腫を3主徴としてLDL-C代謝経路に障害を有する遺伝性疾患の家族性高コレステロール血症 (FH)。
 
FHについては
家族性高コレステロール血症 その1(1/2)
http://blog.m3.com/reed/20110827/1
家族性高コレステロール血症 その2(2/2)
http://blog.m3.com/reed/20110829/1

も参照下さい。
 
その発症頻度は,片親から受け継ぐ「ヘテロ型」が500人に1人とされていたが,最近の国内調査では従来考えられていたよりも高い頻度である可能性が指摘されている。
専門家だけでなく実地医家による早期診断の機会が珍しくないと考えられるFHの診断と管理については,現在,FH診療GLが作成中だ。
委員の1人である国立循環器病研究センター(大阪府)病態代謝部の斯波真理子特任部長がその方向性を示した。
 
同センターで診療したFH患者329例のデータから分かるFHの実態は次の通りだ。
CAD発症率が男性48%,女性18%で,平均CAD発症年齢は男性47歳,女性59歳で,男性では40歳未満の発症も多い。
そのような若年発症者は予後も悪い傾向にある。
 
FHの原因遺伝子には,LDL受容体をはじめPCSK9などが挙げられるが,同センターの患者のうち約50%がLDL受容体の変異を有している。
PCSK9の遺伝子変異は2種類同定されているが,両者を併せると患者の1割超に認められている
 
遺伝子解析は,診断的価値だけでなく,予後を推測して治療方針を決める手がかりにもなりうる。
同部長の検討では,LDL受容体とPCSK9両者の変異を有する患者ではCAD発症頻度が半数に上り,変異を有しないかどちらかのみの場合の30%と比べて高頻度であった。
 
なお,GL中の診断基準作成に当たっては多施設調査でFHの実態を調査中だ。
同センターや京都大学,大阪大学から脂質異常症患者661例が登録され,そのうちFH患者は240例に上った。
この後ろ向き解析におけるnon-FHとFH未治療時のLDL-C値から,診断基準案の根拠が示された。
参加者 のLDL-C値の分布から,FHのLDL-C基準値は180mg/dLをカットオフ値とするとFHの9割が含まれるが,non-FHも3割弱含まれることになる。
しかし,190mg/dLをカットオフ値とするとnon-FHの割合は17%に低下するが,FH患者の割合も84%に低下する。
 
そこで,GLではFHを疑うLDL-C値を180mg/dL以上と設定し,身体症状や家族歴も加えた項目のうち2項目が当てはまる場合をFHとすることとなった。
なお,LDL-C値250mg/dL以上の場合,単独でもFHを強く疑うことが明記されている。
また,FH患者では危険因子を2つ以上有するとCHD発症リスクが有意に高くなることから,このような高リスク患者ではLDL-C値100mg/dLまたは50%以上の低下により厳格に管理すべ きことが明記される見込みだ。
 
今回の改訂では,15歳未満の小児FHについても言及される予定で,小児の診断基準はLDL-C値と家族歴で決めることや,薬物治療ではレジンを第一選択薬として,アキレス腱・内膜中膜複合体厚(IMT)肥厚がある場合にスタチンを考慮することが明記される予定だ。
 
最後に,同部長は「若年早期に診断してCHDの予防を行えば予後を改善できる。疫学調査を見る限り,実地医家で診療されている場合も多いと考えられるので,見逃さないようにしてほしい」と力を込めた。

出典  Medical Tribune 2011.9.1
版権 メディカル・トリビューン社
 
 

ラウル・デュフィ
ヴァカンス・フォルセ:レストルの農園 木版
http://www.suiha.co.jp/?cat=9&pid=793&aid=19
 

読んでいただいて有り難うございます。
コメントをお待ちしています。
その他
「葦の髄」循環器メモ帖 http://yaplog.jp/hurst/
(循環器専門医向き)
ふくろう医者の診察室 http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き) 
井蛙内科/開業医診療録(4)2009.10.16~
http://wellfrog4.exblog.jp/
井蛙内科/開業医診療録(3)~2009.10.15
http://wellfrog3.exblog.jp/
井蛙内科/開業医診療録(2)2008.12.10~
http://wellfrog2.exblog.jp/
井蛙内科/開業医診療録~2008.5.21 http://wellfrog.exblog.jp/ 
(内科医向き)
「井蛙」内科メモ帖 
があります。
 

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コメント

コメント一覧

さすらいの、、、先生。

コメント有り難うございました。
完全予約制について、病院側はどのように考えているのでしょうか。
患者目線が欠けてはいないでしょうか。
急病の時だけ開業医にかかる患者もいます。
そんな時には、開業医は何だか尻拭いさせられているな、と感じる時もあります。
written by 戯れ言たれる侏儒 / 2011.09.14 15:29

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