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CABG の「できる限り動脈グラフト」は正しいか
冠動脈バイパス術(CABG)は,経皮的冠動脈イン ターベンション(PCI)と並ぶ虚血性心疾患の2大治療法の1つであり,予後改善効果が実証された唯一の治療法ともいえる。
<私的コメント>
「予後改善効果が実証された唯一の治療法 」という表現はPCIには「予後改善効果が実証されていない」とも読める文脈になってしまいます。
1960年代以降,移植血管であるグラフトの種類や術式の両面で進化を遂げてきており,近年分析データが集積されたことにより,エビデンスベースの検討が可能となってきた。
今回,帝京大学心臓外科学講座の真鍋晋講師は,榊原記念病院(東京都)心臓外科の高梨秀一郎部長らとともに同院における手術データからグラフト選択とグラフトデザインを検討した。
その結果,グラフト開存率を高めるには,内胸動脈グラフトを最大限有効に活用しつつもこれにとらわれるべきでないことや,コンポジットグラフトは最小限にすべきなどの知見が得られた。
90年代以降に動脈グラフト使用の流れ
CABGのグラフト選択については,1990年代初めまで大半が静脈で,その多くは大伏在静脈だった。
その後,静脈グラフトは動脈硬化を起こしやすく,長期開存性に問題があることが明らかになってきたことや,内胸動脈をグラフトとして用いると,術後10~20年を経ても高い開存性を維持できることが報告 されるようになり,動脈グラフトを優先的に使用する機運が一気に高まった。
さらに,グラフト用の動脈の種類も橈骨動脈,胃大網動脈などへと拡大していっ た。
このような経過を経て、CABGでのグラフト選択は動脈グラフトが主流となり,「2本ある内胸動脈と橈骨動脈を最大限に利用する」という方針がCABG の標準的な戦略となった。
デザイン面でも,1本のグラフトから2本以上のグラフトを分岐させる「コンポジットグラフト」が好んで用いられるようになってい た。
動脈グラフトに特異的な術後1年以内に生じるグラフト劣化
同院では,従来から可能な限りCABG直後と1年後の2回に造影検査を施行していたが,真鍋講師らは,手術直後は血流がきれいに通っていた動脈グラフトの中にも,1年たつと糸のようにやせて血管機能を果たさない形状(ストリングサイン)を呈するものが結構あることに気付いた。
また,元の冠動脈との間で起 こる血流の競合に負け,グラフトが萎縮したりする現象も報告され,必ずしも動脈がCABG用グラフトとして万能ではない証拠も積み上げられてきた。
そこで同講師らは,同院でのオフポンプCABG後の血管造影所見をすべて集積。
術直後に良好な開存が確認された患者243例のグラフト中,1年後にびまん性の狭窄や閉塞により血流が損なわれた早期不全の血管を有するもののみを抽出し,背景因子を解析した。
遠位吻合部は全体で778カ所で,うち早期不全が認められた107カ所を解析対象とした。
グラフト不全の要因としては,もともとの血管の状態の悪さや縫合技術の低さなどさまざまな背景が考えられる。
同講師らの検討では,術直後の開存度の高いグラフトだけを選抜しているため,グラフト選択以外の要因をあらかじめ除外できている点がポイントといえる。
解析の結果,従来の方針を見直すべき知見が浮かび上がってきたという。
狭窄度を考慮,コンポジットグラフトは限定的,2本の内胸動脈を最大限有効に
すなわち,術後1年でグラフトが閉塞したり,ストリングサインを呈する早期不全の発生には,患者の年齢や糖尿病・高血圧といった併存疾患の有無,喫煙歴,また循環器治療薬の投薬の有無といった患者背景の因子とは関係が認められなかった。
一方で,
(1)グラフトの種類
(2)元の冠動脈の狭窄度
(3)コンポジットグラフトの吻合部位の数
—については危険因子として有意な相関関係が認められた(Journal of Thoracic and Cardiovascular Surgery 2010; 140: 1306-1311)。
この結果から,冠動脈狭窄度が低い場合やコンポジットグラフトで吻合部位が多い場合は早期の不全発生率が高く,また,動脈グラフトでも内胸動脈以外では発生率が高くなることが示されていた(表)。

真鍋講師は,グラフトが早期不全に至る理由として「リモデリングが起こっているのではないか」と推測。
冠動脈とグラフトとの間に生じる血流量競合によりグラフト内の血流量がある閾値を下回ると,閉塞やストリングサインが生じるのではないかという。
なお,同講師はストリングサインが予後に直接影響しない可能性にも言及した。
「バイパス機能が不要になったためにグラフトが早期不全を来すのであり,再び血流が必要になるとストリングサインを来したグラフトに血流が回復するという説もある」と述べた。
<私的コメント>
「グラフトの早期不全 」はリモデリング、「ストリングサイン」は血流低下という考え方です。
リモデリングが短期間に起こるということですが、ストリングサインが血流依存性ならこちらの方が短期間で起こるような気がします。
ストリングサインを呈したグラフトの遠隔期の転帰はまだ十分に解明されておらず,今後のさらなる検討が不可欠とい う。
以上から,同講師は現在
(1)2本の内胸動脈を最大限有効に使用
(2)コンポジットグラフトの使用は最小限に
(3)胃大網動脈や橈骨動脈の重症狭窄病変への使用は限定的に
—を新たなCABG戦略としている(図)。
また従来の動脈グラフト利用を金科玉条とせず,場合によっては静脈グラフトの可能性も考慮しつつ,標的冠動脈の狭窄度を参考に最適なグラフトデザインをすることが重要としている。

出典 MT Pro 2011.1.27
その他
「葦の髄」循環器メモ帖 http://yaplog.jp/hurst/
(循環器専門医向き)
ふくろう医者の診察室 http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き)
井蛙内科/開業医診療録(4)2009.10.16~
http://wellfrog4.exblog.jp/
井蛙内科/開業医診療録(3)~2009.10.15
http://wellfrog3.exblog.jp/
井蛙内科/開業医診療録(2)2008.12.10~
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井蛙内科/開業医診療録~2008.5.21
http://wellfrog.exblog.jp/
(内科医向き)
「井蛙」内科メモ帖
http://harrison-cecil.blog.so-net.ne.jp/
があります。
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