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周知のごとく、スタチンは循環器領域に今や広く使用されている薬剤です。
がんの発症を低減させるという報告、それを否定する報告もあります。
一方、増加させるという報告もあるのか、最近「増大させない」という報告がされました。

何だか頭の中が混乱しそうです。


スタチン使用群において癌発症リスク増大せず
スタチン使用群において癌発症リスクの増大は認められないことが報告された。
4万5857組の患者群を対象に行われたレトロスペクティブコホート研究により明らかになった。
英GE HealthcareのPaul Cload氏らが、11月17日までシカゴで開催された第83回米国心臓協会・学術集会(AHA2010)で発表した。
演者らは、スタチンと癌の関連について学術的議論が続いるとし、スタチン使用と癌発症とを結び付けることができるかどうかを明らかにする目的で、米国の一般的な成人人口を対象にレトロスペクティブコホート研究に取り組んだ。

電子カルテのデータベースから、1990年1月から2009年2月までの期間の分析可能な約1100万枚(1119万6881枚)を抽出した。
このうちスタチンの使用者は119万1822人、非使用者は1000万5059人だった。
傾向スコアマッチング法により、同様の傾向を共有しているスタチン投与群と非投与群のペア(4万5857組)を構成し、この2群間で比較検討した。

解析の結果、マッチング前は、スタチン群で20万3763人のうち2万3906人(11.7%)に癌が発生し、非スタチン群で15万9004人のうち1万7457人(11.0%)に癌が発生していた。
マッチング後は、スタチン群における癌発症率は11.4%、非スタチン群では11.1%となった。
多変量マッチングのコックス回帰分析では、非スタチン群に対するスタチン群のハザード比は1.04で、有意差はなかった(95%信頼区間;0.99-1.09、p=0.12)。
また、10年間までの癌診断のカプラン・マイヤー生存曲線も、スタチン群と非スタチン群間で差異を示すことはなかった。
なお、癌の種類別に見た場合も、両群間で差はなかった。

これらの結果から演者らは、「傾向マッチング法で構成した約4万6000組を分析したが、スタチンと関連づけられる統計的に有意な癌発症リスクの増大は立証されなかった」と結論した。

出典 NM online 2010.11.24
版権 日経BP社

 


<関連サイト>
スタチンとIBD
http://wellfrog3.exblog.jp/11689226/
■動物研究や、スタチンを摂取している被験者の経過観察(現在継続中)によると、こういった薬剤は結腸直腸癌や皮膚癌など特定の癌の危険度を下げる可能性があると見られています。
■癌進行におけるスタチンの効果を分子レベルで研究したところ、スタチンは、発癌、増殖、転移の調整を担うと考えられる重要な細胞機能に対して対抗する作用があるのが判りました。
具体的には、スタチンはHMG-CoA還元酵素の作用を減少(またはブロック)し、そのためメバロン酸とその関連生成物レベルを低下させます。
メバロン酸経路は、細胞膜統合性、細胞シグナリング、蛋白合成、細胞周期進行において一定の役割を担っており、これはすべて、癌進行を食い止めるために介入できる可能性がある領域なのです。

食道がんの予防と治療にコレステロール値治療薬が有望
http://www.rda.co.jp/topics/topics3590.html

スタチンの癌(がん)リスク低減効果認めず-動物研究
http://news.e-expo.net/world/2009/02/post-297.html

スタチンとがんとの関係
http://tomochans.exblog.jp/6157836/

スタチンと前立腺
http://blog.m3.com/reed/20100704/1

 

その他
「葦の髄」循環器メモ帖 http://yaplog.jp/hurst/
(循環器専門医向き)
ふくろう医者の診察室 
http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き) 
井蛙内科/開業医診療録(4)2009.10.16~
http://wellfrog4.exblog.jp/
 井蛙内科/開業医診療録(3)~2009.10.15
http://wellfrog3.exblog.jp/
井蛙内科/開業医診療録(2)2008.12.10~
http://wellfrog2.exblog.jp/
井蛙内科/開業医診療録~2008.5.21
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(内科医向き)
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シタグリプチンに血管内皮機能を改善し粥状硬化病変形成を抑制する可能性
インクレチン・GLP-1の受容体は膵臓以外にも広く発現が認められ、インスリン分泌以外の多彩な膵外作用に関与している可能性が指摘されている。

新たな2型糖尿病治療薬シタグリプチンは、GLP-1の分解を司るDPP-4を阻害することによってGLP-1作用を増強する薬剤だ。
熊本大学の松原純一氏らは、ApoE欠損マウスを用い、シタグリプチンが心血管系に及ぼす影響を検討した結果、血管内皮機能を改善し、動脈硬化形成の抑制に働くことを見い出した。成果は、シカゴにて11月17日まで開催された第83回米国心臓協会・学術集会(AHA2010)で報告した。

 

松原氏らは、6週齢のApoE欠損マウスを2群に分け、一方には高脂肪食、もう一方には高脂肪食とともにデス・フルオロ・シタグリプチン(シタグリプチン類似体:以下、シタグリプチン)200mg/kg/日を与えて飼育。

16週目に大腿動脈標本を採取し、粥状硬化病変の範囲を計測した。

16週間後、シタグリプチン未投与マウス(高脂肪食群、n=18)、シタグリプチン投与マウス(シタグリプチン群、n=18)とも高コレステロール血症を呈し、大動脈に粥状硬化病変の形成を認めた。

高脂肪食群では、大動脈の27.8%の範囲に病変が認められたのに対し、シタグリプチン群における病変範囲は19.5%にとどまった(p<0.01)。

16週間後における両群の体重、血糖値、血清脂質値の変化は同等だったが、血漿GLP-1濃度はシタグリプチン群の方が有意に高く(10.8pg/mL 対 17.8pg/mL、p<0.01)、粥状硬化病変の大きさとGLP-1濃度の間には有意な負の相関が認められた(r=-0.38、p<0.05)。

次に松原氏らは、別の6週齢のApoE欠損マウスを3群に分け、
(1)通常食(n=8)、
(2)高脂肪食(n=7)、
(3)高脂肪食+シタグリプチン200mg/kg/日(n=7)
のいずれかの給餌下で飼育し、7週間目に大動脈を採取して、アセチルコリン(ACh)刺激に対する内皮依存性血管拡張応答を測定した。

その結果、通常食群では高脂肪食群に比して血管拡張応答の低下が有意に抑制された(p<0.05)が、高脂肪食+シタグリプチン群においても、高脂肪食群に比べて応答の低下が軽度だった(p<0.05)。

また、高脂肪食+シタグリプチン群のGLP-1濃度(16.7pg/mL)は、高脂肪食群(9.9 pg/mL)、通常食群(10.6 pg/mL)との間に有意な差を認めた(ともにp<0.001)。

 

以上の結果より、シタグリプチンには血糖値や血清脂質値の変化とは独立した抗動脈硬化作用と内皮機能改善作用があることが示唆された。
松原氏らは、シタグリプチンのこのような作用は、GLP-1の抗炎症作用を増強することによって得られるのではないかと推測。
その仮説を証明するために、次のようなin vitroの実験を行った。

材料は、マクロファージ由来の株細胞THP-1。この細胞を10ng/mLのLPSで刺激すると、種々の炎症性サイトカインが分泌される。
この応答は、高濃度のGLP-1(>20pM)によって濃度依存的に抑制されるが、生理的濃度(10pM)のGLP-1では抑制されないことが分かっている。
しかし松原氏らは、シタグリプチンによってGLP-1の作用が増強されれば、10pMのGLP-1でもサイトカイン分泌が抑制されるのではないかと推測し、この系に種々の濃度のシタグリプチンを添加し、分泌されるサイトカイン量を定量した。

その結果、10pMのGLP-1とともに1μM以上のシタグリプチンを添加することにより、LPS刺激によって誘導されるIL-6、IL-16、TNF-α、MCP-1の各サイトカイン分泌は有意かつ用量依存的に抑制された。
この抑制は、GLP-1を加えずにシタグリプチンのみを加えた場合は、高用量(2μM)を添加しても認められなかった。

また、GLP-1 10pMとシタグリプチン2μMをともに加えた際には、細胞質中のcAMP濃度の有意な上昇が認められた(対GLP-1単独添加時、p<0.001)。

以上の結果より、シタグリプチンはGLP-1の活性を増強することによって抗炎症作用を発揮し、これが抗動脈硬化作用や内皮機能改善作用に結びついているという松原氏らの仮説が支持された。
同氏は、「シタグリプチンの抗炎症作用は、糖尿病患者にとって、心血管合併症の抑制というメリットをもたらすものとなるかもしれない」と結んだ。

出典  NM online 2010.6.11.24
版権 日経BP社

 

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衝撃波で狭心症を治療

戯れ言たれる侏儒 / 2010.11.28 00:18 / 推薦数 : 0
衝撃波で狭心症を治療
血管新生を促して胸痛症状を改善

衝撃波を用いた血管新生療法が開発された。尿路結石破砕治療時の約10分の1の強さの衝撃波を心筋に当てる。
現在は狭心症が対象だが、閉塞性動脈硬化症や褥瘡などにも応用が検討されている。
 
東北大病院は、麻酔や鎮静薬の投与などの前処置が必要ない、非侵襲的な新しい血管新生療法を行っている。
体外から低出力の衝撃波を心筋に当て、血管の新生を促して胸痛などの症状を改善するものだ。
同治療法は、今年7月に高度医療(第3項先進医療)の承認を受けた。

治療の対象となるのは、標準的な治療でも症状が改善しない重症の虚血性心疾患(狭心症)だ。
狭心症では通常、薬物治療や冠動脈バイパス手術(CABG)、冠動脈カテーテル治療(PCI)などが行われている。
しかし最高用量の薬物治療や、CABGやPCIを複数回施行しても、胸痛などの症状が残る症例があるという。
「入浴時や排便時など少しのことで胸痛を生じ、日常生活にも支障が生じている患者がいる。こうした症状を放置しておくと、突然死のリスクも高くなる」と東北大病院循環器内科教授の下川宏明氏は話す。

CABGやPCIでは、太い冠動脈の狭閉塞を解消し、血流を回復することで心筋の血行動態を改善する。
一方衝撃波治療では、衝撃波の照射により血管径約100μm以下の細い血管を心筋に無数に新生させることで、血行動態を改善する。

治療に使っているのは、下川氏がストルツメディカル(本社スイス)と共同開発した「Modulith SLC」という機器(写真1)。
機器に内蔵する超音波検査装置で心拍動を確認しながら、仰向けの患者の心筋の虚血領域に照準を合わせ、約50カ所に1カ所当たり約200回ほどの衝撃波を当てる。
これを1〜2日おきに3回繰り返す。本機器は欧州連合(EU)で既に販売されており、ドイツ、スイス、カナダなど10カ国以上で1000人以上に使われた。
価格は約4000万円。



 
自覚症状、検査値ともに改善
下川氏は2004年以降、狭心症患者約20症例に対して低出力体外衝撃波治療を行ってきた。
06年に行った試験では、衝撃波治療により心筋灌流が改善していることを確認した(図1)。




さらに、衝撃波を出さない機器を対照群として今年行った試験では、治療群でカナダ心臓病学会(CCS)による狭心症重症度のスコアがクラス3からクラス2に低下した(P<0.005)。
ニトログリセリンの使用頻度も約4回/週から1回/週以下に低下し(P<0.01)、MRIで評価した左心駆出率も改善が見られた(図2)。




3回の衝撃波治療の費用は26万5500円。
高度医療として認められたため、検査や入院費用などは保険適用となる。
日本では現在、東北大病院だけがこの治療を行っている。

この治療法の最大の特徴は、非侵襲的であるということだ。
治療には前処置の必要がなく、また衝撃波自体も尿路結石破砕治療で使う衝撃波の10分の1ほどの強さのため、患者が痛みを感じることはないという。
「これまでに治療した約20症例では、副作用や合併症は一度も確認していない」と下川氏は話す。

心筋の血管新生療法としては、遺伝子治療や細胞移植治療などの開発が進められている。
しかしこれらの治療法は、現在は研究段階にとどまる。
またこれらの治療では複数回の処置が必要であり、侵襲性や合併症などのリスクや、費用の面でも患者にとっての負担が小さくない。

衝撃波を当てると血管が新生するのはなぜか。
下川氏がヒントを得たのは、01年に開かれた日本NO学会だった。「ヒト血管内皮細胞に低出力衝撃波を当てると一酸化窒素が産生されるという発表を見て、非侵襲的な治療法として使えるのではないかと考えた」と下川氏は説明する。



課題は対象患者の選定
ただ現時点では、本治療法の適応は必ずしも明確になってはいない。
国立循環器病研究センター名誉総長の北村惣一郎氏は「現在は多くの症例でCABGやPCIが行われており、これらの治療が適応とならない患者は少ないのではないか。またこれらの再灌流療法を行えば、確実に血行動態を改善できる。衝撃波治療が安易に普及すれば、CABGやPCIの治療を受ける機会が奪われることになり、患者の予後にもかかわる。対象患者の選定は慎重に行うべきだろう」と指摘する。
これに対して下川氏は「PCI施行例の1割くらいは、心筋に虚血領域が残存している。PCIは年間25万件以上行われていることから、治療を必要としている患者は少なくとも数万人はいる」と推計している。
さらに、ほかに治療法の選択肢のある患者の治療機会を奪わないよう、東北大病院では循環器内科と心臓外科が共同で症例を検討している。
東北大病院はこの衝撃波治療を他疾患にも展開したい考えだ。
現在は急性心筋梗塞、閉塞性動脈硬化症の臨床研究が行われている。
さらに慢性心不全やリンパ浮腫、難治性皮膚潰瘍(褥瘡)などについても、適応拡大を目指して基礎研究を進めている。
出典  NM online 2010.11.26
版権 日経BP社
 

 

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 井蛙内科/開業医診療録(3)~2009.10.15
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井蛙内科/開業医診療録(2)2008.12.10~
http://wellfrog2.exblog.jp/
井蛙内科/開業医診療録~2008.5.21
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ROCKET AF試験 その2(2/2)

戯れ言たれる侏儒 / 2010.11.27 00:45 / 推薦数 : 0

昨日に続きROCKET AF試験で勉強しました。

心臓血管研究所常務理事・山下武志先生によるROCKET AF試験の解説記事です。

##またもワルファリンと非劣性,心房細動の脳卒中予防に新時代到来を確信 〜 ROCKET AF試験
昨年(2009年)発表されたRE-LY試験(N Engl J Med 2009; 361: 1139-1151)のdabigatranに続き,第83回米国心臓協会年次集会(AHA 2010;11月13~17日,シカゴ)でROCKET AF試験の結果が発表され,新規抗凝固薬rivaroxabanがワルファリンと非劣性の脳卒中予防効果を有することが証明された。
AHA 2010参加者の間では,抗凝固療法の在り方は確実に変化するという前提で,早くも両者の比較に関心が集まってきている。
しかし,両試験は異なる対象を異なる方法で検討しているため,安易な比較はすべきでないという点も強調されている。

RE-LY試験
N Engl J Med 2009; 361: 1139-1151
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/sites/entrez/19717844

#RE-LY試験と一貫性のあるROCKET AF試験の結果は福音
#(1)Xa阻害薬rivaroxabanでもワルファリンとの非劣性が示された
心房細動の脳梗塞予防について新しい時代が着実にやって来たという感を強くしている。
モニタリング,食生活や併用薬についての注意などがほぼ不要となり,医師・患者・患者家族が抗血栓薬に関して安心しやすい環境が生まれつつある。

dabigatran, rivaroxabanは異なる標的分子を持つが,1つの分子をターゲットとする単純な薬剤であるという点は共通だ。
そして,いずれの薬物も,その効果はワルファリンに劣らず,かつ頭蓋内出血の抑制という良い患者アウトカムをもたらすことは福音だと思う。
RE-LY試験と異なり,今回は二重盲検で同様の結果が得られており,これらの結果についてはある程度一貫性があることも指摘しておかなければならない。

#(2)ROCKET AF試験では高リスク患者群を対象にダブルダミー法による厳格な二重盲検試験で評価された

ワルファリンを対象とした二重盲検ランダム化比較試験(RCT)では,ダミーのプロトロンビン時間国際標準比(PT-INR)を用いるなど,他の二重盲検RCTと異なり莫大な費用と人手が必要になる。
そのため,患者数と試験観察期間を可能な限り少なく,短くする必要が生じる。

ROCKET AF試験では,エンドポイントの発生をある程度見込める患者層に限定し,この費用・人手の障壁を取り除いたと言えるだろう。
実際に,脳梗塞・一過性脳虚血発作(TIA)の既往がなく,CHADS2スコア2という,日常臨床で比較的よく見られる患者は全体の10%以下になるよう調節されている。
結果的にCHADS2スコア3以上の患者が87%を占めるという「高リスク」患者のエビデンスとならざるをえなかったのだろう。

ひるがえって,私たち循環器内科医の臨床ではCHADS2スコア3以上の患者は心房細動患者の約20%しか占めていない(Am J Med 2010; 123: 446-453)。

Am J Med 2010; 123: 446-453
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/sites/entrez/20399322
したがって,本試験の結果は脳梗塞・TIA既往を有する心房細動患者を診ている神経内科医にとって,より貴重なエビデンスといえる。一方で,主に一次(発症)予防を担当している循環器内科医,一般内科医にとっては,試験結果の外的妥当性について自身が考えなければならず,低リスク患者に対するエビデンスはrivaroxabanについてはまだ欠如しているといえる。


#解釈が難しいon-treatment解析とITT解析のとらえ方
#(3)ROCKET AF試験の発表者も「単純な比較はすべきではない」と注意を促しているが,両試験の結果をどのように評価したか
RE-LY試験とROCKET AF試験は似ているようで全く異なる試験であり,比較は予想以上に困難だ。上記のように,(1)患者対象が異なる,(2)試験方法が異なる(オープンラベルと二重盲検)ことをまず認識しておく必要がある。

単純な比較はできないという前提で先に進めたい。Lancet Neurol 11月8日オンライン版に掲載されたRE-LY試験サブ解析が参考になる。

Lancet Neurol 11月8日オンライン版
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/sites/entrez/21059484


この解析は,脳梗塞・TIAの既往を持つ患者のサブ解析で,dabigatranは低用量・高用量ともに1次エンドポイント発生においてワルファリンと同等であり,また頭蓋内出血でも両用量ともに減少しており,今回のROCKET AF試験成績に酷似していることを指摘できる。

なお,dabigatranで心筋梗塞が増えるという発表時の情報は,N Engl J Med(2010; 363: 1875-1876)に修正が報告され,統計学的な差はないとされた。

N Engl J Med 2010; 363: 1875-1876
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/sites/entrez/21047252


また,前述のLancet Neurolにおける報告では,dabigatran 150mgは脳梗塞を減少させていなかった。
以上のことは,このROCKET AF試験と共通であり,ITT解析に限れば,報告されている数字自体もよく似ている。

一方で,大出血に関してはこの二次(再発)予防目的の患者を対象としても,dabigatran 110mgがワルファリンより有意に少なかったことは異なる点かもしれない。

以上が現在の可能な範囲での比較であるが,比較を困難にする点をもう1点挙げる必要があるかもしれない。
それは,今回のROCKET-AF試験の成績が,ITT解析をon-treatment解析を混合して発表されていることだ。

最も奇異に感じた点を挙げれば,総死亡はon-treatment解析でrivaroxaban群,ワルファリン群それぞれ1.87%,2.21%となっているが,ITT解析では4.52%,4.91%と大幅に異なる。
そのほかにも,両解析でメッセージ性が異なってしまう可能性があり,同試験の結果解釈自体を難しくしている。

治療開始から脱落の時間経過を示した図がない点,on-treatment解析で各群の患者数が明示されていない点なども解釈の障壁となっている。
まず,ITT解析結果すべてを明らかにし,脱落の図を明示した上で,on-treatment解析の結果を示すという順序で説明されるべきだと考えるが,生物統計家の意見を聞いてみる必要がありそうだ。

個人的な感覚で言えば,Hylek氏の指摘したように,ITT解析の結果が現場の実情に近い成績だと思う。
すべての患者が医師の処方した薬物を服用するという状況は考えにくく,この仮想状況がon-treatment解析だと感じている。


#高リスク患者群が対象である点は一般内科医にとっては考慮が必要
(4)Hylek氏は,高リスク患者ではPT-INRのコントロールが難しく特に心不全では困難と指摘していたが、この点から今回の結果をどうとらえるか
高リスクであればあるほど,他のco-morbidityの状況が変化するので,PT-INRのコントロールは難しくなるのが一般的。
特に心不全では,他の併用薬の増減,体液量の変化,消化・肝代謝の変化をもたらし,ワルファリンコントロールを難しくする。

今回の成績を整理すると,次の6点にまとめられる。
1. 薬物プロファイルとして,1日1回投与であり,胃腸障害などの特異的な副作用を持たないrivaroxabanを用いた臨床試験
2. 二重盲検RCTであるという優れた面を持つ
3. 高リスク患者に限定した初めての新規抗血栓薬エビデンス
4. ワルファリンとの非劣性が証明され,出血性脳卒中・頭蓋内出血はワルファリンに比べ少ない(大出血は同等)
5. 解析手法はITT解析とon-treatment解析の混合であり,その理由が不明なため解釈が困難となる点がある。on-treatment解析の結果は慎重にすべきであろう
6. CHADS2スコア2以下の患者に対する外的妥当性は担保されない
(まとめ・田中 かおり)

出典 MT pro 2010.11.18
版権 メディカルトリビューン社


<自遊時間>
昨日、某メーカーのMRが講演会の案内のために来院しました。
その際、少し雑談をしましたが、どうやら今流行の配合剤は発売後1年間の長期投薬禁止の制限が解除されるようだ、とのことでした。
もっともといえばもっともなことですが、未確認情報のためはっきりしません。
一方、「配合されている全ての成分が承認後1年以上たたないと、その配合剤を承認しないとする運用基準を新たに設けることを確認した」ということが10月29日の厚生労働省の薬食審・医薬品第一部会で決定されたという記事もありました。
これも、ごもっともな話ではあります。

薬食審・第一部会 経口配合剤 単剤承認1年以上たたないと承認せず
http://www.mixonline.jp/Article/tabid/55/artid/39860/Default.aspx

他にもブログがあります。
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ROCKET AF試験 その1(1/2)

戯れ言たれる侏儒 / 2010.11.26 00:58 / 推薦数 : 0

ファクターXa阻害剤・リバロキサバンは、ワルファリンに比べ、高リスク心房細動患者において脳卒中の発生を有意に21%抑制することがAHA 2010で発表されました(ROCKET AF試験)。
リバロキサバンのワルファリンに対する非劣性が証明された訳です。
一方、大出血のリスクは2剤に有意差がみられないという問題も指摘されました。
リバロキサバンは、INRモニターを必要としない1日1回投与の薬剤ということで注目sれています。
きょうは、その記事で勉強しました。

 

Xa阻害薬rivaroxaban,ワルファリンとの非劣性を二重盲検RCTで証明
心房細動の脳卒中予防で,AHA 2010発表のROCKET AF試験
心房細動の診療では脳卒中の予防が最も重視されるが,わが国で使用可能な唯一の経口抗凝固薬であるワルファリンは,狭い範囲の治療域を維持するために管理が煩雑な点が課題となっている。
こうした中, 脳卒中リスクの高い心房細動患者を対象にした初の厳格な二重盲検ランダム化試験(RCT)ROCKET AF※で,新規抗凝固薬であるXa阻害薬rivaroxabanがワルファリンと同等の脳卒中予防効果を有することが示された。

※ Rivaroxaban Once daily oral direct Factor Xa inhibition Compared with vitamin K antagonism for prevention of stroke and Embolism Trial in Atrial Fibrillation

第83回米国心臓協会年次集会(AHA 2010;11月13~17日,シカゴ)で明らかにされたもので,発表した米デューク大学メディカルセンターKenneth W. Mahaffey氏は「患者や医療者にとって大きな福音と言える」と述べた。

ダブルダミーによる厳格な二重盲検RCT
ROCKET AF試験の対象は,脳卒中のリスク指標として用いられるCHADS2スコアが抗凝固療法の適応とされる2以上の非弁膜性心房細動患者。試験はワルファリンと試験薬それぞれのプラセボ薬が使用されるダブルダミー法で行われ,rivaroxaban群にもプロトロンビン時間国際標準比(PT-INR)のダミーモニタリングによる調整が行われるなど,厳格な二重盲検試験として実施された。

試験のサンプルサイズは,ワルファリン群のイベント発生率を2.3%と推測し,両群とも405のイベント発生を見込み1万4,000人と設定された。
45カ国1,178施設が参加し,1万4,264人が登録された。

登録患者は,rivaroxaban群(クレアチニンクリアランス30~49mL/分の腎障害患者では15mg/日,50mL/分以上は20mg/日,30mL/分未満は対象外)7,081例とワルファリン群7,090例に割り付けられた。
ワルファリン群はPT-INR 2.5(2.0~3.0)を目標に管理され,両群とも月1回の診察が行われた。
#脳卒中高リスク患者でワルファリンとの非劣性を証明
対象の平均年齢は73歳。高血圧91%,心不全62%,糖尿病患者39%,さらに脳卒中または一過性脳虚血発作の既往が55%を占め,CHADS2スコアの平均値は3.5となっており,脳卒中の高リスク患者群であった。

追跡期間中央値は707日で,試験脱落者は各群18例と少数だった。ただし,両群とも23%前後は試験終了前に試験薬を中止していた。また,ワルファリン群においてPT-INR 2.0~3.0の範囲であった患者の治療域にある時間(TTR)の中央値は57.8%だった。

脳卒中とそれ以外の塞栓症による1次エンドポイント発生リスクの非劣性検定は,per-protocol解析で行われ,rivaroxaban群1.71%/年,ワルファリン群2.16%/年で,非劣性が有意に示された(ハザード比0.79,P<0.001)。

致死性出血や脳出血リスクはrivaroxaban群で有意に低下
非劣性が証明されたため,rivaroxabanの優位性の有無が検討された。
初めに行われたon treatment解析(1万4,143例が対象)では,ハザード比0.79とrivaroxaban群の有意なイベント抑制効果が示された〔95%信頼区間(CI)0.65~0.95,P<0.015〕。
しかし,次に行われた全例対象のintention to treat(ITT)解析(1万4,171例が対象)ではハザード比0.88(同0.74~1.03,P<0.117)で有意差は認められなかった。

なお,このような手順で解析が行われた背景について,指定討論者のボストン大学のElaine M. Hylek氏は,非劣性試験の解析方法については議論されているところであると前置きしながら,「ITT解析ではアドヒアランスが得られなかった患者がいた場合にバイアスとなる可能性もあることから,非劣性を見る上ではper protocol解析やon treatment解析は必要であり,その上でITT解析も行われることが望ましいとされている」(JAMA 2006; 295: 1152-1160)と説明している。

JAMA 2006; 295: 1152-1160
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/sites/entrez/16522836

安全性エンドポイントの出血については,大出血と臨床的処置を要した出血がrivaroxaban群14.91%に対してワルファリン群14.52%と差がなかった。
脳出血は順に0.49%対0.74%,致死性出血は0.24%対0.48%で,それぞれrivaroxaban群で有意に少なかった。
しかし,輸血を必要とする出血とヘモグロビン値2g/dL以上の低下はrivaroxaban群で有意に多かった。

2次エンドポイントである血管死,脳卒中,塞栓症はrivaroxaban群3.11%,ワルファリン群3.63%とrivaroxaban群で有意に少なかった。脳梗塞の発症は順に1.34%対1.42%,心筋梗塞の発症は0.91%対1.12%でそれぞれ両群間に有意差はなかった。

 


管理が難しい高リスク対象の試験,RE-LY試験との比較は慎重に
Hylek氏は,ROCKET AFはこれまでの臨床試験では検討されていなかった脳卒中高リスク患者群を対象としている点で,臨床的意義が高いと評価した。
一方で,半減期が5~13時間と短いrivaroxabanと20~60時間と長いワルファリンをon treatment解析で検証した結果は慎重に解釈すべきと指摘し,「ITT解析が実際の治療の成績を反映しているのではないか」と述べた。
また,出血リスクについて,致死性出血や脳出血といった重症出血がrivaroxavan群で少ない一方で,輸血を要する出血が増加していた点を挙げ,同薬の安全性評価を難しくしたと指摘した。

ところで,昨年(2009年),50年ぶりの新規抗凝固薬として経口トロンビン直接阻害薬dabigatranが,ワルファリンと同等以上に脳卒中予防効果を有することがオープンラベルのRE-LY試験(N Engl J Med 2009; 361: 1139-1151)によって示され,同薬は,今年(2010年)10月に米国で承認されている。


N Engl J Med 2009; 361: 1139-1151
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/sites/entrez/19717844


Mahaffey氏は,パネルディスカッションにおいてdabigatranとrivaroxabanのどちらが優れているか,「あえて」聞かれると「RE-LY試験はオープンラベル試験として行われ,対象の CHADS2スコアは2.1だったのに対して,今回の試験は二重盲検で行われ,CHADS2スコアは3.5と方法も対象も異なる」ため,「正しい答えは直接比較でのみ導かれる」とした。
その上で,「世界中の何百万人という患者や,抗凝固療法に取り組む医療者にとって,ワルファリンに変わる有効な治療薬の登場は福音と言える」と述べた。

また,2割超の患者が試験薬を途中で中止した点を指摘されると,高齢者や合併症が多い背景が考えられると説明し「今後に残された課題である」と答えた。

なお,rivaroxabanは抗トロンビン作用が長時間続くため投与レジメは1日1回となっている。
待機的人工股関節・膝関節置換術後の静脈血栓塞栓症予防の適応として75カ国以上で発売されているが,わが国ではまだ承認されていない。
ROCKET AFは第Ⅲ相臨床試験であり,今後の心房細動患者への承認動向が注目される。


<ROCKET-AF 関連サイト>
ROCKET-AF 解釈の糸口(その1)
http://www.mixonline.jp/Article/tabid/55/artid/39983/Default.aspx
■ITT(Intention To Treat)解析では、リバロキサバンの優越性は示されなかった。
■安全性については、懸念された頭蓋内出血(ICH)や致死性出血などは、リバロキサバン群で有意に少なかったものの、全般的な出血リスクは2群間に有意差はみられなかった。
■試験の解釈には、さまざまな議論がある。
もっとも大きな論点の1つは、主要評価項目の検討に“On Treatment”解析が用いられた点だ。
また同じ“On Treatment”解析でも、非劣性の検証と優越性の検証とで、対象とする患者集団が異なることにも注意が必要だ。
非劣性の解析では「プロトコール通り被験薬を服用していた(=Protocol Compliant)患者群を対象としているのに対して、優越性の解析では被験薬を一度でも服用した安全性解析と同じ患者群を対象にしている。

 

ROCKET-AF 解釈の糸口(その2)患者背景をめぐって
http://www.mixonline.jp/Article/tabid/55/artid/39984/Default.aspx
■対象患者の医学的な複雑性を知らずして、この試験を理解することは不可能である。

 

リバロキサバン 第 III 相臨床試験ROCKET AFの患者背景データを発表
http://www.intendis.co.jp/scripts/pages/jp/press_release/press_detail/?file_path=2010%2Fnews2010-06-02.html
■リバロキサバンについて
○バイエル・シエーリング・ファーマ社のドイツ・ヴッパータール研究所で発見され、バイエル ヘルスケア社とジョンソン & ジョンソン ファーマシューティカル リサーチ & ディベロップメント社が共同開発している新規経口抗凝固剤です。
○待機的股関節・膝関節置換術を受けた成人患者における静脈血栓塞栓症(VTE:venous thromboembolism)予防に有効であることが示されました。
○迅速な作用発現、予測可能な用量反応性、高い生物学的利用能(バイオアベイラビリティ)、凝固モニタリング不要、食物や薬剤との相互作用が少ない、といった特性があります。
○待機的股関節・膝関節置換術を受けた成人患者におけるVTE予防の適応で、販売名「Xarelto®」として販売されています。
この適応において、エノキサパリンを上回る優れた有効性を一貫して証明した唯一の新規経口抗凝固剤です。
○Xarelto®は、世界95カ国以上で承認され、バイエル・シエーリング・ファーマ社により、70カ国で発売されました。


<rivaroxaban 関連サイト>
抗血栓薬3剤併用への関心が増大
http://blog.m3.com/reed/20090727/_3_

 

<血栓症 関連サイト>
http://www.thrombosisadviser.com/

 

 

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ASCEND-HF試験

戯れ言たれる侏儒 / 2010.11.25 00:00 / 推薦数 : 0

BNP製剤で急性非代償性心不全の呼吸症状も予後も改善せず
安全性は確認,AHA 2010でASCEND-HF試験発表
血管拡張作用やナトリウム排泄,利尿作用を有するB型ナトリウム利尿ペプチド(BNP)製剤nesiritideは,急性非代償性心不全(ADHF)への投与後3時間での呼吸症状や肺動脈楔入圧(PCWP)の改善効果から米国では9年前に承認され,ADHFの治療成績向上に期待が集まっていた。
しかし,2005年に死亡リスク上昇および腎機能の悪化を指摘するメタ解析(JAMA 2005; 293: 1900-1905)が発表されると状況は一転し,同薬の安全性が懸念される事態となった。
その後,腎機能への影響を前向きに検証したランダム化比較試験(RCT)(J Am Coll Cardiol 2007; 50: 1835-1840)によってその懸念は一部解消されたが,この薬剤の位置付けを決定する試験の報告が待たれていた。
このような中,開催中の第83回米国心臓協会年次集会(AHA 2010;11月13~17日,シカゴ)で,米デューク大学のAdrian F. Hernandez氏が7,000例規模の二重盲検RCT・ASCEND-HF※試験の結果を報告した。
同試験では,死亡や腎機能障害リスクは示されなかったが,予後の改善のみならず投与6,24時間後の呼吸困難の改善も認められなかった。日本では同薬は第Ⅱ相臨床試験の段階にある。

出典 MT pro 2010.11.16
版権 メディカルトリビューン社

 


以下は、nesiritideの日本での臨床治験に参加している兵庫県立尼崎病院循環器内科部長・佐藤幸人先生のコメントです。(田中 かおり氏 編集)

<関連サイト>
BNP製剤に過度な臓器保護作用の期待は禁物,今後の臨床データが注目されるhANP
ASCEND-HF試験
腎機能の悪化や死亡リスクの上昇がメタ解析で指摘されていたB型ナトリウム利尿ペプチド(BNP)製剤nesiritideの安全性に対する懸念は,開催中の第83回米国心臓協会年次集会(AHA 2010;11月13~17日,シカゴ)で発表されたASCEND-HFで払拭された。
一方で,投与30日後の予後改善効果が示されなかったため,同薬の位置付けには疑問が残る結果となった。
nesiritideは日本では承認されておらず,急性非代償性心不全(ADHF)への血管拡張薬としては,ヒト心房性ナトリウム利尿ペプチド(hANP)製剤が用いられている。
今回の結果は日本のADHF管理においてどのような影響をもたらすのか。

呼吸困難スケールを短期指標とすることで多人数の登録が可能に
(1)
急性心不全のような急性期の患者を対象とした試験としては最大規模の登録数だった。
急性心不全の臨床試験における患者登録の特徴は何か。

従来の日本の急性心不全の治験では,Swan-Ganzカテーテルを入れて血行動態データを取ることが必須のようになっているが,このような侵襲的プロトコルでは,日本全国で100~200例を集めるのも大変な仕事になる。

一方,海外では血行動態改善と長期予後が連動しないことから(例えば,点滴強心薬は血行動態を改善しても長期予後は悪化させる可能性がある),最近はLikert,Borgなどの呼吸困難スケールを短期指標としている。この方法は非侵襲的で,多人数の登録が可能となる。

日本で使用されているhANP製剤とBNP製剤は血圧への影響が異なるか

(2)BNP製剤とhANP製剤で違いや類似性はあるのか
hANP製剤の方がBNP製剤より生体内半減期が短く,過度の血圧低下が生じにくいとされている。
ただし,実臨床データでどのようになるかは分からない。

(3)今回の試験で使用されたBNP製剤の投与が対象となるのはどのような患者か
BNP製剤,hANP製剤は,ともに硝酸薬と同じ血管拡張薬で,(1)収縮期血圧が一定以上あり(普通は90mmHg以上),(2)臓器低還流の症状がない患者―が投与の対象になる。

従来療法との比較で有意な改善効果を示すのは困難,低用量を使用すべき

(4)ASCEND-HF試験ではBNP製剤の安全性が認められたが,有効性については証明されなかった。
今後,この薬剤をどのように使用していくべきか

ポイントが2点ある。
1点は,血管拡張薬としての短期の血行動態または呼吸困難改善作用について。
もう1点は,心保護や腎保護を期待しての長期生存改善作用だ。

もし,実臨床で完全にプラセボのみとBNP製剤(nesiritide)に割り付ければ,当然血行動態改善作用のあるnesiritide投与群の短期・長期の成績がともに良好になると考えられる。
しかし,治療を行わないことは人道的に許されず,プラセボ群を設定する試験を実施することは無理である。
したがって,今回のように「標準治療+プラセボ」vs.「標準治療+nesiritide」になるわけだ。
これでは,nesiritideは標準治療を上回る短期・長期効果を出さねばならず,かなり歩が悪くなる。

nesiritideは血管拡張作用のほかに,実験的には心保護・腎保護作用が期待できる。
しかし,実臨床で臓器保護作用を期待するあまり投与量を多くすると,血圧低下と臓器環流障害から生じる腎機能低下などが起こる。0.06γという高用量の試みも報告されているが,以前の研究で指摘されたように,高用量では心血管イベントと腎機能悪化の増加という有害事象が多くなってしまう。

このような経緯から,現在では低用量での使用効果が期待されている。
しかし,多施設による試験やリアルワールドで心保護,腎保護を検討しても「心血管イベントが減るわけでもないし,腎機能が改善したわけでもない」というのが今回の結果だろう(ASCEND-HF試験の用量は0.01γ)。
nesiritideの実臨床での作用は血管拡張作用が主体であり,臓器保護作用はあっても軽度と考えられる。

以前行われたVMAC(Vasodilation in the Management of Acute CHF)試験(N Engl J Med 2000; 343: 246-245)のように「硝酸薬 vs. nesiritide」というプロトコルの組み方もある。
同試験ではnesiritideは短期の血行動態の改善には優れるが,長期予後効果は同等という結果だった。

N Engl J Med 2000; 343: 246-245
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/sites/entrez/10911006

(5)nesiritideをどのように評価するか,またhANP製剤の臨床データはどうか

nesiritideは硝酸薬よりも血行動態の改善に優れている。
日本で販売されているhANP製剤カルペリチドには心筋梗塞後の患者を対象としたJ-WIND試験(Lancet 2008; 370: 1483-1493)があるが,心筋梗塞を除いた急性心不全での多施設の検討はない。

Lancet 2008; 370: 1483-1493
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/sites/entrez/17964349

出典 MT pro 2010.11.16
版権 メディカルトリビューン社

 


片岡球子 『牡丹と青富士』 リトグラフ
http://www.seikougarou.co.jp/sell/kataokatamako/664.html

 


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ポストスタチンの方向性

戯れ言たれる侏儒 / 2010.11.24 00:45 / 推薦数 : 0

ARBITER 6-HALTS試験の結果を中心に,帝京大学内科学の寺本民生教授がポストスタチンの方向性をレビューした記事で勉強しました。
混沌とするポストスタチンの方向性
スタチンによりLDLコレステロール(LDL-C)管理がほぼ達成されるようになった現在,ポストスタチンの方向性が議論されるようになってきた。
そして,この議論に大きな話題を提供しているのが,昨年の米国心臓協会(AHA)で報告されたARBITER 6-HALTSである。
同試験の結果では,スタチン服用中の心血管疾患患者では,さらにLDL-Cを低下させるエゼチミブよりHDLコレステロール(HDL-C)を上昇させるナイアシンを併用したほうが,頸動脈内膜中膜複合体厚(IMT)減少や心血管イベントリスク低減効果が有意に優れることが示された。
しかし,それだけでポストスタチンの方向性を見出すには,同試験のデザインには種々の問題があることも指摘されている。

ARBITER 6-HALTSはデザインに問題が
ARBITER 6-HALTSの対象は5~6年の長期にわたりスタチンを服用している心血管疾患患者363例。
徐放性ニコチン酸製剤であるナイアシン(最大忍容量2,000mg/日)を併用する群と,コレステロールトランスポーター阻害薬エゼチミブ10mg/日を併用する群にランダムに割り付け,14か月間追跡して効果を比較した。
その結果,1次評価項目のIMT減少と2次評価項目の主要心血管イベント(MACE)低減効果のいずれも,ナイアシン群はエゼチミブ群に比べて有意に優れることが示された(NEJM 2009; 361: 2113-2122)。

この結果は,2007年のコレステロールエステル転送蛋白質(CETP)阻害薬トルセトラピブによる心血管イベント増加の報告により生じたHDL-C上昇への懸念を払拭するものであり,ポストスタチンとしてはさらなるLDL-C低下よりHDL-C上昇のほうが優れていることを示しているように見える。
しかし,そう結論付けてしまうには,「同試験のデザインにはあまりにも問題が多い」と寺本教授は指摘する。

その1つは,同試験がPROBE法で行われているにもかかわらず,1次評価項目をIMTというサロゲートマーカーにしていることである。しかし一方,心筋梗塞などのハードエンドポイントを1次評価項目とするには,対象が363例とあまりにも少ない。
また,ナイアシン群ではLDL-Cもかなり低下しており,この群の効果をすべてHDL-C上昇に帰することには無理もある。
つまり,「同試験はナイアシンとエゼチミブを比較した試験ではあっても,さらなるLDL-C低下とHDL-C上昇を比較した試験にはなっていない」というのが同教授の見解である。

脂質管理はまずスタチンありきの状況は変わらない
小腸におけるコレステロールトランスポーターを阻害するというスタチンとは異なる機序でLDL-Cを低下させるエゼチミブには,臨床導入時からポストスタチンの候補として大きな期待がかけられた。しかし,同薬に関するこれまでの臨床試験であるENHANCE※1では,スタチンとエゼチミブの併用はスタチン単独に比べてLDL-C,C反応性蛋白(CRP)を有意に低下させたにもかかわらず,IMT減少はスタチン単独と変わらないことが示された。
また,スタチンとの併用による心血管死と大動脈弁狭窄症関連イベントの抑制効果を検討したSEAS※2でも,スタチン単独に比べて有意な抑制効果は示されないという。

そのため,エゼチミブのエビデンスは現在進行中のIMPROVE-IT※3SHARP※4などの結果を待たなければならない状況であるが,エゼチミブでなかなか所期の成績が得られないことの背景には,「スタチンの構築してきたエビデンスがあまりにも確固たるものであるため,それ以上のエビデンスを求めるために,試験デザインにかなり無理をしている面があるかもしれない」と寺本教授。
「スタチンの最初のエビデンスとなった4S(Lancet 1994; 344: 1383-1389)で,スタチンはコレステロール吸収の高い患者では効果が低いことが示されたように,スタチンでも効果の得られにくい患者群は確実に存在する。そうした患者群をターゲットとした臨床試験であれば,エゼチミブの効果はもっと明確になるのでは」と付け加えた。

一方,HDL-C上昇効果が明らかになったナイアシンであるが,これには副作用として有名なナイアシンフラッシュ(皮膚潮紅)の問題もあり,臨床的には使いづらいという印象を持っている医師は多いと思われる。
同教授も「ポストスタチンにおけるHDL-C上昇を目的に,全面的にナイアシンを使用することは現実的ではない」と言う。

ほかにはフィブラート製剤もHDL-C上昇作用を有しているが,これに関しては2型糖尿病患者を対象としたFIELDで,プラセボとの比較で主要冠動脈イベントは11%低下したが,有意ではなかったことが示されている(Lancet 2005; 366: 1849-1861)。

Torcetrapibでいったん挫折したCETP阻害薬に関しては現在,日本たばこ産業(株)(JT)がロシュとライセンス契約を結び,新規薬剤を開発中であるが,治験までにもまだ間があると見なければならない。

「脂質代謝改善ではスタチンの構築してきたエビデンスは絶大であり,今後とも,まずスタチンありきという状況は変わらない。ポストスタチンという議論も,この状況を踏まえたうえでの議論であることを忘れないようにしなければならない」と同教授。
「特にわが国では,動脈硬化性疾患患者のスタチン使用率は約60%と,欧米諸国の90%近くに比べて低いことも考えると,さらにスタチンによる積極的脂質代謝改善に取り組むべきで,それでも効果が得られにくい高リスク患者などで,症例に応じてさらなるLDL-C低下またはHDL-C上昇を考えるということでよいだろう」と締めくくった。

 


 

東京大学大学院農学生命科学研究科応用生命化学専攻食品生化学分野・佐藤隆一郎教授のコメント
製剤により強弱はあるが,スタチンにはLDL-C低下作用に加えてHDL-C上昇作用のあることが知られている。
ロバスタチン,シンバスタチン,アトルバスタチンの3剤の使用例3万2,258例を対象とした最近のメタアナリシス,VOYAGER(J Lipid Res オンライン版)の結果からも,スタチンにはLDL-C低下作用とは独立してHDL-C上昇作用が認められることが示されている。スタチンによるHDL-C上昇の機序には,ABC(ATP-binding cassette)蛋白質ファミリーのABCA1を介したコレステロール排出上昇が関係することを見出している。

ABCA1は2,261アミノ酸から成り,12回の膜貫通領域を持つことが予想される膜蛋白質。細胞質側の膜間領域に2か所のATP結合領域を有し,ATP分解により得られたエネルギーを利用し,細胞内の過剰なコレステロールを細胞外に排出する。
細胞外に出たコレステロールは,血中のアポリポ蛋白質A-1(apo A-1)と結合してHDL-Cとなる。
ABCA1は全身のさまざまな組織で発現しており,特に小腸,肝臓,マクロファージで発現が高いが,その発現をまさに制御しているのが核内受容体ファミリーのメンバーであるliver X receptor(LXR)である。

LXRは酸化コレステロールをリガンドとして活性化されることから,コレステロールの合成阻害薬であるスタチンを投与すると,肝臓以外の臓器ではLXRの活性が低下し,ABCA1の発現も低下して,HDL-Cの上昇が抑制される。
しかし,肝臓ではスタチン投与により,むしろABCA1の発現は亢進して,HDL-Cの上昇が亢進する。
これは,肝臓ではLXR以外にも,コレステロールの合成阻害により起こるSREBP-2の活性化に応答してABCA1の発現が亢進するという独自の系が存在するためである。
肝臓がapo A-1の主要な産生臓器であることも,肝臓におけるHDL-C上昇に拍車をかける。

「スタチン投与により肝臓以外ではHDL-C上昇が抑制され,肝臓ではHDL-C上昇が亢進するという相反する反応が起こるが,それが結果的に脂質代謝改善につながっていることは,それだけ脂質代謝の調節に肝臓が重要であることを物語っている」と同教授は結んだ。

出典 Medical Tribune 2010.1.28
版権 メディカルトリビューン社


<関連サイト>
ポストスタチンのポジション争い激化?
http://blog.m3.com/reed/20100120/1

 

 

 

 

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ワイヤレス12誘導パソコン心電計については

ワイヤレス12誘導心電計
http://blog.m3.com/reed/20101028/_12_

狭心症の診断ツールとしての心電図
http://blog.m3.com/reed/20091201/1

でとりあげました。

勇を奮って(?)月初めに納入を決定し、昨日納品されました。
開業医の間に一般的に普及しているマスター階段昇降(2階段法)は、当然のこととはいえ負荷中の心電図波形の記録は出来ません。
いわば、「一番おいしいところが欠落」しています。

病院でも必ずしもエルゴメーターやトレッドミルがスクリーニング検査として採用されているわけではありません。
多くは、医師の立ち会いが必要でない(?)マスターが行われているのが実情ではないでしょうか。

当然のことながら陽性率は低く、偽陰性率は高い結果となります。

この「ワイヤレス12誘導心電計」は12誘導同時記録というのも特徴です。

私は開業時に心電計を導入する際、3誘導記録の自動解析心電計に抵抗があり、解析なしの6誘導心電計を採用しました。

12誘導記録は夢のようです。
当然、自動解析機能もついていて解釈、心拍数、PQ、QRS、QT、QTC、そしてP、QRS、T軸が表示されます。
負荷中の全心拍の記録から不整脈の有無および性状がチェック出来、ファイナルレポートでSTトレンドがプリントアウトされます。

<2010.12.1 追加>
昨日、納入業者が来訪しました。
6誘導記録、12誘導記録は心電計の世界では今や常識だそうです。

 

取扱説明書

 


 

一式がこのケースの中に入るコンパクトさ。

 


 

高性能なノートパソコン(Window7)がついて来ます。
デスクトップ型がいい場合には要応談。
パソコンを選択する際、シリアルポート付を選択すると、エルゴメーターやトレッッドミルへの発展性があります。
左に写っているのが受信し自動解析するレコーダー。

EC-12R/S(今回購入したモデル)
EC-12S(血圧計付。運動負荷中の血圧をモニターが可能。)

 


 

寂しいくらいのコンパクトさ。

 


 

これがすべて。
左上のケースの中に患者さんが負荷中装着するトランスミッターが入っています。
チャージャー込みでeneroopが4本ついてくるところは少しお得感あり。

 


 

ケースに入っていたトランスミッター。
頼りないぐらいに軽い。
何が入っているかはともかく、本当に中に入っているんだろうか。

 

<ワイヤレス12誘導心電計 関連サイト>
12誘導 ワイヤレス 負荷 メタボリック指標付き 心電計
http://www.youtube.com/watch?v=aWqGULKJkCs
(動画)
12 leads ECG stres test, Masterstep test, Metabolic Index,
http://www.youtube.com/watch?v=znmK77cfurc&feature=related
(動画)
(私的コメント;TMでスリッパを履いているのはちょっと)

 

その他
「葦の髄」循環器メモ帖
http://yaplog.jp/hurst/
ふくろう医者の診察室 http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き) 
井蛙内科/開業医診療録(4)2009.10.16~
http://wellfrog4.exblog.jp/
 井蛙内科/開業医診療録(3)~2009.10.15
http://wellfrog3.exblog.jp/
井蛙内科/開業医診療録(2)2008.12.10~
http://wellfrog2.exblog.jp/
井蛙内科/開業医診療録~2008.5.21
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(内科医向き)
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比較的軽症の心不全患者でもエプレレノン追加投与で予後が改善
AHA 2010で発表のEMPHASIS-HF試験
アルドステロン拮抗薬は,収縮不全を伴う重症心不全や急性心筋梗塞後のうっ血性心不全の予後を改善することが明らかにされており,米国のガイドラインでは,腎機能の観察を慎重に行うという条件付きでクラスⅠの推奨がなされている ※1
今回,自覚症状の少ない比較的軽症の心不全患者を対象にしたEMPHASIS-HF ※2試験の結果が明らかになり,アルドステロン拮抗薬エプレレノンを標準治療に追加投与することで予後の大幅な改善が見込めることが分かった。

第83回米国心臓協会年次集会(AHA 2010;11月13~17日,シカゴ)において,ナンシー大学(仏ナンシー)内科治療学教授のFaiez Zannad氏が報告し,N Engl J Med 11月14日オンライン版にも同時に掲載された〔試験デザインはEur J Heart Fail(2010; 12: 617-6

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/sites/entrez/2038864722)に掲載〕。

N Engl J Med 11月14日オンライン版
http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa1009492

Eur J Heart Fail 2010; 12: 617-622
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/sites/entrez/20388647

設定された中止基準を満たしたため早期終了に
この試験の対象は,55歳以上で左室駆出率(LVEF)35%未満,ニューヨーク心臓協会(NYHA)心機能クラス分類Ⅱ度の心不全で,ガイドラインが推奨する至適治療が行われている患者。
ランダム化に当たっては,心血管疾患による入院から6か月以内,またはB型ナトリウム利尿ペプチド(BNP)250pg/mL以上,もしくはN末端プロ(NT-pro)BNPが男性500pg/mL以上,女性750pg/mL以上などの条件が設定されている。

高カリウム(K)血症や腎機能の悪化が懸念される推算糸球体濾過量(eGFR)30mL/分/1.73m2未満の場合や血清K値5.0mEq/L超の患者は除外された。

試験は二重盲検ランダム化比較試験(RCT)として実施され,エプレレノン群とプラセボ群に割り付けられた。エプレレノン群は同薬25mg/日が投与され,必要に応じて4週以降に50mg/日に増量されたが,K値が6.0mEq/L以上で投薬中止,5.5~5.9mEq/Lで用量調整がなされた。

試験のサンプルサイズについては,CHARM-Added試験を基にプラセボ群で18%のイベント発症を予測,48カ月の追跡期間で実薬群の18%のリスク低下を見込み,3,100例の登録が設定された。
29カ国270施設から登録が行われていたが,今年(2010年)5月の中間解析により実薬群で有意に良好な結果が示され,当初から設定されていた試験中止基準を満たしたため,早期終了となった。
患者登録も中止されたが,この時点で2,737人が登録されていた。


心血管疾患による死亡と心不全による入院のリスクが37%低下
対象の平均年齢は69歳,男性が78%,白人が82%を占めた。心不全発症から平均約4.7年が経過しており,LVEF 26%でBMI 27.5,約半数が心筋梗塞既往の患者群だった。
治療薬の処方率は,ACE阻害薬またはアンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)もしくは併用投与が94%に上り,利尿薬は85%,β遮断薬は87%だった。

中央値で21カ月の追跡の結果,心血管疾患による死亡または心不全による入院の1次エンドポイントの発生率は,エプレレノン群18.3%に対してプラセボ群25.9%で,調整後ハザード比37%の有意なイベント低下が示された(表,P<0.001)。
性,年齢,血圧,心拍数,eGFR,虚血の有無などいずれの患者背景別解析においてもエプレレノン群で有意に良好な結果であることは変わらなかった。

 


また,総死亡,心血管疾患による死亡,心不全の悪化による死亡リスクもすべてエプレレノン群で有意に低下した。
心不全やその他の原因による入院の発生リスクもエプレレノン群で有意に低下した。
1次エンドポイントの発生抑制に必要な人数は1年当たり19人で,1人の死亡を防ぐために必要な人数が1年当たり51人という結果だった。


高K血症に対する注意は引き続き必要,心不全診療においてより重要な位置付けに
一方,副作用の発現は,高K血症がプラセボ群3.7%に対してエプレレノン群8%と有意に多かったが,これにより脱落した症例はそれぞれ0.9%,1.1%にとどまった。
なお,血清K値5.5mEq/L以上を認めた患者の頻度はそれぞれ7.2%,11.8%で,エプレレノン群で有意に高かった。

その他,女性化乳房や胸部症状は同順に1.0%,0.7%,腎障害3.1%,2.9%,低血圧2.7%,3.4%と同等だった。
全体の脱落率は順に16.2%,13.8%でやはり有意差はなかったが,エプレレノン群で少ない傾向だった。

Zannad氏は「収縮不全を伴う軽度な自覚症状のある心不全患者において,エプレレノンは忍容性が高く,生存率を改善し,入院を抑制する」と指摘。
スピロノラクトンによる重症心不全の予後改善効果を示したRALES試験,エプレレノンの急性心筋梗塞後のうっ血性心不全での有用性を示したEMPHASIS試験,今回のEMPHASIS-HF試験と,一貫してアルドステロン拮抗薬の有用性を示していることから,「これらのエビデンスが心不全の診療を変えていくだろう」とまとめた。

これに対して,指定討論者の米ハーバード医科大学循環器科教授のWilliam G. Stevenson氏は「アルドステロン拮抗薬の推奨範囲を広げる前に,高K血症を来さない使用法を確認すべき。腎機能が悪化した症例や糖尿病患者,高齢者には注意が必要」と指摘した。
特に,ループ利尿薬が必要のない患者や心不全によるイベントリスクが低い患者ではリスクがベネフィトを上回る可能性があると注意を促した。

Zannad氏はしかし,「今回の試験で高K血症は予測を下回る発現率にとどまっており,また発症しても十分に対応可能なものであった」としている。
また,昨年のAHA会長で米アラバマ大学のClyde W. Yancy氏は,記者会見で「ガイドラインに記載されているように血清K値が5.0mEq/Lを超える患者には投与すべきでなく,また不整脈イベントリスクが増加する5.5mEq/L以上を超えないように管理すべき」と使用法を確認しながらも,同薬の適応がありながらアンダーユースであった重症心不全患者の管理において,今回の結果は「積極的な使用を促す結果」と評価している。

無症候性の患者にも投与すべきかの問いに対して,Zannad氏は「今回は症状のある患者を対象としており,予防的な使用の是非については今後の臨床試験で明らかにすべき」としている。
なお,アルドステロン拮抗薬については,現在,LVEF 45%以上の収縮機能が保たれた拡張型心不全を対象にしたTOPCAT試験が進行中だ。
この試験ではスピロノラクトンが使用されているが,ほかに有効な治療法が見いだされていない拡張型心不全への有効性が認められるかどうか,注目されている。


※1 アルドステロン拮抗薬の大規模臨床試験には,LVEF 35%以下でNYHA心機能クラス分類Ⅲ度以上の重症心不全を対象としたRALES試験(N Engl J Med 1999; 341: 709-717),急性心筋梗塞後にうっ血性心不全の症状や徴候が認められる患者の予後を検証したEPHESUS試験(N Engl J Med 2003; 348: 1309-1321)があり,前者はスピロノラクトンが,後者にはエプレレノンが使用されていた。米国心臓学会(ACC)/米国心臓協会(AHA)のガイドラインでは,これらの患者群への同薬の追加投与が慎重な腎機能のモニターを行う条件付きでクラスⅠの推奨となっている。抗アルドステロン薬は,30年以上の使用歴を有するスピロノラクトンとわが国では3年前に承認されたエプレレノンがあるが,エプレレノンはアルドステロン受容体への選択性がスピロノラクトンに比べて高いため,女性化乳房などの副作用を来さない。現段階では,エプレレノンの日本での保険適用は高血圧症となっており,心不全には適用されていない。

N Engl J Med 1999; 341: 709-717
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/sites/entrez/10471456

N Engl J Med 2003; 348: 1309-1321
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/sites/entrez/12668699


※2 Eplerenone in Mild Patients Hospitalization and Survival Study in Heart Failure


出典 MT pro 2010.11.15
版権 メディカルトリビューン社

 

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CETP阻害薬anacetrapib

戯れ言たれる侏儒 / 2010.11.21 00:39 / 推薦数 : 0

##LDL-C半減,HDL-C倍増! CETP阻害薬anacetrapibの驚くべき脂質改善効果
##Torcetrapibの開発中止から3年後のAHA 2010で報告,安全性も確認
より有効な脂質管理を目指した新薬の開発が続いているが,中でも有望視されていたのがコレステロールエステル転送蛋白(CETP)阻害薬*だ。
このクラスの薬で最初に第Ⅲ相臨床試験が行われたtorcetrapibは,心血管イベントリスクの上昇が認められたため開発中止に至った(N Engl J Med 2007; 357: 2109-2122)。

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/sites/entrez/17984165

それから3年,第83回米国心臓協会年次集会(AHA 2010;11月13~17日,シカゴ)で同クラス2剤目となるanacetrapibの第Ⅲ相臨床試験DEFINE**試験の結果が明らかにされ,N Engl J Med 11月17日オンライン版に同時掲載された。

http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa1009744

安全性を確認した今回の試験では,torcetrapibで見られた血圧上昇や副腎への影響などは認められなかった。
また,それ以上に注目されたのが強力な脂質改善効果で,24週後にLDLコレステロール(LDL-C)は半減, HDLコレステロール(HDL-C)は倍増した。
報告した米ハーバード大学ブリガムアンドウィメンズ病院のChristopher P. Cannon氏は,今後,臨床効果(イベント抑制効果)を検証する大規模第Ⅲ相試験を実施することも明らかにした。

#プラセボとの比較ではLDL-C値は約40%減少,HDL-C値は約140%増加
試験には20カ国153施設が参加し,二重盲検ランダム化比較試験(RCT)として行われた。対象は冠動脈疾患(CHD),またはCHDのリスク因子があり,スタチンなどの脂質管理を受けている患者。脂質レベルは,LDL-C値が50~100mg/dL,HDL-C値が60mg/dL未満,中性脂肪値は400mg/dL以下の患者と設定された。

2,757人がスクリーニングを受け,このうち1,623人がanacetrapib 100mg/日群またはプラセボ群にランダムに割り付けられた。
試験薬は18カ月投与され,その後も3カ月間経過観察された。両群とも99%はスタチン治療を受けていた。

ベースラインから24週後にかけてのLDL-C値の変化を見ると,プラセボ群では82mg/dL→77mg/dLだったのに対し,anacetrapib群では81mg/dL→45mg/dLとほぼ半減した。
1次エンドポイントとしたこの間の変化率では,プラセボ群に比べ39.8%の有意な減少が認められた(P<0.001)。

同様の期間でのHDL-C値の変化は,プラセボ群の40mg/dL→46mg/dLに対し,anacetrapib群では41mg/dL→101mg/dLと2倍以上に増加した。
2次エンドポイントとしたこの間の変化率では,プラセボ群に比べ138.1%の有意な上昇が示された(P<0.001)。

そのため,anacetrapib群のLDL-C/HDL-C比はベースラインの2.1から24~76週後に0.5と大幅に低下した。
#懸念された有害事象の増加はなし,3万人対象の第Ⅲ相臨床試験REVEALを実施
プラセボ群と比較して,血圧上昇やアルドステロン値,血清カリウム値の上昇は認められなかった。
また,事前に設定された主要心血管イベント(MACE)はプラセボ群2.6%に対してanacetrarpib群2.0%で両群間に差はなかった。
Cannon氏は,臨床効果を比較するには症例数が少ないことを前置きしながらも,血行再建術の施行数がそれぞれ25例,6例とanacetrapib群で少なかったことを報告した。

指定討論者のスイス・チューリヒ大学病院のThomas F. Luscher氏は「torcetrapibは12カ月後にHDL-Cを72%上昇させてLDL-Cを25%低下させた。
しかし,血圧や血清アルドステロン値が上昇したほか,酸化ストレスやeNOS発現量の低下などにより血管内皮機能が低下した」と振り返り,anacetrapibでそのような悪影響がなかったのは「同じクラスの薬でもわずかな分子構造の変化が大きな違いを生むため」と説明した。

Anacetrapibの安全性が確認され,臨床効果の可能性も示されたことから,Cannon氏は3万例を対照とする第Ⅲ相臨床試験REVEAL***を開始すると明らかにした(表;英オックスフォード大学公式サイト参照)。

http://www.ctsu.ox.ac.uk/reveal/

なお,CETP阻害薬としてはdalcetrapibも開発中だ。



*:CETP阻害薬は,HDL-Cを超低比重リポ蛋白やLDL-Cに転送する血清蛋白であるCETPを阻害することで,HDL-Cを上昇させ,LDL-Cを低下させるとされる
**:Determining the EFficacy and Tolerability of CETP INhibition with AnacEtrapib
***:Randomized Evaluation of the Effects of Anacetrapib through Lipid Modification

鎮西直秀 『彩雲・支笏湖夕景』 油彩
http://www.seikougarou.co.jp/sell/chinzeinaohide/260.html


その他
「葦の髄」循環器メモ帖
http://yaplog.jp/hurst/
ふくろう医者の診察室 http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き) 
井蛙内科/開業医診療録(4)2009.10.16~
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 井蛙内科/開業医診療録(3)~2009.10.15
http://wellfrog3.exblog.jp/
井蛙内科/開業医診療録(2)2008.12.10~
http://wellfrog2.exblog.jp/
井蛙内科/開業医診療録~2008.5.21
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