戯れ言たれる侏儒
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Circulation Journal 2011.No.8の注目論文」というサブタイトルがついた、低リスクのAMI後患者へのβ遮断薬の効果を検討した論文の紹介記事で勉強しました。
東北大学循環器内科・下川宏明教授が選出(Pick Up)Circulation Journalの編集長(Chief Editor )をされてみえます。 された論文ですが、先生方もご存知のように下川教授は
数年前に、教授の講演を拝聴する機会があり、その際の懇親会で名刺をいただきました。
肩書きに編集長と書かれてあったのを見て、恥ずかしながらその時、初めて知りました。
 
低リスク患者でも予後改善の可能性示す
AMI患者へのβ遮断薬の効果は欧米から報告されていますが,PCI導入前のものでした。
今回,PCIが成功した低リスク患者でも投与すべきという示唆が国内で得られました。
薬剤間比較も興味深く,今後の参考になる研究論文です。
 
AMI治療進化の陰で位置付けあいまいなβ遮断薬
経皮的冠動脈インターベンション(PCI)や冠動脈バイパス術(CABG)など血行再建術の導入やデバイスの進化,さらにレニンアンジオテンシン系 (RAS)阻害薬の有用性が証明され,急性心筋梗塞(AMI)の治療は1990年代以降急速に発展し,救命率が上昇してきている。
その一方で,1980年 代にはAMI治療の主役でもあったβ遮断薬の位置付けがあいまいとなった。
 
冠血行再建術が成功せずに再環流しなかった場合や,左室駆出率(LVEF)が低い高リスクAMI患者に対しては,β遮断薬の有用性を示す臨床試験結果があるが,大規模な前向き試験のエビデンスがなく,β遮断薬を使用すべきなのか,それともRAS阻害薬の増量で血圧が安定していればβ遮断薬は不要なのか, 治療指針は確立していない。
米国心臓協会(AHA)/米国心臓学会(ACC)ガイドラインにおいても,AMI高リスク群でのβ遮断薬はクラスⅠであるが,AMI低リスク群での推奨レベルはⅡaとなっている。
 
そこで今回,東京医科歯科大学医歯学融合教育支援センターの小西正則氏ら同大学循環器内科のグループはAMI患者にβ遮断薬を投与すべきかどうかを単施設による後ろ向き調査として解析し,Circulation Journal(2011; 75: 1982-1991)に報告した。
この中で,低リスク患者に対してもβ遮断薬が予後改善に有効な可能性を示した。
 

連続251例の後ろ向き解析でβ遮断薬が効果
研究の対象は2004年9月以降2009年9月までに同大学に搬送されたAMI患者382例のうち,
(1)AMI後のPCI施行
(2)β遮断薬・RAS 阻害薬の服用歴なし
(3)透析未導入
(4)PCI後のRAS阻害薬導入
—の条件を満たした251例。
β遮断薬投与群171人とβ遮断薬非投与群80例に割り付けられた。
両群の重症度や合併症頻度,投薬状況に有意差はなかった。
冠血行再建術歴は両群とも約6%で,心不全が5%前後,虚血性心疾患は約6%だった。
RAS阻害薬のほかにスタチンとアスピリンはほぼ全例が服用していた。
なお,RAS阻害薬の内訳としては,ACE阻害薬が85%,アンジオテンシンⅡ 受容体拮抗薬(ARB)が15%だった。

 
その結果,12カ月後の死亡や心疾患イベント非発生率はβ遮断薬投与群が4.1%で,非投与群13.8%と比べて有意に低下した()。
血圧変化率は両群間で差はなく,両群とも収縮期血圧で15mmHg程度低下したが,B型ナトリウム利尿ペプチド(BNP)やマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)-2,MMP-9はβ遮断薬群で有意に低下した。
 

図表
 
低リスク患者も全例に投与すべきか,どのβ遮断薬をどの程度投与するかを問題提起
小西氏らはさらに,LVEF 40%以下,血行再建術の不成功,心室細動の合併のいずれかを有する患者を高リスク群,これらのいずれにも該当しない患者は低リスク群として,それぞれの 群でβ遮断薬の効果を見た。
その結果,高リスク群だけでなく低リスク群(β遮断薬非投与群47例,β遮断薬投与群103例)においても,β遮断薬投与群ではβ遮断薬非投与群と比べて心疾患イベントの有意な発生率低下が認められた(19.1%対7.8%,)。

 
報告した同氏は,単施設の後ろ向き解析であるため選択バイアスの可能性が否定できない点などを検討の限界としている。
また,対象者のうち冠血行再建術を受けた患者や心不全,虚血性心疾患の既往者は数%と少なくなっており,AMIの一般集団として十分とは言い切れない点も考慮する必要があるとしている。
その上で,「低リスクAMI患者に対してもβ遮断薬の必要性を提起する結果になった。多施設で前向きな研究を計画する際のたたき台となるのではないか」と次の展開に期待を寄せている。
 
また,β遮断薬の種類や用量についても新たな知見が提示された。
β遮断薬は2種類投与されていたが,カルベジロールが91例に,ビソプロロールが80例に投与されており,両群の生存率,心疾患イベント非発生率に差はなく等しく有効だった。
また,両群とも血圧や心拍数,LVEFの有意な低下が認められているが,LVEFやBNPについてはカルベジロール投与群の方がビソプロロール群よりも有意に改善していた。
同氏は「試験期間における最小用量は,カルベジロールが現在使用されているのと同程度だったのに対してビソプロロールは倍量以上だった。実際に投与する際には割線を利用して最小用量の半量から開始し, 徐々に増量する場合もあるが,ビソプロロールの方が低用量での調整が難しかった点が影響しているのかもしれない」と考察している。
 
AMIの救命率は向上したとはいえ十分ではなく,今回の研究でもβ遮断薬非投与群では1割以上が1年以内に死亡している。
β遮断薬は用量調整や副作用の 管理が難しい薬剤ではあるが,その後の心疾患イベントや死亡抑制効果につながるのであれば臨床的意義は非常に大きいといえる。
 
出典 Medical Tribune 2011.8.25
版権 メディカル・トリビューン社
 
 
読んでいただいて有り難うございます。
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