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溶けて消えるDESも登場間近 新発想のステントが続々従来の薬剤溶出ステント(DES)の欠点を克服すべく、ステントメーカーの間では開発競争が繰り広げられている。
ステントそのものが体内で分解される製品も海外で使用可能になりつつあり、現場では大きな期待が寄せられている。
ステント血栓症など安全性に対する懸念は、完全になくなったわけではない。
そのため、新しい発想に基づくDESの開発が進んでいる。
三井記念病院(東京都千代田区)循環器内科科長の田邉健吾氏によると、現在のDESの開発には主に3つの方向性があるという。
(1)ポリマーが消失する
(2)ポリマーを使わない
(3)ステント自体が消失する──のいずれかだ。
(1)は、薬剤を含んでいるポリマーに生分解性の素材を使い、ステント血栓症のリスク低減を狙うのが狙いだ。
田邉氏は、「今後はこのタイプのステントが日本でもいくつか出てくることになる」と予測する。

該当する製品は、まず前述したテルモの「NOBORI」。ポリマーにポリ乳酸を使用しており、体内で分解され金属のステント本体のみが血管に残る。また、米ジョンソン・エンド・ジョンソン社が開発中の「Nevo」や、米ボストン・サイエンティフィック社の「SYNERGY」などもこのタイプだ。
現在開発されている新しいタイプのDES(例)
1:ジョンソン・エンド・ジョンソン社が開発中の「Nevo」
2:バイオセンサーズ社が開発中の「Biofreedom」
3:アボットバスキュラー社が開発中の「ABSORB」
Nevoは、ステント本体にいくつもの穴が開いており、そこに薬剤(シロリムス)を含んだポリ乳酸・グリコール酸を埋め込むタイプ(写真1)。
海外および日本で開発中で、海外ではタクサスとの比較試験(400人規模)で6カ月後の血管径の遠隔期損失を有意に減少させ、主要心血管イベントも少ない傾向に あるなどの成績を残している。
SYNERGYは、ステントをコーティングするポリマーにポリ乳酸・グリコール酸を使用したもので、薬剤にはエベロリムスを用いる。海外および日本で開発中で、海外ではザイエンスとの比較試験を実施している。
ステント表面を特殊加工
(2)は、ポリマーの悪影響を回避するための戦略として、ポリマーそのものを使わない方法を取る。ステントの材質表面に特殊な加工を行い、薬剤をステントに直接“染み込ませ”て、薬剤の徐放性を担保する。
この方式を採用する主な製品には、欧州で既に発売されている「YUKON Choice」がある。
ステントの表面を加工して微小な多孔構造を作り、そこに薬剤を塗布する。
留置後3カ月以内にステントが血管内皮で覆われるとされており、サイファーやエンデバーなどとの比較試験が行われて良好な成績を得ている。
ただし、日本での開発は行われていないようだ。
この他、「Biofreedom」 という製品をシンガポールのバイオセンサーズ社が同様のコンセプトで開発している。
ステント表面に作られた微小な穴に、バイオリムスA9が充てんされる (写真2)。
海外の複数施設で行われたタクサスとの比較試験では、12カ月経過時点で1次エンドポイントである血管の遠隔期損失において非劣 性が証明され、ステント血栓症は起きていないなど有望なデータが出ている。
ただ、試験自体が小規模(被験者の合計182人)であり、評価はこれからだ。
溶けて消えるステントも登場
(1)や(2)に比べて(3)は開発のハードルが高い。ステントが消失すれば患者に大きなメリットがある半面、血管を支持する力や柔軟性確保などに課題があり、実現はまだ先の話と思われていた。
ところが、この生体吸収性DESが市場に登場しようとしている。
今年1月、米アボットバスキュラー社の生体吸収性DES「ABSORB」(写真3)が、欧州でCEマーク(日本における薬事承認に相当)を取得した。
これは欧州でABSORBが販売できるようになったことを意味しており、これから順次、各国の保険承認を取得していく。
現場での臨床応用は目前だ。
三井記念病院の田邉氏は、「ABSORBが登場するインパクトは非常に大きい」と評価する。
「患者にとって体内に異物があるという不安感がなくなるほか、 バイパス手術やCT撮影の邪魔にならない。
また、抗血小板薬の長期服用が不要になる可能性もあり、若年者にも使いやすい。血管が成長する子どもへの応用に も期待が高まる」。
ABSORBはステント本体がポリ乳酸でできており、表面がエベロリムスを含有したポリ乳酸でコーティングされてい る。
以下の写真は、ABSORBを留置した部位と、留置して2年後の同部位を光干渉断層計(OCT)で見たもの。
血管からステント本体が消失していることが分かる。
ヒトにおけるABSORB留置直後と2年後の血管の様子
ABSORB留置直後(写真左)には、血管壁にステント本体(→)が確認できるが、留置後2年を経過した時点(写真右)ではステント本体が消失している。
このステントを用いて海外で行われたABSORBの第1相試験では、30症例を3年間追跡した結果、MACEの発生率は3.6%だった。
その後行われた第 2相試験でも、9カ月の追跡を終了した101症例で、MACEの発生は4.4%、血栓症は1例もなかった。
血管径の遠隔期損失は6カ月時点で平均 0.19mmとなり、通常のDESと同等の値にとどまった。
こうしたデータを受け、今回のCEマーク取得につながった。
同社ではABSORBの一部製品を、今年末から2012年にかけて欧州で施設を限定しながら製品供給を開始するという。
薬剤溶出ステントは、近いうちに新たな段階へ踏み出すことになりそうだ。
出典 NM online 2011.2.25
版権 日経BP社

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鬼頭鍋三郎
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