戯れ言たれる侏儒
Profile

ブログ内検索

カレンダー

<< 2012/05 >>
1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31

新着コメント

新着トラックバック

トップページ

Doctors Blog

ブログの購読

< PROBE法による臨床試験の信頼性 | メイン | ALPS-J試験 >

冠攣縮性狭心症・院外心停止例の5年MACEは3割
冠攣縮は冠動脈の突発的な過収縮により一過性に血流が低下する病態で,心筋梗塞や心停止の原因になりうる。
そのため循環器研究の重要な主題であるが,病態に対する国際的理解度は低く,日本でも診断を行う施設が少なくなってきている。
全国規模の「冠攣縮研究会」は Circulation Arrhythmia and Electrophysiology(2011; 34: 468-470)に大規模な後ろ向き調査を報告。
冠攣縮性狭心症で院外心停止を経験した症例では,5年で3割が致死性イベントや心筋梗塞,重症入院などのリスクを有することが明らかになった。
 
負荷試験の実施施設減少に歯止めを,ガイドラインも作成
近年,虚血性心疾患の診断や治療に用いる器機が大きく進化した。
解剖学的に狭窄部位を同定し,虚血部位の血行を再建する治療は容易になったが,一 方で,血管の機能異常がもたらす冠攣縮については軽視されてきた傾向が否めない状況にある。
その一因として,現在の保険診療制度下では病院経営的側面から入院日数の短縮化が求められ,確定診断のために必要な負荷試験を要する冠攣縮性狭心症の診断が行いにくい環境になっている点などが挙げられる。
 
しかし,致死性疾患を予防するためには冠攣縮の診断・治療は外せない。
危機感を持った研究者らは,2006年に全国規模の「冠攣縮研究会」を立ち上げ, 実態調査や勉強会を展開していった。これらの成果は,2008年に日本循環器学会が公表したガイドラインにも結び付いた。
 
ガイドラインの作成により,施設間で異なっていた冠攣縮性狭心症の診断が「発作時に心電図上の明らかな虚血変化が認められる場合,あるいは発作時の所見は疑い程度にとどまった場合の運動負荷など非薬物誘発試験か,アセチルコリンやエルゴノビンなどの薬物誘発試験によって認められる場合」と定められた。
 
<私的コメント>
「発作時の所見は疑い程度」で実は心電図所見としては疑陽性だった場合の運動負荷陽性例で問題が出そうです。
こういった症例の中には労作時狭心症が混入している可能性があるからです。
(この際の心電図変化がST上昇型なら文句なしです)

また、冠攣縮性狭心症と器質性狭心症と混在した狭心症もあります。
( 労作時狭心症と安静時狭心症の混在したいわゆるmixed anginaとは区別)
 
もう一つ。
非薬物誘発試験には、運動負荷試験以外に寒冷刺激試験や過呼吸試験が想定されます。
それぞれの、 冠攣縮性狭心症をdetectするための感度や特異度が異なるはずです。
 
勝手ながら自分ながらの考えを少しまとめてみました。

■安静時狭心症は冠攣縮性狭心症と考えてよい。
■しかし、冠攣縮性狭心症はすべて安静時狭心症ではない。
(このことは運動負荷で冠攣縮性狭心症が起きる場合があることから明らか。この際はST上昇型である必要がある?)

■労作時狭心症すなわち器質性狭心症ではない。
 
以上のことは間違っているでしょうか。

 
初の全国調査で明らかになった院外心停止例の高リスク度
今回の研究は,この「冠攣縮研究会」国際的に発信する初の報告と位置付けられる。
立ち上げ当初から参加している47施設(現68施設)から1,429例の冠攣縮性狭心症患者のデータが集積され,後ろ向きに解析されたものだ。
 
平均32カ月の観察期間で,院外心停止の既往のある患者35例とそれ以外の1,394例を比較したところ,突然死や非致死性心筋梗塞,不安定狭心症や心不全による入院,植え込み型除細動器(ICD)の適切作動からなる主要心血管イベント(MACE)の5年間の非発生率は,院外心停止既往群が72%とそれ以外の患者群の92%と比べて有意に低かった(P<0.001,)。
院外心停止を経験した冠攣縮性狭心症患者では,ICDの適切作動も2例含まれるなど,予後がより悪化していることが明らかにされた。
 
 
また,MACE発生率に影響する因子を多変量解析で検討したところ,虚血性心疾患の家族歴とともに院外心停止既往が挙がり,特に院外心停止はハザード比が4.22と高かった)。
また,対象全体の検討では,Ca拮抗薬を中心とする薬物治療を中断した症例で心血管死や非致死性心筋梗塞の発生率が有意に上昇していたことから,治療継続が重要であることも示された。
 
 
 
今回の解析をまとめた東北大学大学院循環器内科の下川宏明教授は「冠攣縮を有する院外心停止症例へのICDの植え込みは検討課題となっているが,今回の解析はその議論のエビデンスとして貴重なものになるだろう」と述べた。
 

 

Comment
東北大学大学院 循環器内科・下川 宏明 教授

 

院外心停止例への市民による心肺蘇生が普及し,低体温療法など治療の進化で神経学的後遺症の残らない患者が増えた現在,救命できた患者の予後をいかに改善していくかが課題となっている。
院外心停止の要因には,今回検討した冠攣縮性狭心症や特発性の心室細動/心室頻拍(VT/VF)が挙がるが,当科で院外心停止蘇生例(12例)を評価したところ,全例でどちらかが陽性,7例は両方とも陽性で,院外心停止例がいかに高リスクであるかを再認識した。
患者に負荷のかかる誘発試験が必要なことから,評価を行うことについて否定的な意見が聞かれた時期もあったが,今回の全国規模の調査からも分かるように,適切な評価とそれに基づいた管理が重要であることは明白だ。
CTなどによる解剖学的診断だけでなく,冠攣縮の有無といった機能的評価もしっかり行う必要がある。
現在,「冠攣縮研究会」では,前向きの観察研究が進行している。
冠攣縮性狭心症の診断治療の在り方を世界に向けて発信していきたい。
 
出典 Medical Tribune 2011.5.26
版権 メディカル・トリビューン社

 

 

松本竣介 白い建物 1941年頃 宮城県美術館蔵
http://www.art-index.net/art_exhibitions/2009/04/post_399.html



その他
「葦の髄」循環器メモ帖 http://yaplog.jp/hurst/
(循環器専門医向き)
ふくろう医者の診察室 http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き) 
井蛙内科/開業医診療録(4)2009.10.16~
http://wellfrog4.exblog.jp/
井蛙内科/開業医診療録(3)~2009.10.15
http://wellfrog3.exblog.jp/
井蛙内科/開業医診療録(2)2008.12.10~
http://wellfrog2.exblog.jp/
井蛙内科/開業医診療録~2008.5.21 http://wellfrog.exblog.jp/ 
(内科医向き)
「井蛙」内科メモ帖 
http://harrison-cecil.blog.so-net.ne.jp/  
があります
 
 

固定リンク