戯れ言たれる侏儒
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< 大動脈瘤の進展抑制とAT2受容体シグナル... | メイン | 残された血管リスク 講演会メモ その1(... >

高感度cTnT測定は、一般地域住民の冠動脈疾患、心不全、および死亡のリスク評価に有効である
Cardiac troponin T measured by a highly sensitive assay predicts coronary heart disease, heart failure, and mortality in the Atherosclerosis Risk in Communities Study
Saunders JT, et al.
Circulation 2011; 123: 1367-1376
執筆:真田 昌爾 先生  
大阪大学大学院医学系研究科循環器内科学
監修:小室 一成 先生  
大阪大学大学院医学系研究科循環器内科学 教授
 
<概要>
心筋細胞壊死を直接に反映する心筋トロポニンT(cTnT)は、すでに急性冠症候群や心不全患者の独立した予後推定マーカーとして確立されているが、一般地域住民では、従来の検査法で検出限界を下回るのがほとんどで、測定意義が疑問視されていた。
今回、従来法の10倍鋭敏な高感度検出法の開発を受け、脳心血管疾患や心不全のない一般地域住民9,698名(54~74歳)でcTnTを測定し、その後、冠動脈疾患、心不全による入院、および死亡のイベントを10年間追跡した。
従来のcTnT検出感度(高感度法の0.03µg/Lに相当)では、従来の報告と同様1%未満の陽性率だったが、高感度法の検出感度 (0.003µg/L以上)では陽性が66.5%を占めた。
検査値の上昇は、年齢、男性比率、血圧、左心肥大、糖尿病比率、中性脂肪値、N末端プロ脳性ナトリウム利尿ペプチド(NT-proBNP)値、高感度C反応性蛋白(hsCRP)値と正の相関を、喫煙率、推定糸球体濾過量(eGFR値)、総コレステロール値、HDLコレステロール値と負の相関を示した。
各種イベントの発生を、従来の冠動脈疾患危険因子、腎機能、hsCRP値、NT-proBNP値で補正後、Cox比例ハザードモデルにて検討した結果、検出感度以下群に比べて0.014µg/L以上の最高値群(全体の7.4%)では、冠動脈疾患(95%CI 1.81~2.89)、致死性冠動脈疾患(同 3.78~15.25、ただし発生例は少数)、全死亡(同 3.21~4.88)、心不全(同 4.47~7.92)の発生が有意に多く、さらに、全死亡と心不全では検出感度0.003µg/L以上の集団でも有意に(p<0.05)高い発生を認めた。
本集団で、従来の危険因子の評価に、高感度cTnT、NT-proBNP、hsCRPをそれぞれ追加した場合のリスク検出力増加度は、高感度cTnTはNT-proBNPとほぼ同様で、hsCRPより優れていた。

 

<なぜMust-readか>

元来cTnT値は、比較的高い測定値を示す心血管疾患患者において有意な予後規定因子と報告されているため、今回の新しい高感度測定法による知見も、単なる技術的進歩にすぎないともみえる。

しかしながら、同じ心筋逸脱酵素のトロポニンI(TnI)が、現在臨床に寄与している最高感度の測定法でも全コホートのわずか数%の陽性率と報告され、陰性検出力に乏しい一方で、本試験は、まず未発症の一般地域住民にも広くその予後推定対象を拡大できた点で、成果が大きい臨床試験といえる。

著者らは、本試験の投稿中にCardiovascular Health Study[1]とDallas Heart Study[2]という同アッセイを用いた2つの臨床試験を発表しており、本試験より年齢層が10歳高い前者の試験でも非常に類似した結果が得られ、また年齢層の広い後者の試験でも、全体では25%の陽性率にとどまったものの、60歳以上では56%が陽性と類似した結果で、「本試験の再現性が裏づけられ た」と述べている。
本試験で高感度cTnT高値を示した症例は、既存の予後予測マーカーであるNT-proBNP、hsCRPをはじめ、従来からの多くの危険因子ともその報告に沿った相関を示したが、興味あることに、喫煙率と総コレステロール値には負の相関を示した。
このことは、cTnT値を上昇させる因子の議論に大きな一石を投じるが、一方で、本検査値が既存マーカーと異なる切り口から危険性をあぶり出し、その併用が互いをよく補完する可能性を示唆する。
また、 NT-proBNPが心筋からの産生を、hsCRPが炎症反応を直接に反映した指標である一方、cTnTがクレアチンキナーゼMB分画(CK-MB)などと同じく心筋逸脱酵素であるという差異が、心血管イベント発生前段階の一般集団で、「いかなる因子がイベント発生に至るには重要か」を考えるよい手がかりになると思われる。
しかし、本試験で高感度cTnTがNT-proBNPと同程度に、また冠動脈疾患マーカーとして鋭敏と報告されるhsCRPよりも高感度に、心事故や死亡の優れた予見性を示したことは、「心筋が何らかの理由で継続的に崩壊することは、将来のライフイベントに直接つながる」という直感的に受け入れやすい仮説を見事に示しているものの、cTnT値上昇の原因を考えるうえで、本試験の解析ではすでに冠動脈疾患と腎機能低下の関与が排除・補正されているため、cTnT値上昇の原因を冠血流不全に求めるのは特殊な状況に限定され難しい。
さらに、cTnT値は通常の運動などでは上昇しないという報告や、本試験で高感度cTnTがとくに冠動脈疾患よりも心不全や全死亡で相対的に高い予測検出力を示した点をあわせると、一般地域住民では冠動脈疾患以外にも、圧負荷や神経体液性因子などの心筋ストレスや、直接的な心筋崩壊要因が、潜行して将来的にイベントを発生させる可能性が強く示唆される。
たとえば、その病態には、今まで本試験のような集団で検討がほぼ不可能であった心筋アポトーシスなどのプログラム死の発生心筋内のハウスキーピングによる細胞死なども関与する可能性があり、臨床疫学から病態の新しい本質に迫るアプローチの可能性を十 分に示したことも興味深い。
本試験は、元来検出感度が高いCK-MBなどの心筋逸脱酵素測定ではどのように結果が再現されたのか、今回の結果がいかなる予防医学的あるいは治療的介入によって検査値の変化を生じ、加えて高感度cTnTの予後規定力に変化を及ぼすのかなど、疫学解析の結果をさらに基礎医学の進歩にも寄与させるための方法論や、より直接的にも本試験の具体的な臨床応用の幅広さを考えるうえで、大変有意義な一報といえる。


<参考文献>
1)deFilippi CR, et al. JAMA 2010; 304: 2494-2502.
2)de Lemos JA, et al. JAMA 2010; 304: 2503-2512.

 
http://www.univadis.jp/services/cardiopro/pages/mustreadarticles1106_01.aspx
(要パスワード)
 
<きょうの一曲>
Furtwangler: Variations on a Theme of Haydn (1/3)
http://www.youtube.com/watch?v=Kioo6owzIjg&feature=related
Furtwangler: Variations on a Theme of Haydn (2/3)
http://www.youtube.com/watch?v=Ipiov9CLTRQ&feature=related
Furtwangler: Variations on a Theme of Haydn (3/3)
http://www.youtube.com/watch?v=YF9-xd9bejw&feature=related

ハイドンの主題による変奏曲(ブラームス) フィナーレ
http://www.youtube.com/watch?v=Ihy9EzP3XgQ&feature=related

ハイドンの主題による変奏曲
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8F%E3%82%A4%E3%83%89%E3%83%B3%E3%81%AE%E4%B8%BB%E9%A1%8C%E3%81%AB%E3%82%88%E3%82%8B%E5%A4%89%E5%A5%8F%E6%9B%B2


昨夜のN響アワーはご覧になられましたか。
「パパ・ハイドンの栄光」というタイトルで
交響曲 第104番 ニ長調 「ロンドン」 ( ハイドン )
古典交響曲 作品25 ( プロコフィエフ )
ハイドンの主題による変奏曲 作品56a ( ブラームス )
の演奏が放送されました。

http://www.nhk.or.jp/nkyouhour/prg/2011-07-17.html

中でも、ハイドンの曲を見事にブラームスの味付けにしてしまう「ハイドンの主題による変奏曲 」のオーケストレーションには感心してしまいました。


 
<自遊時間>
昨昼は蓼科のオーベルジュ「エスポワール」で家族と食事をしました。
土地柄だけにキノコが出されましたが。結構濃厚な味がするのに驚かされました。
仏料理の奥深さを知ることが出来たのと同時に、ワインが本当にわかるには様々な木や花やキノコなどの香りや味にも堪能になる必要があることもわかりました。



 
 

 


 
 
読んでいただいて有り難うございます。
コメントをお待ちしています。
その他
「葦の髄」循環器メモ帖 http://yaplog.jp/hurst/
(循環器専門医向き)
ふくろう医者の診察室 http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き) 
井蛙内科/開業医診療録(4)2009.10.16~
http://wellfrog4.exblog.jp/
井蛙内科/開業医診療録(3)~2009.10.15
http://wellfrog3.exblog.jp/
井蛙内科/開業医診療録(2)2008.12.10~
http://wellfrog2.exblog.jp/
井蛙内科/開業医診療録~2008.5.21 http://wellfrog.exblog.jp/ 
(内科医向き)
「井蛙」内科メモ帖 
があります。

 

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