戯れ言たれる侏儒
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Alpha Omega試験

戯れ言たれる侏儒 / 2010.10.23 00:27 / 推薦数 : 0

兵庫県立尼崎病院循環器内科の佐藤幸人先生がAlpha Omega試験について解説した記事で勉強しました。
Alpha Omega試験は、心筋梗塞後の患者を対象に,低用量EPA+DHAとALAの心血管イベントへの抑制効果を検討した試験です。

##低用量EPA,DHA,ALAでは心筋梗塞後の心血管イベント抑制効果示せず
##Alpha Omega試験から
#研究の背景:JELIS試験などでn-3系不飽和脂肪酸には心血管イベント予防効果
欧米では,食生活と心血管病の関連についての研究は古くから行われており,地中海式ダイエットが心血管イベントを予防するとされている。
しかし,どの成分がイベント抑制に貢献しているのかは不明であり,全粒穀物,魚,オリーブ油,野菜,果物などの食事バランス全体で抗炎症作用,抗酸化ストレス作用などを介してその効果を発揮していると考えられている。

n-3系不飽和脂肪酸である魚油にその作用を求めた試験として,日本では精製エイコサペンタエン酸(EPA)製剤を用いて心血管イベント予防効果を確認したJELIS試験がある(Lancet 2007; 369: 1090-1098)。
その効果は,心血管イベント抑制効果のあるスタチンにさらに上乗せして認められ,また本来魚をよく食べている日本人において効果が見られたことにより,高く評価されている。

Effects of eicosapentaenoic acid on major coronary events in hypercholesterolaemic patients (JELIS): a randomised open-label, blinded endpoint analysis.
(Lancet. 2007 Mar 31;369(9567):1090-8.) http://www.ncbi.nlm.nih.gov/sites/entrez/17398308
一方で,n-6系不飽和脂肪酸である,ひまわり油,コーン油などのリノール酸には心血管イベント抑制効果を明らかに示した報告はなく,消費者がこれらの油を体によいとコマーシャルにより刷り込まれている状況は,医学的には奇異である(オリーブ油は成分としてリノール酸はほとんどなく,オレイン酸が中心)。

さて,植物性プランクトンは,リノール酸やαリノレン酸〔Alpha-linolenic acid(ALA)〕を合成し,ALAは動物性プランクトンまたは小魚の体内でEPA,またはドコサヘキサエン酸(DHA)などの魚油になる。

一方,植物油中にALAを多く含むものに,紫蘇油(えごま油)(注:紫蘇科でゴマ科,ゴマ油ではない)があるが,量産されない。
大豆油,菜種油は少量含んでいるが,量産できるのでリノレン酸の供給源となっている。 ALAもEPA,DHAのように心血管イベント抑制効果が期待されているが,大規模な検討は行われていない。

今回結果が発表されたAlpha Omega試験では,心筋梗塞後の患者を対象に,低用量EPA+DHAとALAの心血管イベントへの抑制効果が検討された(N Eng J Med 8月29日オンライン版)。

n–3 Fatty Acids and Cardiovascular Events after Myocardial Infarction http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa1003603#t=articleBackground


#研究のポイント:EPA+DHAを追加しても,ALAを追加しても1次評価項目は抑制されず
ガイドライン推奨の降圧,抗血小板,抗脂質治療を既に受けている心筋梗塞後の4,837例を,
(1)EPA・DHA入りマーガリン(EPA+DHA群;1日摂取目標400mg),
(2)ALA入りマーガリン(ALA群;同2g),
(3)ALA入りマーガリン+EPA・DHA入りマーガリン〔ALA+(EPA+DHA)群〕,
(4)プラセボマーガリン(プラセボ群)
―の4群に割り付け,それぞれのマーガリンを40か月摂取させた。

1日マーガリン平均摂取量は18.8gで,介入群においては1日当たりEPA 226mg,DHA 150mg,ALA 1.9gが摂取できた。

1次評価項目は致死性,非致死性心血管イベント+心血管インターベンションで,671例(13.9%)に発生したが,「プラセボ群およびALA群」と「EPA+DHA群およびALA+(EPA+DHA)群」群の間に有意差は認めなかった(図1)。


また,「プラセボ群およびEPA+DHA群」と「ALA群およびALA+(EPA+DHA)群」で比較しても有意差は認められなかった(図2)。


サブグループ解析では,女性において「ALA群およびALA+(EPA+DHA)群」が「プラセボ群およびEPA+DHA群」と比較して心血管イベントを抑制していた。
また,糖尿病患者において「EPA+DHA群およびALA+(EPA+DHA)群」は「プラセボ群およびALA群」と比較して,冠動脈病変による死亡,心室性不整脈によるイベントの抑制が認められた。
副作用の頻度は群間に差が認められなかった。


#佐藤先生の考察:結果が有意にならなかった第一の理由は低用量すぎたためか 2つの図に示されるように,EPA+DHAを追加しても,ALAを追加しても1次評価項目は有意に抑制されないという結果になってしまった。
サブグループ解析も,女性ではALA追加により27%の1次評価項目抑制傾向があり(P=0.07),糖尿病患者ではEPA+DHA追加により冠動脈病変による死亡が抑制される(P=0.04)という程度にとどまり,釈然としない結果である。
論文の著者らは,患者背景についてコメントしているが,私としては結果が有意にならなかった第一の理由としてEPA,DHA,ALAが低用量すぎたのではないかと思うのであるが,どうだろうか。
例えば,前述のJELIS試験ではEPAは1.8g/日であるし,心不全患者においてn-3系不飽和脂肪酸の心血管イベントが抑制効果を検討したGISSI-HF試験でも投与量は1g/日であった(Lancet 2008; 372: 1223-1230)。
また,症例数もJELIS試験では約1万8,000例,1群約9,300例,GISSI-HF試験では約7,000例,一群3,500例であったが,今回のAlpha Omega試験は1群約1,200例であった。

Effect of n-3 polyunsaturated fatty acids in patients with chronic heart failure (the GISSI-HF trial): a randomised, double-blind, placebo-controlled trial.
(Lancet 2008; 372: 1223-1230) http://www.ncbi.nlm.nih.gov/sites/entrez/18757090


なお,マーガリン中にはトランス脂肪酸という血管病変を悪化させる可能性のある人工の脂肪酸が含まれているが,Alpha Omega試験のマーガリンにおけるトランス脂肪酸含有量は0.5~1%程度とかなり低く問題にはならないかもしれない。
しかし,マーガリン中の他の成分などがEPA,DHA,ALAの効果を相殺してしまい,結果に影響した可能性も考えられる。
従来の魚油の投与法はカプセルである。 従って,本試験結果から,EPA,DHA,ALAは心筋梗塞後患者に有用でないという結論にはならず,試験デザインを変えた再検討が望まれる。

出典 MT pro 2010.9.3
版権 メディカルトリビューン社  


その他 「葦の髄」循環器メモ帖 http://yaplog.jp/hurst/ ふくろう医者の診察室 http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy (一般の方または患者さん向き)  井蛙内科/開業医診療録(4)2009.10.16~ http://wellfrog4.exblog.jp/  井蛙内科/開業医診療録(3)~2009.10.15 http://wellfrog3.exblog.jp/ 井蛙内科/開業医診療録(2)2008.12.10~ http://wellfrog2.exblog.jp/ 井蛙内科/開業医診療録~2008.5.21 http://wellfrog.exblog.jp/  (内科医向き) 「井蛙」内科メモ帖  http://harrison-cecil.blog.so-net.ne.jp/   があります。     があります。   


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