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兵庫県立尼崎病院循環器内科の佐藤幸人先生の書かれた経皮的中隔心筋焼灼術(PTSMA)に関する記事で勉強しました。
このPTSMAは2004年の保険適応となっています。
この手技は、外科手術に比較して低侵襲性であるものの、人為的に心筋壊死を作成する手技のために合併症として完全房室ブロック(CAVB),心室中隔穿孔、左前下行枝へのエタノール注入による広範囲心筋梗塞、死亡例も報告されています。
このPTSMAは「心筋焼灼」という言葉から「電気的」焼灼がイメージされますが中隔心筋へ高濃度エタノールを注入するalcohl ablationです。
経皮的中隔心筋焼灼術は遠隔期に突然死の危険性高い
オランダからの注意喚起報告
研究の背景:症状の改善は得られるが長期成績は不明
閉塞性肥大型心筋症(HOCM)は労作時の胸痛や呼吸困難,時として失神を生じる。
薬物治療としてはβ遮断薬やCa拮抗薬が用いられる。薬剤抵抗性のHOCMでは,心筋中隔切除術やDDDペーシングとともに,冠動脈に高濃度エタノールを注入して左室流出路狭窄の原因となる肥厚した中隔心筋を壊死させる経皮的中隔心筋焼灼術(PTSMA)がある。
わが国の「肥大型心筋症の診療に関するガイドライン2007年改訂版」では,PTSMAは症状の改善は得られるが長期成績は不明とのことで,
(1)ニューヨーク心臓協会(NYHA)心機能分類Ⅲ度以上の症状を有し,薬剤抵抗性で,安静時ないし薬剤負荷時に30mmHg以上の左室内圧較差を認めるHOCM,
(2)左室内圧較差を原因とする意識消失発作を有し,安静時ないし薬物負荷時に30mmHg以上の圧較差を認めるHOCM,
(3)左室内圧較差(30mmHg以上)が関与する薬物治療抵抗性の発作性心房細動
―について,ClassⅡ※1またはClassⅡa※2の適応があると記載されている。
今回オランダから,薬剤抵抗性のHOCMに対するPTSMD※3には,長期間観察を行うと突然死の危険性があるというショッキングな内容の注意勧告が発表された(Circ Heart Fail 2010; 3: 362-369)。
Long-term outcome of alcohol septal ablation in patients with obstructive hypertrophic cardiomyopathy: a word of caution.
(Circ Heart Fail 2010; 3: 362-369)
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/sites/entrez/20332420
研究のポイント:3人に1人に有害事象,心筋中隔切除術の5倍の発生頻度
91例のHOCM(平均年齢54歳)に経カテーテル的に冠動脈中隔枝へPTSMAを行った。
ランダム化比較試験(RCT)は行いにくいので,その結果をpropensity scoreを用いて,心筋中隔切除術を行った40例と対比した。
一次エンドポイントは心臓死+致死性不整脈を含む突然死からの生還,二次エンドポイントは非心臓死+他の非致死性合併症である。
平均5.4年の経過後,PTSMA群では38%が一次または二次エンドポイントに到達し,21%が一次エンドポイントに到達した。
平均6.6年後における一次エンドポイント回避率はPTSMA群で有意に低く(P=0.01),1,5,8年後ではPTSMA群96%,86%,67%,心筋中隔切除術群100%,96%,96%であった(図)。
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一次エンドポイントの年発生率はPTSMA群4.4%に対し,心筋中隔切除術群0.9%であった。propensity scoreを用いた解析では,PTSMAが一次エンドポイントの有意な予測因子となった。
佐藤先生の考察:ICDの植え込みも同時に検討する必要がある
PTSMAを受けた患者では,長期観察を続けると3人に1人に有害事象が生じ,その発生頻度は心筋中隔切除術の5倍であるという大変ショッキングな内容である。
この論文の著者らは,有害事象は術直後ではなく,遠隔期に認められたことを強調している。
術直後は合併症がないように見えても,5~10年経過してみないとわからないということである。
さらに,突然死した症例ではほとんどの症例が突然死の危険因子(失神の既往,突然死の家族歴など)がない症例であり,全例植え込み型除細動器(ICD)が植え込まれておらず,ICDが植え込まれた患者では突然死が見られなかった。
心筋焼灼後の心筋梗塞による瘢痕形成が致死性不整脈の原因と考えられている。
心筋焼灼という手技自体が一次エンドポイントの危険因子であり,注入エタノールの量は危険因子ではなかった。
結論として論文著者らは,薬剤抵抗性HOCM患者の第一選択治療は心筋中隔切除術であると述べている。
わが国では冠動脈疾患同様,HOCMでも外科手術よりもカテーテル治療のほうが選択される傾向にあるかもしれない。
その場合,今後はICDの植え込みも同時に検討する必要があると思われる。
突然死の危険因子がない患者でも,PTSMA後に突然死が生じているからである。
※1 手技,治療が有効,有用であるというエビデンスがあるか,あるいは見解が広く一致していない
※2 エビデンス,見解から有用,有効である可能性が高い
※3 原著論文ではalcohol septal ablation(ASA)としているが,日本のガイドラインの表記に従い,経皮的中隔心筋焼灼術(PTSMA)とした
出典 MT pro 2010.6.28
版権 メディカルトリビューン社
<経皮的中隔心筋焼灼術 関連サイト>
経皮的中隔心筋焼灼術:PTSMA
http://www.nms.ac.jp/nms/naika1/shinryo/PTSMA/index.html
経皮的中隔心筋焼灼術
http://www.mimuro-hp.sango.nara.jp/sinryo_jyunkan06.htm
■PTSMA : Percutaneous transluminal septal myocardial ablation
■ 1995年英国のSigwart博士らが始めた経皮的中隔心筋焼灼術は,左室内で流出路を圧排する異常な肥大心筋に灌流する冠動脈左前下行枝の側枝である中隔枝にエタノールを極少量注入して,異常肥大心筋をピンポイントに焼灼し,肥大心筋を痩せさせる(薄くする)ことによって左室内圧較差を消滅させる治療法です。
(私的コメント;左室内圧と大動脈圧の術後の改善を示した図は説得力があります)
経皮的中隔心筋焼灼術の適応について
http://www.jhf.or.jp/q&adb/6/5403.html
■この治療のためには、
第一に、治療が必要かつ奏効するような心筋肥大であることが前提になります。
第二に、症状があり、薬剤抵抗性であること。
第三に、圧較差が50ミリ以上あることが必要です。
しかも、そうした条件を満たしていたとしても、心筋壊死治療後の瘢痕による不整脈や突然死の危険があり得るとする考えもあります。
実施にはかなりの慎重さを要すします。
(私的コメント;左室流出路圧較差30mmHg以上を有する症例の予後は不良という報告があります。Maronら)
[PDF] 経皮的中隔心筋焼灼術とペース メーカー療法の併用により左室内 圧較差の消失に成功した閉塞性肥大型心筋症の1例
http://www.jcc.gr.jp/blue/jc-pdf/365-6(L).pdf
その他
「葦の髄」循環器メモ帖 http://yaplog.jp/hurst/
(循環器専門医向き)
ふくろう医者の診察室 http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き)
井蛙内科/開業医診療録(4)2009.10.16~
http://wellfrog4.exblog.jp/
井蛙内科/開業医診療録(3)~2009.10.15
http://wellfrog3.exblog.jp/
井蛙内科/開業医診療録(2)2008.12.10~
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井蛙内科/開業医診療録~2008.5.21
http://wellfrog.exblog.jp/
(内科医向き)
「井蛙」内科メモ帖
http://harrison-cecil.blog.so-net.ne.jp/