戯れ言たれる侏儒
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心血管疾患既往患者は低用量アスピリン療法の継続を
スペイン薬剤疫学研究所(マドリード)のLuis García Rodriguez博士らは,英国のプライマリケア関連のデータベースを用いた研究から,心血管疾患既往歴のある患者がアスピリンの服用を中止すると,非致死的心筋梗塞リスクが高まることが分かったとBMJ(2011; 343: d4094)に発表した。
 
中止で非致死的心筋梗塞のリスクが約60%増加
心血管疾患既往歴のある患者には,血栓予防のために低用量アスピリンの服用が推奨されているが,中止率は50%に上る。
 
これまでに複数の研究で,低用量アスピリンの服用中止が心血管疾患リスクの上昇をもたらすことが示されているが,低用量アスピリンの服用中止が心筋梗塞リスクや冠動脈疾患による死亡リスクに及ぼす影響について,一般住民を対象に検討した研究は少なかった。
 
そこで,同博士らは今回,英国でのプライマリケアの記録を保存している大規模データベースであるHealth Improvement Networkの登録データ(3万9,513例)を用いてコホート内症例対照研究を行った。
対象は50~84歳で,2000~07年に心血管イベントの二 次予防のためにアスピリン(75~300mg/日)の服用を開始した者とした。
低用量アスピリンの中止群と継続群における非致命的心筋梗塞リスクおよび冠動脈性心疾患(CHD)による死亡リスクを比較した。
 
平均3.2年間の追跡期間中に876例が非致死的心筋梗塞を発症,346例がCHDにより死亡した。
解析の結果,継続群と比べた中止群の非致死的心筋梗塞とCHD死の複合発生率比(RR)は1.43〔95%信頼区間(CI)1.12~1.84〕と有意に高かった。
そのうち,非致死的心筋梗塞のRRは 1.63(95%CI 1.23~2.14)と有意であったが,CHD死のRRは1.07(同0.67~1.69)で有意ではなかった。
なお,この関連性は低用量アスピリンの投与期間に関係なく認められた。
また,中止群では継続群と比べ,1,000人年当たりの非致死的心筋梗塞の発症が約4例多かった。
<私的コメント> 「約4例多かった」という文面の、」も「4例」の意味もよくわかりません。
統計学的にも「約4例」はどうなんでしょうか
 
服用継続の指導を
今回の研究では,低用量アスピリンの服用中止を回避することで,一般住民にはアスピリン療法による便益をさらに享受できる余地があることが示された。
同博士らは,今後さらに研究を進め,患者に低用量アスピリン療法の継続を指導することで非致死的心筋梗塞リスクを低減できるか否かについて検討する必要があるとしている。
モデナ・レッジョ・エミリア大学(伊モデナ)のGiuseppe Biondi-Zoccai助教授らは,同誌の論評(2011; 343: d3942)で「今回の研究結果は極めて重要で,アスピリンの服用中止が悪影響をもたらすことを示した以前の研究結果を支持するものである」と強調。「患者には服用中止の指示がない限りは低用量アスピリンの服用を継続するよう指導すべきである」と述べている。
 
出典 Medical Tribune 2011.8.25
版権 メディカル・トリビューン社

 
<私的コメント>
この結果は、日本人の場合にもそのままあてはまるものでしょうか。
日本人は欧米人に比べて心筋梗塞後の予後が良い、という事実があるため心筋梗塞の再発の際にも致死的にならないかも知れません。
1994年に,心筋梗塞慢性期における抗血小板薬の効果に関する研究の成績が発表されました。
急性心筋梗塞発症後1か月以降の症例でアスピリン群と対照群に分けて比較検討したところ,アスピリン群で有意に再梗塞の発生が抑制されることが明らかになりました。

たしかに低用量アスピリンが心筋梗塞の二次予防に有効という結果でしたが、Ca拮抗薬やβ遮断剤(欧米ではβ遮断薬が推奨されている)との比較をした論文はあるのでしょうか。
どちらも主役かも知れません。
またどちらかが「下支え」かも知れません。
アスピリンには抗血小板作用に加えて抗炎症作用がある、といわれています。,
この抗炎症作も心血管イベント抑制に寄与していると考えれば、興味深い結果だと思いました。
以前に、アスピリンとチクロピジンの併用療法が心筋梗塞再発予防に有効である、という2種類の抗血小板剤併用の有用性が書かれた記事を読んだ覚えがあります。
こういった目的で、たとえばアスピリン+プラビックスといった処方をするのはどうなんでしょうか。
開業医としては、保険請求が可能かどうかが一番気になるところです。
 
 <参考>


 
 
 
http://mtpro.medical-tribune.co.jp/mtnews/2002/M3526201/
 

 
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帝京大学心臓血管外科・真鍋 晋講師による、無症候性ASの解説です。同先生によるMRの解説
無症状の僧帽弁閉鎖不全症
については2011.8.4で勉強しました。

 
無症状の大動脈弁狭窄症に外科手術は勧められるか
大動脈弁狭窄症(AS)は,高齢者では非常に有病率の高い疾患です。
米国の調査では65歳以上の4人に1人は大動脈弁に硬化性変化があり(大動脈弁硬化症),そのうち6人に1人が血流障害を伴うASと診断されます。
つまりASは65歳以上人口の約4%に見られます。
ASでも軽度~中等度ではすぐに治療の必要はありませんが,その約半数が重度ASへと進行し,外科手術が検討されます。
このようにASは遭遇する機会が多い疾患です。
 
無症候性でも重度では多くが5年以内に症状
ASでは症状が出現すると,平均余命は2~3年しかなく予後は極めて不良です。
自覚症状の出現は,病気の始まりではなく,むしろ重い負担に耐え, 必死に代償してきた心臓の破たんを意味します。
よって,ガイドラインでは自覚症状があればclassⅠですぐに外科治療が推奨されます)。
 
図表
 
メイヨー・クリニックのPellikkaらは,症状のない重度AS 622人の自然予後を報告しています(Circulation 2005; 111: 3290)。
重度ASは診断時症状がなくても,早い時期に高率に自覚症状が出現します。
全体の3分の1が2年以内,3分の2は5年以内に自覚症状が現れました(症状回避率2年:67%,5年:33%)。症状が出現すればすぐに手術が勧められるので,全体の4分の3の症例が5年以内に手術または心臓死となっています。
つまり,5年間無事に経過できる可能性は25%にすぎません。では,すぐに手術を行うべきでしょうか。
 
現行では症状がなければ保存的治療
現行のガイドラインでは,単独ASの手術適応は自覚症状の出現が原則です。
症状のない症例では心機能低下や各種検査の異常など特別な条件が伴わないと手術は勧められません()。
保存的治療を推奨する根拠として,突然死の頻度が低く,生存率も悪くないことが挙げられています。
無症候性ASの突然死の頻度は確かに低く,9件の前向き臨床試験の集計でも,1年当たり0.8%程度と報告されています(Heart 2011; 97: 253)。
 
しかし,生存率に関しては最近の報告では必ずしも良好ではなく,手術治療に比べ,保存的治療は遠隔期死亡率が高いとされています。
前述のPellikkaらは,無症候性の重度ASの遠隔期生存率を見ていますが,保存的治療群と比べて手術治療群の方が生存率は良好でした(図1)。
さらにKangらは前向き追跡調査を行い,早期手術の有用性を報告しています(6年死亡率:手術群2%,保存的治療群32%,Circulation 2010; 121: 1502)。
 
図表
 
安全性高く高齢者も積極的に手術可能
大動脈弁置換術は,比較的安全性が高い手術と考えられています。
入院死亡率は低く,国内データでは2.84%です(2008年度日本胸部外科学会調査)。
遠隔期生存率も1年目は94.2%,3年目は89.3 %と良好でした〔ローマ多施設臨床レジストリー,J Thorac Cardiovasc SurgJTCS)2011; 141: 940〕。
特に症状の軽い症例に限定すると,遠隔期生存率は一般人口と同等と報告されています。
 
大動脈弁置換術では,高齢者の手術も決して珍しくありません。
米国では,大動脈弁置換術を受ける患者の5人に1人が80歳代というのが現状です。
また,80歳代の手術死亡率は4.7%です(JTCS 2009; 137: 82)。
前述のローマのデータでは,高齢者の術後生存率は同年代の一般人口とほぼ同等とされています。
このように80歳代でも手術は決して禁忌ではなく,若年者同様に手術の恩恵は十分に享受できることが示されています。
 
人工弁の選択は何を根拠に選ぶのか
手術は人工弁を使用しますが,人工弁には機械弁と生体弁の2種類があります。
何を基準に選べばよいのでしょうか。
機械弁は耐久性に優れ,弁が壊れる(構造的弁劣化)可能性はほとんどありません。
ただ,抗血栓性が悪く,血栓予防のためにワルファリンによる抗凝固療法を生涯にわたって行う必要がありま す。
一方,生体弁は抗血栓性に優れ,ほかにリスクがなければ抗凝固薬を服用する必要はありません。
しかし,耐久性に制限があり,弁が劣化すると再手術が必 要となります。
 
では,生体弁は何年持つのでしょうか。
その耐久性は手術時年齢に左右されます(図2)。
術後15~20年で壊れる確率は,40歳で約60%,70歳では10%程度です。


図表
 
2種類の人工弁に治療成績に差はあるのでしょうか。
最新のランダム化比較試験(RCT)(JACC 2009; 54: 1862)では,生存率と塞栓症には差は見られませんでした。
しかし,機械弁は出血合併症が多く,生体弁は再手術が多く見られました。
Van Geldorpらは,どちらの人工弁を選択すれば合併症は起こりにくいのか,一生涯の発生頻度を年齢ごとに算出し,合併症が少ないのは,60歳以下では機械弁,60歳以上では生体弁であることを示しました(図3)。
ただし,再手術の死亡率7.3%に比べ,出血合併症の致命率は22%で,合併症としては出血合併症の方がより重篤だと報告しています。
 
図表
 
ガイドラインでは,65歳以上で生体弁,それ未満で機械弁を推奨しています。
ただ,「年齢は大事な要素であるが,患者の嗜好も十分考慮すべき」としています。
生涯にわたる抗凝固療法を受け入れるのか,将来的な再手術の必要性を受け入れるのかを十分に検討した上で,人工弁を選択することが望ましいとしています。
 
 

ASは高齢者に多く,進行性で,生命予後が悪い疾患ですが,手術で劇的に改善します。
しかし,現実には多くの高齢者で手術は敬遠されています。
最近の欧州の多施設研究では,手術適応であっても,75歳以上で手術を受けた患者は7割しかいなかったとされています。
実際には高齢でも手術は十分可能で, 治療成績も良好なので,より積極的な手術の施行が望まれます。
また,より高リスクな症例でも欧米では経カテーテル的大動脈弁植え込み術(TAVI)が普及し,RCTで有用性が確認されています。
わが国では治験中ですが,今後はTAVI導入と外科治療のさらなる適用によって,ASの治療成績がますます向上す ると期待されます。
 
出典 Medical Tribune 2011.8.25
版権 メディカル・トリビューン社

 
<AS 関連サイト>
[TOPICS from EUROPE]大動脈弁狭窄症に炎症が関連
■大動脈弁狭窄症には石灰化や細胞外基質リモデリングのほか,炎症も関連している可能性が示唆されている。
■大動脈弁狭窄症の現行の治療法は,狭窄を来した大動脈弁の外科的置換術であるが,進行を遅延させるための薬剤開発を目指した研究も行われている。
■動脈硬化と大動脈弁狭窄との間には類似性が認められるが,動脈硬化の予防効果がある脂質異常症治療薬のスタチン薬に大動脈弁石灰化の進展を抑制する効果は示されていない。

「低侵襲化の波押し寄せる」第6回国際心臓弁膜症学会印象記  
■PARTNER A試験は,手術リスクの極めて高い症例に対してTAVIと従来の大動脈弁置換手術を比較したランダム化比較試験(RCT)である。
全体の治療成績は両治療の間に大きな差は見られなかったが,ここでは手術に比べてTAVIの脳合併症がやや多いことが問題とされていた。
 N Engl J Med2011: 364; 2187-2197
■今後のカテーテル治療の展開についてもレクチャーがあった。
生体弁が劣化した際の再手術としてTAVIを行うバルブ・イン・バルブの治療成績も紹介された。
この治療が普及すれば生体弁の適応の若年化にさらなる拍車がかかるであろう。
■自己組織再生人工弁(Tissue engineered valve)についても非常に多くの発表があった。
現在用いられている生体弁の最大の弱点はその耐久性にある。生体弁劣化の原因として,異種生物の抗原性を取り除く化学処理のために遠隔期の石灰化が生じることや,基本的に死んでしまった組織であるため新陳代謝が行われないことが以前から指摘されてきた。
■一方で,自己組織再生人工弁はまさに“自らの生きた人工弁”であるため,これらの問題点をすべて克服可能な“未来の人工弁”として非常に期待されている
 
[循環器疾患版]Focus/TAVI導入で広がる大動脈弁狭窄症の治療選択
■手術適応のない重症大動脈弁狭窄症患者に対する低侵襲治療として登場した経カテーテル的大動脈弁植え込み術(TAVI)の導入が急速に広がっている。

欧州 では2007年にTAVI用人工弁が販売承認を取得。
以来年間数千例に施行されており,米国では食品医薬品局(FDA)の審査が進行中で,中国でも臨床試験が始まった。
わが国でも臨床試験の患者登録が終了し,2013年内の認可取得を目指した動きが着々と進められている。
■大動脈弁置換術(AVR)の手術適応はガイドラインで定められているが,狭窄は弁口面積で年0.1cm2程度進行していくため,手術に踏み切るタイミングは難しい判断となる。

 
 
■無症状であっても高齢で重症狭窄がある患者では狭窄の進行と手術リスクを説明して早めの手術を勧める施設が多いのが現状だ。
■AVRの手術死亡率はわが国では高くて5%程度,施設によっては1~2%と,心臓手術の中では決して高くない。ただ,開胸して人工心肺装置を長時間稼働させる手術になるため侵襲が大きく,適応がない患者も少なくない。

■外科から見れば成功率の高い手術であるが,そもそも外科へ紹介されてくる患者は大動脈弁狭窄症の5~6割で,本当の重症患者には内科も外科もなすすべがないのがこの疾患だった
■欧米では症状を伴う大動脈弁狭窄症患者1,058例を対象として人工弁置換術のリスクを評価するPARTNER試験が2007年に開始された。
使用デバイスはEdwards SAPIEN heart valve system。
コホートA(700例)では高リスクながら手術可能な患者を対象にTAVIとAVRの術後1年死亡率を比較,コホートB(358例)では手術不可の患者を対象にTAVIと従来の保存的治療を比較する2本立てのランダム化比較試験だ。
■欧米では症状を伴う大動脈弁狭窄症患者1,058例を対象として人工弁置換術のリスクを評価するPARTNER試験が2007年に開始された。
使用デバイ スはEdwards SAPIEN heart valve system。コホートA(700例)では高リスクながら手術可能な患者を対象にTAVIとAVRの術後1年死亡率を比較,コホートB(358例)では手 術不可の患者を対象にTAVIと従来の保存的治療を比較する2本立てのランダム化比較試験だ。
 
■今年4月には米国心臓病学会(ACC)でコホートAの結果が発表され,TAVI群の1年後総死亡率は24.2%と,AVR群の26.8%に比べ非劣性 (P=0.44)であることが明らかにされた。
ただし,重度血管合併症と脳神経イベントの発生率はTAVI群で有意に高く,重度脳卒中の発生も高くなる傾 向が認められた
■現在の状況で考えられるTAVIの適応として,
(1)手術リスクが非常に高いか不適応
(2)80歳以上の後期高齢者
(3)合併症がありLogistic EuroSCOREで20%程度の手術リスクのある患者
―の3点を挙げられる。
■60歳前後の比較的若い患者ならば,本人にTAVIの希望があっても,人工弁より耐久性の高い機械弁の方が望ましい。
ただし,年齢が若くても弁の状態が悪かったり,一度手術で置換した生体弁が破損して再留置しなければならないといった場合にはTAVIを用いることも考えられる。
 
■TAVIでは術中緊急手術になるケースが1~2%,手技に成功しても術後30日以内の死亡率は5%近くある。
■現在TAVIで用いられる人工弁では,留置した弁のすき間にわずかながら逆流が残存する。AVRではそうした逆流は残らない。
高齢の重症患者であれば TAVIで残る逆流は許容範囲といえるが,比較的若く手術適応がある患者ではAVRを選択すべきだ。
低侵襲という理由だけで低リスク患者にTAVIを施行することは決して行うべきではない
 
<番外編>
新着の「日本心臓病学会誌・第59回日本心臓病学会学術集会抄録集 神戸 2011.9.23-25」にも 関連発表の抄録が載っていました。
コントロバーシー  重症無症候性弁膜症は早期に手術すべきか P189-190
大動脈弁狭窄症患者における血小板粘着異常と術後変化
P273
大動脈弁狭窄症患者の左室肥大を決定する因子についての検討 P294
先天性2尖弁による大動脈弁狭窄症の組織学的検討:加齢変性に伴う3尖弁の大動脈弁狭窄症との比較 P295
 
 
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高コレステロール血症の診療では常にFHを念頭に
子供のころから,高いLDL-CにさらされるFHでは,動脈硬化の進展が速い。
事実,FH患者の60%は心筋梗塞で死亡しているが,これは一般集団の10倍にも上る。
<私的コメント>
逆は真ならず、で脂質異常症のない人で心筋梗塞を発症する方も数多くいます。
心筋梗塞発症者はいわば「ヘテロ」な集団です。
こうしたリスクを減らすには,早期診断と適切な治療が大事だが,対応が後手に回っているケースも少なくない。
どこに問題があるのか。

家族歴ありでTC 230mg/dL以上ならFHを疑う
野原准教授によると,同講座ではこれまで41例のホモ型FH,2,000例以上のヘテロ型FHを診療し,データを蓄積してきた。
それによると,ホモ型FHでは既に10例が死亡,うち9例が突然死などの心臓死で,平均死亡年齢は33歳だったが,死亡例の多くはLDLアフェレーシスが開発される以前の症例で,アフェレーシス導入で予後は大幅に改善している。
一方,スタチン発売以前のヘテロ型FHの平均死亡年齢は男性60歳,女性70歳だが若年での死亡も珍しくなく,死因の約7割を冠動脈硬化症が占めた。
また,ヘテロ型FHで心筋梗塞を起こした症例を調べると,男性では30歳から,女性では50歳から直線的に増加していた図2)。

図表
 
これらの分析から,ホモ型FHはもちろんのこと,ヘテロ型FHも虚血性心疾患のリスクが高く,適切な脂質低下療法を行わないと,予後が著しく不良になるという実態があらためて浮かび上がる。
 
FHは,高コレステロール血症,黄色腫,家族歴などから診断する。
しかし,年齢が若いと黄色腫が認められないことが多く,家族にFHがいるかどうか知らない人もいる。
最も頼りになるのはコレステロール値だが,同大学グループが遺伝子診断と家族調査から割り出したところ,健康人の平均TCは180mg/dL だが,ヘテロ型FHでは340mg/dL,ホモ型FHでは700mg/dLで,分布図で見ると正常と高コレステロール血症の境界は230mg/dL図3),LDL-C値では160mg/dLだった。
この成績を踏まえて,同准教授は「TC 200mg/dL台の後半は当然として,家族歴がある場合TCが230mg/dL以上ならヘテロ型FHを疑ってみる必要がある」とアドバイスする。

図表
 
 
黄色腫や家族歴で診断できないが,FHが強く疑われた症例については,可能なら遺伝子診断を行い,動脈硬化を評価し,適切な治療を開始するのが望ましい。
しかし現実には,一般の高コレステロール血症として治療されているケースも少なくない。
ただ,FHは基礎コレステロール値が高いため,通常の薬物治療では十分低下せず,不十分な治療のまま経過していることが多い。
海外ではFHは2割程度しか診断されておらず,適切に治療されているのはさらにその一部とされており,わが国でも状況はさほど変わらないと考えられる。
 
FHは虚血性心疾患を引き起こす危険度が高い。
同大グループのデータでも,40歳以下で心筋梗塞・虚血性心疾患を発症した患者のうちFHは 70%,65歳以下でも25%を占めていた。
同准教授は「高コレステロール血症の診療では常にFHを念頭に置くことが大事。TCが異常に高ければFHを疑うそれが早期診断,早期治療につながる」と強調する。

新しい遺伝子検査システムを外部に開放
ところで,FHはLDL受容体の遺伝子異常によって起こる疾患で,FHが疑われる患者では遺伝子診断が有用だ。
しかし,一般医が活用するにはハー ドルが高く,一般の検査受託会社では高頻度の既知のLDL受容体遺伝子変異しか検査できないという問題があった。
そこで,同講座のFH遺伝子ラボでは最 近,高解像度融解曲線分析(HRM)という新しい遺伝子解析技術を用いた迅速な検査システムを開発した。
新規変異を含めLDL受容体全域の遺伝子異常を検出できるのが特徴で,診断レベルの精度は従来の機器に勝る。
 
そして,これを研究用としてだけでなく外部にも開放し,一般医からの依頼にも応えるようにした。
こうした試みは全国でも初めてで,野原准教授は 「専門施設に限られていたFHの遺伝子診断を,臨床レベルにも広く普及させていくのが狙い。
FHを疑い,遺伝子診断の必要性を感じた場合には,遠慮なくラボに検体を送ってほしい」と話す。
 
家族にも積極的な介入を
さて,FHの診断面でもう1つの問題は,優性遺伝性疾患で早期治療開始が有効であるにもかかわらず,家族調査が十分行われていないことだ。
ある患者がFHと診断された場合,両親や兄弟,子供にも50%の確率でFHの可能性がある。
ところが,臨床の現場では追及が十分になされていない。
 
野原准教授は最近,次のような症例を経験している(図4)。
患者は42歳,仕事中に心筋梗塞を発症し,心停止状態で搬送された。
TC 327mg/dL,LDL-C 254mg/dLと高く,FHと診断。
冠動脈バイパス手術(CABG)で危機を脱した。
さらに家族調査を進めたところ,66歳の母親と34歳の弟もFHであった。
弟も既に高度な冠動脈硬化が進んでおりCABGを行い,致死的なイベント発症を未然に防ぐことができた。
この兄弟は以前から高コレステロール血症を指摘されていたが,適切な治療を受けていなかった。

図表
 
家族の若年死を予防するため,FHでは家族調査が欠かせない。
冠動脈硬化症が進展する以前に適切に治療開始するためには,早期診断が特に大事だ。
「家族調査といっても,最初はTC,LDL-Cの測定や黄色腫の有無の診察で多くの場合は十分。診療に当たる医療従事者はFHの特質を理解し,患者本人だけでなく,家族への積極的な介入も行ってほしい」と同准教授。
 
一方,治療面での課題は,FHとして十分な治療が実施されていない患者が多いことだ。
FHではスタチンの増量や他剤の併用などが欠かせない。しかし,一般医レベルでは,副作用の懸念から効果不十分であっても,最大量の薬物療法をちゅうちょするケースもある。
同准教授は「副作用に注意を払うことは当然」としながらも「必要であればスタチンを最大量使用し,併用療法も駆使して,GLで示されたLDL-C 100~120mg/dLを目標に,強力に治療することが重要,専門医にも相談を」と話している。
金沢FH遺伝子ラボE-mail:fhclinic@med.kanazawa-u.ac.jp(経費実費は負担となる。メール連絡後に詳細な説明)

FHと遺伝子異常
血液中のLDLはLDL受容体に結合して細胞内に取り込まれ,細胞膜やステロイドホルモン,胆汁酸の原料として使われる。
しかし,LDL受容体が少ないと,LDLが細胞内に入っていけず血液中にあふれ,高LDL血症,高コレステロール血症を引き起こす。
FHは,このLDL受容体が遺伝的に減少している疾患で,ヘテロ型FHでは健康人の50%に,ホモ型FHでは20%以下に機能低下している
こうしたFHの成因を発見したのは,ゴールドスタインとブラウンだ。
コレステロールと動脈硬化の関係を分子レベルで解明した画期的な研究で,彼らはその業績によって1985年のノーベル医学生理学賞を授与されている。
 
2人が見いだしたLDL受容体は839個のアミノ酸から成る糖蛋白で,LDL受容体遺伝子は第19番染色体に存在する。
この遺伝子のどこかに異常があると,LDL受容体はうまく機能せずFHが発症する。
これまでに明らかになっているLDL受容体の遺伝子異常は1,000種類以上に及ぶ。
日本人で頻度の高い変異としては,エキソン7のC317S,エキソン14のP664L,エキソン17のK790Xなどが報告されている。
ちなみに,金沢大学大学院脂質研究講座が,北陸地域のFH家系を調べた調査では,K790Xが最も多く,30%を占めていた。
 
このようにFHの主因はLDL受容体の遺伝子異常だが,最近,PCSK9,アポB-100などの遺伝子変異もFHの発症に関与することが示唆されている。
PCSK9はLDL受容体蛋白の分解酵素で,これが変異し機能が亢進すると,LDL受容体が減りFHとなる。
また,LDL受容体のリガンドであるアポ B-100の遺伝子変異も,FHの臨床像を示すという。
 
FHは高コレステロール血症と動脈硬化の関係を解き明かすモデル疾患といわれる。
それだけに,分子レベルでの研究の,さらなる進展が期待されるところだ。
出典 Medical Tribune 2011.8.25
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<自遊時間>
古き良き時代(?)の漫才。
こんな漫才、また聴きたいです。
人生ぼやき講座'78
http://www.youtube.com/watch?v=u-0SELjgwo8&feature=related
ぼやきアラカルト
http://www.youtube.com/watch?v=wHQflkzqDx8&NR=1



撮影日 不詳  とある料理店のトイレの中
 
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家族性高コレステロール血症の治療指針と実態
家族性高コレステロール血症(FH)では,先天的なLDL受容体経路にかかわる遺伝子変異によりLDLコレステロール(LDL-C)値が高値となり,若年で狭心症や心筋梗塞を発症するリスクが高い。
FHの発症頻度は,遺伝子変異を片親から受け継ぐ「ヘテロ型」が500人に1人,両方から受け継ぎ正常な LDL受容体が全くない重症な「ホモ型」が100万人に1人とされていた。
しかし,最近の調査でヘテロ型の頻度は従来考えられていたよりも高く,一部の特殊疾患ではないことが分かってきた。
早期にスクリーニングし,適切に治療介入すれば,動脈硬化の進展を遅らせ,虚血性心疾患を予防できるFHにどのような対応が必要か。
本稿ではヘテロ型のFHに焦点を当て,国立循環器病研究センター研究所病態代謝部の斯波真理子特任部長と金沢大学大学院循環器内科(脂質研究講座)の野原淳特任准教授に聞いた。
 
 
早期診断・介入がFHの予後を改善
課題は早期診断への努力

遺伝性で虚血性心疾患を来しやすい脂質異常症には「家族性高コレステロール血症(FH)」「家族性複合型脂質異常症」「家族性Ⅲ型脂質異常症」の3つがあり,その大きな部分を占めるのがFHだ。
わが国のFH患者数は約25万人と推定されており,遺伝性代謝疾患の中では最も数が多く,臨床で遭遇することも珍しくない。
一般の高コレステロール血症に比べ,動脈硬化の進展が速く,虚血性心疾患のリスクも高いだけに,早期診断,早期介入がポイントとなるが,実際には気付かないまま放置されているケースも少なくない。
斯波部長は「スクリーニングの精度を高め,潜在患者をできるだけ早く治療のステージに載せることが大事」と力説する。
 
FHの多くが野放しにされている
ヘテロ型FHの頻度は,米国での調査から500人に1人と考えられてきた。
しかし最近,金沢大学のグループが北陸地方での遺伝子変異の頻度から,200人に1人,LDL受容体変異に限っても300人に1人という推測を報告している。
地域差があるためこれをすぐに日本全体に当てはめることはできないものの,「それに近い頻度で患者が存在する」と受け止める研究者は多い。
斯波部長も「FHは考えられている以上に多く,200人に1人は妥当な線」と みる。
 
しかし,これだけ頻度が高いにもかかわらず,実際にFHと診断され,治療を受けている患者は一部にすぎない。リスクを抱える患者の多くが,未治療のまま見過ごされていることを意味する。
同部長は「現場レベルで初動のスクリーニングが機能していないことが問題」とし,その理由として,特殊な遺伝性疾患というFHのイメージがぬぐい切れていないことや,診断の土台となるガイドライン(GL)が,専門医を対象にしており,一般医向けになっていないことなどを挙げる。
<私的コメント>
ヘテロ型FHが200人に1人という発生頻度は、われわれ循環器医は是非頭に入れておかなくてはいけない数字です。
なぜならどの先生方も最低1人は患者さんとしている(筈) の確率だからです。
 
簡易スクリーニング法を考案
現在の成人FHの診断基準は,原発性高脂血症調査研究班が20年以上前に作成したもので,「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2007年版」にも収録されている。
一般医もスクリーニングに利用できるような診断基準の見直しが進められており,試案(表1)が公表されている。具体的には,
(1)LDL-C値が180mg/dL以上
(2)高LDL-C血症の身体症状(皮膚結節性黄色腫,腱黄色腫)
(3)家族歴
—のうち,2つが合致すればFHと診断するというシンプルなものであり,LDL受容体検査を外すことで,診断のハードルを低くした。
FH診療ガイドライン作成委員会ではこれをたたき台に 関係者の意見を聞き,動脈硬化性疾患予防ガイドライン2012年版に“簡易法”として掲載する予定だ。
同委員会のメンバーの1人でもある斯波部長は「簡易法が普及することでスクリーニングの現状が大きく変わってくる。それによって多くの潜在患者が見いだされ,予後改善に結び付くことを期待したい」と語る。
<私的コメント>
この試案からはLDL-C値が180mg/dL以上であればFHと診断してよい、ということになりそうです。
何故なら家族歴はFHでなくともまずはある筈だからです。
 
 

 
一方,小児のFHについても,「LDL-C 140mg/dL以上」,「家族歴」などで診断する基準案が検討されている。
心理的な負担が成長に悪影響を及ぼすとして,小児の遺伝性疾患を幼いうちに決定することには否定的な意見もある。
しかし,FHの場合,早めに診断して好ましい生活習慣を身に付ければ,成人後の虚血性心疾患のリスクを大幅に減らすこ とができる。
同部長は「FH家系であることがはっきりしているケースでは,学童期にFHかどうかをチェックするのが望ましい」とする。
 
スタチン登場でFHの予後は劇的に変わった
FHの治療は一般の高コレステロール血症と同様,食事,運動が基本となる。
しかし,FHの場合,生活習慣の是正だけでLDL-C値を安全域まで下げることは難しいため,薬剤の投与が欠かせない。
その際の第一選択は,いうまでもなくスタチンだ。
ヘテロ型FHの予後は,スタチンの登場で劇的に変わった といわれる。
 
エビデンスが集積されてきているが,斯波部長が,同センター受診歴のあるヘテロ型329例のスタチンの効果を調べたところ,スタチン未治療群の虚血性心疾患の発症年齢が47.6歳だったのに対し,スタチン治療群では58.8歳と,発症が10年以上も遅くなっていた。
また,最初のスタチンであるブラバスタチンが登場した1989年10月以前と以降で比較すると,89年以降に冠動脈疾患を起こした群は,89年以前の群に比べ,男女とも年齢が高齢に傾い ていた(図1)。
また,2008年にオランダから報告されたスタディでも,スタチン使用群では未使用群に比べて心血管疾患リスクが約80%低下したことが明らかにされている。
<私的コメント>

先生方は(高TG血症ではなく) 高コレステロール血症の食事や運動療法をどのようにしてみえますか?
スタチンという強力な武器を得た現在、薬剤療法のみでHDLーC値は別としてLDL−C値のコントロールは可能となっています。
食事由来のコレステロールは変性コレステロールが主体であり、食事療法は基本であるとおっしゃる先生もおみえかも知れません。
また、MetSやDMの合併のある高コレステロール血症患者への食事指導の重要性は承知しているつもりです。
私は、スタチン、フィブラート、エゼチミブやEPAなどで十分 コントロールされている(MetSやDMなど合併症のない)患者さんには食事指導や運動療法の指導は正直言ってほとんどしていません。
これはいけないことでしょうか?
スタチンでコントロールされている患者さんへの(物事の順序は逆ですが)食事・運動指導追加(?)の有無といった、とんでもない大規模臨床試験はないんでしょうか?
ここで思い出すのは、随分前のことになりますが、 「薬剤でコントロールされた高尿酸血症の患者に食事療法は必要か?」という命題で議論されたことがありました。
多くの専門医は「食事療法の継続は必要」と 答えました。
そんな中、高尿酸血症の大御所のM教授だけは「尿酸値がコントロールされている限り食事療法は不要」 と答えられました。
この粋な発言はとても印象的でした。

 
 
こうした成績を踏まえて,同部長は「FHと診断が付いたら,食事,運動療法と同時に,スタチン,特にストロングスタチンの服用を始めるのがコンセンサス。また,作用機序の異なる薬剤と併用するとLDL-C値の低下効果がさらに高まることもある」と説明する。
 
もっとも,冠危険因子はLDL-Cの高値だけではない。
喫煙,糖尿病,高血圧などもリスクを高めるだけに,これらの厳格な管理も重要となる。
 
では,FH患者の管理目標をどこに置けばいいのか。
GLの試案では,リスクが0~1個の場合に「LDL-C 120mg/dL」,2つ以上なら「100mg/dL」という基準を打ち出している(表2)。
 
 
 
効果不十分ならアフェレーシスも選択肢に
ヘテロ型FHの多くは,薬物療法で対応が可能だ。
しかし,それでもコントロール不良ならアフェレーシス(血漿交換療法)も選択肢となる。
体外循環で血漿中のLDL-Cを取り除く方法で,動脈硬化の進展阻止や改善が期待できる。対象となるのは,(1)薬を使用しても総コレステロール(TC)250mg/dL以下にならない
(2)明らかな冠動脈硬化を有する—症例で健康保険の適用となる。
一方,ホモ型FHは薬剤だけでは治療が難しく,アフェレーシスが絶対適応となる。
開始時期は4~6歳ぐらいが目安。
しかし,開始が遅くなるほど予後が悪化するため「できるだけ早期に治療を始めるべき」と斯波部長は話している。
 
出典 Medical Tribune 2011.8.25
版権 メディカル・トリビューン社

 
 
2011.8.13撮影 山梨県・笛吹市の果樹園にて
 
 
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Circulation Journal 2011.No.8の注目論文」というサブタイトルがついた、低リスクのAMI後患者へのβ遮断薬の効果を検討した論文の紹介記事で勉強しました。
東北大学循環器内科・下川宏明教授が選出(Pick Up)Circulation Journalの編集長(Chief Editor )をされてみえます。 された論文ですが、先生方もご存知のように下川教授は
数年前に、教授の講演を拝聴する機会があり、その際の懇親会で名刺をいただきました。
肩書きに編集長と書かれてあったのを見て、恥ずかしながらその時、初めて知りました。
 
低リスク患者でも予後改善の可能性示す
AMI患者へのβ遮断薬の効果は欧米から報告されていますが,PCI導入前のものでした。
今回,PCIが成功した低リスク患者でも投与すべきという示唆が国内で得られました。
薬剤間比較も興味深く,今後の参考になる研究論文です。
 
AMI治療進化の陰で位置付けあいまいなβ遮断薬
経皮的冠動脈インターベンション(PCI)や冠動脈バイパス術(CABG)など血行再建術の導入やデバイスの進化,さらにレニンアンジオテンシン系 (RAS)阻害薬の有用性が証明され,急性心筋梗塞(AMI)の治療は1990年代以降急速に発展し,救命率が上昇してきている。
その一方で,1980年 代にはAMI治療の主役でもあったβ遮断薬の位置付けがあいまいとなった。
 
冠血行再建術が成功せずに再環流しなかった場合や,左室駆出率(LVEF)が低い高リスクAMI患者に対しては,β遮断薬の有用性を示す臨床試験結果があるが,大規模な前向き試験のエビデンスがなく,β遮断薬を使用すべきなのか,それともRAS阻害薬の増量で血圧が安定していればβ遮断薬は不要なのか, 治療指針は確立していない。
米国心臓協会(AHA)/米国心臓学会(ACC)ガイドラインにおいても,AMI高リスク群でのβ遮断薬はクラスⅠであるが,AMI低リスク群での推奨レベルはⅡaとなっている。
 
そこで今回,東京医科歯科大学医歯学融合教育支援センターの小西正則氏ら同大学循環器内科のグループはAMI患者にβ遮断薬を投与すべきかどうかを単施設による後ろ向き調査として解析し,Circulation Journal(2011; 75: 1982-1991)に報告した。
この中で,低リスク患者に対してもβ遮断薬が予後改善に有効な可能性を示した。
 

連続251例の後ろ向き解析でβ遮断薬が効果
研究の対象は2004年9月以降2009年9月までに同大学に搬送されたAMI患者382例のうち,
(1)AMI後のPCI施行
(2)β遮断薬・RAS 阻害薬の服用歴なし
(3)透析未導入
(4)PCI後のRAS阻害薬導入
—の条件を満たした251例。
β遮断薬投与群171人とβ遮断薬非投与群80例に割り付けられた。
両群の重症度や合併症頻度,投薬状況に有意差はなかった。
冠血行再建術歴は両群とも約6%で,心不全が5%前後,虚血性心疾患は約6%だった。
RAS阻害薬のほかにスタチンとアスピリンはほぼ全例が服用していた。
なお,RAS阻害薬の内訳としては,ACE阻害薬が85%,アンジオテンシンⅡ 受容体拮抗薬(ARB)が15%だった。

 
その結果,12カ月後の死亡や心疾患イベント非発生率はβ遮断薬投与群が4.1%で,非投与群13.8%と比べて有意に低下した()。
血圧変化率は両群間で差はなく,両群とも収縮期血圧で15mmHg程度低下したが,B型ナトリウム利尿ペプチド(BNP)やマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)-2,MMP-9はβ遮断薬群で有意に低下した。
 

図表
 
低リスク患者も全例に投与すべきか,どのβ遮断薬をどの程度投与するかを問題提起
小西氏らはさらに,LVEF 40%以下,血行再建術の不成功,心室細動の合併のいずれかを有する患者を高リスク群,これらのいずれにも該当しない患者は低リスク群として,それぞれの 群でβ遮断薬の効果を見た。
その結果,高リスク群だけでなく低リスク群(β遮断薬非投与群47例,β遮断薬投与群103例)においても,β遮断薬投与群ではβ遮断薬非投与群と比べて心疾患イベントの有意な発生率低下が認められた(19.1%対7.8%,)。

 
報告した同氏は,単施設の後ろ向き解析であるため選択バイアスの可能性が否定できない点などを検討の限界としている。
また,対象者のうち冠血行再建術を受けた患者や心不全,虚血性心疾患の既往者は数%と少なくなっており,AMIの一般集団として十分とは言い切れない点も考慮する必要があるとしている。
その上で,「低リスクAMI患者に対してもβ遮断薬の必要性を提起する結果になった。多施設で前向きな研究を計画する際のたたき台となるのではないか」と次の展開に期待を寄せている。
 
また,β遮断薬の種類や用量についても新たな知見が提示された。
β遮断薬は2種類投与されていたが,カルベジロールが91例に,ビソプロロールが80例に投与されており,両群の生存率,心疾患イベント非発生率に差はなく等しく有効だった。
また,両群とも血圧や心拍数,LVEFの有意な低下が認められているが,LVEFやBNPについてはカルベジロール投与群の方がビソプロロール群よりも有意に改善していた。
同氏は「試験期間における最小用量は,カルベジロールが現在使用されているのと同程度だったのに対してビソプロロールは倍量以上だった。実際に投与する際には割線を利用して最小用量の半量から開始し, 徐々に増量する場合もあるが,ビソプロロールの方が低用量での調整が難しかった点が影響しているのかもしれない」と考察している。
 
AMIの救命率は向上したとはいえ十分ではなく,今回の研究でもβ遮断薬非投与群では1割以上が1年以内に死亡している。
β遮断薬は用量調整や副作用の 管理が難しい薬剤ではあるが,その後の心疾患イベントや死亡抑制効果につながるのであれば臨床的意義は非常に大きいといえる。
 
出典 Medical Tribune 2011.8.25
版権 メディカル・トリビューン社
 
 
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(一般の方または患者さん向き) 
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http://wellfrog4.exblog.jp/
井蛙内科/開業医診療録(3)~2009.10.15
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ABPMによる血圧測定は心血管・腎リスク予測に有効
ナポリ第2大学(伊ナポリ)のRoberto Minutolo博士らは「自由行動下血圧測定(ABPM)による血圧データは,透析を必要としない慢性腎臓病(CKD)患者の末期腎不全(ESRD),死亡,入院を要する心血管イベントなどのリスクを診療室血圧測定よりも正確に予測できる」との研究結果をArchives of Internal Medicine(2011; 171: 1090-1098)に発表した。
 

夜間DBP≧70mmHgは心血管・腎リスクを予測
ABPM装置は衣服の下に装着して使用し,24時間自動で繰り返し血圧を測定することが可能だ。
収集されたデータは病院で分析される。
ABPMは,来院するだけで血圧が上昇する“白衣高血圧”の軽減に有効とされている。
この現象はCKD患者で特に多い。
さらに,身体的・精神的ストレスなどから解放される夜間の血圧は,患者の実際の血圧と心血管リスクをよく反映することも示されている。
 
そこでMinutolo博士らは今回,イタリアの4つの腎臓病クリニックでルーチンに血圧検査を受けているCKD患者を対象に,ABPM法により測定した血圧(ABPM血圧)と診察室で測定した血圧(診察室血圧)の役割を比較する前向きコホート研究を実施した。
 
2003~05年に436例を登録し,朝の来院時に3回血圧を測定後,ABPM装置を装着。
日中は15分ごと,夜間は30分ごとに測定し,翌日の来院時に診察室でさらに3回測定した。
また,測定データの解釈を助ける手段として,患者にその日の活動について日記を付けてもらった。
その後,重篤な腎イベントと心血管イベントの発現について追跡した。
 
その結果,中央値4.2年の追跡期間中,86例がESRDに至り,69例が死亡した。
また,非致死的な心血管イベントが63件あり,心血管イベントによる死亡は52例だった。
 
腎リスクと心血管リスクは,ABPM法で測定した日中の収縮期血圧(SBP)が135mmHg以上の参加者で最も高かった。
拡張期血圧(DBP)が最高五分位の参加者,夜間SBPが124mmHg以上の参加者でもこれらのリスクは高かった。
さらに,夜間DBP 70mmHg以上は,心血管イベントとESRDの予測因子となることが分かった。
反対に,診察室血圧(SBPとDBP)は心血管イベントも腎イベントも予測しなかった。
今回の研究では,ABPM血圧は,CKD患者における重篤な腎イベントと心血管イベントを予測する上で診察室血圧よりも有益で,その的中率は他の危険因子と独立していることが示された。
 
同博士らは「この高リスク集団を対象に,診察室血圧ではなく,ABPM法による血圧に基づいた介入試験を実施することが早急に求められる」と結論している。

 
心血管・腎リスクは相互に関連
キング保健パートナー・ガイ病院(ロンドン)のDavid Goldsmith博士らは,同誌の付随論評(2011; 171: 1098-1099)で,CKD患者にとって,血圧モニタリングは極めて重要だと強調している。
同博士によると,腎リスクと心血管リスクは相互に関連し,高血圧はそれらに共通する危険因子の1つである。
実際「CKD患者では,透析が必要となるまで 病態が進行して死亡するのと同程度かそれ以上の割合が,心血管疾患が原因で死亡する。透析に至った“生存者”の多くが心血管疾患で死亡する」と説明してい る。
そのため,同博士はABPM法による血圧モニタリングがCKD患者のケアにおいて重要だと指摘。
特に,白衣高血圧の割合が高かったことを考慮すると,ABPM法の重要性はいっそう高まると述べている。
 
出典  MT Pro 2011.8.18
版権 メディカル・トリビューン社

 
<私的コメント>
この論文紹介では、研究対象のCKDのステージ分類別の記載がありません。

以下の関連サイトでは「平均糸球体濾過率は、42.9mL/分 」と記載されています。
しかし、ステージ分類別のリスクやABPMの結果の解析はされているのでしょうか。
「ESRD,死亡,入院を要する心血管イベントなどのリスク」検出にはABPMによる血圧モニタリングが、診療室血圧測定より有用である、というだけの結論のようです。
ステージ別のABPMによるリスク検出能が検討されていれば、もう少し興味深い論文になったのではないでしょうか。
さらには、ABPMによる血圧がCKDのリスク評価が有用ということであれば、CKDの予後は血圧に依存するということになります。
「蛋白尿の有無や程度」と「血圧」では、後者がCKDの予後により大きく関係する、ということも、この論文からはわかりません。
CKDという、特定の集団だからこそこういったABPMの優位性が出たのか、高血圧患者にも同様に、この結論があてはまるのか?
これもわかりません。
 
以前から繰り返し書かせていただきましたが、CKDの概念自体が未だに私にとっては謎です。
体重を考慮しないで、性別と年齢とクレアチン(いずれシスタチンCにとって変わる?)で算出するeGFRも謎です。
(身長を考慮せず腹囲のみで内臓肥満を予測するダメポ健診も同様)
 
<関連サイト>
携帯型24時間血圧モニタリングは腎臓病患者のリスクプロファイリングに有用
http://www.kanematsu-rmn.jp/news/daiichisankyo/news2.php?mode=jpview&num=201106290053526

(今回の論文に関する補足的なものです)
■「この技術を用いれば、夜間に血圧を測定することで、腎臓病の進行リスクと致死的/非致死的心血管事故のリスクが最も高くなる夜間高血圧を有する患者を特定できる。我々の施設では、高血圧を有するCKD患者全員に、年に1度、ABPMを実施している」とDr. Roberto Minutoloは補足した。
■プロスペクティブコホート研究。
■験者の平均年齢は65歳で、42%が女性であり、36%が糖尿病、30%が心血管疾患を発症していた。
平均糸球体濾過率は、42.9mL/分であった。
■日中の収縮期血圧が136~146mmHgの被験者と146mmHg超の被験者では、追跡調査期間中の心血管イベン トの補正後リスクは、それぞれ2.23倍と3.07倍に上昇していた。これら2つの五分位群では、腎死リスクも上昇しており、ハザード比(HR)はそれぞ れ、1.72と1.85であった。
■同様に、日中の拡張期血圧が最高五分位(84mmHg超)であった被験者群では、心血管イベントリスクは2.55倍、腎死リスクは2.67倍に上昇した。
■夜間の収縮期血圧が125~137mmHgである場合は、心血管イベントリスクは2.52倍に上昇しており、夜間の収縮期血圧が137mmHg超の場合、同リスクは4倍に上昇した。腎死に関して両群のHRは、それぞれ1.87と2.54であった。
夜間の拡張期血圧が70~75mmHgまたは75mmHg超の場合は、心血管イベントリスクは、それぞれ2.00倍、2.38倍上昇しており、腎死は、それぞれ1.48倍、1.81倍上昇していた。
■診療所血圧では、収縮期血圧、拡張期血圧のいずれでも心血管イベントも腎イベントも予測されなかった。
■同研究者らは、non-dipperとreverse dipperのサブグループで、両エンドポイントのリスクが有意に上昇することも観察した。
■ABPMを実施するために追加的にかかる時間や手間、費用が正当化される患者群である選択的コホートが存在する。
今回の新規研究により、CKDを有する今回の被験者については、そうした主張がますます説得力のあるも のとなっている。

 
<自遊時間>
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思わず辞書英単語 バースディ (英文医誌+α)
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どくとるMIHIの、何言ってんだか
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減塩の遵守度を確認するのは容易ではない
http://blog.m3.com/reed/20110819/___1_
の続編です。
 
減塩のエビデンスを考える

<2>栄養疫学的な考察とは
ハーバード公衆衛生大学院リサーチフェロー
今村文昭先生
メタ解析や総説などは,研究を集約して1つの結論を導くものではなく,既存のエビデンスの不確定性(ばらつき)や問題点を整理することも目的としている。
コクラン共同計画(Cochrane Collaboration)のグループが発表した減塩の効果に関するメタ解析の論文についても,その目的によるところが大きい。
今回は,メタ解析に含められたそれぞれの研究がどのようなものだったか,特に遵守度(compliance)について述べたい。

 
介入試験において遵守度は,その「有効性」と「効果」の検証で非常に重要な要素である。
今回のメタ解析では7つの臨床試験が解析対象とされた が,7つの研究がそれぞれ遵守度のassessmentを行ったとしている。
しかし,遵守度の検討を行ったということは,遵守度が期待通りだったというわけではない。
例えば,減塩の指導が施されたグループにおいて,対照群と比較して,血圧が有意に下がれば,遵守度が保持されたといってよいのだろうか。
もちろん「ある程度」は認められ全否定することはできないが,実際に期待される遵守度だったか否かは分からない。

 
例えば,塩分摂取量が平均約10gの国民に対し,介入群には野菜・果物の摂取と5g未満の塩分摂取を指導し,対照群には野菜・果物の摂取のみを指導したとする。
そして,1年半後,収縮期血圧が対照群に比べて2mmHg有意に減少していたとする(P<0.01)。
この効果は,「5g未満の塩分摂取を指導した効果」ではあるが,「5g未満の塩分摂取を1年半続けた効果」ではない。
言い換えれば,「効果」を検討したもので「有効性」を検討したものではない。
この「効果」と「有効性」の違いに大きく寄与しているのが遵守の程度である。

 
これらの数字はTrials of Hypertension Prevention(TOHP)と呼ばれる臨床試験で実際に得られたものである。
この臨床試験は1年半の栄養指導の成果を見た後,10年強,両群を追跡し,心血管疾患(CVD)の罹患率および死亡率の違いを検証した。
その結果は今回のメタ解析にも含まれている。
この研究では,24時間蓄尿により塩分の摂取量を推定し(24時間分の尿を取りナトリウムの排出量を測定),遵守度を確認したとされている。
それによる と,1年半の介入試験後で減塩は4.7g未満には及ばず平均6.5gほど,さらにその介入試験を終えた後は,遵守度の確認は質問票への回答(減塩を心がけているかなど)でのみ行われた。

 
TOHPおよびその後に行われたTOHPⅡでは,研究に参加した人数が併せて3,000人ほどであった。
2年ごとに病気が発症したかどうか追跡したと論文の著者らは述べている。
1回質問票を郵送して回収するだけでも数十万円かかり,当然,人件費なども要する。
追跡期間中の生体指標の測定などの遵守度を検証するなど,相当の障壁があることは想像に難くない。
 

「減塩」の研究ではなく「減塩指導」の研究と考えるべき
今回のメタ解析に含められた7つの研究のうち,Changらの研究を除いた6つの研究が,栄養指導による減塩の介入を行っており,被験者の遵守を食事摂取の調査やナトリウム排出量などで確認している。

<私的コメント>

「減塩」の研究ではなく「減塩指導」の研究と考えるべき・・・このタイトルが今回、筆者がいいたいすべてだと私なりに考えました。
 



尿中ナトリウムの濃度は,病態などの個人因子によっても日によってもばらつきがあるため, 必ずしも信頼できるものではない。
その不確定性を考慮しても,すべての試験群において塩分の排出量が減っていることから,対照群に比べてある程度の指導の効果があったことが確認できる。
しかし,その排出量の程度を量的に解釈すれば,期待されるほどの遵守度ではなかったケースがほとんどであることが分かる。
実際には,食事指導を伴う研究の被験者は,減塩の介入試験と知りながら,食事調査,検尿などを行うため(盲検化されていない),遵守度の確認にもバイアス が伴う可能性が考えられる。

このことから,今回のメタ解析は「減塩」の研究ではなく「減塩指導」の研究と考えるべきだろう。
報告されたメタ解析は1つ1つの解析に寄与する研究の数が少ないばかりでなく,1つ1つの研究でも「有効性」を知るには重篤な限界があったことが分かる。
当然ながら,減塩の生物学的な価値を知るメタ解析とはいえない。
そして,あくまで栄養指導のエビデンスであるから,例えばフィンランドやイギリスが実践している食品中の塩分濃度を下げる政策に関して,有効な知見を与えることはない〔2つの異なる総説の1人は,今年(2011年)2月に訪日し,減塩政策に関する講演を行ったDr. MacGregor氏である。

 
減塩指導に対する遵守度を数字で確認すれば,行われたメタ解析から「減塩」の効果が検討されたわけではないことが明白である。
しかしながら,公に発信された情報の多くはあたかも減塩の効果がないことを示すかのようであった。
エビデンスの正しい解釈がなされなかったことに原因があるが,「効果」と 「有効性」の違いについて,抄録に明確に記載するべきだったといえるだろう。
 

台湾のChangらの研究の素晴らしさと問題点
今回のメタ解析に含まれた台湾におけるChangらによる研究は, 退役軍人(Veterans)の過ごす複数の施設のうち,3つのキッチンにある塩を通常のもの,2つのキッチンでは低ナトリウム高カリウムの塩(醤油などの調味料を除く)に替えて追跡研究を行った。
1カ月かけてゆっくり入れ替えていることはイギリスの減塩政策に類似している。
 
この研究デザインの素晴らしいところは,試験対象の施設に滞在している限り,減塩の影響に従わざるをえないという点である。
こうした研究デザインで記憶に新しいのはNew England Journal of Medicineに報告された減量の研究であろう。

イスラエルにおいて研究者と軍隊が協力し合い,軍隊のカフェテリアの食事をランダムに分け,栄養摂取のコントロールを行ったもので,減量の知見に大きく貢献した。
高い遵守度を長期間(2年)保持することができた特異な例である。
視野を広げれば,発展途上国などでも集団レベルで農業政策,ワクチンや栄養素の サプリメントの介入試験など,集団を対象にして臨床試験が古くから実践されている。
ものにもよるが,組織のディレクター,地域のリーダーから協力が得られれば,高い遵守度が期待できる。
 
Changらの研究の問題点の1つは,高い遵守度が期待できるものの,遵守度の確認が試験開始3カ月に限られたものであったことが挙げられる。
試験群において,ナトリウムとクレアチニンの比が15%低下が認められているので,約8.2gの摂取量であれば,約7.0gに減少したと考えることができる。
他の研究と同様,推奨される減塩のレベルからすれば軽度といえる。
これはキッチンに備えた塩以外に,醤油や漬物などの摂取がナトリウムの摂取に寄与していることが影響しているためである。
4年強の追跡で,試験群でCVDの死亡率が有意に低下したが,どれほどの塩分摂取量の低下によるものか分からない。
 
またもう1つの問題点は,減塩の介入として普通の食塩を低ナトリウム高カリウムの塩に置き換えたことも挙げられる。
いうまでもなく減塩はある程度達成されたとはいえ,カリウムの摂取量が増加しているため,減塩の効果なのかカリウムの摂取の効果なのか分かりえない。
減塩の介入試験としては非常に価値のある研究ではあるが,この研究からも減塩の推奨レベルの効果が検証できたとまではいえない。
 
比に頼ったエビデンスの解釈には注意が必要
ところで,近年,塩分の摂取に関する研究で,ナトリウムの摂取とカリウムの摂取の両方に着目し,その比を取って疾患の罹患率との関係を検証する研究が複数,報告されている。
先日のArchives of Internal Medicineの論文もその1つである。

こうした比を計算して解析する方法は,生物統計学の領域では批判の対象となっているが,医学界には浸透していない。
Changらの研究のように,ナトリウムによる影響なのか,カリウムによる影響なのか,判断できないことが批判の1つの理由である。
比に頼ったエビデンス は,ナトリウムの摂取低減に特化した減塩の政策などを考える際には,当然,エビデンスの抽出における弊害となるため,解析,報告,解釈において研究者や読者は気を付けなくてはならない。

栄養学的な側面に着目して,減塩のメタ解析を解釈すれば,遵守の程度や,研究デザインのばらつきから,減塩そのものの医学的なエビデンスは皆無といってよい。
今回の論文の著者らが述べているように,効果的な介入の方法を探る研究,そして実践とその評価が必要といえるだろう。
 
出典 MT Pro  2011.8.16
版権 メディカル・トリビューン社

 

 
<きょうの一曲> J.S.バッハ ゴールドベルグ変奏曲
Glenn Gould Goldberg Variations 1955 & 1981: Var 1
http://www.youtube.com/watch?v=QQk1bQPXbOE&feature=related
 

 
 
 2011.8.13 撮影 果樹園(ブドウ畑) 山梨県笛吹市にて
 


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第43回日本動脈硬化学会(2011年7月15日〜16日 札幌)で発表された「通常用量スタチンに比べて、低用量スタチンとエゼチミブの併用の方がIMTの退縮率が高い」よいう興味深い内容の記事で勉強しました。
LDL-Cの低下率は両者でどうだったのでしょうか。

エゼチミブとIMTに関しては、エゼチミブ単独投与では十分な退縮が得られなかったというENHANCE試験が発表されています。
 
ENHANCE試験をめぐる論争 その1(1/2) - の髄から循環器の世界を ...

ENHANCE試験 - の髄から循環器の世界をのぞく Doctors Blog 医師が ...


ENHANCE 試験をめぐる論争 その2(2/2) - の髄から循環器の世界 ...

 
エゼチミブ・シンバスタチン併用めぐる終わりなき論争 - の髄から ...
 



通常用量スタチンに比べて、低用量スタチンとエゼチミブの併用の方が頸動脈IMTの退縮率が高い
スタチンとエゼチミブの併用によりLDLコレステロール(LDL-C)の良好な管理が可能であることが確認されているが、 動脈硬化の進展に及ぼす影響は明らかではない。
福岡赤十字病院総合診療科の澤山泰典氏らは、低用量のスタチンとエゼチミブの併用による治療で頸動脈内幕中膜複合体肥厚(IMT)が退縮することを明らかにし、札幌市内で7月15日から16日まで開催された日本動脈硬化学会(JAS2011)において報告した。

Bモード超音波法で測定した頸動脈IMTは動脈硬化進展のサロゲートマーカーとされており、スタチンを用いた積極的LDL-C低下療法によりIMTは退縮するという報告がいくつかなされている。

そこで澤山氏らは、低用量スタチンとエゼチミブの併用療法における頸動脈IMTへの影響について通常用量スタチンによる治療と比較検討した。

対象は、低用量(5mg/日)のプラバスタチンを投与しても、LDL-C値が120mg/dL以上の高コレステロール血症患者48人。

これらの患者を、エゼチミブ10mg/日を追加投与する群(エゼチミブ併用群、27人)、あるいはプラバスタチンを通常用量 (10mg/日)に増量する群(通常用量スタチン群、21人)に無作為に割り付け、2年以上(平均2.3年)追跡した結果を解析した。

平均年齢、性別、BMIなど、両群間の患者背景に有意差はなかった。

半数以上の患者で喫煙習慣があり、8割前後が高血圧を、2〜3割が糖尿病を合併し、ほぼ全例が動脈硬化性疾患のハイリスク患者であった。

通常用量スタチン群の総コレステロール(TC)値は、221mg/dLから202mg/dLに、LDL-C値は127mg/dLから113mg/dLに、 動脈硬化性リポ蛋白を反映するnon HDLコレステロール(non HDL-C)値は164mg/dLから140mg/dLに、それぞれ有意に低下した(それぞれ、p=0.0050、p=0.0080、 p=0.0003)。

エゼチミブ併用群では、TC値は236mg/dLから201mg/dLに、LDL-C値は145mg/dLから 114mg/dLに、non HDL-C値は176mg/dLから139mg/dLに、それぞれ有意に低下した(いずれも、p<0.0001)。

これらの血清脂質値の低下度は、通常用量スタチン群に比べて良好だった。

なお、トリグリセリド値、HDLコレステロール値、空腹時血糖値、HbA1c値、インスリン抵抗性指標のHOMA-IR、炎症マーカーのhsCRP値には両群ともに有意な変化は認められなかった。

頸動脈IMTは登録時に比べて両群で退縮したが、エゼチミブ併用群でのみ有意であった(p<0.01)。

また、登録時からの頸動脈IMT変化量(⊿IMT)はエゼチミブ併用群で通常用量スタチン群よりも有意に大きかった(p=0.0142)。

さらに、通常用量スタチン群では、登録時の頸動脈IMTと⊿IMTに有意な相関は認められなかったが、エゼチミブ併用群では登録時のIMTが高い患者ほど⊿IMTは大きかった(p=0.0002)。

これらの結果から澤山氏は、ハイリスクの高コレステロール血症患者では、通常用量のスタチンによる治療よりも、低用量のスタチンとエゼチミブを併用した方が、頸動脈肥厚を改善し、動脈硬化の進展を抑制できると結論した。


出典 NM online 2011.7.18
版権 日経BP社
 
<関連サイト>
エゼチミブ(商品名ゼチーア)

 


2011.8.21 午前9時30分撮影 
「新装なったJR大阪駅構内 」
http://osakastationcity.com/
 
 
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出血性副作用死亡例受け、販売元がブルーレターで注意喚起
抗凝固薬ダビガトラン(商品名プラザキサ、2011年3月発売)を服用し、因果関係を否定できない重篤な出血性副作用を起こした患者が8月11日までに81例報告され、そのうち5例が死亡したことから、製造販売元の日本ベーリンガー インゲルハイムは厚生労働省の指示を受けて安全性速報(ブルーレター)による注意喚起と添付文書の改訂を行った。   
死亡したのは、70歳代男性1人、80歳代女性3人、100歳代女性1人。

うち4人は心房細動のほか、腎障害や心不全など複数の合併症を有していた。
1例目の死亡例(80歳代女性)が報告された6月にも、同社は厚労省の指示を受け、高齢者や腎障害のある患者に対して慎重投与を求める「適正使用のお願い」を配布していた。

今回のブルーレターでは、以下の項目について改めて注意を喚起した。

(1)患者の状態(腎機能、高齢者、消化管出血の既往など)による出血の危険性を考慮し、投与の適否を慎重に判断する。

投与中は出血や貧血などの徴候を十分観察し、これらの徴候が認められた場合には直ちに適切な処置を行う。

(2)患者に対し、出血しやすくなることを説明し、鼻出血、歯肉出血、皮下出血、血尿、血便など異常な出血が認められた場合には直ちに医師に連絡するよう指導する。

(3)投与前は必ず腎機能を確認し、投与中は適宜、腎機能検査を行い、腎機能の悪化が認められた場合には投与の中止や減量を考慮する。

添付文書の改訂に当たっては、警告欄を新たに設け、上記(1)の項目を記載するとともに、「慎重投与」の対象として、「
P-糖蛋白阻害薬[経口剤]を併用している患者」(ダビガトランの血中濃度が上昇する恐れがある)を追記するなどした。

添付文書の相互作用欄には、併用に注意すべきP-糖蛋白阻害薬として、イトラコナゾール(併用禁忌)、ベラパミル、アミオダロン、キニジン、タクロリムス、シクロスポリン、リトナビル、ネルフィナビル、サキナビル、クラリスロマイシンなどが記載されている。

ダビガトランは非弁膜症性の心房細動患者における脳や全身の塞栓症の発症抑制を適応とする国内初の経口直接トロンビン阻害薬であり、ワルファリンと異なり血液凝固モニタリングが不要であるなど使い勝手が良いことから、3月の販売以降、処方数が伸びており、現在の推定使用患者数は約6万4000人。

同薬は腎排泄型の薬剤であるため、腎機能に障害があると薬剤の血中濃度が上昇し、出血性副作用が発生しやすいことは開発段階から分かっており、従来の添付文書においても高齢者や腎障害のある患者に対しては慎重な投与を求めていた。

 
(財)心臓血管研究所所長・付属病院長の山下武志氏は、「ダビガトラン使用と因果関係が否定できない今回の死亡例の内容を見ると、いずれも高齢者であり、高度の腎機能障害例、腎機能不明例を含むだけでなく、年齢とクレアチニン値から腎機能障害を合併していると推定される症例が目立つ。ダビガトランはその 80%を腎排泄に依存する薬物であり、クレアチニンクリアランス30mL/分を下回る患者に投与禁忌であり、30〜50mL/分の患者でも慎重な投与を要すること、特に高齢者はクレアチニン値から感じられる以上にクレアチニンは低下していることを処方する医師は改めて認識する必要がある。例えば、 eGFR(推算糸球体濾過量)という、クレアチニンクリアランスより低めに出る厳しい基準をクレアチニンクリアランス値として用いながら適応を判断することも一つの安全対策になる」と話している。
 
出典 NM online 2011.8.19
版権 日経BP社
 
 
<私的コメント> 2011.8.22 PM11追加
奇しくも今日の昼、B社のMRさんがダビガトランのブルーレターを持って来ました。
死亡例5例について、「全例が慎重投与ないし投与禁忌例に該当する」とのこと。
はたして本当だろうか。
これらの症例を添付文書改定前の文面で深読みする必要がありそうです。
添付文書は薬剤を投与するわれわれ医師にとってはいわばバイブルです。
ドラッグラグの問題が取り沙汰されて来ましたが、ダビガトランに関しては製造認可や薬価収載が早すぎる気がします。
F社の末梢性神経障害性疼痛治療剤リリカ(一般名プレガバリン) についても問題があります。
死亡例が15例もあるのにかかわらず 「バイブル」には「通常、成人には初期用量として1日150mgを2回に分けて経口投与」と記載されています。
この初期量は明らかにオーバードーシスです。
MRさんも「1日50mgを2回に分けて経口投与(25mg×2)」を推奨しています。
「バイブル」通りに投与するととんでみない結果を招きます。
厚労省のお役人さん、早く対処して下さいよ。
 
話は脱線しましたが、ダビガトラン投与患者にaPTT (80秒以内にコントロール?)の検査をして支払基金で、はねられるか認められるかをMRさんに訊きました。
ブルーレターを引っぱり出して 「本剤による出血リスクを正確に評価できる指標は確立されておらず、・・・、本剤投与中は、血液凝固に関する検査のみならず、出血や貧血等の徴候を十分に観察すること。」の部分を指差しました。
二人で読みましたが、 「血液凝固に関する検査」を認めながら「正確に評価できる指標は確立されておらず」という矛盾に満ちた文章にアホらしくなってしまいました。
諸先生方はaPT検査は行われますか?
 
 
 
<自遊時間>
昨日、F社主催の
「富士山シンポジウム 臨床現場からエビデンスを発信する!」(ヒルトン大阪 午前10時〜12時) の講演を聴きに言って来ました。
座長 愛媛大学 檜垣實男 教授
基調講演 琉球大学 植田真一郎 教授
 「臨床研究を成功させる鍵は?」
 
勤務医や開業医なども、日頃の臨床体験で疑問に思ったことを是非臨床研究という形にして欲しい、という内容です。
企業色を余り感じさせない点(但し「第1部 実践者が語る臨床研究」はアムロジピンを持ち上げていました) で好感の持てる講演会でした。
どうしてこのような企画がされたのかは、ちょっと不思議ではありましたが、来年も第2回が行われるようです。


 
 
 

 
 
 
 

2011.8.21撮影 ヒルトン大阪 午前9時40分
 
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以下、新着の日内会誌に掲載された「腎動脈交感神経アブレーション」に関する解説のダイジェストです。
執筆者
名市大 心臓・腎高血圧内科学
 福田英克 木村玄次郎教授
 
 
■治療抵抗性高血圧患者において、腎動脈を介したカテーテルによる腎交感神経を焼却することにより、1年後まで十分な降圧効果が得られることが、最近の臨床治験で明らかになった。
■アブレーションの安全性と長期の降圧効果が確立されれば、軽症高血圧患者にも適応される可能性もある。
■治療抵抗性高血圧の原因は様々であるが、腎交感神経活動の亢進も重要な要因の一つである。

 
腎交感神経活動の亢進が高血圧の発症・維持に寄与するメカニズム
■腎に向かう交感神経系の遠心路は、傍糸球体装置、尿細管、血管床に達している。
■腎交感神経遠心路が刺激されると、傍糸球体装置の顆粒細胞では、β1アドレナリン受容体が刺激されることにより、レニン分泌が促進される。
尿細管細胞ではα1Bアドレナリン受容体を介して尿細管レベルでNa再吸収が促進される。
■腎動脈ではα1A受容体を介し腎動脈が収縮し腎血流は低下する。
■腎の求心性交感神経系は、腎実質障害または腎内虚血により刺激され、中枢性の交感神経系が活性化される。
その結果、腎への遠心路の交感神経系のみならず心臓や全身の血管床での交感神経系活性が高まる。
遠心性交感神経活動の亢進は、レニン分泌の上昇、尿細管におけるNa再吸収、腎血流の低下を起こす。
■腎実質障害または腎血流低下による腎内虚血は求心性交感神経活動を亢進させることにより、交感神経中枢を緊張させる。
交感神経中枢の緊張は、遠心性交感神経のみならず、心臓および細動脈を支配する交感神経の活動も亢進させるため、心拍出量の増大と細動脈収縮による末梢血管抵抗のさらなる増大により、血圧は上昇する。
交感神経と交感神経中枢は互いに影響しあうことにより高血圧の発症・維持に関係する。
 
カテーテルによる腎交感神経焼却術(腎交感神経アブレーション)
■起こりうる合併症
腎動脈解離,大腿動脈穿刺部の仮性動脈瘤

 
 

 
 
 
出典 日内会誌 100:2289〜2294,2011
版権 日本内科学会
 
<関連サイト>
高血圧・心不全と交感神経系: 病態としての調節異常から新たな治療戦略へ

腎交感神経アブレーションが治療抵抗性高血圧症例に有効(2010.11.29掲載)

ヘルスデージャパン - 腎交感神経アブレーションが治療抵抗性高血圧 ...

治療抵抗性高血圧に対する腎除神経
 

 

  
 2011.8.13撮影 蓼科の朝 標高1650m 
夏の雲ももうじき終わりです。

 
 
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