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琉球大学大学院薬物制御学の植田真一郎教授による,EMPHASIS-HF試験を例にした早期終了試験を読み解く際の注意点についての解説で勉強しました。
#早期終了試験の読み解き方
#EMPHASIS-HF,「21カ月で終了」は妥当か
当初の予定より早期に終了した臨床試験を主要ジャーナルで目にする機会が多くなっている。
先月(2010.11)報告されたEMPHASIS-HFは,標準治療が行われている比較的軽症な心不全にアルドステロン拮抗薬のエプレレノンを上乗せすることで予後が改善するという結果であったが,これも早期終了試験であった。
早期終了試験の前提として,患者・被験者の安全と利益の担保を原則に挙げた1964年の「ヘルシンキ宣言」の存在を忘れてはならない。
有効性が明らかになった場合だけでなく,安全性に問題が生じた場合に早期終了となることがある。
記憶に新しいところでは,抗肥満薬rimonabantの心血管イベント抑制効果を検証した市販後臨床試験(Lancet 2010; 376: 517-523)において,自殺など精神症状をめぐる有害事象が増加して試験は早期終了,薬剤も発売中止となった事例がある。
#イベント数は十分か,Random highは?
以上を踏まえた上で,植田教授に早期終了試験の確認ポイントを聞くと,
(1)中間解析の段階での有意差はRandom highとして偶然得られたものか
(2)試験目的を考慮した上で試験期間が妥当と言えるか—の2点を挙げた。
(1)に関して早期終了試験で懸念されるのは,当初,対照群のイベント発生が早く蓄積されて中間解析では実薬群に良好な結果であったが,試験が進行するにつれて実薬群でもイベント発生が増加し,最終的には両群で有意差がつかない場合である。
このような一時的に起こりうるRandom highを除外するために,中間解析のP値は最終解析よりも厳格な値が設定される。
それでもRandom highのリスクは完全には除外できない。
表のCHARMでは,中間解析において,早期終了を満たすP値が報告されたが,この試験が臨床全体に与える影響の大きさや他の試験との整合性を考慮した上で,試験は続行された。
結果的に心血管死は有意に低下したが,総死亡の低下はCHARM-Addedで11%と有意ではなく,中間解析の結果は再現されなかった。
同試験では試験が続行されたため明らかとなったが,早期終了した試験では検証できないのが実状だ。

Random highでないかどうかを確認する1つの方法として,イベント発生数の検証がある。
少ないイベント数ではリスク低下が過大評価される可能性がある点と,入院や狭心症など医師の判断が反映される評価項目では客観性に劣るからだ。
同試験では総死亡数が実薬群171例,対照群213例と200例前後あり,その可能性は低いと考えられる。
しかし,これだけでは確証が得られない。
#他試験との整合性を確認すべき
そこで重要となってくるのが(2)の検討だ。
表は,確立された心不全治療薬の臨床試験から抜粋したものである。
重症心不全対象の試験では早期に終了していることが分かり,β遮断薬とACE阻害薬が心不全診療で確立された後に行われたVal-HeftではアンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)上乗せによる総死亡率の改善はなく,CHARM-Addedでは11%改善したが,治療の進歩でさらなる上乗せ効果の有効性を検証することが難しくなってきた背景が推測できる。
その流れでEMPHASIS-HFを見た場合,植田教授は「比較的軽症を対象にしたこの試験の方が,同じ抗アルドステロン拮抗薬の重症心不全を対象にしたRALESよりも観察期間が短い」と指摘。
さらにACE阻害薬またはARB,β遮断薬が既に投与されていた患者に対してのアルドステロン拮抗薬の上乗せで,短期間に24%もの死亡率低下が認められた点についても他試験との比較では一貫性に疑問を感じるという。
同教授は「心不全診療における3番目の必須薬の検証は最重要テーマ」と試験の意義を評価。
イベント数が確保されており,Random highの可能性は低いとしながらも「同試験患者の平均年齢は約69歳と一般的な心不全患者よりもかなり若い。実臨床で,特に安全性に関して同様の結果が得られるかどうかも疑問で,観察研究での検証が必要ではないか」と感想を述べた。
出典 MT pro 2010.12.23,30
版権 メディカルトリビューン社
<番外編>
#肝機能検査値異常がスタチン系薬剤によって改善
肝機能検査値異常患者の肝機能は、スタチン系薬剤によって実際に改善する可能性があり、肝機能検査値が正常な患者と比較して、実質的に大きな心血管系に対するベネフィット(便益)を受けるとの研究論文が、「The Lancet」オンライン版11月24日号に掲載された。
ギリシャ、アリストテレAristotle大学(テッサロニキ)のVasilios G. Athyros氏らは、GREACE(Greek Atorvastatin and Coronary Heart Disease Evaluation)研究集団の患者1,600人を対象とし、事後(post-hoc)分析を実施した。
被験者はいずれも75歳未満であり、冠動脈心疾患に罹患していた。また、血清低比重リポ蛋白(LDL)コレステロール濃度が2.6 mmol/L(約100.5mg/dL)を超え、血清トリグリセリド濃度が4.5 mmol/L(約398.6mg/dL)未満であった。
本分析の目的は、肝機能検査値異常患者を対象とし、スタチン療法の安全性および有効性を評価することであった。
その結果、被験者437人において、ベースライン時の肝機能検査値が中等度高値を示した。
スタチン投与を受けた被験者227人では肝機能検査値が有意に改善したのに対し、スタチン投与を受けなかった被験者210人では肝臓酵素値がさらに上昇した。
スタチン投与群では、スタチン非投与群と比較して心血管イベントの相対リスクが68%低下し、肝機能検査値が正常なGREACE被験者集団と比較してベネフィットが有意に大きかった。
トランスアミナーゼ濃度が正常範囲上限の3倍を超えたことによるスタチン投与中止率は1%未満であった。
著者らは「肝機能検査値異常患者へのスタチン投与によって、心血管イベントのリスクが68%低下した(P<0.0001)。
肝機能検査値が正常な患者と比較して、肝機能検査値が異常な患者では、スタチン投与に関連した相対リスク低下が大きかった。
したがって、スタチン(本研究では主にアトルバスタチン)の長期投与によるリスク便益比は、肝機能検査値が中等度異常の患者においてもスタチン投与に有利である」と結論している。
出典 HealthDay News 2010.11.24
原文
Safety and efficacy of long-term statin treatment for cardiovascular events in patients with coronary heart disease and abnormal liver tests in the Greek Atorvastatin and Coronary Heart Disease Evaluation (GREACE) Study: a post-hoc analysis
http://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(10)61272-X/abstract
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