戯れ言たれる侏儒
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< 血管内皮細胞および中枢神経系とアルドステ... | メイン | たこつぼ心筋症の症状は多様 >

中枢神経系に対するアルドステロンの関与と食塩感受性高血圧患者への選択的アルドステロンブロッカーの臨床応用
中枢に作用して血圧上昇を引き起こすアルドステロン
藤田 
アルドステロンによる昇圧作用は,これまで主に腎におけるNaの再吸収促進を介して生じると考えられていましたが,最近の研究から,中枢神経系を介した経路も重要であることが示されています。

Leenen 
動物実験において,アルドステロンは全身投与のみならず,脳室内投与によっても血圧上昇を引き起こすことが明らかにされています。
またアルドステロンの全身投与により生じた血圧上昇は,中枢のMRを阻害することにより著明に抑制されます。
これらのエビデンスは,アルドステロンの昇圧機構に中枢のMRが関与していることを明確に示しています。

藤田 その作用機序については,どのようなことが分かっているのでしょうか。

Leenen 
われわれの研究では,ラットに高Naを含む脳脊髄液(CSF)とともにアルドステロンを脳室内投与した結果,数分内に腎交感神経活動の亢進や心拍数の増加が見られ,これらの作用は内因性ウワバイン様物質(以下ウワバイン)に対する阻害抗体の脳室内投与で抑制されました1)
また慢性実験として,わずかに高濃度のNaを含むCSFとアルドステロンを2週間脳室内投与すると,視床下部におけるウワバインの増加と血圧上昇が見られましたが,ウワバインの増加および血圧上昇は上皮型Naチャネル(ENaC)阻害薬の脳室内投与により抑制されました。

以上より,わずかでも脳内Naが上昇した状態で,アルドステロンが脈絡叢やニューロンに発現しているMRに作用すると,ENaCが活性化されてウワバインが放出され,Na-K-ATPaseを阻害して交感神経亢進や血圧上昇を引き起こすと考えられます。
われわれはこの経路を neuromodulatory pathwayと呼んでいます。

脳内Naや血中AⅡの持続的上昇により脳内アルドステロン産生が亢進
藤田 
Neuromodulatory pathwayはどのような因子により活性化されるのでしょうか。

Leenen 
これまでの研究から2つのアクチベーターが同定されています。
1つは脳内Na,もう1つは血漿中アンジオテンシンⅡ(AⅡ) です。
これらの因子は,急性期には,血液脳関門の外側に存在する脳弓下器官(SFO)や終板脈管器官(OVLT)を介して,脳内のアンジオテンシン系経路を活性化し,交感神経活動を亢進させると考えられます。
この経路にアルドステロンは関与しません。

しかし,脳内Naや血漿中AⅡが慢性的に上昇し続けると,視索上核(SON)を介してアルドステロン産生が亢進し,neuromodulatory pathwayが賦活化します。
そして室傍核(PVN)などが活性化され,交感神経亢進や昇圧作用を増強すると考えられます(図5)。


図表
 
例えば,われわれの動物実験では,脳内Na上昇により引き起こされる血圧上昇は,慢性期ではアルドステロン合成阻害薬FAD286の脳室内投与により抑制されましたが,早期には無効でした2)
また,ラットにAⅡを慢性的に末梢投与すると,徐々に血圧が上昇し,2週間後に血漿中や視床下部でアルドステロンの増加を認めました。
この血圧上昇はFAD286やエプレレノンの脳室内投与によって抑制されました(図6)。
以上の結果は,脳内Naや血漿中AⅡの持続的上昇により,中枢のアルドステロン依存的な経路が活性化されて,血圧上昇に主要な役割を果たすことを示唆しています。

図表
食塩感受性高血圧や心筋梗塞後の心不全では中枢のRAA系が活性化
藤田 
では,中枢のレニン・アンジオテンシン・アルドステロン(RAA)系の活性化は,どのような病態に関与しているのでしょうか。

Leenen 
まず1つは食塩感受性高血圧です。
われわれは,高食塩食を負荷したDahl食塩感受性ラットにおいて,血圧上昇に先行してCSF中Naの増加を認め3),また4週間後には視床下部でアルドステロン産生の亢進を確認しました4)
同ラットの血圧上昇は,FAD286やアルドステロンブロッカーの脳室内投与により抑制されました。
つまり,食塩過剰状態では通常,循環血中アルドステロ ン濃度は低下しますが,中枢では逆にアルドステロン産生が亢進しており,これが食塩感受性高血圧の一端を担っていると考えられます。

中枢のRAA系活性化が関与するもう1つの病態は心筋梗塞(MI)後の心不全です。
交感神経亢進が心不全を進展させる主な原因であることはよく知られています。
われわれは,MIモデルラットにおいて視床下部や海馬のアルドステロン産生が亢進していること5),また,MI後に生じる交感神経亢進,末梢RAA系の活性化,心機能低下,心筋線維化,心拡大などが中枢のアルドステロンブロックにより著明に改善されることを見いだしました6~8)
これらの結果から,中枢のMRを選択的に阻害できるような治療法が確立されれば,末梢に対する治療薬を複数併用するよりも効果的に心不全の進展を抑制できる可能性があると考えています。

藤田 
MI後の心不全患者を対象とした臨床試験EPHESUS(Eplerenone Post-acute myocardial infarction Heart failure Efficacy and SUrvival Study)では,MI後にアルドステロンをブロックする意義が認められ9),高血圧治療ガイドライン2009では,MI後高血圧に推奨されています。

Leenen 
アルドステロンブロッカーが中枢に十分量移行し,交感神経亢進を抑制することは,われわれも報告しています。また,
適正にカリウム(K)をコントロールすることは不整脈の抑制に寄与します。

食塩過剰摂取や心不全を伴う高血圧,治療抵抗性高血圧はエプレレノンの良い適応
藤田 
交感神経系の亢進には,腎からの求心性シグナルも関与することが知られています。
最近,治療抵抗性高血圧(RH)に対して腎交感神経アブレーションによる除神経が有効であるという無作為化試験の成績が発表されました10)

Leenen 
同試験では,腎除神経から6カ月後の外来血圧が治療前に比べて32/12mmHgと有意に低下しました。
しかし,24時間血圧の降圧度は11/7mmHgであり,アルドステロンブロッカーによる降圧効果とほぼ同等であることが示されています。

藤田 
腎除神経は侵襲的な治療ですので,アルドステロンブロッカーで同等の効果が得られるのであれば,その方がはるかに有益だと思います。
実際エプレレノンは,RHに対して,追加投与により優れた降圧効果が確認されています(図7)。


図表
Leenen 
MRブロッカーに対する評価は近年高まりつつあります。EPHESUSなどの大規模試験から,心血管リスクの高い高血圧に対して有用性が期待できます。
特にエプレレノンは副作用が少なく,使いやすい薬剤だといえるでしょう。

藤田 
今日のお話を踏まえると,食塩感受性高血圧や心不全合併高血圧,RHに対しては,エプレレノンによるアルドステロンブロックを積極的に行うことが望ましいと考えられますね。

1) Wang H, et al. Am J Physiol Heart Circ Physiol 2003; 285: H2516-H2523[L20031202121]
2) Huang BS, et al. Am J Physiol Regul Integr Comp Physiol 2008; 295: R166- R172[L20110722002]
3) Huang BS, et al. Am J Physiol Heart Circ Physiol 2004; 287: H1160-H1166[L20110722003]
4) Huang BS, et al. Am J Physiol Regul Integr Comp Physiol 2009; 296: R994- R1000[L20110722004]
5) Huang BS, et al. Cardiovasc Res 2009; 81: 574-581[L20110722005]
6) Huang BS, et al. Am J Physiol Heart Circ Physiol 2005; 288: H2491-H2497[L20110722006]
7) Lal A, et al. J Moll Cell Cardiol 2005; 39: 521-529[L20110722007]
8) Huang BS, et al. J Moll Cell Cardiol 2007; 43: 479-486[L20110722008]
9) Pitt B, et al. N Engl J Med 2003; 348: 1309-1321[L49990147405]
10) Symplicity HTN-2 Investigators, Lancet 2010; 376: 1903-1909[L20110117003]
 
 <自遊時間>
サッカーの元日本代表の選手(34)が心筋梗塞で亡くなったというニュースが流れました。(2011.8.4)

急性心筋梗塞で倒れ、心肺停止状態で地元の大学病院に運ばれたということで、医師団のコメントも急性心筋梗塞でした。
先生方の中には、ひょっとして急性心筋梗塞ではなくHCMやBurgada症候群などによる不整脈死ではないか、と思われた方もみえたのではないでしょうか。
心肺停止状態でどのように診断したかはわかりませんが(人工心肺中の診断ならどんな検査か、はたまた剖検なのか)、「心臓に3つある大きな血管のうち、1本が完全に詰まっていた」というコメントも出されたようです。
したがって心筋梗塞が原因ということには間違いないということですが、川崎病の既往はなかったのか、はたまた家族性高脂血症はなかったのか、などといろいろ思いを巡らしてしまいます。
ただただご冥福を祈るばかりです。
 

このニュースが早速m3.comでとりあげられています。
松田選手急死なぜ…高血圧・肥満なく稀なケース
http://community.m3.com/doctor/showNewsArticleDetail.do?boardId=3&boardTopicId=170985&messageListBoardTopicId=170985&newsArticleId=1685881
■松本山雅のチームドクターで、信州大病院の百瀬能成医師によると、JFLにはメディカルチェックの規定はないが、同FCではJリーグの規定に沿っ て、血液検査、心電図、負荷心電図、頭部と胸部のCT(コンピューター断層撮影)などの検査を実施している。今年1月に松田選手も検査を受けたが、異常は なかったという。
 「本人はたばこも吸わず、通常の生活をしていた。当日の天候・気温を考慮しても脱水症状は考えにくい」と首をかしげる。
 心筋梗塞は、心臓に栄養や酸素を送る血管が詰まる病気で、通常は高血圧や高脂血症、糖尿病、肥満、喫煙などが原因で起き、40-50代以降で発症する。
 松田選手の場合は、このいずれにも該当せず、榊原記念病院の伊東春樹副院長(循環器内科)は、「珍しいケース」と話す。
■伊東副院長は「激しい運動をすると、動脈硬化を進行させることもある」と指摘する。激しい運動を行うには、体内に多くの酸素を取り込む必要がある。そのう ちの数%が 有害な活性酸素という物質に変化し、血管の内側の細胞を傷つけ、血液に含まれる脂質などが血管内に入り込むと、動脈硬化の原因になることもあるという。」
既にこの記事は削除されて見ることができません。 
■34歳の松田さんの心筋梗塞による急死について、東大副学長の武藤芳照教授(身体教育学)は「極めて珍しいケース」と話した。
30歳代男性が心筋梗塞で倒れる要因として(1)幼少時に「川崎病」を患った経験がある(2)喫煙習慣がある(3)家族に若くして突然死した人がいる、 という点が考えられるという。「川崎病」は主に乳幼児がかかり、高熱や発疹といった症状が出る。武藤教授は「若い人が急死する原因の一つとして知られてい る」と説明した。

■diopatic coronary artery dissectionという概念があります。case reportとして結構報告されています。
若くて 冠リスクの乏しい方がACSを起こした場合に、その原因としてあげられます。血管壁が脆弱な方などにspasmが原因で冠動脈に解離が生じ、AMIになるとの報告もありま すが、完全には証明できていません。
川崎病ならCAGでベースの冠動脈がボロボロに瘤形成や拡張を来しています
逆に冠動脈に明らかな動脈硬化がない場合は特発性・・と鑑別が出来ます。

■いわゆる危険因子(正しくは冠状動脈硬化促進危険因子)と(急性)心筋梗塞発症因子は異なります。
心筋梗塞発症因子には以下の要因と(機序)が想定されています。
運動、脱水(血液濃縮、凝固能亢進)、 時間帯、ストレス(凝固能亢進)、 冠状動脈攣縮(血管壁の障害、粥腫破綻)
冠状動脈硬化の若年化、高度化はわが国の重要な公衆衛生学問題でありますが、すべての急性心筋梗塞発症に冠状動脈硬化が必須であるわけではありません。

■日本循環器学会のシンポジウムでも取り上げられましたが、30代男性の急性冠症候群には
1.冠縮攣とその部位に血栓が形成されている。
2.血栓を除去し、攣縮が解除されると、その攣縮部位にはほとんど動脈硬化がない
3.ヘビースモーカーである
というタイプがあるとのことです。

■最近日本人の若年者では以前と異なり、EPA/AA比が減少し(10歳代で平均0.1ほど、20歳代で平均0.2ほど)、60歳代の平均0.6ほどと異なり、欧米人(平均 0.1ほど)と同等になっており、動脈血栓形成が起こりやすくなっている可能性があります。
■松田選手の場合、LADからLCXへの副側血行路もあった慢性の虚血性心疾患だったとの情報もあり、しかもLCX主幹部の血栓形成で、バルーンカテも通っ たとのことですか ら、AEDで徐細動さえ行われ、早急にCCUに搬送されていれば(練習場が病院から遠く、発症から1時間近くかかったとのこと)、救命できたと思われます。
前述の冠攣縮+血栓タイプだったのか、通常のプラーク破綻・血栓形成タイプだったのか。

Hbが高すぎたのでは?
■スポーツ選手の急死というとアナボリックステロイドの可能性を考えます。
 
 
読んでいただいて有り難うございます。
コメントをお待ちしています。
その他
「葦の髄」循環器メモ帖 http://yaplog.jp/hurst/
(循環器専門医向き)
ふくろう医者の診察室 http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き) 
井蛙内科/開業医診療録(4)2009.10.16~
http://wellfrog4.exblog.jp/
井蛙内科/開業医診療録(3)~2009.10.15
http://wellfrog3.exblog.jp/
井蛙内科/開業医診療録(2)2008.12.10~
http://wellfrog2.exblog.jp/
井蛙内科/開業医診療録~2008.5.21 http://wellfrog.exblog.jp/ 
(内科医向き)
「井蛙」内科メモ帖 
があります。 

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