戯れ言たれる侏儒
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比較的軽症の心不全患者でもエプレレノン追加投与で予後が改善
AHA 2010で発表のEMPHASIS-HF試験
アルドステロン拮抗薬は,収縮不全を伴う重症心不全や急性心筋梗塞後のうっ血性心不全の予後を改善することが明らかにされており,米国のガイドラインでは,腎機能の観察を慎重に行うという条件付きでクラスⅠの推奨がなされている ※1
今回,自覚症状の少ない比較的軽症の心不全患者を対象にしたEMPHASIS-HF ※2試験の結果が明らかになり,アルドステロン拮抗薬エプレレノンを標準治療に追加投与することで予後の大幅な改善が見込めることが分かった。

第83回米国心臓協会年次集会(AHA 2010;11月13~17日,シカゴ)において,ナンシー大学(仏ナンシー)内科治療学教授のFaiez Zannad氏が報告し,N Engl J Med 11月14日オンライン版にも同時に掲載された〔試験デザインはEur J Heart Fail(2010; 12: 617-6

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/sites/entrez/2038864722)に掲載〕。

N Engl J Med 11月14日オンライン版
http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa1009492

Eur J Heart Fail 2010; 12: 617-622
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/sites/entrez/20388647

設定された中止基準を満たしたため早期終了に
この試験の対象は,55歳以上で左室駆出率(LVEF)35%未満,ニューヨーク心臓協会(NYHA)心機能クラス分類Ⅱ度の心不全で,ガイドラインが推奨する至適治療が行われている患者。
ランダム化に当たっては,心血管疾患による入院から6か月以内,またはB型ナトリウム利尿ペプチド(BNP)250pg/mL以上,もしくはN末端プロ(NT-pro)BNPが男性500pg/mL以上,女性750pg/mL以上などの条件が設定されている。

高カリウム(K)血症や腎機能の悪化が懸念される推算糸球体濾過量(eGFR)30mL/分/1.73m2未満の場合や血清K値5.0mEq/L超の患者は除外された。

試験は二重盲検ランダム化比較試験(RCT)として実施され,エプレレノン群とプラセボ群に割り付けられた。エプレレノン群は同薬25mg/日が投与され,必要に応じて4週以降に50mg/日に増量されたが,K値が6.0mEq/L以上で投薬中止,5.5~5.9mEq/Lで用量調整がなされた。

試験のサンプルサイズについては,CHARM-Added試験を基にプラセボ群で18%のイベント発症を予測,48カ月の追跡期間で実薬群の18%のリスク低下を見込み,3,100例の登録が設定された。
29カ国270施設から登録が行われていたが,今年(2010年)5月の中間解析により実薬群で有意に良好な結果が示され,当初から設定されていた試験中止基準を満たしたため,早期終了となった。
患者登録も中止されたが,この時点で2,737人が登録されていた。


心血管疾患による死亡と心不全による入院のリスクが37%低下
対象の平均年齢は69歳,男性が78%,白人が82%を占めた。心不全発症から平均約4.7年が経過しており,LVEF 26%でBMI 27.5,約半数が心筋梗塞既往の患者群だった。
治療薬の処方率は,ACE阻害薬またはアンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)もしくは併用投与が94%に上り,利尿薬は85%,β遮断薬は87%だった。

中央値で21カ月の追跡の結果,心血管疾患による死亡または心不全による入院の1次エンドポイントの発生率は,エプレレノン群18.3%に対してプラセボ群25.9%で,調整後ハザード比37%の有意なイベント低下が示された(表,P<0.001)。
性,年齢,血圧,心拍数,eGFR,虚血の有無などいずれの患者背景別解析においてもエプレレノン群で有意に良好な結果であることは変わらなかった。

 


また,総死亡,心血管疾患による死亡,心不全の悪化による死亡リスクもすべてエプレレノン群で有意に低下した。
心不全やその他の原因による入院の発生リスクもエプレレノン群で有意に低下した。
1次エンドポイントの発生抑制に必要な人数は1年当たり19人で,1人の死亡を防ぐために必要な人数が1年当たり51人という結果だった。


高K血症に対する注意は引き続き必要,心不全診療においてより重要な位置付けに
一方,副作用の発現は,高K血症がプラセボ群3.7%に対してエプレレノン群8%と有意に多かったが,これにより脱落した症例はそれぞれ0.9%,1.1%にとどまった。
なお,血清K値5.5mEq/L以上を認めた患者の頻度はそれぞれ7.2%,11.8%で,エプレレノン群で有意に高かった。

その他,女性化乳房や胸部症状は同順に1.0%,0.7%,腎障害3.1%,2.9%,低血圧2.7%,3.4%と同等だった。
全体の脱落率は順に16.2%,13.8%でやはり有意差はなかったが,エプレレノン群で少ない傾向だった。

Zannad氏は「収縮不全を伴う軽度な自覚症状のある心不全患者において,エプレレノンは忍容性が高く,生存率を改善し,入院を抑制する」と指摘。
スピロノラクトンによる重症心不全の予後改善効果を示したRALES試験,エプレレノンの急性心筋梗塞後のうっ血性心不全での有用性を示したEMPHASIS試験,今回のEMPHASIS-HF試験と,一貫してアルドステロン拮抗薬の有用性を示していることから,「これらのエビデンスが心不全の診療を変えていくだろう」とまとめた。

これに対して,指定討論者の米ハーバード医科大学循環器科教授のWilliam G. Stevenson氏は「アルドステロン拮抗薬の推奨範囲を広げる前に,高K血症を来さない使用法を確認すべき。腎機能が悪化した症例や糖尿病患者,高齢者には注意が必要」と指摘した。
特に,ループ利尿薬が必要のない患者や心不全によるイベントリスクが低い患者ではリスクがベネフィトを上回る可能性があると注意を促した。

Zannad氏はしかし,「今回の試験で高K血症は予測を下回る発現率にとどまっており,また発症しても十分に対応可能なものであった」としている。
また,昨年のAHA会長で米アラバマ大学のClyde W. Yancy氏は,記者会見で「ガイドラインに記載されているように血清K値が5.0mEq/Lを超える患者には投与すべきでなく,また不整脈イベントリスクが増加する5.5mEq/L以上を超えないように管理すべき」と使用法を確認しながらも,同薬の適応がありながらアンダーユースであった重症心不全患者の管理において,今回の結果は「積極的な使用を促す結果」と評価している。

無症候性の患者にも投与すべきかの問いに対して,Zannad氏は「今回は症状のある患者を対象としており,予防的な使用の是非については今後の臨床試験で明らかにすべき」としている。
なお,アルドステロン拮抗薬については,現在,LVEF 45%以上の収縮機能が保たれた拡張型心不全を対象にしたTOPCAT試験が進行中だ。
この試験ではスピロノラクトンが使用されているが,ほかに有効な治療法が見いだされていない拡張型心不全への有効性が認められるかどうか,注目されている。


※1 アルドステロン拮抗薬の大規模臨床試験には,LVEF 35%以下でNYHA心機能クラス分類Ⅲ度以上の重症心不全を対象としたRALES試験(N Engl J Med 1999; 341: 709-717),急性心筋梗塞後にうっ血性心不全の症状や徴候が認められる患者の予後を検証したEPHESUS試験(N Engl J Med 2003; 348: 1309-1321)があり,前者はスピロノラクトンが,後者にはエプレレノンが使用されていた。米国心臓学会(ACC)/米国心臓協会(AHA)のガイドラインでは,これらの患者群への同薬の追加投与が慎重な腎機能のモニターを行う条件付きでクラスⅠの推奨となっている。抗アルドステロン薬は,30年以上の使用歴を有するスピロノラクトンとわが国では3年前に承認されたエプレレノンがあるが,エプレレノンはアルドステロン受容体への選択性がスピロノラクトンに比べて高いため,女性化乳房などの副作用を来さない。現段階では,エプレレノンの日本での保険適用は高血圧症となっており,心不全には適用されていない。

N Engl J Med 1999; 341: 709-717
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/sites/entrez/10471456

N Engl J Med 2003; 348: 1309-1321
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/sites/entrez/12668699


※2 Eplerenone in Mild Patients Hospitalization and Survival Study in Heart Failure


出典 MT pro 2010.11.15
版権 メディカルトリビューン社

 

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