自治医科大学循環器科・苅尾七臣教授が監修した「Dダイマーと腹部大動脈瘤」に関する記事で勉強しました。
Dダイマー:腹部大動脈瘤の診断と予後予測に役立つか?血漿中のDダイマーは、腹部大動脈瘤の診断と予後予測に対し、有効なマーカーであることが示唆された。オーストラリア・ジェームス・クック大学医歯学校血管生物学研究室のJonathan Golledge氏らが、集団検診などを通じて約1,400例について調べた結果、Dダイマー濃度が90ng/mL以下の人に比べ、400ng/mL超の 人は腹部大動脈瘤のリスクがおよそ12倍に、同濃度が900ng/mL超の人は同リスクがおよそ25倍に、それぞれ増大することが示された。これまでの研 究結果から、集団ベースの超音波検査が腹部大動脈瘤の早期発見、死亡率低下に結びつくことは示されているが、血液検査による腹部大動脈瘤の診断と予後予測 については、血液中の生物学的マーカーがリスク層別化に役立つのか、現状ではコンセンサスが得られていない。 腹部大動脈瘤の増加率、Dダイマー濃度上昇に伴い増大Golledge 氏らは、腹部大動脈瘤のスクリーニングを行った12,203名で、再検査ができた4,263名の中で、血液検体が利用可能であったAAA(腎動脈下大動脈 径>30mm)を有する337名と、正常コントロール923名((腎動脈下大動脈径<25mm))を残りの集団より無作為に選んだ。同様に、他の医師から の紹介患者の内、AAA症例41名とコントロール91名を選んだ。診察を行った132例(同41例)について、超音波検査やCT血管造影法による腹部 大動脈瘤の検査を行った。集団検診群で腹部大動脈瘤が認められた人のうち299例について、中央値5.5年の期間で追跡し、繰り返し超音波検査を行った(超音波検査回数の中央値は7回)。血漿Dダイマーと腹部大動脈瘤の診断・予後予測について、多変量回帰分析、受診者動作特性(ROC)分析、分類および回帰ツリー(CART)分析を行った。 おもな結果は以下のとおり。
●腹部大動脈瘤罹患率は、集団検診群26.7%、紹介外来群31.1%であった。
●両群において、多重ロジスティック回帰分析の結果、血漿中Dダイマー濃度は、腹部大動脈瘤に関する最も強力なリスク因子であった。
●集団検診群において、Dダイマー濃度が90ng/mL以下の人との比較における、腹部大動脈瘤に関する補正後オッズ比は、400ng/mL超の人は12.1(95%CI:7.1〜20.5)、900ng/mL超の人は24.7(同:13.7〜44.6)であった。
●紹介外来群における同オッズ比は、Dダイマー濃度が90ng/mL以下の人に対し、110ng/mL超の人で8.2(同:2.9〜23.0)であった。
●集団検診群で追跡した299例において、腹部大動脈瘤の増大幅の中央値は1.1(四分位範囲:0.5〜1.8)mm/年であった。
●腹部大動脈瘤の年平均増大幅の絶対値や当初の腹部大動脈瘤径を元にした増大率は、血漿中Dダイマー濃度の増加につれて増大した。
●CART分析の結果、血漿中Dダイマー濃度をもとに、腹部大動脈瘤の罹患率(3〜82%)について、被験者の最大リスクのグループ化が可能であることが確認された。
●CART分析の結果、血漿中Dダイマー濃度と当初の腹部大動脈瘤径をもとに、腹部大動脈瘤の年増加幅の中央値(0.4〜2.5mm/年)について、被験者のグループ化が可能だった。 <苅尾先生のコメント>本研究は、血中Dダイマーが、腹部大動脈瘤の存在と、その後の増大リスクを予測する有用な独立したバイオマーカーであることを示した実用的な臨床研究である。血中Dダイマーは、フィブリン血栓形成と、それにプラスミンが作用して放出される2次線溶系を反映するバイオマーカーである。したがって、その高値は、生体内の血栓形成と線溶系が亢進していることを意味する。大動脈瘤患者における血中Dダイマーの高値は、大動脈瘤の局所における血流鬱滞やそれにより生じる壁在血栓を反映している。本研究で、最も新規的な成績は、血中Dダイマーが、その後の大動脈瘤の増大リスクとなった点である。その機序として、血栓より放出されるマトリックスメタロプロテアーゼがある。マトリックスメタロプロテアーゼは、コラーゲンやプロテオグリカン、エラスチンなどから成る細胞外マトリックスを分解し、大動脈壁の中膜基質を脆弱なものにする。また、in vitroの実験ではDダイマー自体が、単球からの炎症性サイトカインや蛋白分解酵素の放出を促進することが示されている。したがって、今後の臨床研究により、エビデンスが示される必要があるが、大動脈瘤の進展抑制には、スタチンやより厳格な血圧管理などのリスク因子の徹底管理に加えて、抗血栓療法が有用である可能性がある。 出典 Care Net. com 2011.2.21版権 ケアネット社
原文
Evaluation of the diagnostic and prognostic value of plasma D-dimer for abdominal aortic aneurysm.
Golledge J et al. Eur Heart J. 2011; 32: 354-364.
横尾正夫「結び直し」 パステル8号大
http://www.ichimainoe.co.jp/gallery/20100524.html
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