戯れ言たれる侏儒
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兵庫県立尼崎病院循環器内科の佐藤幸人先生が書かれた心肺蘇生に関する記事で勉強しました。

 

バイスタンダーによる心肺蘇生は「胸骨圧迫のみ」の時代へ/日本の2研究を含むメタ解析から
研究の背景:「胸骨圧迫のみ」でも予後良好とする研究が国内外で発表
従来,心肺蘇生は「胸骨圧迫+人工呼吸」がよいとされてきたが,バイスタンダーにとっては煩雑であり,mouse to mouseの人工呼吸は一般には受け入れられがたい感があった。

<私的コメント>
mouth to mouthの間違い。

一方,数年前から「胸骨圧迫+人工呼吸」vs.「胸骨圧迫のみ」をテーマとする研究が国内外で相次いで行われ,「胸骨圧迫のみ」でも予後が良好であることが報告されてきた。
今回,オーストリアと米国の研究者がこれら前向きおよび後ろ向き試験計10報についてのメタ解析を行い,その結果がLancet 10月15日オンライン版に発表した。

Chest-compression-only versus standard cardiopulmonary resuscitation: a meta-analysis
(The Lancet, Early Online Publication, 15 October 2010doi:10.1016/S0140-6736(10)61454-7)
http://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736%2810%2961454-7/fulltext

研究のポイント:RCTの解析では「胸骨圧迫のみ」が良好,観察研究の解析でも差ない
院外心肺停止の成人例を対象に,バイスタンダーによる「胸骨圧迫+人工呼吸」と「胸骨圧迫のみ」の退院時における生存率を比較した。

3報のランダム化比較試験(RCT)のメタ解析では,「胸骨圧迫のみ」が「胸骨圧迫+人工呼吸」と比較して生存率が有意に良好だった(「胸骨圧迫のみ」14% vs. 「胸骨圧迫+人工呼吸」12%,P=0.040,図1


7報の観察研究(うち2報は日本の研究)では,「胸骨圧迫のみ」と「胸骨圧迫+人工呼吸」で生存率に差は認められなかった(「胸骨圧迫のみ」8% vs. 「胸骨圧迫+人工呼吸」8%,P=0.54,図2)。


佐藤先生の考察:既に世界は「胸骨圧迫のみ」で市民啓発の方向に
従来,心肺蘇生は「胸骨圧迫+人工呼吸」がよいとされてきた。しかし実臨床においては,「胸骨圧迫のみ」が数十分にわたり行われた症例でも完全に蘇生して社会復帰する例も経験し,常に疑問に思っていた。
また,一般市民を対象に蘇生の講習を行う場合,シンプルな方法が当然普及しやすいわけで,この点からも「胸骨圧迫+人工呼吸」では煩雑であった。
今回,メタ解析として「胸骨圧迫のみ」でも充分という結論が出たことは心強い。

現在既に世界的に蘇生は「胸骨圧迫のみ」でも可能という方向で市民への啓発が始まっている。
注意点として,小児領域で検討されたように,心臓由来の心肺停止では「胸骨圧迫のみ」でよいが,非心臓由来の心肺停止では「胸骨圧迫+人工呼吸」が優れるという点である。

わが国ではこの領域で,本論文中にも引用されているように,多くの先駆的研究がなされている。

私自身,今回のメタ解析で取り上げられた論文の一つ(Lancet 2007; 369: 920-926)をまとめた,SOS-KANTO研究グループの長尾建先生(駿河台日本大学病院循環器内科学教授)の兵庫医科大学でのご講演を半月前に聴講する機会があり,そのバイタリティに大変感銘を受けた。
具体的には
(1)試行錯誤,
(2)データ解析,
(3)解析結果により,システム改良という過程を常に継続されている点,市民を巻き込んで社会的啓発を行われた点
など,スケールの大きさに圧倒された。

また,同先生のご施設からは上記論文を含め海外の一流ジャーナルに数多くの報告を行っているが,海外から著名な医師の見学が多いこと,医学的研究に端を発しながら,社会的貢献度が高く行政からも感謝されていることなどが印象的であった。
現在も,ショックや,低体温療法などについて多施設研究を行われているとのことであった。

出典 MT pro 2010.10.19
版権 メディカルトリビューン社

 

<関連サイト>
心肺蘇生国際ガイドライン2010発表,改訂のキーワードは「ABCからCAB」
国際連絡蘇生協議会(ILCOR)は2010年10月18日,「心肺蘇生法と緊急心血管治療のための国際ガイドライン(CoSTR)2010」を公表した。
改訂は2005年以来。
新ガイドライン発表に合わせ,同協議会に加盟する米国,欧州でもそれぞれ自国の実態を反映したものを米国心臓協会(AHA),欧州蘇生協議会(ERC)が各ガイドラインとして同時発表している。
また,今回改訂においては日本もILCORに参加しており,日本の実情を反映した新しい日本語版ガイドラインが日本蘇生協議会(JRC)公式サイトなどで発表される予定だ。
国際的なエビデンスの共有と評価が結集された同ガイドライン,最も大きな改訂のキーワードは「ABC(airway, breathing, compressions)からCAB(compressions, airway, breathing)」だという。

「気道確保」,「最初の人工呼吸」が省略,まず「胸骨圧迫を」
新ガイドラインのexecutive summaryで示された「一般的な心停止アルゴリズム」では,新生児を除くすべての心停止患者で反応がない,呼吸がない,あるいは呼吸困難(occasional gasps)があれば救助を呼び,心肺蘇生(CPR)を開始することが勧告されている。
前回2005年のガイドラインでは救助要請後に「気道を確保し」,「規則正しい呼吸がなければ2~5回の最初の人工呼吸を行う」プロセスが含まれていた。
新ガイドラインではこの点が成人一次救命処置(BLS)における勧告で最も大きな変更と位置付けられており,「胸骨圧迫と蘇生の遅れを最小限にするためのABC(airway, breathing, compressions)からCAB(compressions, airway, breathing)」として,救助者が気道を開大させ人工呼吸を行うより,まず胸骨圧迫による蘇生を始めるべきとの見解が示されている。

出典 MT pro 2010.10.18
版権 メディカルトリビューン社

 

バイスタンダーCPRは胸骨圧迫のみでも有効
出典 MT pro 2008.2.28
版権 メディカルトリビューン社
■一般市民による成人院外心停止患者に対する心肺蘇生(バイスタンダーCPR)は,虚脱から15分以内の心停止の場合,胸骨圧迫のみのCPRでも従来法(胸骨圧迫に加えて口対口人工呼吸を施行)のCPRと同等の結果が得られることが,大阪府民を対象とした前向きコホート研究で確認され,Circulation(2007; 116: 2900-2907)に報告された。
■バイスタンダーCPRとは,救急システムの構成員以外の一般市民によって,心停止患者の救命手当が試みられることであり,今回の知見は,救急の専門的技能を有する救急隊員や医師などが行うCPRとは区別して考える必要がある。
今回の研究では,1998年から5年間に大阪府内で発生した心原性成人院外心停止患者を対象に,胸骨圧迫のみが施行された場合と従来法のCPRが施行された場合,それぞれの予後との関連が前向きに検討された。
多変量ロジスティック回帰分析の結果,15分超の心停止を除いて,神経学的後遺症のない1年生存は,CPRなし群に比べて,胸骨圧迫のみのCPR群は1.72倍に,従来のCPR群は1.57倍にそれぞれ上昇した。
バイスタンダーCPRは胸骨圧迫のみでも従来法と同等の効果があることが示された。
■米国および日本版救急蘇生ガイドラインでは従来法のCPRが行えない場合や人工呼吸の実施に抵抗がある場合,ちゅうちょせず胸骨圧迫のみのCPRを試みることを推奨しているが,このことは国内の講習会などではあまり伝えられていなかった。
調査を実施した京都大学保健管理センターの石見拓氏は「従来のCPRは手技が複雑なため訓練を受けても適切な処置ができる人はそう多くなかった。特に日本人は人工呼吸への抵抗感が強いとされる」と指摘している。
今回のコホート研究でもCPRを試みた一般市民のうち,胸骨圧迫のみを試みた人が40%を占めていた。
さらに,同氏は「胸骨圧迫のみのCPRは従来法より簡便で習得しやすいうえに,心理的負担も少ない。一般市民へ浸透すれば,救命処置への参加を促すとともに,胸骨圧迫の質が向上し,院外心停止患者の転帰改善につながるだろう」と述べ,胸骨圧迫のみのCPRの普及によるバイスタンダーCPR実施率の向上と心停止例の転帰改善に期待を示した。

 


胸骨圧迫のみのバイスタンダーCPRの有効性
出典 MT pro 2008.2.28
版権 メディカルトリビューン社
■京都大学保健管理センター(予防医療学)の石見拓氏らは,一般市民による成人院外心停止患者に対する心肺蘇生(バイスタンダーCPR)は,虚脱から心停止後15分までは胸骨圧迫のみで,従来法(胸骨圧迫に加えて口対口の人工呼吸を施行)のCPRと同等の効果が得られることを確認した。
■最近,関東地区で院外心停止患者の30日後の転帰を前向きに調査したSOS-KANTOで,VFや 4分以内にCPRが開始された心停止では,胸骨圧迫のみのバイスタンダーCPRが従来のCPRよりも効果的であることが示された(Lancet 2007; 369: 920-926)。
■救急隊員や病院の医療スタッフが行うCPRの質を評価した研究では,胸骨圧迫にかける時間が不足し,十分な深さまで胸を押していないケースが多いことが判明しており,救急の専門家にとっても胸骨圧迫の質の確保は重要な課題だという。
■バイスタンダーCPRは院外心停止患者の25%前後に提供されているにすぎない。

 

児玉幸雄 『パルテノン遠望』 水彩・パステル
http://www.seikougarou.co.jp/sell/kodamayukio/496.html

 

 

その他
「葦の髄」循環器メモ帖
http://yaplog.jp/hurst/
ふくろう医者の診察室 http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き) 
井蛙内科/開業医診療録(4)2009.10.16~
http://wellfrog4.exblog.jp/
 井蛙内科/開業医診療録(3)~2009.10.15
http://wellfrog3.exblog.jp/
井蛙内科/開業医診療録(2)2008.12.10~
http://wellfrog2.exblog.jp/
井蛙内科/開業医診療録~2008.5.21
http://wellfrog.exblog.jp/ 
(内科医向き)
「井蛙」内科メモ帖 
http://harrison-cecil.blog.so-net.ne.jp/  
があります。
    

 

 

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