戯れ言たれる侏儒
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冠動脈疾患の診断の進化

戯れ言たれる侏儒 / 2011.01.31 00:19 / 推薦数 : 1
冠動脈疾患の画像診断の各モダリティにはそれぞれ強みと弱点があります。
保険点数からみた診断におけるコストパフォーマンスや患者侵襲の有無の問題もあります。
またエビデンスの集積にはモダリティ間で差があります。
 
きょうは、そのような問題点をディスカッションした座談会で勉強しました。
 
 
冠動脈疾患の診断はここまで進化した
司会
山科 章 主任教授 東京医科大学循環器内科
出席者
陣崎 雅弘 准教授 慶應義塾大学放射線診断科
近森 大志 教授 東京医科大学循環器内科
寺島 正浩 院長 心臓画像クリニック飯田橋
松本 直也 氏 駿河台日本大学病院循環器科
 
 
山科 
冠動脈疾患の増加に伴い,診断ツールとしての画像診断の重要性が高まっています。
最近では,画像診断で狭窄病変とそれに伴う虚 血のある部位を確認した上で血行再建を行うというコンセプトが明確になっていますので,画像の見え方によって治療方針が決まるといっても過言ではありませ ん。
 
こうした中,わたしは日本循環器学会から「冠動脈疾患の非侵襲的診断法に関するガイドライン」の作成班長の任を賜り,2009年に刊行しました。
しか し,この領域の進歩は目覚ましく,ガイドラインのためのデータをまとめた2007~08年以降も診断機器は日々進化し,新たなエビデンスも登場していま す。
また,ガイドラインに従って画像診断を活用していくためには,医師個人の力では御しえない問題点も山積していることが指摘されています。
 
そこで,現在の画像診断が抱える課題を整理し,画像診断の可能性を確認すべく,第一線でご活躍中の先生方にお集まりいただきました。
より良い診療につながる画像診断の在り方と今後の展望について,伺ってまいります。
 
CTは多列化・低被ばく化により安全かつ短時間での撮影が可能に
山科 
最初に,診断機器の進歩・進化というところから始めたいと思います。
 
陣崎 (CTについて)
心臓CTの歴史は,マルチスライスCTが登場した1998年に幕を開けました。
それ以前のCTは,89年にヘリカルCTが登場したことによって比較的高速化したとはいえ,1回転の速度が1秒程度であり,とても心臓の動きについていけるものではありませんでした。
しかし,4列のマルチス ライスCTが登場し,回転速度は0.5秒ぐらいに縮まりました。
加えて,同じころ開発された心電図同期管電流制御という手法により,1回転全部のデータが なくても3分の2周分のデータを拡張期に撮ることで心臓の静止画像を構築できるようになりました。
 
とはいっても,4列CTでは心臓全体を撮影するのに相当時間がかかり,実用的ではありませんでした。
そこで,各社はさらなる多列化を目指してしのぎを削 り,2002年には16列,2004年には64列のCTが開発されました。64列CTでは,わずか数秒程度で心臓全体を撮影することが可能となり,冠動脈 狭窄の診断精度は,感度・特異度とも90%を超え,特に陰性的中率は100%に近い数値が得られるようになりました。
これにより,心臓CTの普及は飛躍的 に進みました。
 
それ以降も多列化を目指す動きは止まらず,近年は320列という機器も登場しています。
 
しかし,以前のように各社横並びに多列化競争を繰り広げるのではなく,管球の数を増やすメーカー,分解能の向上を目指すメーカーなど,進化の方向は多様化しています(図1上)。
 
図表また,多列化競争が一段落した2004年以降は,被ばく線量を低く抑えようとする動きが本格化し,さまざまな新技術が相次いで開発されました。
 
例えば, 常に同じ線量で撮り続けるのではなく収縮期に線量を下げる方法,拡張期のみ曝写するStep & Shootという方法などです。
 
これらの手法で,心臓CTによる被ばく線量は従来の3分の1~4分の1程度の4.6mSvにまで低減されました。
これは, 冠動脈造影(CAG)の平均的な被ばく線量(3~6mSv)とほぼ同じです
 
山科 
CAGと変わりない被ばく線量で高い解像度の画像が得られることから,普及が急速に進んだということですね。
 
 
 
心臓全体を評価できるMRI,エビデンスに富むSPECTも高速化
山科 
寺島先生は,MRI,CT,エコーを駆使した循環器の画像診断クリニックを開業されていますが,MRIの強みはどんなところですか。
 
寺島 
MRIの最大の強みは,一度の検査で冠動脈の状態から心筋の性状まで,心臓全体を総合的に見ることができることです。
心筋の性状とい うのは,虚血や梗塞の有無だけでなく,心サルコイドーシスや心筋炎など,さまざまな病態を含んでおり,それらを鑑別することができるのです。
 
山科 
検査にかかる時間はどのくらいですか。
 
寺島 
シネ,アンギオグラフィー(MRA),負荷心筋パーフュージョン,遅延造影をすべてやって45~50分程度です。
当クリニックの標準 的な心臓MRI検査の場合,1.5Tの磁場をかけて最初にシネMRI,次に冠動脈全体のMRAを撮ります。
所要時間はだいたい15分程度で,ここまでなら 造影剤も不要です。
次に,造影剤を入れて負荷心筋パーフュージョンMRIを撮るのに15分,続いて遅延造影に15分という感じです(図2)。
 

 

図表
 
山科 
解剖学的情報から機能まで,冠動脈疾患を診る医者が見たいもののすべてを1時間以内の検査で見ることができるのですね。
 
寺島 
1つ1つの手技を見ると,例えばMRAはCAGに比べて分解能が低いとか,パーフュージョンMRIには造影剤急速注入によるアーチ ファクトがあるとか,遅延造影では不整脈などによるアーチファクトを排しきれないとか,それぞれ問題はあります。
しかし,全体を総合的に見て把握するには 極めて有用な検査です。
ただ,当院では32チャネルのマルチチャネルコイルを使った高速スキャンを導入して大幅に時間が短縮されましたが,これがなかったら1時間以内というのは不可能です。日本全国で標準的に実施することはできないと思いますが,技術的にはここまで来ているということです。
 
なお,現在のMRIは1.5Tのものが一般的ですが,近年は3T,さらには7Tという超高磁場MRIも登場しています。
高磁場MRIは従来のMRIに比 べて信号雑音比(SNR)が高く,鮮明な画像が得られます。
将来的には,より鮮明な画像を短い時間で撮影できるようになるのではないかと期待しています。
 
松本 (SPECTをめぐる最近の状況について)
SPECTは心筋の血流を評価するモダリティであり,20年にわたるエビデンスの蓄積がありますが,ハードウエアの進化はほとんど止 まっており,ソフトウエアの進化で時代のニーズに追い付いてきたというのが最近までの状況でした。
しかし,昨年10月に半導体検出器を搭載した米 General Electric社製の多検出器型ガンマカメラがわが国でも承認されたことにより,SPECTをめぐる状況も大きく変化することが予想されています。
 
この新型ガンマカメラは心臓検査専用に設計された小型軽量の機器であり,感度・特異度ともに90%以上という従来のSPECTの特徴はそのままに,優れ たスペースユーティリティーを実現しました。
さらに,従来のものに比べてトレーサーの必要量が少なく,最小限の被ばく線量での撮影が可能です。
撮像時間も 短くて済むため,短時間でたくさんの患者さんに検査を施行できるようになると思われます。
 
山科 
被ばく量も検査時間の長さも患者さんには大きな負担ですから,それらが軽減される意義は大きいですね。
今後の動向に期待したいと思います。
 
 
ガイドライン上同列のCTとSPECT
コストと低被ばく化でCTに軍配か
山科 
さて,今,CTとMRI,SPECTという3つのモダリティについてご紹介いただきましたが,われわれ臨床医には,これらをどのよう に用いていくかが最大の関心事であろうと思います。
そこでわたしたちは,前述した「冠動脈病変の非侵襲的診断法に関するガイドライン」を一昨年にまとめた わけですが,その概要について,策定の中心となった近森先生からご紹介いただけますか。
 
近森 
このガイドラインは,冠動脈病変を単独の病変として診断するのではなく,虚血性心疾患の診断・管理という一連の流れの中で,最終的に 到達すべき目標を見据えた上で診断するためのガイドラインです。
すなわち,病変の解剖学的な診断にとどまらず,病態や治療と関連付けた診断の進め方を指南 していることが特徴です。
 
ガイドラインで取り上げたモダリティは,前述の3つに安静時心電図,運動負荷心電図,心エコーを加えた6つです。
また,これらを用いて診断すべき病態と しては,慢性狭心症,急性冠症候群,陳旧性心筋梗塞,血行再建術の術後評価とフォローアップ,その他の冠動脈疾患,無症候の症例の6つを取り上げ,それぞ れの病態に即した診断の進め方を各論で詳述しました。
中でも,慢性安定労作性狭心症の項に掲載した診断樹(図3)は最も活用度が高いもので あろうと思います。
この診断樹では,最初に運動負荷心電図を取り,Dukeスコアによってリスクを評価した上で,中等度リスクと判定された症例ないしは判 定不能であった症例に対し,解剖学的に冠動脈病変を診断する冠動脈CT,あるいは機能的に心筋虚血を評価するSPECTを行い,必要に応じてさらにパー フュージョンMRIへと進むという形になっています。
 
図表
 
 
 
山科 
冠動脈CTとSPECTの選択は医療機関の判断に任せられたわけですね。
 
近森 
はい。
ただし,冠動脈CTを優先するには,十分な経験と設備を備えた施設であること(施設要件)と,被ばくへの感受性や腎機能などに 問題がなく,冠動脈の高度な石灰化病変がないこと(患者要件)が条件です。
いずれにも問題がなければCTを優先して構いませんし,エビデンスを重視して SPECTを選択しても,もちろん構いません。
 
山科 
ただ,実際の医療現場でどのような選択がなされたかというと,どうもCTの方に患者が流れているようです。年次統計を見ると,CTの実施件数は2008年には20万件を超えている一方,負荷シンチは10万件を割っています()。
松本先生,その辺りは現場でどのように受け止められていますか。
 
図表
 
松本 
やはりSPECTは1件の検査にかかる時間が長くコストが高いこと,それに被ばく量が若干多いこともあって,検査の敷居が少し高く なっているのではないかと思います。
一方,CTには造影剤を使うというデメリットがありますが,コストが低い分,敷居が低いのだと思います。
特に,わが国 は諸外国に比べてCTのコストが非常に安いですからね。
 
陣崎 
その通りだと思います。
当院でも,CTとSPECTのどちらかを選択する場合,主治医も患者さんもコストの面からCTを選択されることが多いです。
 
松本 
CTにも被ばくのリスクはありますが,最近の冠動脈CTは数mSv程度の線量ということなので,この点でもCTに軍配が上がりますね。
ですが,SPECTはエビデンスが最も蓄積されており,そこから得られる指標が冠動脈疾患の長期予後の指標になる点をわたしは高く評価していますので,コストや手間のために敬遠されてしまうのは残念です。

ガイドラインは浸透しているか,保険点数は適正か

松本
コストについてさらに言えば,トレッドミル負荷心電図のコストの安さは逆説的な意味で問題です。医師,技師各1人が1時間かけて行う検査に対する診療報酬が800点というのは不当に安いと言わざるをえません。
 
山科
同感です。患者さんにとってはありがたいことですが,医療機関には厳しいですね。
 
松本
特に,負荷心電図は診断樹で最初の「入り口」に位置付けられている検査です。多くの患者さんが必要とする検査なので,その辺りのことも考慮してもらいたいところです。
あと,MRIは造影剤を使う場合と使わない場合でコストが違いますが,使わなければ非常に安価です。検査時間も短くなってきていますし,造影剤も放射線 も使わない完全に非侵襲的な検査で冠動脈を見れる点は非常に大きなメリットです。
検査前確率の低い患者さんにはCTよりもむしろMRIを活用するのも一案 ではないかと思います。

山科 
寺島先生のところはCTとMRIのどちらも選べる環境ですが,どのように使い分けていますか。

寺島 
基本的には依頼主の意向を尊重します。
もちろん,慢性腎臓病(CKD)のある人や石灰化が疑われる人にはMRIを選択しますが,その辺りは依頼主の方もよくご存じで,そういう場合は「まずMRIでお願いします」と依頼されることがほとんどです。

山科 
ガイドラインは現場にかなり浸透しているということでしょうか。

陣崎 
当院の循環器の先生方はかなりガイドラインを意識してくださっていると思います。
ほとんどの先生方が中等度リスクというガイドライン の指標を順守して,きちんと患者さんをセレクトして送ってくださいますので,当科における心臓CT検査件数は1日当たり5,6件程度です。
大学病院の外来 の数からすると決して多くはありませんが,これは非常に良いことだと思います。

山科 
なるほど。検査機器の高性能化や低被ばく化によって検査へのハードルが低くなるのは良いことですが,不要な人にまで検査が乱発されるのではないかと少々危惧していましたが,今のお話を伺って安心しました。

 

出典 Medical Tribune 2011.1.27
版権 メディカルトリビューン社

 

 

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「葦の髄」循環器メモ帖 http://yaplog.jp/hurst/
(循環器専門医向き)
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http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
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井蛙内科/開業医診療録(4)2009.10.16~
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ご承知のように「カデュエット」はアムロジピンとアトルバスタチンの合剤です。
この薬剤の心血管イベントリスク低減効果についてはCRUCIAL (Cluster Randomized Usual Care vs. Caduet Investigation Assessing Long-term Risk)試験として第20回欧州高血圧学会(ESH)学術集会で発表されました。

「カデュエット」が10年心血管イベントリスクモデルによる冠動脈心疾患と致死的な心血管疾患(CVD)リスクを削減
http://www.pfizer.co.jp/pfizer/company/press/2010/2010_06_30.html



以下はこの記事の紹介です。
■ フラミンガム・リスク評価モデルは米国で、SCORE(Systematic Coronary Risk Evaluation)リスク評価モデルはEUで、それぞれ広く使用されています。
■カデュエット」を投与した12ヵ月にわたる治療によって、心血管イベント10年リスクモデルにおける総CHDを、通常療法群に比べて相対的に27% 低下させました。
リスク評価にはフラミンガム・モデルを使用して行われました。
フラミンガム・モデルでは、心疾患リスク計算の基礎として、性別、年齢、血 圧、総コレステロール、LDLコレステロール、HDLコレステロール、喫煙、糖尿病の状態など、健康とライフスタイルの諸因子が使われます。
■二次的試験評価項目であるSCOREによる致死的なCVDリスクの低下は、2つの治療群の間で23%という相対的な差を示しました。
欧州モデルであるSCOREで測定すると、「カデュエット」は大きな減少を示しました。
SCOREによる計算に含められた危険因子は、性別、年齢、喫煙、収縮期血圧、総コレステロールです。

つまり、
冠動脈リスクはフラミンガム・モデル
二次的試験評価項目の致死的なCVDリスクはSCORE
で評価したことがわかります。

さて、最近「フラミンガム・リスク評価モデルの簡略版」が冠動脈リスクを誤って評価する可能性があるという論文が発表されました。

 

 

フラミンガム・リスク評価モデルの簡略版 冠動脈リスクを誤って評価する恐れ
フラミンガム・リスク評価モデルは冠動脈イベントなどのリスク予測に広く用いられているが,ポイント式の同モデル簡略版の精度を検証したサンフランシスコ退役軍人局(VA)医療センターとカリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)のMichael A. Steinman助教授らは「簡略版による算出リスクを基準にすると,何百万人もの米国人の冠動脈イベントリスクが過大あるいは過小評価される可能性がある」とJournal of Internal General Medicine(2010; 25: 1145-1151)に発表した。

 

オリジナル版と簡略版を比較
フラミンガム・リスク評価モデルは,年齢やコレステロール値,血圧,喫煙歴などの危険因子に基づき,心筋梗塞や脳卒中などの10年リスクを評価するモデルで,オリジナル版とポイント式の簡略版がある。

フラミンガム・モデルのオリジナル版では,リスクは複雑な数式により算出されるが,簡略版は各危険因子をポイントで示す方式となっている。

米国コレステロール教育プログラム(NCEP)-ATPⅢのガイドラインでは,将来の冠動脈疾患リスクを予測する手段としてフラミンガム・モデルを用い ることが推奨されており,同モデルのオリジナル版または簡略版に基づき,患者を3つのリスク群に分類し,最高リスク群に対してはより積極的なコレステロー ル低下療法を行うことを推奨している。

研究責任者のSteinman助教授は「オリジナル版と簡略版では結果がかなり異なる可能性があり,それによりどのような治療を受けるかが大きく左右される。今回の結果はわれわれの予想を裏付けるものであった」と述べている。

 

570万人が異なるリスク階層に
Steinman助教授らは今回,フラミンガム・モデルのオリジナル版とポイント式の簡略版を用いたリスク予測と分類に差が生じるか否かについて検討した。
対象は,米疾病管理センター(CDC)の助成で実施された2001~06年の米国保健・栄養調査(NHANES)の参加者で,NCEP-ATPⅢ診断基 準リスク層別化が推奨される2,543例。

これらの被験者は,フラミンガム・モデルを用いて将来の心血管リスクを予測するようにガイドラインで推奨されている3,900万人の米国成人の代表として選ばれた人である。
個々の被験者について,オリジナル版と簡略版の両モデルを用いてリスク評価を行い,判定結果を比較したところ,多くの患者で大幅に異なる結果が示された。
簡略版では,被験者の15%がオリジナル版での算定とは異なるリスク階層に分類された。

全米規模で換算すると,簡略版に基づきリスクを算出した場 合,570万人の米国人がオリジナル版とは異なるリスク階層に分類され,うち390万人はより高いリスク群に,180万人がより低いリスク群に分類される ことが分かった。

同助教授は「各群の平均では統計学的差異は相殺される。しかし個々の患者にとっては,リスク算定に違いが出ることは重要な意味を持つ。ポイント式の簡易版モデルを用いることで,過度あるいは不十分な治療を受けることになる」と指摘している。

 

影響を受ける患者への配慮を
ポイント式の簡略版は,紙とペンがあれば数分で評価が可能で,10年ほど前に導入された。

当時はコンピュータや携帯情報端末(PDA)の性能が不十分で,診療所でもこうした機器は一般的に使用されていなかった。

Steinman助教授は「リスク予測の標準化された手法がない中で,ポイント式の簡略版はかなり改良されてきた。

しかし,コンピュータやPDAが手軽 に利用できるようになった現在では,オリジナル版を用いたリスク評価も可能である。

つまり,現在では複雑な数式でもこれらの機器を用いることで容易に計算 できるようになり,ポイント式の簡略版よりも正確なリスク評価を行うことができる。

したがって,ほとんどのケースで簡略版を利用する理由は存在しない」と 指摘している。
さらに,同助教授は「さまざまな疾患や病態に対するリスク予測モデルが次々と開発されており,この問題は医学界において共通のものかもしれない。
簡略版リスク予測モデルを開発する際には,個々の患者に与える潜在的な影響に配慮する必要があるだろう」と述べている。
 

出典 Medical Tribune 2011.1.27
版権 メディカルトリビューン社

 

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井蛙内科/開業医診療録(4)2009.10.16~
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見逃されている大動脈弁狭窄症患者の症状
最近のNew England Journal of Medicineから「手術ができない重症な大動脈弁狭窄症(AS)患者のうち,従来の内科的治療では1年生存率50.7%,1年心関連死亡率44.5%」という悲惨な調査結果が報告された。
わが国でも高齢化の進展および動脈硬化性疾患の増加に並行して,高齢者のASが確実に増えている。
本症を放置すれば予後は極めて不良だが,時機を逃さず 大動脈弁置換術(AVR)を実施すれば予後が改善される。
このことをしっかりと認識し,日々の診療に当たることが大事である。
本対談では,手稲渓仁会病院 心臓血管センター センター長の村上弘則氏と大阪市立大学大学院循環器病態内科学准教授の室生卓氏から,わが国での未治療AS患者の現状と,1人でも多くのAS患者を救うために何ができるのかについて,お話いただいた。
Leon MB, et al. N Engl J Med 2010; 363(17): 1597-1607
 
高齢化によるAS患者増加の実態
村上 
以前はリウマチ性のASが主流でしたが,最近では高齢化を背景に動脈硬化が強く関連する硬化性ASがそれに置き換わっています。
当科で診断された新規硬化性AS患者は軽症も含め2000年度に29人でしたが,2006年度には105人へと急増しています(図1)。
食生活の欧米化によって,高齢者にも動脈硬化が増えており,それと関連している硬化性ASもまた,高齢者を中心に増加を続けているのだと思います。
 
 
村上 
残念ながら,未診断で放置されている患者さんがかなり多く存在するものと推測されます。
また,診断されながらも適切なフォローがされ ていないケースもあると思います。
ASは高齢であっても安全に手術が可能で,時機を逃さずに手術できれば良好な予後が期待できます。
それにもかかわらず, 治療はもとより確定診断さえなされず放置されている現状は,残念でなりません。
 
室生 
何故,AS患者が未診断・未治療で放置されているのか。
それをどう解決していくべきなのか。
本日は一緒に考えていきたいと思います。
その前に,重症なAS患者がどの程度手術を受けているか,そしてASを放置することのリスクについて再確認しておきます。
まず,当院では1995年1月から2007年4月に重症ASと診断された269例を調査したところ約50%しか手術を受けていませんでした。
そして,手術が必要ながらも手術を受けなかった患者群の5年生存率は28%であり,手術を受けた群の85%に比べて非常に不良でした(図2)。
もちろん,全身状態が悪かったり,認知症などで手術を受けることができない場合もありますが,それでも重症ASの予後は極めて悪いと言えます。
この結果からも適切な時機にAVRを行えば予後が改善するAS患者も多いと言うことができます。

 

図表
 
村上 
われわれの施設では,2000年1月から2006年12月に手術が必要な重症AS患者を調査したところ,約3割しか手術を受けていませんでした。
理由としては年齢,拒否,合併症などが挙げられます。
 
 
なぜAS患者が放置されてしまっているのか?
村上 
AS患者が増加する一方で,適切な診断・治療がなされていない今の状況に対して,早急な対策が求められています。その対策を講じるに当たっては,まずASが放置されている理由を知っておくべきです。
 
室生 
まず,医師も含め医療者側のASに対する認識が低いことが原因ではないかと感じています。
われわれの反省からですが,循環器内科医でもASは確実に進行している疾患という認識が少し足りない気がします。
軽症であった患者さんが気付いたときにはかなり重症に進行していたということもあり ます。
また,循環器を専門としないプライマリケア医の先生方に関しては,ASの現状に即した正しい情報が行き届いていない,というのも原因の1つではないかと感じています。
われわれが学生のころは,「弁膜症はこれから減る」と教えられたものですが,現実は全く逆になっているのですね。
 
村上 
患者さん側はどうでしょうか。
患者さんの意識の問題も見逃すことはできません。
高齢になれば,当然のごとく息切れくらいは起こすよう になります。
それが実際にはASの症状だったとしても,本人には判断がつきませんから,年齢相応の変化だと勝手に判断して自ら生活を制限します。
このよう に,患者さんが症状を自覚していない場合,医師でも容易にこれを見抜けません。
つまり,問診で高齢者のASを見つけることは難しく,結果としてASが放置 されているのが現状です。
本当に症状があるかどうかを明らかにするためにも日常生活に即した丁寧な問診を心がけることが必要です。
 
 
聴診することがAS診断の第一歩
室生 (ASの診断を早期に確定するには)
まずは,循環器内科医を含め他科,プライマリケア医の先生方にも,高齢者の硬化性ASは増えているという事実を踏まえ,次の点をあら ためて認識していただきたいと思います。
(1)Listen:
ASは聴診(心雑音の聴取)で比較的容易に診断できるので,高齢者であれば,まず聴診をする
(2)Ask:
患者さんがASの症状を自覚していない場合も多いので,本当に症状があるか日常に即した丁寧な問診をする(3)Explain:
タイミング が重要であるので,手術機会を逃すと予後が悪いことをしっかりと患者さんに説明する
(4)Follow:
ASは確実に進行するので,無症候でも定期的に しっかりフォローする—。
 
以上の“AS診断4カ条”をぜひとも念頭に置いていただきたいと思います。
その上で,普段から生活習慣病などでフォローしておられる高齢患者に対して, 聴診を欠かさないよう強くお勧めします。
特に,動脈硬化性疾患を有する高齢者では,ASも高率に潜在していますから聴診が必須となります。
 
村上 
重要なご指摘です。
昨今は聴診を省略する場面も増えていますが,室生先生のおっしゃる“AS診断4カ条”を念頭に置きながら,高齢患 者には必ず聴診を行うようにしていきたいですね。
ASの聴診ポイントとして,「一般的に全胸部の広範囲に荒々しい収縮期雑音を聴取し,しばしば鎖骨部や頸 部に放散を認めること」を挙げておきます。
 
 
地域における医師同士の連携が重要
室生 
プライマリケア医の先生方には,多くの患者さんを救うために,未診断のASを早期に発見していただくことが大変重要です。
そのために も循環器専門医がプライマリケア医の先生方へ,現状に即した情報提供をすることがとても大切です。また,総合病院であれば,院内他科に働きかけることも必 要だろうと思います。
村上先生のご施設では,院内で初めてASを指摘される患者さんは多いですか。
 
村上 
院外から紹介されてくるのと同等もしくはそれ以上の割合の患者さんが院内で見つかっています。
その多くは一般的な循環器疾患でフォ ローアップ中の患者さんが,新規にASを発症した場合です。
それ以外にも,整形外科・外科などでなんらかの手術が計画された際に,術前検査で心雑音を指摘され,ASと診断されることも少なくありません。
院内で見つかるASの約3割が,術前検査に絡んだケースです。
ASが原因で本来の手術が受けられないということもありますので,他科においても早期にASを発見することは重要だと思います。
それと,高齢者では腎機能低下を来している方が多いので,腎臓内科の 先生がASを見つけるケースもまれではありません。
 
室生 
われわれの施設でも,術前検査で異常が認められ,循環器内科にコンサルされ受診してASが見つかるケースは確かにあります。
ただし, 手術を控えて精査するような場合ではASを見つけられますが,通常の診療ではやはり見逃しているケースが多いと言わざるをえません。
循環器専門医,他の専 門医,プライマリケア医を問わず,日常診療で高齢者を診ている先生は,今一度,ASを再認識すべきですね。
 
ところで,われわれは大学全体で定期的な勉強会を行っています。
大学の医師はもちろん,近隣の関連病院,開業医などの先生方にお集まりいただき,各科持 ち回りでテーマを決めています。
このような機会でASについて話し合うのも有用であると思います。
いつも患者さんを紹介していただいている先生方とは循環 器内科として別途ミーティングも行っていますし,今後もこのような活動の充実を図りたいと思います。
 
村上 
われわれの施設では近隣の先生方を対象に各エリアで勉強会を行っています。
ASのテーマを取り上げながら情報交換をする中で,聴診の 重要性を再確認しています。
また,フォローアッププログラムというのがあり,患者さんにフォローアップが必要な場合,必要に応じてご紹介いただいた先生に 次のフォローアップのタイミングを伝えています。
診療情報の共有にもなり,より確実なフォローアップを行うことができています。
 
 
聴診でASを疑ったら心エコー検査へ
室生 
地域での取り組みはとても大事ですね。
ところで,高齢者を診ておられる先生方が,聴診でASを疑う心雑音を聴取したとします。
もし,その先生が循環器専門でなかった場合,どうすべきでしょうか。
 
村上 
心雑音を聴取してASを疑ったら,まず心エコーを備えている最寄りの施設へ検査を依頼して,確定診断と重症度判定を行うことが大切です。
循環器専門クリニックでも総合病院でも構いません。
とにかく一度は専門医の診断を仰ぐことが,予後を損なわないために重要です。
 
室生 
「ASはさほど進行しない」,「症状が出現するまで大丈夫」などと認識されている先生方も少なくないと思いますので,それは本当に重要ですね。
心雑音を聴取してASを疑ったら,まず心エコーで病態把握を行ってから治療方針を立てるべきです。
 
村上 
循環器専門医の立場としては,病態把握のための検査を行うことは,決して迷惑ではありません。
 
室生 
「雑音があります。心エコー検査をしてください」と紹介状を書いていただくだけで結構です。
実際にASがなくても,まずはご紹介いただきたいですね。検査をすることで,患者さんとそのご家族は安心されますので。
 
村上 
普段から病診連携や診診連携を図っていれば,紹介の敷居は下がるでしょうし,ASのやりとりを通じて連携がさらに深まります。
勉強会などで顔を合わせた者同士であれば,連携もスムーズでしょう。地域ぐるみの連携が求められます。
 
 
QOL向上のための適切な手術タイミング
室生 (手術適応に関して)
心エコー検査の結果を踏まえ,主治医の先生と専門医が話し合い,軽症または中等症ならば 経過観察もしくは内科的治療が行われます。
その一方で,手術機会を逃さないために,適応判断をどう考えればよいのかが問題になります。
 
村上 
まずASが重度の場合,症状があればもちろん,症状がなくても心機能が低下すれば手術適応となります。
まだ結論には至っていません が,今後検討すべき課題として,高齢者において上記の基準で手術をしたのでは遅すぎる場合があります。
最近では,ASを心不全リスクと考えるようになっていますから,重症になる前の段階で待機的に手術した方が,予後改善のみならずQOLの維持・向上にもつながる可能性があります。
すなわち,心エコー検査で 大動脈弁圧較差,大動脈弁口面積を測定し,年齢や体表面積,合併症といった患者背景も含め,総合的に判断して手術タイミングを考えるべきです。
 
室生 
今,お話のありました高齢者への手術適応の問題ですが,当施設では主に70歳代の患者さんが手術を受けています。村上先生は年齢のファクターをどのようにお考えですか。
 
村上 
今は平均寿命も延びましたから,80歳代であっても適応があれば積極的に手術し,それで日常生活に復帰できる患者さんも珍しくなくな りました。
手術は安全ですし,予後は良好です。そうした経験から,80歳代という年齢だけで適応除外することはしていません。
むしろ当施設では,80歳代 の手術が増えています。
 
室生 
10年先の日本の状況を見るようですね。
 
 
ASは進行性疾患,フォローアップが大切
室生 
軽症から中等症であれば手術の必要はありませんが,ASは進行性の疾患であるため,心エコーでフォローアップする必要があります。
どのくらいの頻度で行うべきとお考えですか。
 
村上 
状況によりますが,おおむね年齢もしくは重症度で判断し,70歳代で中等症以下ならば年1回の心エコー検査でよいと思います。
一方,80歳代もしくは重症ASならば,より頻繁にフォローする必要があります。
 
室生 
フォローが遅れ,既に手遅れといった患者さんを経験したことがありますが,何か対策をされていますか。
 
村上 
われわれは,先ほど紹介させていただきましたフォローアッププログラムを利用し,院内の地域連携室に協力を仰いでいます。
診断のつい た患者さんを登録しておけば,地域連携室から定期的に主治医の先生と患者さんへ連絡されます。
このシステムにより,病態悪化の見落としをなくしています。
地域ぐるみで医師の連携が取れている状況が望ましく,地域連携室がその橋渡しをしてくれています。
 
 
疾患を理解していただくこと
それが,患者さんを救うこと
室生 
ASは軽症であれば一生涯手術が必要ない場合もありますが,重症であれば手術のタイミングが重要になってきます。
この手術機会を逃さないためには患者さんへの説明がとても重要です。
この点について村上先生はどのようにお考えですか。
 
村上 
医師からの説明は極めて重要ですね。
手術が必要な場合でも,話し方によっては,「もう年ですから手術は結構です」となりかねません。
重要なことは,
(1)珍しい病気ではなく最近増加している病気であること
(2)ASは進行性の病気であるため定期的なフォローアップが非常に大事であること
(3)手術が必要になっても適切なタイミングで行えば手術は安全に行われていること
(4)手術によって予後は改善し日常生活に復帰できること
—を折に触 れ説明しておくことが大切です。
 
 
室生 
わたしは重症ASの患者さんに対しては,「悲観する必要もないが,楽観してもいけない」と言っています。
客観的に,手術の必要性と得 られる利益を説明します。
心エコーでのフォローアップと,患者さんへの説明がしっかりとできていれば,それぞれの患者さんに合った手術のタイミングを逃さずに済みます。
 
 
AS患者を救うためにわたしたちができること
村上 
最後に,AS患者を取り巻くすべての医師が“AS診断4カ条”をあらためて振り返り,より多くの患者さんを救うために取り組んでいただくことを期待しています。
 
 
 
 
出典 Medical Tribune 2011.1.27
版権 メディカルトリビューン社
 
 
 
 

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CABG と動脈グラフト

戯れ言たれる侏儒 / 2011.01.28 00:43 / 推薦数 : 0

CABG の「できる限り動脈グラフト」は正しいか

冠動脈バイパス術(CABG)は,経皮的冠動脈イン ターベンション(PCI)と並ぶ虚血性心疾患の2大治療法の1つであり,予後改善効果が実証された唯一の治療法ともいえる。

 

<私的コメント>

「予後改善効果が実証された唯一の治療法 」という表現はPCIには「予後改善効果が実証されていない」とも読める文脈になってしまいます。

 

1960年代以降,移植血管であるグラフトの種類や術式の両面で進化を遂げてきており,近年分析データが集積されたことにより,エビデンスベースの検討が可能となってきた。

今回,帝京大学心臓外科学講座の真鍋晋講師は,榊原記念病院(東京都)心臓外科の高梨秀一郎部長らとともに同院における手術データからグラフト選択とグラフトデザインを検討した。

その結果,グラフト開存率を高めるには,内胸動脈グラフトを最大限有効に活用しつつもこれにとらわれるべきでないことや,コンポジットグラフトは最小限にすべきなどの知見が得られた

 

90年代以降に動脈グラフト使用の流れ

CABGのグラフト選択については,1990年代初めまで大半が静脈で,その多くは大伏在静脈だった。

その後,静脈グラフトは動脈硬化を起こしやすく,長期開存性に問題があることが明らかになってきたことや,内胸動脈をグラフトとして用いると,術後10~20年を経ても高い開存性を維持できることが報告 されるようになり,動脈グラフトを優先的に使用する機運が一気に高まった。

さらに,グラフト用の動脈の種類も橈骨動脈,胃大網動脈などへと拡大していっ た。

このような経過を経て、CABGでのグラフト選択は動脈グラフトが主流となり,「2本ある内胸動脈と橈骨動脈を最大限に利用する」という方針がCABG の標準的な戦略となった。

デザイン面でも,1本のグラフトから2本以上のグラフトを分岐させる「コンポジットグラフト」が好んで用いられるようになってい た。

 

動脈グラフトに特異的な術後1年以内に生じるグラフト劣化

同院では,従来から可能な限りCABG直後と1年後の2回に造影検査を施行していたが,真鍋講師らは,手術直後は血流がきれいに通っていた動脈グラフトの中にも,1年たつと糸のようにやせて血管機能を果たさない形状(ストリングサイン)を呈するものが結構あることに気付いた。

また,元の冠動脈との間で起 こる血流の競合に負け,グラフトが萎縮したりする現象も報告され,必ずしも動脈がCABG用グラフトとして万能ではない証拠も積み上げられてきた。

そこで同講師らは,同院でのオフポンプCABG後の血管造影所見をすべて集積。

術直後に良好な開存が確認された患者243例のグラフト中,1年後にびまん性の狭窄や閉塞により血流が損なわれた早期不全の血管を有するもののみを抽出し,背景因子を解析した。

遠位吻合部は全体で778カ所で,うち早期不全が認められた107カ所を解析対象とした。

グラフト不全の要因としては,もともとの血管の状態の悪さや縫合技術の低さなどさまざまな背景が考えられる。

同講師らの検討では,術直後の開存度の高いグラフトだけを選抜しているため,グラフト選択以外の要因をあらかじめ除外できている点がポイントといえる。

解析の結果,従来の方針を見直すべき知見が浮かび上がってきたという。

 

狭窄度を考慮,コンポジットグラフトは限定的,2本の内胸動脈を最大限有効に

すなわち,術後1年でグラフトが閉塞したり,ストリングサインを呈する早期不全の発生には,患者の年齢や糖尿病・高血圧といった併存疾患の有無,喫煙歴,また循環器治療薬の投薬の有無といった患者背景の因子とは関係が認められなかった。

一方で,

(1)グラフトの種類

(2)元の冠動脈の狭窄度

(3)コンポジットグラフトの吻合部位の数

—については危険因子として有意な相関関係が認められた(Journal of Thoracic and Cardiovascular Surgery 2010; 140: 1306-1311)。

この結果から,冠動脈狭窄度が低い場合やコンポジットグラフトで吻合部位が多い場合は早期の不全発生率が高く,また,動脈グラフトでも内胸動脈以外では発生率が高くなることが示されていた)。

 

 

真鍋講師は,グラフトが早期不全に至る理由として「リモデリングが起こっているのではないか」と推測。

冠動脈とグラフトとの間に生じる血流量競合によりグラフト内の血流量がある閾値を下回ると,閉塞やストリングサインが生じるのではないかという。

なお,同講師はストリングサインが予後に直接影響しない可能性にも言及した。

バイパス機能が不要になったためにグラフトが早期不全を来すのであり,再び血流が必要になるとストリングサインを来したグラフトに血流が回復するという説もある」と述べた。

<私的コメント>

「グラフトの早期不全 」はリモデリング、「ストリングサイン」は血流低下という考え方です。

リモデリングが短期間に起こるということですが、ストリングサインが血流依存性ならこちらの方が短期間で起こるような気がします。

 

ストリングサインを呈したグラフトの遠隔期の転帰はまだ十分に解明されておらず,今後のさらなる検討が不可欠とい う。

以上から,同講師は現在

(1)2本の内胸動脈を最大限有効に使用

(2)コンポジットグラフトの使用は最小限に

(3)胃大網動脈や橈骨動脈の重症狭窄病変への使用は限定的に

—を新たなCABG戦略としている()。

また従来の動脈グラフト利用を金科玉条とせず,場合によっては静脈グラフトの可能性も考慮しつつ,標的冠動脈の狭窄度を参考に最適なグラフトデザインをすることが重要としている。
 

 

出典 MT Pro 2011.1.27
版権 メディカルトリビューン社 

 

 

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井蛙内科/開業医診療録(2)2008.12.10~
http://wellfrog2.exblog.jp/
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2型糖尿病患者の心血管疾患予防についての座談会の記事で勉強しました。
 
エビデンスに基づいた2型糖尿病治療戦略
日本の2型糖尿病患者は急増しており,「平成19年国民健康・栄養調査結果」によると,予備群も含めた患者数は2,210万人に達した。
従来,2型糖尿病患者は,心血管疾患のリスクが高いことが知られていたが,近年,早期か らの血糖管理が心血管疾患予防に重要であることを示す報告が相次いでいる。
 

司会:
室原 豊明 氏 名古屋大学大学院循環器内科学 教授
コメンテーター:
小田原 雅人 氏 東京医科大学内科学第三講座 主任教授
出席者(発言順):
味岡 正純 氏 公立陶生病院副院長
天野 哲也 氏 中部労災病院循環器科 部長
近藤 隆久 氏 名古屋大学大学院循環器内科学
坂東 泰子 氏 名古屋大学大学院循環器内科学
石井 秀樹 氏 名古屋大学大学院循環器内科学

 
早期からの血糖管理により長期に心筋梗塞の発症を抑制
室原 
現在,心筋梗塞の患者の約6割が糖尿病,あるいは耐糖能異常(IGT)を有してお り、虚血性心疾患の治療と予防のために、循環器医による糖尿病の治療が重要となっています。
糖尿病患者は若年で心筋梗塞を発症する危険性が高くなっていますが、具体的なデータをご紹介ください。
 
小田原 
日本の2型糖尿病患者は,「平成19年 国民健康・栄養調査結果」によると,予備群も含めた患者数は2,210万人となっています(図1)。
 
 
 
糖尿病の大血管症への影響については,カナダで行われた約1,000万人の住民を対象とした大規模疫学調査によると,2型糖尿病患者は,2型糖尿病を 有していない方と比較して,14〜15年も若い年齢から心血管疾患や死亡の高リスク群へ移行することが報告されています(図2)。
 


 

さらに,最近,2型糖尿病患者の心血管疾患を予防するうえで,早期の血糖管理の重要性を示す報告が相次いでいます。
 
かつて,UKPDSなど大規模臨床試験の結果から,血糖管理により網膜症,腎症などの細小血管症は予防できるが,心筋梗塞などの大血管症の予防は 難しいと考えられてきました。

しかし,UKPDSの本試験終了後に行われた10年にわたる長期フォローアップ解析であるUKPDS80では,早期からスル ホニル尿素(SU)薬または基礎インスリンによる厳格な血糖管理を行った積極的治療群では,本試験終了後に同様の治療を行った従来治療群に比べて,細小血 管症に加えて心筋梗塞の発症も有意に抑制されたという興味深い結果が報告されました(表1)。
 
 
 
現在,UKPDS80で示された早期からの血糖管理の効果が長期間持続する現象は,“Legacy Effect”と呼ばれ,機序の解明が期待されています。

味岡 

従来,循環器医には2型糖尿病の治療において,血糖管理より血圧と脂質の管理を重視する傾向がありました。しかし,今回,“Legacy Effect”が報告されたことを受け,早期からの血糖管理の重要性を再認識し,治療を見直す必要があると考えています。

 
味岡 
血管の石灰化とびまん性病変があること,また治療後の経過がよくないことなどが特徴だと思います。
特に,血管全体が細くなるのは糖尿病患者に独特に見られる所見で,治療に難渋します。

天野 
動脈硬化はIGTの段階から進展しています。プラーク組織性状の判別が可能なIB- IVUSを用いて,IGT症例の冠動脈を検討したところ,多くの患者の冠動脈に,lipid richな不安定プラークが形成されていることが判明しました(Amano T, et al: JACC Cardiovasc Imaging. 1: 39-45, 2008)。
この結果からも,できるだけ早期から血糖管理を開始する必要があると思います。


近藤 

大学病院で心筋梗塞発症後の患者を多数治療していたときには,低血糖の危険性があるので,あまり厳格に血糖管理しないほうがよいと考えていました。
しかし,現在,産業医として早期の2型糖尿病患者を診療するようになり,2型糖尿病は早期から厳格に血糖管理したほうが,合併症は少ないと実感しています。

小田原 
2型糖尿病の罹病期間が長く,動脈硬化が進展した患者では,重篤な低血糖をいとわず 積極的に血糖を下げる治療は有益ではない可能性があります。
VADTの解析では,2型糖尿病の罹病期間が短いほど厳格な血糖管理による心血管イベントの抑 制効果が大きく,罹病期間が15年以上の群では,アグレッシブな血糖管理により,かえって心血管イベントのリスクが増大する傾向が示されました (Duckworth W, et al: N Engl J Med 360: 129-139, 2009)。
HbA1Cの平均値は低いほうが成績はよいので,罹病期間が長い患者では,重篤な低血糖に注意した血糖の下げ方を考慮するべきであることが示されたと思います。

坂東 
HbA1Cが5.8%以上に至った時点で患者に治療が必要であることを喚起します。
HbA1C5.8〜6.4%台の患者で過食や肥満を認める場合は1か月で1〜2kgの体重減少という目標を設定し,生活習慣の改善を指導します。
HbA1C6.5〜7.0%の患者については,経口血糖降下薬,あるいはインスリン抵抗性改善薬を追加します。


坂東 

生活習慣改善や糖尿病治療薬による介入後にもかかわらずHbA1Cが7.0%を超えれば,専門医に紹介し,連携して治療します。
ADA/EASDの治療アルゴリズムで中心的治療に位置付けられたSU薬




小笠原 (米国糖尿病学会(ADA)と欧州糖尿病学会(EASD)のコンセンサスによる治療アルゴリズムの改訂について)
この2年間に,2糖尿病治療薬の安全性と有効性を検証する報告が相次ぎ,これらを受けて,ADA/EASDコンセンサスの治療アルゴリズムが改訂されました(図3)。
 
 
 
2006年に発表された治療アルゴリズムでは,生活習慣の改善とメトホルミンで治療を開始し,血糖コントロールが不良の場合の併用薬として,SU 薬,基礎インスリン,チアゾリジン薬が同列に扱われていましたが,今回の改訂では,SU薬と基礎インスリンが第1段階の「十分に検証された中心的治療法」に位置付けられました。
 

欧米では,2型糖尿病患者の大多数がインスリン抵抗性を基礎的病態とする肥満型なので,この治療アルゴリズムでは,メトホルミンが経口血糖降下薬 の第一選択となっています。
一方,日本の2型糖尿病患者では,インスリン分泌不全を基礎的病態とする非肥満型の方が大半です。2006年に行われたアン ケート調査(日経メディカルオンライン,2007)によると,日本の糖尿病専門医の多くは,BMI25未満の非肥満型の患者にはインスリン分泌を促すSU 薬,肥満型の患者にはメトホルミンを第一選択としています。

 
室原 
循環器医は,インスリン抵抗性が虚血性心疾患の危険因子であることから,虚血性心疾患を合併する2型糖尿病患者に対し,インスリン抵抗性を改善する薬剤を使用する傾向が多いようです。
これに対して,糖尿病専門医のお立場からは,どのようにお考えですか。

 
小田原 
HbA1Cの低下が合併症の予防に必須であることは間違いありません。
SU薬は確実にHbA1Cが下がるので,タイトコントロールを目指すうえでは,やはり分泌系の薬剤を使用することが多くなります。
このため,多くの日本の糖尿病専門医は,非肥満型の2型糖尿病患者にはSU薬を選択しています。

 
 
非肥満型が多く,インスリン分泌不全が多かった日本人の2型糖尿病の病態は,欧米人とは異なっていました。しかし,近年,日本でも中年男性などを中心に肥満者が増えています。
病態の変化は起こっているのでしょうか。

 
小田原 
男性ではあらゆる年代でBMIが継続的に上がっており,女性でも40〜60歳代の方で顕著です。
肥満の増加が2型糖尿病患者の増加につながっていることは間違いありませんが,日本人の2型糖尿病の病態の基本はあくまでインスリン分泌不全です。

 
循環器医が求めるSU薬の安全性
室原 

続いて,血糖管理における安全性について検討したいと思います。
循環器医は低血糖を懸念してSU薬を敬遠する傾向があるようですが,いかがでしょうか。

 
小田原 
確かに,SU薬は良好に血糖をコントロールできるメリットとともに,低血糖のリスクがあるため,敬遠される先生もいらっしゃるようです。ただ現在は,SU薬にもいくつかの種類があり,第3世代SU薬グリメピリド(アマリール®)においては,単独や他剤への併用での血糖降下作用が確認されていますし(鈴木大輔ほか: PTM 4: 2004),第2世代SU薬グリベンクラミド(ダオニール®)に比べて,グリメピリドの低血糖発生率は低かったとの報告があります(林誠ほか: 糖尿病 49: 743-747, 2006)。

 
室原 
近藤先生は会社勤務の方も診療されていますが,低血糖は安全管理上の大きな問題ですね。

 
近藤 
以前はSU薬を使用する際,低血糖による勤務への影響を懸念していました。
しかし現在,グリメピリド1mg/日を服用している患者において低血糖症状はすべて報告していただいていますが,今のところ低血糖の報告はほとんどありません。
しかし,注意はしております。

 
室原 
SU薬は疲弊した膵β細胞を刺激し,二次無効を引き起こすという懸念が指摘されてきました。
糖尿病専門医の先生方は,SU薬の二次無効についてどう考えておられますか。

 
小田原 
UKPDS16で,従来療法群と,SU薬群,メトホルミン群の膵β細胞機能の低下速度が同等であることが示されています(図4)。
このように,二次無効と言われた現象は,2型糖尿病による高血糖が引き起こした自然経過と考えられています。

 
 
 
 
虚血プレコンディショニングを阻害しないグリメピリド
室原 

心筋梗塞の際に心筋を保護する虚血プレコンディショニングを,SU薬が阻害する可能性が指摘されています。
石井先生,SU薬の虚血プレコンディショニングへの影響についてご解説ください。

石井 
虚血プレコンディショニングは,先行虚血による虚血耐性獲得現象です。
狭心症発作を起こしてから心筋梗塞を発症した方は,狭心症発作を起こさずに心筋梗塞を起こした方よりも,梗塞範囲が小さくてすむことが知られています。
 

虚血プレコンディショニングには,心筋細胞内ミトコンドリアKATPチャネルの開口が重要です。
しかし,SU薬は膵臓でKATPチャネルを閉鎖してインスリン分泌を促進する作用を持っているわけですが,グリベンクラミドは心筋のKATPチャネルにも作用し,虚血プレコンディショニングを消失させることが示されています(図5)。
 
 
 
石井 (SU薬の薬剤間で違い)
はい。
グリベンクラミドなどの従来のSU薬とは異なり,グリメピリドは心筋細胞内ミトコンドリアKATPチャネルには作用しないため,虚血プレコンディショニングを消失させないことが報告されています(表2)。
 
 
室原 
本座談会では,2型糖尿病における虚血性心疾患予防のために,早期からの血糖管理が重要であることを再確認できました。
今後も,糖尿病専門医の先生方との連携を深め,糖尿病治療に取り組んでいきたいと思います。
 
出典 Medical Tribune 2009.10.8
版権 メディカルトリビューン社

 

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ACCELERATE試験

戯れ言たれる侏儒 / 2011.01.26 00:13 / 推薦数 : 0

兵庫県立尼崎病院・佐藤 幸人循環器内科部長の書かれたACCELERATE試験に関する記事で勉強しました。

 

「併用開始」でより良好な降圧効果を示したACCELERATE試験
レニン阻害薬とCa拮抗薬の単剤 vs. 併用
研究の背景:単剤で開始するか2剤併用するか迷う場合がある
高血圧患者の早期治療において,単剤から開始するのがよいか2剤併用から開始するのがよいかということに関して今まであまり検討されてこなかった。
もちろん,血圧がそれほど高値でない場合は,単剤でよいだろうし,あまりにも高い場合〔収縮期血圧(SBP)が180mmHg以上〕は高血圧性心不全から肺水腫を生じる危険もあるので,速やかに複数の薬剤を用いて降圧する必要があるだろうが,問題はSBPがそれほど低くも高くもない場合で,単剤で開始するか2剤併用で開始するか迷う場合である。

今回,英国から発表されたACCELERATE試験は,そのような問いに,幾分は答えてくれそうである。

Lancet1月13日オンライン版
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/sites/entrez/21236483


研究のポイント:併用開始群で早期により大きな降圧,全例併用後も維持
2008年11月~2009年7月に10カ国146施設において,18歳以上でSBPが150~180mmHg,拡張期血圧(DBP)が110mmHg以下の患者を対象とした。

患者は0~16週間はアリスキレン単剤開始群(レニン阻害薬アリスキレン150mg+プラセボ),アムロジピン単剤開始群(Ca拮抗薬アムロジピン5mg+プラセボ),併用開始群(アリスキレン150mg+アムロジピン5mg)群に1:1:2の比率で割り付けられた(それぞれ,318,316,620例)。
8週後,投与量はそれぞれの群で2倍にした。16~24週後は全患者がアリスキレン300mg+アムロジピン10mgの投与を受けた。
24週以後は,SBP 140mmHg以上またはDBP 90mmHg以上では利尿薬ヒドロクロロチアジド12.5mgを追加投与した。

その結果,8~24週において,併用開始群では単剤治療群よりも平均血圧で6.5mmHg(95%CI 5.3~7.7mmHg)有意に低下した(P<0.0001)。
全患者がアリスキレン300mg+アムロジピン10mgの投与を受けている24週では,その差は縮小したものの1.4mmHgの差が維持されていた(P=0.059;図)。

 


末梢浮腫,低血圧といった副作用のために薬剤を中止した患者は,併用開始群,アリスキレン単剤開始群,アムロジピン単剤開始群でそれぞれ14,14,18%であった。
アムロジピン単剤開始群では浮腫が有意に多く認められた(P=0.04)。


佐藤部長の考察:レニン阻害薬を組み入れた併用療法は主流となるのか
一般に高血圧患者が単剤で目標値に到達することは少なく,2剤以上が必要である。
降圧薬の投与量を2倍にするよりも,作用機序の異なる薬剤を2剤投与する方が,降圧効果が優れるとされている。
今回の試験の考察ポイントは以下にあると思われる。

1. 併用療法は早期の血圧低下をなしえるか?
今回の試験では,アムロジピン5mg,またはアリスキレン150mgで開始よりもアムロジピン5mg+アリスキレン150mgで開始した方が早期の降圧に優れていた。この結果は当然である。
各薬剤を倍量(アムロジピン10mg,またはアリスキレン300mg)にして単剤で開始するよりもアムロジピン5mg+アリスキレン150mgの併用が降圧効果に優れるか否かの検討が今後,臨床的には興味深い。

2. 早期の早急な降圧の差は,慢性期まで維持されるか?
16週以後は3群ともにアムロジピン10mg+アリスキレン300mgが投与された。
にもかかわらず,24週後,32週後ともに併用開始群の方が,単剤開始群よりもSBPで1mmHg前後低い数値を保ち続けた。
つまり,早期に良好な降圧が行われると,慢性期までその効果は持続する。
しかし,1mmHgの血圧値の差が統計学的に有意になるためには,多くの症例が必要である。
TROPHY試験はアンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)カンデサルタンの早期介入が長期まで好影響を及ぼしたという結果であったが,早期より,早急に降圧するのがよいのかもしれない。
ただし,合併症のある患者や高齢者では,急激な降圧が副作用につながることがあり,早急な降圧ではなく,慎重な対応が望まれる。

3. 併用薬はどの組み合わせが良いか?
LIFE試験以後,β遮断薬の心血管イベント効果が弱いとされ,ALLHAT試験ではα遮断薬に心血管イベント抑制効果はないとされ,ACCOMPLISH試験では「ACE阻害薬+Ca拮抗薬」併用の方が「ACE阻害薬+降圧利尿薬」の併用よりも心血管合併症予防効果の上で優れていた。
したがって,最近は「ACE阻害薬またARB+Ca拮抗薬」の組み合わせが主流である。
今回,新しいタイプの薬剤であるレニン阻害薬アリスキレンが用いられたのはスポンサーの影響であろうが,
(1)アリスキレンを第一選択薬として用いてよい,
(2)Ca拮抗薬と併用してよい
―ことが多施設試験で示された。
現在ガイドライン上,アリスキレンは新しい薬剤なので第一選択薬とはされていないが,次回の改訂が楽しみである。


出典 MT Pro 2011.1.25
版権 メディカルトリビューン社

 

 

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<番外編>
##PCI施行後の心血管イベント再発部位、PCI施行病変と未治療病変とで差はなし
PCIを施行した急性冠症候群患者697人を対象に、施行後の主要心血管イベントがPCIを施行した病変と未治療の病変のどちらに関連しているかを前向き自然歴研究で調査。
PCIを施行した病変に関連していた患者の割合は12.9%、未治療の病変に関連していた患者の割合は11.6%で、両病変の間に差は見られなかった。
原文
A Prospective Natural-History Study of Coronary Atherosclerosis.
Stone GW et al.
NEJM 2011;364:226-235.
http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa1002358

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抗血小板薬3剤療法

戯れ言たれる侏儒 / 2011.01.25 00:11 / 推薦数 : 0

クロピドグレル不応症のPCI施行例における抗血小板薬3剤療法の有用性を検討
血小板機能の測定によってクロピドグレル不応症(hypo-responder)と判定されたPCI施行例は、ステント血栓症のリスクが高いことが知られている。
一方、クロピドグレル不応症にCYP2C19遺伝子の多型(注)が関与していることが、最近の研究で示されている。

そこで、三重大学附属病院を中心とした多施設共同研究グループMcLORDD(試験統括医師;西川政勝氏)の谷川高士氏らは、CYP2C19*2、CYP2C19*3の両者またはどちらかを持つクロピドグレル不応症のPCI施行例において、通常の2剤による抗血小板療法(DAPT)にシロスタゾールを加えた3剤抗血小板療法(TAPT)の効果を検討し、その結果を米シカゴで開催された米国心臓協会学術集会2010(AHA 2010)で報告した。

対象は、ステントを留置した冠動脈疾患症例で、アスピリン(100mg/日)+クロピドグレル(75mg/日)で治療した158例(DAPT群)とDAPTにシロスタゾール(200mg/日)を追加した29例(TAPT群)で、それぞれの血小板機能を測定し、比較検討した。

貧血、血小板減少症、コントロール不能の脂質異常、出血中、手術予定、抗凝固薬を服用している心原性脳塞栓症などの症例は、対象から除外した。

血小板機能の測定は、20μM ADPによる光学的血小板凝集測定、VASP index 、VeryfyNow-P2Y12 assayの3方法を用いている。
また、CYP2C19の遺伝子多型に関しては、CYP2C19*1/*1(野生型)を高代謝型(EM)、CYP2C19*1/*2とCYP2C19*1/*3のヘテロ型を中代謝型(IM) 、CYP2C19*2/*2、CYP2C19*2/*3、CYP2C19*3/*3を低代謝型(PM)とした。

患者背景でDAPT群とTAPT群の間に有意差が見られたのは、喫煙(DAPT群8.9%、TAPT群27.6%)、脂質異常(DAPT群70.9%、TAPT群89.7%)、リスクファクター数1(DAPT群23.4%、TAPT群6.9%)、リスクファクター数3以上(DAPT群37.3%、TAPT群65.5%)、スタチン投与(DAPT群62.0%、TAPT群89.7%)、PPI投与(DAPT群29.7%、TAPT群65.5%)だった。

その結果、20μM ADPによる光学的血小板凝集測定で最大凝集を示した症例の割合は、IM型でのみ、TAPT群に比してDAPT群で高く、両群間に有意差が認められた(図1)。

図1 光学的血小板凝集測定の結果:20μM ADPによって最大凝集を示した患者の割合(%)

 
VASP indexは、EM型、IM型、PM型のすべてにおいてTAPT群に比してDAPT群で高く、両群間に有意差が認められた(図2)。VerifyNow—P2Y12もほぼ同様であった。

図2 VASP Index(%)の比較

 
これらの結果について演者は、「クロピドグレルの効果はCYP2C19などの遺伝子多型によって強い影響を受けるが、DAPTにシロスタゾールを追加したTAPTは、CYP2C19*2、CYP2C19*3の遺伝子多型を持つPCI症例の血小板凝集阻害を高めることから、クロピドグレル不応症の症例においては、現時点ではTAPTが有用であると考えられる」と述べた。

演題名:
Improvement of Clopidogrel Hypo-Responsiveness by Cilostazol Addition to The Dual Antiplatelet Therapy in PCI Patients Carrying CYP2C19 Gene Polymorphism

(注)* CYP2C19には、CYP2C19*2とCYP2C19*3という遺伝子多型が存在し、これらを持つ症例はクロピドグレルによるADP受容体阻害効果が低下することが知られている。

出典 Medical Tribune 2011.1.24
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CT検査中に心血管疾患リスクが予測可能
動脈石灰化などの偶発的所見が鍵
ユトレヒト大学医療センター(オランダ・ユトレヒト)ユリウス保健科学プライマリケアセンターのMartijn J. A. Gondrie博士らは「放射線科医は,ルーチンのCT検査で偶然発見される所見に基づき,心血管疾患(CVD)の高リスク者を発見することが可能である」とRadiology(2010; 257: 549-559)に発表した。

#ルーチン検査中の偶発的所見を初めて検討
今回の研究では,CT上に偶然認められた動脈壁の石灰化やプラークなどの所見と,年齢,性,検査目的から,CVDリスクが正確に予測できることが示された。
この簡便なリスク層別化法は,最終的には心筋梗塞などの心血管イベント低減につながる可能性があると見られる。

過去10年間に,胸部CT検査の施行は大幅に増加し,CT画像の質も格段に良くなった。
その結果,多くの偶発的所見(incidental findings)が発見されるようになった。
Gondrie博士は,その利点として「検査によってたまたま発見された所見であるため,余分な放射線曝露や追加費用もかからずに得られる」ことを挙げている。

今回の研究は,Prognostic Value of Ancillary Information in Diagnostic Imaging(PROVIDI)プロジェクトの一環として行われたもので,胸部CT検査の偶発的所見について,その意義を検討する目的で実施された。
同博士によると,ルーチン検査で見つかる偶発的所見が,将来の疾患予測に役立つか否かを検討した研究は初めてである。

石灰化スコアが最も重要
Gondrie博士らは今回,胸部CTで偶然発見された動脈所見から成る予測モデルを開発。
CT上で偶然発見された動脈異常所見をそれぞれスコア化した4つのCox比例ハザードモデルを検討した〔石灰化0~8点,プラーク0~4点,不整(irregularities)0~4点,伸長(elongation)0~1点〕。
また各モデルには,患者の年齢,性,CT検査目的などの因子が加味された。

研究対象は,CVD以外の目的で胸部造影CT検査を受けた6,975例から抽出した817例の代表例と,平均17カ月間の追跡期間中に心血管イベントを発症した347例とした。

動脈異常所見はいずれもCVDリスクの予測に有用だったが,中でも動脈石灰化の合計スコアを用いたモデルが最も優れていた。
その後,同モデルを別の集団で検証したところ,好ましい結果が得られた(感度46%,特異度76%)。

同博士は,PROVIDIについて「偶発的知見が将来の疾患予測や高リスク患者の特定に役立つか否かを検討した研究としては,過去最大規模を誇る」と説明。
また,「今後は,これら膨大な診断情報をより有効に活用する手段を見いだすべきであり,それにより放射線科医が日々患者に果たす役割も変化するかもしれない」と述べている。

出典 Medical Tribune 2011.1.20
版権 メディカルトリビューン社

 

<番外編>
経口の直接トロンビン阻害薬ダビガトラン承認
日本ベーリンガーインゲルハイムは1月21日,ベーリンガーインゲルハイムが開発した心房細動患者の脳卒中発症抑制を適応とする経口の直接トロンビン阻害薬ダビガトランエテキシラートメタンスルホンが,承認されたことを発表した。
日本で心房細動患者における脳卒中発症抑制の適応で承認された経口抗凝固薬は約半世紀ぶり。

PT-INRの定期的なモニタリングと用量調節が不要
ダビガトランの適応は「非弁膜症性心房細動患者における虚血性脳卒中及び全身性塞栓症の発症抑制」。同薬申請から10カ月で製造販売の承認を取得した。

その背景には,脳卒中の発症抑制はいまだ十分ではなく,新たな治療薬の早急な登場が望まれていたこともあり,今回の迅速な承認に至った。

同薬は,通常の投与量(1回150mg,1日2回経口投与)により,従来の標準治療薬であるワルファリンに比べ,脳卒中および全身性塞栓症の発症リスク,頭蓋内出血の発生リスクのいずれの有意な低下が示されている。
また,同薬はPT-INR(プロトロンビン時間国際標準比)の定期的なモニタリングとそれに応じた用量調節を必要としないなどの特徴を有する。

日本における脳卒中の6割が脳梗塞であり,同薬の適応症である心原性脳塞栓症は脳梗塞の約3割を占める。
心原性脳塞栓症はとりわけ,左房で形成された血栓が比較的太い脳動脈を塞ぐことから,脳の広範囲で急速な虚血状態を呈し予後は不良であるため,心房細動患者での脳卒中の発症抑制が重要であるとされている。
               (田上 玲子)
出典 MT Pro 2011.1.21
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第17回日本未病システム学会に関する記事で勉強しました。

日本人は“食塩中毒”の状態
幼少期から食塩摂取量を抑えるべき
文明の発展とともに食塩摂取量は増加してきたが,日本人の食塩摂取量は約11~12g/日で先進国の中でも多い。
東京大学分子循環代謝病学講座の安東克之准教授は「食塩過剰摂取による昇圧・臓器障害には酸化ストレスの亢進が関与していると考えられる。
さらに,幼少期の食塩過剰摂取は,一生涯継続する高血圧の原因になる可能性も示唆された」と那覇市で開かれた第17回日本未病システム学会(会長=琉球大学大学院観光科学研究科・平良一彦教授)で報告した。

酸化ストレス亢進が鍵を握る
食塩過剰摂取は昇圧・臓器障害の原因となる。
食塩負荷による血圧上昇の程度(食塩感受性)には個人差があるが,食塩感受性・非感受性の分類は恣意的で,多くの人は食塩感受性と食塩非感受性の境界付近に位置している。
食塩感受性は多因子性で,肥満,加齢,腎疾患など状況次第で変化するものが多く含まれるため,食塩非感受性の人が将来も非感受性であるとは限らない。
しかも,真に予防すべき臓器障害と血圧上昇は必ずしもパラレルではなく,すべての人が減塩を行うことが重要だ。

食塩過剰摂取による昇圧・臓器障害のメカニズムを解明するため,安東准教授はまず,Dahl食塩感受性(DS)ラットに食塩負荷を加えて検討。その結果,尿蛋白の増加,左室拡張能障害の早期発現,動脈硬化刺激時の血管内膜肥厚の増大が確認され,腎・心・血管における酸化ストレスが亢進していた。
このことから,食塩過剰摂取によって臓器が傷害される際,酸化ストレスの亢進を伴うことが示唆された。

また,食塩感受性を有する幼若高血圧自然発症ラット(SHR)に食塩負荷を加えた場合には交感神経活性の亢進が確認された。
さらにDSラットの実験から,食塩負荷によってインスリン抵抗性が亢進すること,しかもその作用は血行動態の変化によるものではないことが示された。

では,こうした交感神経亢進やインスリン抵抗性に酸化ストレスは関与しているのか。
DSラットに食塩を負荷すると視床下部の酸化ストレスは亢進する。そこで食塩負荷DSラットの中枢に抗酸化薬を投与して血圧と腎の交感神経の反応を調べたところ,血圧は著しく低下し,腎の交感神経活性も低下した。
さらに,酸化ストレス亢進がインスリン抵抗性亢進につながるとの実験データも得られている。
以上のことから,酸化ストレスが中枢交感神経やインスリン抵抗性の亢進を介して高血圧や臓器障害に関与するという機序が示唆された。

幼少期の食塩過剰摂取が悪影響
食塩摂取量が低い集団では加齢による血圧上昇が見られないとの報告が存在する。
また,生後6カ月の時点で粉ミルクの減塩をした群では15年後の血圧が低いというデータもある。
そこで安東准教授は,幼少期の食塩過剰摂取が成人後の血圧上昇に与える影響をラットで検討した。

幼若期(6週齢)と成体期(10週齢)のDSラットに同等の食塩負荷を加えてその後の反応の違いを見たところ,幼若期負荷群の方がその後の血圧の上がり方が急峻で,腎機能低下も顕著であった。
成人期との違いについては,ヒトの幼少期の血漿アルドステロン濃度は成人より高いとのデータがある。
また,血漿アルドステロン高値の正常血圧者は4年後に高血圧になりやすいとの報告も存在する。
そこで,アルドステロンの関与に着目し,DSラットで4~10週齢に抗アルドステロン薬エプレレノンまたは血管拡張薬ヒドララジンを投与して,食塩負荷による血圧の推移を検討した()。
その結果,エプレレノン群では,薬剤投与中止後に食塩負荷を続けても,薬剤非投与の食塩負荷群より血圧を低く抑えることができ,腎保護効果も継続することが示された。

 


 

同准教授は「幼少期には食塩摂取量を低く抑えることが重要だ。幼少期に食塩を過剰摂取すると,その後の高血圧の引き金となる恐れがある」と強調した。

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新規遺伝子座ADAMTS7

戯れ言たれる侏儒 / 2011.01.22 00:03 / 推薦数 : 1

新規遺伝子座ADAMTS7、冠動脈アテローム性硬化症に関与
冠動脈疾患患者と非患者、心筋梗塞がある冠動脈疾患患者とない患者をゲノムワイド関連解析で比較して、冠動脈アテローム性硬化症およびその存在下の心筋梗塞発症に関与する遺伝子座を同定。
その結果、新規遺伝子座ADAMTS7の冠動脈アテローム性硬化症への関与、心筋梗塞とABO遺伝子座の関連が明らかになった。

出典  m3.com  医療ジャーナルアップデート 2011.1.19

http://www.m3.com/news/THESIS/2011/01/19/10997/?portalId=mailmag&mm=MD110119_CXX

<原文>
Identification of ADAMTS7 as a novel locus for coronary atherosclerosis and association of ABO with myocardial infarction in the presence of coronary atherosclerosis: two genome-wide association studies
Reilly MP et al. The Lancet, Early Online Publication, 15 January 2011.
http://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(10)61996-4/abstract

Summary
Background
We tested whether genetic factors distinctly contribute to either development of coronary atherosclerosis or, specifically, to myocardial infarction in existing coronary atherosclerosis.
Methods
We did two genome-wide association studies (GWAS) with coronary angiographic phenotyping in participants of European ancestry. To identify loci that predispose to angiographic coronary artery disease (CAD), we compared individuals who had this disorder (n=12 393) with those who did not (controls, n=7383). To identify loci that predispose to myocardial infarction, we compared patients who had angiographic CAD and myocardial infarction (n=5783) with those who had angiographic CAD but no myocardial infarction (n=3644).
Findings
In the comparison of patients with angiographic CAD versus controls, we identified a novel locus, ADAMTS7 (p=4·98×10−13). In the comparison of patients with angiographic CAD who had myocardial infarction versus those with angiographic CAD but no myocardial infarction, we identified a novel association at the ABO locus (p=7·62×10−9). The ABO association was attributable to the glycotransferase-deficient enzyme that encodes the ABO blood group O phenotype previously proposed to protect against myocardial infarction.
Interpretation
Our findings indicate that specific genetic predispositions promote the development of coronary atherosclerosis whereas others lead to myocardial infarction in the presence of coronary atherosclerosis. The relation to specific CAD phenotypes might modify how novel loci are applied in personalised risk assessment and used in the development of novel therapies for CAD.

 

<関連サイト>
冠動脈疾患に末梢血の遺伝子検査
米CardioDx社が開発した「Corus CAD」が有用性示す
米CardioDx社は、末梢血を標本として23遺伝子の発現を分析し、胸痛がある非糖尿病患者における閉塞性冠疾患(CAD)の存在を予測する検査を昨年から提供している。
この検査の精度を確認した研究の詳細が、同社のSteven Rosenberg氏らによってAnn Intern Med誌2010年10月5日号に報告された。
その能力は診察に基づく閉塞性CAD予測法と同等かそれ以上であることが明らかになった。

胸痛などの症状があってCADが疑われる患者に適用できる簡便な血液検査はこれまでなかった。
そうした患者の診断には、非侵襲的なイメージングや侵襲的な冠動脈造影が用いられている。

新たに登場した検査、「Corus CAD」が予測するのは、閉塞性CAD(アテローム性動脈硬化によって、冠動脈のうち内腔径が1.5mm以上の血管が少なくとも1本以上、50%以上狭窄している。内腔狭窄率は定量的血管造影法により判定)の存在だ。
同社は、冠動脈のアテロームプラークに存在する泡沫細胞が化学信号を発信し、血液細胞の遺伝子発現パターンを変化させるとの考えに基づいて、関与する遺伝子の探索を進め、最終的に23遺伝子の発現パターンを調べる血液検査「Corus」を開発、昨年から米国の一部で提供を開始した。
既に一部保険会社がこの検査に対する保険償還を実施している。

この検査の適応は、胸痛がある21〜99歳の患者のうち、以下の条件を持たない人々だ:心筋梗塞歴、冠動脈狭窄に対する介入歴、糖尿病、炎症または感染症、ステロイド/免疫抑制薬/化学療法薬の投与。末梢血を採取し、同社のラボに送付すると、数日のうちに判定が得られる。
分析結果は0〜40のスコアで示されるが、その数値に基づいて判定された閉塞性CADである可能性が%で提示される。
患者と主治医は、これを診察結果と組み合わせて介入法を決定することになる。

対象が非糖尿病患者に限定されているのは、糖尿病患者では発現を評価すべき遺伝子のセットが異なるためだという。

今回の論文は、アルゴリズム構築コホートを用いて作製した遺伝子発現プロファイルに基づく閉塞性CAD診断アルゴリズムの精度を、確認コホートを用いて評価した結果を報告している。

米国内39施設で多施設前向き研究PREDICTを実施。07年7月から09年4月まで、
(1)胸痛がある、
(2)狭心症が疑われる症状がある、または
(3)CADリスクが高い、
という理由から冠動脈造影が必要と判断された患者のうち、心筋梗塞や血行再建術、閉塞性CADの既往がない人々を登録した。
条件を満たした1343人を、アルゴリズム構築コホート(694人)と確認コホート(649人)に分けた。
全体の57%が男性、37%が閉塞性CAD(それぞれ230人と192人)で、26%にはCADは見付からなかった。

すべての患者から、臨床データ(社会統計学的特徴、投薬歴、医療歴、心筋灌流イメージングの結果)を標準化された方法で収集、定量的冠動脈血管造影を実施し、狭窄率を計算した。

23遺伝子の発現レベルと年齢、性別に基づくアルゴリズムと診断精度を比較したのは、Diamond-Forresterスコア、拡大臨床モデル、心筋灌流イメージングに基づく診断法だ。

臨床リスクスコアであるDiamond-Forresterスコアは、年齢、性別、胸痛のタイプ(典型的な狭心症、不定型狭心症、非狭心症性胸痛)によりCADかどうかを予測するもの。

より詳しい拡大臨床モデルは、単変量解析でそれぞれ閉塞性CADとの関係が示されている11の臨床要因(年齢、性別、胸痛のタイプ、人種、スタチンの使用、アスピリンの使用、抗血小板薬の使用、ACE阻害薬の使用、収縮期血圧、高血圧、脂質異常症)を基にリスクを判定するものだ。

確認コホートのうちデータがそろっていた526人を分析対象とした。
閉塞性CADは192人で、このアルゴリズムの識別能力を示すROC曲線下面積(AUC)は0.70±0.02(P<0.001)となった。

確認コホートにDiamond-Forrester法のみを適用した場合のAUCは0.66だったが、これに発現アルゴリズムを併用すると、AUCは0.72に上昇(P=0.003)した。
同様に、拡大臨床モデルに発現アルゴリズムを加えるとAUCは0.732から0.745に上昇(P=0.089)、心筋灌流イメージングに加えると0.54から0.70に上昇(P<0.001)した。

発現アルゴリズムの閾値を閉塞性CADの可能性が20%(スコアは14.75)とすると、閉塞性CAD検出の感度と特異度はそれぞれ85%と43%(陰性予測値は83%、陽性予測値は46%)となった。
スコアがこの閾値より低い患者は全体の33%だった。

狭窄が最も深刻な部位の内腔狭窄率とアルゴリズムのスコアの間には直線的な関係が見られた(R=0.34、P<0.001)。

予測能力の評価において臨床的な意義が高い、リスクグループ(低リスク、中リスク、高リスク)再分類の精度を調べた。
Diamond-Forrester法による分類後に発現アルゴリズムを用いて再分類を行うと、分類精度は20%向上(P<0.001)した。
拡大臨床モデルによる分類後に発現アルゴリズムを用いて再分類した場合には16%向上(P<0.001)、心筋灌流イメージングによる分類後の再分類では21%向上した(P<0.001)。

得られた結果は、末梢血を標本として遺伝子発現を調べる非侵襲的で簡便な検査が、非糖尿病患者の閉塞性CADの診断に有用である可能性を示した。

出典 NM online 2010.10.25
版権 日経BP社

原文
Multicenter Validation of the Diagnostic Accuracy of a Blood-Based Gene Expression Test for Assessing Obstructive Coronary Artery Disease in Nondiabetic Patients
http://www.annals.org/content/153/7/425.abstract


<私的コメント>
こういった遺伝子を知ることがどこまで臨床に役立つのか私のような凡庸な開業医には全く分かりません。
臨床をやっていて脂質異常もなく糖尿病や高血圧症もないケースでの冠動脈病変はこういった遺伝子レベルの異常があるのでしょうか。
冠動脈疾患のリスクファクターの一つに家族歴があげられるわけですがこの家族歴も種々の交絡因子を除外していけば最後に残るのが
遺伝子レベルの異常ということなのでしょうか。

 

 

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