戯れ言たれる侏儒
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どう使いこなす、抗凝固療法で相次ぐ大型新薬
ドラッグラグなき時代の新薬ゆえの悩み
直接トロンビン阻害薬ダビガトランに続き、選択的Xa因子阻害薬も今後相次いで登場し、選択肢が増える抗凝固療法。
どの薬剤も世界共同開発かつ新規性が高い薬剤であるだけに、抗凝固作用と表裏の関係にある出血を起こさずに上手に使いこなすノウハウの蓄積が待たれる。


 
心臓血管研究所付属病院(東京都港区)では、今年3月のダビガトラン(商品名プラザキサ )発売から3カ月間で、約100人の心房細動(AF)患者に同薬を処方した。ダビガトランは血液凝固カスケードの中で、フィブリン血栓の生成に関与する酵素であるトロンビンの活性を阻害する新しい作用機序の抗凝固薬(図1)。
わが国では非弁膜症性AF患者における脳卒中・全身性塞栓症の予防の適応で承認された。
 

図1 血液凝固カスケードにおける主な経口抗凝固薬の作用点
(出典:Umer Usman MH, et al. J Interv Card Electrophysiol 2008;22:129. 一部改変)
 
100人の内訳は、ワルファリンからダビガトランに変更した患者と、新規にダビガトランで抗凝固療法を開始した患者が、ほぼ半々だった。
 
ワルファリンから変更した患者は、全ワルファリン処方患者の1割程度と、あまり多くなかった。
これに対して新規患者では、ほとんどがダビガトランを選択していた。
「ダビガトランは血液のモ二リングに基づいた投与量の調節が不要なので、病棟でレジデントの医師が抗凝固療法を開始することも増えた。抗凝固療法の敷居が低くなったことを実感する」と、同病院院長の山下武志氏は評価する。

新規患者が多かった理由は2つある。

まず、今まで抗凝固療法の適応となっていても、ワルファリンの使いづらさから実際に処方できていなかった患者が多 かったこと。
2つ目は、AFに伴う脳梗塞のリスクがあまり高くない患者でも、ダビガトランの登場により医師の判断で抗凝固療法を勧める例が増えたことだ。

一方でワルファリンからの切り替え例がそれほど多くない理由は、同薬で安定した抗凝固活性が得られており、食事制限を煩わしく感じない患者では、薬を変える動機が小さいためとみられる。

 

腎機能低下例には注意を
このように好印象を持って迎えられたが、腎機能が低下した高齢者での重篤な出血例の報告があったことから、発売元の日本ベーリンガーインゲルハイムは今年6月、適正使用に関する注意喚起を行った。

添付文書でも、クレアチニンクリアランス(Ccr)が30〜50mL/分の中等度の腎障害がある患者や高齢者では慎重投与、30mL/分未満の高度の腎障害がある患者では禁忌となっており、今回の注意喚起ではその徹底が強調された。

AF患者は高齢者が多くなるが、一般に加齢に伴い腎機能は低下するため、腎排泄型のダビガトランの血中濃度が高まり出血のリスクが増すという。

「今まで唯一の抗凝固薬だったワルファリンが肝で代謝される薬剤だったので、抗凝固療法を行うとき腎機能に注意するという意識が低かったことも一因ではないか」と山下氏は分析する。

山下氏は、

(1)推算糸球体濾過量(eGFR)が30mL/分/1.73m2未満なら投与しない
(2)70歳以上、消化管出血の既往がある、eGFRが30〜50mL/分/1.73m2、併用注意となっているベラパミルを投与しているといった条件のある患者では、低用量(110mg×2回/日)を選択する
─という方針で処方している。

eGFRとCcrはどちらも同様な腎機能の指標だが、eGFRの方が2〜3割低めに出る。

「それだけ投与できない患者が増えるが、使用経験が限られる新薬 であるだけに、安全性を重視した。高齢者では特に、熱中症や脱水、摂食不良などから容易に腎機能が低下することも踏まえた判断だ」と山下氏。
eGFRでの 判断は、検査伝票に同値が記入されるようになり、簡単に参照できるようになったことも理由の一つという。
 
年齢で異なる出血リスク
ダビガトランを使いこなすには、その具体的な出血リスクがワルファリンとどう異なるのか把握することも大切だ。

その情報が今年5月、ダビガトランの臨床試験であるRE-LYの新たな解析結果として発表された。
 

図2 出血の種類および年齢別に見た出血の年間発生率
(出典:Eikelboom JW, et al. Circilation 2011;123:2263-72.一部改変)


安全性に関する主要評価項目である大出血については、75歳未満であればダビガトラン110mg×2回/日群、150mg×2回/日群のどちらも、ワルファリン群よりも発生率は低かった。
だが75歳以上では、発生率は同等だった(図2A)。

一方、
頭蓋内出血については、75歳以上であってもダビガトラン群の方が発生率は低かった(図2B)。逆に消化管出血は、75歳以上のダビガトラン群で増えていた(図2C)。

消化管出血の部位別の検討から、ダビガトランではワルファリンに比べ下部消化管からの出血が多いことも判明した。

このようなデータから山下氏は、「投与開 始後も3カ月に1回程度は採血し、腎機能とともに軽度の出血がないかヘモグロビン値も見ておきたい」とアドバイスする。
世界同時承認のデメリット
新しい抗凝固薬として今後、選択的Xa因子阻害薬も複数が発売される(図1、表1)。

同薬剤も多くは世界共同臨床試験により、欧米とほぼ同時期の承認となる見込み。
 
 
 
いわゆるドラッグラグは解消されるが、東海大内科教授の後藤信哉氏は、「今まで、日本での承認は欧米の数年遅れとなり、ドラッグラグとして批判されてい た。だがその間の欧米の使用経験から、副作用のリスクや良い適応が明確になり、日本での大きな事故を防ぐことにもつながっていた。
世界同時承認ではこのような利益は得られなくなる。それを念頭に、最初は特に慎重に使い始めるべき」と強調する。

その上で、「本当に利益がある患者集団を特定するために、症例登録を行って日本人AF患者の脳梗塞発生率や抗凝固薬による出血のリスクを正しく把握することが不可欠」と指摘している。

出典 NM online 2011.8.3
版権 日経BP社
 

 
ヨハネス・フェルメール《地理学者》1669 年
油彩・キャンヴァス 53,0 x 46,6 cm シュテーデル美術館蔵

http://artlumiereombre.blog98.fc2.com/blog-entry-215.html

フェルメール作品分布
フェルメール全35作品紹介
ヨハネス・フェルメール-主要作品の解説と画像・壁紙-
 
<きょうの一曲>
Beethoven:Symphony No. 7 - IV. / ベートーヴェン 交響曲第7番第4楽章
http://www.youtube.com/watch?v=S1lg55krMCQ&feature=fvwrel
 
読んでいただいて有り難うございます。コメントをお待ちしています。
その他
「葦の髄」循環器メモ帖 http://yaplog.jp/hurst/
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