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葦の髄から循環器の世界をのぞく
老境に入った内科開業医が、昔専門とした循環器科への熱い思い断ちがたく一人でお勉強した日記です。
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低コレステロールと高死亡率その2(2/2)
戯れ言たれる侏儒
/ 2011.06.08 00:43 / 推薦数 : 1
昨日の
低コレステロールと高死亡率その1(1/2)
の後半です。
山田先生の考察:NIPPON DATA80と比較すると…全く逆の結果とは言えない
正直に申し上げると,「コレステロールが低いと死亡率が高くなる」という話にはアレルギーのようなものが私自身の中にでき,胡散臭いものを見るような眼(先入観)ができあがってしまっていた。
しかし,本研究は非常に真摯に解析が行われていた。
ここで,改めて動脈硬化学会ガイドラインが採用しているNIPPON DATA80(
Atherosclerosis
2007; 190: 216-223
)をながめ,本研究の結果との相違について考えたい。
NIPPON DATA80は,1980年の厚生省(当時)の循環器疾患基礎調査対象者である30歳以上の9,216人を対象とした17年におよぶコホート研究であり,TC最低群(160mg/dL未満群)とTC最高群(260mg/dL以上群)において総死亡率の上昇が見られたが,
TC最低群での総死亡率の上昇は 肝疾患による死亡を除外すると有意でなくなった
のに対し,
TC最高群での総死亡率の上昇は調整によりハザード比がより高くなった
というものであった。
この結果を文章で読むと,NIPPON DATA80はコレステロール高値が悪いという印象になり,今回の自治医大コホート研究のコレステロール低値が悪いという印象と,逆な結果のように思える。
しかし,総死亡率のデータを比較すると以下のようになる(
表4
,
5
)。
表4.
男性の総死亡率のハザード比の比較
表5.
女性の総死亡率のハザード比の比較
こうして見てみると,TC 160mg/dL未満での死亡率の高さが自治医大コホート研究で顕著になってはいるものの,両者にさほどの相違がないことが分かる。
では,この2つの研究の印象の違いはどこから来るかと言えば,心筋梗塞・冠動脈疾患による死亡率の差異に由来する。特に自治医大コホート研究において女性における高コレステロール血症での心筋梗塞・冠動脈疾患による死亡率上昇が全く見られないところが異なっている(
表6
,
7
)。
表6.
男性の心筋梗塞・冠動脈疾患による死亡率のハザード比の比較
表7.
女性の心筋梗塞・冠動脈疾患による死亡率のハザード比の比較
しかし,上記の表から分かるように,NIPPON DATA80においても女性で心筋梗塞・冠動脈疾患による死亡率が上昇しているのはTC 260mg/dL超であり,240~260mg/dLの群では死亡率の上昇は見られていない。
そう考えると,自治医大コホート研究において240mg /dL超のTC最高群において心筋梗塞・冠動脈疾患による死亡率の上昇がなくとも,必ずしも両研究の結果が異なるとは言い切れないわけである。
このように,両研究ともに1万人程度を対象として,10年以上にわたって経過を観察した信頼度の高い研究であり,一見,両者は全く逆の結果を呈したような印象であるが,そのように断じることはできない。
明らかに異なるのは,
(1)TC値の群別の方法,
(2)対象者の年齢(NIPPON DATA80 平均50.0歳,自治医大コホート研究55.2歳),
(3)観察期間におけるスタチンの処方可能な期間(1989年以降)が占める割合
―である。
今回の論文の筆者らも,考察において“
高コレステロールのリスクが観察期間中の治療介入により消失してしまい,低コレステロールのリスクが強調された可能性
”や“
低栄養の存在の可能性
”や“
甲状腺機能亢進症のようなコレステロールを低下させる肝疾患以外の疾患の可能性
”に言及している。
私としては,コレステロールの群別をNIPPON DATA80と同様にした場合のTC最高群での成績や,
TC最低群を正常栄養者と低栄養者とに分類した場合の成績
などを知りたいものである。
また,今回の論文の筆者らの指摘する可能性を除外するためにもランダム化比較試験(RCT)が必要だと思われる。
以前,私が脂質栄養学会に提言した「スタチン剤を使用していて低脂血症を来している方を対象に,スタチン剤を中止する介入群を,スタチン剤を継続する対照群と比較する研究」の正当性は, 今回の研究結果によって支持されるものと思われ,各施設の倫理委員会を通る可能性が格段に高まったような気がする。
ぜひ,脂質栄養学会の先生方にはそのような研究を実施し,低コレステロール血症が死亡率上昇のinnocent biomarkerではなくtrue risk factorであるとする脂質栄養学会の仮説をきっちりと検証していただきたい。
(完)
出典 Medical Tribune 2011.5.30
版権 メディカル・トリビューン社
<私的コメント>
「スタチン剤を使用していて低脂血症を来している方を対象に,スタチン剤を中止する介入群を,スタチン剤を継続する対照群と比較する研究の正当性・・・
」
正当性はともかく人道上の問題はどうなのでしょうか。
<自遊時間>
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