戯れ言たれる侏儒
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両室ペーシングが右室心尖部ペーシングに勝る
近年,観察研究などから徐脈性不整脈の治療に最も汎用されてきた右室心尖部(RVA)ペーシングによる左室機能や予後の 悪化が示唆されている。
香港中文大学(香港)心臓病学のCheuk-Man Yu教授らは,左室駆出率(LVEF)が保持された徐脈患者を対象とした多施設二重盲検試験Pacing to Avoid Cardiac Enlargement(PACE)において,LVEFの保持と左室リモデリング進展予防には,両室ペーシングがRVAペーシングに勝ったと米国心臓協会 (AHA)学術集会で報告。
New England Journal of Medicine(NEJM,2009; 361: 2123-2134)にも発表した。

 
1年後のLVEFに7.4%の開き
今回の対象は,LVEFが45%以上とほぼ正常で,洞不全,高度房室ブロックによる徐脈のためペーシングの適応とされ,両室ペースメーカー(InSync III,Medtronic社)の植え込みに成功した177例。
持続性心房細動,急性冠症候群などは除外した。
 

Yu教授らは対象をデバイスの設定により,
(1)試験開始時に中国・香港で標準療法であったRVAペーシングを受けた88例(RVA群)
(2)両 室ペーシングを受けた89例(両室群)
―の2群にランダムに割り付け,1年間追跡した。
両群の背景因子には,両室群で拡張期血圧が高かった以外に有意差は なかった。
 

まず1次エンドポイントのLVEFは,RVA群ではベースラインの61.5±6.6%から1年後には54.8±9.1%へ有意に低下したのに対し,両室群では61.9±6.7%から62.2±7.0%と,両群に7.4%の差が認められた(P<0.001)。

 
左室リモデリングを防ぐ
同じく1次エンドポイントである1年後の左室収縮末期容積は,RVA群では35.7±16.3mLと,両室群の27.6±10.4mLに比べて 8.1mL(ベースラインからの変化で25%)有意に大きかった(P<0.001)。

拡張不全の有無を含め,事前に設定されたサブグループ解析では,LVEF,左室収縮末期容積はともに,一貫して両室群で良好に保たれていた。
 

両群で2次エンドポイントの1年後の左室拡張末期容積,6分間歩行距離,QOLに有意差はなかった。
 

同試験には,臨床イベントの相違を検出する統計学的パワーはないが,RVA群で1例が死亡し,心不全による入院はRVA群で6例,両室群では5例と両群に有意差はなかった。
 

以上の結果から,Yu教授は「正常LVEFの徐脈患者で,RVAペーシングはLVEF低下と左室リモデリングの悪化をもたらしたが,そうした有害作用は両室ペーシングでは防ぐことができた」と結論している。

 
大規模かつ長期の検証が必要
両室ペーシングは,心不全患者に対する心臓再同期療法(CRT)で成果を上げているが,コストの問題やリード留置手技が煩雑であるなど課題も少な くない。

一方,RVAペーシングによる弊害への対策として,心室ペーシング最小化機能を有するペースメーカーも開発されている。
 

指定討論者でバージニア州立大学(バージニア州リッチモンド)のKenneth A. Ellenbogen教授は,現行の米国心臓病学会(ACC)/AHA/米国不整脈学会(HRS)2008ガイドラインでは,LVEFが35%を超えるか ニューヨーク心臓協会(NYHA)心機能分類I~II度の心不全へのペーシングは推奨されていない点を指摘し,「今回の結果を日常臨床に取り入れるまでには,臨床転帰を検討する大規模臨床試験で5年以上の長期追跡が必要」と述べている。
 
一方,クリーブランドクリニック(オハイオ州クリーブランド)のBruce D. Lindsay博士は,NEJMの論評 (2009; 361: 2183-2185)で「洞不全へのRVAペーシングの有害作用は明らかで,登録基準を高度房室ブロックのためにペーシングを要する例(RVA群62%, 両室群55%)に限定すべきであった」と批判。
今回の結果は現行のガイドラインを変更するものではないとし,
(1)洞不全を伴う患者には,RVAペーシン グを最小化する現在の標準療法を遵守
(2)正常LVEFで高度房室ブロックを伴う全例に両室ペーシングを選択するのではなく,毎年の心エコー検査で患者を注意深くフォローし,左室機能に有意な変化が認められる場合にのみ両室ペーシングに切り替える
―などを推奨している。
 
出典 Medical Tribune 2010.1.15
版権 メディカルトリビューン社
 
 
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