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ワルファリンを上回る心房細動の脳卒中予防効果を示したARISTOTLE試験を分析
新規抗凝固薬導入時の注意点も再確認
3月に新規抗凝固薬ダビガトラン(抗トロンビン薬)が発売されてから約半年が経過した。
心房細動患者6万4,000例余りに使用されているが,重篤な出血性副作用が81例,薬剤との因果関係が否定できない死亡も5例報告された(8月11日時点)。
そのような中,第33回欧州心臓病学会(ESC 2011)ではARISTOTLEの報告があり,apixaban(Ⅹa薬)が有効性・安全性ともにワルファリンを上回り,注目を集めた。
そこで,国立病 院機構大阪医療センター臨床研究センターの是恒之宏センター長と心臓血管研究所(東京都)の山下武志所長に試験結果の背景分析や,新規抗凝固薬導入時の注 意点をあらためて解説してもらった。
綿密な用量設定が奏効
ARISTOTLEでapixabanの有効性・安全性評価がワルファリンを上回った背景として,是恒センター長,山下所長はともに綿密な用量設定を挙げる。
試験における用量設定は,通常が5mg錠を1日2回であるが,
(1)80歳以上
(2)体重60kg以下
(3)血清クレアチニン (Cr)1.5mg/dL以上
—のうち2項目が当てはまる場合は,1回量を半量の2.5mgに減量することとなっている。
山下所長は「出血リスクが高い患者で出血を予防する手段が講じられていたことが,大出血の発生抑制につながった」と分析する。
脳出血は有意に抑制しながら脳梗塞については差がなかったことから,「リスクを増やさずに効果を最大限に引き出した用量設定だったのではないか」(山下所長)としている。
加えて是恒センター長は1日2回投与であるため,1回投与の場合よりも最大血中濃度の上昇が抑えられて出血リスクが最小で済んだ可能性を挙げる。
消化管出血の増加も見られなかった。
さらに同薬は腎排泄が25%と少ないことから,「薬剤選択の幅が広がったことを意味する」と両氏は口をそろえる。
抗血小板薬との併用は慎重にすべき
Apixabanを用いた試験としては,ワルファリンとの比較試験の前に,ワルファリン回避例でのアスピリンとの比較試験(AVERROES)も行われ ている。
2試験の結果から,apixabanの大出血はアスピリンと同程度でワルファリンよりも有意に少なく,脳卒中予防効果はワルファリンより優れてい た。
また,抗血小板薬との併用は慎重にすべきことも明らかになった。
apixaban群の大出血率は,アスピリン群との比較で1.4%/年,ワルファリン群との比較では2.1%/年と異なっていたが,「アスピリンとの比較試験ではアスピリン併用はないが,ワルファリンとの比較試験では約30%で併用されていた。それにより大出血が増加した」(山下所長)と考えられるからだ。
3剤併用ではさらに注意が必要だ。
ARISTOTLEにおいてクロピドグレルとの併用は2%未満だったが,apixabanを用いた急性冠症候群の第Ⅲ相試験では,大出血事象のため早期中止となっている。
これらの結果から,同所長は「3剤併用は行うべきでなく,2剤併用も可能な限り避けた方がよいことを教えてくれた」とまとめた。
心房細動の脳卒中予防=腎機能を診る時代に
治療薬の進化によって,出血リスクの低減は期待できるのか。是恒センター長と山下所長は,
(1)あくまでも臨床試験で得られた結果であって実臨床は別
(2)どの抗血栓薬も適切に使用しなければリスクを伴う—という意見で一致している。
是恒センター長は「臨床試験は,経験豊富な医師が厳格に調整する,いわば優等生の治療によるもの。安全なイメージが先行して市販後に適切に使われないと,出血事故につながる」と注意を促す。
山下所長はこれまでの出血性事象の報告について「ワルファリンの時代が長く続いたために,“心房細動の脳卒中予防=腎機能に注意”という図式がなかった。
新しい時代の抗凝固療法に,まだ十分に適応できていない」と指摘する。
新規抗凝固薬はクレアチニンクリアランス30mL/分以下の患者には用いることができない点を再確認する必要があると強調した。
患者の出血リスクを把握することや出血があった場合の連絡網を確認することが求められる。
ARISTOTLE試験
対象
脳卒中危険因子を1つ以上有する18歳以上の非弁膜性心房細動患者
デザイン
二重盲検ランダム化比較試験(39カ国1,034施設)。apixaban 5mg×2回/日(出血高リスク患者は半量に)とワルファリン群をダブルダミーで比較
結果
中央値1.8年の追跡の結果,intention-to-treat解析で,脳卒中・全身性塞栓症の発生がapixaban群 1.27%/年,ワルファリン群1.60%/年でハザード比(HR)0.79,95%信頼区間(CI)0.66~0.95,非劣性評価P<0.001,優 位性評価P=0.01。
大出血の発生が順に2.13%/年,3.09%/年でHR 0.69,95%CI 0.60~0.80,P<0.001。全死亡が3.52%/年,3.94%/年でHR 0.89(P<0.047)。
投与脱落例25.3%,27.5%(NEJMオンライン版)
出典 Medical Tribune 2011.9.22
版権 メディカルトリビューン社
<関連サイト>
新規抗凝固薬はワルファリンへの優位性が必要
ARISTOTLE試験
ARISTOTLE(循環器トライアルベース)
http://circ.ebm-library.jp/trial/doc/c2004793.html
堀 正二先生のコメント
心房細動患者に対する直接Xa因子阻害薬apixabanの第III相大規模臨床試験(ARISTOTLE試験)の結果は,warfarinに対する非劣性のみならず,優越性を示す良好な内容であった。
有効性エンドポイント(脳卒中および全身性塞栓症)を21%抑制すると同時に大出血のリスクを31%抑制し,層別解析において日本を含むアジア・太平洋地域住民における有効性も安全性も優れた結果を示唆したことはさらに歓迎すべき成績であった。
本試験によって,トロンビン阻害薬(dabigatran)およびXa因子阻害薬(rivaroxaban,apixaban)の心房細動患者における心原性塞栓症の予防効果が明らかにされ,これらの新規抗凝固薬がいずれもwarfarinの欠点を克服しているのみならず,その有効性においてもwarfarinを超える成績が得られたことは,抗凝固療法の新しい時代の幕開けを確信させた。
これらの新規薬剤の比較については,3試験間の試験デザイン,患者背景(CHADS2スコアなど),薬剤投与方法(用量・用法),warfarin群のTTRなどの差異があるため単純比較は困難であり,2剤間の突合試験を待たねばならないが,共通して明らかになったことは,これらの新規抗凝固薬がwarfarinに比し,頭蓋内出血を著明に抑制している一方,本来期待される虚血性脳卒中 (脳梗塞)の抑制は弱く,有効性のかなりの部分が出血性脳卒中の抑制によることである。
これは,warfarinが頭蓋内出血・出血性脳卒中を特異的に増加させていたことによるのかも知れないが,新しい抗凝固薬が有効性と安全性においてwarfarinより特段に優れた薬剤ではないことを銘記する必要があろう。
井上 博先生のコメント
Xa 阻害薬のアピキサバンが,塞栓症リスクを1つ以上もつ心房細動患者の脳卒中,全身性塞栓症の予防においてワルファリンよりも優れており,かつ出血性合併症が少ないことが示された。
さらには,死亡リスクもワルファリンに比べて低かったことは注目すべき結果である。
これまでは心房細動塞栓の予防(経口薬)に ワルファリンしか手段がなかったが,直接抗トロンビン薬に加えてXa阻害薬の有効性が示され,我々の選択肢が大きく広がった。
<記事加筆しました>
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