< 循環器疾患と2型糖尿病 その1(1/2)... |
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異所性脂質蓄積という概念 日本人ではBMIが30以上の肥満者の割合が欧米に比べて低いにもかかわらず,糖尿病の有病率は欧米とほぼ同程度であることが報告されている。近年では予防医学的な概念からメタボリックシンドロームが登場し,特に日本人では,軽度肥満の段階から内臓脂肪の軽減を目指した生活習慣の是正と医学的介入が必要とされている。 そこで最近,益崎教授らが注目しているのが「異所性脂質蓄積(図2)」という概念だ。人間には,有事に備えてエネルギーを体内に保存する機能が備わっているが,日本を含むアジア地域の肥満者では,欧米人に比べて皮下脂肪組織の蓄積能力が弱い。そのため,軽度肥満の状態から,内臓脂肪組織や肝臓,骨格筋,膵臓,血管など,本来は脂肪が蓄積しない部分にたまりやすくなり,これが全身・臓器レベルでの血管病リスクを高めるという概念だ。こうした異所性脂質の蓄積が起こる場合,通常体重に比べて,耐糖能異常や高血圧,脂質異常症などの発症リスクが2倍に増加する。
こうした余分な脂肪が蓄積する理由には,インスリン分泌過多が挙げられる。沖縄県で増加が問題視されている肥満2型糖尿病に見られるように,インスリン分泌が過剰にもかかわらず,血糖値が下がらないインスリン抵抗性が惹起され,高インスリン状態が続くと異所性の脂質蓄積が進行するという機序が考えられるという。 遺伝子操作により脂肪組織への中性脂肪備蓄能力を軽減した遺伝性の肥満db/dbマウスを軽度肥満とし,超肥満のdb/dbマウスと野生型マウスの代謝解析を比較したところ,軽度肥満マウスでは,超肥満マウスよりも脂肪肝が悪化しており,血糖値も著しく上昇していることが示されている(図3)。 こうした軽度肥満マウスでは,皮下脂肪組織に備蓄できない余剰脂質(エネルギー)が脂肪筋や脂肪肝,脂肪血管となって異所性に蓄積し,局所組織での機能障害や炎症,インスリン抵抗性を惹起すると考えられる。同教授は「これは日本人で起こりやすい現象であり,内臓脂肪型肥満は異所性脂質蓄積を伴っていることが多い」と指摘する。この改善には,食事や運動療法など生活習慣の是正により,骨格筋細胞内の脂質は大きく減少し,インスリン抵抗性が改善することに加えて,高インスリン状態を引き起こさない薬剤による治療も必要とされる。 
待たれるインクレチン関連薬のエビデンス 最近では,わが国でもジペプチジルペプチダーゼ(DPP)-4阻害薬やグルカゴン様ペプチド(GLP)-1受容体作動薬といったインクレチン関連薬が臨床導入され,糖尿病治療にも変化がもたらされている。益崎教授によると,先に述べた肥満2型糖尿病が増えている昨今では,必要なときに効果的なインスリンの分泌を促すコンセプトの薬剤が求められており,血糖依存的な作用を示すこれらの新規の薬剤は,食後高血糖の急峻な上昇を抑制し,血糖変動のきめ細かな正常化を目指すのに適した選択肢であるという。 一方,これらの薬剤には使用上,注意すべき点もある。スルホニル尿素(SU)薬との併用時の低血糖リスクの軽減に配慮する必要があること,また,インスリン依存状態にある患者に対しては,インスリンからの切り替えによる高血糖や糖尿病性ケトアシドーシスのリスクに注意する必要がある。そのため,「個々の患者の状態に適した薬剤選択をしっかり考える必要がある」と同教授。 野出教授も,既存の薬剤とは異なる新しい機序を持ち,体重を増加させず,何より低血糖の頻度が少ないことからも,これらの薬剤への期待は大きいという。 また,GLP-1受容体は中枢神経系や胃,心臓,肺などに発現しており,血糖低下作用以外の臓器保護作用を持つ可能性も示唆されている。しかし,同教授は 「こうした新規の薬剤は今後,有効性と安全性のエビデンスを確立していくべき段階にある」と指摘する。そこで同教授らは,DPP-4阻害薬のシダグリプチンに着目し,同薬の血管障害に対する効果を検討するPROLOGUE研究を開始。現在,患者を登録中だ(図4)。同研究では,シダグリプチン投与群と非投与群で,頸動脈エコーを用いて頸動脈内膜中膜複合体厚(IMT)を測定し,動脈硬化進展抑制効果を比較するとともに,心血管機能や血液バイ オマーカーに及ぼす影響も検討する予定であるという。同研究をはじめインクレチン関連薬の,特に日本人におけるエビデンスの蓄積が待たれる。
出典 Medical Tribune 2011.7.21
版権 メディカル・トリビューン社
<関連サイト>
糖尿病と冠動脈
糖尿病 ~ 血管障害
Fourth movement
2011.7.18撮影 茅野・長野から眺望した八ヶ岳
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