やっぱり減塩だけでは駄目? Na/K比が大きいと死亡リスクが上昇
米NHANES調査
今後は減塩だけでなく積極的なカリウム摂取への機運がより高まるかもしれない?
7月11日,米疾病対策センター(CDC)のQuanhe Yang氏らは,米国保健栄養調査(NHANES)Ⅲにおける前向きコホート研究の新たな結果をArch Intern Med に報告した。
それによると,1日当たりに摂取するナトリウム(Na)/カリウム(K)比が大きいほど死亡や心血管疾患のリスクが有意に高まっていたとい う。
日常の食事や体内におけるNaやKの作用についてはよく知られているが,全米の一般人口を代表する集団で,日常の食事における両者の影響を同時に検討 したのは初めてだという。
Na,K単独に比べより強いリスク上昇が確認
これまで複数のランダム化比較試験(RCT)や疫学研究で,Na摂取の増加あるいはK摂取の減少が高血圧や心血管疾患のリスク増加に関連することが指摘されている。
Yang氏らによると,最近では,NaおよびKの比がそれぞれ単独の場合に比べ,高血圧や心血管疾患の重要な危険因子となりうることを示す報告が相次いでいるという。
一方,米国ではNaの過剰摂取やK摂取量の不足が指摘されている。
この問題が全米における心血管疾患や死亡にどのようなインパクトをもたらしているのか,今回検討が行われた。
1988~94年のNHANESⅢに登録された1万2,267例の成人(20歳以上,妊婦は除外)の健康診断データベースおよび1988~2006年までの死亡データベースを用いて全死亡,心血管疾患,虚血性心疾患の発症が前向きに追跡された。
14.8年(中央値)の追跡期間中に2,270例が死亡し,うち825例が心血管疾患で,443例が虚血性心疾患により死亡していた。
Na摂取量1gごとに全死亡の補正後ハザード比(HR)は1.20(95%CI 1.03~1.41)と有意に上昇していた。
一方,K摂取量が1g増えるごとの同HRは0.80と有意な低下を示していた。
また,Na/K比の第1四分位に対する第4四分位の全死亡のHRは1.46(同1.27~1.67),心血管疾患死のHRは1.46(同1.11~1.92),虚血性心疾患死のHRは2.15(同1.48~3.12)に上昇していた。
同様の傾向は,性や人種,BMI,高血圧の有無や教育レベル,身体活動量にかかわらず確認された。
同氏らは今回の検討から,Na/K比が大きいと心血管や全死亡のリスクが有意に増加することが全米一般人口で確認されたと結論。
研究者の1人CDCのElena Kuklina氏は,今回の結果について「米国成人が1日の推奨量の約2倍近い平均3.3gものNaを摂取していることになる」と懸念を示す。
また「80%近くの人が利用する加工食品やレストランでの食事が,Na過剰摂取の原因となっていることがさらに強く裏付けられた」とした上で,減塩だけでなくカリウム摂取を増やすことでさらなる健康上のベネフィットが期待できるとしている。
(坂口 恵)
出典 Medical Tribune 2011.7.12
版権 メディカル・トリビューン社
<関連サイト>
現状の減塩方針によるベネフィットはいまだ不明
コクランレビューから
出典 Medical Tribune 2011.7.7
版権 メディカル・トリビューン社
■コクランレビューは7月6日,現状の減塩方針による心血管疾患の発症や死亡の抑制効果に対するベネフィットはいまだ明らかでないとの結果を発表した。
2009年の解析結果でも同様の見解が示されていた。
■国内外の高血圧ガイドラインでは6g/日未満の減塩の目標が設定されている。
しかし,日本人の平均食塩摂取量は10g/日を超え,目標値の達成が非常に難しいと言われている。
■今回,メタ解析の対象とされたのは,2008年10月までの追跡期間6カ月以上のランダム化比較試験(RCT)で,かつ食事での塩分摂取制限に関 する介入が行われ,かつ成人対象,死亡あるいは心血管疾患発症に関する検討を実施した論文。
英語以外の論文も含め選定が行われた。
■正常血圧者における全死亡の相対リスク(RR)は試験終了時の値で0.67(95%CI 0.40~1.12,死亡者数60例),最も観察期間の長い試験では0.90(同0.58~1.40,79例)。
また,高血圧患者の全死亡のRRはそれぞ れ0.97(同0.83~1.13,513例),0.96(同0.83~1.11,565例)であった。
■一方,心血管疾患発症のRRは正常血圧者で0.71(同0.42~1.20,イベント数200件),ベースライン時血圧が高値の人では0.84(同0.57~1.23,93件)。
さらに,心不全患者では減塩による全死亡のRRは2.59(同1.04~6.44,死亡者数21例)に上昇していた。
■今回の解析では,前回の解析よりもより多くのRCTの成績を追加できたにもかかわらず,死亡や心血管疾患発症に対するベネフィットは明らかにならなかった。
■心不全患者の減塩が有害であるかどうかについては今後RCTによるエビデンスの蓄積が求められる。
コクランレビューの「減塩の効果は不明」で大きな波紋
■7月6日,コクランレビューが「減塩の心血管疾患や死亡に対する効果は不明」とのシステマチックレビュー(上記記事)を発表した。
“エビデンスの総本山”が表明したこの見解を「減塩による効果はない」と報じた海外メディアもあった。
一方,英国保健サービス(NHS)や米国心臓協会 (AHA)などの医療系団体も「今回は十分な検証が行えなかった背景がある」として,それぞれの公式サイトで引き続き減塩の重要性を訴えるなど事態収拾に動いている。
NOW SALT IS SAFE TO EAT
http://www.express.co.uk/posts/view/257048
(英国の一般大衆向けメディア,Express.co.ukは「食塩は食べても害がない」との刺激的な見出しで,「英国立臨床評価研究所(NICE)が推進しようとしている,2025年には成人1人当たりの食塩摂取量を3g/日という減塩政策は吹き飛んだ」などと報じている。)
Unclear results for salt reduction study
http://www.nhs.uk/news/2011/07July/Pages/heart-risk-salt-reduction-cochrane-review.aspx
( NHSはコクランレビューの結果について「研究者らは減塩に効果なしと断定しているわけではない」として「今回の研究結果は,現在の減塩に関する勧告(成人1人当たり6g/日)を変えるものではない」と Express.co.ukの記事に対し,名指しで異論を唱えている。)
■AHAは,今回の結論が「社会に混乱をもたらすかもしれない」と認めながら,次のような“懇切丁寧な解説”を付けて冷静に対応するよう求めている。 ■同メタ解析の対象となった研究の対象者は中年の白人あるいはアジア人。
しかし,高血圧の影響はアフリカ系米国人やより高齢の米国人でより強い。
■メタ解析の対象となった7報の論文のいくつかは台湾,オーストラリア,イタリアで実施されたもので,米国の一般人口に当てはめることはできない。
■同解析では6~71カ月の観察期間に基づいた結果を示している。
コメント
コメント一覧
アメリカ滞在中の貴重な情報、有り難うございました。
またのコメントをお待ちしています。
コメントを書く