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三重大学放射線科の北川覚也先生による心臓MRI検査のメリットと導入への課題についての解説記事で勉強しました。
心臓MRI/形態・機能だけでなく虚血と梗塞も正確に評価
心臓MRIは,心臓の形態や壁運動などの形態学的な情報と,心筋の血流やバイアビリティーといった機能的な情報を一度に得ることができる検査であり,心エコーや核医学,CT検査のすべてを包括できるといっても過言ではない。
診断精度は高く,画像は鮮明,被ばくのリスクもない上,検査費用も割安だ。
だが,その撮像にはある程度の熟練が必要であるため,実施施設は限られている。
他で検出しにくい病変も高精度で検出
心臓MRIは,現段階において心機能と虚血・梗塞を最も正確に評価できる画像診断法である。
その代表的な撮像法は,シネMRIと負荷心筋パーフュージョンMRI,遅延造影MRIの3つだ。
シネMRIとは,その名の通り連続した動画(cine)によって心臓の動きを表示する手法である。
MRI画像は心エコーのように骨や空気の影響を受けないため,細部に至るまで鮮明な画像を得ることができ,壁運動の評価に絶大な効果を発揮する。
一方,負荷心筋パーフュージョンMRIは,薬剤負荷をかけた状態で造影剤をボーラス投与し,その循環の様子を安静時と比較するもので,心筋虚血の有無と虚血範囲の評価に利用される。
これによる冠動脈病変の検出精度は感度約90%,特異度約80%と,心筋SPECTをしのぐ精度が報告されている。
また,冠動脈CTによる表在冠動脈の観察では分からない微小循環異常に起因する虚血についても,パーフュージョンMRIなら検出が可能だ(図)。

なお,投与された造影剤は15分ほどで全身の細胞外液にまんべんなく行き渡るが,正常な心筋組織では細胞内部まで造影剤が浸透することはない。
しかし,梗塞部位では細胞膜が破壊されたことにより心筋細胞内部まで造影剤が入り込むので,単位体積当たりの造影剤量が増加し,この時点でMRIを撮れば,梗塞巣が高信号域として描出される。これが遅延造影である。
また,陳旧性の梗塞部位ではコラーゲンなどの細胞外線維が増殖した状態,すなわち細胞外成分が増加しているため,やはり遅延造影が認められる。
遅延造影MRIでは,CTやSPECTでは検出できない小さな梗塞・線維化病変も明瞭に描出される。
最大の課題は人材の育成
冠動脈疾患の診断において最も重要なことは,その診断に基づく治療が予後の改善につながるかどうかということだ。
この点に関し,冠動脈狭窄の程度は必ずしも実際の虚血の程度と一致せず,虚血の評価なしに血行再建術の要否を計ることは,かえって予後が不良となることが報告されている。
「その不可欠な評価を高いクオリティーで実現できる心臓MRIの価値は高い」と北川氏は言う。
また,優れた診断モダリティの条件は,クオリティーに加えてコスト(経済性)とアクセス(特殊な機器や設備を必要としないこと)の良さを備えていることだが,この点も心臓MRIはクリアしている。
有用な検査であるにもかかわらず,心臓MRIの実施施設は驚くほど少ない。
その理由は,的確な撮像や読影ができる知識と経験を備えた技師や医師の不足にほかならない。
熟練した指導者の下で1カ月も経験を積めば技術は体得できるが,検査件数の少ない施設では人材が育ちにくく,そのため実施施設は限定され,他施設の人が経験を積む機会はますます少なくなるという悪循環に陥っている。
しかし,心臓MRIの有用性が認知されるにつれ,自施設への導入を望む声も増えている。
それに応えるべく,三重大学をはじめとする幾つかの施設では,定期的な講習会を開き,トレーニングの場を提供しているという。「心臓MRIは決してハードルの高い検査ではない。ぜひ臨床の場に取り入れていってほしい」と同氏は訴えた。
MRI(Magnetic resonance image;核磁気共鳴画像検査)について
物質に磁場をかけると,普段はばらばらの方向に回転している原子核の回転軸が一斉に同じ方向を向き(共鳴),磁場を切ると元に戻るが,戻る時間(緩和時間)はその物質を取り巻く環境によって異なる。
例えば,生体組織中の水素原子の緩和時間は,水素を多く含む水や脂肪の分布の違いなどによって異なったものとなる。
この性質を利用し,水素原子の緩和時間の情報から組織の状態を画像化するのがMRIである
出典 Medical Tribune 2010.12.23,30
版権 メディカルトリビューン社
<番外編>
心血管疾患の生涯リスクモデル、高リスク者を早期発見、英国調査
一般開業医から収集した非心血管疾患、非スタチン投与患者(30-84歳)のデータに基づき、心血管疾患の生涯リスクモデルを作成・検証する前向きコホート研究を実施。生涯リスクスコアは、10年リスクスコア(QRISK2)で特定されない高リスク者(男性、非白人、若年冠動脈疾患家族歴)の早期発見に有用なことが示された。
原文
Hippisley-Cox J et al. Derivation, validation, and evaluation of a new QRISK model to estimate lifetime risk of cardiovascular disease: cohort study using QResearch database.
BMJ. 2010; 341:c6624
http://www.bmj.com/content/341/bmj.c6624.abstract
出典 m3.com 医療ジャーナルアップデー 2010.12.14
<心臓MRI 関連記事>
~心臓MRI~診断と予後規定因子の把握に有用
(第20回日本心臓核医学会)
出典 MT pro 2010.8.19
■心臓MRIは1回約45分間の検査で,虚血,心機能,心筋性状,さらに冠動脈を評価可能。
■シネMRIは造影剤が不要で,高い空間解像度を有し,再現性に優れる点から心機能評価のゴールドスタンダードとされている。
■心筋血流評価(負荷パーフュージョンMRI)では,造影剤投与後の心筋ファーストパスの動態を,ダイナミックMRを用いて撮影,狭窄部の末梢心筋での造影遅延を解析し虚血領域を同定する。
■ATP負荷パーフュージョンMRIは診断能が高く,虚血の診断後3年間の心血管事故リスクが高い。
心筋性状評価については, T2強調画像や遅延画像を用いる。T2強調画像は心筋浮腫を反映して高信号値を示し,遅延造影やMO(microvascular obstruction)の評価と合わせて心筋障害時期を推定できる。
多枝病変では責任病変の同定に有効とされている。
一方,遅延造影は,SPECTでも描出困難な小梗塞や,出血性梗塞で予後不良とされるMOを描出できることが大きな特徴である。
■遅延造影における梗塞巣の壁内進達度は,慢性期の血行再建術後の左室壁運動改善の規定因子とされている。
■心臓MRAによる冠動脈評価については,冠動脈狭窄に関する陰性的中率が98%と高く,16例MDCTとほぼ同等の診断能を有すると報告されている。
CTで描出困難な高度石灰化病変もMRAでは評価可能という。
■最近では,3テスラMRIや32チャンネルコイルなどの新しい装置が臨床応用された。
3テスラMRI;高磁場のもたらたす高い空間分解能がプラーク評価に期待されている。
32チャンネルコイル;心臓全体の高速撮影を可能にした。現状では,撮影条件に制約があり,ハード面の改良やSAR(RF信号の人体への吸収エネルギー値)低減など課題克服に向けて研究が進められている。
~心臓MRIによる冠動脈病変スクリーニング~心臓ドックでの病変発見率0.73%
(第20回日本心血管画像動態学会)
出典 MT pro 2010.2.18
■心臓MRIは,心臓CTに比べ検査時間が長く,画像精度や撮像成功率は劣るが,被曝がなく造影剤が不要な非侵襲的検査であり,石灰化の影響も受けない。
(一方、心臓CTは被曝,造影剤使用,石灰化病変の判読困難など,避けられない問題が存在する)
■被曝がなく造影剤不要の無侵襲検査であるMRIは,健康人の冠動脈病変スクリーニング(心臓ドック)に適した検査である。
■HIP(high intensity plaque)(注)にはCT検査による不安定プラークの特徴(陽性リモデリング,低CT値など)が多く認められること,HIP陽性例でACSの発症が多いことなどが確認されている。
(注)high intensity plaque:プラーク内信号強度/近傍心筋信号強度比(plaque to muscle ratio;PMR)>1.0のプラーク
〜心臓MRI/冠動脈MRA〜検査の標準化と教育研修の充実が必要
(第28回日本画像医学会)
出典 MT pro 2009.5.7
■他のモダリティに比べて,虚血性心疾患に対するMRI利用のなじみは薄い。
1.5テスラMR装置による心臓MRI検査数は,推定で200〜300病院3〜4万件程度とSPECT件数の約10分の1にすぎない状況にある。
装置自体の普及率が高いにもかかわらず行われていないのは,検査が複雑なことから,その有用性が十分に知られていないためと言われている。
■32チャネルコイルの登場によりMRAの撮影時間が半減し検査成功率が向上したことで,冠動脈MRAの臨床利用は今後拡大すると考えられる。
■被曝なし・造影剤不要に加えて,高心拍症例でもβ遮断薬の投与なしに診断できる点も大きな魅力である。
■負荷心筋血流MRIも近年の空間解像度の向上により,心内膜下虚血を明瞭に描出可能となっており,最近の欧州の多施設共同研究MR-IMPACT※では負荷心筋SPECTよりも冠動脈多枝病変の診断能が有意に高いという結果が示されている。
■心臓MRIは核医学に比べて2分の1以下の費用のため医療経済的にも好ましい検査と言える。
※Magnetic Resonance Imaging for Myocardial Perfusion Assessment in Coronary Artery Disease Trial
<自遊時間>
今年もきょう1日を残すのみとなりました。
先生方もよい年をお迎え下さい。
その他
「葦の髄」循環器メモ帖 http://yaplog.jp/hurst/
(循環器専門医向き)
ふくろう医者の診察室 http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き)
井蛙内科/開業医診療録(4)2009.10.16~
http://wellfrog4.exblog.jp/
井蛙内科/開業医診療録(3)~2009.10.15
http://wellfrog3.exblog.jp/
井蛙内科/開業医診療録(2)2008.12.10~
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井蛙内科/開業医診療録~2008.5.21
http://wellfrog.exblog.jp/
(内科医向き)
「井蛙」内科メモ帖
http://harrison-cecil.blog.so-net.ne.jp/
があります。
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